説明

基板の熱処理装置

【課題】半導体ウェハ等の基板の熱処理を均一に行うことができる基板の熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理炉2の下方にロード空間3を設けた熱処理装置である。ボート4の直下に、半導体ウェハWの軸線L1に対して軸対称にノズル63を配置して、ガス供給管61から供給されたプロセスガスを、半導体ウェハWに対して軸対称に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェハ等の板状ワークすなわち基板の表面にCVD処理、酸化処理及び拡散処理等を施すために使用される基板の熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハの表面にCVD処理を施すために、例えば図4に示す縦型の熱処理装置が使用されている。
この熱処理装置は、縦型の熱処理炉100と、この熱処理炉100の下方に設けられたロード空間110と、半導体ウェハWを搬送するための昇降リフト120とを備えている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記熱処理炉100は、加熱ヒータ101及び石英製のプロセスチューブ103を有しており、その底部には、半導体ウェハWをプロセスチューブ103の内部に対して出し入れするための炉口104が設けられている。この炉口104は、開閉扉105によって開放可能に閉塞されている。
前記プロセスチューブ103は、アウターチューブ103aとインナーチューブ103bとを有しており、インナーチューブ103bの内部には、プロセスガスを供給するためのガス供給管106が導入されている。このガス供給管106は、半導体ウェハWの搬入および搬出の邪魔にならないように、インナーチューブ103bの周壁に近接させた状態で設けられている。
【0004】
前記昇降リフト120は、半導体ウェハWを保持するためのボート121を備えており、このボート121に保持された半導体ウェハWを、前記ロード空間110からプロセスチューブ103内に搬入するとともに、プロセスチューブ103内からロード空間110に搬出する。
【0005】
【特許文献1】特開平5−90186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の熱処理装置は、前記ガス供給管106が半導体ウェハWに対して偏った位置に配置されているので、プロセスガスが半導体ウェハWの処理面に対して不均一に供給される。このため、半導体ウェハWの処理面に生成されるCVD膜の厚みがばらつく等、その熱処理が不均一になり易いという問題があった。
【0007】
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、半導体ウェハ等の基板の熱処理を均一に行うことができる基板の熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するためのこの発明の基板の熱処理装置は、底部に設けられた炉口を通してプロセスチューブ内に搬入された基板を熱処理する熱処理炉と、前記炉口を開放可能に閉塞する開閉扉と、前記熱処理炉の下方に設けられたロード空間と、前記基板を、ボートで保持して前記炉口を通してロード空間側からプロセスチューブ内に搬入するとともに、プロセスチューブからロード空間に搬出する昇降リフトと、前記プロセスチューブ内にプロセスガスを供給するガス供給手段とを備える基板の熱処理装置であって、前記ガス供給手段が、前記昇降リフトによって前記ロード空間側から前記炉口を通してプロセスチューブ内に導入されるガス供給管と、前記ボートの直下において、前記ボートに保持された基板の軸線に対して軸対称に配置され、前記ガス供給管から供給されたプロセスガスを上方に吹き出す複数のノズルとを有することを特徴とする。
【0009】
このような構成の基板の熱処理装置によれば、前記ボートの直下のノズルが、前記ボートに保持された基板の軸線に対して軸対称に配置されているので、ガス供給管から供給されたプロセスガスを、ボートに保持された基板に対して軸対称に供給することができる。このため、基板の処理面に対してプロセスガスを均一に供給することができ、ひいては基板を均一に熱処理することができる。
【0010】
前記ガス供給手段は、ガス供給管から供給されるプロセスガスを加熱するヒータを有するのが好ましい。この場合には、前記ヒータによって加熱したプロセスガスを基板に供給することができるので、プロセスガスによって基板が冷却されるのを防止することができる。このため、基板を処理温度まで迅速に加熱することができる。
【0011】
前記ガス供給管は、前記開閉扉を挿通した状態で前記ノズルの対称軸に対して同軸に設けられているのが好ましい。これにより、各ノズルの対称軸部分からプロセスガスを各ノズルに供給することができるので、各ノズルへのプロセスガスの供給量がばらつくのを抑制することができる。このため、基板をさらに均一に熱処理することができる。
【0012】
前記基板の熱処理装置は、前記ガス供給管の上端部に中空のフランジ部を設け、このフランジ部の内部にプロセスガスの導入空間を形成し、この導入空間に連通させた状態で前記フランジ部の上端部に前記複数のノズルを形成しているとともに、前記ヒータを前記導入空間に臨ませて配置しているのが好ましい。この場合には、プロセスガスをヒータによって容易かつ効率的に加熱することができるとともに、複数のノズルを簡単に形成することができる。
【0013】
前記フランジ部の内部には、ヒータの下面に対向させた状態で熱反射板を設けているのが好ましい。この場合には、前記熱反射板によってヒータの熱を上方に反射させることができるので、プロセスガスをより効果的に加熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る基板の熱処理装置によれば、基板の処理面に対してプロセスガスを均一に供給することができるので、基板を均一に熱処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の一実施形態に係る基板の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
この熱処理装置は、筐体1の内部に、半導体ウェハ(基板)Wに熱処理を施す熱処理炉2を設け、その下方にロード空間3を設けているとともに、このロード空間3に隣設させて、半導体ウェハWをロード空間3に搬送するための搬送空間Aを設けている。前記ロード空間3及び搬送空間Aは、必ずしも閉鎖空間である必要はなく、開放空間である場合も含まれる。
【0016】
前記熱処理炉2は、底部が開口した石英製のプロセスチューブ22の周囲に、加熱ヒータ21を配置した縦型のものである。前記プロセスチューブ22は、ドーム状の天井部を有するアウターチューブ22aの内部に、円筒形のインナーチューブ22bを配置したものである。この熱処理炉2の底部には、半導体ウェハWをプロセスチューブ22内に搬入したり、プロセスチューブ22内から搬出したりするための炉口23が設けられている。なお、前記アウターチューブ22aの周壁とインナーチューブ22bの周壁との間の空間は、プロセスガスの排気路として構成されている。
【0017】
前記ロード空間3の内部には、半導体ウェハWを保持するためのボート4が配置されているとともに、このボート4を熱処理炉2のプロセスチューブ22内に導入するための昇降リフト5が配置されている。前記ボート4は、複数枚の半導体ウェハWを互いに隙間を設けた状態で水平に保持するものであり、図示しないフレームを介して前記昇降リフト5に設けられた昇降テーブル51に支持されている。
【0018】
前記昇降テーブル51は、ロード空間3に立設された複数対のボールねじ53に、ボールナット54を介して連結されている。この昇降テーブル51は、回転駆動機構55によって前記ボールねじ53を回転駆動することにより昇降させることができ、これにより、ボート4に保持された半導体ウェハWを、プロセスチューブ22内に搬入したり、プロセスチューブ22内から搬出したりすることができる。
前記昇降テーブル51は、その上昇端において前記熱処理炉2の炉口23を閉塞し、その下降に伴って当該炉口23を開放する開閉扉を兼ねている。
【0019】
前記昇降テーブル51の上方には、ヒートバリア52が設けられている。このヒートバリア52は、石英からなる円板状の反射板52aを、所定隙間を設けて複数段積み重ねたものであり、プロセスチューブ22内の輻射熱を上方へ反射して当該輻射熱がロード空間3へ伝わるのを抑制している。
【0020】
前記昇降リフト5には、プロセスチューブ22内にプロセスガスを供給するガス供給手段6が搭載されている。このガス供給手段6はボート4の直下に設けられており、前記昇降テーブル51及びヒートバリア52を挿通する金属製又は石英製のガス供給管61と、このガス供給管61を通して供給されるプロセスガスを加熱するヒータ62と、このヒータによって加熱されたプロセスガスを上方へ吹き出す複数のノズル63とを有している(図2参照)。
【0021】
前記ガス供給管61のロード空間3内に位置する下端部付近には、当該ガス供給管61が昇降テーブル51とともに昇降できるように、図示しないフレキシブルチューブが接続されている。このガス供給管61の軸線L2と、前記ボート4に保持された半導体ウェハWの軸線L1とは、同一線上に位置している(図1参照)。
【0022】
前記ヒータ62及びノズル63は、ガス供給管61の上端部に接続されたフランジ部65に設けられている。このフランジ部65は中空の円板状のものであり、ガス供給管61の軸線L2に対して同軸に設けられている。前記フランジ部65の内部には、ガス供給管61からプロセスガスを導入するガス導入空間67が形成されている。このガス導入空間67は、天板66に臨ませた状態で形成されており、このガス導入空間67に臨ませた状態で、円板状のヒータ62が配置されている。このヒータ62によって、ガス導入空間67に導入されたプロセスガスを加熱することができる。このため、プロセスガスによって半導体ウェハWが冷却されるのを防止することができ、ひいては半導体ウェハWを処理温度まで迅速に加熱することができる。なお、前記ヒータ62としては、石英ヒータやセラミックヒータ等を用いることができる。
【0023】
前記ヒータ62とフランジ部65の底板69との間には隙間70が設けられており、この隙間70と前記ガス導入空間67とは、ヒータ62によって密封性を維持した状態で区画されている。
前記フランジ部65の内底部には、ヒータ62の下面に対向させた状態で、円板状の熱反射板71が設けられている。この熱反射板71は、例えばモリブデンや白金によって形成されている。これにより、ヒータ62の熱を上方に反射させて、プロセスガスをより効果的に加熱することができる。
【0024】
なお、前記ヒータ62には、ガス供給管61の外周外方に設けられた給電部62aを通して電力が供給される。また、前記ガス供給管61及び給電部62aは、ヒートバリア52の各反射板52aを挿通する石英管68によって包囲されている。
【0025】
各ノズル63は、天板66に形成された貫通孔からなり、それぞれ前記フランジ部65のガス導入空間67に連通されている。各ノズル63はボート4に保持された半導体ウェハWの軸線L1およびガス供給管61の軸線L2に対して、軸対称に配置されている。図3はノズル63の配置形態の一例を示す平面図であり、前記軸線L2と一致する対称軸Qを中心とする複数の同心円に沿って、同心円毎に複数のノズル63が、前記軸線L1に対して軸対称になるように所定間隔毎に配置されている。
このようにガス供給管61の上端部に中空のフランジ部65を形成し、その内部にガス導入空間67及びヒータ62を設けることにより、プロセスガスをヒータ62によって容易かつ効率的に加熱することができるとともに、複数のノズル63を軸対称にて簡単に形成することができる。
【0026】
前記搬送空間Aの内部には、カセットストッカや移載ロボットが配置されており(図示せず)、この移載ロボットによって、扉(図示せず)を通して半導体ウェハWを前記カセットストッカからボート4に移載したり、ボート4から搬送空間Aへ取り出したりすることができる。
【0027】
以上の構成の熱処理装置は、昇降リフト5をロード空間3に下降させ、搬送空間Aからボート4に複数枚の半導体ウェハWを移載した状態で、昇降リフト5を上昇させることにより、炉口23を通してボート4とともに半導体ウェハWをプロセスチューブ22内に導入する。この半導体ウェハWの導入が完了すると同時に、昇降テーブル51によってプ炉口23が閉塞されてプロセスチューブ22内が密閉され、この状態で半導体ウェハWにCVD処理等の熱処理が施される。
【0028】
この熱処理中において、ガス供給手段6によってプロセスガスが半導体ウェハWに継続的に供給される。ここに、前記ボート4の直下のノズル63が、当該ボート4に保持された半導体ウェハWの軸線L1に対して軸対称に配置されているので、ガス供給管61から供給されたプロセスガスを、半導体ウェハWに対して軸対称に供給することができる。このため、半導体ウェハWの処理面に対してプロセスガスを均一に供給することができ、ひいては、熱処理を均一に行うことができる。
【0029】
特に、前記実施の形態においては、各ノズル63の対称軸Qとガス供給管61の軸線L2とが一致しているので、プロセスガスをガス導入空間67の中心部から放射状に拡散させてノズル63に導くことができる。このため、各ノズル62へ供給されるプロセスガスの量がばらつくのを抑制することができる。この結果、半導体ウェハWをより均一に熱処理することができる。
【0030】
半導体ウェハWの熱処理が完了すると、昇降リフト5を駆動してボート4とともに半導体ウェハWをロード空間3に下降させて冷却する。そして、半導体ウェハWが所定温度まで冷却すると、移載ロボットにより当該半導体ウェハWを搬送空間Aに移送する。以上により熱処理の1サイクルが完了する。
【0031】
なお、この発明に係る基板の熱処理装置は、前記実施の形態に限定されるものでない。例えば、被熱処理物としては、前記半導体ウェハWに限らず、各種の板状ワークすなわち基板を挙げることができる。また、ボートとしては、基板を水平状態に支持するものの他、起立させた状態で支持するものであってもよい。さらに、ヒートバリア52については必要により構成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
【図2】ノズル部分の拡大断面図である。
【図3】ノズルの配置形態の一例を示す平面図である。
【図4】従来の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
2 熱処理炉
22 プロセスチューブ
23 炉口
3 ロード空間
4 ボート
5 昇降リフト
51 昇降テーブル(開閉扉)
6 ガス供給手段
62 ヒータ
63 ノズル
65 フランジ部
67 ガス導入空間
71 熱反射板
W 半導体ウェハ(基板)
L1 半導体ウェハ(基板)の軸線
L2 ガス供給管の軸線
Q ノズルの対称軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に設けられた炉口を通してプロセスチューブ内に搬入された基板を熱処理する熱処理炉と、
前記炉口を開放可能に閉塞する開閉扉と、
前記熱処理炉の下方に設けられたロード空間と、
前記基板をボートで保持して前記炉口を通してロード空間側からプロセスチューブ内に搬入するとともに、プロセスチューブからロード空間に搬出する昇降リフトと、
前記プロセスチューブ内にプロセスガスを供給するガス供給手段と
を備える基板の熱処理装置であって、
前記ガス供給手段が、
前記昇降リフトによって前記ロード空間側から前記炉口を通してプロセスチューブ内に導入されるガス供給管と、
前記ボートの直下において、前記ボートに保持された基板の軸線に対して軸対称に配置され、前記ガス供給管から供給されたプロセスガスを上方に吹き出す複数のノズルと
を有することを特徴とする基板の熱処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給手段が、ガス供給管から供給されるプロセスガスを加熱するヒータを有する請求項1記載の基板の熱処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給管が、前記開閉扉を挿通した状態で前記ノズルの対称軸に対して同軸に設けられている請求項1記載の基板の熱処理装置。
【請求項4】
前記ガス供給管の上端部に中空のフランジ部を設け、このフランジ部の内部にプロセスガスの導入空間を形成し、この導入空間に連通させた状態で前記フランジ部の上端部に前記複数のノズルを形成しているとともに、前記ヒータを前記導入空間に臨ませて配置している請求項3記載の基板の熱処理装置。
【請求項5】
前記フランジ部の内部に、ヒータの下面に対向させた状態で熱反射板を設けている請求項4記載の基板の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−93067(P2010−93067A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261867(P2008−261867)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】