説明

基板吸着装置と基板支持体および基板搬送装置

【課題】基板が熱膨張・熱収縮しても、基板を吸着したまま確実に追従することができる基板吸着装置を提供する。
【解決手段】中央部に設けた凹部21aと凹部21aの底部中央から外部に通じる吸気通路21bと凹部の周囲に設けたボール収納凹部21cとを有するパッド座21と、大口径円筒部22aと大口径円筒部22aに連接する小口径円筒部22bから成る弾性体のパッド支持体22と、つば23bを有する円筒部23aから成る帽子状をした、上部周囲に周縁凸部23cと中央に吸気孔23dを設けた吸引パッド23と、を有する基板吸着装置であって、ボール収納凹部21cにボール24を収納し、パッド座21の吸気通路21b上にパッド支持体22を立設し、大口径円筒部22aの上面に吸引パッド23を載置し、吸引パッド23の垂直方向および水平方向の移動を許容するパッド押さえ25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を上面に載置する基板支持体に設けられる基板吸着装置、およびそれを用いた基板搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルやガラス基板(以下、これらを総じて基板という)は年々大型化し、基板を搬送する搬送装置も対応を余儀なくされている。つまり、基板は大きさの割に対して厚さがきわめて薄く撓みやすいが、基板を搬送する搬送装置は、その大きな基板を的確に固定する技術が求められている。
そのため、従来は、基板を真空吸着する方式の基板搬送装置においては、上下方向に移動可能な弾性体を介して、基板とパッドを接触させ、弾性体内を負圧にすることによって基板面をパッド面に吸着する基盤吸着装置を基板支持体に設けていた。
さらに、基板に反りがあるような場合の対策が講じられた基板吸着装置も知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−86086号公報
【0003】
図4は特許文献1記載の発明に係る基板検査の縦断面図である。
特許文献1記載の発明によれば、載置台への基板を確実に吸着でき、精度の高い安定した基板検査を実現できるようにと、基板吸着部141を有する中空の吸着パッド140の中空部に間隙160を介して弾性部材からなるパッド支持部材150を挿入して、吸着パッド140を弾性的に支持するとともに、吸着パッド140の所定範囲での動きを可能にするように、これら吸着パッド140およびパッド支持部材150を載置台110の吸着パッド取付け部111に、押え枠体180を用いて保持して成るものである。
そして、この基板吸着装置の動作は次のようになる。
まず、ガラス基板Gが載置台110上方から供給されると、ガラス基板Gの周縁部が載置台110の長手方向および幅方向のそれぞれ周縁に設けられた複数の(図では1個だけ示す)基板吸着部材100の上に載置される。そしてこの状態から真空ポンプ190でエア引きが行われると、それぞれの基板吸着部材100では、パッド支持部材150を介して吸着パッド140の吸着部141にエア吸着力が得られ、ガラス基板Gは、載置台110上に吸着状態になって固定される。
ここで、ガラス基板Gの面が全く平ならば、載置台110の面と平行が保たれるので何ら問題ないが、仮に、ガラス基板Gに反りがあるような場合、載置台110の面と平行でなくなることがあり、この場合、基板吸着部材100では、吸着部141を有する吸着パッド140がその中空部に弾性部材のパッド支持部材150で支持されており、ガラス基板Gの反りによる傾きに対応してパッド支持部材150の変形により、吸着パッド140が載置台110の溝部112との間隙170および押え枠体180の穴部181と吸着パッド140の先端部との間隙171の範囲で自由に傾くようになっているので、ガラス基板Gの反り面に対して吸着パッド140の吸着部141がガラス基板Gに対してほぼ平行になり、ガラス基板Gが良好に吸着され、さらにパッド支持部材150の弾性力により吸着の外れにくい状態で保持されるというものである。
このようにして特許文献1記載の発明によれば、ガラス基板Gは多少の反りがあるような場合も、載置台110上の複数の基板吸着部材100により確実に吸着して載置するようにできるので、反りによる焦点ズレや基板の振動ズレが防止でき、安定した状態でガラス基板Gの検査を実施することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の特許文献1記載の発明においては、垂直方向および若干の反りに対して追従できるものの、水平方向の追従性が不足しており、および自己復帰機能がないため、基板の熱膨張・熱収縮による影響により、パッド面と基板面間ですべりが生じ、吸着エラーが発生するという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、基板が熱膨張・熱収縮しても、基板を吸着したまま確実に追従することができる基板吸着装置と、それを用いた基板搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1記載の発明は、基板吸着装置に係り、中央部に設けた凹部21aと該凹部21aの底部中央から外部に通じる吸気通路21bと該凹部の周囲複数箇所に設けたボール収納凹部21cとを有するパッド座21と、大口径円筒部22aと該大口径円筒部22aに連接する小口径円筒部22bから成る漏斗状をした弾性体のパッド支持体22と、下部周囲につば23bを有する有底円筒部23aから成る帽子状をしており、上部周囲に360度に亘る周縁凸部23cを設けると共に、上部中央に吸気孔23dを設けた吸引パッド23と、を有する基板吸着装置であって、前記ボール収納凹部21cにボール24を収納し、前記パッド座21の前記吸気通路21b上に前記パッド支持体22の前記小口径円筒部22b側を向けて立設し、立設された前記パッド支持体22の前記大小口径円筒部22aの上面に前記吸引パッド23を載置し、この状態で前記吸引パッド23のつば部23bが前記ボール24上に載置され、かつ、前記吸引パッド23の垂直方向および水平方向のある程度の移動を許容するパッド押さえ25を前記パッド座21に設けたことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の基板吸着装置において、前記パッド支持体22がゴムで構成されたことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、基板支持体に係り、開口14aを設けかつ該開口14aまで延びる吸気管28を備えた基板支持体であって、請求項1又は2記載の基板吸着装置を前記吸引パッド23が前記開口14aから突出するように取付け、かつ前記吸気管28と前記吸気通路21bとを接続したことを特徴としている。
請求項4記載の発明は、基板搬送装置に係り、可動体を備えた基板搬送装置であって、請求項3記載の基板支持体を前記可動体の先端に設けたことを特徴としている。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の基板搬送装置において、前記可動体がロボットアームであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)請求項1〜3記載の発明によると、基板吸着装置のパッドが水平方向の移動に対して追従可能であるので、基板の熱膨張・熱収縮に対する影響を受けることがなく、吸着後のエラーの発生を生じることがない。
また、基板を吸着したままパッドが水平方向に移動できるので、万一、基板が周辺構造物に接触した場合でも、パッドの移動で衝撃を吸収することができ、基板の損傷を抑えることができる。
(2)請求項4および5に記載の発明によると、ロボット等の基板搬送装置に、基板の熱膨張・熱収縮に対する影響を受けることがなく、吸着後のエラーの発生を生じることがない基板吸着装置をそなえることにより、基板自身の温度変化のみでなく、温度の変化等がある環境の中でも、基板を確実に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
〈実施例1〉
図1は本発明の実施例1に係る基板吸着装置を示す側断面図である。
図において、基板吸着装置20は、基板支持体14,17の上面に形成されるもので、パッド座21とパッド支持体22と吸引パッド23とボール24とパッド押さえ25を次のように備えている。
パッド座21は、中央部に設けた凹部21aと、凹部21aの底部中央から外部に通じる吸気通路21bと、凹部21aの周囲複数箇所に設けたボール収納凹部21cとを有している。吸気通路21bは基板支持体13,17に設けられたチューブなどからなる吸気管28と連通している。また、前記吸気管28は真空ポンプ(図示せず)ろ連結されている。
パッド支持体22は、弾性体で形成されており、上方に大口径円筒部22aと、大口径円筒部22aに連接する小口径円筒部22bとで、漏斗状に形成され、したがって内部に大きな吸気孔22c、底部に底部開口22dが形成されている。
吸引パッド23は下部周囲につば23bを有する有底円筒部23aから成る帽子(シルクハット)状の形状をしており、上部周囲に360度に亘る周縁凸部23cを設けると共に、上部中央に吸気孔23dを設け、上部の吸気孔23dから円筒部23a内に空気を吸引することで周縁凸部23cの内側が負圧となり、ガラス基板等Kを確実に吸引・載置するようになる。
ボール24はボール収納凹部21cに収納されて、吸引パッド23のつば23bを載置している。
そして、パッド支持体22の小口径円筒部22b側をパッド座21の吸気通路21bの上に向けて立設し、立設されたパッド支持体22の大口径円筒部22aの上面に吸引パッド23を載置し、この状態で吸引パッド23のつば部23bの下部がボール24に軽く載置されている。
また、パッド押さえ25は断面L字状をしており、パッド座21の上面に設けられるもので、パッド23のつば23bの上面と隙間t1を介して対向し、かつパッド23の円筒部23aの外周面と隙間t1よりも大きな隙間t2を介して対向して置かれ、この隙間t1、t2によって吸引パッド23の垂直方向および水平方向のある程度の移動を許容すると共に、それ以上の移動を阻止している。
なお、上述のように式t1<t2を満たすようにするのが望ましいけれども、必ず式t1<t2を満たさなければならないと言うことではなく、式t1=t2や式t1>t2を満たすものであっても勿論かまわない。
なお、26はパッド支持体22の底部を押えて支持するためのもので、断面T字状をし、かつ中央部にパッド支持体22の底部開口22dを共有するパッド支持体押えである。
また、27は吸気管28と吸気通路21bとを結ぶ継手である。
【0008】
〈実施例2〉
図2は本発明の実施例2に係る基板搬送装置を示す側面図、図3は図2における基板搬送装置の平面図である。
図2及び図3において、1はロボット等で構成される基板搬送装置、2は前記基板搬送装置1の固定ベース、3は前記固定ベースに上下方向に回動可能に連結された垂直アーム、3aは前記垂直アーム3の横に並設されたリンク、4は前記垂直アーム3に上下方向に回動可能に連結された垂直アーム、4aは前記垂直アーム4の横に並設されたリンク、前記垂直アーム3とリンク3aは平行四辺形リンク機構を構成し、前記垂直アーム4とリンク4aは平行四辺形リンク機構を構成している。5は前記垂直アーム4の先端部に上下方向に回動可能に連結された水平アーム支持部、6は前記水平アーム支持体5の上面に水平方向に回動可能に連結され、かつ、伸縮可能な右腕で、前記水平アーム支持体5の上面に水平方向に回動可能に連結された水平アーム7と、前記水平アーム7に水平方向に回動可能に連結された水平アーム8とで構成されている。9は同じく前記水平アーム支持体5の上面に水平方向に回動可能に連結され、かつ、伸縮可能な左腕で、前記水平アーム支持体5の上面に水平方向に回動可能に連結された水平アーム10と、前記水平アーム10に水平方向に回動可能に連結された水平アーム11とで構成されている。前記右腕6と左腕9は、前記水平アーム支持体5の上面に、横に並べて配置されている。12は前記右腕6の先端に水平方向に回動可能に連結されたハンドで、水平アーム8の先端に水平方向に回動可能に連結される基板支持体基部13と、この基板支持体基部13に取り付けられた基板支持体14とで構成されている。15は前記左腕9の先端に水平方向に回動可能に連結されたハンドで、水平アーム11の先端に水平方向に回動可能に連結される基板支持体基部16と、この基板支持体基部16に取り付けられた基板支持体17とで構成されている。前記2つの基板支持体基部13,16は、干渉しないように高さを違えている。なお、20は基板支持体14,17の開口14a(図1)に複数個設けられた基板吸着装置である。
【0009】
このような構成において、基板搬送装置1による基板Kの搬送は、例えば次のようにして行なわれる。
まず、基板搬送装置1の基板支持体14,17の高さを、垂直アーム3と垂直アーム4を回動して上下方向に伸縮させることにより、調節する。前記垂直アーム3と垂直アーム4を回動して上下方向に伸縮させても、平行四辺形リンク機構により、水平アーム支持体5は傾くことはなく、常に水平を維持する。
次に、右腕6(もしくは左腕9、以下同じ)を伸ばして、基板支持体14(もしくは基板支持体17、以下同じ)を、例えば基板収納カセット(図示せず)内の基板Kの下面に空隙を介して対向させる。この状態で、前記垂直アーム3と垂直アーム4を回動して上方向に伸ばし、基板支持体14を上昇させる。基板支持体14を上昇させることにより、基板Kが基板支持体14の基板吸着装置20上に載置される。このとき基板Kは基板吸着装置20のパッド23の上部と接しており、図示しない真空ポンプを用いて吸気孔23dから吸気することにより、基板Kを吸引吸着する。
基板Kが、基板支持体14上に吸引吸着された後に熱膨張して水平方向にずれた場合は、基板Kと接するパッド23がボール24の上をボールを転がすようにして基板Kとともに移動していくので、パッド23と基板Kの吸着がはずれることはない。また、基板の熱膨張が治まると、元の位置に復帰する。
基板支持体14上に基板Kを載置すると、右腕6を縮めて、基板Kを基板収納カセットから引き出し後方へと移動させる。
右腕6が後方へと移動すると、今度は左腕9が先程の右腕6と同様にして、伸びて基板収納カセット内に入っていき、基板Kを基板支持体17上に載置する。
なお、前記実施例においては、基板支持体14,17に配置する基板吸着装置20をパッド23が水平方向に移動可能な構成のもののみとしているが、例えば、基板Kの中央部にあたる部分の少なくとも1箇所の基板吸着装置には、パッドが水平方向に移動しない構成にして、基板Kが不用意に移動しないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例における基板吸着装置を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施例2における基板搬送装置を示す側面図である。
【図3】図2における基板搬送装置の平面図である。
【図4】図4は特許文献1記載の発明に係る基板検査の縦断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 基板搬送装置
2 固定ベース
3 垂直アーム
3a リンク
4 垂直アーム
4a リンク
5 水平アーム支持体
6 右腕
7 水平アーム
8 水平アーム
9 左腕
10 水平アーム
11 水平アーム
12 ハンド
13 基板支持体基部
14 基板支持体
15 ハンド
16 基板支持体基部
17 基板支持体
20 基板吸着装置
21 パッド座
21a 凹部
21b 吸気通路
21c ボール収納凹部
22 パッド支持体
22a 大口径円筒部
22b 小口径円筒部
22c 吸気孔
22d 底部開口
23 吸引パッド
23a 有底円筒部
23b つば
23c 周縁凸部
23d 吸気孔
24 ボール
25 パッド押さえ
26 パッド支持体押え
27 継手
28 吸気管
K ガラス基板等
t1、t2 隙間(t1<t2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に設けた凹部21aと該凹部21aの底部中央から外部に通じる吸気通路21bと該凹部の周囲複数箇所に設けたボール収納凹部21cとを有するパッド座21と、
大口径円筒部22aと該大口径円筒部22aに連接する小口径円筒部22bから成る漏斗状をした弾性体のパッド支持体22と、
下部周囲につば23bを有する有底円筒部23aから成る帽子状をしており、上部周囲に360度に亘る周縁凸部23cを設けると共に、上部中央に吸気孔23dを設けた吸引パッド23と、
を有する基板吸着装置であって、
前記ボール収納凹部21cにボール24を収納し、
前記パッド座21の前記吸気通路21b上に前記パッド支持体22の前記小口径円筒部22b側を向けて立設し、立設された前記パッド支持体22の前記大口径円筒部22aの上面に前記吸引パッド23を載置し、この状態で前記吸引パッド23のつば部23bが前記ボール24に接触し、
かつ、前記吸引パッド23の垂直方向および水平方向のある程度の移動を許容するパッド押さえ25を前記パッド座21に設けたことを特徴とする基板吸着装置。
【請求項2】
前記パッド支持体22がゴムで構成されたことを特徴とする請求項1記載の基板吸着装置。
【請求項3】
開口14aを設けかつ該開口14aまで延びる吸気管28を備えた基板支持体であって、請求項1又は2記載の基板吸着装置を前記吸引パッド23が前記開口14aから突出するように取付け、かつ前記吸気管28と前記吸気通路21bとを接続したことを特徴とする基板支持体。
【請求項4】
可動体を備えた基板搬送装置であって、請求項3記載の基板支持体を前記可動体の先端に設けたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項5】
前記可動体がロボットアームであることを特徴とする請求項4記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−334728(P2006−334728A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162779(P2005−162779)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(593151457)マイシステムズ有限会社 (4)
【Fターム(参考)】