説明

基板ホルダーストッカ装置及び基板処理装置並びに該基板ホルダーストッカ装置を用いた基板ホルダー移動方法

【課題】フットプリントを低減できる基板ホルダーストッカ装置を提供する。
【解決手段】基板に真空処理を行うプロセスチャンバ内を搬送される基板ホルダーを収納する基板ホルダーストッカチャンバ18は、複数の基板ホルダーをその板厚方向に並べて保持するとともに往復移動する可動式テーブルAと、可動式テーブルAと並設され、複数の前記基板ホルダーその板厚方向を並べて保持するとともに往復移動する可動式テーブルBと、所定位置に停止した可動式テーブルA及び可動式テーブルBのいずれか一方に保持された基板ホルダーを、可動式テーブルA及び可動式テーブルBのいずれか他方に保持させるテーブル間移送機構31とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に所定の処理を施す真空処理装置において基板ホルダーを保管する基板ホルダーストッカ装置及び基板処理装置並びに該基板ホルダーストッカ装置を用いた基板ホルダー移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インライン型基板処理装置で発生する基板ホルダーの堆積膜対策として、基板ホルダーストッカチャンバによる基板ホルダーの交換システムが知られている(例えば、特許文献1−3参照)。特許文献1又は2に記載の基板ホルダーストッカチャンバは、放射状に配置された搬送用ローラー付の複数の搬送レールと、その搬送レールの放射中心を軸として回転駆動する搬送レール回転機構を備え、各搬送レール上に基板ホルダーが搭載可能になっている。この搬送レールをストッカチャンバに設けられた搬出入口(1ヶ所)に回転搬送することで、ストッカチャンバ内の基板ホルダーをインライン型基板処理装置へ投入及び回収する方式である。
【0003】
特許文献1,2の基板ホルダーストッカチャンバは、基板ホルダーの収納に回転方式を採用しているため、搬送レールの放射状配置が必要である。搬送レールの配置半径は内蔵レール数とレール間隔で決定され、内蔵する搬送レール数が多くなると放射中心より離して配置する必要が有るために配置半径が広がってしまう。又、放射配置の特徴として中心付近の搬送レール間隔は放射角度により外周に向かい拡大するため、外周部に無駄な空間(デッドスペース)が発生する。これらの問題より基板ホルダーストッカチャンバの更なる小型化が困難であった。
【0004】
また、特許文献1,2の基板ホルダーストッカチャンバは、収納基板ホルダーは放射状配置のため、基板ホルダーの配置範囲が大きく全基板ホルダーを網羅する加熱用ヒーターの配置が困難であった。よって天井2ヶ所に加熱用ヒーターを固定し、加熱時には温度分布確保のため、回転機構にて基板ホルダーを回転させる必要があった。従来方式では各基板ホルダー当りの入熱量が少なく、昇温を含めた脱ガス加熱に多くの時間と電力を要していた。
【0005】
特許文献3に記載の基板ホルダーストッカチャンバは、基板ホルダーを並列配置にすることにより、回転方式で基板ホルダーを収納する装置構成に比べてデッドスペースを削減し、さらに装置構成の簡略化と省スペース化を実現している。また、チャンバーサイズの小型化により基板ホルダーの加熱を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005‐120412号公報
【特許文献2】特開2003‐355471号公報
【特許文献3】特許第4377452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された基板ホルダーストッカチャンバは、収納された基板ホルダーを上下動機構によって搬送する方式であるため、基板ホルダーの上げ下げの際に金属間又は金属、樹脂間で接触を繰り返すことになる。このため基板ホルダーの上下動に伴う発塵の抑制が困難であるという問題を有していた。
【0008】
本発明の目的は、フットプリントを低減できる基板ホルダーストッカ装置及び基板処理装置並びに該基板ホルダーストッカ装置を用いた基板ホルダー移動方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、より発塵の少ない基板ホルダーストッカ装置及び基板処理装置並びに該基板ホルダーストッカ装置を用いた基板ホルダー移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板ホルダーストッカ装置は、基板に真空処理を行うプロセスチャンバ内を搬送される基板ホルダーを収納する基板ホルダーストッカ装置であって、プロセスチャンバに連結されたチャンバと、チャンバ内に設けられ、重力方向と交わる第1の方向に複数の基板ホルダーを並べて保持するとともに第1の方向に往復移動可能な第1可動保持部と、チャンバ内で第1可動保持部と並設され、第1の方向に複数の基板ホルダーを並べて保持するとともに第1の方向に往復移動可能な第2可動保持部と、チャンバ内に設けられ、所定位置に停止した第1可動保持部及び第2可動保持部のいずれか一方の所定の保持位置に保持された基板ホルダーを、第1の方向と直交する方向に移動させて、第1可動保持部及び第2可動保持部のいずれか他方に保持させるテーブル間移送部と、を備えることを特徴とする。
或いは、本発明に係る基板処理装置は、このような基板ホルダーストッカ装置と、基板ホルダーに基板を移載する基板移載チャンバと、基板ホルダーに搭載された基板を搬送するとともに真空処理を施すプロセスチャンバと、を備えて構成されることを特徴とする。
或いは、本発明に係る基板ホルダー移動方法は、このような基板ホルダーストッカ装置での基板ホルダー移動方法であって、第1可動保持部及び第2可動保持部の第1の方向への動作と、テーブル間移送部による基板ホルダーの移動を交互に行うことで、第1可動保持部若しくは第2可動保持部における基板ホルダーの保持位置を任意に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば装置構成の簡素化と省スペース化に利する。また、基板ホルダーの配置面積の縮小により効率的な加熱も可能となる。搬送時の基板ホルダー接触対象は全てベアリング(コロ)となるため、磨耗(接触)による発塵を押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置で用いられる基板ホルダーの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る成膜装置と基板ホルダーストッカチャンバの接続図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーストッカチャンバの内部構造図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る可動式テーブルの構造図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板ホルダー搬送機構の構造図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る装置間搬送機構の構造図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーストッカチャンバ内の加熱装置の配置図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの搬送動作(シーケンス)の説明図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーストッカチャンバの他の構成例である。
【図17】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーストッカチャンバの他の構成例である。
【図18】他の実施例に係るテーブル間移送機構(テーブル間移送部)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の基板ホルダーストッカチャンバ及び真空処理装置について説明する。また、基板ホルダーストッカチャンバにおける基板ホルダーの位置を制御する搬送制御シーケンスを説明する。
【0013】
図1は本実施形態のインライン型基板処理装置(真空処理装置)の概略構成を示す平面図である。このような真空処理装置は、例えば、磁気ディスクの製造装置として用いられる。本実施形態の基板処理装置では、複数の真空チャンバ13が無端状(図1では方形状のループ)に接続配置されている。各真空チャンバ13は、専用または兼用の排気系によって排気される真空容器である。各真空チャンバ13の境界部には仕切り弁(ゲートバルブ)14が配置され、各真空チャンバ13が気密状態を保って接続されている。
【0014】
基板12は、基板処理装置内を基板ホルダー8に保持されて搬送される。複数の接続された真空チャンバ13内には移動路が設置されている。この移動路に沿って基板ホルダー8を移動させるマグネット式の搬送機構(後述する)が設けられている。基板ホルダー8への基板の搭載を行う基板供給チャンバ15及び基板ホルダー8からの基板の回収を行う基板排出チャンバ16が、基板処理装置を構成する複数の真空チャンバ13のうち、方形の一辺に配置された二つの真空チャンバ13に接続されている。基板供給チャンバ15と基板排出チャンバ16を併せて基板移載チャンバとする。また、真空処理装置の四隅は、基板ホルダー8の搬送を90度方向転換する、方向転換機構を備えた方向転換チャンバ17になっている。また、方向転換チャンバ17の1つには、基板ホルダーストッカ装置としての基板ホルダーストッカチャンバ18が仕切り弁14を介して接続されている。
【0015】
図2に成膜を行う成膜室内の所定位置に基板12を搬送する基板ホルダーの概略図を示す。図2(a)は基板ホルダーの正面図、図2(b)は基板ホルダーの側面図である。基板ホルダー8は、成膜室間を移動するための機構部を有するスライダー11上に、基板12を支持するための複数の基板支持爪26が設置されたホルダー25が接続されて構成されている。
【0016】
本実施形態における基板ホルダー8は、1枚又は複数枚(図2では2枚)の基板12を、真空チャンバ13内で両面に対して同時に処理することができるように保持するものである。また、スライダー11の機構部として、基板面に平行な方向に沿って延びるマグネット11aが設けられており、後述する搬送機構の磁気と磁気結合することでマグネット11aの延在する方向に沿って基板ホルダー8は搬送される。
【0017】
図3は、基板ホルダーストッカチャンバ18の成膜装置への接続図である。基板ホルダーストッカチャンバ18は、基板ホルダー8の新品や再生・洗浄済み品を収納し、また交換するため基板処理装置から回収される膜の堆積した基板ホルダー8を収容することができるチャンバである。又、真空振動測定センサ(加速度センサ)を備えた基板ホルダーを収納することで、搬送不具合時には成膜装置内へ加速度センサ付き基板ホルダーを搬入して不具合の調査や測定を適宜実施することも可能である。
【0018】
上述のように、基板ホルダーストッカチャンバ18は仕切り弁14を介して方向転換チャンバ17に接続されている。基板ホルダーストッカチャンバ18内に収納された基板ホルダー8を、方向転換チャンバ17を介して成膜装置内に送り出し、若しくは、使用済みの基板ホルダー8を基板ホルダーストッカチャンバ18内に回収することができる。
【0019】
方向転換チャンバ17内部の搬送部17aは回転可能な機構であるため、通常の成膜装置内搬送では、前プロセスが行われる上流側の真空チャンバ13から搬送されてきた基板ホルダー8を、後プロセスが行われる下流側の真空チャンバ13に連結されている移動路に接続できるように回転し搬送を行う。
【0020】
基板ホルダーストッカチャンバ18から基板ホルダー8を搬出する際は、基板ホルダー8を、基板ホルダーストッカチャンバ18から方向転換チャンバ17に搬送した後に、方向転換チャンバ17内で搬送部17aによって方向転換して下流側の真空チャンバ13に搬送する。
又、基板ホルダー8を回収する際には、上流側の真空チャンバ13から搬送されてきた基板ホルダー8を方向転換チャンバ17で方向転換せずに、そのまま基板ホルダーストッカチャンバ18内に回収する。すなわち、生産を止めることなく基板ホルダー8の入替えができる。
【0021】
基板ホルダーストッカチャンバ18の構成を図4〜8に基づいて説明する。図4は、基板ホルダーストッカチャンバ18の概略図であり、図4(a)は側面図(断面図)、図4(b)は上方からみた配置図、図4(c)は正面方向から見た断面図である。図5に基板ホルダー収納する可動式テーブル30を示す。図5(a)は可動式テーブルの側面図、図5(b)は正面図である。
【0022】
基板ホルダーストッカチャンバ18は、真空容器(チャンバ)内に、複数の基板ホルダー8を保持する2つの可動式テーブル30(第1可動保持部及び第2可動保持部)、基板ホルダー8を2つの可動式テーブル30間で搬送するテーブル間移送部としてのテーブル間移送機構31、方向転換チャンバ17と可動式テーブル30との間で基板ホルダー8を搬送する装置間搬送部としての装置間搬送機構20、基板ホルダー8を加熱する加熱部としてのヒーター4(加熱装置32)を有して構成されている。なお、複数の可動式テーブル30、テーブル間移送機構31を併せたものを可動式テーブル機構とする。
【0023】
可動式テーブル30は、基板ホルダー8をその板厚方向(第1の方向)に配列させた状態で保持する部材であり、基板ホルダーストッカチャンバ18内に2つ配設されている。それぞれの可動式テーブル30の上面には基板ホルダー8を各1つ保持できるテーブルレール30a(レール)が並列して設けられている。なお、本実施形態に係る基板ホルダーストッカチャンバ18は、可動式テーブル30を2つ配置した構成とされているが3つ以上であってもよく、また、テーブルレール30aの数も任意に設定することができる。
【0024】
テーブルレール30aは、可動式テーブル30に保持された基板ホルダー8が倒れたり、転落したりしないように支持するフレーム状の部材であり、基板ホルダー8を下側で支持するガイドコロ40と、基板ホルダー8を側方で支える姿勢制御用のガイドコロ41が取り付けられている。なお、ガイド用コロ40,41は、基板ホルダー8を2つの可動式テーブル30,30間で移動させるときにも基板ホルダー8のガイド装置として機能する。
【0025】
可動式テーブル30は、ホルダー配列方向(第1の方向)に変位させるための駆動機構42を有している。駆動機構42は、可動式テーブル30を前後方向に水平往復移動させる装置である。本実施形態の駆動機構42は、駆動源に連結されたボールネジ43と可動式テーブル30の下部に結合されたナット部材を含んで構成されたアクチュエータである。このナット部材は可動式テーブル30の前後方向に延在するボールネジ43に螺合している。
【0026】
ボールネジ43はコントローラの制御下の駆動源(モータ)によって回転駆動される。ボールネジ43の回転によりナット部材は前後に移動し、このナット部材に結合された可動式テーブル30を前後に移動させる。なお、駆動機構42のアクチュエータは、ボールネジ43に限定されず、エアシリンダや油圧シリンダなどのシリンダ機構、後述の搬送機構20と同様に磁気結合を介して駆動させるマグネットアクチュエータなどを用いてもよい。
【0027】
図6は、テーブル間移送機構31(テーブル間移送部)の概略図である。テーブル間移送機構31は、可動式テーブル30の下側の所定位置に配設されており、上下機構61とコロの回転機構62(摩擦搬送機構62)を有している。図4,5には、テーブル間移送機構31は2つ図示されているが、3つ以上のテーブル間移送機構31を備える構造であってもよい。
【0028】
駆動機構42により可動式テーブル30を前後方向に動作させる際には、テーブル間移送機構31(摩擦搬送機構62)は下方に下がった状態で待機している(図6(a)参照)。このとき、可動テーブル30上の基板ホルダー8はテーブルレール30aのガイドコロ40上に保持されている。
【0029】
2つの可動式テーブル30の間で基板ホルダー8を搬送する際には、搬送される基板ホルダー8を収納しているテーブルレール30aを規定の位置(摩擦搬送機構62直上)に停止させた状態で、摩擦搬送機構62を上昇させる(図6(b)参照)。このとき、可動式テーブル30上の基板ホルダー8は摩擦搬送機構62に配置されている搬送コロ63(推進部)により僅かに高い位置まで持上げられ、その後搬送コロ63の回転により摩擦搬送が行われる。すなわち、基板ホルダー8を搬送コロ63で持上げた状態で搬送コロ63を回転させて、2つの可動式テーブル30の間で基板ホルダー8を搬送する。
【0030】
テーブル間移送機構31を上下動させる上下機構61は、エアシリンダと真空内機構をシャフトで接続して構成されているが、モータ駆動でも可能である。又、搬送コロ63の動作はギア接続による同期回転を実施している。可動式テーブル30に配置されたガイドコロ40(図5参照)の間に干渉しないピッチ(位置)で搬送コロ63を配置し、上昇時にはガイドコロ40と接触せずに上昇可能である。
【0031】
本実施形態における搬送コロ63の駆動はモータ回転とギア接続にて実施しており、大気から真空室内への駆動導入は磁気式回転導入機64により行われている。ただし、磁性流体等を用いた回転導入機でも可能である。又、本搬送はコロ摩擦搬送のみでなく、磁気式(磁気ネジ式、リニアモータ式)でも可能である。
【0032】
図7は、装置間搬送部としての装置間搬送機構20の概略構成図である。本実施形態の装置間搬送機構20は磁気を利用するものであり、可動式テーブル30の所定位置と方向転換チャンバ17との間で基板ホルダー8を搬送する機構である。
【0033】
装置間搬送機構20(装置間搬送部)は、搬送マグネット(永久磁石)23と、モータなど回転駆動力を発生する駆動源21と、駆動源21の回転を搬送マグネット23の軸周り回転に変換する回転方向変換機構22とを主要構成要素として有している。搬送マグネット23は、いわゆる磁気ネジであり、基板ホルダーの移動方向に長手方向を配置された軸状部材の表面にN極及びS極の磁極がらせん状に形成されている。搬送マグネット23を軸中心に回転させることでその軸に沿った方向に永久磁石11aを介して磁気的に結合した基板ホルダー8を搬送することができる。
【0034】
本実施形態での装置間搬送機構20は方向転換チャンバ17への搬送ライン上に固定されており可動式テーブル30の移動により基板ホルダー8と搬送マグネット23の距離を近づけ(位置制御)磁気式搬送を実施している。本発明の適用において搬送機構は磁気結合によるものに限られず、リニア搬送駆動方式も利用可能である。
【0035】
なお、テーブルレール30aは、正面方向から見て枠状であるため内側を搬送マグネット23が通ることができる。そのため、図4中の一番右側以外のテーブルレール30aに配置されている基板ホルダー8であっても搬送することができる。すなわち、装置間搬送機構20は、可動式テーブル30に保持されている基板ホルダー8のうち、最も搬送マグネット(永久磁石)23に近い位置にある基板ホルダー8を搬送する機構である。
【0036】
図8に、基板ホルダーストッカチャンバ内の加熱装置の配置を示す。図5(a)は側面図、図5(b)は正面図である。
ヒーター4は、脱ガス等を行うために基板ホルダー8を加熱する発熱体であり、基板ホルダー8の上方に配置されている。この位置は、テーブル間移送機構31により基板ホルダー8を上方に配置したときに接触しない位置である。
【0037】
ヒーター4としては、例えば、輻射熱により基板ホルダー8を加熱可能なランプヒーターなどのほか、気体の加熱を介して基板ホルダー8を加熱するシーズヒータなども用いることができる。加熱するときは、基板ホルダー8を上昇させるホルダー上下機構(不図示)によって、ヒーター4により近づけた状態とすると、より高い加熱効果が得られる。ホルダー上下機構としては可動式テーブル30を上下動するものでもよいし、基板ホルダー8のみを上下動するものでもよい。
【0038】
なお、ヒーター4の代わりに又はこれと併用して、高温ガスを導入することによる基板ホルダー8の加熱も可能である。加熱時のチャンバ圧力状態に関しては、加圧、大気、真空状態での加熱が可能である。
【0039】
以下に、図9〜13に基づいて基板ホルダーストッカチャンバ18での基板ホルダー8の搬送動作について説明する。図9に示した基板ホルダーストッカチャンバ18は、基板ホルダー各15枚収納できる可動式テーブル30を2つ(可動式テーブルA,Bとする)備えている。なお、2つの可動式テーブルA,Bはそれぞれ第1可動保持部,第2可動保持部に相当する。
【0040】
可動式テーブルAにはNo.1〜15のテーブルレール30aを、可動式テーブルBにはNo.16〜30までのテーブルレール30aを備えており、それぞれのテーブルレールA,Bには各一枚の基板ホルダー8を保持可能である。また、駆動機構42は可動式テーブルA,Bを、テーブルレール30aの6倍の長さ移動できる。具体的には、可動式テーブルA,Bは、図9に図示された配置から、前方に5ピッチ(テーブルレール30aの5倍の長さ)、後方に1ピッチ(テーブルレール30aの長さ)の可動範囲をそれぞれ有する。
【0041】
また、図9中には不図示だが、可動式テーブルA,Bの間で基板ホルダー8を搬送するテーブル間移送機構31(31a,31b)を2ヶ所に、方向転換チャンバ17との間で基板ホルダー8を搬送する装置間搬送機構20を1ヶ所に備えている。具体的には、テーブル間移送機構31は、図9中のテーブルAのNo.6とNo.11の下方に設けられており、装置間搬送機構20は、No.1の位置に保持される基板ホルダー8を移載できるように設けられている。
【0042】
図10(a)〜(c)に基づいて、テーブルレールNo1〜5、No16〜20に収納されている基板ホルダー8の成膜装置(方向転換チャンバ17)へ搬出する動作を説明する。具体的には、搬送したい基板ホルダー8が装置間搬送機構20の搬送マグネット23に隣接する位置までテーブルレールを移動させてから搬送マグネット23を回転することで方向転換チャンバ17へ順次搬送する。可動式テーブルA,Bは前方5ピッチの可動範囲を有するため、上記10個の基板ホルダーは可動式テーブルA,Bの前後方向のスライドのみで搬送マグネット23の隣接位置まで移動させることができる。
【0043】
次に、図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(d)に基づいて、テーブルレールNo6〜10、No21〜25に収納されている基板ホルダーの成膜装置へ搬出する動作を説明する。テーブルレールNo6〜10、No21〜25の位置は、可動テーブルA,Bの可動範囲(5ピッチ)内に装置間搬送機構20がない。すなわち、駆動機構42による可動テーブルA,Bの動作のみでは装置間搬送機構20で移送可能な位置に、テーブルレールNo6〜10、No21〜25を移動させることができない。
【0044】
従って、まず、テーブル間移送機構31を使用して、可動式テーブルA,Bに保持された基板ホルダー8の位置を変更する操作を行う。例えば、テーブルレールNo6に保持されている基板ホルダー8の位置を変更する場合、可動式テーブルAのテーブルレールNo6をテーブル間移送機構31(31a)の上部へ移動し、同様に可動式テーブルBのテーブルレールNo20(空レール)もテーブル間移送機構31(31a)の上部に移動させ(図11(a)参照)、テーブル間移送機構31(31a)を上昇させて可動式テーブルA
のテーブルレールNo6より可動式テーブルBの テーブルレールNo20への基板ホルダーを搬送する(図11(b)参照)。そして、駆動機構42によって、テーブルレールNo20に搬送(位置変更)された基板ホルダーを、装置間搬送機構20にて搬送可能な位置まで移動させて成膜装置への搬出することができる(図11(c),(d)参照)。
【0045】
同様に、可動式テーブルB テーブルレールNo25の搬送方法は、テーブル間移送機構31(31a)によって、可動式テーブルA のテーブルレールNo5へ移動させ(図12(a),(b)参照)、可動式テーブルA のテーブルレールNo5を、装置間搬送機構20にて搬送可能な位置まで移動させて成膜装置への搬出することができる(図12(c),(d)参照)。
【0046】
また、図13(a)〜(f)に基づいて、テーブルレールNo11〜15、No26〜30に収納されている基板ホルダーの成膜装置へ搬出する動作を説明する。テーブルレールNo11〜15、No26〜30は、可動テーブルA,Bの可動範囲(5ピッチ)内に装置間搬送機構20がない。すなわち、駆動機構42による可動テーブルA,Bの動作のみでは装置間搬送機構20で移送可能な位置に、テーブルレールNo11〜15、No26〜30を移動させることができない。従って、まず、テーブル間移送機構31a,31bを使用して搬送を複数回繰り返すことで、可動式テーブルA,Bに保持された基板ホルダー8の位置を変更する操作を行う。
【0047】
例えば、テーブルレールNo11の基板ホルダー8の位置を変更する場合、可動式テーブルAのテーブルレールNo11をテーブル間移送機構31bの上部へ移動し、可動式テーブルBのテーブルレールNo25(空レール)もテーブル間移送機構31bの上部に移動させる(図13(a)参照)。テーブル間移送機構31bを上昇させ可動式テーブルAのテーブルレールNo11から可動式テーブルBのテーブルレールNo25へ基板ホルダー8を搬送する(図13(b)参照)。
【0048】
そして、基板ホルダー8が搬送されたテーブルレールNo25をテーブル間移送機構31aの上部へ移動させ、同様に可動式テーブルAのテーブルレールNo5(空レール)もテーブル間移送機構31aの上部に移動させる(図13(c)参照)。その後、テーブル間移送機構31aを上昇させて可動式テーブルBのテーブルレールNo25から可動式テーブルAのテーブルレールNo5へ基板ホルダー8を搬送する(図13(d)参照)。テーブルレールNo5に搬送された基板ホルダー8は、装置間搬送機構20で搬送可能な位置まで移動させることで成膜装置への搬出することができる(図13(e),(f)参照)。
【0049】
図14(a)〜(f)に基づいて、テーブルレールNo30に収納されている基板ホルダーの成膜装置へ搬出する動作を説明する。この場合も、テーブル間移送機構31a,31bを使用して搬送を複数回繰り返すことで、可動式テーブルA,Bに保持された基板ホルダー8の位置を変更する操作を行う。
【0050】
可動式テーブルBのテーブルレールNo30と可動式テーブルAのテーブルレールNo10を、いずれもテーブル間移送機構31b上に移動させ、基板ホルダー8をテーブルレールNo30からテーブルレールNo10に移送する(図14(a),(b)参照)。次に、可動式テーブルAのテーブルレールNo10と可動式テーブルBのテーブルレールNo20を、いずれもテーブル間移送機構31a上に移動させ、基板ホルダー8をテーブルレールNo10からテーブルレールNo20に移送する(図14(c),(d)参照)。
【0051】
そして、可動式テーブルBのテーブルレールNo20に保持された基板ホルダー8は、図13(f)と同様に装置間搬送機構20で搬送可能な位置まで移動させることで成膜装置への搬出することができる(図13(f)参照)。もちろん、可動式テーブルBのテーブルレールNo20に保持された基板ホルダー8を、可動式テーブルBのテーブルレールNo14に移送した後に成膜装置への搬出してもよい(図14(e)(f)参照)。このように、基板ホルダーストッカチャンバ18では、いずれのテーブルレール(No1〜No30)に保持されている基板ホルダー8であっても成膜装置(方向転換チャンバ17)に搬出することができる。
【0052】
そして、基板ホルダーストッカチャンバ18内に成膜装置(方向転換チャンバ17)から搬送されてきた基板ホルダー8を回収する場合にも、任意のテーブルレール(No1〜No30)に回収された基板ホルダー8を保持することができる。この場合、可動式テーブルA,Bの一部のテーブルレールを、基板ホルダー8を収納しない空きレールとして設定することで、可動式テーブルA,Bに並んだ順序での順搬出、順搬入のみでなく、飛び越し搬送を可能とする。ここで、「空きレール」とは、基板ホルダー8を他のレールに収納するために一次的に保持するために用いるテーブルレールをいい、任意のテーブルレールを空きレールとして設定することができる。
【0053】
例えば、図15に示すように、テーブルレールNo1,No11,No20,No30を基板ホルダーが収納されないテーブルレール(空きレール)とし、成膜装置より回収した基板ホルダー8を空きレールのみを経由し収納レール30(最奥)まで搬送することができる。具体的には、成膜装置から回収する基板ホルダー8をテーブルレールNo1に受取り、その後、可動式テーブルBの前後動作とテーブル間移送機構31aにてテーブルレールNo20へ移動させる。次に、可動式テーブルAの前後動作とテーブル間移送機構31aにてテーブルレールNo20から、テーブルレールNo11へ移動させ、同様に、可動式テーブルBの前後動作とテーブル間移送機構31bにてテーブルレール30へ移動する。このようなシーケンスによれば、上記に記載している空きレール以外に基板ホルダー8が収納されている状態においても、基板ホルダー8を回収、任意の位置のテーブルレールに保管することが可能となる。
【0054】
以下に、本実施形態の基板ホルダーストッカチャンバ18の他の構成例について説明する。
上述した基板ホルダーストッカチャンバ18は、可動式テーブルを2つ(A,B)有するが、更に複数の可動式テーブルを有することで、基板ホルダー8の収納数を増やすことができる。例えば、図16(a),(b)に示す基板ホルダーストッカチャンバ28,38のように、可動式テーブルを3つ、または4つ備える構成とすることができる。また、テーブル間移送機構31の設置数を増やすことで、各可動式テーブルの可動範囲を減らすことができるため、更なる省スペースが可能となる。
【0055】
図17に、出し入れチャンバ80を基板ホルダーストッカチャンバ18に取り付けた様子を示す。出し入れチャンバ80は、大気側に開放できるドアバルブDVを備えるとともにゲートバルブ14を介して基板ホルダーストッカチャンバ18に接続されている。基板ホルダーストッカチャンバ18に出し入れチャンバ80を接続することで、基板ホルダーストッカチャンバ18へ基板ホルダー8を大気側から直接搬出入することが可能となる。これにより、基板ホルダーストッカチャンバ18の真空を壊すことなく、成膜装置へ基板ホルダー8の追加や取り出しを実施する事が可能となる。
【0056】
なお、基板ホルダーストッカチャンバ内の基板ホルダー8の保持を平面配置ではなく、垂直配置(高さ方向)とすることで更に省スペース化を図ってもよい。また、基板ホルダー8の加熱するヒーター4を側壁面に設置し、若しくは、ヒーター4が可動できる機構を設けて基板ホルダー8との距離を短縮することで加熱効率を上げることが可能である。
【0057】
図18は、他の実施例に係るテーブル間移送機構51(テーブル間移送部)の概略図である。テーブル間移送機構31に替えてテーブル間移送機構51を用いることができる。テーブル間移送機構51は、可動式テーブル30(可動式テーブルA,B)の所定のテーブルレール30aに設けられており、推進部としての搬送コロ63とそれを駆動する駆動装置65を有している。また、上下機構61やガイドコロ40を用いない構成である。
【0058】
図18はテーブル間移送機構51を備えた1つのテーブルレール30aを示しているが、全てのテーブルレール30aにテーブル間移送機構51を取り付けてもよい。テーブル間移送機構51では、搬送コロ63が常時基板ホルダー8に接しているため、任意のタイミングで基板ホルダー8を他方の可動式テーブル30に向けて送り出すことができる。基板ホルダー8を動かさない状態では、搬送コロ63を固定しておく。
【0059】
テーブル間移送機構51では、推進部として搬送コロ63を用いているが、リニアモータを永久磁石11aに対向する位置に設けてもよい。推進部としてリニアモータを用いると、推進部が基板ホルダー8と非接触になるためパーティクルの低減に一層の効果がある。また、全てのテーブルレール30aにテーブル間移送機構51を取り付けると、同時に複数の基板ホルダー8の移送ができる。
【符号の説明】
【0060】
DV ドアバルブ
4 ヒーター
8 基板ホルダー
10 キャリア
11 スライダー
11a 永久磁石
12 基板
13 真空チャンバ
14 仕切り弁(ゲートバルブ)
15 基板供給チャンバ
16 基板排出チャンバ
17 方向転換チャンバ
18,28,38 基板ホルダーストッカチャンバ(ストッカチャンバ)
20 装置間搬送機構(装置間搬送部)
21 搬送回転動力
22 回転方向転換機(Gear等)
23 搬送マグネット
25 ホルダー
26 基板支持爪
30,A,B 可動式テーブル(第1可動保持部、第2可動保持部)
30a テーブルレール
31,31a,31b,51 テーブル間移送機構(テーブル間移送部)
32 加熱装置
40、41 ガイドコロ
42 駆動機構
43 ボールネジ
61 上下機構
62 コロ駆動機構(摩擦搬送機構)
63 搬送コロ(推進部)
64 磁気式回転導入機
65 駆動装置
80 出し入れチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に真空処理を行うプロセスチャンバ内を搬送される基板ホルダーを収納する基板ホルダーストッカ装置であって、
前記プロセスチャンバに連結されたチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、重力方向と交わる第1の方向に複数の前記基板ホルダーを並べて保持するとともに前記第1の方向に往復移動可能な第1可動保持部と、
前記チャンバ内で前記第1可動保持部と並設され、前記第1の方向に複数の前記基板ホルダーを並べて保持するとともに前記第1の方向に往復移動可能な第2可動保持部と、
前記チャンバ内に設けられ、所定位置に停止した前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部のいずれか一方の所定の保持位置に保持された前記基板ホルダーを、前記第1の方向と直交する方向に移動させて、前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部のいずれか他方に保持させるテーブル間移送部と、を備えることを特徴とする基板ホルダーストッカ装置。
【請求項2】
前記第1可動保持部若しくは前記第2可動保持部の一方に保持されている前記基板ホルダーを前記プロセスチャンバとの間で移送する装置間搬送部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の基板ホルダーストッカ装置。
【請求項3】
前記テーブル間移送部は、複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板ホルダーストッカ装置。
【請求項4】
前記テーブル間移送部は、回転制御可能な推進部を備えるとともに、前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部に対する位置を移動できるように設けられ、
前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部が前記所定位置に停止したときに、前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部のいずれか一方の所定の保持位置に保持された前記基板ホルダーに前記推進部が接触する位置に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板ホルダーストッカ装置。
【請求項5】
前記テーブル間移送部は、回転制御可能な推進部を備え、前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部のそれぞれに前記推進部が設けられ、
前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部が前記所定位置に停止したときに、前記第1の方向と直交する方向に対向する前記第1可動保持部に設けられた前記推進部と前記第2可動保持部に設けられた前記推進部が連動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板ホルダーストッカ装置。
【請求項6】
前記第1可動保持部若しくは前記第2可動保持部に保持されている前記基板ホルダーを加熱する加熱部を、前記チャンバ内に備えることを特徴とする基板ホルダーストッカ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板ホルダーストッカ装置と、前記基板ホルダーに基板を移載する基板移載チャンバと、前記基板ホルダーに搭載された基板を搬送するとともに真空処理を施すプロセスチャンバと、を備えて構成されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板ホルダーストッカ装置での基板ホルダー移動方法であって、
前記第1可動保持部及び前記第2可動保持部の前記第1の方向への動作と、テーブル間移送部による前記基板ホルダーの移動を交互に行うことで、前記第1可動保持部若しくは前記第2可動保持部における前記基板ホルダーの保持位置を任意に移動させることを特徴とする基板ホルダー移動方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−19116(P2012−19116A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156324(P2010−156324)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】