説明

基板の処理装置及び処理方法

【課題】この発明は半導体ウエハを部分的に洗浄処理することができる処理装置を提供することにある。
【解決手段】半導体ウエハを部分的に洗浄処理する処理装置であって、
半導体ウエハを保持する回転テーブル2と、回転テーブルによって保持された半導体ウエハの少なくとも洗浄処理される部分にナノバブルが混入された処理液を供給するナノバブル発生器17と、半導体ウエハの洗浄処理される部分に電子ビームを照射して処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる電子銃12を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体ウエハや液晶表示パネルに用いられるガラス基板などの基板を部分的に洗浄処理する基板の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基板としての半導体ウエハに回路パターンを形成する場合、この半導体ウエハに導電膜や絶縁膜などの複数の薄膜からなる積層膜を成膜する工程がある。半導体ウエハに対する成膜は、たとえばCVD装置などによって行なわれる。半導体ウエハに積層膜を形成した場合、その積層膜が半導体ウエハの周縁部にも形成されてしまうということがある。
【0003】
積層膜が形成された半導体ウエハはスピン処理装置などによって洗浄処理される。その場合、半導体ウエハの周縁部をスピン処理装置によってクランプすると、その周縁部の積層膜が剥離する虞があり、剥離した積層膜はその半導体ウエハや他の半導体ウエハに付着して汚染の原因になる。
【0004】
そこで、従来は半導体ウエハに積層膜を形成したならば、次工程に受け渡す前にその周縁部を1〜2mmの範囲にわたってエッチングし、その周縁部に形成された積層膜を除去するということが行なわれている。
【0005】
半導体ウエハの周縁部からエッチングによって積層膜を除去すると、その周縁部にエッチングの残渣などの汚れが付着残留していることがあるため、エッチング後にその周縁部を洗浄することが要求される。
【0006】
半導体ウエハを洗浄処理する場合、たとえば特許文献1に示されるように処理液が供給される処理槽に半導体ウエハを収容する。上記処理液はマイクロバブル発生器によって発生されたマイクロバブルを含んでいる。上記処理槽の底部には超音波振動子が設けられている。
【0007】
それによって、処理槽に供給された処理液に超音波振動子によって超音波振動を付与することで、半導体ウエハの表面に付着した汚れが超音波振動の衝撃で剥離し、マイクロバブルに吸着されてマイクロバブルとともに上方へ向かって浮上する。それによって、半導体ウエハから剥離された汚れはマイクロバブルとともに処理槽の上端から流出するから、半導体ウエハの洗浄を効率よく行うことができるというものである。
【特許文献1】特開2006−179765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示された処理装置によると、超音波振動が半導体ウエハに与える衝撃を利用することで、半導体ウエハに対する洗浄効果を向上させるようにしている。しかしながら、上記構成の処理装置によると、半導体ウエハを処理槽内の処理液に浸漬するため、半導体ウエハの全面が洗浄処理されることになるから、超音波振動の衝撃も処理液を介して半導体ウエハの全面に加わることになる。
【0009】
そのため、たとえば半導体ウエハのデバイス面に衝撃を与えずに、周縁部だけを洗浄処理したい場合であっても、全面を洗浄処理しなければならないために、その全面に超音波振動の衝撃が加わることになる。デバイス面に形成される回路パターンは最近では微細化が進んでいる。回路パターンが微細化された場合、その回路パターンに超音波振動の衝撃が加わると、その衝撃によって損傷を招く虞がある。
【0010】
この発明は、基板の所望する部位だけを確実に洗浄処理することができるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、基板を部分的に処理する処理装置であって、
上記基板を保持する保持手段と、
この保持手段によって保持された基板の少なくとも処理される部分にナノバブルが混入された処理液を供給する処理液供給手段と、
上記基板の処理される部分にエネルギビームを照射して上記処理液に含まれるナノバブルを圧壊させるエネルギ照射手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0012】
上記保持手段は上記基板を水平に保持して回転させる回転テーブルで、
上記処理液供給手段は上記回転テーブルが収容されこの回転テーブルに保持された上記基板を浸漬させる上記処理液が貯えられる処理槽であって、
上記エネルギ照射手段は、エネルギビームを出力するエネルギビーム出力部と、このエネルギビーム出力部を上記回転テーブルの上方で所定方向に沿って駆動する駆動手段とによって構成されていることが好ましい。
【0013】
上記保持手段は上記基板を所定の角度で傾斜して保持して回転させる回転テーブルであり、
上記処理液供給手段は傾斜して保持された上記基板の周辺部の下端に位置する部分を浸漬させる処理液が供給される処理槽であり、
上記エネルギ照射手段は、エネルギビームを出力するエネルギビーム出力部を備えていることが好ましい。
【0014】
この発明は、基板を部分的に処理する処理方法であって、
上記基板を保持する工程と、
保持された基板の少なくとも処理される部分にナノバブルが混入された処理液を供給する工程と、
上記基板の処理される部分にエネルギビームを照射して上記処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【0015】
上記基板を回転させるとともにこの基板の少なくとも周辺部に処理液を供給し、基板の周辺部にエネルギビームを照射することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1と図2はこの発明の一実施の形態を示す。図1に示す処理装置は上面が開口した処理槽1を備えている。この処理槽1の内部には保持手段を構成する回転テーブル2が水平に設けられている。
【0018】
上記回転テーブル2の下面中心部には連結軸3が設けられている。この連結軸3は上記処理槽1の底部の中心部に設けられた液密構造の軸受4に回転可能に挿通支持されて上記処理槽1の外底部に突出している。
【0019】
上記処理槽1の下方には回転駆動源6が配置されている。この回転駆動源6の駆動軸7は上記連結軸3に連結されている。それによって、上記回転テーブル2は上記回転駆動源6によって回転駆動されるようになっている。なお、回転テーブル2の回転速度は図示せぬ制御装置によって回転駆動源6の駆動を制御することで、設定できるようになっている。
【0020】
上記回転テーブル2には基板としてのたとえば半導体ウエハWが吸着などの手段によって着脱可能に保持される。上記回転テーブル2の上方にはエネルギ照射手段11が設けられている。
【0021】
上記エネルギ照射手段11は、エネルギビームである電子ビームBを出力するエネルギビーム出力部としての電子銃12を有する。この電子銃12は駆動手段13を構成する可動体14に取り付けられている。この可動体14は上記回転テーブル2に保持された半導体ウエハWの径方向に沿って水平に配置されたガイド部材15に移動可能に設けられている。
【0022】
上記ガイド部材15の長手方向一端には駆動源16が設けられ、この駆動源16によって上記可動体14を上記ガイド部材15に沿う方向である、矢印で示すX方向に駆動できるようになっている。つまり、上記電子銃12を上記回転テーブル2に保持された半導体ウエハWの径方向に沿って駆動させることができる。
【0023】
上記処理槽1には、処理液供給手段としてのナノバブル発生器17から、直径が1μm以下のナノバブルが含まれた処理液Lが供給されるようになっている。すなわち、上記ナノバブル発生器17には純水などの処理液Lを供給する給液源18と、窒素ガスや二酸化炭素ガスの気体を供給する給気源19とが配管接続されている。
【0024】
上記ナノバブル発生器17に供給された気体は旋回流となり、上記処理液Lは気体よりも旋回速度の速い旋回流となって気体の周囲に沿って流れる。それによって、気体が処理液Lによって剪断されることで微細径のバブル、つまりナノバブルが発生し、そのナノバブルが処理液Lに混入する。つまり、処理液Lがナノバブル水となる。
処理液Lに混入する、マイクロバブルよりも小径なナノバブルは浮力が小さい。そのためナノバブルは、処理液Lの上面に浮上せず、処理液Lの内部に滞留して浮遊する。
【0025】
上記液体に含まれるナノバブルの粒径は上記気体と液体との旋回速度によって設定することができ、この実施の形態では液体に剪断された気体によって直径が1μm以下のナノバブルが発生するよう、上記ナノバブル発生器17に供給される気体と処理液Lの旋回速度が設定される。それによって、上記ナノバブル発生器17に供給された処理液Lは上述したようにナノバブルを含むナノバブル水となる。
【0026】
上記ナノバブル発生器17で作られたナノバブルを含む処理液Lは貯液槽20に供給される。この貯液槽20と上記処理槽1の底部は給液管21によって接続されている。給液管21の中途部には給液ポンプ22とフィルタ23が設けられている。したがって、上記給液ポンプ22が作動すれば、上記貯液槽20に貯えられた処理液Lが上記処理槽1に供給されるようになっている。
【0027】
上記処理槽1にはオーバフロー管24が接続されている。このオーバフロー管24は処理槽1の処理液Lの液面が所定以上になると、処理液Lを排出するようになっている。上記処理槽1における処理液Lの液面は、回転テーブル2の上面に保持された半導体ウエハWの上面が十分に浸漬する高さになるよう設定されている。
なお、オーバフロー管24から流出した処理液は廃棄或いは再利用されるようになっている。
【0028】
つぎに、上記構成の処理装置によって半導体ウエハWを部分的に洗浄処理する場合、この実施の形態では上述したように成膜後にエッチング処理された周縁部を洗浄処理する場合について図2を参照しながら説明する。
まず、電子銃12が設けられた可動体14をガイド部材15に沿って駆動し、電子銃12から出力される電子ビームBが回転テーブル2にデバイス面を上にして保持された半導体ウエハWの周縁部を照射するよう、上記電子銃12を位置決めする。
【0029】
ついで、処理槽1にナノバブル26を含む処理液Lを供給し、上記半導体ウエハWを処理液Lに浸漬させたならば、回転テーブル2を回転させるとともに、電子銃12から電子ビームBを出射して半導体ウエハWの周縁部に照射する。
【0030】
回転テーブル2が回転することで、半導体ウエハWの周縁部が全周にわたって電子ビームBによって照射されると、その周縁部の上方に位置する処理液Lにも電子ビームBが照射されることになる。
【0031】
ナノバブル26は上述したように処理液Lの液面に浮上せず、処理液L中を浮遊している。そのため、電子銃12から出射された電子ビームBは半導体ウエハWの周縁部の上面に浮遊するナノバブル26を照射するから、そのナノバブル26は電子ビームBのエネルギによって圧壊される。
【0032】
ナノバブル26が圧壊されると、その圧壊による衝撃、つまり衝撃力が発生し、その衝撃力が半導体ウエハWの周縁部の上面に作用することになるから、半導体ウエハWの周縁部の上面に付着した汚れが除去されることになる。
【0033】
つまり、半導体ウエハWは周縁部の全長だけが洗浄処理され、デバイス面の周縁部以外の箇所が処理されることがない。言い換えれば、半導体ウエハWは周縁部以外に衝撃が与えられることがないから、デバイス面に形成された回路パターンの損傷を招くことなく、周縁部だけを確実に洗浄処理することができる。
【0034】
上記電子銃12は、駆動手段13によって回転テーブル2に保持された半導体ウエハWの径方向に沿って駆動させることができる。そのため、半導体ウエハWの洗浄処理はその周縁部だけに限られず、径方向の中途部であっても部分的に行うことが可能であり、しかも回転テーブル2を回転させて周方向全長にわたって行うこともでき、回転テーブル2を停止しておけば、周方向の一部分だけを洗浄処理することも可能である。
【0035】
図3はこの発明の他の実施の形態を示す。この実施の形態は回転テーブル2が回転軸線を所定の角度で傾斜させて配置されている。半導体ウエハWは周辺部を回転テーブル2の外周から外方に突出させていて、半導体ウエハWの傾斜方向の下端に位置する周縁部は処理槽1Aに供給されたナノバブルを含む処理液Lに浸漬されている。つまり、半導体ウエハWは周縁部の一部分だけが処理液Lに浸漬されている。
【0036】
半導体ウエハWの処理液Lに浸漬された周縁部には電子銃12から出力される電子ビームBが半導体ウエハWのデバイス面に対して垂直方向から照射される。それによって、半導体ウエハWの周縁部だけを処理液Lに浸漬して洗浄処理することができる。つまり、半導体ウエハWは洗浄処理する部分だけが処理液Lに浸漬され、洗浄処理する必要がない部分は処理液Lに浸漬せずにすむ。
【0037】
上記各実施の形態では処理液として純水にナノバブルを混入させるようにしたが、処理液として用いられる液体は純水に限られず、半導体ウエハの汚れの種類に応じて洗浄効果の高い液体、たとえばイソプロピルアルコールなど他の液体を用いるようにしてもよい。同様に、ナノバブルを生成するための気体もその種類は限定されるものでない。
【0038】
また、基板として半導体ウエハを例に挙げたが、液晶表示パネルに用いられる矩形状のガラス基板であってもよい。
また、エネルギビームとして電子銃から出力される電子ビームを例に挙げたが、エネルギビームとしてはレーザ発振器から出力されるレーザ光や超音波振動子から発振出力される超音波振動、イオンビーム、或いは紫外線ビームなどであってもよく、要は処理液中に存在するナノバブルにエネルギを与え、そのナノバブルを圧壊させることができるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施の形態を示す処理装置の概略的構成図。
【図2】半導体ウエハの電子ビームが照射される端部の拡大図。
【図3】この発明の他の実施の形態を示す半導体ウエハの電子ビームが照射される端部の拡大図。
【符号の説明】
【0040】
1…処理槽、2…回転テーブル(保持手段)、11…エネルギ照射手段、12…電子銃(エネルギビーム出力部)、17…ナノバブル発生器(処理液供給手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を部分的に洗浄処理する処理装置であって、
上記基板を保持する保持手段と、
この保持手段によって保持された基板の少なくとも洗浄処理される部分にナノバブルが混入された処理液を供給する処理液供給手段と、
上記基板の洗浄処理される部分にエネルギビームを照射して上記処理液に含まれるナノバブルを圧壊させるエネルギ照射手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記保持手段は上記基板を水平に保持して回転させる回転テーブルで、
上記処理液供給手段は上記回転テーブルが収容されこの回転テーブルに保持された上記基板を浸漬させる上記処理液が貯えられる処理槽であって、
上記エネルギ照射手段は、エネルギビームを出力するエネルギビーム出力部と、このエネルギビーム出力部を上記回転テーブルの上方で所定方向に沿って駆動する駆動手段とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
上記保持手段は上記基板を所定の角度で傾斜して保持して回転させる回転テーブルであり、
上記処理液供給手段は傾斜して保持された上記基板の周辺部の下端に位置する部分を浸漬させる処理液が供給される処理槽であり、
上記エネルギ照射手段は、上記処理液に浸漬された上記基板の周辺部に向けてエネルギビームを出力するエネルギビーム出力部を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項4】
基板を部分的に洗浄処理する処理方法であって、
上記基板を保持する工程と、
保持された基板の少なくとも洗浄処理される部分にナノバブルが混入された処理液を供給する工程と、
上記基板の処理される部分にエネルギビームを照射して上記処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項5】
上記基板を回転させるとともにこの基板の少なくとも周辺部に処理液を供給し、基板の周辺部にエネルギビームを照射することを特徴とする請求項4記載の基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−88228(P2009−88228A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255778(P2007−255778)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】