説明

基板処理装置

【課題】処理室内の雰囲気を排気する真空ポンプが動作する際に、排気管内に存在する大気が、処理室内に拡散や逆流することを抑制し、処理室内を汚染することを抑制することのできる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を収容し処理する処理室と、処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給管と、処理室内から処理ガスを排気する排気管と、基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、前記排気管には、処理ガスの排気される方向において、上流側より順に、開閉弁と、排気管内の圧力を検出する圧力計と、処理室内の雰囲気を排気する排気装置とが設けられ、前記制御部は、前記圧力計の検出値が所定の閾値以下であり、かつ、排気装置が動作中である場合に、前記開閉弁を開放可能とするよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板等の基板処理技術に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造装置や製造方法において、半導体集積回路が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に酸化膜、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜等を堆積(デポジション)して成膜等の処理を行ううえで有効な基板処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造において、例えば、ウエハに酸化膜、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜等のCVD(Chemical Vapor Deposition)膜をデポジションするため、バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置(以下、CVD装置という。)が、広く使用されている。例えば、従来のこの種のCVD装置においては、縦形に設置されたプロセスチューブと、複数枚のウエハを保持してプロセスチューブ内に搬入するボートと、プロセスチューブ内に原料ガスを導入するガス導入ノズルと、プロセスチューブ内を排気して減圧する排気管と、プロセスチューブ外に敷設されてプロセスチューブ内を加熱するヒータユニットとを備えている。
【0003】
排気管には、排気方向の上流から順に、圧力センサ、圧力調整バルブであるAPC(Auto Pressure Controller)バルブ、真空ポンプが設けられている。真空ポンプは、プロセスチューブ内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気するように構成されている。
【0004】
上記のCVD装置においては、複数枚のウエハがボート上に水平姿勢で多段に積層されて保持された状態で、大気圧状態のプロセスチューブ内に搬入(ボートローディング)される。その後、真空ポンプが動作するとともにAPCバルブが開き、プロセスチューブ内が減圧状態になり、原料ガスがガス導入ノズルによってプロセスチューブ内に導入されるとともに、ヒータユニットによってプロセスチューブ内が加熱されることにより、ウエハにCVD膜がデポジションされる。その際、ガス導入ノズルから供給された原料ガスは、ボート上に水平、かつ多段に保持されたウエハの間を流れてウエハの表面に接触し、排気管から外部に排気される。
CVD膜のデポジションが終了すると、原料ガスの供給が停止され、プロセスチューブ内の残留ガスが排気された後、真空ポンプが停止されAPCバルブが閉じられて、プロセスチューブ内が大気圧状態に戻される。続いて、ウエハが積層されたボートが、プロセスチューブ外に搬出される。
次に、再び未処理ウエハが積層されたボートが、大気圧状態のプロセスチューブ内に搬入(ボートローディング)された後、真空ポンプが動作するとともにAPCバルブが開き、プロセスチューブ内が減圧状態になり、原料ガスがガス導入ノズルによってプロセスチューブ内に導入され、基板処理が行われる。このとき、真空ポンプが動作する前は、排気管内は大気圧状態であるので、APCバルブが開くタイミングが早いような場合、APCバルブと真空ポンプの間の排気管内に存在する大気が、プロセスチューブ内に拡散、逆流し、その結果、プロセスチューブ内を汚染する恐れがあった。
【0005】
下記の特許文献1には、処理室排気管から処理室へのガスの逆流を抑制するため、処理ガス供給管に、処理ガスを排気するための処理ガス排気ラインを設け、該処理ガス排気ラインに、逆止弁と、逆止弁よりも排気方向下流側の圧力を測定する圧力SWとを設け、処理室排気管に、逆止弁よりも排気方向上流側の圧力を測定する圧力計を設け、圧力SWの検出値(下流側の圧力)が圧力計の検出値(上流側の圧力)よりも、しきい値を超えて低くなったときに、基板処理を中断又は停止させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−294138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、処理室内の雰囲気を排気する真空ポンプが動作する際に、排気管内に存在する大気等の雰囲気が、処理室内に拡散や逆流することを抑制し、処理室内を汚染することを抑制することのできる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明においては、排気管には、排気方向の上流から順に、開閉バルブ、圧力センサ、真空ポンプを設け、前記圧力センサの検出値が所定の閾値以下であって、かつ、真空ポンプが動作中である場合に、前記開閉バルブを開放可能とするものである。本発明に係る基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
基板を収容し、該基板を処理する処理室と、
前記処理室内に基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給管と、
前記処理室内から処理ガスを排気する排気管と、
前記処理室内での基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記排気管には、処理ガスの排気される方向において、上流側より順に、前記排気管内のガス流を開閉する開閉弁と、前記排気管内の圧力を検出する圧力計と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気装置とが設けられ、
前記制御部は、前記圧力計の検出値が所定の閾値以下であり、かつ、前記排気装置が動作中である場合に、前記開閉弁を開放可能とするよう制御する基板処理装置。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、処理室内の雰囲気を排気する真空ポンプが動作する際に、排気管内に存在する雰囲気が、処理室内に拡散や逆流することを抑制し、処理室内を汚染することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例における基板処理装置の斜透視図である
【図2】本発明の実施例における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【図3】本発明の実施例における基板処理装置の処理炉の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態において、半導体装置(IC)の製造工程の1工程としての基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では、基板処理装置としてCVD処理を行う縦型の基板処理装置に適用した場合について述べるが、他の基板処理装置に適用することもできる。
図1は、本発明が適用される基板処理装置の斜透視図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置10は、筐体101を備え、シリコン等からなる基板であるウェハ200を筐体101内外へ搬送するために、ウェハキャリア(基板収容器)としてカセット110が使用される。
【0012】
筐体101の正面前方側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)105が設置されている。カセット110は、筐体101外の工程内搬送装置(図示せず)によって、カセットステージ105上に搬入、載置され、また、カセットステージ105上から筐体101外へ搬出されるように構成されている。
筐体101内の前後方向における略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)114が設置されている。カセット棚114は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚114の一部として、移載棚123が設けられ、移載棚123には、後述するウェハ移載機構112の搬送対象となるカセット110が収納される。
カセットステージ105とカセット棚114との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)115が設置されている。カセット搬送装置115は、カセットステージ105、カセット棚114、移載棚123の間で、カセット110を搬送することができる。
【0013】
カセット棚114の後方には、ウェハ移載機構(基板移載機構)112が設置されている。ウェハ移載機構112は、ウェハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用保持具)を備えており、ウェハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして、後述するボート(基板保持具)217へ装填(チャージング)したり、ウェハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して、移載棚123上のカセット110内へ収納したりすることができる。
【0014】
筐体101の後側上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)116により開閉可能なように構成されている。処理炉202の構成については後述する。
【0015】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)121が設置されている。ボートエレベータ121には、昇降台としてのアーム122が設置されている。アーム122上には、シールキャップ219が水平姿勢で設置されている。シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ121によりボート217が上昇したときに、処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体として機能するものである。
ボート217は、複数本のウェハ保持部材(支柱)を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウェハ200を水平姿勢で、かつ、その中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて、多段に積層して保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0016】
(基板処理装置の動作概要)
次に、本発明に係る基板処理装置10の動作概要について、図1を用いて説明する。なお、基板処理装置10は、後述するコントローラ280により制御されるものである。まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、カセットステージ105上に載置される。
カセットステージ105上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、カセット棚114の指定された位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、再びカセット搬送装置115によって、前記カセット棚114の保管位置から移載棚123に搬送される。あるいは、カセットステージ105上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、直接、移載棚123に搬送される。
【0017】
カセット110が移載棚123に搬送されると、ウェハ200は、ウェハ移載装置112によって、カセット110のウェハ出し入れ口からピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウェハ200を受け渡したウェハ移載装置112は、カセット110側に戻り、次のウェハ200をカセット110からピックアップしてボート217に装填する。
【0018】
予め指定された枚数のウェハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ116が開放動作され、処理炉202の下端部の開口が開放される。続いて、ボート217を載置したシールキャップ219がボートエレベータ121によって上昇されることにより、処理対象のウェハ200群を保持したボート217が、処理炉202内へ搬入(ボートローディング)される。ボートローディング後は、シールキャップ219により処理炉202の下端部開口が閉じられ、処理炉202内が所定の圧力に減圧され、ウェハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。
【0019】
処理後は、ウェハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で、筐体101の外部へ払い出される。すなわち、処理炉202内が大気圧状態に戻された後、ボート217を載置したシールキャップ219がボートエレベータ121によって下降され、ボート217上のウェハ200がウェハ移載機構112によってピックアップされて、移載棚123上のカセット110へ受け渡される。移載棚123上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、カセット棚114に一時的に保管された後、カセットステージ105に搬送されるか、あるいは、カセット搬送装置115によって、直接、カセットステージ105に搬送される。カセットステージ105上のカセット110は、工程内搬送装置により、筐体101の外部へ払い出される。
【0020】
(処理炉の構成)
次に、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。本実施形態の例においては、処理炉202は、バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD用の処理室として構成されている。
【0021】
(プロセスチューブ)
処理炉202は、その内側に、縦形のアウタチューブ(外管)221を備えている。アウタチューブ221は、上端が閉塞され下端が開口された略円筒形状をしており、開口された下端が下方を向くように、かつ、筒方向の中心線が垂直になるように縦向きに配置され、筐体101によって固定的に支持されている。アウタチューブ221の内側には、インナチューブ(内管)222が設けられている。インナチューブ222およびアウタチューブ221はいずれも、本例では、石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、それぞれ略円筒形状に一体成形されており、両者でプロセスチューブを構成している。
インナチューブ222は、上端が閉塞し下端が開口した略円筒形状に形成されている。インナチューブ222内には、基板保持具としてのボート217によって水平姿勢で多段に積層された複数枚のウェハ200を収容して処理する処理室204が形成される。インナチューブ222の下端開口は、ウェハ200群を保持したボート217を出し入れするための炉口205を構成している。したがって、インナチューブ222の内径は、ウェハ200群を保持するボート217の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
アウタチューブ221は、インナチューブ222より大きく、かつ、インナチューブ222と略相似形状であり、上端が閉塞し下端が開口した略円筒形状に形成されており、インナチューブ222の外側を取り囲むように同心円状に被せられている。
インナチューブ222とアウタチューブ221の下端部は、それぞれ、その水平断面が略円形リング形状であるマニホールド206によって気密に封止されている。インナチューブ222およびアウタチューブ221は、その保守点検作業や清掃作業のために、マニホールド206に着脱自在に取り付けられている。マニホールド206が筐体101に支持されることにより、プロセスチューブは、筐体101に垂直に据え付けられた状態になっている。
【0022】
(排気ライン)
マニホールド206の側壁の一部には、処理室204内の雰囲気を排気する排気ラインとしての排気管207aが接続されている。マニホールド206と排気管207aとの接続部には、処理室204内の雰囲気を排気する排気口207が形成されている。排気管207a内は、排気口207を介して、インナチューブ222とアウタチューブ221との間に形成された隙間からなる排気路209内に連通している。この排気路209の水平断面形状は、略一定幅の円形リング形状となっている。排気管207aには、上流から順に、処理室204内の圧力を検知するための圧力センサ211、開閉弁であり圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ255、排気管207a内の圧力を検知するための圧力計である圧力センサ212、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。圧力センサ212は、APCバルブ255と真空ポンプ246との間における排気管207a内の圧力をモニタするものである。真空ポンプ246は、処理室204内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気しうるように構成されている。真空ポンプ246、APCバルブ255、および圧力センサ211、圧力センサ212は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ211により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ255の開度を制御するように構成されている。また、制御部280は、真空ポンプ246の停止状態ではAPCバルブ255を閉じるよう制御し、APCバルブ255を閉じた状態から開放する場合は、圧力センサ212の検出値が所定の閾値以下、つまり、APCバルブ255と真空ポンプ246との間における排気管207a内の圧力が所定の圧力以下であり、かつ、真空ポンプ246が動作中である場合に、APCバルブ255を開放可能とするよう制御する。
【0023】
(基板保持具)
マニホールド206には、マニホールド206の下端開口を閉塞するシールキャップ219が、垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219はアウタチューブ221の外径と同等以上の外径を有する円盤形状に形成されており、アウタチューブ221の外部に垂直に設備されたボートエレベータ121によって、前記円盤形状を水平姿勢に保った状態で垂直方向に昇降されるように構成されている。
シールキャップ219上には、ウェハ200を保持する基板保持具としてのボート217が垂直に支持されるようになっている。ボート217は、上下で一対の端板と、両端板間に渡って垂直に設けられた複数本、本例では3本のウエハ保持部材(ボート支柱)とを備えている。端板及びウエハ保持部材は、例えば、石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性の高い材料から構成される。
各ウエハ保持部材には、水平方向に刻まれた多数条の保持溝が、長手方向にわたって等間隔に設けられている。各ウエハ保持部材は、保持溝が互いに対向し、各ウエハ保持部材の保持溝の垂直位置(垂直方向の位置)が一致するように設けられている。ウェハ200の周縁が、複数本のウエハ保持部材における同一の段の保持溝内に、それぞれ挿入されることにより、複数枚のウェハ200は、水平姿勢、かつ互いにウエハの中心を揃えた状態で多段に積層されて保持されるように構成されている。
【0024】
また、ボート217とシールキャップ219との間には、ボート支持台210が設けられている。ボート支持台210は、例えば、石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料から構成されている。ボート支持台210によって、後述するヒータユニット208からの熱が、マニホールド206側に伝わるのを抑止する。
【0025】
シールキャップ219の下側(処理室204と反対側)には、ボート217を回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267のボート回転軸は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。ボート回転軸を回転させることにより、処理室204内にてウェハ200を回転させることが可能となる。シールキャップ219は、上述のボートエレベータ121によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート217を処理室204内外に搬送することが可能となっている。
ボート回転機構267及びボートエレベータ121は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、ボート回転機構267及びボートエレベータ121が所望のタイミングにて所望の動作をするように制御する。
【0026】
(ヒータユニット)
アウタチューブ221の外部には、プロセスチューブ内を全体にわたって均一または所定の温度分布に加熱する加熱機構としてのヒータユニット208が、アウタチューブ221を包囲するように設けられている。ヒータユニット208は、基板処理装置10の筐体101に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっており、例えば、カーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータにより構成されている。
インナチューブ222内には、温度検出器としての図示しない温度センサが設置されている。ヒータユニット208と温度センサは、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータユニット208への通電量を制御する。
【0027】
(ガス供給系)
ガス供給系について、図2を用いて説明する。図2に示すように、処理室204内に処理ガスを供給する処理ガス供給ノズル223が、マニホールド206の側壁を貫通して、インナチューブ222の内壁(すなわち、処理室204の内壁)に沿うように垂直方向に、また、ウェハ200の積層方向に延在するように設けられている。図2の例では、処理ガス供給ノズルは1本だが、複数用いることもできる。
また、処理室204内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ノズル231(図3参照)が、処理ガス供給ノズル223と同様に、マニホールド206の側壁を貫通して、インナチューブ222の内壁(すなわち、処理室204の内壁)に沿うように垂直方向に、また、ウェハ200の積層方向に延在するように設けられている。不活性ガスとしては、N(窒素)、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、H(水素)等を用いることができる。
【0028】
図2に示すように、処理ガス導入ノズル223には、処理ガス供給ラインとしての処理ガス供給管224が接続されている。処理ガス供給管224には、上流から順に、例えば、SiH(モノシラン)等の処理ガスを供給する処理ガス供給源240a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)241a、及び開閉バルブ243aがそれぞれ設けられている。
また、不活性ガス導入ノズル231には、不活性ガス供給ラインとしての不活性ガス供給管225が接続されている。不活性ガス供給管225には、上流から順に、例えば、N(窒素)等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給源240b、MFC241b、及び開閉バルブ243bがそれぞれ設けられている。
【0029】
MFC241a、241b、及び開閉バルブ243a、243bは、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC241a、241b及び開閉バルブ243a、243bを制御する。
【0030】
図2や図3に示すように、処理室204内における処理ガス供給ノズル223の筒部には、複数個の噴出口223aが垂直方向に配列するように設けられている。また、不活性ガス供給ノズル231の筒部には、それぞれ、複数個の噴出口231aが垂直方向に配列するように設けられている。噴出口223aや231aの個数は、例えば、ボート217に保持されたウェハ200の枚数と一致するように形成されている。各噴出口223a、231aの高さ位置は、例えば、ボート217に保持された上下で隣合うウェハ200間の空間に対向するようにそれぞれ設定されている。なお、各噴出口223a、231aの口径は、各ウェハ200へのガスの供給量が均一になるように、それぞれ上下方向で異なる大きさに設定されていてもよい。
【0031】
処理ガス供給ノズル223、不活性ガス供給ノズル231から処理室204内に供給されたガスは、インナーチューブ222の上側開放端から排気路209内へ流れた後、排気口207を介して排気管207a内に流れ、処理炉202外へ排出されるように構成されている。
【0032】
(コントローラ)
前記制御部280は、図示しない操作部や入出力部を備え、基板処理装置10の各構成部と電気的に接続されており、基板処理装置10の各構成部を制御する。前記制御部280は、成膜プロセスの制御シーケンスを時間軸で示したレシピに基づく温度制御や圧力制御、流量制御および機械駆動制御を指令する。また、制御部280は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)と該CPUを動作させるプログラムが格納されるメモリとを備えるものである。
【0033】
(基板処理方法)
次に、本発明に係る基板処理方法を、ICの製造方法における成膜工程を例にして説明する。まず、ウエハチャージングステップにおいて、ウェハ200はボート217に装填される。具体的には、ウェハ200の円周縁の複数箇所が、複数のウエハ保持部材の保持溝にそれぞれ係合するように挿入され、該ウェハ200の複数箇所の周縁部が各保持溝に係合されて、ウェハ200の自重が支えられるように装填(チャージング)されて保持される。複数枚のウェハ200は、ボート217におけるチャージング状態において、その中心を揃えられて互いに平行かつ水平、多段に積層され、整列されている。
【0034】
次に、ボートローディングステップにおいて、複数枚のウェハ200を積層、保持したボート217は、大気圧状態の処理室204に搬入(ボートローディング)される。具体的には、ウェハ200を装填されたボート217は、ボートエレベータ121により垂直方向に上昇され、インナチューブ222内の処理室204に搬入され、図2に示されているように、処理室204に存置される。このとき、真空ポンプ246は停止し、APCバルブ255は閉じられている。この状態において、シールキャップ219 は処理室204の下端をシールした状態になる。
続いて、減圧ステップにおいて、APCバルブ255が閉じられた状態で真空ポンプ246が排気管207a内の減圧動作を開始し、圧力センサ212の検出値が所定の閾値以下になると、APCバルブ255が開かれて、プロセスチューブ内の減圧を開始する。前記圧力センサ212の所定の閾値は、処理室204の圧力(本例では大気圧)、つまり、圧力センサ211の検出値よりも低く設定されている。これにより、真空ポンプ246とAPCバルブ255との間の排気管207a内の雰囲気が、処理室204内へ逆流または拡散することを抑制することができる。
この減圧ステップにおいて、排気口207を介して真空ポンプ246により、プロセスチューブの内部が所定の真空度(例えば、200Pa)に減圧されるとともに、昇温ステップにおいて、ヒータユニット208により、プロセスチューブの内部が所定の温度(例えば、400℃)に昇温される。
【0035】
次に、成膜ステップにおいて、ボート217が回転されつつ、所定の原料ガスが、処理ガス導入ノズル223に供給され、複数個の噴出口223aからインナチューブ222内の処理室204に導入される。例えば、シリコン酸化膜が成膜される場合において、原料ガスとして、モノシランが処理室204に導入される。また、図3に示すように、不活性ガスとしての窒素ガスが、キャリアガスや希釈ガスとして、窒素ガス供給用のガス導入ノズル231によって処理室204に供給される。
【0036】
処理室204に導入された原料ガスや窒素ガスは、インナチューブ222の上端の開口部から、インナチューブ222とアウタチューブ221の間の排気路209に流出して、マニホールド206に開設された排気口207から排気される。
このようにして、ウェハ200の表面に接触しながら上下で隣合うウェハ200と10との間の空間を平行に流れて行く原料ガスのCVD反応によって、ウェハ200の表面にはCVD膜が堆積する。
【0037】
以上のようにして所望のCVD膜(例えば、シリコン酸化膜)が堆積された後に、原料ガスの供給が停止され処理室204内から残留ガスが排気された後、APCバルブ255が閉じられ、次に真空ポンプ246が停止される。その後、不活性ガスにより、処理室204内が大気圧に復帰された後に、ボートアンローディングステップにおいて、シールキャップ219が下降されることによって処理室204の下端が開口され、ボート217に保持された状態で処理済みのウェハ200群が処理室204から外部に搬出( ボートアンローディング)される。
【0038】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
前記実施の形態では処理がウエハに施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクあるいは磁気ディスク等であってもよい。
また、前記実施の形態では、シリコン酸化膜の堆積について説明したが、本発明に係る半導体装置の製造方法は、ドープドポリシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のCVD膜の成膜方法全般に適用することができ、さらに、酸化膜形成工程や拡散工程等の半導体装置の製造方法における減圧処理工程全般に適用することができる。
また、前記実施の形態ではバッチ式縦形ホットウオール形装置に適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく、バッチ式横形ホットウオール形装置や酸化膜形成装置および他の減圧処理装置等の基板処理装置全般に適用することができる。
【0039】
本明細書には、次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
基板を収容し、該基板を処理する処理室と、
前記処理室内に基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給管と、
前記処理室内から処理ガスを排気する排気管と、
前記処理室内での基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記排気管には、処理ガスの排気される方向において、上流側より順に、前記排気管内のガス流を開閉する開閉弁と、前記排気管内の圧力を検出する圧力計と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気装置とが設けられ、
前記制御部は、前記圧力計の検出値が所定の閾値以下であり、かつ、前記排気装置が動作中である場合に、前記開閉弁を開放可能とするよう制御する基板処理装置。
このようにすると、処理室内の雰囲気を排気する真空ポンプが動作する際に、排気管内に存在する雰囲気が、処理室内に拡散や逆流することを抑制し、処理室内を汚染することを抑制することができる。
【0040】
第2の発明は、
基板を処理する処理室と、前記処理室内に基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給管と、前記処理室内から処理ガスを排気する排気管とを備え、前記排気管に、処理ガスの排気される方向において、上流側より順に、前記排気管内のガス流を開閉する開閉弁と、前記排気管内の圧力を検出する圧力計と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気装置とが設けられた基板処理装置における基板処理方法であって、
基板を第1の圧力の状態にある処理室内に搬入する工程と、
前記開閉弁を閉じた状態で前記排気装置により前記排気管を排気する工程と、
前記圧力計の検出値が所定の閾値以下になると前記開閉弁を開けて、処理室内を前記第1の圧力よりも低い第2の圧力の状態にする工程と、
前記第2の圧力の処理室内に処理ガスを供給して基板を処理する工程と、
前記第2の圧力の処理室内を前記第1の圧力に戻す工程と、
前記第1の圧力の処理室内から基板を搬出する工程と、
を備える基板処理方法。
このようにすると、処理室内の雰囲気を排気する真空ポンプが動作する際に、排気管内に存在する雰囲気が、処理室内に拡散や逆流することを抑制し、処理室内を汚染することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 基板処理装置、100 カセット、101 筐体、105 カセットステージ、112 ウエハ移載機構、114 カセット棚、115 カセット搬送装置、116 炉口シャッタ、121 ボートエレベータ、123 移載棚、200 ウエハ(基板)、202 処理炉、204 処理室、205 炉口、206 マニホールド、207 排気口、207a 排気管、208 ヒータユニット、209 排気路、210 ボート支持台、211 圧力センサ、212 圧力センサ、217 ボート、219 シールキャップ、221 アウタチューブ、222 インナチューブ、223 処理ガス導入ノズル、223a 噴出口、224 処理ガス導入管、225不活性ガス導入管、231 不活性ガス導入ノズル、231a 噴出口、243a 開閉バルブ、243b 開閉バルブ、241a MFC、241b MFC、240a 原料ガス供給源、240b 不活性ガス供給源、246 真空ポンプ、255 APCバルブ、267 ボート回転機構、280 コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容し、該基板を処理する処理室と、
前記処理室内に基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給管と、
前記処理室内から処理ガスを排気する排気管と、
前記処理室内での基板処理を制御する制御部とを備えた基板処理装置であって、
前記排気管には、処理ガスの排気される方向において、上流側より順に、前記排気管内のガス流を開閉する開閉弁と、前記排気管内の圧力を検出する圧力計と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気装置とが設けられ、
前記制御部は、前記圧力計の検出値が所定の閾値以下であり、かつ、前記排気装置が動作中である場合に、前記開閉弁を開放可能とするよう制御する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−222656(P2011−222656A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88624(P2010−88624)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】