説明

基板処理装置

【課題】基板の周縁部に対するブラシの当接を検出することができる、基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板の周縁部を洗浄するためのブラシ13は、電磁クラッチ39がオフの状態で、ブラシ回転軸19とともに自由に回転可能である。そのため、この自由回転可能な状態のブラシ13は、回転中の基板の周縁部に当接すると、その基板の回転に従動して回転する。したがって、電磁クラッチ39がオフの状態でのブラシ13の回転は、ブラシ13が基板の周縁部に当接していることを意味する。よって、ブラシ回転軸19の回転に伴ってエンコーダ43から出力されるパルス信号に基づいて、ブラシ13が基板の周縁部に当接したことを検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄処理するための基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体ウエハの周縁部の汚染が、半導体ウエハの処理品質に対して無視できない影響を与える場合がある。具体的には、いわゆるバッチ処理工程では、複数枚の半導体ウエハが鉛直姿勢で処理液中に浸漬されるため、半導体ウエハの周縁部に汚染物質が付着していると、その汚染物質が、処理液中に拡散し、半導体ウエハの表面のデバイス形成領域に再付着するおそれがある。
【0003】
そのため、最近では、半導体ウエハなどの基板の周縁部の洗浄に対する要求が高まっている。
基板の周縁部の洗浄に関する先行技術として、たとえば、円筒状のブラシを設け、基板を回転させつつ、ブラシを移動させて、その基板の周端面にブラシの外周面を当接させることにより、基板の周端面の汚染を除去する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−197592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この先行技術では、洗浄処理時に、ブラシが基板の周端面に当接していることが保証されない。たとえば、基板に対するブラシの位置が正規の位置からずれていたり、ブラシを保持するホルダからブラシが脱落したりしているために、基板の周端面にブラシが当接していない事態も考えられる。このような状態で洗浄処理が行われても、当然、基板の周端面(周縁部)を洗浄することはできない。
【0005】
また、ブラシを基板の周端面に当接する位置(洗浄処理時のブラシの位置)まで移動させるためには、その位置を、ブラシの移動を制御するための制御部に予め教示(ティーチング)しておく必要がある。このティーチングは、オペレータの手作業によって行われる。すなわち、オペレータは、ブラシを少しずつ移動させながら、目視によって、そのブラシが基板の周端面に接触しているか否かを確認する。そして、オペレータは、ブラシが基板の周端面に接触したことを確認したときのブラシの位置を、洗浄処理時のブラシの位置として制御部に入力する。しかしながら、このようなティーチングの手法では、オペレータの経験や技術力によって、洗浄処理時のブラシの配置に差が生じてしまう。その結果、洗浄処理時にブラシが基板の周端面に当接しない場合も生じうる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基板の周縁部に対するブラシの当接を検出することができる、基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)をその中心を通る軸線まわりに回転させるための基板回転手段(3)と、所定の回転軸線まわりに自由回転可能に設けられ、基板の周縁部に当接して、その周縁部を洗浄するためのブラシ(13)と、前記基板回転機構により回転される基板の周縁部に前記ブラシが当接することによる前記ブラシの従動回転を検出するための従動回転検出手段(43,44)とを含むことを特徴とする、基板処理装置(1)である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記ブラシを前記回転軸線まわりに積極的に回転させるためのブラシ回転手段(19,34,35,36,37,38)と、前記従動回転検出手段により前記ブラシの従動回転が検出された後、前記ブラシ回転手段による前記ブラシの回転を開始させるブラシ回転制御手段(44)とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記ブラシ回転手段に設けられ、前記ブラシの従動回転と能動回転とを切り替える回転切り替え手段(39)をさらに含み、前記ブラシ回転制御手段は、前記従動回転検出手段により前記ブラシの従動回転が検出された後、前記回転切り替え手段によって前記ブラシを従動回転から能動回転へ切り替えることにより、前記ブラシの回転を開始させることを特徴とする、請求項2に記載の基板処理装置である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
基板の周縁部を洗浄するためのブラシは、所定の回転軸線まわりに自由回転可能に設けられている。そのため、ブラシは、回転中の基板の周縁部に当接すると、基板の回転に従動して回転する。したがって、ブラシを積極的に回転させるための駆動力がブラシに入力されていない状態でのブラシの回転は、ブラシが基板の周縁部に当接していることを意味する。よって、従動回転検出手段によってブラシの従動回転を検出することにより、基板の周縁部に対するブラシの当接を検出することができる。
【0011】
基板の周縁部に対するブラシの当接を検出することができるので、このブラシの当接の検出後(ブラシの従動回転の検出後)に、ブラシ回転手段によるブラシの回転(能動回転)を開始させることにより、基板の周縁部にブラシが確実に当接した状態で、ブラシによる基板の周縁部の洗浄を実施することができる。これにより、基板の周縁部を確実に洗浄することができる。なお、ブラシの従動回転と能動回転とを切り替える回転切り替え手段としては、たとえば電磁クラッチのようなクラッチ機構を採用するのが構成的に簡便であり、迅速に切り替えを行うことができる。
【0012】
また、基板の周縁部に対するブラシの当接を検出することができるので、たとえば、基板やダミー基板を回転させ、この回転中の基板などにブラシを近づけていき、基板の周縁部に対するブラシの当接を検出したときのブラシの位置に基づいて、洗浄処理時のブラシの位置を決定することができる。これにより、基板の周縁部に対するブラシの当接をオペレータの目視により確認し、このときのブラシの位置に基づいて、洗浄処理時のブラシの位置を決定する手法とは異なり、オペレータの経験や技術力に関係なく、洗浄処理時のブラシの位置を適切な一定位置に決定することができる。その結果、洗浄処理時に、基板の周縁部にブラシを確実に当接させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す側面図である。
基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW]という。)を1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。この基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、ウエハWの表面(デバイスが形成される側の表面)に処理液を供給するための表面ノズル4と、ウエハWの裏面に処理液を供給するための裏面ノズル5と、ウエハWの周縁部を洗浄するためのブラシ機構6とを備えている。
【0014】
なお、ウエハWの周縁部とは、ウエハWの表面および裏面の各周縁領域(たとえば、ウエハWの周端縁から幅1〜4mmの環状領域)ならびに周端面を含む部分をいう。
スピンチャック3は、真空吸着式チャックであって、ほぼ鉛直な方向に延びたスピン軸7と、このスピン軸7の上端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその裏面を吸着して保持する吸着ベース8と、スピン軸7と同軸に結合された回転軸を有するスピンモータ9とを備えている。ウエハWの裏面が吸着ベース8に吸着保持された状態で、スピンモータ9が駆動されると、ウエハWがスピン軸7の中心軸線まわりに回転する。
【0015】
表面ノズル4および裏面ノズル5には、それぞれ処理液供給管10,11が接続されている。これらの処理液供給管10,11には、処理液バルブ12を介して、図示しない処理液供給源からの処理液が供給されるようになっている。表面ノズル4は、処理液供給管10を通して供給される処理液を、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面の中央に向けて吐出する。また、裏面ノズル5は、処理液供給管11を通して供給される処理液を、スピンチャック3に保持されたウエハWの裏面の周端縁と吸着ベース8との間に向けて吐出する。
【0016】
なお、処理液としては、純水が用いられる。また、純水に限らず、炭酸水、イオン水、オゾン水、還元水(水素水)または磁気水などの機能水を用いてもよいし、アンモニア水またはアンモニア水と過酸化水素水との混合液などの薬液を用いることもできる。
ブラシ機構6は、ブラシ13と、このブラシ13を先端に保持する揺動アーム14と、揺動アーム14を支持するアーム支持軸15とを備えている。
【0017】
ブラシ13は、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)などのスポンジ材からなる。このブラシ13は、ウエハWの表面の周縁領域および周端面を洗浄するための第1洗浄部16と、ウエハWの裏面の周縁領域および周端面を洗浄するための第2洗浄部17とを上下に一体的に備え、鉛直軸線まわりに回転対称な略鼓状に形成されている。また、ブラシ13は、ブラシホルダ18に保持されている。ブラシホルダ18は、揺動アーム14に回転可能に保持されたブラシ回転軸19の下端に固定されている。
【0018】
アーム支持軸15は、鉛直方向に延びて設けられている。このアーム支持軸15の上端部は、揺動アーム14の下面に結合されている。アーム支持軸15には、揺動駆動機構20の駆動力が入力されるようになっている。揺動駆動機構20の駆動力をアーム支持軸15に入力して、アーム支持軸15を往復回転させることによって、揺動アーム14をアーム支持軸15を支点に揺動させることができる。また、アーム支持軸15には、昇降駆動機構21が結合されている。昇降駆動機構21により、アーム支持軸15を上下動させて、このアーム支持軸15と一体的に揺動アーム14を上下動させることができる。
【0019】
図2は、揺動アーム14の構成を示す断面図である。
揺動アーム14は、下ケーシング30と、この下ケーシング30に嵌め合わされた上ケーシング31とを備えている。
下ケーシング30の一端部には、略円筒状の軸保持部32が形成されている。この軸保持部32には、2つのベアリング33が内嵌されている。この2つのベアリング33によって、ブラシ回転軸19が回転可能に保持されている。ブラシ回転軸19は、ほぼ鉛直方向に延び、軸保持部32から上下に突出している。
【0020】
なお、アーム支持軸15(図1参照)は、下ケーシング30の他端部(基端部)の下面に結合されている。
ブラシ回転軸19には、軸保持部32の上方に突出する部分において、プーリ34が外嵌されている。
一方、下ケーシング30の他端部上には、ブラシモータ35が設けられている。ブラシモータ35は、その出力軸36が鉛直下方に延びるように配置されている。ブラシモータ35の出力軸36には、モータプーリ37が相対回転不能に固定されている。このモータプーリ37とブラシ回転軸19に外嵌されたプーリ34との間には、無端状のベルト38が巻回されている。これにより、ブラシモータ35が駆動されると、ブラシモータ35からの回転力がモータプーリ37およびベルト38を介してプーリ34に伝達され、プーリ34が回転する。
【0021】
また、ブラシ回転軸19およびプーリ34に関連して、プーリ34の回転をブラシ回転軸19に伝達/遮断するための電磁クラッチ39が設けられている。この電磁クラッチ39は、プーリ34に相対回転不能に内嵌されたアーマチュア40と、ブラシ回転軸19に相対回転不能に外嵌されたロータ41と、アーマチュア40をロータ41側に引き寄せて、それらの相対回転を不能とするための電磁石42とを備えている。電磁石42に通電(電磁クラッチ39をオン)し、アーマチュア40とロータ41とを相対回転不能とした状態で、プーリ34が回転されると、この回転がブラシ回転軸19に伝達され、ブラシ回転軸19およびその下端に固定されたブラシ13が回転する。電磁石42に通電されていない状態(電磁クラッチ39のオフ状態)では、アーマチュア40とロータ41との相対回転が許容され、ブラシ回転軸19(ブラシ13)は自由に回転することが可能となる。
【0022】
さらに、ブラシ回転軸19の上端には、エンコーダ43が設けられている。エンコーダ43は、ブラシ回転軸19が一定角度回転するごとに、1つのパルス信号を出力する。
図3は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部44を備えている。
この制御部44には、エンコーダ43から出力されるパルス信号が入力されるようになっている。制御部44は、エンコーダ43からのパルス信号の入力の有無に基づいて、ブラシ13の回転/停止を検知することができる。
【0023】
また、制御部44には、スピンモータ9、処理液バルブ12、揺動駆動機構20、昇降駆動機構21、ブラシモータ35および電磁クラッチ39が制御対象として接続されている。
図4は、ティーチング処理の流れを示すフローチャートである。
たとえば、ブラシ13が使用により摩耗すると、ブラシ13による洗浄力が低下するので、その摩耗したブラシ13が新品のブラシ13と取り替えられる。ブラシ13の個体間には形状誤差があるため、この基板処理装置1では、ブラシ13が交換されると、洗浄処理時にブラシ13をウエハWの周縁部に当接させることができるように、洗浄処理時のブラシ13の位置(以下「洗浄処理時ブラシ位置」という。)を制御部44に記憶させるためのティーチング処理が行われる。
【0024】
このティーチング処理時には、まず、オペレータがスピンチャック3にダミーウエハを保持させる。その後、オペレータによりティーチングのための処理の開始が入力されると、スピンモータ9が制御されて、スピンチャック3に保持されたダミーウエハが所定の回転速度で回転される(ステップS1)。
次に、揺動駆動機構20および昇降駆動機構21が制御されて、ブラシ13の第2洗浄部17がダミーウエハの周縁部にゆっくりと近づけられる(ステップS2)。
【0025】
このとき、ブラシモータ35は駆動されておらず、電磁クラッチ39はオフにされている。これにより、ブラシ13は、ブラシ回転軸19とともに自由回転可能な状態になっている。したがって、ダミーウエハの周縁部に向かって移動されるブラシ13がその回転中のダミーウエハの周縁部に当接すると、ダミーウエハとブラシ13との間の摩擦力により、ブラシ13がダミーウエハの回転に従動して回転する。ブラシ13とともにブラシ回転軸19が回転すると、このブラシ回転軸19の回転に伴って、エンコーダ43からパルス信号が出力される。そのため、制御部44は、エンコーダ43からのパルス信号の入力により、ブラシ13が従動回転したことを検知することができる。
【0026】
制御部44は、ブラシ13の従動回転を検知すると(ステップS3のYES)、ブラシ13がダミーウエハの周縁部に当接したと判断する。そして、洗浄処理時にブラシ13をウエハWの周縁部に確実に当接させるために、制御部44は、たとえば、従動回転検出時のブラシ13の位置からダミーウエハ側にさらに2mm移動した位置を、洗浄処理時ブラシ位置として記憶する(ステップS4)。
【0027】
図5は、洗浄処理時における制御の流れを示すフローチャートである。
処理室2内にウエハWが搬入され、そのウエハWがスピンチャック3に保持されると、スピンモータ9が制御されて、スピンチャック3によるウエハWの回転が開始される(ステップS11)。
次いで、処理液バルブ12が開かれて、表面ノズル4および裏面ノズル5からそれぞれウエハWの表面および裏面への処理液の供給が開始される(ステップS12)。
【0028】
また、揺動駆動機構20および昇降駆動機構21が制御されて、ブラシ13が洗浄処理時ブラシ位置に向けて移動される(ステップS13)。ブラシ13がホームポジションとティーチング処理により入力された洗浄処理時ブラシ位置との距離だけ移動されると、そのブラシの移動が停止される。
このとき、ブラシモータ35は駆動されておらず、電磁クラッチ39はオフにされている。これにより、ブラシ13は、ブラシ回転軸19とともに自由回転可能な状態になっている。したがって、ブラシ13が洗浄処理時ブラシ位置に到達し、ブラシ13の第2洗浄部17が回転中のウエハWの周縁部に当接すると、ウエハWとブラシ13との間の摩擦力により、ブラシ13がウエハWの回転に従動して回転する。ブラシ13とともにブラシ回転軸19が回転すると、前述したように、このブラシ回転軸19の回転に伴って、エンコーダ43からパルス信号が出力される。
【0029】
エンコーダ43からのパルス信号が制御部44に入力され、制御部44がブラシ13の従動回転を検知すると(ステップS14のYES)、ブラシモータ35が駆動されるとともに、電磁クラッチ39がオンにされて、ブラシ13がウエハWの回転方向と同方向に回転(能動回転)される(ステップS15)。これにより、ブラシ13の第2洗浄部17にウエハWの周縁部が食い込んだ状態で、ブラシ13が回転され、ブラシ13によってウエハWの裏面の周縁領域および周端面が洗浄される。なお、ブラシモータ35の駆動は、制御部44がブラシ13の従動回転を検知するよりも前に予め行われていてもよく、この場合、さらにブラシ13の回転を迅速に行うことができる。
【0030】
ブラシ13の第2洗浄部17がウエハWに当接してから所定時間が経過すると、昇降駆動機構21が制御されて、ブラシ13が所定量だけ下降される。これにより、ブラシ13の第1洗浄部16がウエハWの周縁部に当接し(ステップS16)、第1洗浄部16がウエハWの表面の周縁領域および周端面に押し付けられる。これにより、ウエハWの表面の周縁領域および周端面が洗浄される。
【0031】
こうしてウエハWの周縁部が洗浄されている間、ウエハWの表面に供給される処理液により、ウエハWの表面の中央領域(デバイス形成領域)に付着した汚染を洗い流すことができる。
ブラシ13の第1洗浄部16がウエハWの周縁部に当接してから所定時間が経過すると、揺動駆動機構20および昇降駆動機構21が制御されて、ブラシ13が処理開始前のホームポジションに退避される(ステップS17)。また、ブラシ13がホームポジションに戻される間に、ブラシモータ35が停止されて、ブラシ13の回転が停止される。さらに、処理液バルブ12が閉じられて、表面ノズル4および裏面ノズル5からの処理液の供給が停止される(ステップS18)。その後、ウエハWを高速(たとえば、3000rpm)で回転させることによる乾燥処理が行われると、ウエハWに対する洗浄処理が終了する。
【0032】
一方、ブラシ13の移動が停止した時点から所定時間が経過しても、エンコーダ43からのパルス信号が制御部44に入力されず、制御部44がブラシ13の従動回転を検知しない場合には(ステップS14のNO)、制御部44は、ブラシ13の第2洗浄部17がウエハWの周縁部に当接していないと判断する。この場合、ブラシ13がウエハWの周縁部に当接していない旨の警報が出力される(ステップS19)。そして、処理液バルブ12が閉じられて、ウエハWへの処理液の供給が停止され、この洗浄処理が直ちに終了される。
【0033】
以上のように、ウエハWの周縁部を洗浄するためのブラシ13は、電磁クラッチ39がオフの状態で、ブラシ回転軸19とともに自由に回転可能である。そのため、この自由回転可能な状態のブラシ13は、回転中のウエハWまたはダミーウエハの周縁部に当接すると、そのウエハWまたはダミーウエハの回転に従動して回転する。したがって、電磁クラッチ39がオフの状態でのブラシ13の回転は、ブラシ13がウエハWまたはダミーウエハの周縁部に当接していることを意味する。よって、制御部44は、エンコーダ43からのパルス信号の入力に基づいて、ブラシ13がウエハWまたはダミーウエハの周縁部に当接したことを検知することができる。
【0034】
ウエハWの洗浄処理時には、ウエハWの周縁部にブラシ13が当接したことを制御部44が検知した後(ブラシ13の従動回転の検知後)に、電磁クラッチ39がオンの状態とされ、ブラシモータ35の駆動力によるブラシ13の回転(能動回転)が開始される。これにより、ウエハWの周縁部にブラシ13が確実に当接した状態で、ブラシ13によるウエハWの周縁部の洗浄を実施することができる。これにより、ウエハWの周縁部を確実に洗浄することができる。
【0035】
また、前述したように、ダミーウエハを回転させ、この回転中のダミーウエハにブラシ13を近づけていき、ダミーウエハの周縁部に対するブラシ13の当接を検出したときのブラシ13の位置に基づいて、洗浄処理時ブラシ位置を決定することができる。これにより、ダミーウエハの周縁部に対するブラシ13の当接をオペレータの目視により確認し、このときのブラシ13の位置に基づいて、洗浄処理時ブラシ位置を決定する手法とは異なり、オペレータの経験や技術力に関係なく、洗浄処理時ブラシ位置を適切な一定位置に決定することができる。その結果、洗浄処理時に、ブラシ13を洗浄処理時ブラシ位置に配置することにより、ウエハWの周縁部にブラシ13を確実に当接させることができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、エンコーダ43は、ブラシ回転軸19が一定角度回転するごとにパルス信号を出力するので、単位時間内にエンコーダ43から出力されるパルス信号をカウントすることにより、ブラシ13の回転速度を検出することができる。そこで、工場内に設置された各基板処理装置の制御部と通信可能なサーバにおいて、各基板処理装置の動作履歴を管理するシステムが構築される場合には、洗浄処理時のブラシ13の回転速度を検出し、この回転速度を基板処理装置1の制御部44からサーバに送信することにより、ブラシ13の回転速度の履歴をサーバで管理するようにしてもよい。
【0037】
また、ウエハWの周縁部にブラシ13が当接したか否かの検出(ブラシ13の従動回転の検出)は、洗浄処理を受けるウエハWごとに行われてもよいし、たとえば、複数枚のウエハWに対する洗浄処理が連続して行われる場合には、1枚目のウエハWに対する洗浄処理時にのみ、ウエハWの周縁部にブラシ13が当接したか否かが検出されてもよい。すなわち、1枚目のウエハWの洗浄処理時には、図5に示す処理が実行され、2枚目以降のウエハWの洗浄処理時には、図5のステップS14,S19を省略した処理が実行されてもよい。
【0038】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図2】揺動アームの構成を示す断面図である。
【図3】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】ティーチング処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】洗浄処理時における制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
13 ブラシ
19 ブラシ回転軸
34 プーリ
35 ブラシモータ
36 出力軸
37 モータプーリ
38 ベルト
43 エンコーダ
44 制御部
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をその中心を通る軸線まわりに回転させるための基板回転手段と、
所定の回転軸線まわりに自由回転可能に設けられ、基板の周縁部に当接して、その周縁部を洗浄するためのブラシと、
前記基板回転機構により回転される基板の周縁部に前記ブラシが当接することによる前記ブラシの従動回転を検出するための従動回転検出手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記ブラシを前記回転軸線まわりに積極的に回転させるためのブラシ回転手段と、
前記従動回転検出手段により前記ブラシの従動回転が検出された後、前記ブラシ回転手段による前記ブラシの回転を開始させるブラシ回転制御手段とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ブラシ回転手段に設けられ、前記ブラシの従動回転と能動回転とを切り替える回転切り替え手段をさらに含み、
前記ブラシ回転制御手段は、前記従動回転検出手段により前記ブラシの従動回転が検出された後、前記回転切り替え手段によって前記ブラシを従動回転から能動回転へ切り替えることにより、前記ブラシの回転を開始させることを特徴とする、請求項2に記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−26947(P2009−26947A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188407(P2007−188407)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】