説明

基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法およびリソグラフィ装置

【課題】基板テーブルと、この基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能であるエジェクタ素子との間の、リソグラフィ装置における基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法を提供する。
【解決手段】基板テーブルおよびエジェクタ素子のうちの1つの上に基板をクランプすること、基板が基板テーブルによって支持される除荷状態と、基板がエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、エジェクタ素子を移動すること、基板テーブルとエジェクタ素子との間で基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされる瞬間のエジェクタ素子の基準高さを求めること、求めた基準高さからエジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、基板テーブルとそのエジェクタ素子との間の基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法、およびそのような較正方法を実行するための制御ユニットを有するリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、基板上に、通常は基板のターゲット部分上に所望のパターンを与えるマシンである。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。そのような場合には、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスが、ICの個々の層上に形成するべき回路パターンを生成するのに使用され得る。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つまたはいくつかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は、一般に基板上に与えられた放射感応性材料(レジスト)の層上に結像することによって行われる。一般に、単一の基板は、次々とパターニングされる隣接したターゲット部分の回路網を含むことになる。従来のリソグラフィ装置は、ターゲット部分上に全パターンを一度に露光させることによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、放射ビームによってパターンを所定方向(「スキャン」方向)にスキャンし、同時に、基板をこの方向と平行または逆平行に同期してスキャンすることによって、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。基板上にパターンを刻印することによりパターニングデバイスから基板へパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板テーブルを含み、その上に、基板上へのパターンの実際の転写を開始する前に、基板が正確に装荷されることになる。最初に、テーブルに設けられた穴から上方へ突出する1組の3つの細いエジェクタピン上へ基板を置くことにより、基板がテーブル上に装荷され得る。これらのピンは、垂直なZ方向、すなわち基板および/または一般にXY平面として示されるテーブルの上部面に対して垂直な方向に移動可能であるように構成される。これらのピンは互いに接続され、ピンの上方および下方への移動は共通の駆動装置を用いて行われる。基板がピン上に置かれた後、テーブルに組み込まれた真空デバイス(例えば真空ポンプ)によって基板が引きつけられるまで、ピンが低下する。その後、基板がテーブルによって全面的に支持されてその上にクランプされるまで、さらにピンが低下する。そのとき、基板は、もはやピンによって支持されない。
【0004】
[0004] 基板の装荷におけるオフセットおよび傾斜が、パターンの転写中にオーバーレイに対して悪影響を及ぼすことがある。基板が、基板テーブルを保持するための別個のチャックの間のテーブルに装荷される様子に、かなり深刻な幅があることも判明している。
【0005】
[0005] 基板の装荷プロセスの改善を可能にするために、具体的にはテーブルに対するエジェクタピンの構成の不完全性の影響を補償するために、較正プロセスを実行することができる。この較正プロセスから、基板テーブルによって基板がエジェクタピンからテイクオーバーされることになる最適テイクオーバー高さを求めることが可能であり、その逆も可能である。テーブルに対するピンのあり得る傾斜も、傾斜較正によって補正することができる。
【0006】
[0006] 現在、高さ較正は、基板テーブルの真空がオンになると、ピンの上に基板が支持されたものが階段状に低下するように行われる。基板がテーブルから一定の距離に来たとき、真空によって基板がテーブルの方へ引かれる。これによって真空力が変化し、この変化が検出される。変化した瞬間の真空力が、次いで、その瞬間のエジェクタピンの高さへと低下される。必要な最適テイクオーバー高さを得るために、この高さに対して較正開始高さからの所定のオフセットを減算することができる。
【0007】
[0007] 最適テイクオーバー高さを求めるためのこの現行の較正方法の精度には限界があり、具体的には約0.2mm〜0.3mmまでである。
【0008】
[0008] 現行の傾斜較正は、現在機械的ツールを用いて行われる。この機械的傾斜補正の精度も限定されており、実際上約300μradであると思われる。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 改善された較正方法を提供することが望ましい。
【0010】
[0010] 本発明の一実施形態によれば、リソグラフィ装置、および基板テーブルと、基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、そのようなリソグラフィ装置における基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法が提供され、この方法は、基板テーブルおよびエジェクタ素子のうちの1つの上に基板をクランプすること、基板が基板テーブルによって支持される除荷状態と、基板がエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、エジェクタ素子を移動すること、基板テーブルとエジェクタ素子との間で基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされる瞬間のエジェクタ素子の基準高さを求めること、求めた基準高さからエジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含み、基準高さは、エジェクタ素子がその除荷状態と装荷状態との間を移動するときのエジェクタ素子の速度の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、エジェクタ素子は、その除荷状態において第1の速度で部分的に移動し、またその装荷状態において第2の速度で部分的に移動し、第1の速度と第2の速度との間の不連続点によって基準高さが決まる。
【0011】
[0011] 本発明の別の実施形態では、リソグラフィ装置、および基板テーブルと、基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、そのようなリソグラフィ装置における基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法が提供され、この方法は、基板テーブルおよびエジェクタ素子のうちの1つの上に基板をクランプすること、基板が基板テーブルによって支持される除荷状態と、基板がエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、エジェクタ素子を移動すること、基板テーブルとエジェクタ素子との間で基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされる瞬間のエジェクタ素子の基準高さを求めること、求めた基準高さからエジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含み、基準高さは、エジェクタ素子がその除荷状態と装荷状態との間を移動するとき基板テーブルを所定位置に保つためにショートストロークアクチュエータによって加えられる力の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、エジェクタ素子がその除荷状態で移動する部分の間と、エジェクタ素子がその装荷状態で移動する部分の間とで、ショートストロークアクチュエータによって加えられる力に不連続点が生じ、この不連続点によって基準高さが決まる。
【0012】
[0012] 本発明の別の実施形態によれば、リソグラフィ装置、および基板テーブルと、基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、そのようなリソグラフィ装置における基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法が提供され、この方法は、基板テーブルおよびエジェクタ素子のうちの1つの上に基板をクランプすること、基板が基板テーブルによって支持される除荷状態と、基板がエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、エジェクタ素子を移動すること、基板テーブルとエジェクタ素子との間で基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされる瞬間のエジェクタ素子の基準高さを求めること、求めた基準高さからエジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含み、基準高さは、エジェクタ素子がその除荷状態と装荷状態との間を移動するときに行われる基板変形測定における定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、エジェクタ素子がその除荷状態で移動する部分の間と、エジェクタ素子がその装荷状態で移動する部分の間とで、変形測定値に不連続点が生じ、この不連続点によって基準高さが決まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013] 次に、本発明の諸実施形態が、添付の概略図を参照しながら単に例として説明され、図では同じ参照符号は同じ部品を示す。
【0014】
【図1】[0014]本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置の図である。
【図2a−d】[0015]本発明の一実施形態による、第1のエジェクタピンに関してこのピン用のアクチュエータにおける速度差を用いる傾斜較正の測定を示す概略図である。アクチュエータにおける速度差を用いる傾斜較正の測定を示す概略図である。
【図2e−g】[0015]本発明の一実施形態による、第1のエジェクタピンに関してこのピン用のアクチュエータにおける速度差を用いる傾斜較正の測定を示す概略図である。
【図3a−d】[0016]第2のエジェクタピンに関する図2の傾斜較正の測定を示す概略図である。
【図3e−g】[0016]第2のエジェクタピンに関する図2の傾斜較正の測定を示す概略図である。
【図4a−d】[0017]両方のエジェクタピンの補正された傾斜位置における同時の高さ較正の測定を示す概略図である。
【図4e−f】[0017]両方のエジェクタピンの補正された傾斜位置における同時の高さ較正の測定を示す概略図である。
【図5a−b】[0018]Zアクチュエータの不連続点を用いる較正方法に関する代替実施形態を示す図である。
【図6a−b】[0019]基板の変形の不連続点を用いる較正方法に関する代替実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0020] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射または何らかの他の適当な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、あるパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたパターニングデバイスサポートまたはマスクサポート構造(例えばマスクテーブル)MTとを含む。この装置は、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、あるパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTまたは「基板サポート」も含む。この装置は、基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSをさらに含む。
【0016】
[0021] この照明システムは、放射を導くか、形作るか、あるいは制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気など様々なタイプの光学コンポーネント、または他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組合せを含んでよい。
【0017】
[0022] パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および、例えばパターニングデバイスが真空環境中で保持されるかどうかなど他の条件に左右される形でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気、または他のクランプ技法を用いることができる。パターニングデバイスサポートは、例えばフレームまたはテーブルでよく、必要に応じて固定式または可動式でよい。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスが、例えば投影システムに対して確実に所望位置にあるようにすることができる。本明細書における用語「レチクル」または「マスク」のいかなる使用も、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義と見なされてよい。
【0018】
[0023] 本明細書に使用される用語「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分内にパターンを作成するように、放射ビームにその横断面内にパターンを与えるために使用することができるあらゆるデバイスを指すものと広義に解釈されたい。例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含むと、放射ビームに与えられたパターンが、基板のターゲット部分内の所望のパターンと正確に一致しない可能性があることに留意されたい。一般に、放射ビームに与えられたパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイス内の特定の機能の層に相当することになる。
【0019】
[0024] パターニングデバイスは透過性または反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、マスクタイプとして、バイナリ、レベルゾン型(alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどの他に、様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、入ってくる放射ビームを様々な方向に反射するように個々に傾斜させることができる小さなミラーのマトリクス配置を使用する。傾けられたミラーが、ミラーマトリクスによって反射される放射ビーム内にパターンを与える。
【0020】
[0025] 本明細書に用いられる用語「投影システム」は、屈折システム、反射システム、反射屈折システム、磁気システム、電磁気システム、および静電気光学システムあるいはそれらの任意の組合せを含むあらゆるタイプの投影システムを包含し、使用される露光放射あるいは液浸液の使用または真空の使用など他の要因に適切なものとして、広義に解釈されたい。本明細書における用語「投影レンズ」のいかなる使用も、より一般的な用語「投影システム」と同義と見なされてよい。
【0021】
[0026] ここで記述されるように、装置は透過タイプ(例えば透過性マスクを使用するタイプ)である。あるいは、装置は反射タイプ(例えば上記で言及されたプログラマブルミラーアレイを使用するタイプまたは反射性マスクを使用するタイプ)でよい。
【0022】
[0027] リソグラフィ装置は、1つまたは2つ(デュアルステージ)あるいはそれを上回る数の基板テーブルまたは「基板サポート」(および/または1つまたは複数のマスクテーブルまたは「マスクサポート」)を有するタイプでよい。そのような「マルチステージ」マシンでは、追加のテーブルまたはサポートが並行して使用され得るが、あるいは1つまたは複数のテーブルまたはサポートが露光に使用されている間に、1つまたは複数の他のテーブルまたはサポート上で準備ステップが行われ得る。
【0023】
[0028] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間のスペースを充填するように、基板の少なくとも一部分が比較的高屈折率を有する液体、例えば水によって包まれ得るタイプでもよい。リソグラフィ装置内の他のスペース、例えばパターニングデバイスと投影システムとの間にも液浸液が適用されてよい。投影システムの開口数を増加させるために液浸技術を用いることができる。本明細書に使用される用語「液浸」は、液体に基板などの構造体を沈めなければならないことを意味するのではなく、むしろ、露光中に投影システムと基板の間に液体が配置されることを意味するだけである。
【0024】
[0029] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えばこの放射源がエキシマレーザであるとき、放射源とリソグラフィ装置は別個の実体でよい。そのような例では、放射源がリソグラフィ装置の一部を形成するとは見なされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILまで、例えば適当な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを用いて通される。他の例では、例えば放射源が水銀灯であるとき、放射源はリソグラフィ装置の一体型部品でよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDも一緒に、放射システムと呼ばれてよい。
【0025】
[0030] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含んでよい。一般に、少なくともイルミネータの瞳面内強度分布の外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)は調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなど様々な他のコンポーネントを含んでよい。イルミネータは、放射ビームがその横断面内の所望の均一性および強度分布を有するように調節するのに使用されてよい。
【0026】
[0031] 放射ビームBは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MT上に保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを横切って、基板Wのターゲット部分C上にビームを集中させる投影システムPSを通過する。基板テーブルWTは、第2の位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路内へ個別のターゲット部分Cを位置決めするように正確に移動させることができる。同様に、第1の位置決めデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリからの機械的検索の後、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めするのに使用することができる。一般に、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTの動作は、第1の位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の動作は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合には(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイス(例えばマスクテーブル)MTがショートストロークアクチュエータのみに接続されてよく、あるいは固定されてよい。パターニングデバイス(例えばマスク)MAおよび基板Wは、パターニングデバイスのアライメントマークM1、M2および基板のアライメントマークP1、P2を使用して整列させることができる。図示された基板アライメントマーク(けがき線アライメントマークとして既知である)は専用ターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MA上に複数のダイが与えられる状況では、パターニングデバイスのアライメントマークはダイ間に配置されてよい。
【0027】
[0032] 図示された装置は、以下のモードのうち少なくとも1つで使用され得る。
【0028】
[0033] 1.ステップモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」は基本的に静止状態に保たれ、一方、放射ビームに与えられたパターン全体がターゲット部分C上に一度に投影される(すなわち単一の静止露光)。次いで、別のターゲット部分Cが露光され得るように、基板テーブルWTまたは「基板サポート」がXおよび/またはY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大寸法が、単一の静止露光で結像されたターゲット部分Cの寸法を制限する。
【0029】
[0034] 2.スキャンモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」と基板テーブルWTまたは「基板サポート」が同期してスキャンされ、一方、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される(すなわち単一の動的露光)。パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」に対する基板テーブルWTまたは「基板サポート」の速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性およびイメージ反転特性によって決定され得る。スキャンモードでは、露光フィールドの最大寸法が単一の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限するのに対して、スキャン運動の長さがターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
【0030】
[0035] 3.別のモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」がプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に保たれ、基板テーブルWTまたは「基板サポート」が移動またはスキャンされ、その一方で放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される。このモードでは、一般にパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の各動作後に、またはスキャン中の連続した放射パルスの間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上記で言及されたタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクなしリソグラフィに容易に適用することができる。
【0031】
[0036] 前述の使用モードまたはまったく異なった使用モードの組合せおよび/または変形形態も用いられてよい。
【0032】
[0037] 図2aの拡大図に基板テーブルWTが示されており、その上に基板Wが例えば真空(例えば真空ポンプによってもたらされる)を用いて既にクランプされている。テーブルWTは、前述の第2の位置決めデバイスPWの一部分を形成するチャックの上に支持される。チャックならびにその上にクランプされたテーブルWTおよび基板Wの、Z方向すなわちテーブルWTの面に対する垂直方向の位置は、チャックに対してZ方向に作用する個々に移動可能な3つのショートストロークZアクチュエータを用いて正確に制御することができる。テーブルWTの下に3本のエジェクタピンの組立体が設けられ、ここには第1のエジェクタピン1および第2のエジェクタピン2だけが示されている。3本のピンは、テーブルWTの面にわたって均等に分配され、テーブルWTに対して基板Wを装荷および除荷する目的に役立つ。ピンは、互いに板ばね3で柔軟に接続され、したがって組立体を形成する。ピンの組立体を上方または下方へ移動するように構成されたアクチュエータ4が設けられる。アクチュエータ4内に高さセンサが設けられ、これは、ピンの組立体の高さhの変化を時間tの関数として検出するように構成される。
【0033】
[0038] リソグラフィプロセス中に、新規の基板Wが、各スキャンサイクルの開始時にテーブルWTに装荷されることになる。これは、最初にピンをテーブルWTから突出する位置へ移動し、次いでピンの最上部上に基板Wを置くことにより行われる。次に、基板Wが真空デバイスまたは別の適当なタイプのクランプによって基板テーブルWTに引きつけられるまで、ピンが低下する。ピンがさらに低下すると、基板WがテーブルWT上に完全に支持されてクランプされた状態になり、もはやピンによる支持はない。スキャン動作が実行された後に、テーブルWTから基板Wを取り外すために、ピンが再び上方へ移動される。
【0034】
[0039] この基板装荷プロセスの頑強性および繰返し精度を向上し、それぞれのチャック/位置決めデバイスPWの間の幅を縮小するために、本発明の実施形態は、より正確に基板の装荷を較正することができる新規の方法を提供する。
【0035】
[0040] 本発明による較正方法の一実施形態が図2〜図4に示されており、これらを以下で順を追ってより詳細に論じる。
【0036】
[0041] 図2aは、較正プロセスの一実施形態に関する開始状態を示し、テーブルWT上に基板Wがあらかじめ装荷されてクランプされている。較正プロセスの第1のサブプロシージャとして、アクチュエータ4が、ピン1、2と共に、ある所定の較正開始高さへ移動される(図2b)。次いで、第2のサブプロシージャとして、テーブルWTが、基板Wと共に、第1のピン1の方へ(あらかじめ)傾けられる(図2c)。この傾斜は、チャックのZアクチュエータの適当な駆動を用いて達成される。次いで、ピン1、2は、アクチュエータ4の中央の駆動軸5の適当な上向きの駆動を用いて、共に上方へ移動される。この上方移動中のいくらかの時間の後に、ピン1が基板Wの底面と接触し始める(図2d)。さらにいくらかの時間の後に、ピン2も基板Wと接触し始める(図2e)。最後に、アクチュエータ4のシャフト5によって、ある所定の較正最終高さに達し、その時点でアクチュエータ4の上方駆動の移動は停止する(図2f)。これと共に、板ばね3が、ある程度の柔軟性を与える。ピンが基板Wと接触し始めると、基板WがテーブルWT上にしっかりとクランプされているためにピンのさらなる上方移動が直ちに阻止されるので、この柔軟性が必要とされ、したがって、基板が、このピンのさらなる上方移動に耐えることができる。アクチュエータ4がさらに作動すると、すなわちアクチュエータ4のシャフト5が上方へ移動すると、そのピンの板ばね3の変形をもたらす。
【0037】
[0042] 上方移動の間中、ピン1、2の組立体向けの中央シャフト5の高さhが、時間tの関数として測定される。これは、図2gのグラフに示されている。このグラフには、いくつかの直線状の部分が認められる。各直線状部分の傾斜は、ピン1、2の組立体向けのシャフト5の移動ストロークの、その部分に関するこのシャフトの速度を表す。各直線状部分の速度から、その部分のストローク中にピン1、2のいくつが基板Wと接触しているか求めることができる。この速度は、ピン1、2のいずれも基板Wに接触していないときにはより高く、第1のピン1が基板Wと接触すると直ちに低下する。これらの速度における不連続点によって、ピン1と基板Wとの間の最初の接触の高さh1を見いだすことが可能になる。テーブルWTおよび基板Wがピン1の方へ与えられている(事前)傾斜によって、較正プロセスのこの最初のプロシージャ中に基板Wと最初に接触するのはこのピン1であると決定される。
【0038】
[0043] 図3a〜図3gは、較正プロセスの第2のプロシージャを示し、これは図2a〜図2gで示されたサブプロシージャのシーケンスと同一のものを含むが、今度はテーブルWTが基板Wと共に第2のピン2の方へ(事前に)傾けられた状態である(図3c)。このようにして、速度における不連続点が検出され得て、ピン2と基板Wとの間の最初の接触の高さh2も知ることができる。ここでテーブルWTおよび基板Wがピン2の方へ(あらかじめ)与えられている傾斜によって、ここで基板Wと最初に接触するのはこのピン2であると求められる。
【0039】
[0044] 図4a〜図4fに示される較正プロセスの第3のプロシージャにおいて、このように測定された高さh1、h2が、テーブルWTに対するピン1、2の傾斜誤差を求めて補正するのに用いられる。この補正は、図4cのサブプロシージャに示されており、テーブルWTおよび基板Wは、測定された高さh1およびh2に対応する較正された(事前)傾斜を与えられている。この較正された傾斜がテーブルWT向けに設定された後に、ピン1、2の組立体は、所定の較正開始高さで再び上へ移動し始める(図4b)。較正済の(事前)傾斜のために、この上方移動中のある瞬間に、両方のピン1、2が、このとき同時に基板Wと接触することになる。ピン1、2の組立体は、所定の最終較正高さに達するまで、再び上方へ移動し続ける(図4e)。再び、ピン1、2が装荷されていないストロークの部分と、ピン1、2が装荷されているストロークの部分との間で、速度の不連続点が検出され得る。この不連続点によって、基板Wの重さが、基板テーブルWTからピン1、2の方へほとんどテイクオーバーされる瞬間および/または少なくとも部分的にテイクオーバーされる瞬間の、ピン1、2の基準高さrhを見いだすことが可能になる。ここで、較正プロセスの最終プロシージャとして、見いだされた基準高さrhに対して較正開始高さからのある所定のオフセットを減じることにより、ピン1、2に関する最適テイクオーバー高さを求めることができる。この、ある所定のオフセットは、作業者によって選択されることになり、作業者が、どのような厳密な瞬間に、基板テーブルとピンとの間で基板がテイクオーバーされたと見なそうとするかということ次第である。この所定のオフセットがゼロに選ばれると、作業者は、最適テイクオーバー高さは求めた基準高さと同一であると考える。しかし、作業者は、いかなる理由にせよ、最適テイクオーバー高さを、求めた基準高さよりある程度低く、あるいはある程度高く、自由に選択することができる。例えば真空である基板テーブルのクランプをオンにする瞬間は、例えば最適テイクオーバー高さへの到達に関連づけられてもよく、例えば約0mm〜0.3mmの間にあってよい。これには、基板の装荷プロセス中に、例えば真空力である基板テーブルのクランプデバイス(以下、広義に「クランプ」と称される)が、もはや基板がピンによって保持されなくなる瞬間の直前にオンになる効果がある。これには、結果として、クランプのオンへの切換えが、正確なタイミングで行われ、またピンとテーブルとの間で基板がテイクオーバーされる瞬間に対して調整され得るという利益がある。したがって、クランプが作動しなければならないのは必要な場合のみである。もはや、クランプが早まってオンになる必要がなく(クランプが早まってオンになると、基板が、依然として基板テーブルに対して相対的に大きな高さでピン上に支持されているときに、あまりにも早期に基板テーブルへ引きつけられる危険性があり、また使用されないクランプ力の損失という影響があることになる)、また、オンになるのが遅すぎることもない(オンになるのが遅すぎると、基板が既に完全にテーブル上で支持されているときにクランプが作動していない期間、基板が基板テーブルに対して移動する危険性が生じることになる)。
【0040】
[0045] 図2g、図3gおよび図4fで見ることができるように、グラフには、ピン組立体の上方移動中に2つ以上の不連続点が現われる。追加のピンが基板と接触し始めるたびに、速度が段階的に低下して、グラフに不連続点が現われる。実際、その瞬間にいくつのピンが実際に基板と接触しているか、グラフの各直線状部分での速度から求めることさえ可能である。このことは、例えばテーブルのいくつかの異なる(事前)傾斜に対していくつかの較正を実行することにより、最適傾斜を見いだすのに用いることができる。
【0041】
[0046] 図5a〜図5bに代替実施形態が示されており、ここでは、前述の較正プロセスは、そのチャック向けのショートストロークZアクチュエータの、装荷状態から除荷状態へ、あるいはその逆へピンが移動している間中の追跡に基づくものである。図5aは、基板Wが、ピン1、2によってテーブルWTの上に、一定の高さで完全に支持されている状態を示す。チャックCは、ショートストロークZアクチュエータ10(2つだけ示されている)によって支持されて示される。各ショートストロークZアクチュエータ10は、作動部分10.1およびセンサ部分10.2を含む。チャックおよび基板テーブルを適正な位置に適切に支持して保つために、第1のショートストロークZアクチュエータ10’が力F1を加え、第2のショートストロークZアクチュエータ10”が力F2を加える。図5aの状態では、それぞれのZアクチュエータ10’、10”によって加えられるこれらの力F1、F2は、互いと実質的に等しい。しかし、較正プロセスの最初のプロシージャとしてピン1、2が基板Wと共に実質的に低下すると、図5bに示されるような状態、すなわちテーブルWTによって基板Wの重さがテイクオーバーされ始める状態が生じ得る。次いで、基板Wは、ピン1上に依然として完全に支持されているが、ピン2上では部分的にのみ、テーブルWT上でも部分的にのみ支持される。図5bのこの状態が生じる瞬間は、Zアクチュエータ10”のセンサ部分10.2の送出力データにおける不連続点として、直ちに検出することができる。F1は、少なくとも一時的にF2より小さくなると考えられる。この不連続点は、測定された高さh1を与える。ピン1、2および基板Wをさらに低下させることにより、テーブルWTによって、基板Wがピン2からもテイクオーバーされる瞬間が生じる。これは、Zアクチュエータ10’の送出力データにおける不連続点として検出することができ、測定された高さh2を与える。その上、(3つの)Zアクチュエータ10のそれぞれの間のタイミングの差から、テーブルWまたはピン1、2に対して基板Wがどのように傾けられたか知ることができる。次いで、この傾斜を補正(較正)することができる。較正プロセスの次のプロシージャでは、このように測定された高さh1、h2は、テーブルWTに対するピン1、2の傾斜誤差を求めて補正し、同時にピン1、2の最適のテイクオーバー高さを求めるのに用いられる。
【0042】
[0047] 別の実施形態では、較正は、ピンの装荷状態から除荷状態への移動中、またはその逆の移動中に、基板の非平坦性を測定することに基づく。除荷状態から装荷状態への移動が、図6a〜図6bに一実施例として示されている。図6aは、基板Wが、ピン1、2上に、テーブルWTの上のわずかな間隔で支持されている状態を示す。次にテーブルWTのクランプを作動させることにより、基板がテーブルWT上にクランプされる。この装荷状態では、ピン1、2は、クランプされた基板Wに対して依然として力を与える。これは、図6bに示されるような、基板の検出可能な局所的変形をもたらすことになる。この局所的変形は、(ピン2に関して示されるように)テーブルWTの上にわずかに伸びるピン、および/または(ピン1に関して示されるように)テーブルWTの表面よりいくぶん下に伸びる一方で、これも基板Wに対してクランプ力を作用させるピンによってもたらされ得る。これによって、絶対変形値が測定され得る。有限要素法(FEM)から、特定のピン1、2の、例えば5mNのピン力である特定の力が、そのピン1、2のその位置で、例えば10nmの局所的基板たわみである特定の局所的基板変形をもたらすことになると計算され得る。ピン1、2の板ばね3の剛性も知ることができ、例えばおよそ5×10N/mにある。このようにして、特定のピン1、2の一定の高さのオフセット量を求めることが可能である。個々のピン1、2のオフセットの差から、基板がどのように傾けられたか知ることもできる。次いで、この傾斜を補正することができる。代替形態では、基板Wの変形が始まる瞬間または終了する瞬間を時間における不連続点として検出することも可能である。次いで、この不連続点は、テーブルWTによって基板Wがピン1、2からテイクオーバーされる瞬間、またはその逆のテイクオーバーの瞬間を示し、したがって、そこから最適のテイクオーバー高さおよび/または傾斜を求めることができる。
【0043】
[0048] 様々な図には示されていないが、説明された傾斜および高さの較正は、好ましくはピン1、2に関して実行されるだけでなく、図示されていない第3のピンに関する測定も含むことが注目される。
【0044】
[0049] したがって、この方法で、ピンのすべての組に関して、傾斜および最適テイクオーバー高さの両方を正確に較正することが可能である。本発明の一実施形態による較正方法は、現況技術の較正方法より正確であることが理解されよう。この較正方法が、オーバーレイをより頑健にするので、すなわち基板装荷に関して様々なチャック間でのオーバーレイの幅を縮小するので、これは有益である。また、この較正方法には、基板に対する装荷時間および除荷時間の幅を縮小するという利益がある。本発明の一実施形態による較正方法は、組み込むのに比較的廉価であり、既存のリソグラフィ装置に容易に組み入れることができる。ハードウェア変更は不要であり、較正を行うためのいくつかの追加ソフトウエアを必要とするのみである。
【0045】
[0050] 示された多数の実施形態に加えて、変形形態が可能であることが理解されよう。例えば、様々な実施形態の間で組合せが行われ得る。ピンが、除荷状態から装荷状態へと垂直に上方へ移動している間中に、定量化可能な速度差または他のタイプの不連続点を求める代わりに、ピンの装荷状態から除荷状態への移動中に、あるいは逆の移動中に、そのような不連続点を検出することも可能である。しかし、この較正方法を、ピンの除荷状態から装荷状態への上方移動中に実行すると、変形補正を行う必要がなく、また傾斜を求めるのがより簡単であるため、有益である。その上、この較正方法の間中、基板をテーブル上にしっかりとクランプすると有利であることが注目される。というのは、そうしなければテイクオーバー中に基板が変位する恐れがあるからである。基板テーブルに対して1組のピンの相対位置を較正する代わりに、別のタイプおよび/または別の数のエジェクタ素子に対してこの較正方法を実行することも可能である。所望であれば、傾斜の較正だけを求めること、および/または最適テイクオーバー高さを求めるための較正だけを実行することも可能である。
【0046】
[0051] 別の変形形態では、較正プロセス中に、基板は、最初のプロシージャとして、ピン上に、これらのピンがテーブルの上から一定の較正開始高さで突出する位置で(事前)クランプされ得る。次いで、ピンを、ピン上にクランプされた基板と共に、テーブルよりいくぶん低い、ある所定のピンの較正終了高さの方へ低下させることにより、ピンの組立体の速度パターンにおける不連続点を検出し、最適化された較正の傾斜およびピンに対するテーブルのテイクオーバー高さの方向へこの不連続点を差し引くことも可能である。
【0047】
[0052] その上、それ自体の高さセンサを有する個別のアクチュエータを各ピンに設け、もはや組立体としてピンを互いに柔軟に結合するのをやめることも可能である。この場合、各ピンを別個に作動させて較正することができるので、傾斜アライメントがより容易である。これによって、最適テイクオーバー高さを求める較正と最適傾斜を求める較正とを同時に行うことが可能になる。
【0048】
[0053] 別の実施形態では、例えばレベルセンサまたはピンに対して直接作用するセンサである外部の高さセンサが設けられ、これによって、ピンが、装荷状態から除荷状態へ、またはその逆方向へと移動している間中、基板の高さを直接測定することが可能になる。このように、基板がテーブルに触れるピン高さ、またはピンが基板と接触し始めるピン高さを個々に直接測定することが可能である。別の変形形態では、テーブルのわずかに上へ基板を持ち上げ、次いでXY平面においてチャックをゆっくりと動き回らせることにより、テーブルに対するピンの傾斜を測定することも可能である。次に、基板を装荷して再び傾斜を測定することができる。わずかにテーブルの上へ基板を持ち上げる代わりに、ピンの最上部を直接測定することも可能である。次いで、基板なしでさえ較正を実行することができる。より多くの高さセンサを設けることによって、XY移動が不要にさえなる。この較正方法は、2回のチャック移動を含み、各回で再び測定を実行してもよい。その場合、1つの高さセンサで十分であり得る。
【0049】
[0054] ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に対して本説明に特定の参照がなされてもよいが、本明細書に説明されたリソグラフィ装置が、磁気ドメインメモリ、平面パネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなど向けの集積光学システム、誘導パターンおよび検出パターンの製造など他の用途を有し得ることを理解されたい。熟練工なら、そのような代替用途の文脈では、本明細書における用語「ウェーハ」または「ダイ」のいかなる使用も、それぞれ、より一般的な用語「基板」または「ターゲット部分」と同義なものと見なしてよいことを理解するであろう。本明細書で言及する基板は、露光前または露光後に、例えばトラック(一般に基板にレジストの層を与え、露出したレジストを現像するツール)、メトロロジーツールおよび/またはインスペクションツール内で処理されてよい。適用可能であれば、本開示は、そのようなものおよび他の基板処理ツールに適用されてよい。その上、基板は、例えば多層ICを作成するために複数回処理されてよく、そのため、本明細書に用いられる用語の基板は、既に複数の処理層を含む基板も意味してよい。
【0050】
[0055] 本発明の実施形態の使用に対して、光リソグラフィの文脈において上記で特定の参照がなされていても、本発明は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィおよび状況が許すところで使用されてよく、光リソグラフィに限定されないことが理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内の微細構成が、基板上に作成されるパターンを画定する。パターニングデバイスの微細構成は、基板に与えられたレジストの層へ押しつけられてよく、その後、レジストは、電磁放射、熱、圧力またはそれらの組合せを与えることによって硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化された後、レジスト中にパターンを残してレジストから離される。
【0051】
[0056] 本明細書に使用される用語「放射」および「ビーム」は、イオンビームまたは電子ビームなどの粒子線と同様に紫外線(UV)放射(例えば365、248、193、157または126nmの、またはこれら辺りの波長を有する)および極端紫外線(EUV)放射(例えば5〜20nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射を包含する。
【0052】
[0057] 用語「レンズ」は、文脈上可能であれば、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電気の光学部品を含む様々なタイプの光学部品の任意のものまたはその組合せを意味してよい。
【0053】
[0058] 本発明の特定の実施形態が上記に説明されてきたが、本発明は、説明されたものと違う風に実行され得ることが理解されよう。例えば、本発明は、上記に開示された方法を記述した機械可読命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式、またはそのようなコンピュータプログラムが格納されているデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形式をとってもよい。
【0054】
[0059] 上記の記述は、説明を意図したものであり、限定するものではない。したがって、以下に詳述される特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された本発明に対して変更形態が作成され得ることが当業者には明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板テーブルと、前記基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、リソグラフィ装置における前記基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法であって、
前記基板テーブル上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記エジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、
前記求めた基準高さから前記エジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めること
を含み、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するときの前記エジェクタ素子の速度の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が、前記除荷状態において第1の速度で部分的に移動し、前記装荷状態において第2の速度で部分的に移動し、
前記第1の速度と前記第2の速度との間の不連続点が、前記基準高さを求めるのに用いられる、方法。
【請求項2】
前記除荷状態と前記装荷状態との間で前記エジェクタ素子を移動する前に、(a)前記基板を前記エジェクタ素子上に置くこと、(b)前記基板が前記基板テーブルのクランプによって引きつけられるまで前記エジェクタ素子を低下させること、及び(c)次いで、前記基板が前記基板テーブル上に支持されてクランプされるまで前記エジェクタ素子を低下させることによって、前記基板が前記基板テーブル上に装荷され、
それに続く前記エジェクタ素子の除荷状態から装荷状態に向かう上方への垂直移動の間に、前記定量化可能な速度差が求められる、請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
少なくとも2つの垂直に移動可能なエジェクタ素子が設けられ、各エジェクタ素子に関して前記基準高さが求められる、請求項1に記載の較正方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つのエジェクタ素子に関する前記最適テイクオーバー傾斜を求めるための傾斜較正が、前記少なくとも2つの垂直に移動可能なエジェクタ素子の前記求められた基準高さを相互に比較することにより実行される、請求項3に記載の較正方法。
【請求項5】
基板テーブルと、前記基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、リソグラフィ装置における前記基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法であって、
前記基板テーブルの上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記エジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、及び
前記求めた基準高さから前記エジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含み、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するとき前記基板テーブルを所定位置に保つように構成されたショートストロークアクチュエータによって加えられた力の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が前記除荷状態で移動する段階と、前記エジェクタ素子が前記装荷状態で移動する段階との間で、前記ショートストロークアクチュエータによって加えられる前記力に不連続点が生じ、
前記不連続点が前記基準高さを求めるのに用いられる、方法。
【請求項6】
前記除荷状態と前記装荷状態との間で前記エジェクタ素子を移動する前に、(a)前記基板を前記エジェクタ素子上に置くこと、(b)前記基板が前記基板テーブルのクランプによって引きつけられるまで前記エジェクタ素子を低下させること、及び(c)次いで、前記基板が前記基板テーブル上に支持されてクランプされるまで前記エジェクタ素子を低下させることによって、前記基板が前記基板テーブル上に装荷され、
それに続く前記エジェクタ素子の除荷状態から装荷状態に向かう上方への垂直移動の間に、前記定量化可能な力の差が求められる、請求項5に記載の較正方法。
【請求項7】
少なくとも2つの垂直に移動可能なエジェクタ素子が設けられ、各エジェクタ素子に関して個々に前記基準高さが求められる請求項5に記載の較正方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つのエジェクタ素子に関する前記最適テイクオーバー傾斜を求めるための傾斜較正が、前記それぞれのエジェクタ素子の前記求められた個々の基準高さを相互に比較することにより実行される、請求項7に記載の較正方法。
【請求項9】
基板テーブルと、前記基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、リソグラフィ装置における前記基板の最適テイクオーバー高さを較正するための較正方法であって、
前記基板テーブルの上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記エジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、及び
前記求めた基準高さから前記エジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めることを含み、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するときに行われる基板変形測定における定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が前記除荷状態で移動する段階と、前記エジェクタ素子が前記装荷状態で移動する段階との間に、前記変形測定において不連続点が生じ、
前記不連続点が前記基準高さを求めるのに用いられる、方法。
【請求項10】
前記除荷状態と前記装荷状態との間で前記エジェクタ素子を移動する前に、(a)前記基板を前記エジェクタ素子上に置くこと、(b)前記基板が前記基板テーブルのクランプによって引きつけられるまで前記エジェクタ素子を低下させること、及び(c)次いで、前記基板が前記基板テーブル上に支持されてクランプされるまで前記エジェクタ素子を低下させることによって、前記基板が前記基板テーブル上に装荷され、
それに続く前記エジェクタ素子の前記除荷状態から前記装荷状態に向かう上方への垂直移動の間に、前記定量化可能な変形差が求められる、請求項9に記載の較正方法。
【請求項11】
少なくとも2つの垂直に移動可能なエジェクタ素子が設けられ、各エジェクタ素子に関して個々に前記基準高さが求められる、請求項9に記載の較正方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのエジェクタ素子に関する最適テイクオーバー傾斜を求めるための傾斜較正が、前記それぞれのエジェクタ素子の前記求められた個々の基準高さを相互に比較することにより実行される、請求項11に記載の較正方法。
【請求項13】
放射ビームを調節する照明システムと、
前記放射ビームにその断面内にパターンを与えてパターン化された放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルであって、前記基板テーブルに対して前記基板を低下させて持ち上げる少なくとも1つのエジェクタ素子を備えた基板テーブルと、
前記基板のターゲット部分上に前記パターン化された放射ビームを投影する投影システムと、
前記基板テーブルと、前記基板テーブルに対して前記基板を装荷および除荷するために移動可能である前記少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、前記基板の最適テイクオーバー高さを、
前記基板テーブルの上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記少なくとも1つのエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、
前記求められた基準高さから前記エジェクタ素子についての最適テイクオーバー高さを求めること、によって較正する制御システムとを備え、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するときの前記エジェクタ素子の速度の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が、前記除荷状態において第1の速度で部分的に移動し、前記装荷状態において第2の速度で部分的に移動し、
前記第1の速度と前記第2の速度との間の不連続点が、前記基準高さを求めるのに用いられる、リソグラフィ装置。
【請求項14】
放射ビームを調節する照明システムと、
前記放射ビームにその断面内にパターンを与えてパターン化された放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルであって、前記基板テーブルに対して前記基板を低下させて持ち上げる少なくとも1つのエジェクタ素子を備えた基板テーブと、
前記基板のターゲット部分上に前記パターン化された放射ビームを投影する投影システムと、
基板テーブルと、前記基板テーブルに対して前記基板を装荷および除荷するために移動可能である前記少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、前記基板の最適テイクオーバー高さを、
前記基板テーブルの上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記少なくとも1つのエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、
前記求めた基準高さから前記エジェクタ素子についての前記最適テイクオーバー高さを求めること、によって較正する制御システムとを備え、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するとき前記基板テーブルを所定位置に保つように構成されたショートストロークアクチュエータによって加えられた力の定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が前記除荷状態で移動する段階と、前記エジェクタ素子が前記装荷状態で移動する段階との間で、前記ショートストロークアクチュエータによって加えられる前記力に不連続点が生じ、
前記不連続点が前記基準高さを求めるのに用いられる、リソグラフィ装置。
【請求項15】
放射ビームを調節する照明システムと、
前記放射ビームにその断面内にパターンを与えて、パターン化された放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルであって、前記基板テーブルに対して前記基板を低下させて持ち上げる少なくとも1つのエジェクタ素子を備えた基板テーブルと、
前記基板のターゲット部分上に前記パターン化された放射ビームを投影する投影システムと、
基板テーブルと、前記基板テーブルに対して基板を装荷および除荷するために移動可能である前記少なくとも1つのエジェクタ素子との間の、リソグラフィ装置における前記基板の最適テイクオーバー高さを、
前記基板テーブルの上に前記基板をクランプすること、
前記基板が前記基板テーブルによって支持される除荷状態と、前記基板が前記少なくとも1つのエジェクタ素子によって少なくとも部分的に支持される装荷状態との間で、前記エジェクタ素子を移動すること、
前記エジェクタ素子によって前記基板の重さが少なくとも部分的にテイクオーバーされるときの前記エジェクタ素子の基準高さを求めること、
前記求めた基準高さから前記エジェクタ素子についての前記最適テイクオーバー高さを求めること、によって較正する制御システムとを備え、
前記基準高さが、前記エジェクタ素子が前記除荷状態と前記装荷状態との間を移動するときに行われる基板変形測定における定量化可能な差に基づいて求められ、この移動中に、前記エジェクタ素子が前記除荷状態で移動する段階と、前記エジェクタ素子が前記装荷状態で移動する段階との間に、前記変形測定において不連続点が生じ、
前記不連続点が、前記基準高さを求めるのに用いられる、リソグラフィ装置。

【図1】
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【図2a−d】
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【図2e−g】
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【図3a−d】
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【図3e−g】
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【図4a−d】
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【図4e−f】
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【図5a−b】
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【図6a−b】
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【公開番号】特開2010−109369(P2010−109369A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−244037(P2009−244037)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】