説明

基板処理装置のデータ取得方法及びセンサ用基板

【課題】基板の面内の各部における風向のデータを取得することができる技術を提供すること。
【解決手段】気流のベクトルのデータを取得するための第1のセンサと、第2のセンサとからなる複数のセンサ対がその表面に設けられたセンサ用基板を載置部に載置する工程と、各第1のセンサにより、前記センサ用基板の表面に沿って設定された第1の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、各第2のセンサにより、センサ用基板の表面に沿い、且つ前記第1の直線方向とは傾いて設定された第2の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより各々取得された気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風向を演算する工程とを実施し、基板の面内の風向の分布を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモジュールを備える基板処理装置のデータ取得方法及び前記データ取得方法に用いられるセンサ用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジストを塗布し、形成されたレジスト膜を所定のパターンで露光した後に現像してレジストパターンを形成している。レジストの塗布処理の前後や現像処理の前後ではウエハに加熱処理が行われる。
【0003】
このようにウエハに各処理を行うモジュールは、ウエハの表面に気流を形成しながら処理を行う場合がある。例えば前記加熱処理を行う加熱モジュールにおいては、ウエハに形成されたレジスト膜などの各種の膜から発生した昇華物がウエハに付着することを防ぐために、ウエハの表面に気流が形成された状態で加熱処理が行われる。また、レジスト膜を形成するためにスピンコーティングが行われるが、このスピンコーティングでは、ウエハが搬入されたカップ内を排気しながらカップの上方からウエハ表面に気体を供給することで、ミストがウエハに付着しないように処理が行われる。
【0004】
ところで、ウエハの面内各部で形成される気流の風向及び風速が乱れると、ウエハの面内の温度分布がばらつき、ウエハの面内の処理の均一性が低下してしまうおそれがある。また、ウエハに対して同じ処理を行うモジュール間においても風向、風速のばらつきが発生し、ウエハ間で処理の均一性が低下するおそれがある。このような処理の均一性の低下を防ぐために、コンピュータによるシミュレーションを行って風向及び風速を測定することにより、モジュールの気流の調整を行っていた。しかし、より高くウエハの面内、ウエハ間での処理の均一性が求められている事情から、モジュールごとにより精度高くウエハの面内の風向及び風速の分布を測定する手法が求められている。
【0005】
特許文献1には、発熱体と発熱体を挟むように直線方向に配置された温度検出部とを含むセンサを基板の周縁に配置したセンサ用基板について記載されており、処理モジュールの気体の流速、流れの方向を検出することができるとしている。しかし、このセンサは前記直線方向の流速しか検出することができないため、ウエハの面内の風向及び風速の分布を測定することができないので、上記の問題を解決するために不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−106883(段落0019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は基板の面内の各部における風向のデータを取得することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置のデータ取得方法は、
基板が載置される載置部を備えた基板処理装置にて、前記載置部に載置された前記基板の表面における複数の測定領域の気流の風向についてのデータを取得する基板処理装置のデータ取得方法において、
気流のベクトルのデータを取得するための第1のセンサと、第2のセンサとからなる複数のセンサ対がその表面に設けられたセンサ用基板を載置部に載置する工程と、
各第1のセンサにより、前記センサ用基板の表面に沿って設定された第1の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、
各第2のセンサにより、センサ用基板の表面に沿い、且つ前記第1の直線方向とは傾いて設定された第2の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、
同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより各々取得された気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風向を演算する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
上記の実施形態の具体的な態様は、例えば下記の通りである。
(1)前記気流のベクトルのデータは気流の風速についてのデータであり、
前記気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風速を演算する工程を含む。
(2)第1の直線方向と、第2の直線方向との傾きのなす角は90°である。
(3)各基点からの風向、風速の少なくとも一方を表示部に表示する工程を含む。
(4)同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより取得されるベクトルのデータが許容範囲であるか否かを検出する工程と、
前記第1のセンサ及び第2のセンサにより構成される回路を流れる電流値が許容範囲であるか否かを検出する工程と、
前記データ及び電流値についての検出結果に基づいて、第1のセンサ及び第2のセンサに設けられる電極と、センサ用基板に設けられる電極との接続が異常であるか否かを報知する工程と、を備える。
【0010】
本発明のセンサ用基板は、基板が載置される載置部を備えた基板処理装置にて、前記載置部に載置された前記基板の表面における複数の測定領域の気流の風向についてのデータを取得するためのセンサ用基板であって、
前記センサ用基板の表面に沿って設定された第1の直線方向における気流のベクトルのデータを取得するための複数の第1のセンサと、
前記第1のセンサと共に各々センサ対を構成し、且つ前記センサ用基板の表面に沿い、前記第1の直線方向とは傾いて設定された第2の直線方向における気流ベクトルのデータを取得するための複数の第2のセンサと、
同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより各々取得された気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風向を演算するための制御部へ、各センサ対からの信号を出力するための信号路と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
例えば前記センサ用基板の表面には信号路を構成する配線パターンが設けられ、当該配線パターンの周囲には前記信号のノイズを抑えるために網目状にパターンが形成された金属膜が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の直線方向におけるベクトルのデータを取得する第1のセンサと第2の直線方向におけるベクトルのデータを取得する第2のセンサとからなる複数のセンサ対がその表面に設けられたセンサ用基板を用いて測定を行い、これらのベクトルを合成して予め設定された基点からの風向を演算する。これによって、基板の面内各部の風向のデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るセンサ用ウエハの平面図である。
【図2】前記センサ用ウエハに設けられるセンサ対の斜視図である。
【図3】前記センサ対を構成する風速センサの縦断側面図である。
【図4】前記風速センサの縦断側面図である。
【図5】前記風速センサを構成する回路素子を含む回路図である。
【図6】前記風速センサを構成する回路素子を含む回路図である。
【図7】センサ用ウエハによる測定原理を示す説明図である。
【図8】各センサ対と基点との対応を示すためのセンサ用ウエハの平面図である。
【図9】センサ用ウエハに接続される制御部のブロック図である。
【図10】前記制御部に記憶されるグラフの説明図である。
【図11】前記制御部の表示部に表示される風向及び風速分布のイメージ図である。
【図12】配線に異常が起きたときの前記風速センサを構成する回路素子を含む回路図である。
【図13】配線に異常が起きたときの前記風速センサを構成する回路素子を含む回路図である。
【図14】断線状態と出力との対応関係を示した説明図である。
【図15】センサ用ウエハWが適用される加熱モジュールの平面図である。
【図16】前記加熱モジュールの側面図である
【図17】センサ用ウエハによる測定状態を示す説明図である。
【図18】センサ用ウエハWが適用されるレジスト塗布モジュールの側面図である。
【図19】他のセンサ用ウエハの平面図である。
【図20】更に他のセンサ用ウエハの平面図である。
【図21】前記センサ用ウエハの概略構成図である。
【図22】前記センサ用ウエハが適用される塗布、現像装置の平面図である。
【図23】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図24】前記塗布、現像装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のセンサ用ウエハ1の平面図を示している。このセンサ用ウエハ1は、半導体製造用のウエハWと略同様の形状に構成され、その径は例えば300mmであり、シリコンにより構成されている。センサ用ウエハ1を用いてその面内の各部の風向、風速を検出し、それに基づいてユーザはウエハWの面内の各部の風向、風速を推定する。センサ用ウエハ1の表面には、風向及び風速を測定するための29個のセンサ対11が設けられている。センサ対11の1つはウエハWの中心部に配置され、他のセンサ対11は前記中心部からセンサ用ウエハ1の8方向に放射状に広がるように配置されている。
【0015】
センサ用ウエハ1の表面にはその一端部付近から各センサ対11に向かって例えば印刷により形成された例えば導電路のパターン12が形成されている。導電路のパターン12は、ウエハWの金属汚染による半導体製品の歩留りの低下を防ぐことができる金属が選択され、この例ではアルミニウムにより構成している。なお、導電路のパターン12は、実際には多数のラインにより構成されるが、図1では便宜上並行して形成される多数のラインをまとめて1本の線として示している。前記センサ用ウエハ1の前記一端部には接続部13を介してフレキシブルプリント基板(FPB)14の一端側が取り付けられ、FPB14の他端側は後述の各種回路素子が設けられた基板15に接続されている。図中16はケーブルである。図中4で示すコンピュータである制御部4については後述する。各センサ対11と制御部4との間で、導電路パターン12、接続部13、FPB基板14、基板15に各々形成された配線及びケーブル16を介して信号の送受信が行われる。
【0016】
29個のセンサ対11についてチャンネル(Ch)1〜29とする。各チャンネルのセンサ対は互いに同様に構成されており、図2は例としてセンサ用ウエハ1の中心部のCh15のセンサ対11を拡大して示しており、このセンサ対11を例に挙げて説明する。センサ対11は、風速についてのデータを取得ための風速センサ2A、2Bからなり、風速センサ2A、2Bはその表面の所定の直線方向の気流の風速に応じて信号を出力する。風速センサ2A、2Bはそのように風速を検出できる方向が異なるように配置されることを除いて、互いに同様に構成されている。
【0017】
風速センサ2Aを例に挙げて図3、図4の縦断側面図も参照しながら説明する。風速センサ2Aは平面視正方形のチップであり、その一辺は例えば1.6mmである。チップの中央部には空隙部21が形成され、この空隙部21の表面を覆うように絶縁薄膜20が形成されている。絶縁薄膜20にはヒータ22と、このヒータ22を挟むようにサーモパイル23、24とが形成されている。また、チップには測温抵抗体である温度センサ25が設けられており、周囲温度に応じて当該温度センサ25の抵抗値が変化する。
【0018】
このヒータ22及び温度センサ25は、夫々図5に示す温度補償回路31を構成している。この温度補償回路31においてはヒータ22、温度センサ25が固定抵抗R1、R2に夫々直列に接続されている。ヒータ22と固定抵抗R1との中点、温度センサ25と固定抵抗R1との中点は、夫々オペアンプOP1の反転入力端子、非反転入力端子に接続されている。オペアンプOP1の出力端子はブリッジ回路に供給される電流の検出回路32を介して固定抵抗R1、R2に接続される。電流検出回路32はこのオペアンプOP1と固定抵抗R1、R2との間の電流値を検出し、後述の制御部4にこの電流値に対する検出信号を出力する。便宜上、この検出信号を検出電流Ax、Ayとして取り扱う。Axは風速センサ2Aが含まれる温度補償回路31における前記検出電流であり、Ayは風速センサ2Bが含まれる温度補償回路31における検出電流である。
【0019】
ヒータ22及び温度センサ25はグランドに接続されており、このようにヒータ22、温度センサ25及び固定抵抗R1、R2はブリッジ回路を構成している。また、電源電圧Vccを印加する電極、グランド間に電流供給回路30が設けられ、電流供給回路30は、固定抵抗R2と温度センサ25との間に接続されている。電流供給回路30は前記ブリッジ回路に供給する電流を制御する。周囲温度が高くなるほど温度センサ25の抵抗値が高くなる。このように、温度センサ25の抵抗値が高くなるほど抵抗R2と温度センサ25との間の電圧が高くなり、この電圧が高くなるほど、電流供給回路30からブリッジ回路へ供給する電流が小さくなる。
【0020】
気流の大きさによりヒータ22の温度が変化し、オペアンプOP1からはこのヒータ22の熱を補償するように電力が供給される。具体的に説明すると、気流が大きくなり、ヒータ22の温度が下がるとヒータ22の抵抗値(Rh)が下がりオペアンプの−側の入力電圧が低くなるのでオペアンプOP1からブリッジ回路に出力される電圧が高くなる。そして、ヒータ22及び測温抵抗体25に加わる電圧が高くなる。加わる電圧が高くなることによってヒータ22の温度が上がる。逆に気流が小さくなるとオペアンプOP1からブリッジ回路への出力電圧が低くなりヒータ22の温度が下がる。このような作用によりヒータ22の温度は一定に保たれる。
【0021】
また、周囲温度が変化して温度センサ25の抵抗値が変化すると、固定抵抗R2と温度センサ25との分圧比が変化し、オペアンプOP1への反転入力端子の電位が変化して、オペアンプOP1の出力が変化して、ヒータ22の出力が変化する。詳しく説明すると、周囲温度の上昇により温度センサ25の温度が上がって温度センサ25の抵抗値(Rb)が高くなる。固定抵抗R1、R2の抵抗値は気流により変化しないように構成され、ブリッジ回路の平衡条件よりRh/Rb=一定であるため、Rhが上昇してヒータ22の温度が上昇する。逆に周囲温度が低下したときは温度センサ25の抵抗値が下がり、Rhが下降してヒータ22の温度が下降する。このような作用によりヒータ22は周囲温度に対して一定温度だけ高い温度になるように温度補償される。前記電流供給回路30は、上記のように電流を制御することで周囲温度の変化に対してヒータ22の温度の変化のずれを抑える役割を有している。回路31の回路図中のオペアンプOP1、固定抵抗R1、R2、電流供給回路30、電流検出回路32などの回路素子は基板15に形成されている。
【0022】
また、サーモパイル23、24は図6に示す風速検出回路33を構成している。サーモパイル23、24は固定抵抗R3、R4に夫々直列に接続されており、これらの中点が夫々オペアンプOP2の反転入力端子、非反転入力端子に接続されている。また、固定抵抗R3、R4は電源電圧Vccが印加される電極に接続され、サーモパイル23、24はグランドに接続され、ブリッジ回路が構成されている。
【0023】
前記図3、図4も用いて風速検出回路33の作用を説明する。図3、図4ではヒータ22から放射される熱の分布をヒータ22に向かって領域27a、27b、27cとして示し、各領域はこの順に温度が高い。図3に示すようにサーモパイル23、24の配列方向に気流が形成されていない状態では、サーモパイル23、24は互いに同様の熱量を受け、オペアンプOP2からは所定の電圧が出力される。図7に示すように前記配列方向に気流が形成されると、その風速に応じて上記のヒータ22の熱分布が偏り、上流側のサーモパイル(図では24)に比べて下流側のサーモパイル(図では23)の温度が高くなる。この温度変化を受けてサーモパイル24、23の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化に応じてオペアンプOP2からの出力が変化する。つまり、前記配列方向の風速に応じてオペアンプOP2からの出力が変化する。
【0024】
図3の状態に対してサーモパイル23の温度が高くなる図4の状態では、サーモパイル24に比べてサーモパイル23の抵抗値が上昇し、オペアンプOP2の−側の入力が大きくなる。図4とは逆にサーモパイル24側に向かって気流が形成されてサーモパイル24の温度が高くなるとサーモパイル23に比べてサーモパイル24の抵抗値が上昇し、オペアンプOP2の+側の入力が大きくなる。つまり、風速センサ2A、2Bは前記配列方向における風向きと、当該配列方向における風速とを検出することができる。風速センサ2Aが含まれる風速検出回路33からの前記出力をVx、風速センサ2Bが含まれる風速検出回路33からの前記出力をVyとする。この風速検出回路33のオペアンプOP2、固定抵抗R3、R4は基板15に形成されている。
【0025】
図2、図5及び図6に示す22A〜26Aは、風速センサ2A、2Bの表面に形成される電極である。図5の回路図において電極22Aは、ヒータ22とオペアンプOP1との間に、電極25Aは温度センサ25とオペアンプOP1との間に設けられる。電極26Aは、ヒータ22及び温度センサ25及びグランドに接続される。また、図6の回路図において電極23Aは、サーモパイル23とオペアンプOP2との間に、電極24AはオペアンプOP2との間に夫々設けられる。図2に示すようにボンディングワイヤー22Bを介してこれらの電極22A〜26Aと、センサ用ウエハ1の導電路パターン12の先端部に形成される電極22C〜26Cとが互いに接続されている。なお、図2以外の各図では煩雑化を防ぐためにボンディングワイヤー22Bを省略している。
【0026】
各センサ対11を構成する風速センサ2A、2Bは図1、図2に示すように互いに近接して配置される。そして、各センサ対11の風速センサ2Aのサーモパイル23、24は互いに同じ方向に配列され、この方向をX方向とする。この例では前記サーモパイル23が図1中の右側に配置され、この右側を+X側とする。各センサ対11の風速センサ2Bのサーモパイル23、24は互いに同じ方向に配列され、この方向をY方向とする。この例では前記サーモパイル23が図1中の上側に配置され、この上側を+Y側とする。X方向とY方向とは互いに90°異なっている。
【0027】
各センサ対11による風向及び風速の測定の原理について図7を参照しながら説明する。図7では矢印でセンサ用ウエハ1の表面の気流の流れを示している。既述のように風速センサ2AでX方向の風速、Y方向の風速が検出される。同じセンサ対11を構成する風速センサ2A、2Bは互いに近接して配置されていることから、これらの風速センサ2Aの表面を互いに同じ方向且つ同じ風速の気流が形成されていると見ることができる。そして、風速センサ2Aにより検出される気流の風速は上記のようにX方向の風速であることから、気流のX方向のベクトル成分3Aと見ることができる。また、風速センサ2Bにより検出される気流の風速は上記のようにY方向の風速であることから、気流のY方向のベクトル成分3Bと見ることができる。
【0028】
後述の制御部4は、このXY方向の各ベクトル成分をセンサ対11毎に予め設定された点Pを基点として合成することにより、風向及び風速を演算して表示する。図7では図の煩雑化を防ぐために基点Pを鎖線の矢印により引き出してずらした位置に示しているが、実際には基点Pは図中に白い点として示した風速センサ2A、2Bに近接する位置に設定される。従ってこの基点Pの周囲にも風速センサ2A、2Bと同じ方向且つ同じ風速の気流が形成されていると見ることができる。
【0029】
後述の制御部4において各基点Pの位置は、ウエハWの中心位置を原点としたXY座標系により定義されている。上記のようにウエハWの径が300mmであるため、この例ではウエハWの大きさに対応してX=+150〜−150、Y=+150〜−150の範囲の数値で定義している。つまりX、Y方向夫々において1つの数値のずれが、ウエハWのX、Y方向夫々における1mmのずれに相当する。ただし、基点Pの位置は例えば+X軸に対する傾きと、原点からの距離とで定義してもよい。
【0030】
図8ではチャンネル毎の基点Pの位置を、チャンネルに対応する数字を付してP1〜P29で示している。上記のように風速センサ2A、2Bの表面と、基点Pの周囲とで同じ風向、風速の風が流れるものと見なすため、各センサ対11におけるこの基点Pの位置は風速センサ2A、2Bの付近に設定される。この例では風速センサ2Aの中心35と基点PとのX方向の距離l1、風速センサ2Bの中心36と基点PとのX方向の距離l2、中心35と基点PとのY方向の距離l3及び中心36と基点PとのY方向の距離l4は各々1.43mmに設定されている。
【0031】
続いて制御部4について図9を参照しながら説明する。制御部4はバス41を備え、バス41にはCPU42、プログラム格納部43、テーブル44、メモリ45A、45B、表示部46及び操作部47が接続されている。プログラム格納部43にはプログラム48が格納されている。このプログラム48は上記のように各チャンネルの風向及び風速を演算し、表示部に表示したり、後述するように各チャンネルの不具合を検出したりするように命令(各ステップ)が組み込まれている。プログラム格納部43は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等により構成されている。
【0032】
テーブル44には、チャンネル毎に各種のデータが記憶される。このデータとしては、図6で説明したオペアンプOP2を介して風速センサ2A、2Bから出力された電圧Vx、Vy、これらVx、Vyから夫々得られるX方向、Y方向の風速Cx、Cy、風速Cx、Cyから演算される上記の点Pを基点とする風速Cxy、上記の基点PのXY座標及び電流検出回路32の検出電流Ax、Ayである。これらの各値が、チャンネル毎に夫々互いに対応付けられて記憶される。また、このテーブル44のVx、Vyはデータの取得を開始してからごく短い間隔で取得され、時間毎にこれらVx、Vy、Cx、Cy、Cxyがテーブル44に記憶される。それによって、ユーザが所望の時刻におけるセンサ用ウエハ1の風向、風速の分布を表示することができるようになっている。図9ではtの数値が大きいほど新しく取得されたデータであることを示している。
【0033】
メモリ45Aには、図10に示すグラフ49が記憶されている。このグラフ49は前記出力電圧Vx、Vyと、前記風速Cx、Cy(単位m/秒)との対応関係を示したものであり、縦軸は前記出力電圧、横軸は前記風速を夫々示している。プログラム48により、テーブル44に記憶されたVx、Vyからグラフ49において対応するCx、Cyの値が読み出される。読み出されたCx、Cyは、前記Vx、Vyに対応付けられてテーブル44に記憶される。
【0034】
表示部46はディスプレイであり、算出した風向及び風量を表示する表示領域51と、各チャンネルの不具合を表示する表示領域52とを備えている。プログラム48は、上記のように各センサ対11により得られたX方向の風速及びY方向の風速を、点Pを基点にして合成して風向を算出する。また、X方向とY方向のなす角が90°であることから{(Cx)+(Cy)}1/2=Cxyを演算し、このCxyを演算に用いた、Cx、Cyに対応付けてテーブル44に記憶する。
【0035】
図11はこの表示領域51における表示の一例を示している。設定された座標に基づいてこの表示領域51の所定の場所に各基点Pが表示され、この基点Pから算出した風向が矢印で表示される。各Pについては図8と同様にチャンネルに対応する番号を付して示している。前記矢印は、演算された風速Cxyの大きさが大きいほど長く表示される。また、各チャンネルの風速Cxyに基づいて、センサ用ウエハ1における当該風速Cxyの分布がカラーで表示される。センサ用ウエハ1の画像の下に示されたカラーと風速Cxyの数値との対応を示すバー53により、ユーザはセンサ用ウエハ1の面内各部の風速Cxyの値が分かるようになっている。
【0036】
ところで、実際の風速分布の画像表示はカラーのグラデーションであるが、図11では便宜上等高線により区画して風速の分布を示している。なお、この例では−Y方向に風向が形成されるときには、風速Cxyの値が−であるものとして示されることになっているが、この例ではCxyの値はすべて+である。また、図中に点線で示すようにウエハ1の外形が表示され、各基点Pのウエハ1に対する位置が分かるようになっている。
【0037】
操作部47は例えばマウスやキーボードにより構成されている。ユーザはこの操作部47から、各センサ対11に含まれる上記の各回路への電力供給の開始及び停止、各センサ対11からのデータの取り込みの開始及び停止、各表示領域51、52への表示のオンオフを指示する。そして、後述するボンディングワイヤー22Bの接続のチェックを行う確認モードと、風向、風速のデータを取得する測定モードとの切り替えを指示する。また、ユーザは、この操作部47から測定開始時点からの経過時間を指定し、それによってその経過時間内に取得された上記の風速Cx、Cyが読み出されて、図11の表示が行われる。また、この操作部47から操作を行うことで、測定開始から測定終了までにCx、Cyを取得された時系列に従って順次読み出し、図11で説明した風速及び風向を示す矢印とカラー画像を連続的に表示領域51に表示させる。つまり、風速及び風向の変化を動画として表示することもできる。
【0038】
ここで、この制御部4に設けられるボンディングワイヤー22Bによるセンサ対11の各電極と、センサ用ウエハ1の各電極との接続の不具合を検出する確認モードについて説明する。風速センサ2A、2Bは風速を検出する役割を果たすために気流に直接曝す必要があるので、当該風速センサ2A、2Bの電極とセンサ用ウエハ1の電極とを接続する配線についても気流に曝されることになる。そこで、制御部4は、このようにボンディングワイヤー22Bが風圧により外れたことを検出する機能を備えている。
【0039】
この例において各ボンディングワイヤー22Bが正常に各電極に接続され、且つセンサ用ウエハ1表面に気流が形成されていない状態では、各センサ対11からの検出電流Ax、Ayは例えば2mAであり、出力電圧Vx、Vyは例えば1.6Vになるように設定されている。断線が起きたときの一例について説明する。ボンディングワイヤー22Bによる電極23Aのウエハ1の電極23Cとの接続、電極24Aとウエハ1の電極24Cとの接続の少なくともいずれか一方が絶たれたときには、オペアンプOP2への入力端子(+側端子)へ信号が入力されなくなるためVx、Vyは0Vになる。
【0040】
また、ボンディングワイヤー22Bによる各接続のうち、電極25Aのウエハ1の電極25Cとの接続のみが絶たれたときには温度補償回路31の回路構成が図12に示すように変化し、温度センサ25の抵抗の作用がなくなることでオペアンプOP1の入力端子への入力が増加し、オペアンプOP1の出力が増大する。そしてAx、Ayが2mAより増加し、例えば4mA〜5mAになる。
【0041】
また、ボンディングワイヤー22Bによる各接続のうち、電極26Aのウエハ1の電極26Cとの接続のみが絶たれたときには温度補償回路31の回路構成が図13に示すように変化する。ヒータ22と温度センサ25との間に電流が流れるとすると、オペアンプOP1の出力は不安定になるので、このヒータ22と温度センサ25との間には電流が流れず、Ax、Ayが0mAとなる。電極22Aとウエハ1の電極22Cとの接続が絶たれたときには、ヒータ22に電流が流れず発熱しなくなるため風速の影響を受けなくなり、前記電極23Aの接続及び電極24Aの接続が共に正常である場合には、Ax、Ayが0mAとなる。電極25Aとウエハ1の電極25Cとの接続及び電極26Aとウエハ1の電極26Cとの接続が絶たれたときにも、ヒータ22に電流が流れず発熱しなくなるため風速の影響を受けなくなり、前記電極23Aの接続及び電極24Aの接続が共に正常である場合には、Ax、Ayが0mAとなる。
【0042】
図14は断線された電極と前記Vx、Vy、Ax、Ayとの関係をまとめて示した表であり、表中にXを付した電極がセンサ用ウエハ1の電極に対して断線していることを示す。このように気流が形成されていない状態で測定を行うと、断線が起きている場合には、Vx、VyまたはAx、Ayの少なくとも一方が許容範囲から外れることになる。プログラム48は各チャンネルのVx、Vyが予め設定された許容範囲に収まるか否か、電流値Ax、Ayが予め設定された許容範囲に収まるか否かについて夫々判定し、いずれかが許容範囲に収まっていないと判定した場合には表示領域52において、そのチャンネルの風速センサ2A、2Bのいずれかまたは両方について断線が起きている旨の表示を行う。このようにチャンネル毎に風速センサ2A、2Bの一方または両方に断線が起きている旨の表示が行われる。なお、このようなアラームの出力は、画面表示に限られず、例えば音声出力により行ってもよい。メモリ45Bには既述の検出電流Ax、Ayの許容範囲及び出力電圧Vx、Vyの許容範囲が記憶されている。Ax、Ayの許容範囲は4mAより低く、2mAよりも若干低い数値から若干高い数値の間に、Vx、Vyの許容範囲は0Vよりも高く、1.6Vよりも若干低い数値から若干高い数値の間に夫々設定されており、ワイヤー22Bの断線を検出できるように設定されている。
【0043】
続いて、このセンサ用ウエハ1を用いて、風向及び風速のデータを取得するモジュールの一例として加熱モジュール61について説明する。図15、図16は、夫々加熱モジュール61の平面図、側面図である。図中62は基台、63はウエハWを加熱する熱板である。64は冷却プレートであり、熱板63で加熱されたウエハWを冷却すると共に搬送アーム60から受け渡されたウエハWを熱板63上へ搬送する。
【0044】
熱板63が設けられる側を後方側、冷却プレート64が設けられる側を前方側とすると、熱板63の上方、左右方向及び後方を囲うようにカバー65が形成されており、カバー65の後方側には排気口66が左右方向に多数設けられている。冷却プレート64から熱板63に設けられる不図示の昇降ピンによりウエハWは熱板63に受け渡される。ウエハWが熱板に受け渡されると、排気口66から排気が行われ、ウエハWはカバー65の前方側から当該カバー65の内部に流れ込んだ気流に曝されながら加熱される。
【0045】
レジスト膜が形成されたウエハWを加熱する加熱モジュール61の風向き及び風速のデータを取得する手順について説明する。ユーザはセンサ用ウエハ1を熱板63上に所定の向きで載置する。ユーザが操作部47から所定の操作を行うことで、各チャンネルの風速センサ2A、2Bにより構成される回路に電力が供給され、風速センサ2A、2Bの各センサ対11のヒータ22の温度が周囲温度よりも上昇する。そして確認モードが実行され、各チャンネルから出力電圧Vx、Vy、検出電流Ax、Ayが制御部4に送信され、これら各チャンネルのVx、Vy、Ax、Ayはテーブル44の所定の領域に互いに対応付けられて記憶される。プログラム48は、記憶された各チャンネルの出力電圧Vx、Vyが許容範囲に収まっているか否か、各チャンネルの検出電流Ax、Ayが許容範囲に収まっているか否かを判定する。
【0046】
出力電圧Vx、Vy、検出電流Ax、Ayが両方とも許容範囲に収まっているチャンネルについては表示部46にその旨を表示し、いずれかが許容範囲から外れているチャンネルについては表示部46にその旨を表示する。然る後、ユーザは加熱モジュール61の熱板63の温度をウエハWの処理温度に上昇させると共に排気口66からの排気を行う。図17に矢印で示すように、センサ用ウエハ1の表面に気流が形成される。前記ヒータ22の温度が周囲温度の変化に合わせて、当該周囲温度よりも高い温度に変化する。ユーザが操作部47から所定の操作を行い、確認モードから測定モードへの切り替えを指示すると、各センサ対11から出力電圧Vx、Vyが制御部4に送信され、テーブル44の所定の領域に互いに対応付けられて記憶される。
【0047】
上記のようにVx、VyからX方向の風速Cx、Y方向の風速Cyが演算され、テーブル44に記憶されると共に風速Cxyが演算されてテーブル44に記憶される。そして記憶されたCx、Cy及びCxyに基づいて表示領域51に風向及び風速を示す矢印及び風速の分布を示す画像が表示される。ユーザは、この表示に基づいて、センサ用ウエハ1の各部が均一性高い風速、風向になるように加熱モジュール61の各部を調整することができる。それによって加熱処理中におけるウエハWの面内の温度分布を均一化し、処理の均一性を高めることができる。
【0048】
このようなセンサ用ウエハ1を用いることで、当該センサ用ウエハ1の表面の各部において360°方向における風向のデータと風速のデータとを取得することができる。従って、モジュールの風向及び風速についての異常を正確に検出することができ、モジュールにおいて異常が検出されたチャンネルに対応する箇所の調整を行うことができるので、ウエハWの面内における処理の均一性を高くすることができ、歩留りを低下させることができる。また、ウエハWに同じ処理を行う複数のモジュール間でこのセンサ用ウエハ1を用いて調整を行うことで、モジュール間においてウエハWに均一性高く処理を行えるように各モジュールの調整を行うことができる。
【0049】
センサ用ウエハ1により風向及び風速の測定を行う加熱モジュールとしては上記の構成には限られない。例えば前記カバー65において、前方側の他に後方側も開放されており、排気口がカバー65の後方側に設けられる代わりにカバー65において熱板63の中央部上に設けられる。そして、ウエハWに加熱処理を行うときには、この排気口から排気を行うことでウエハWの表面に周縁部から中央部へ向かう気流を形成する。このような加熱モジュールにもセンサ用ウエハを適用することができる。つまり、モジュールにおける気流の形成方向に関わらずセンサ用ウエハ1を用いることができる。
【0050】
また、図18はウエハWにスピンコーティングによりレジストを塗布するレジスト塗布モジュールCOTの縦断側面図である。図中72はスピンチャックであり、ウエハWを保持して鉛直軸回りに回転する。図中73はカップであり、下方側に設けられた排気口74から排気を行う。図中75はレジスト供給ノズルであり、スピンチャック72に保持されたウエハWの中央部上と、カップ73の外側領域との間で移動自在に構成される。図中76は気体をカップ73内に供給するためのフィルタユニットである。
【0051】
センサ用ウエハ1により風向及び風速のデータの取得を測定するときには、ウエハWの処理時と同様にセンサ用ウエハ1の裏面中央部をスピンチャック72に保持し、スピンチャック72を停止させた状態でフィルタユニット76からの気体の供給とカップ73からの排気とを行いデータの取得を行う。このレジスト塗布モジュールCOTにおいても、加熱モジュール61と同様にセンサ用ウエハ1を用いて風向及び風速のデータの取得を行い、モジュールの調整を行うことでウエハWの温度分布の均一性を高め、それによってウエハWにおける塗布処理の均一性を高めることができる。
【0052】
続いてセンサ用ウエハ1の変形例であるセンサ用ウエハ8について平面図である図19を参照しながら、センサ用ウエハ1との差異点を中心に説明する。このセンサ用ウエハ8では接続部13がウエハWの中央部よりに取り付けられ、この接続部13の取り付け付け位置から導電路パターン12が各チャンネルのセンサ対11に向けて概ね放射状に伸びるように構成されている。なお、図示の便宜上、実際には複数並行して形成されている導電路パターン12を1本の線として描いている。
【0053】
このように導電路のパターンがセンサ用ウエハ8の中央部付近から周縁部へ伸びるように構成されることで各パターン12の配線抵抗を抑え、それによってノイズの発生を抑えている。このセンサ用ウエハ8では導電路パターン12の長さは170mm以下に構成されており、その配線抵抗値は40Ω以下になるように形成されている。配線抵抗値が40Ωを超えると信号中のノイズが増えてしまうが、40Ω以下では信号中のノイズが少ないことを実験により確認している。
【0054】
また、導電路パターン12の周囲には、アルミニウムにより網目状のパターン81を形成している。このメッシュパターン81はグランドの役割を持ち、導電路パターン12のインピーダンスを抑え、当該導電路パターン12を伝わる信号のノイズを抑えるために形成されている。なお、実際にはこの網目は図示したものよりも細かく形成される。前記ノイズを防ぐために、パターン81でセンサ用ウエハ8を覆う面積を増やした方がよい。つまり、このように網目状に開口した膜を設けるよりも前記開口部が設けられていない膜を形成した方が好ましいが、加熱モジュール61での加熱時にセンサ用ウエハ1を構成するシリコンと、パターン81を構成するアルミニウムとの熱膨張係数の違いによる当該センサ用ウエハ8の反りを抑えるために、このような網目状のパターン81を形成している。図中82は、網目状のパターン81が形成されず、ユーザがこのセンサ用ウエハ8を取り扱うために触ることが可能な領域である。
【0055】
上記の各例では温度補償回路31及び風速検出回路33を構成するオペアンプOPなどを基板15に設けることで、センサ用ウエハの厚さが大きくなることを防いでいる。これによって、センサ用ウエハにより取得される風向及び風速を、半導体製品を製造するためのウエハWの処理時に形成される風向及び風速に近似させることができるので、精度高く風向及び風速の計測ができる。また、気流が乱れることを防ぐために、ボンディングワイヤー22Bによりセンサ2A、2Bの電極22A〜26Aとセンサ用ウエハの電極22C〜26Cとを接続しているが、センサ2A、2Bの下面にセンサ用ウエハの導電路を引き回し、センサ2A、2Bに貫通孔を形成し、この貫通孔にセンサの電極22A〜26Aとセンサ用ウエハの電極22C〜26Cとを接続する導電路を形成してもよい。
【0056】
上記のセンサ用ウエハを、ウエハWを搬送する前記搬送アーム60によって上記の加熱モジュール61及びレジスト塗布モジュール71などのモジュールに搬送して、風向及び風速のデータを取得してもよい。図20はこのように搬送アームにより搬送されるセンサ用ウエハ9を示している。このセンサ用ウエハ9は表面にボード91を備え、当該ボード91には、上記の図5、図6の温度補償回路31及び風速検出回路33を形成する各種抵抗R1〜R7等の回路素子、電流検出回路32オペアンプOP1、OP2及び後述する通信回路97、スイッチ94、95、アンテナ98が形成されている。また、センサ用ウエハ9の表面にはバッテリ96が設けられている。
【0057】
図21はセンサ用ウエハ9の構成を概略的に示しており、各チャンネルの温度補償回路31及び風速検出回路33にはスイッチ94を介してバッテリ96が接続されている。風速検出回路33の後段にはスイッチ95を介して通信回路97とアンテナ98が接続されている。バッテリ96には通信回路97が接続され、通信回路97によってスイッチ94、95の切り替えが制御される。また、制御部4には既述の構成に加えて、通信回路97及びアンテナ98に対応する通信回路99、アンテナ90が設けられている。図21では便宜上、既述した構成の一部を省略している。
【0058】
モジュールのデータの取得を行わない場合に各回路31、33とバッテリ96とは接続されておらず、センサ用ウエハ9がモジュールに搬送されると、通信回路99から通信回路97へアンテナを介して無線で信号が送信され、スイッチ94が閉じてバッテリ96から各回路31、33に電力が供給される。次いで、各チャンネルの風速検出回路33がスイッチ95により順番に通信回路97に接続され、各チャンネルのAx、Ay、Vx、Vyが順番にアンテナ98から制御部4のアンテナ90へ無線で送信され、通信回路99を介して取り込まれる。つまり、時分割により各チャンネルの出力が制御部4に取り込まれるが、スイッチ95の切り替えは高速で行われ、実質同時に各チャンネルの出力が制御部4に取り込まれる。以降は、上記のように表示部46に風向及び風速が表示される。
【0059】
上記の各例では、各風速センサ2A、2Bにおける風速の検出方向(サーモパイルの配列方向)が互いに90°異なるようにこれら風速センサ2A、2Bが配置されているが、これらの検出方向は互いに並行せずに傾いていればよく、90°異なることには限られない。
【0060】
続いて、上記のセンサ用ウエハ9が用いられる塗布、現像装置100について説明する。図22は、前記塗布、現像装置の平面図、図23は同概略斜視図、図4は同概略側面図である。この塗布、現像装置1は、キャリアブロックS1と、処理ブロックS2と、インターフェイスブロックS3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックS3にはさらに露光装置S4が接続されている。以降の説明ではブロックS1〜S3の配列方向を前後方向とする。
【0061】
キャリアブロックS1は、ウエハWを格納するキャリアCを塗布、現像装置1に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台101と、開閉部102と、開閉部102を介してキャリアCからウエハWを搬送する受け渡しアーム103とを備えている。また、上記のセンサ用ウエハ9を格納する格納部104が設けられている。
【0062】
処理ブロックS2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第6の単位ブロックB1〜B6が下から順に積層されて構成されており、各単位ブロックBは、下層側から2つずつ、同様に構成されている。つまり、単位ブロックB1、B2が同じ構成であり、単位ブロックB3、B4が同じ構成であり、単位ブロックB3、B4が同じ構成である。
【0063】
図22に示す第1の単位ブロックB1について説明すると、キャリアブロックS1からインターフェイスブロックS3へ向かう搬送領域R1の左右には液処理ユニット200、棚ユニットU1〜U6が夫々配置され、液処理ユニット200には、反射防止膜形成モジュールBCTと、既述のレジスト膜形成モジュールCOTとが設けられている。反射防止膜形成モジュールBCTは反射防止膜形成用の薬液を供給する他はレジスト膜形成モジュールCOTと同様に構成されている。
【0064】
前記搬送領域R1には、各ウエハの搬送機構であり既述の搬送アーム60に相当する搬送アームA1が設けられている。この搬送アームA1は、進退自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在、且つ搬送領域R1の長さ方向に移動自在に構成されており、単位ブロックB1の全てのモジュール間でウエハWの受け渡しを行うことができる。また、前記棚ユニットU1〜U6は、搬送領域R1の長さ方向に沿って配列され、棚ユニットU1〜U5は、既述の加熱モジュールが例えば2段に積層されて構成されている。
【0065】
棚ユニットU6は、互いに積層された周縁露光モジュールWEEにより構成される。この周縁露光モジュールWEEはレジスト塗布後のウエハWの周縁部を露光する。また、このモジュールWEEはスピンチャックを備えている。このスピンチャックは、レジスト塗布モジュールCOTのスピンチャック72と同様にウエハWの中央部を保持して鉛直軸回りに回転させる。またモジュールWEEは、ウエハWの周縁部に上方から光を照射する照射部と、ウエハWの下方でこの光を受光する受光部とを備えている。前記受光部の受光量の変化によりウエハWの周縁部に設けられる切り欠き(ノッチN)を検出し、スピンチャックによりノッチNを所定の方向に向けることができる。
【0066】
単位ブロックB3〜B6は、液処理ユニット200でウエハWに供給する薬液が異なること及び周縁露光モジュールの代わりに加熱モジュールが設けられることを除き、単位ブロックB1、B2と同様に構成される。単位ブロックB3、B4は、反射防止膜形成モジュールBCT及びレジスト塗布モジュールCOTの代わりに保護膜形成モジュールTCT1、TCT2を備えている。反射防止膜形成モジュールBCT、レジスト塗布モジュールCOT及び保護膜形成モジュールTCTを塗布膜形成モジュールとする。単位ブロックB5、B6は、反射防止膜形成モジュールBCT及びレジスト膜形成モジュールCOTの代わりに現像モジュールDEV1、DEV2を備える。
【0067】
保護膜形成モジュールTCT、現像モジュールDEVはウエハWに供給する薬液の違いを除いてレジスト塗布モジュールCOTと略同様に構成されている。保護膜形成モジュールTCTは液浸露光時にウエハWの表面を保護する保護膜形成用の薬液を、現像モジュールは現像液を夫々ウエハWに供給する。なお、各単位ブロックB1〜B6の搬送アームはA1〜A6として図に示し、上記の搬送アーム60に相当する。
【0068】
搬送領域R1のキャリアブロックS1側には、各単位ブロックBに跨った棚ユニットU7が設けられている。棚ユニットU7は、互いに積層された複数のモジュールにより構成されている。これらのモジュールとしては、各単位ブロックの高さ位置に設けられた受け渡しモジュールCPL11〜CPL13と、受け渡しモジュールCPL14と、バッファモジュールBU11と、疎水化処理モジュールADHとがある。説明中、CPLと記載した受け渡しモジュールは、載置したウエハWを冷却する冷却ステージを備えている。バッファモジュールは、複数枚のウエハWを格納する。また、疎水化処理モジュールADHは、ウエハWに処理ガスを供給し、ウエハW表面を疎水化させる。棚ユニットU7の近傍には、昇降自在且つ棚ユニットU7に対して進退自在な受け渡しアーム105が設けられ、棚ユニットU7の各モジュール間でウエハWを搬送する。
【0069】
インターフェイスブロックS3は棚ユニットU8を備えており、棚ユニットU8は、積層された受け渡しモジュールTRS0〜TRS2、受け渡しモジュールCPL1、バッファモジュールBU1〜BU4により構成されている。各単位ブロックB1〜B6及び露光装置S4間で第1〜第3のインターフェイスアーム106〜108によりウエハWを受け渡す役割を有する。また、露光前にウエハWの裏面をブラシにより洗浄する裏面洗浄モジュールBST、露光後にウエハWの表面を洗浄する露光後洗浄モジュールPIRが設けられている。
【0070】
この塗布、現像装置1及び露光装置S4からなるシステムのウエハWの搬送経路について説明する。例えばウエハWは単位ブロックB1→B3→B5を通過する経路1と、単位ブロックB2→B4→B6とを通過する経路2とによって搬送され、各経路で同様の処理を受ける。以下、前記経路1の搬送について詳細に説明する。
【0071】
ウエハWは、キャリアC→受け渡しアーム103→バッファモジュールBU11→受け渡しアーム103→疎水化処理モジュールADH→搬送アームA1→反射防止膜形成モジュールBCT→搬送アームA1→加熱モジュール→搬送アームA1→レジスト塗布モジュールCOT→搬送アームA1→加熱モジュール61→周縁露光モジュールWEE→搬送アームA1→受け渡しモジュールCPL11の順で搬送され、ウエハWの表面に反射防止膜、レジスト膜の順に下層側から塗布膜が積層される。
【0072】
その後、ウエハWは、受け渡しアーム105→受け渡しモジュールCPL12→搬送アームA3→保護膜形成モジュールTCT→搬送アームA3→加熱モジュール61→搬送アームA3→受け渡しモジュールTRS1の順に搬送される。これによってレジスト膜の上層に保護膜が形成されると共にウエハWがインターフェイスブロックS3へと搬入される。
【0073】
前記ウエハWは、第1のインターフェイスアーム106→露光前洗浄モジュールBST→第1のインターフェイスアーム106→バッファモジュール群3→第2のインターフェイスアーム107→受け渡しモジュールCPL1→第3のインターフェイスアーム108→露光装置S4の順で搬送され、裏面洗浄処理に続いて液浸露光処理を受ける。
【0074】
露光済みのウエハWは、第3のインターフェイスアーム108→受け渡しモジュールTRS0→第2のインターフェイスアーム107→露光後洗浄モジュールPIR→バッファモジュール群BU→第2のインターフェイスアーム107→受け渡しモジュールTRS2の順に搬送される。その後、搬送アームA5→加熱モジュール61→現像モジュールDEV→搬送アームA5→加熱モジュール61→搬送アームA5→受け渡しモジュールCPL13→受け渡しアーム105→受け渡しモジュールCPL14→受け渡しアーム103→キャリアCの順に搬送される。
【0075】
センサ用ウエハ9は、キャリアCから搬送される代わりに格納部104からウエハWと同様に上記の受け渡しモジュールを順番に搬送されて、単位ブロックB1またはB2の周縁露光モジュールWEEに搬送され、当該センサ用ウエハ9のノッチNが検出され、当該ノッチNが所定の方向を向くようにセンサ用ウエハ9の向きが調整される。然る後、このモジュールWEEから受け渡しモジュール間を搬送されて測定を行うモジュールに搬送され、測定後はウエハWと同様に各層の受け渡しモジュール間を搬送されて格納部104に戻される。上記のようにモジュールWEEでセンサ用ウエハ9の向きを調整することで、測定を行うモジュールに対して各センサ対の位置が調整される。従って、センサ用ウエハ9の面内の風向または風速に異常が検出されたときに、モジュールの不具合がある箇所を容易に特定することができるので、メンテナンス時間を短縮することができる。また、センサ用ウエハ9はキャリアCに格納して、塗布、現像装置100に搬送してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 センサ用ウエハ
11 センサ対
2A、2B 風速センサ
22 ヒータ
22B ボンディングワイヤー
23、24 サーモパイル
25 温度センサ
4 制御部
44 テーブル
45A、45B メモリ
46 表示部
48 プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置部を備えた基板処理装置にて、前記載置部に載置された前記基板の表面における複数の測定領域の気流の風向についてのデータを取得する基板処理装置のデータ取得方法において、
気流のベクトルのデータを取得するための第1のセンサと、第2のセンサとからなる複数のセンサ対がその表面に設けられたセンサ用基板を載置部に載置する工程と、
各第1のセンサにより、前記センサ用基板の表面に沿って設定された第1の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、
各第2のセンサにより、センサ用基板の表面に沿い、且つ前記第1の直線方向とは傾いて設定された第2の直線方向における気流のベクトルのデータを取得する工程と、
同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより各々取得された気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風向を演算する工程と、
を含むことを特徴とする基板処理装置のデータ取得方法。
【請求項2】
前記気流のベクトルのデータは気流の風速についてのデータであり、
前記気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風速を演算する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のデータ取得方法。
【請求項3】
第1の直線方向と、第2の直線方向との傾きのなす角は90°であることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置のデータ取得方法。
【請求項4】
各基点からの風向、風速の少なくとも一方を表示部に表示する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置のデータ取得方法。
【請求項5】
同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより取得されるベクトルのデータが許容範囲であるか否かを検出する工程と、
前記第1のセンサ及び第2のセンサにより構成される回路を流れる電流値が許容範囲であるか否かを検出する工程と、
前記データ及び電流値についての検出結果に基づいて、第1のセンサ及び第2のセンサに設けられる電極と、センサ用基板に設けられる電極との接続が異常であるか否かを報知する工程と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置のデータ取得方法。
【請求項6】
基板が載置される載置部を備えた基板処理装置にて、前記載置部に載置された前記基板の表面における複数の測定領域の気流の風向についてのデータを取得するためのセンサ用基板であって、
前記センサ用基板の表面に沿って設定された第1の直線方向における気流のベクトルのデータを取得するための複数の第1のセンサと、
前記第1のセンサと共に各々センサ対を構成し、且つ前記センサ用基板の表面に沿い、前記第1の直線方向とは傾いて設定された第2の直線方向における気流ベクトルのデータを取得するための複数の第2のセンサと、
同じセンサ対をなす第1のセンサ及び第2のセンサにより各々取得された気流のベクトルをセンサ対毎に予め設定された基点に基づいて合成し、各基点からの風向を演算するための制御部へ、各センサ対からの信号を出力するための信号路と、
を備えたことを特徴とするセンサ用基板。
【請求項7】
前記気流のベクトルのデータは気流の風速についてのデータであることを特徴とする請求項6記載のセンサ用基板。
【請求項8】
第1の直線方向と、第2の直線方向との傾きのなす角は90°であることを特徴とする請求項6または7に記載のセンサ用基板。
【請求項9】
センサ用基板の表面には信号路を構成する配線パターンが設けられ、当該配線パターンの周囲には前記信号のノイズを抑えるために網目状にパターンが形成された金属膜が設けられていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一つに記載のセンサ用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−15376(P2013−15376A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147582(P2011−147582)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】