基板処理方法及び基板処理装置
【課題】汚染物質などの再付着を防止するとともに、洗浄処理効果を高めることができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備え、第1、第2の立設壁2b、3は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、この第1の流体制御手段は、この流体制御手段を設けた内壁面側と被処理基板Wの基板面側との間で処理液の流れを変化させるディンプルa1〜anで形成されている。
【解決手段】所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備え、第1、第2の立設壁2b、3は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、この第1の流体制御手段は、この流体制御手段を設けた内壁面側と被処理基板Wの基板面側との間で処理液の流れを変化させるディンプルa1〜anで形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、さらに詳しくは半導体基板や液晶基板などの薄板状基板を1枚ずつ処理槽に浸漬してその表面を処理する基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶基板などの基板は、半導体デバイスなどが形成される前にその基板表面が種々の薬液及び純水によって洗浄処理されている。この洗浄処理には、専用の基板処理装置が使用されている。
【0003】
この種の基板処理装置は、被処理基板、例えば半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」という)を複数枚収容できる処理槽に所定量の処理液(以下、洗浄液ともいう)を貯留しておき、この処理液に一度に複数枚のウェーハを浸漬して洗浄処理するバッチ式の基板処理装置と、ウェーハ1枚ずつを回転テーブルに載置・固定して、この回転テーブルを回転させると同時に上方からウェーハ表面に処理液を吹き付けて洗浄処理する枚葉式の基板処理装置とに大別されている。これらのバッチ式及び枚葉式の基板処理装置は、それぞれの利点及び課題を有している。
【0004】
バッチ式の基板処理装置は、一度に複数枚のウェーハの処理ができるので、スループットを高くできるなどの利点があるが、反面、複数枚のウェーハが同時に同一の処理槽内の処理液に浸漬されるので、一方のウェーハから除去された汚染物資などが他のウェーハへ付着して汚染させてしまうクロスコンタミネーションが発生し易くなり、また、使用する処理液が大量になるとともに、使用済み処理液の処理設備も大型化し環境負荷が増大するなどの課題がある。さらにまた、近年は、ウェーハ径が200mm、300mmからさらに450mmへと大口径化する傾向にあり、この大口径化されたウェーハに対しては、このバッチ式の基板処理装置での処理が難しくなって来ている。
【0005】
一方、枚葉式の基板処理装置は、ウェーハを1枚ずつ処理するので、バッチ式の基板処理装置で発生し易いクロスコンタミネーションの問題がなく、処理液も比較的少なくできるなどの利点があるが、反面、スループットアップに限界があり、また、ウェーハを回転させて処理するので、回転による遠心力によりウェーハ表面のパターンが変形、いわゆるパターン倒れが発生し易くなるなどの課題がある。さらに、処理されるウェーハは、その表面が疎水性になっているものもある。この疎水性ウェーハの表面に処理液の純水が吹き付けられると、ウェーハ表面では純水がウェーハの回転により粒状に移動して均一に拡がらず、純水を弾く箇所ができて、純水により効率よく洗浄される箇所と洗浄されない箇所ができ、結局、その表面処理が不均一になる、いわゆる洗浄ムラが発生することがある。
【0006】
そこで、現行のバッチ式及び枚葉式の基板処理装置が抱える課題解決を試行し、しかも一方でそれぞれの利点を生かすことができるように、処理槽を1枚のウェーハを収容できる大きさに形成して、この処理槽に処理液を貯留して、ウェーハを1枚ずつ浸漬して洗浄する洗浄装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。なお、この洗浄装置も枚葉式洗浄装置と言われている。
【0007】
図19を参照して、下記特許文献1に開示された枚葉式洗浄装置を説明する。なお、図19は下記特許文献1に開示された枚葉式洗浄装置の概略図である。
【0008】
この枚葉式洗浄装置20は、枚葉洗浄用オーバーフロー槽21と、このオーバーフロー槽21へ洗浄液を供給する供給系26とで構成されている。以下、個々の構成をこの枚葉式洗浄装置20を用いたウェーハの洗浄方法で説明する。
【0009】
まず、洗浄液が収容された洗浄室22内に、チャッキングアームでウェーハWが浸漬される。このウェーハWは、洗浄室22内でウェーハWの厚みよりやや幅広の溝を有するウェーハ保持部23に載置して保持される。この状態で、循環ポンプPによって洗浄液が循環されると、洗浄液は三方弁V、ろ過フィルタF、三方弁Vを通り、洗浄室22内の底部に設けられた供給口24の多数の流出口から洗浄室に流入される。洗浄液が充満された洗浄室22内にさらに洗浄液が流入されと、余分となった洗浄液が洗浄室22の上方開口に設けられた堰を乗り越えてオーバーフローし、オーバーフロー部25へ流れ込む。このとき、洗浄室22内に洗浄液の上昇流が生じ、ウェーハWの表裏面に付着した汚染物質が剥離・洗浄される。次いで、剥離された汚染物質などはオーバーフローする洗浄液と共に持ち去られて、三方弁V、循環ポンプPを通り、ろ過フィルタF、三方弁Vを通して、このフィルタFで洗浄液中の汚染物質が除去されて、洗浄液のみが再び洗浄室22に戻される。この洗浄液の循環過程でウェーハWに付着した汚染物質などが除去されて洗浄される。
【特許文献1】特許第2920165号公報(段落〔0009〕〜〔0010〕、図1)
【特許文献2】特許第3851486号公報(段落〔0039〕〜〔0043〕、図6)
【特許文献3】特開平6−104233号公報(段落〔0008〕〜〔0011〕、図1)
【特許文献4】特開平7−86225号公報(段落〔0013〕〜〔0019〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の枚葉式洗浄装置は、洗浄槽に貯留させた洗浄液中にウェーハを1枚ずつ浸漬し、洗浄室の底部に配設した給液口から洗浄液を噴出させて上昇流を生じさせて、この上昇流をウェーハの表裏面に接触させることによって、ウェーハ表裏面に付着した汚染物質などが剥離・除去されるので、従来技術のウェーハを回転させる枚葉式基板処理装置が抱えるパターン倒れを抑制でき、しかも洗浄ムラも解消できるとともに、バッチ式基板処理装置で発生し易いクロスコンタミネーションの問題などが回避できる。
【0011】
この洗浄装置では、ウェーハは、洗浄室の底部から上方へ昇流する上昇流によって、ウェーハを洗浄しているが、この上昇流は、底部の供給口から上方へ流出される流れとなって、この流れは乱れのない概ね層流となっている。しかしながら、このような層流では、渦流或いは乱流で洗浄するような高い洗浄効果が得られない。渦流或いは乱流での洗浄処理が層流による洗浄処理よりも洗浄効果が高いことはバッチ式洗浄装置で知られている(例えば、上記特許文献2参照)。なお、この洗浄装置は、複数の処理液供給手段を異なる位置に配設して、これらの処理液供給手段を切換え手段によって切換えることによって、複数種類の流れを処理槽内で形成するようにしたものとなっている。
【0012】
特に、近年、半導体デバイスがさらに高集積化及び高精細化されてきているので、このような枚葉式の洗浄装置では対応が困難になってきている。また、この枚葉式洗浄装置では、上昇流によって汚染物質が剥離・除去されるが、汚染物資の中には、その比重などの違いにより上方から溢流(オーバーフロー)されずに、一度上方へ移動されても再び洗浄室内へ戻ってウェーハに再付着する恐れがある。なお、下降流によってウェーハを洗浄処理する洗浄装置も提案されている(例えば、上記特許文献3、4参照)。しかしながら、これらの洗浄装置は、いずれもその下降流が層流となっており、より高い洗浄効果は期待できない。
【0013】
本発明者は、このような従来技術の課題を踏まえ、しかもバッチ式の洗浄装置で採用されている渦流或いは乱流による洗浄がより洗浄効果が高くなることから、このような渦流或いは乱流を1枚のウェーハしか収容できない狭い処理槽を設けた枚葉式の洗浄装置に適用できなきないかを検討した。その結果、ウェーハ側と洗浄処理槽壁面側との間に流速差、すなわち処理液(洗浄液)が流れる水流の抵抗差を生じさせれば、ウェーハ側に渦流或いは乱流が発生して、より高い洗浄効果が得られること、しかも、処理槽は1枚のウェーハしか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できることに想到し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0014】
そこで、本発明の目的は、汚染物質などの再付着を防止するとともに、洗浄処理効果を高めることができる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、少ない処理液量で処理ムラのない処理ができる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の基板処理方法は、処理槽内に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面を処理する基板処理方法において、前記処理槽は、前記被処理基板の少なくとも一方の基板面と対向する内壁面に、前記処理液の流れを変化させる流体制御手段を設けて、前記流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で前記処理液の流れを変化させて、該被処理基板の表面を処理することを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理方法において、前記流体制御手段を設けた内壁面側の流速は、前記基板面側の流速より速く又は遅くして、該基板面側に渦流又は乱流を生じさせて基板表面を処理することを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1に記載の基板処理方法において、前記処理液の流れは、前記処理槽内の一方向へ流れる一方向流であることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明は、請求項3に記載の基板処理方法において、前記一方向流は、前記処理槽内で上方から下方への流れる下降流であることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の基板処理装置は、所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備えた基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、前記第1の流体制御手段は、該流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるものであることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1の流体制御手段は、前記内壁面を前記被処理基板面の粗さと異なる粗面で形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1の流体制御手段は、複数個のディンプルで形成されたものであることを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7に記載の基板処理装置において、前記複数個のディンプルは、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を立設方向に所定の間隔をあけて複数列に配列したものであることを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、前記第2の流体制御手段は、前記隙間を一部狭める突起物であることを特徴とする。
【0025】
請求項10の発明は、請求項9に記載の基板処理装置において、前記突起物は、前記隙間を一部狭める突起堰であることを特徴とする。
【0026】
請求項11の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、該第2の流体制御手段は、前記壁面の立設方向と直交する方向にあって前記隙間を一部狭める少なくとも2本の突起堰が所定の間隔をあけて設けられたものであることを特徴とする。
【0027】
請求項12の基板処理装置に係る発明は、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に、請求項5〜8のいずれかに1つに記載の第1の流体制御手段と請求項9〜11のいずれかに記載の第2の制御手段とを設けたものであることを特徴とする。
【0028】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、該処理液供給手段から前記第1、第2の立設壁の隙間に処理液を供給して、該隙間間に収容された被処理基板の表面処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0029】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に、前記第1、第2の立設壁間の底部に設けた隙間に連通し上方へ昇流させる側路を形成して、前記側路の外壁に該側路の上端部から溢液する処理液を収容する回収槽を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1、2の発明によれば、流体制御手段を設けた内壁面側と被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるだけで、被処理基板の表面を効率よく処理することができる。すなわち、被処理基板側と処理槽壁面側との間で処理液の流れを変化させ被処理基板側に渦流或いは乱流を発生させて、より高い処理効果が得られる。また、処理槽は、1枚のウェーハしか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できる。
【0031】
請求項3、4の発明によれば、一方向の流れであると、コンタミネーションの再付着を防止できる、一方、基板に対する流れを制御し易い利点がある。
【0032】
請求項5の発明によれば、処理槽を構成する立設壁の壁面に第1の流体制御手段を設けるだけの簡単な構成で被処理基板の表面を効率よく処理することができる。すなわち、第1の流体制御手段を設けることによって、被処理基板側と処理槽壁面側との間に流れの変化、例えば流速差を生じさせてより高い処理効果が得られる。また、処理液は、第1、第2の立設壁隙間の一方から他方へ抜ける一方方向の流れとなるので、除去された汚染物資が戻って再付着することがなくなる。さらに、処理槽は1枚の被処理基板しか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できる。
【0033】
請求項6の発明によれば、内壁面を粗面加工するだけで簡単に形成できるので、処理槽を安価に作製できる。
【0034】
請求項7、8の発明によれば、第1の流体制御手段を複数個のディンプルで構成することにより、壁面加工によって簡単に形成できる。また、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を垂直方向に所定の間隔をあけて複数列に配列することによって、壁面側と対向する被処理基板側との間で、液流抵抗差が生じて被処理基板側に渦流或いは乱流を発生させることができる。すなわち、この渦流或いは乱流は、ディンプル数が臨界レイノルズ数を超えたときに発生するので、この臨界レイノルズ数を超えた数のディンプルを設けることによって形成できる。
【0035】
請求項9〜11の発明によれば、突起物又は突起堰により、上記と同じ処理効果を達成できる。突起堰は壁面加工によって簡単に形成できる。
【0036】
請求項12の発明によれば、処理液の供給を第1の流体制御手段の突起堰により略均一な流速で安定した量にして、第2の流体制御手段で所定の渦流などを発生させて、被処理基板を効率よく均一に処理することができる。
【0037】
請求項13の発明によれば、第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、この処理液供給手段から第1、第2の立設壁の隙間間に処理液を供給するので、処理液の流れは、上方から下方へ流れる下降流、いわゆるダウンフローとなって、このダウンフローによって、被処理基板の汚染物資などが剥離・除去されて下方から排出される。その結果、汚染物資などが上昇することが無くなり、被処理基板に再付着することがない。
【0038】
請求項14の発明によれば、第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に側路を形成して、この側路の外壁に回収槽を設けたので、ダウンフローの処理液を外槽から効率よく回収することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための基板処理方法及び基板処理装置を例示するものであって、本発明をこの基板処理方法及び基板処理装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0040】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る基板処理装置1の概要を説明する。なお、図1は本発明の実施例1〜3に共通する基板処理装置の概要図である。基板処理装置1は、図1に示すように、1枚のウェーハWが垂直方向に立設された状態で収容されて処理される縦長の処理槽2を備え、この処理槽2には処理液を供給する処理液供給系I及び処理槽2から排出される使用済み処理液を回収又は循環する回収・循環系IIなどが連結されている。処理液供給系Iは、処理液供給源S、三方弁V1、弁V2がそれぞれ所定太さの配管L1、L2で接続されて、配管L2が処理液供給ボックス7に連結されて、処理液供給源Sから処理液供給管L1、L2を介して処理槽2内に薬液、純水などが供給される供給系となっている。処理液供給源Sは、フッ酸、純水或いは過酸化水素などの処理液が貯留された供給源となっている。なお、処理槽2は、ウェーハWを収容して処理する内槽と、この内槽からオーバーフローする処理液を回収する外槽とに区画されているが、以下の説明で内槽と外槽とを区別しない場合以外は、これらの槽を総称して処理槽ともいう。回収・循環系IIは、外装の排出穴D2と三方弁V1との間に、三方弁V3、循環ポンプP、フィルタFを介在し所定太さの配管L3、L4で連結されて、処理槽2から排出される使用済み処理液を処理槽2へ回収・循環する系となっている。また、処理槽2の底部にも排出穴D1が形成されている。処理槽2の各排出穴D1、D2は配管L5を介して図示を省略した各種類の処理液ごとの廃液処理装置に接続されている。
【0041】
この構成により、処理槽2には、処理液供給源Sから処理液供給系Iを介して処理槽2の上方の処理液供給ボックス7に処理液が供給されて、この供給された処理液が処理槽2内を上方から下方への流れ、いわゆる下降流となって、この流れで処理槽2内に収容されたウェーハWの表面処理が行われる。また、使用済みの処理液は、処理槽2の底部から上方へ昇流されて外槽6へ収容される。なお、図1の矢印は処理槽外での処理液の流れを示し、処理槽内ではその流れは点線で示されている。外槽6からの使用済み処理液の一部は、循環ポンプPにより給送されフィルタFでろ過されて、再び処理槽2へ戻される。この処理液の循環が継続されて、処理槽2内に収容されるウェーハWの表面処理が行われる。また、処理液が純水の場合は、排出穴D2から排出された使用済みの純水が三方弁V3を開いて廃液処理装置へ送られる。したがって、処理液が純水のときは、処理槽2には常に新しい純水が供給される。なお、図1の基板処理装置1は、1基の処理槽2を示したが、実際の処理装置では数基の処理槽を連設して、所望の洗浄処理ができるようになっている。例えば、4基の処理槽を用いて洗浄する場合は、第1の処理槽にフッ酸を収容し、第2と第4の処理槽に純水を収容し、第3の処理槽に過酸化水素を収容して、ウェーハをチャッキングアームで第1の処理槽から第4の処理槽まで順番に投入することによって洗浄する。又は、4基それぞれの処理槽においてフッ酸、純水、過酸化水素、純水の順に処理液を供給して処理する。このように複数基の処理槽を併設することによって、所望の洗浄処理が可能になるとともに、処理の生産性、すなわちスループットを上げることができる。
【0042】
以下、図2〜図5を参照して、基板処理装置1を構成する処理槽2、処理液供給ボックス7の構造を説明する。なお、図2は実施例1の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図2Aは処理槽の上面図、図2Bは側面図(図2Bの複数個の点は槽内部のディンプルの配列位置を示している)、図2Cは底面図、図2Dは図2Bを一方の側面からみた側面図である。図3は図2BのIII−III線の断面図である。図4は処理液供給ボックスを示し、図4Aは供給ボックスの上面図、図4Bは図4Aの供給ボックスを長手方向と直交する方向からみた側面図、図4Cは図4Aの供給ボックスを長手方向からみた側面図である。図5は図3に示す外槽のV−V線の断面図である。
【0043】
処理槽2は、図2、図3に示すように、上方に設けた比較的大きな開口2aと、所定の間隔をあけて対向しウェーハWの表面面積より若干大きい面積を有する一対の立設した垂直板2b、2cと、これらの垂直板2b、2cの両側端を連結した幅狭の左右側板2d、2eと、底部を閉塞した底板2fとを有し、内部、すなわち両垂直板2b、2c間の隙間が中間垂直板3で仕切られて、一方の垂直板2bと中間垂直板3との間に、1枚のウェーハWが垂直に立設した状態で収容される内槽R1を設けた扁平の箱型容器からなり、耐薬品性及び耐熱性を有する材料、例えば石英ガラス、PFA、PTFなどで形成されている。以下、この処理槽2の大きさ、すなわち寸法を例示するが、この寸法は、直径300mmのウェーハWが収容されるときの例となっている。勿論、この処理槽は、任意の大きさに変更、例えば直径450mmなどのウェーハに適用できる大きさに変更できるものである。これらの一対の垂直板2b、2c及び中間垂直板3は、厳密な意味での垂直板でなくともよく、所定の角度で立設していればよい。特許請求の範囲では、一方の垂直板2bを第1の立設壁、中間垂直板3を第2の立設壁とし表現している。
【0044】
一方の垂直板2bは、所定の肉厚とウェーハWの幅長より若干長い幅長及びその高さより若干高い高さH1を有している。肉厚は10mm、高さH1は417mmとなっている。中間垂直板3は、垂直板2bと略同じ肉厚及び大きさを有している。中間垂直板3は、表裏面3a、3bを有し、底板2fとの間に隙間5をあけて、両側端が左右側板2d、2eに結合されている。内槽R1は、垂直板2b、中間垂直板3、左右側板2d、2e及び底板2fで囲まれて上方が開口したものとなっている。中間垂直板3の肉厚は10mm、隙間5は20mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板3との間の隙間G1(図6参照)は、15mmとなっており、この隙間にウェーハWが挿入される。この隙間G1を狭くすると、ウェーハWを収容したときに、このウェーハWと垂直板2b及び中間垂直板3間の隙間も狭くなり、使用する処理液量は従来技術のウェーハを回転させて処理する枚葉式基板処理装置の使用量と略同じか或いは若干多くなる程度で処理できる。中間垂直板3の高さは、隙間5を設けた分、垂直板2bの高さH1より短くなっている。垂直板2b及び中間垂直板3の上方端に、内槽R1内に処理液を供給する処理液供給ボックス7が装着される装着溝4が設けられている。この装着溝4は、処理液供給ボックス7が嵌り込む大きさの隙間をあけて対向する一対の側板部41、42と、両側板部の底部を連結する底板部43と、上方に開口40を有し、底板部43に内槽R1に連通する収容穴44が形成されている。この収容穴44は、ウェーハWが挿入される挿入穴及び処理液が内槽R1へ供給される供給穴となっている。
【0045】
処理液供給ボックス7は、図4に示すように、装着溝4に嵌め込まれる大きさで、処理槽2の長手方向の長さと略同じ長さ及び内部に空洞70を設けた略四角形状の筒状体からなり、樹脂成型体で構成されている。この処理液供給ボックス7は、上下板7a、7bと、左右側板7c、7dと、長手方向の両端板7e、7fとを有し、長手方向と直交する方向で切断した面が略四角形状をなし、内部が空洞70になっている。両端板7e、7fは、いずれか一方の板面、例えば一方の板7eに空洞70に連通した開口9aが形成されて、この開口9aが配管L2に連結されるようになっている。他の板7fの開口9bは閉鎖されている。下板7bには、図4Aに示すように、長手方向に所定のピッチ(10mm)で直線状1列に配列された複数個のノズル穴71〜71n列を長手方向と直交する方向に所定の間隔(4.0mm)をあけて2列に配列されている。他の列はノズル穴72〜72n列となっている。ノズル穴は、数mm程度の大きさとなっている。左右側板7c、7d面には、複数本の把持棒8が突出されている。この把持棒8を利用して、装着溝4に嵌め込まれる。
【0046】
図3に戻って、他方の垂直板2cは、その高さが垂直板2bの高さH1と略同じ高さ有している。この垂直板2cと中間垂直板3との間に空室R2が設けられている。この空室R2は中間垂直板3及び垂直板2cと左右側板2d、2eとで囲まれて形成されている。この空室R2を構成する中間垂直板3及び垂直板2c間の隙間は30mmである。この空室R2は底部で隙間5に連通しており、内槽R1からの処理液が上昇流となって流れる流通路(側路)となっている。尚、空室R2の槽の厚み(中間垂直板3と垂直板2c間の隙間)と隙間5の高さの比率はG1を1とすると、G1:隙間5の高さ:空室R2の槽の厚み=1:1〜3:1〜5になるように設定されている。この垂直板2cの外壁面の上方には、図3、図5に示すように、所定大きさの外槽6が設けられている。この外槽6は、上方に開口6a、外板2h、内板2c'、底板2g及びこの底板2gに排出穴D2及び高さH3を有する所定大きさの箱型容器からなり、垂直板2cの底部から高さH2の位置に設けられている。H2とH3の合計は、略H1となっている。また、内板2c'と外板2hの隙間は35mmとなっている。また、垂直板2cの頂部には、処理液がオーバーフローする複数個の三角溝6a'が形成されている。この処理槽2は、内部に内槽R1及び空室R2が設けられ、一方の外壁面に外槽6が付設されることによって、処理液は、以下のルートで処理槽内を流れる。まず、上方の装着溝4に処理液供給ボックス7が装着されて、この供給管7のノズル穴71〜71n、72〜72nから処理液が内槽R1へ供給される。供給された処理液は、この内槽R1内を下降流となって下降する。下降した処理液は、隙間5を通過して、空室R2内へ流入し、この空室R2内では上方へ押上げられる。押上げられた処理液は、空室R2の上方でオーバーフローして外槽6へ収容される。したがって、この処理槽2では、処理液が上方から下方へ流れる、いわゆるダウンフロー方式の流れとなっている。このダウンフローによって、ウェーハの汚染物資などが剥離・除去されて下方から排出される。その結果、汚染物資などが上昇することが無くなり、ウェーハに再付着することがない。なお、本発明は、このダウンフロー方式に限定されるものでなく、用途によっては逆のアップフロー方式にしてもよい。
【0047】
この処理槽2には、底板2fに、内槽R1内の処理液を外部へ排出する1乃至複数個の排出穴D1が形成されている。これらの排出穴D1は、配管L5を介して不図示の廃液処理装置に接続される。外槽6の底部2gには、排出穴D2が形成されている。
【0048】
垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面には、図6に示すように、複数個のディンプルa1〜am、b1〜bmが形成されている。これらのディンプルは、対向壁面に広がってそれぞれ所定の規則性を持って配列されている。なお、図6は図3のVI部分の拡大断面図、図7は図2B、図3の処理槽壁面に設けられたディンプルの配列を示し、図7Aは一方の垂直板に設けられたディンプル配列群、図7Bは中間垂直板に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。この規則性は、垂直板2b壁面では、図7Aに示すように、所定のピッチ(3〜50mm)で直線状1列に配列された複数のディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜AM(am、am2〜amn)が垂直方向に所定の隙間(3〜50mm)をあけて水平方向に複数列A1〜AM配設されたディンプル列群Aとなっている。このディンプル列群Aの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さh1(図8参照)が例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0049】
中間垂直板3の対向壁面にも、図7Bに示すように、同様のディンプル列B1(b1、b12〜b1n)、B2(b2、b22〜b2n)〜BM(bm、bm2〜bmn)からなるディンプル列群Bが設けられている。このディンプル列群Bの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。この規則性配列は、これらの配列に限定されるものでなく、任意のピッチ及び配列にし得るものである。例えば、ディンプル間のピッチは等ピッチでなくともよく、また、各対向壁面のディンプル列群A、Bも同一の配列でなくともよい。さらに、ディンプルの直径及び深さ並びに形状も変更し得るものである。なお、図7A、7Bの個々のディンプルを接続した線は説明用の仮想線であって、実際にはこのような線は設けられていない。なお、特許請求の範囲では、
複数個のディンプルa1〜am、b1〜bmを纏めて第1の流体制御手段と表現している。
【0050】
図8を参照して、ディンプルの作用を説明する。なお、図8は図3のVIII部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【0051】
処理液が上方から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、垂直板2b面の個々のディンプルai〜ai+2部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、垂直板2b面側の近傍を流れる処理液の流速SP1がこの渦流をすべるようにして流れるのでSP1は速くなる。この速くなる流速現象は、レイノルズ数が小さいときには発生せず、所定の数、すなわち臨界レイノルズ数を超えたときに発生する。垂直板2b面に設けた複数個のディンプルによって、この臨界レイノルズ数を超えたものとなっている。
【0052】
垂直板2b面側の近傍を流れる処理液の流速SP1が速くなると、ウェーハW表面近傍に流れる流速SP2との間で流速差が発生する。換言すると、垂直板2b面側近傍の流速が速くなった分流速抵抗が小さくなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生する。この抵抗差が発生すると、ウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面と接触してウェーハ表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。なお、ディンプルを設けないと、壁面とウェーハ表面との間に流れは層流となって、上記のような渦流が発生せず、洗浄効果も劣ったものとなる。
【0053】
また、中間垂直板3面側でも、個々のディンプルbi〜bi+2部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、中間垂直板3面側の近傍を流れる処理液の流速も速くなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生し、抵抗差によりウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面に接触してウェーハ表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。図8に示したディンプル数は、数個であるが、ディンプルは対向壁面に広がって、図7に示すように、垂直板2b面にはディンプル列群A、すなわち、ディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜AM(am、am2〜amn)が配設されているので、個々のディンプルによって発生した渦流がディンプル列群で集合されて乱流となり、この乱流がウェーハWの表面に接触することなる。同様に、中間垂直板3の壁面3aとウェーハWの表面との間でも、ディンプル列群Bによって乱流が発生して、この乱流がウェーハWの表面に接触することなる。
【0054】
以上説明したように、実施例1に係る基板処理装置1は、処理槽2の対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群が設けられているので、処理液が内槽R1に供給されると、各板2b、3の各板面側と対向するウェーハW面側との間で液流抵抗の差が生じて、各板面側近傍を流れる処理液の流速が速く、ウェーハW面側近傍の流速が遅くなる。その結果、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。この実施例1の基板処理装置1は、処理槽2の対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群を設けたが、いずれか一方の壁面に設けて、被処理基板の片面だけを洗浄するようにしてもよい。
【実施例2】
【0055】
次に、図1、図9〜図11を参照して、本発明の実施例2に係る基板処理装置1Aを説明する。なお、図9は実施例2の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図9Aは処理槽の上面図、図9Bは側面図(図9Bのd1〜d4は処理槽内部の突起堰の配列位置を示している)、図9Cは底面図、図9Dは図9Bを一方の側面からみた側面図である。図10は図9BのX−X線の断面図である。図11は図10のXI部分の拡大断面図である。
【0056】
実施例2に係る基板処理装置1Aは、図1に示した実施例1に係る基板処理装置1と略同じ構成を備え、この基板処理装置1Aの処理槽2A内の一部構成、すなわち、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面にディンプルを設けずに、複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4を設けた構成が異なっている。そこで、共通する構成には同じ符号を付してその説明を援用することとし、異なる構成について詳述する。
【0057】
実施例2に係る基板処理装置1Aは、処理槽2Aを備えている。この処理槽2Aは、図9、図10に示すように、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、それぞれ水平方向に所定の間隔をあけて複数本、例えば4本の突起堰c1〜c4及びd1〜d4が設けられている。複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4は同じ構造となっているので、一方の垂直板2bに設けた突起堰c1〜c4を説明する。
【0058】
垂直板2bの壁面には、所定の間隔H4をあけて4本の突起堰c1〜c4が水平方向に配設されている。H4は100mmとなっている。これらの突起堰c1〜c4は、同じ形状となっている。そのうちの1本の突起堰c1は、図11に示すように、垂直板2b面から湾曲状に隆起した畝状の突起からなり頂部の高さh2となっている。すなわち、湾曲状の隆起は、直径25mmの円を描き、その一部が垂直板2b面から隆起し、頂部高さh2が2.5mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板3のそれぞれの壁面に突起堰を設けるので、両突起堰間の隙間G2は隙間G1より狭められて10mm(なお、G1は15mm)となっている。なお、特許請求の範囲では、突起堰c1〜c4及びd1〜d4を纏めて第2の流体制御手段と表現している。
【0059】
次に、この突起堰の作用を説明する。内槽R1内に処理液が処理液供給ボックス7から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、処理液は、最初の突起堰c1に衝突して、その一部の処理液が一時堰き止められる。突起堰c1は図9B、図10に示すように、垂直板壁2bの幅方向、すなわち水平方向の一端から他端まで連続した堰となっているので、処理液はこの幅方向で堰き止められる。この堰き止めにより、処理液供給ボックス7からの距離、すなわち処理液供給ボックス7のノズルからの距離の長短に関係なく、処理液は略均一化されて隙間G2間を通過する。この隙間G2は、隙間G1より狭くなっているので、垂直板壁2b面とウェーハW面との間も狭められて隘路となり、処理液はこの隘路を通過することになる。すなわち、堰き止められた処理液は、突起堰c1の頂部とウェーハW間の狭い隙間の隘路を通過して、下流の突起堰c2へ向けて流れ込む。この流れ込んだ処理液は、隣接する突起堰c1、c2間に一時蓄えられた格好で次の突起堰c2で再びこの突起堰c2で形成される隘路を通過し突起堰c2、c3間に一時蓄えられた格好で、以後、同じようにして、各突起堰を通過する。この処理液の流れは、隘路を通過するときは流速が速められ、通過した後の突起堰間においては、この流速が減速されると同時に流れが複雑に変化し、結果として乱流などが発生して、ウェーハW表面の不要物を剥離・除去する。なお、突起堰間には、処理液は滞留するのでなく、随時流れ去るものである。
【0060】
この実施例2に係る基板処理装置1Aは、処理槽2Aの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、それぞれ突起堰を設けるだけで、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。なお、突起堰c1〜c4及びd1〜d4は、垂直板2b及び中間垂直板3の対向した箇所に設けたが、互いに位置をずらして千鳥状に設けてもよい。
【実施例3】
【0061】
次に、図1、図12〜図16を参照して、本発明の実施例3に係る基板処理装置1Bを説明する。なお、図12は実施例3の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図12Aは処理槽の上面図、図12Bは側面図(図12Bの複数個の点例えばb1は処理槽内部のディンプル及びd1〜d4は槽内部の突起堰の配列位置を示している)、図12Cは底面図、図12Dは図12Bを一方の側面からみた側面図である。図13は図12BのXIII−XIII線の断面図である。図14は図13のXIV部分の拡大断面図、図15は突起堰間のディンプルの配列を示し、図15Aは一方の垂直壁に設けられたディンプル配列群、図15Bは中間垂直板壁に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【0062】
実施例3に係る基板処理装置1Bは、処理槽2Bを備え、この処理槽2Bは、上記実施例1、2の処理槽2、2Aを組み合わせた構成となっている。すなわち、この処理槽2Bは、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4を設けるとともに各突起堰c1〜c4、d1〜d4間に複数個のディンプルを配列した構成となっている。
【0063】
処理槽2Bは、図12、図13に示すように、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、それぞれ水平方向に所定の間隔をあけて複数本、例えば4本の突起堰c1〜c4及びd1〜d4が設けられて、各突起堰c1〜c4及びd1〜d4の間にディンプル列群A、Bが配列されている。複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4及びディンプル列群A、Bは同じ構造となっているので、一方の垂直板壁2bに設けた突起堰c1〜c4及びディンプル列群Aを説明する。
【0064】
垂直板2bの壁面には、所定の間隔H4をあけて4本の突起堰c1〜c4が水平方向に配設されている。H4は100mmとなっている。これらの突起堰c1〜c4は、同じ形状となっている。そのうちの1本の突起堰c1は、図14に示すように、垂直板2b面から湾曲状に隆起した畝状の突起からなり頂部の高さh2となっている。すなわち、湾曲状の隆起は、直径25mmの円を描き、その一部が垂直板2b面から隆起し、頂部高さh2が2.5mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板のそれぞれの壁面に突起堰を設けるので、両突起堰間の隙間G2は10mm(なお、G1は15mm)となっている。
【0065】
また、各突起堰c1〜c4間には、ディンプル列群Aが設けられている。ディンプル列群Aは、図15Aに示すように、所定のピッチ(3〜50mm)で直線状1列に配列された複数のディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜A4(a4、a42〜a4n)が垂直方向に所定の隙間(3〜50mm)をあけて水平方向に複数列A1〜A4配設されたたものとなっている。このディンプル列群Aの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0066】
中間垂直板3の対向壁面にも、図15Bに示すように、同様のディンプル列B1(b1、b12〜b1n)、B2(b2、b22〜b2n)〜B4(b4、b42〜b4n)からなるディンプル列群Bが設けられている。このディンプル列群Bの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0067】
図12〜図16を参照して、突起堰及びディンプルの作用を説明する。なお、図16は図13のXVI部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【0068】
内槽R1内に処理液が処理液供給ボックス7から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、処理液は、最初の突起堰c1に衝突して、その一部の処理液が一時堰き止められる。突起堰c1は図12Bに示すように、垂直板壁2bの幅方向、すなわち水平方向の一端から他端まで連続した堰となっているので、処理液はこの幅方向で堰き止められる。この堰き止めにより、処理液供給ボックス7からの距離、すなわち処理液供給ボックス7のノズルからの距離の長短に関係なく略均一な流速となる。
【0069】
堰き止められた処理液は、突起堰c1の頂部とウェーハW間の狭い隙間を通過して、下流の突起堰c2へ向けて流れ込む。この流れ込んだ処理液は、隣接する突起堰c1、c2間に蓄えられる。図16の符号Brで示した部分は、蓄えられた処理液を模式して示してある。なお、この蓄えられた処理液Brは滞留するのでなく、随時流れ去るものであって、イメージ的に図示したものである。この処理液Brは、図12B、図13に示す隣接する突起堰c1、c2間に均一に蓄えられて、略一定の流速でウェーハWの全面に略均等に処理液が安定した状態で供給される。また、この処理液Brは、ディンプル列群Aに当り、垂直板壁2b面の個々のディンプルa1〜a4部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、垂直板壁2b面側の近傍を流れる処理液の流速が速くなる。垂直板壁2b面側の近傍を流れる処理液の流速が速くなると、ウェーハW表面近傍に流れる流速との間で流速差が発生する。換言すると、垂直板壁2b面側近傍の流速が速くなった分流速抵抗が小さくなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生する。この抵抗差が発生すると、ウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面と接触してウェーハW表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。なお、このディンプル列群の作用は、実施例1のディンプル列群と同じである。以下、下流の突起堰c2〜c3、c3〜c4間で、安定した流速のもとで渦流が発生し、この渦流によってウェーハWの表面が洗浄される。この洗浄は、中間垂直板壁3とウェーハWとの間でも行われている。
【0070】
以上説明したように、実施例3に係る基板処理装置1Bは、処理槽2Bの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、それぞれ突起堰及びディンプル列群が設けられているので、処理液が内槽R1に供給されると、各垂直板2b、3の各壁面側と対向するウェーハW面側との間に、安定した処理液が供給されて、この供給された処理液に液流抵抗の差が生じて、各壁面側近傍を流れる処理液の流速が速く、ウェーハW面側近傍の流速が遅くなる。その結果、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。この実施例3の基板処理装置1Bは、処理槽2Bの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群を設けたが、いずれか一方の壁面に設けて、ウェーハの一面だけを洗浄するようにしてもよい。
【0071】
この実施例1〜3の基板処理装置1、1A、1Bを用い、以下の条件で処理槽内の比抵抗回復時間を測定した。処理液の濃度は、純水100に対して、H2SO4を1にしたものである。その流量は、3L/min、5L/min、7L/min、測定機器は導電率計を使用し、この導電率計での測定値に基づいて計算に比抵抗値を求めた。その結果、比抵抗回復のバラツキ具合、立ち上り時間を考慮して比較した結果、実施例3が一番良い結果が得られ、続いて、実施例1、実施例2の順によい結果が得られた。
【0072】
次に、渦流或いは乱流を発生させるための他の流体制御手段を図17及び図18に示す。図17Aは流体制御手段の変形例を示す図であり、図17Bは流体制御手段の他の変形例を示す図であり、図17Cは流体制御手段の他の変形例を示す図である。図18は流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【0073】
実施例1〜3では、ディンプル、突起堰およびこれらを組み合わせたもので、渦流或いは乱流を発生させたが、このようなディンプル、突起堰でなく他の手段を形成してもよい。
この他の手段は、例えば、ディンプルe、凸起f、凹み溝g、凸起条h及び粗面iを組み合わせたもの(図17A参照)、凹み溝g及び凸起条hを組み合せたもの(図17B参照)、さらに、凸起条h、粗面i及び三角溝jを組み合わせたもの(図17C参照)にしてもよい。また、図18に示すように、突起堰であっても、ウェーハWと対向する箇所は細く、ウェーハWと外れる箇所を太くした突起堰kのようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の実施例1〜3に共通する基板処理装置の概要図である。
【図2】図2は図1の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図2Aは処理槽の上面図、図2Bは側面図、図2Cは底面図、図2Dは図2Bを一方の側面からみた側面図である。
【図3】図3は図2BのIII―III線の断面図である。
【図4】図4は処理液供給ボックスを示し、図4Aは供給ボックスの上面図、図4Bは図4Aの供給ボックスを長手方向と直交する方向からみた側面図、図4Cは図4Aの供給ボックスを長手方向からみた側面図である。
【図5】図5は図2の処理槽の一側面図である。
【図6】図6は図3のVI部分の拡大断面図である。
【図7】図7は図2B、図3の処理槽壁面に設けるディンプルの配列を示し、図7Aは一方の垂直板に設けられたディンプル配列群、図7Bは中間垂直板に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【図8】図8は図3のVIII部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【図9】図9は実施例2の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図9Aは処理槽の上面図、図9Bは側面図、図9Cは底面図、図9Dは図9Bを一方の側面からみた側面図である。
【図10】図10は図9BのX−X線の断面図である。
【図11】図11は図10のXI部分の拡大断面図である。
【図12】図12は実施例3の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図12Aは処理槽の上面図、図12Bは側面図、図12Cは底面図、図12Dは図12Bを一方の側面からみた側面図である。
【図13】図13は図12BのXIII―XIII線の断面図である。
【図14】図14は図13のXIV部分の拡大断面図である。
【図15】図15は突起堰間のディンプルの配列を示し、図15Aは一方の垂直壁に設けられたディンプル配列群、図15Bは中間垂直板壁に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【図16】図16は図13のXVI部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【図17】図17Aは流体制御手段の変形例を示す図であり、図17Bは流体制御手段の他の変形例を示す図であり、図17Cは流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【図18】図18は流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【図19】図19は従来技術の枚葉式洗浄装置の概略図である。
【符号の説明】
【0075】
1、1A、1B 基板処理装置
2、2A、2B 処理槽
2a 開口
2b 垂直板(第1の立設壁)
2c 垂直板
3 中間垂直板(第2の立設壁)
4 装着溝
5 隙間
6 外槽
7 処理液供給ボックス
71、72 ノズル穴
a1〜am、b1〜bm ディンプル
c1〜c4、d1〜d4 突起堰
D1、D2 排出穴
I 処理液供給系
II 回収・循環系
R1 内槽
R2 空室(側路)
S 処理液供給源
W ウェーハ(被処理基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、さらに詳しくは半導体基板や液晶基板などの薄板状基板を1枚ずつ処理槽に浸漬してその表面を処理する基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶基板などの基板は、半導体デバイスなどが形成される前にその基板表面が種々の薬液及び純水によって洗浄処理されている。この洗浄処理には、専用の基板処理装置が使用されている。
【0003】
この種の基板処理装置は、被処理基板、例えば半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」という)を複数枚収容できる処理槽に所定量の処理液(以下、洗浄液ともいう)を貯留しておき、この処理液に一度に複数枚のウェーハを浸漬して洗浄処理するバッチ式の基板処理装置と、ウェーハ1枚ずつを回転テーブルに載置・固定して、この回転テーブルを回転させると同時に上方からウェーハ表面に処理液を吹き付けて洗浄処理する枚葉式の基板処理装置とに大別されている。これらのバッチ式及び枚葉式の基板処理装置は、それぞれの利点及び課題を有している。
【0004】
バッチ式の基板処理装置は、一度に複数枚のウェーハの処理ができるので、スループットを高くできるなどの利点があるが、反面、複数枚のウェーハが同時に同一の処理槽内の処理液に浸漬されるので、一方のウェーハから除去された汚染物資などが他のウェーハへ付着して汚染させてしまうクロスコンタミネーションが発生し易くなり、また、使用する処理液が大量になるとともに、使用済み処理液の処理設備も大型化し環境負荷が増大するなどの課題がある。さらにまた、近年は、ウェーハ径が200mm、300mmからさらに450mmへと大口径化する傾向にあり、この大口径化されたウェーハに対しては、このバッチ式の基板処理装置での処理が難しくなって来ている。
【0005】
一方、枚葉式の基板処理装置は、ウェーハを1枚ずつ処理するので、バッチ式の基板処理装置で発生し易いクロスコンタミネーションの問題がなく、処理液も比較的少なくできるなどの利点があるが、反面、スループットアップに限界があり、また、ウェーハを回転させて処理するので、回転による遠心力によりウェーハ表面のパターンが変形、いわゆるパターン倒れが発生し易くなるなどの課題がある。さらに、処理されるウェーハは、その表面が疎水性になっているものもある。この疎水性ウェーハの表面に処理液の純水が吹き付けられると、ウェーハ表面では純水がウェーハの回転により粒状に移動して均一に拡がらず、純水を弾く箇所ができて、純水により効率よく洗浄される箇所と洗浄されない箇所ができ、結局、その表面処理が不均一になる、いわゆる洗浄ムラが発生することがある。
【0006】
そこで、現行のバッチ式及び枚葉式の基板処理装置が抱える課題解決を試行し、しかも一方でそれぞれの利点を生かすことができるように、処理槽を1枚のウェーハを収容できる大きさに形成して、この処理槽に処理液を貯留して、ウェーハを1枚ずつ浸漬して洗浄する洗浄装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。なお、この洗浄装置も枚葉式洗浄装置と言われている。
【0007】
図19を参照して、下記特許文献1に開示された枚葉式洗浄装置を説明する。なお、図19は下記特許文献1に開示された枚葉式洗浄装置の概略図である。
【0008】
この枚葉式洗浄装置20は、枚葉洗浄用オーバーフロー槽21と、このオーバーフロー槽21へ洗浄液を供給する供給系26とで構成されている。以下、個々の構成をこの枚葉式洗浄装置20を用いたウェーハの洗浄方法で説明する。
【0009】
まず、洗浄液が収容された洗浄室22内に、チャッキングアームでウェーハWが浸漬される。このウェーハWは、洗浄室22内でウェーハWの厚みよりやや幅広の溝を有するウェーハ保持部23に載置して保持される。この状態で、循環ポンプPによって洗浄液が循環されると、洗浄液は三方弁V、ろ過フィルタF、三方弁Vを通り、洗浄室22内の底部に設けられた供給口24の多数の流出口から洗浄室に流入される。洗浄液が充満された洗浄室22内にさらに洗浄液が流入されと、余分となった洗浄液が洗浄室22の上方開口に設けられた堰を乗り越えてオーバーフローし、オーバーフロー部25へ流れ込む。このとき、洗浄室22内に洗浄液の上昇流が生じ、ウェーハWの表裏面に付着した汚染物質が剥離・洗浄される。次いで、剥離された汚染物質などはオーバーフローする洗浄液と共に持ち去られて、三方弁V、循環ポンプPを通り、ろ過フィルタF、三方弁Vを通して、このフィルタFで洗浄液中の汚染物質が除去されて、洗浄液のみが再び洗浄室22に戻される。この洗浄液の循環過程でウェーハWに付着した汚染物質などが除去されて洗浄される。
【特許文献1】特許第2920165号公報(段落〔0009〕〜〔0010〕、図1)
【特許文献2】特許第3851486号公報(段落〔0039〕〜〔0043〕、図6)
【特許文献3】特開平6−104233号公報(段落〔0008〕〜〔0011〕、図1)
【特許文献4】特開平7−86225号公報(段落〔0013〕〜〔0019〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の枚葉式洗浄装置は、洗浄槽に貯留させた洗浄液中にウェーハを1枚ずつ浸漬し、洗浄室の底部に配設した給液口から洗浄液を噴出させて上昇流を生じさせて、この上昇流をウェーハの表裏面に接触させることによって、ウェーハ表裏面に付着した汚染物質などが剥離・除去されるので、従来技術のウェーハを回転させる枚葉式基板処理装置が抱えるパターン倒れを抑制でき、しかも洗浄ムラも解消できるとともに、バッチ式基板処理装置で発生し易いクロスコンタミネーションの問題などが回避できる。
【0011】
この洗浄装置では、ウェーハは、洗浄室の底部から上方へ昇流する上昇流によって、ウェーハを洗浄しているが、この上昇流は、底部の供給口から上方へ流出される流れとなって、この流れは乱れのない概ね層流となっている。しかしながら、このような層流では、渦流或いは乱流で洗浄するような高い洗浄効果が得られない。渦流或いは乱流での洗浄処理が層流による洗浄処理よりも洗浄効果が高いことはバッチ式洗浄装置で知られている(例えば、上記特許文献2参照)。なお、この洗浄装置は、複数の処理液供給手段を異なる位置に配設して、これらの処理液供給手段を切換え手段によって切換えることによって、複数種類の流れを処理槽内で形成するようにしたものとなっている。
【0012】
特に、近年、半導体デバイスがさらに高集積化及び高精細化されてきているので、このような枚葉式の洗浄装置では対応が困難になってきている。また、この枚葉式洗浄装置では、上昇流によって汚染物質が剥離・除去されるが、汚染物資の中には、その比重などの違いにより上方から溢流(オーバーフロー)されずに、一度上方へ移動されても再び洗浄室内へ戻ってウェーハに再付着する恐れがある。なお、下降流によってウェーハを洗浄処理する洗浄装置も提案されている(例えば、上記特許文献3、4参照)。しかしながら、これらの洗浄装置は、いずれもその下降流が層流となっており、より高い洗浄効果は期待できない。
【0013】
本発明者は、このような従来技術の課題を踏まえ、しかもバッチ式の洗浄装置で採用されている渦流或いは乱流による洗浄がより洗浄効果が高くなることから、このような渦流或いは乱流を1枚のウェーハしか収容できない狭い処理槽を設けた枚葉式の洗浄装置に適用できなきないかを検討した。その結果、ウェーハ側と洗浄処理槽壁面側との間に流速差、すなわち処理液(洗浄液)が流れる水流の抵抗差を生じさせれば、ウェーハ側に渦流或いは乱流が発生して、より高い洗浄効果が得られること、しかも、処理槽は1枚のウェーハしか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できることに想到し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0014】
そこで、本発明の目的は、汚染物質などの再付着を防止するとともに、洗浄処理効果を高めることができる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、少ない処理液量で処理ムラのない処理ができる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の基板処理方法は、処理槽内に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面を処理する基板処理方法において、前記処理槽は、前記被処理基板の少なくとも一方の基板面と対向する内壁面に、前記処理液の流れを変化させる流体制御手段を設けて、前記流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で前記処理液の流れを変化させて、該被処理基板の表面を処理することを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理方法において、前記流体制御手段を設けた内壁面側の流速は、前記基板面側の流速より速く又は遅くして、該基板面側に渦流又は乱流を生じさせて基板表面を処理することを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1に記載の基板処理方法において、前記処理液の流れは、前記処理槽内の一方向へ流れる一方向流であることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明は、請求項3に記載の基板処理方法において、前記一方向流は、前記処理槽内で上方から下方への流れる下降流であることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の基板処理装置は、所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備えた基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、前記第1の流体制御手段は、該流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるものであることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1の流体制御手段は、前記内壁面を前記被処理基板面の粗さと異なる粗面で形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1の流体制御手段は、複数個のディンプルで形成されたものであることを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7に記載の基板処理装置において、前記複数個のディンプルは、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を立設方向に所定の間隔をあけて複数列に配列したものであることを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、前記第2の流体制御手段は、前記隙間を一部狭める突起物であることを特徴とする。
【0025】
請求項10の発明は、請求項9に記載の基板処理装置において、前記突起物は、前記隙間を一部狭める突起堰であることを特徴とする。
【0026】
請求項11の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、該第2の流体制御手段は、前記壁面の立設方向と直交する方向にあって前記隙間を一部狭める少なくとも2本の突起堰が所定の間隔をあけて設けられたものであることを特徴とする。
【0027】
請求項12の基板処理装置に係る発明は、前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に、請求項5〜8のいずれかに1つに記載の第1の流体制御手段と請求項9〜11のいずれかに記載の第2の制御手段とを設けたものであることを特徴とする。
【0028】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、該処理液供給手段から前記第1、第2の立設壁の隙間に処理液を供給して、該隙間間に収容された被処理基板の表面処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0029】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の基板処理装置において、前記第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に、前記第1、第2の立設壁間の底部に設けた隙間に連通し上方へ昇流させる側路を形成して、前記側路の外壁に該側路の上端部から溢液する処理液を収容する回収槽を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1、2の発明によれば、流体制御手段を設けた内壁面側と被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるだけで、被処理基板の表面を効率よく処理することができる。すなわち、被処理基板側と処理槽壁面側との間で処理液の流れを変化させ被処理基板側に渦流或いは乱流を発生させて、より高い処理効果が得られる。また、処理槽は、1枚のウェーハしか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できる。
【0031】
請求項3、4の発明によれば、一方向の流れであると、コンタミネーションの再付着を防止できる、一方、基板に対する流れを制御し易い利点がある。
【0032】
請求項5の発明によれば、処理槽を構成する立設壁の壁面に第1の流体制御手段を設けるだけの簡単な構成で被処理基板の表面を効率よく処理することができる。すなわち、第1の流体制御手段を設けることによって、被処理基板側と処理槽壁面側との間に流れの変化、例えば流速差を生じさせてより高い処理効果が得られる。また、処理液は、第1、第2の立設壁隙間の一方から他方へ抜ける一方方向の流れとなるので、除去された汚染物資が戻って再付着することがなくなる。さらに、処理槽は1枚の被処理基板しか収容できない大きさにして処理するので、使用する処理液量が少なくでき、しかも浸漬するので処理ムラも解消できる。
【0033】
請求項6の発明によれば、内壁面を粗面加工するだけで簡単に形成できるので、処理槽を安価に作製できる。
【0034】
請求項7、8の発明によれば、第1の流体制御手段を複数個のディンプルで構成することにより、壁面加工によって簡単に形成できる。また、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を垂直方向に所定の間隔をあけて複数列に配列することによって、壁面側と対向する被処理基板側との間で、液流抵抗差が生じて被処理基板側に渦流或いは乱流を発生させることができる。すなわち、この渦流或いは乱流は、ディンプル数が臨界レイノルズ数を超えたときに発生するので、この臨界レイノルズ数を超えた数のディンプルを設けることによって形成できる。
【0035】
請求項9〜11の発明によれば、突起物又は突起堰により、上記と同じ処理効果を達成できる。突起堰は壁面加工によって簡単に形成できる。
【0036】
請求項12の発明によれば、処理液の供給を第1の流体制御手段の突起堰により略均一な流速で安定した量にして、第2の流体制御手段で所定の渦流などを発生させて、被処理基板を効率よく均一に処理することができる。
【0037】
請求項13の発明によれば、第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、この処理液供給手段から第1、第2の立設壁の隙間間に処理液を供給するので、処理液の流れは、上方から下方へ流れる下降流、いわゆるダウンフローとなって、このダウンフローによって、被処理基板の汚染物資などが剥離・除去されて下方から排出される。その結果、汚染物資などが上昇することが無くなり、被処理基板に再付着することがない。
【0038】
請求項14の発明によれば、第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に側路を形成して、この側路の外壁に回収槽を設けたので、ダウンフローの処理液を外槽から効率よく回収することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための基板処理方法及び基板処理装置を例示するものであって、本発明をこの基板処理方法及び基板処理装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0040】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る基板処理装置1の概要を説明する。なお、図1は本発明の実施例1〜3に共通する基板処理装置の概要図である。基板処理装置1は、図1に示すように、1枚のウェーハWが垂直方向に立設された状態で収容されて処理される縦長の処理槽2を備え、この処理槽2には処理液を供給する処理液供給系I及び処理槽2から排出される使用済み処理液を回収又は循環する回収・循環系IIなどが連結されている。処理液供給系Iは、処理液供給源S、三方弁V1、弁V2がそれぞれ所定太さの配管L1、L2で接続されて、配管L2が処理液供給ボックス7に連結されて、処理液供給源Sから処理液供給管L1、L2を介して処理槽2内に薬液、純水などが供給される供給系となっている。処理液供給源Sは、フッ酸、純水或いは過酸化水素などの処理液が貯留された供給源となっている。なお、処理槽2は、ウェーハWを収容して処理する内槽と、この内槽からオーバーフローする処理液を回収する外槽とに区画されているが、以下の説明で内槽と外槽とを区別しない場合以外は、これらの槽を総称して処理槽ともいう。回収・循環系IIは、外装の排出穴D2と三方弁V1との間に、三方弁V3、循環ポンプP、フィルタFを介在し所定太さの配管L3、L4で連結されて、処理槽2から排出される使用済み処理液を処理槽2へ回収・循環する系となっている。また、処理槽2の底部にも排出穴D1が形成されている。処理槽2の各排出穴D1、D2は配管L5を介して図示を省略した各種類の処理液ごとの廃液処理装置に接続されている。
【0041】
この構成により、処理槽2には、処理液供給源Sから処理液供給系Iを介して処理槽2の上方の処理液供給ボックス7に処理液が供給されて、この供給された処理液が処理槽2内を上方から下方への流れ、いわゆる下降流となって、この流れで処理槽2内に収容されたウェーハWの表面処理が行われる。また、使用済みの処理液は、処理槽2の底部から上方へ昇流されて外槽6へ収容される。なお、図1の矢印は処理槽外での処理液の流れを示し、処理槽内ではその流れは点線で示されている。外槽6からの使用済み処理液の一部は、循環ポンプPにより給送されフィルタFでろ過されて、再び処理槽2へ戻される。この処理液の循環が継続されて、処理槽2内に収容されるウェーハWの表面処理が行われる。また、処理液が純水の場合は、排出穴D2から排出された使用済みの純水が三方弁V3を開いて廃液処理装置へ送られる。したがって、処理液が純水のときは、処理槽2には常に新しい純水が供給される。なお、図1の基板処理装置1は、1基の処理槽2を示したが、実際の処理装置では数基の処理槽を連設して、所望の洗浄処理ができるようになっている。例えば、4基の処理槽を用いて洗浄する場合は、第1の処理槽にフッ酸を収容し、第2と第4の処理槽に純水を収容し、第3の処理槽に過酸化水素を収容して、ウェーハをチャッキングアームで第1の処理槽から第4の処理槽まで順番に投入することによって洗浄する。又は、4基それぞれの処理槽においてフッ酸、純水、過酸化水素、純水の順に処理液を供給して処理する。このように複数基の処理槽を併設することによって、所望の洗浄処理が可能になるとともに、処理の生産性、すなわちスループットを上げることができる。
【0042】
以下、図2〜図5を参照して、基板処理装置1を構成する処理槽2、処理液供給ボックス7の構造を説明する。なお、図2は実施例1の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図2Aは処理槽の上面図、図2Bは側面図(図2Bの複数個の点は槽内部のディンプルの配列位置を示している)、図2Cは底面図、図2Dは図2Bを一方の側面からみた側面図である。図3は図2BのIII−III線の断面図である。図4は処理液供給ボックスを示し、図4Aは供給ボックスの上面図、図4Bは図4Aの供給ボックスを長手方向と直交する方向からみた側面図、図4Cは図4Aの供給ボックスを長手方向からみた側面図である。図5は図3に示す外槽のV−V線の断面図である。
【0043】
処理槽2は、図2、図3に示すように、上方に設けた比較的大きな開口2aと、所定の間隔をあけて対向しウェーハWの表面面積より若干大きい面積を有する一対の立設した垂直板2b、2cと、これらの垂直板2b、2cの両側端を連結した幅狭の左右側板2d、2eと、底部を閉塞した底板2fとを有し、内部、すなわち両垂直板2b、2c間の隙間が中間垂直板3で仕切られて、一方の垂直板2bと中間垂直板3との間に、1枚のウェーハWが垂直に立設した状態で収容される内槽R1を設けた扁平の箱型容器からなり、耐薬品性及び耐熱性を有する材料、例えば石英ガラス、PFA、PTFなどで形成されている。以下、この処理槽2の大きさ、すなわち寸法を例示するが、この寸法は、直径300mmのウェーハWが収容されるときの例となっている。勿論、この処理槽は、任意の大きさに変更、例えば直径450mmなどのウェーハに適用できる大きさに変更できるものである。これらの一対の垂直板2b、2c及び中間垂直板3は、厳密な意味での垂直板でなくともよく、所定の角度で立設していればよい。特許請求の範囲では、一方の垂直板2bを第1の立設壁、中間垂直板3を第2の立設壁とし表現している。
【0044】
一方の垂直板2bは、所定の肉厚とウェーハWの幅長より若干長い幅長及びその高さより若干高い高さH1を有している。肉厚は10mm、高さH1は417mmとなっている。中間垂直板3は、垂直板2bと略同じ肉厚及び大きさを有している。中間垂直板3は、表裏面3a、3bを有し、底板2fとの間に隙間5をあけて、両側端が左右側板2d、2eに結合されている。内槽R1は、垂直板2b、中間垂直板3、左右側板2d、2e及び底板2fで囲まれて上方が開口したものとなっている。中間垂直板3の肉厚は10mm、隙間5は20mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板3との間の隙間G1(図6参照)は、15mmとなっており、この隙間にウェーハWが挿入される。この隙間G1を狭くすると、ウェーハWを収容したときに、このウェーハWと垂直板2b及び中間垂直板3間の隙間も狭くなり、使用する処理液量は従来技術のウェーハを回転させて処理する枚葉式基板処理装置の使用量と略同じか或いは若干多くなる程度で処理できる。中間垂直板3の高さは、隙間5を設けた分、垂直板2bの高さH1より短くなっている。垂直板2b及び中間垂直板3の上方端に、内槽R1内に処理液を供給する処理液供給ボックス7が装着される装着溝4が設けられている。この装着溝4は、処理液供給ボックス7が嵌り込む大きさの隙間をあけて対向する一対の側板部41、42と、両側板部の底部を連結する底板部43と、上方に開口40を有し、底板部43に内槽R1に連通する収容穴44が形成されている。この収容穴44は、ウェーハWが挿入される挿入穴及び処理液が内槽R1へ供給される供給穴となっている。
【0045】
処理液供給ボックス7は、図4に示すように、装着溝4に嵌め込まれる大きさで、処理槽2の長手方向の長さと略同じ長さ及び内部に空洞70を設けた略四角形状の筒状体からなり、樹脂成型体で構成されている。この処理液供給ボックス7は、上下板7a、7bと、左右側板7c、7dと、長手方向の両端板7e、7fとを有し、長手方向と直交する方向で切断した面が略四角形状をなし、内部が空洞70になっている。両端板7e、7fは、いずれか一方の板面、例えば一方の板7eに空洞70に連通した開口9aが形成されて、この開口9aが配管L2に連結されるようになっている。他の板7fの開口9bは閉鎖されている。下板7bには、図4Aに示すように、長手方向に所定のピッチ(10mm)で直線状1列に配列された複数個のノズル穴71〜71n列を長手方向と直交する方向に所定の間隔(4.0mm)をあけて2列に配列されている。他の列はノズル穴72〜72n列となっている。ノズル穴は、数mm程度の大きさとなっている。左右側板7c、7d面には、複数本の把持棒8が突出されている。この把持棒8を利用して、装着溝4に嵌め込まれる。
【0046】
図3に戻って、他方の垂直板2cは、その高さが垂直板2bの高さH1と略同じ高さ有している。この垂直板2cと中間垂直板3との間に空室R2が設けられている。この空室R2は中間垂直板3及び垂直板2cと左右側板2d、2eとで囲まれて形成されている。この空室R2を構成する中間垂直板3及び垂直板2c間の隙間は30mmである。この空室R2は底部で隙間5に連通しており、内槽R1からの処理液が上昇流となって流れる流通路(側路)となっている。尚、空室R2の槽の厚み(中間垂直板3と垂直板2c間の隙間)と隙間5の高さの比率はG1を1とすると、G1:隙間5の高さ:空室R2の槽の厚み=1:1〜3:1〜5になるように設定されている。この垂直板2cの外壁面の上方には、図3、図5に示すように、所定大きさの外槽6が設けられている。この外槽6は、上方に開口6a、外板2h、内板2c'、底板2g及びこの底板2gに排出穴D2及び高さH3を有する所定大きさの箱型容器からなり、垂直板2cの底部から高さH2の位置に設けられている。H2とH3の合計は、略H1となっている。また、内板2c'と外板2hの隙間は35mmとなっている。また、垂直板2cの頂部には、処理液がオーバーフローする複数個の三角溝6a'が形成されている。この処理槽2は、内部に内槽R1及び空室R2が設けられ、一方の外壁面に外槽6が付設されることによって、処理液は、以下のルートで処理槽内を流れる。まず、上方の装着溝4に処理液供給ボックス7が装着されて、この供給管7のノズル穴71〜71n、72〜72nから処理液が内槽R1へ供給される。供給された処理液は、この内槽R1内を下降流となって下降する。下降した処理液は、隙間5を通過して、空室R2内へ流入し、この空室R2内では上方へ押上げられる。押上げられた処理液は、空室R2の上方でオーバーフローして外槽6へ収容される。したがって、この処理槽2では、処理液が上方から下方へ流れる、いわゆるダウンフロー方式の流れとなっている。このダウンフローによって、ウェーハの汚染物資などが剥離・除去されて下方から排出される。その結果、汚染物資などが上昇することが無くなり、ウェーハに再付着することがない。なお、本発明は、このダウンフロー方式に限定されるものでなく、用途によっては逆のアップフロー方式にしてもよい。
【0047】
この処理槽2には、底板2fに、内槽R1内の処理液を外部へ排出する1乃至複数個の排出穴D1が形成されている。これらの排出穴D1は、配管L5を介して不図示の廃液処理装置に接続される。外槽6の底部2gには、排出穴D2が形成されている。
【0048】
垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面には、図6に示すように、複数個のディンプルa1〜am、b1〜bmが形成されている。これらのディンプルは、対向壁面に広がってそれぞれ所定の規則性を持って配列されている。なお、図6は図3のVI部分の拡大断面図、図7は図2B、図3の処理槽壁面に設けられたディンプルの配列を示し、図7Aは一方の垂直板に設けられたディンプル配列群、図7Bは中間垂直板に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。この規則性は、垂直板2b壁面では、図7Aに示すように、所定のピッチ(3〜50mm)で直線状1列に配列された複数のディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜AM(am、am2〜amn)が垂直方向に所定の隙間(3〜50mm)をあけて水平方向に複数列A1〜AM配設されたディンプル列群Aとなっている。このディンプル列群Aの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さh1(図8参照)が例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0049】
中間垂直板3の対向壁面にも、図7Bに示すように、同様のディンプル列B1(b1、b12〜b1n)、B2(b2、b22〜b2n)〜BM(bm、bm2〜bmn)からなるディンプル列群Bが設けられている。このディンプル列群Bの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。この規則性配列は、これらの配列に限定されるものでなく、任意のピッチ及び配列にし得るものである。例えば、ディンプル間のピッチは等ピッチでなくともよく、また、各対向壁面のディンプル列群A、Bも同一の配列でなくともよい。さらに、ディンプルの直径及び深さ並びに形状も変更し得るものである。なお、図7A、7Bの個々のディンプルを接続した線は説明用の仮想線であって、実際にはこのような線は設けられていない。なお、特許請求の範囲では、
複数個のディンプルa1〜am、b1〜bmを纏めて第1の流体制御手段と表現している。
【0050】
図8を参照して、ディンプルの作用を説明する。なお、図8は図3のVIII部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【0051】
処理液が上方から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、垂直板2b面の個々のディンプルai〜ai+2部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、垂直板2b面側の近傍を流れる処理液の流速SP1がこの渦流をすべるようにして流れるのでSP1は速くなる。この速くなる流速現象は、レイノルズ数が小さいときには発生せず、所定の数、すなわち臨界レイノルズ数を超えたときに発生する。垂直板2b面に設けた複数個のディンプルによって、この臨界レイノルズ数を超えたものとなっている。
【0052】
垂直板2b面側の近傍を流れる処理液の流速SP1が速くなると、ウェーハW表面近傍に流れる流速SP2との間で流速差が発生する。換言すると、垂直板2b面側近傍の流速が速くなった分流速抵抗が小さくなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生する。この抵抗差が発生すると、ウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面と接触してウェーハ表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。なお、ディンプルを設けないと、壁面とウェーハ表面との間に流れは層流となって、上記のような渦流が発生せず、洗浄効果も劣ったものとなる。
【0053】
また、中間垂直板3面側でも、個々のディンプルbi〜bi+2部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、中間垂直板3面側の近傍を流れる処理液の流速も速くなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生し、抵抗差によりウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面に接触してウェーハ表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。図8に示したディンプル数は、数個であるが、ディンプルは対向壁面に広がって、図7に示すように、垂直板2b面にはディンプル列群A、すなわち、ディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜AM(am、am2〜amn)が配設されているので、個々のディンプルによって発生した渦流がディンプル列群で集合されて乱流となり、この乱流がウェーハWの表面に接触することなる。同様に、中間垂直板3の壁面3aとウェーハWの表面との間でも、ディンプル列群Bによって乱流が発生して、この乱流がウェーハWの表面に接触することなる。
【0054】
以上説明したように、実施例1に係る基板処理装置1は、処理槽2の対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群が設けられているので、処理液が内槽R1に供給されると、各板2b、3の各板面側と対向するウェーハW面側との間で液流抵抗の差が生じて、各板面側近傍を流れる処理液の流速が速く、ウェーハW面側近傍の流速が遅くなる。その結果、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。この実施例1の基板処理装置1は、処理槽2の対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群を設けたが、いずれか一方の壁面に設けて、被処理基板の片面だけを洗浄するようにしてもよい。
【実施例2】
【0055】
次に、図1、図9〜図11を参照して、本発明の実施例2に係る基板処理装置1Aを説明する。なお、図9は実施例2の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図9Aは処理槽の上面図、図9Bは側面図(図9Bのd1〜d4は処理槽内部の突起堰の配列位置を示している)、図9Cは底面図、図9Dは図9Bを一方の側面からみた側面図である。図10は図9BのX−X線の断面図である。図11は図10のXI部分の拡大断面図である。
【0056】
実施例2に係る基板処理装置1Aは、図1に示した実施例1に係る基板処理装置1と略同じ構成を備え、この基板処理装置1Aの処理槽2A内の一部構成、すなわち、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面にディンプルを設けずに、複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4を設けた構成が異なっている。そこで、共通する構成には同じ符号を付してその説明を援用することとし、異なる構成について詳述する。
【0057】
実施例2に係る基板処理装置1Aは、処理槽2Aを備えている。この処理槽2Aは、図9、図10に示すように、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、それぞれ水平方向に所定の間隔をあけて複数本、例えば4本の突起堰c1〜c4及びd1〜d4が設けられている。複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4は同じ構造となっているので、一方の垂直板2bに設けた突起堰c1〜c4を説明する。
【0058】
垂直板2bの壁面には、所定の間隔H4をあけて4本の突起堰c1〜c4が水平方向に配設されている。H4は100mmとなっている。これらの突起堰c1〜c4は、同じ形状となっている。そのうちの1本の突起堰c1は、図11に示すように、垂直板2b面から湾曲状に隆起した畝状の突起からなり頂部の高さh2となっている。すなわち、湾曲状の隆起は、直径25mmの円を描き、その一部が垂直板2b面から隆起し、頂部高さh2が2.5mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板3のそれぞれの壁面に突起堰を設けるので、両突起堰間の隙間G2は隙間G1より狭められて10mm(なお、G1は15mm)となっている。なお、特許請求の範囲では、突起堰c1〜c4及びd1〜d4を纏めて第2の流体制御手段と表現している。
【0059】
次に、この突起堰の作用を説明する。内槽R1内に処理液が処理液供給ボックス7から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、処理液は、最初の突起堰c1に衝突して、その一部の処理液が一時堰き止められる。突起堰c1は図9B、図10に示すように、垂直板壁2bの幅方向、すなわち水平方向の一端から他端まで連続した堰となっているので、処理液はこの幅方向で堰き止められる。この堰き止めにより、処理液供給ボックス7からの距離、すなわち処理液供給ボックス7のノズルからの距離の長短に関係なく、処理液は略均一化されて隙間G2間を通過する。この隙間G2は、隙間G1より狭くなっているので、垂直板壁2b面とウェーハW面との間も狭められて隘路となり、処理液はこの隘路を通過することになる。すなわち、堰き止められた処理液は、突起堰c1の頂部とウェーハW間の狭い隙間の隘路を通過して、下流の突起堰c2へ向けて流れ込む。この流れ込んだ処理液は、隣接する突起堰c1、c2間に一時蓄えられた格好で次の突起堰c2で再びこの突起堰c2で形成される隘路を通過し突起堰c2、c3間に一時蓄えられた格好で、以後、同じようにして、各突起堰を通過する。この処理液の流れは、隘路を通過するときは流速が速められ、通過した後の突起堰間においては、この流速が減速されると同時に流れが複雑に変化し、結果として乱流などが発生して、ウェーハW表面の不要物を剥離・除去する。なお、突起堰間には、処理液は滞留するのでなく、随時流れ去るものである。
【0060】
この実施例2に係る基板処理装置1Aは、処理槽2Aの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、それぞれ突起堰を設けるだけで、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。なお、突起堰c1〜c4及びd1〜d4は、垂直板2b及び中間垂直板3の対向した箇所に設けたが、互いに位置をずらして千鳥状に設けてもよい。
【実施例3】
【0061】
次に、図1、図12〜図16を参照して、本発明の実施例3に係る基板処理装置1Bを説明する。なお、図12は実施例3の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図12Aは処理槽の上面図、図12Bは側面図(図12Bの複数個の点例えばb1は処理槽内部のディンプル及びd1〜d4は槽内部の突起堰の配列位置を示している)、図12Cは底面図、図12Dは図12Bを一方の側面からみた側面図である。図13は図12BのXIII−XIII線の断面図である。図14は図13のXIV部分の拡大断面図、図15は突起堰間のディンプルの配列を示し、図15Aは一方の垂直壁に設けられたディンプル配列群、図15Bは中間垂直板壁に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【0062】
実施例3に係る基板処理装置1Bは、処理槽2Bを備え、この処理槽2Bは、上記実施例1、2の処理槽2、2Aを組み合わせた構成となっている。すなわち、この処理槽2Bは、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4を設けるとともに各突起堰c1〜c4、d1〜d4間に複数個のディンプルを配列した構成となっている。
【0063】
処理槽2Bは、図12、図13に示すように、垂直板2b及び中間垂直板3の対向壁面に、それぞれ水平方向に所定の間隔をあけて複数本、例えば4本の突起堰c1〜c4及びd1〜d4が設けられて、各突起堰c1〜c4及びd1〜d4の間にディンプル列群A、Bが配列されている。複数本の突起堰c1〜c4、d1〜d4及びディンプル列群A、Bは同じ構造となっているので、一方の垂直板壁2bに設けた突起堰c1〜c4及びディンプル列群Aを説明する。
【0064】
垂直板2bの壁面には、所定の間隔H4をあけて4本の突起堰c1〜c4が水平方向に配設されている。H4は100mmとなっている。これらの突起堰c1〜c4は、同じ形状となっている。そのうちの1本の突起堰c1は、図14に示すように、垂直板2b面から湾曲状に隆起した畝状の突起からなり頂部の高さh2となっている。すなわち、湾曲状の隆起は、直径25mmの円を描き、その一部が垂直板2b面から隆起し、頂部高さh2が2.5mmとなっている。垂直板2bと中間垂直板のそれぞれの壁面に突起堰を設けるので、両突起堰間の隙間G2は10mm(なお、G1は15mm)となっている。
【0065】
また、各突起堰c1〜c4間には、ディンプル列群Aが設けられている。ディンプル列群Aは、図15Aに示すように、所定のピッチ(3〜50mm)で直線状1列に配列された複数のディンプル列A1(a1、a12〜a1n)、A2(a2、a22〜a2n)〜A4(a4、a42〜a4n)が垂直方向に所定の隙間(3〜50mm)をあけて水平方向に複数列A1〜A4配設されたたものとなっている。このディンプル列群Aの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0066】
中間垂直板3の対向壁面にも、図15Bに示すように、同様のディンプル列B1(b1、b12〜b1n)、B2(b2、b22〜b2n)〜B4(b4、b42〜b4n)からなるディンプル列群Bが設けられている。このディンプル列群Bの個々のディンプルは、直径が例えば0.5〜5.0mm、深さが例えば0.5〜2.0mmの円形状の凹み穴となっている。
【0067】
図12〜図16を参照して、突起堰及びディンプルの作用を説明する。なお、図16は図13のXVI部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【0068】
内槽R1内に処理液が処理液供給ボックス7から下方へ、すなわちダウンフローで流れると、処理液は、最初の突起堰c1に衝突して、その一部の処理液が一時堰き止められる。突起堰c1は図12Bに示すように、垂直板壁2bの幅方向、すなわち水平方向の一端から他端まで連続した堰となっているので、処理液はこの幅方向で堰き止められる。この堰き止めにより、処理液供給ボックス7からの距離、すなわち処理液供給ボックス7のノズルからの距離の長短に関係なく略均一な流速となる。
【0069】
堰き止められた処理液は、突起堰c1の頂部とウェーハW間の狭い隙間を通過して、下流の突起堰c2へ向けて流れ込む。この流れ込んだ処理液は、隣接する突起堰c1、c2間に蓄えられる。図16の符号Brで示した部分は、蓄えられた処理液を模式して示してある。なお、この蓄えられた処理液Brは滞留するのでなく、随時流れ去るものであって、イメージ的に図示したものである。この処理液Brは、図12B、図13に示す隣接する突起堰c1、c2間に均一に蓄えられて、略一定の流速でウェーハWの全面に略均等に処理液が安定した状態で供給される。また、この処理液Brは、ディンプル列群Aに当り、垂直板壁2b面の個々のディンプルa1〜a4部分において渦流が発生する。この渦流の発生によって、垂直板壁2b面側の近傍を流れる処理液の流速が速くなる。垂直板壁2b面側の近傍を流れる処理液の流速が速くなると、ウェーハW表面近傍に流れる流速との間で流速差が発生する。換言すると、垂直板壁2b面側近傍の流速が速くなった分流速抵抗が小さくなり、ウェーハW近傍の流速抵抗との間に抵抗差が発生する。この抵抗差が発生すると、ウェーハW側の近傍に処理液の渦流が発生し、この渦流がウェーハWの表面と接触してウェーハW表面に付着しているレジストなどの不要物が擦り落される。なお、このディンプル列群の作用は、実施例1のディンプル列群と同じである。以下、下流の突起堰c2〜c3、c3〜c4間で、安定した流速のもとで渦流が発生し、この渦流によってウェーハWの表面が洗浄される。この洗浄は、中間垂直板壁3とウェーハWとの間でも行われている。
【0070】
以上説明したように、実施例3に係る基板処理装置1Bは、処理槽2Bの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、それぞれ突起堰及びディンプル列群が設けられているので、処理液が内槽R1に供給されると、各垂直板2b、3の各壁面側と対向するウェーハW面側との間に、安定した処理液が供給されて、この供給された処理液に液流抵抗の差が生じて、各壁面側近傍を流れる処理液の流速が速く、ウェーハW面側近傍の流速が遅くなる。その結果、ウェーハW面側に渦流或いは乱流が発生し、この渦流或いは乱流がウェーハWの表裏面に接触して、ウェーハWの表裏面が効率よく効果的に洗浄される。また、処理液は、ダウンフローとなっているので、除去された汚染物資などが戻って再付着することがない。この実施例3の基板処理装置1Bは、処理槽2Bの対向する垂直板2b及び中間垂直板3の各壁面に、ディンプル列群を設けたが、いずれか一方の壁面に設けて、ウェーハの一面だけを洗浄するようにしてもよい。
【0071】
この実施例1〜3の基板処理装置1、1A、1Bを用い、以下の条件で処理槽内の比抵抗回復時間を測定した。処理液の濃度は、純水100に対して、H2SO4を1にしたものである。その流量は、3L/min、5L/min、7L/min、測定機器は導電率計を使用し、この導電率計での測定値に基づいて計算に比抵抗値を求めた。その結果、比抵抗回復のバラツキ具合、立ち上り時間を考慮して比較した結果、実施例3が一番良い結果が得られ、続いて、実施例1、実施例2の順によい結果が得られた。
【0072】
次に、渦流或いは乱流を発生させるための他の流体制御手段を図17及び図18に示す。図17Aは流体制御手段の変形例を示す図であり、図17Bは流体制御手段の他の変形例を示す図であり、図17Cは流体制御手段の他の変形例を示す図である。図18は流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【0073】
実施例1〜3では、ディンプル、突起堰およびこれらを組み合わせたもので、渦流或いは乱流を発生させたが、このようなディンプル、突起堰でなく他の手段を形成してもよい。
この他の手段は、例えば、ディンプルe、凸起f、凹み溝g、凸起条h及び粗面iを組み合わせたもの(図17A参照)、凹み溝g及び凸起条hを組み合せたもの(図17B参照)、さらに、凸起条h、粗面i及び三角溝jを組み合わせたもの(図17C参照)にしてもよい。また、図18に示すように、突起堰であっても、ウェーハWと対向する箇所は細く、ウェーハWと外れる箇所を太くした突起堰kのようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の実施例1〜3に共通する基板処理装置の概要図である。
【図2】図2は図1の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図2Aは処理槽の上面図、図2Bは側面図、図2Cは底面図、図2Dは図2Bを一方の側面からみた側面図である。
【図3】図3は図2BのIII―III線の断面図である。
【図4】図4は処理液供給ボックスを示し、図4Aは供給ボックスの上面図、図4Bは図4Aの供給ボックスを長手方向と直交する方向からみた側面図、図4Cは図4Aの供給ボックスを長手方向からみた側面図である。
【図5】図5は図2の処理槽の一側面図である。
【図6】図6は図3のVI部分の拡大断面図である。
【図7】図7は図2B、図3の処理槽壁面に設けるディンプルの配列を示し、図7Aは一方の垂直板に設けられたディンプル配列群、図7Bは中間垂直板に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【図8】図8は図3のVIII部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【図9】図9は実施例2の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図9Aは処理槽の上面図、図9Bは側面図、図9Cは底面図、図9Dは図9Bを一方の側面からみた側面図である。
【図10】図10は図9BのX−X線の断面図である。
【図11】図11は図10のXI部分の拡大断面図である。
【図12】図12は実施例3の基板処理装置を構成する処理槽を示し、図12Aは処理槽の上面図、図12Bは側面図、図12Cは底面図、図12Dは図12Bを一方の側面からみた側面図である。
【図13】図13は図12BのXIII―XIII線の断面図である。
【図14】図14は図13のXIV部分の拡大断面図である。
【図15】図15は突起堰間のディンプルの配列を示し、図15Aは一方の垂直壁に設けられたディンプル配列群、図15Bは中間垂直板壁に設けられたディンプル配列群を示した配列図である。
【図16】図16は図13のXVI部分を説明用に模式して示した拡大断面図である。
【図17】図17Aは流体制御手段の変形例を示す図であり、図17Bは流体制御手段の他の変形例を示す図であり、図17Cは流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【図18】図18は流体制御手段のさらに他の変形例を示す図である。
【図19】図19は従来技術の枚葉式洗浄装置の概略図である。
【符号の説明】
【0075】
1、1A、1B 基板処理装置
2、2A、2B 処理槽
2a 開口
2b 垂直板(第1の立設壁)
2c 垂直板
3 中間垂直板(第2の立設壁)
4 装着溝
5 隙間
6 外槽
7 処理液供給ボックス
71、72 ノズル穴
a1〜am、b1〜bm ディンプル
c1〜c4、d1〜d4 突起堰
D1、D2 排出穴
I 処理液供給系
II 回収・循環系
R1 内槽
R2 空室(側路)
S 処理液供給源
W ウェーハ(被処理基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面を処理する基板処理方法において、
前記処理槽は、前記被処理基板の少なくとも一方の基板面と対向する内壁面に、前記処理液の流れを変化させる流体制御手段を設けて、
前記流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で前記処理液の流れを変化させて、該被処理基板の表面を処理することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記流体制御手段を設けた内壁面側の流速は、前記基板面側の流速より速く又は遅くして、該基板面側に渦流又は乱流を生じさせて基板表面を処理することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液の流れは、前記処理槽内の一方向へ流れる一方向流であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記一方向流は、前記処理槽内で上方から下方への流れる下降流であることを特徴とする請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備えた基板処理装置において、
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、前記第1の流体制御手段は、該流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の流体制御手段は、前記内壁面を前記被処理基板面の粗さと異なる粗面で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の流体制御手段は、複数個のディンプルで形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数個のディンプルは、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を立設方向に所定の間隔をあけて複数列に配列したものであることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、前記第2の流体制御手段は、前記隙間を一部狭める突起物であることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記突起物は、前記隙間を一部狭める突起堰であることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記突起堰は、少なくとも2本が前記壁面の立設方向と直交する方向に所定の間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に、請求項5〜8のいずれかに1つに記載の第1の流体制御手段と請求項9〜11のいずれかに記載の第2の制御手段とを設けたものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
前記第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、該処理液供給手段から前記第1、第2の立設壁の隙間に処理液を供給して、該隙間間に収容された被処理基板の表面処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に、前記第1、第2の立設壁間の底部に設けた隙間に連通し上方へ昇流させる側路を形成して、前記側路の外壁に該側路の上端部から溢液する処理液を収容する回収槽を設けたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項1】
処理槽内に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面を処理する基板処理方法において、
前記処理槽は、前記被処理基板の少なくとも一方の基板面と対向する内壁面に、前記処理液の流れを変化させる流体制御手段を設けて、
前記流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で前記処理液の流れを変化させて、該被処理基板の表面を処理することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記流体制御手段を設けた内壁面側の流速は、前記基板面側の流速より速く又は遅くして、該基板面側に渦流又は乱流を生じさせて基板表面を処理することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液の流れは、前記処理槽内の一方向へ流れる一方向流であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記一方向流は、前記処理槽内で上方から下方への流れる下降流であることを特徴とする請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
所定の間隔をあけて立設されて対向する一対の第1、第2の立設壁の隙間に、被処理基板を1枚ごと立設させて収容するとともに処理液を供給して、該被処理基板の表面処理を行う処理槽を備えた基板処理装置において、
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第1の流体制御手段を設けて、前記第1の流体制御手段は、該流体制御手段を設けた内壁面側と前記被処理基板の基板面側との間で処理液の流れを変化させるものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の流体制御手段は、前記内壁面を前記被処理基板面の粗さと異なる粗面で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の流体制御手段は、複数個のディンプルで形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数個のディンプルは、水平方向に所定のピッチで1列に配列したディンプル列を立設方向に所定の間隔をあけて複数列に配列したものであることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に第2の流体制御手段を設けて、前記第2の流体制御手段は、前記隙間を一部狭める突起物であることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記突起物は、前記隙間を一部狭める突起堰であることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記突起堰は、少なくとも2本が前記壁面の立設方向と直交する方向に所定の間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1、第2の立設壁は、対向する少なくともいずれか一方の内壁面に、請求項5〜8のいずれかに1つに記載の第1の流体制御手段と請求項9〜11のいずれかに記載の第2の制御手段とを設けたものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
前記第1、第2の立設壁の頂部に、処理液供給手段を配設して、該処理液供給手段から前記第1、第2の立設壁の隙間に処理液を供給して、該隙間間に収容された被処理基板の表面処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1、第2の立設壁のいずれか一方の立設壁の外壁面に、前記第1、第2の立設壁間の底部に設けた隙間に連通し上方へ昇流させる側路を形成して、前記側路の外壁に該側路の上端部から溢液する処理液を収容する回収槽を設けたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−135421(P2010−135421A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307837(P2008−307837)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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