説明

基板処理装置

【課題】基板上のガス流れを均一化し、基板処理を均一に行うことが可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を処理する減圧可能な処理チャンバを有する基板処理装置であって、基板を載置する基板載置台と、前記処理チャンバの内部を処理空間と排気空間に仕切るように前記基板載置台の周囲に設けられるバッフル板と、前記処理チャンバの内部を排気する排気口と、を備え、前記基板載置台と前記バッフル板との間には隙間が設けられ、前記バッフル板には前記処理空間と前記排気空間を連通させる複数の連通孔が形成されている、基板処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセス等の微細加工分野において用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中での半導体プロセス等における基板(以下、ウェハとも呼称する)処理において、例えばウェハに化学処理を行う化学処理チャンバ内では、ウェハ全体に均一なプロセスを行う必要がある。そこで、ウェハの表面温度を均一化させるための温度調整やウェハ上のガスの流れを均一化させるための様々な技術が求められている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ウェハを1枚づつ処理する枚葉式プラズマ処理装置のチャンバにおいて、チャンバ内部を反応ガス導入側と排出側とに仕切るバッフルプレートを配置し、バッフルプレートに設けられた排気用の調整孔の流路断面積を位置により変化させて反応ガスの流れを均一化するプラズマ処理装置が開示されている。また、特許文献2には、2枚プラズマ処理装置のチャンバにおいて、基板表面側と裏面側を隔てる排気プレートを配置し、排気プレートに所定間隔毎の排気孔を設けることで、排気を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−4466号公報
【特許文献2】特開2000−30894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の技術には、バッフル板のうち連通孔(調整孔、排気孔に相当)が形成された部分の近傍に位置する被処理基板上の点におけるガスの流れの態様と、バッフル板のうち連通孔が形成されていない部分の近傍に位置する被処理基板上の点におけるガスの流れの態様が異なることによって、被処理基板上でのガスの流れの均一化が十分ではないという問題があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、基板上のガス流れを均一化し、基板処理を均一に行うことが可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、基板を処理する減圧可能な処理チャンバを有する基板処理装置であって、基板を載置する基板載置台と、前記処理チャンバの内部を処理空間と排気空間に仕切るように前記基板載置台の周囲に設けられるバッフル板と、前記処理チャンバの内部を排気する排気口と、を備え、前記基板載置台と前記バッフル板との間には隙間が設けられ、前記バッフル板には前記処理空間と前記排気空間を連通させる複数の連通孔が形成されている、基板処理装置が提供される。
【0008】
また、上記基板処理装置においては、前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、前記排気口の近傍に位置する連通孔の密度は、他の部分に位置する連通孔の密度に比べ疎であっても良く、前記排気口は前記処理チャンバの底部に配置され、前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、前記排気口の真上に位置する連通孔の密度は、他の部分に位置する連通孔の密度に比べ疎であっても良い。
【0009】
また、前記基板載置台と前記バッフル板は異なる温度に温調されても良く、例えば、前記基板載置台は基板処理温度に温調され、前記バッフル板は前記基板処理温度より高温である反応物付着防止温度に温調されても良い。
【0010】
また、上記基板処理装置において、前記バッフル板は、前記処理チャンバの内壁に沿って底部方向に延伸する足部を有しても良い。
【0011】
また、前記排気口は平面視において前記基板載置台の中心から偏心して配置されても良い。また、前記処理チャンバには、水平方向において前記排気口と対向する位置に配置される、基板の搬入出を行うための搬入出口が設けられていても良い。更には、前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、平面視において前記基板載置台を介して前記排気口と対向する側の中央部に位置する連通孔の密度は、平面視において前記基板載置台を介して前記排気口と対向する側の周辺部に位置する連通孔の密度に比べ疎であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板上のガス流れを均一化し、基板処理を均一に行うことが可能な基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板処理システムの概略側面断面図である。
【図2】基板処理システムの概略平面断面図である。
【図3】基板処理装置及び加熱装置の側面断面図である。
【図4】基板載置台とバッフル板の平面視での概略図である。
【図5】基板載置台、バッフル板、足部及び処理チャンバの底面に囲まれる排気空間M2を図示した概略断面図である。
【図6】バッフル板と基板載置台との間に隙間が形成されていない場合のガス流れを示す概略説明図である。
【図7】バッフル板と基板載置台との間に隙間が形成されている場合のガス流れを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下の本発明の実施の形態では、2枚の例えば円形状である基板Wを同時に配置・処理することが可能な基板処理システムS及び基板処理装置1を実施の形態の一例として挙げて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態にかかる基板処理装置1を備えた基板処理システムSの概略側面断面図であり、図2は基板処理システムSの概略平面断面図である。なお、図1には基板Wを図示しておらず、図2には基板Wが以下に説明する基板処理装置1及び加熱装置10内に載置された状態を図示している。また、後述するバッフル板60は図1、図2には図示していない。基板処理システムSは化学処理システムであり、図1及び図2に示すように、直線状に基板処理装置1、基板処理装置1と結合する加熱装置10、加熱装置10と結合する搬送調圧装置20及び搬送調圧装置20と結合する搬送装置30が順に(図1左から右方向に)配置された構成となっている。ここで、基板処理装置1と加熱装置10はゲートバルブ50aを介して結合し、加熱装置10と搬送調圧装置20はゲートバルブ50bを介して結合し、搬送調圧装置20と搬送装置30はゲートバルブ50cを介して結合している。
【0016】
搬送調圧装置20は基板処理システムSの外部から、減圧された装置内部の内圧を変化させることなく基板Wを基板処理装置1と加熱装置10内に搬入するための装置である。即ち、ゲートバルブ50bを閉じた状態(搬送調圧装置20と加熱装置10内とが空間的に分断された状態)で搬送調圧装置20内を常圧にした後、常圧の搬送装置30内から搬送調圧装置20内に基板Wを搬入し、基板搬入後にゲートバルブ50cを閉じた状態で搬送調圧装置20内部を基板処理装置1及び加熱装置10内と同じ圧力にし、その後ゲートバルブ50a及び50bを開放して搬送調圧装置20内から基板処理装置1内に基板Wを搬入させることで、基板処理装置1と加熱装置10内の内圧を変化させることなく基板処理装置1と加熱装置10内に基板Wを搬入できる。
【0017】
搬送装置30と搬送調圧装置20との間での基板Wの搬送は搬送装置30内に配置されたアーム31によって行われる。また、搬送調圧装置20と基板処理装置1との間、基板処理装置1と加熱装置10との間及び加熱装置10と搬送調圧装置20との間における基板Wの搬送は、搬送調圧装置20内に配置されたアーム21によって行われる。なお、図2に示すように、本実施の形態においてアーム21、31は、2枚の基板Wを保持でき、伸縮自在な構成であるため、2枚の基板Wを同時に搬送することが可能となっている。図2には、アーム21が基板処理装置1まで延伸した状態(図2中の破線)を図示している。
【0018】
図1、図2に示すように、基板処理装置1は処理チャンバ3を有しており、処理チャンバ3内部には、2枚の基板Wが略水平に並んで載置される基板載置台4が設けられている。基板載置台4には、図示しないリフターピンが備えられ、該リフターピンによって基板載置台4に基板Wが載置される構成となっている。また、処理チャンバ3の底面においては、ゲートバルブ50aが設けられている側と反対側(即ち、基板処理システムS先端側)に、処理チャンバ3の内部を排気する排気口5が設けられている。排気口5は、平面視において基板載置台3の中心から偏心した位置に設けられており、図示しない例えば真空ポンプ等に接続している。
【0019】
また、加熱装置10には、2枚の基板Wが並んで載置され、基板Wの加熱が行われる加熱台12が設けられている。加熱台12には図示しないヒータが備えられており、基板Wを所望の温度に加熱可能な構成となっている。なお、加熱装置10内部は排気口15に連通する真空ポンプ(図示せず)によって減圧自在な構成となっている。
【0020】
次に、基板処理装置1及び加熱装置10の詳細な構成について図3を参照して説明する。図3は、ゲートバルブ50aを介して接続している基板処理装置1及び加熱装置10の側面断面図である。なお、図3においては、基板Wが基板載置台4、加熱台12に載置された状態を図示している。
【0021】
図3に示すように、基板処理装置1の処理チャンバ3内部には、基板Wが載置される基板載置台4が設けられている。基板載置台4の内部には、図示しない温調媒体供給部に連通する温調流路7(図3中一点鎖線)が形成されている。また、処理チャンバ3の天井部には基板処理を行うための処理ガス(以下、反応ガスあるいは単にガスとも呼称する)を処理チャンバ3内に供給するガス供給機構6が設けられている。ガス供給機構6は例えばシャワー形状を有しており、処理チャンバ3の天井部から処理ガスを噴射することで、基板処理が行われる。本実施の形態においては、基板Wの表面処理を行うための処理ガスとして、基板W表面に形成されたSiO膜(シリコン酸化膜)等の酸化膜を処理するHFガス、NHガスが例示され、基板処理としてはSiO膜の変質工程としての化学処理(化学反応を用いる処理)が例示される。
【0022】
また、処理チャンバ3には温度制御ユニット8が接続されており、この温度制御ユニット8の稼動により処理チャンバ3の温度は自在に制御される。基板載置台4に載置される基板Wの温度は、基板載置台4からの伝熱と、処理チャンバ3からの伝熱によって所定の温度とされる。即ち、上記温調流路7に流す温調媒体の温度と、処理チャンバ3の温度を制御する温度制御ユニット8の制御により、基板Wを処理温度である所定の温度に加熱または冷却することが可能となっている。なお、温度制御ユニット8によって処理チャンバ3が温度制御されることから、処理チャンバ3に当接して設けられている、以下に説明するバッフル板60も温度制御ユニット8によって所定温度に制御される。
【0023】
また、図1にも図示したように、処理チャンバ3の底面においては、ゲートバルブ50aが設けられている側と反対側(即ち、基板処理システムS先端側)に、処理チャンバ3の内部を排気する排気口5が設けられている。上述したように、排気口5は基板載置台3の中心から偏心した位置に設けられ、排気口5に連通する真空ポンプを稼動させることにより、処理チャンバ3内を減圧(真空引き)することが可能となっている。
【0024】
また、処理チャンバ3の内部においては、基板載置台4の周囲を囲うようにバッフル板60が設けられている。ここで、基板載置台4とバッフル板60との間には、所定の間隔の隙間62が形成されている。図3に示すように、バッフル板60は基板載置台4の周囲全体を囲って配置され、処理チャンバ3の内部空間を基板載置台4より上方に位置する空間である処理空間M1と、基板載置台4より下方に位置する空間である排気空間M2とに仕切るように構成されている。
【0025】
また、図3に示すように、バッフル板60は、処理チャンバ3の内壁に沿ってチャンバ底部方向に延伸する足部60aを有しており、足部60aは処理チャンバ3の底部まで伸び、その先端は処理チャンバ3の底部に固着している。即ち、上記排気空間M2は、基板載置台4の下面とバッフル板60と、処理チャンバ3の底面に囲まれる空間となっている。
【0026】
このように、バッフル板60を、足部60aを有する構成としたことにより、排気空間M2の密閉性が高められ、排気口5を通じた排気性能が排気空間M2に対し十分に発揮され、処理チャンバ3内の排気が効率的に行われる。
【0027】
図4は、処理チャンバ3内において基板載置台4に載置された基板Wと、バッフル板60の平面視での概略説明図である。なお、図4には破線によって排気口5の位置を図示している。図4に示すように、バッフル板60は平面視で2枚の基板Wを載置する基板載置台4を囲う形状であり、処理チャンバ3内において基板W及び基板載置台4以外の部分を平面視において覆うような構成となっている。また、基板載置台4の外周とバッフル板60の内周との間には所定間隔の隙間62(略8の字形状)が形成された構成となっている。
【0028】
また、バッフル板60には所定の径の連通孔65が複数形成されている。それぞれの連通孔65の径は同一である。本実施の形態においては、図4に示すように、連通孔65は基板Wの周囲を囲むように、隙間62の近傍に複数形成されている。また、バッフル板60における連通孔65同士の間隔は均等ではなく、バッフル板60において排気口5の真上に位置する部分(図4中のA部)には、連通孔65は形成されていない。即ち、バッフル板60のうち排気口5の真上に位置する部分における連通孔65の密度は、バッフル板60の他の部分における連通孔65の密度に比べて疎となるように構成されている。
【0029】
更には、本実施の形態におけるバッフル板60においては、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの中央部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の中央部、図4中のB部)における連通孔65の密度は、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの周辺部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の周辺部、図4中のC部)に形成される連通孔65の密度に比べ疎となるように構成されている。
【0030】
なお、基板載置台4とバッフル板60は互いに異なる温度に温調(温度調整)されており、基板載置台4は基板Wを所定の温度にするための温度に温調され、バッフル板60の温度は、後述する基板処理時に生成される反応生成物のガスが付着しない程度の温度(反応物付着防止温度)に温調される。
【0031】
以上説明した基板載置台4、バッフル板60、足部60a、隙間62及び連通孔65の構成について図5を参照して更に詳細に説明する。図5は、基板載置台4、バッフル板60、足部60a及び処理チャンバ3の底面(以下、底板3aとも呼称する)に囲まれる排気空間M2を図示した概略断面図である。
【0032】
図5に示すように、基板載置台4は、基板Wが載置される台部4aと、処理チャンバ3の底板3aに固定され台部4aを支持する支持部4bを有している。一方、バッフル板60は、台部4aの周囲に延在し、連通孔65が形成されている板部60bを有している。バッフル板60は、板部60bの内周側の側面と台部4aの側面が所定の間隔で対向するように配置され、板部60bの内周側の側面と台部4aの側面との間に隙間62が形成される。ここで、バッフル板60と基板Wを異なる温度に温調(温度調節)する場合には、バッフル板60と基板Wを遠ざけ、相互間での伝熱を抑制するために、板部60bの上面の高さを台部4aの上面の高さよりも低くすることが好ましい。
【0033】
また、図5に示すように、足部60aの先端部(下端部)には取付部60cが形成されており、取付部60cを処理チャンバ3の底板3aにネジ70で固定することによりバッフル板60は底板3aに当接している。これにより、取付部60c及び底板3aを介した処理チャンバ3からの伝熱を用いて、温度制御ユニット8によるバッフル板60の温度調節をすることができる。
【0034】
一方、図3に示すように、加熱装置10の内部には、2枚の基板Wを略水平に載置し、加熱することができる加熱台12が設けられ、加熱台12には図示しないヒータ線(電熱線)が埋設され、このヒータ線にヒータ電源13が接続されている。また、加熱装置10の天井部には加熱装置10内に例えばN等であるパージガスを供給するパージガス供給機構14が設けられている。また、上述したように、加熱装置10の底面には排気口15が設けられており、排気口15に連通する真空ポンプ(図示せず)を稼動させることで、加熱装置10内を減圧させることが可能となっている。
【0035】
以上、図3を参照して説明した基板処理装置1及び加熱装置10においては、例えばSiO膜が表面に形成された基板Wに対して、以下のような基板洗浄処理が行われる。先ず、SiO膜が形成された面を上面にした状態で、搬送調圧装置20に対する基板Wの搬入が、アーム31によってゲートバルブ50cを通じて行われる。
【0036】
搬送調圧装置20内に搬入された基板Wはアーム21に2枚同時に保持され、ゲートバルブ50cが閉じられる。そして、基板処理装置1、加熱装置10及び搬送調圧装置20の内部を全て減圧状態(真空状態)とした後、ゲートバルブ50b及びゲートバルブ50aが開放される。この状態でアーム21の稼動により、2枚の基板Wが基板処理装置1に搬送される。基板処理装置1に搬送された2枚の基板Wは、同時に基板載置台4に載置される。なお、アーム21は基板Wの搬送を終えた後には、搬送調圧装置20内に収納され、基板処理装置1内に基板Wが搬入された後、ゲートバルブ50a、50bはそれぞれ閉じられる。
【0037】
続いて、基板処理装置1において例えば基板W表面に形成されたSiO膜を、処理ガスであるHFガス、NHガスを用いて化学処理する工程(変質工程)が基板処理として行われる。この化学処理は、減圧下において基板WをSiO膜が上面となるように基板載置台4に載置し、基板Wが所定温度となるように温度制御を行った後、ガス供給機構6から処理ガスであるHFガスとNHガスの混合ガスを処理チャンバ3内に噴出させることで行われる。この化学処理により、SiO膜とHFガス及びNHガスの分子が化学反応し、例えばフルオロケイ酸アンモニウムや水分等の反応生成物が生成される。
【0038】
この化学処理においては、処理ガスであるHFガスとNHガスの混合ガスを基板Wの表面に均一化させた状態で流す必要がある。これは、SiO膜に均一に接触させることで、基板W表面における上記反応生成物の生成を均一に行うためである。本実施の形態にかかる基板処理装置1においては、処理チャンバ3の内部を基板載置台4の周囲に設けられるバッフル板60によって処理空間M1と排気空間M2とに仕切っている。排気空間M2には、排気口5が設けられており、排気空間M2は基板載置台4の下面とバッフル板60(足部60a)と、処理チャンバ3の底面に囲まれた密閉性の高い空間となっているため、処理空間M1内の処理ガスは、バッフル板60に設けられた連通孔65と、バッフル板60と基板載置台4との間に形成される隙間62のみを通じて排気空間M2に流出され、その後排気口5から排気される。
【0039】
上述したように、バッフル板60において排気口5の真上に位置する部分には、連通孔65は形成されていない。即ち、バッフル板60のうち排気口の真上に位置する部分における連通孔65の密度はバッフル板60の他の部分における連通孔65の密度に比べて疎となるように構成されている。排気口5の真上にあたる部分は、排気口5からの距離が極めて近いため、他の部分に比べ排気量が多くなるが、排気口5の真上に位置する部分に連通孔65が形成されていないバッフル板60を設けたことにより、処理空間M1から排気空間M2への処理ガスの流出においては、排気口5の真上であっても、他の部分に比べてガス流出が多くなってしまうことが防止される。即ち、処理空間M1から排気空間M2への処理ガスの流出が位置によってばらつくことが回避され、基板W表面における処理ガスの流れが不均一となってしまうことが防止される。
【0040】
また、バッフル板60においては、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの中央部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の中央部、図4中のB部)における連通孔65の密度は、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの周辺部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の周辺部、図4中のC部)に形成される連通孔65の密度に比べ疎となるように構成されている。これにより、処理空間M1(特に、基板載置台4の上面近傍)におけるゲートバルブ50a近傍側の中央部では、ゲートバルブ50a近傍側の周辺部に比べ処理ガスが滞留しやすい環境となり、基板W表面において単位面積当たりのガス供給量が他の部分と比べて少なくなりがちなゲートバルブ50a近傍側の中央部において、供給された処理ガス量のうち基板処理(化学処理)に寄与する処理ガスの量の割合が高まる。即ち、基板W表面において、ゲートバルブ50a近傍側の中央部(B部)と、ゲートバルブ50a近傍側の周辺部(C部)とで、基板処理(化学処理)に寄与する単位面積当たりの処理ガス供給量の均一化が図られ、基板Wに対する基板処理(化学処理)が均一に行われる。
【0041】
次いで、化学処理後の基板Wが処理された面を上面とした状態で、ゲートバルブ50aを介してアーム21の稼動により加熱装置10内に搬送される。加熱装置10に搬送された基板Wは、加熱台12上に載置される。そして、基板Wの載置された加熱台12は、ヒータ13の稼動により所定温度に加熱され、これに伴い、加熱台12上に載置された基板Wも加熱される。この加熱により、上記化学処理によって基板W表面に生成された反応生成物が気化され、基板Wの表面から除去される(加熱工程)。ここで、気化された反応生成物は、パージガス供給機構14による加熱装置10内へのパージガス導入と、排気口15からの排気によって加熱装置10から排出される。
【0042】
上記加熱工程が完了した後、基板Wはゲートバルブ50bを介してアーム21の稼動により搬送調圧装置20内に搬送される。そして、ゲートバルブ50bを閉じた後、基板Wの装置への搬入時と同様に、搬送装置30の内圧と搬送調圧装置20の内圧を等しいものとし、ゲートバルブ50cを開放して基板Wをアーム31によって搬送調圧装置20から搬出させる。
【0043】
以上説明した工程により、基板処理システムSにおける一連の基板洗浄処理が完了する。なお、基板処理システムSにおいて基板洗浄処理が完了した後の基板Wは、他の処理システムにおいて、例えばCVD装置等の成膜装置に搬入され、基板Wに対して例えばCVD法等による成膜処理が行われる。
【0044】
本発明の実施の形態にかかる基板処理システムS、特に基板処理装置1においては、処理チャンバ3内に設けられた基板載置台4の周囲に、処理チャンバ3の内部空間を処理空間M1(基板W表面側)と排気空間M2(基板W裏面側)に仕切るようにバッフル板60を設けている。そして、このバッフル板60に所定の径の複数の連通孔65を形成し、さらに、バッフル板60と基板載置台4との間に所定間隔の隙間62を形成するような構成としたことで、処理空間M1から排気空間M2へのガス流出をこれら連通孔65と隙間62のみによって行うこととしている。即ち、処理空間M1から排気空間M2へのガス流出は、連通孔65の配置構成(分布)と隙間62の幅、及び連通孔65と隙間62との間の距離等のみによって制御される。
【0045】
本実施の形態にかかる基板処理装置1では、特に排気口5が基板載置台4の中心に対して偏心した位置に設けられる場合に、バッフル板60のうち排気口5の真上に位置する部分における連通孔65の密度がバッフル板60の他の部分における連通孔65の密度に比べて疎となる構成としたため、排気口5の真上における処理空間M1から排気空間M2へのガスの流出が他の部分より多くなってしまうことが防止される。即ち、処理空間M1から排気空間M2への処理ガスの流出が位置によってばらつくことが回避され、基板W表面における処理ガスの流れが不均一となってしまうことが防止される。
【0046】
また、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの中央部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の中央部、図4中のB部)における連通孔65の密度を、平面視で基板載置台4を介して排気口5に対向する部分のうちの周辺部(即ち、ゲートバルブ50a近傍側の周辺部、図4中のC部)に形成される連通孔65の密度に比べ疎となるように構成しているため、基板W表面において単位面積当たりのガス供給量が他の部分と比べて少なくなりがちなゲートバルブ50a近傍側の中央部(B部)において、供給された処理ガス量のうち基板処理(化学処理)に寄与する処理ガスの量の割合が高まり、ゲートバルブ50a近傍側の中央部(B部)とゲートバルブ50a近傍側の周辺部(C部)とで、基板処理に寄与する単位面積当たりの処理ガス供給量の均一化が図られ、基板Wに対する基板処理が均一に行われる。
【0047】
また、バッフル板60と基板載置台4との間に隙間62を形成し、処理空間M1から排気空間M2に隙間62からガスが流出している状態としている。これにより、基板W表面のガス流れを均一化することが可能となる。ここで、図6、図7を参照して隙間62を形成したことによって基板W表面のガス流れが均一化される原理について詳細に説明する。
【0048】
図6は、バッフル板60と基板載置台4との間に隙間が形成されていない場合のガス流れを示す概略説明図であり、図7は、バッフル板60と基板載置台4との間に隙間62が形成されている場合のガス流れを示す概略説明図である。なお、図6及び図7においては、基板載置台4に載置された基板Wとバッフル板60の近接している箇所を拡大して図示しており、連通孔65aと連通孔65bは複数形成された連通孔65のうち、互いに隣り合うものである。また、図6及び図7に示す点D、E、F、Gは基板W上の点である。
【0049】
図6及び図7に示すように、点Dは連通孔65aの近傍に位置する点であり、連通孔65aの中心を通り基板Wの縁に垂直な直線上に位置する。また、点Gは連通孔65bの近傍に位置する点であり、連通孔65bの中心を通り基板Wの縁に垂直な直線上に位置する。一方、点Eは連通孔65aと連通孔65bの間に位置する点のうち連通孔65aに近い点である点Hの近傍に位置する点であり、点Hを通り基板Wの縁に垂直な直線上に位置する。点Fは連通孔65aと連通孔65bとの間に位置する点のうち連通孔65bに近い点である点Iの近傍に位置する点であり、点Iを通り基板Wの縁に垂直な直線上に位置する。
【0050】
図6、図7に示すように、点Dにおけるガスの流れの方向は、図中矢印d1で示すように、点Dから最も近い連通孔である連通孔65aに向かう傾向がある。また、同様に点Gにおけるガスの流れの方向は、図中矢印g1で示すように、点Gから最も近い連通孔である連通孔65bに向かう傾向がある。ここで、矢印d1の方向は、点Dから基板Wの縁に最短距離で向かう方向であり、基板Wが円形である場合には、基板Wの中心と点Dを通る直線の方向である。同様に、矢印g1の方向は、点Gから基板Wの縁に最短距離で向かう方向であり、基板Wが円形である場合には、基板Wの中心と点Gを通る直線の方向である。
【0051】
基板W上での各点におけるガスの流れを均一化するという観点では、点E及び点Fにおけるガスの流れの方向を、それぞれ点E及び点Fから基板Wの縁に最短距離で向かう方向(図中一点鎖線で示す矢印e1及びf1の方向、即ち、点Eから点Hに向かう方向及び点Fから点Iに向かう方向)として、点D及び点Gにおけるガスの流れと同様にするのが理想的である。しかし、図6に示すように、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成しない構成とした場合、点Eにおけるガスの流れの方向は、矢印e2で示すように、点Eから最も近い連通孔である連通孔65aに向かう傾向がある。同様に、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成しない構成とした場合、基板W上の点Fにおけるガスの流れの方向は、矢印f2で示すように、点Fから最も近い連通孔である連通孔65bに向かう傾向がある。
【0052】
一方、図7に示すように、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成した場合には、基板W上のガスが連通孔65だけでなく隙間62からも排気されることによって、点Eにおけるガスの流れの方向が、図7中の矢印e3で示すように、矢印e2の示す方向よりも矢印e1に示す方向に近い方向となる。同様に、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成した場合には、点Fにおけるガスの流れの方向が、図7中の矢印f3で示すように、矢印f2の示す方向よりも矢印f1に示す方向に近い方向となる。
【0053】
即ち、図6と図7を比較することで分かるように、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成することによって、点E及び点Fにおけるガスの流れの方向がそれぞれ点E及び点Fから基板Wの縁に最短距離で向かう方向に近い方向となる。これにより、点E及び点Fにおけるガスの流れの態様が、点D及び点Gにおけるガスの流れの態様(各点から基板Wの縁に最短距離で向かう方向に流れる傾向がある態様)に近いものとなる。つまり、バッフル板60と基板載置台4の間に隙間62を形成することによって、点E及び点Fのようなバッフル板60のうち連通孔65が形成されていない部分の近傍に位置する点におけるガスの流れの態様が、点D及び点Gのようなバッフル板60のうち連通孔65が形成された部分の近傍に位置する点におけるガスの流れの態様に近いものとなり、基板W上での各点におけるガスの流れの均一化が図られることとなる。
【0054】
また、上記実施の形態において、バッフル板60と基板載置台4は異なる温度に温調されており、基板載置台4は基板Wを所定の温度にするための温度、バッフル板60は、基板処理時に生成される反応生成物のガスが付着しない程度の温度(反応物付着防止温度)に温調される。基板処理装置1においては、バッフル板60と基板載置台4との間に隙間62を形成しているため、バッフル板60と基板載置台4との間での熱伝導が抑制され、基板載置台4(特にバッフル板60近傍)の温度が高精度で所定の温度に保たれる。上記実施の形態のように、処理チャンバ3の内部を減圧する場合には、所謂真空断熱によってバッフル板60と基板載置台4との間での熱伝導が抑制される。
【0055】
基板W表面のガス流れを均一化させ、更に、基板Wの温度を高精度で所定の温度とすることにより、基板処理装置1における基板処理プロセスの均一化が図られ、均一に処理された基板Wを加熱装置12に搬入し、反応生成物の気化(加熱工程)が行われるため、例えば上記化学処理後の基板Wにおいては反応生成物の除去が精度良く均一に行われる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施の形態においては、基板処理システムSとして2枚の基板Wを同時に載置し処理する構成を例示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば基板を複数枚(3枚、4枚等)同時に処理する構成の基板処理装置についても本発明を適用することができる。また、1枚の基板Wのみを処理する構成の基板処理装置についても本発明を適用することができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、基板処理として化学処理を例示して説明したが、本発明にかかる基板処理装置は、その他の処理を行う場合に用いられる装置についても適用可能であり、例えば基板にプラズマCVD処理を行う基板処理装置等にも適用できる。
【0059】
さらにまた、上記実施の形態においては、基板処理として基板W表面に形成されたSiO膜を、処理ガスであるHFガス、NHガスを用いて化学処理する工程(変質工程)と、処理後の基板を加熱処理する工程(加熱工程)を例示し、これら化学処理及び加熱処理はそれぞれ基板処理装置1と加熱装置10において行われるものとして説明したが、この化学処理及び加熱処理は、同一の処理装置(チャンバ)内で行うことも可能である。即ち、1つのチャンバにおいて処理ガス(HFガス、NHガス)を導入し基板処理(化学処理)を行い、処理ガスを排気した後に、基板を加熱させて反応生成物を除去することも可能である。本発明にかかる基板処理装置は、このような2つの処理を同一チャンバ内で行う場合の装置としても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば半導体製造プロセス等の微細加工分野において用いられる基板処理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1…基板処理装置
3…処理チャンバ
4…基板載置台
5…排気口
6…ガス供給機構
7…温調流路
8…温度制御ユニット
10…加熱装置
12…加熱台
13…ヒータ
14…パージガス供給機構
15…排気口
20…搬送調圧装置
21…アーム
30…搬送装置
31…アーム
50a、50b、50c…ゲートバルブ
60…バッフル板
60a…足部
62…隙間
65…連通孔
M1…処理空間
M2…排気空間
S…基板処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する減圧可能な処理チャンバを有する基板処理装置であって、
基板を載置する基板載置台と、
前記処理チャンバの内部を処理空間と排気空間に仕切るように前記基板載置台の周囲に設けられるバッフル板と、
前記処理チャンバの内部を排気する排気口と、を備え、
前記基板載置台と前記バッフル板との間には隙間が設けられ、
前記バッフル板には前記処理空間と前記排気空間を連通させる複数の連通孔が形成されている、基板処理装置。
【請求項2】
前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、前記排気口の近傍に位置する連通孔の密度は、他の部分に位置する連通孔の密度に比べ疎である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記排気口は前記処理チャンバの底部に配置され、
前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、前記排気口の真上に位置する連通孔の密度は、他の部分に位置する連通孔の密度に比べ疎である、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板載置台と前記バッフル板は異なる温度に温調される、請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板載置台は基板処理温度に温調され、前記バッフル板は前記基板処理温度より高温である反応物付着防止温度に温調される、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記バッフル板は、前記処理チャンバの内壁に沿って底部方向に延伸する足部を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記排気口は平面視において前記基板載置台の中心から偏心して配置される、請求項1〜6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理チャンバには、水平方向において前記排気口と対向する位置に配置される、基板の搬入出を行うための搬入出口が設けられる、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記バッフル板に形成される複数の連通孔のうち、平面視において前記基板載置台を介して前記排気口と対向する側の中央部に位置する連通孔の密度は、平面視において前記基板載置台を介して前記排気口と対向する側の周辺部に位置する連通孔の密度に比べ疎である、請求項7に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146854(P2012−146854A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4781(P2011−4781)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】