説明

基板搬送装置及び基板搬送方法

【課題】 基板を保持することによる保持体の撓みを抑えること。
【解決手段】 基板を保持するために搬送基体に進退自在に設けられた板状の保持体41の下面に、薄膜状の圧電体5を設ける。この圧電体5は、電圧を印加すると伸長するように構成され、これにより、保持体41に上向きに反る方向の曲げ応力が与えられる。保持体41にウエハWを保持させると、ウエハWの自重により保持体41の先端が下方に垂れるように撓むが、圧電体5に電圧を印加すると、保持体41の下面側が伸長するので、ウエハWの自重による保持体41の撓みに抗して、当該保持体に上向きに反る方向に曲げ応力が与えられ、保持体41の撓みが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送基体に進退自在に設けられた板状の保持体により、支持部との間で基板の受け渡しを行う基板搬送装置において、基板を保持することによる保持体の撓みを抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやLCD基板の製造プロセスにおいては、多数枚の基板が多段に収納されたFOUPから基板搬送装置により基板を取り出して、次工程のモジュールに受け渡すことが行われている。前記基板搬送装置は、図27及び図28に示すように、基板である半導体ウエハW(以下「ウエハW」という)の裏面側を保持するフォーク11が進退機構13により搬送基体12に沿って進退自在に設けられると共に、前記搬送基体12が鉛直軸周りに回転自在、昇降自在に構成されている。図27及び図28中14及び15は、ウエハWのガイド部材である。この際、FOUPや縦型熱処理装置に用いられるウエハボート等の多数枚のウエハWが多段に配設される構成では、小型化を図るために、ウエハWの受け渡しの際の上下方向の移載マージンを小さくする必要があり、フォーク11の厚みは例えば3mm程度に設定されている。
【0003】
ところで、近年ウエハが大型化しており、450mmサイズのウエハが検討されているが、大口径化に伴い重量が増大する。一方、ウエハサイズに合わせてフォーク11が長くなるが、既述の理由からフォーク11の厚さを大きくして剛性を高めることは得策ではない。このため、従来と同様の厚さのフォーク11を用いた場合、図29に示すように、ウエハの自重によって、フォーク11の先端が下方に垂れるという撓みが発生するおそれがある。
【0004】
この撓みが発生すると、図29に示すように、フォーク11の基端側から先端側までの上下方向の大きさL1が大きくなり、ウエハWの受け渡しの際に大きな移載マージンが必要となってしまう。このため、例えばFOUPやウエハボートでは配列ピッチを大きくせざるを得ず、従来の同じ枚数のウエハWを搭載しようとすると、従来に比べて大型化してしまう。一方、FOUPやウエハボート等を従来と同じ大きさに設定すると、ウエハWの搭載枚数が少なくなるため、スループットが低下するという問題の発生が懸念される。このため、ウエハWを保持したときに先端が垂れ下がるというフォーク11の撓みの発生を抑えることが要求されている。
【0005】
特許文献1には、フォークを支持具に対してθ方向に回動自在に設けると共に、前記支持具をアームに対してα方向に回動自在に設けることにより、フォークの傾きを調整する技術が記載されている。前記θ方向とは、フォークの長さ方向に伸びる水平方向であり、前記α方向とは、フォークの幅方向に伸びる水平方向である。この際、圧電素子により支持具あるいはフォークを回動させる手法も記載されている。また、特許文献2には、フォークの基端側をボルトによりハンドに取り付ける構成において、ハンドに偏心駒を設け、この偏心駒によりフォークを押し上げて、フォークの先端の垂れさがりを補正する技術が記載されている。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1及び特許文献2の構成は、いずれもフォークの基端側の取り付け方を調整してフォークの姿勢を補正するものであり、フォーク自体の撓みを補正するものではないので、これらの構成を用いても、本発明の課題を解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3802119号公報(図2、図4)
【特許文献2】特開2007−61920号公報(図3、段落0017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、基板を保持することによる保持体の撓みを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明の基板搬送装置は、
基板を保持し、搬送基体に進退自在に設けられた板状の保持体により、支持部との間で基板の受け渡しを行う基板搬送装置において、
前記保持体に撓みを抑えるために設けられ、電圧が印加されると収縮又は伸長する圧電体と、
前記保持体に上向きに反る方向に曲げ応力を与えるように当該圧電体に電圧を印加するための給電部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の基板搬送方法は、
搬送基体に設けられた板状の保持体を前進させ、支持体に支持された基板の下方側に位置させる工程と、
次いで前記保持体を支持体に対して相対的に上昇させて基板を受け取る工程と、
前記保持体に設けられた圧電体に、基板が保持されていないときよりも絶対値が大きい電圧を印加して当該圧電体を収縮又は伸長させ、基板の自重による保持体の撓みに抗して、当該保持体に上向きに反る方向に曲げ応力を与える工程と、を含むことを特徴とする基板搬送方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を保持し、搬送基体に進退自在に設けられた板状の保持体により、支持部との間で基板の受け渡しを行う基板搬送装置において、前記保持体に撓みを抑えるために、電圧が印加されると収縮又は伸長する圧電体を設けている。そして、保持体が撓むときには、圧電体に電圧を印加して、当該保持体に上向きに反る方向に曲げ応力を与えているので、前記保持体の撓みを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基板搬送装置とFOUPとウエハボートを示す構成図である。
【図2】本発明に係る基板搬送装置を示す平面図である。
【図3】前記基板搬送装置を示す側面図である。
【図4】前記基板搬送装置の一部を示す拡大側面図である。
【図5】前記基板処理装置に設けられる圧電体の作用を説明するための側面図である。
【図6】前記基板処理装置の動作を制御する制御部を示す構成図である。
【図7】前記圧電体に印加される電圧と、保持体の相対的高さ位置との関係を示す電圧パターンを示す特性図である。
【図8】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図9】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図10】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図11】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図12】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図13】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図14】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図15】前記圧電体に印加される電圧と、保持体の相対的高さ位置との関係を示す電圧パターンを示す特性図である。
【図16】前記基板処理装置の作用を説明する側面図である。
【図17】本発明の他の例の基板搬送装置を示す平面図である。
【図18】本発明のさらに他の例の基板搬送装置を示す回路図である。
【図19】本発明のさらに他の例の基板搬送装置を示す斜視図である。
【図20】図19に示す基板搬送装置を示す平面図である。
【図21】図19に示す基板搬送装置を示す側面図である。
【図22】図19に示す基板搬送装置に設けられる圧電体を示す説明図である。
【図23】本発明のさらに他の例の基板搬送装置を示す平面図である。
【図24】本発明のさらに他の例の基板搬送装置の一部を示す拡大側面図である。
【図25】図24に示す基板搬送装置の作用を説明するための特性図である。
【図26】本発明の圧電体に印加される電圧と、保持体の相対的高さ位置との関係を示す電圧パターンを示す特性図である。
【図27】従来の基板搬送装置を示す平面図である。
【図28】従来の基板搬送装置を示す側面図である。
【図29】従来の基板搬送装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の基板搬送装置の一実施の形態について、図1に示すように、ウエハWを収納するFOUP2と、ウエハWを棚状に保持するウエハボート3との間でウエハWの受け渡しを行う基板搬送装置4を例にして説明する。前記FOUP2は、多数枚例えば25枚のウエハWを多段に収納する収納容器であり、例えばウエハWは、容器21内部において、その裏面側の周縁領域を支持部22に載置することにより、所定のピッチで棚状に配列された状態で収納されている。
【0014】
また、前記ウエハボート3は、例えば100枚のウエハWを所定間隔で上下に配列して保持できるように構成されている。例えばウエハボート3は、天板31と底板32との間に複数本の支柱33を備えており、この支柱33に形成された図示しない溝状の支持部にウエハWの周縁部が保持されるようになっている。
【0015】
このウエハボート3は、昇降自在に構成されたボートエレベータ34の上に設けられ、ウエハボート3を熱処理炉35に搬入するロード位置と、熱処理炉35の下方側のアンロード位置(図1に示す位置)との間で昇降自在に構成されている。前記アンロード位置は、基板搬送装置4によってFOUP2との間でウエハWの受け渡しが行われる位置であり、図中36は熱処理炉35の蓋体、37は保温筒である。
【0016】
前記基板搬送装置4は、図1〜図3に示すように、ウエハWの裏面側を保持する略水平な板状の保持体41を備えている。この例の保持体41は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスにより構成されている。例えば保持体41は、外形の平面形状が略矩形状に構成され、その短辺はウエハWの直径よりも短く、その長辺はウエハWの直径よりも僅かに長く設定されている。また、この例の保持体41は、その長さ方向(図2中X方向)の略中央部から先端側は2本のアーム部41a,41bに分かれている。
【0017】
前記保持体41はその基端側が進退機構42に接続され、この進退機構42は、例えば搬送基体43内部に設けられたタイミングベルトを用いた駆動機構(図示せず)によって、搬送基体43に沿って進退移動するように構成されている。また、この搬送基体43は、昇降機構及び回転機構を備えた駆動機構44により、昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に構成されている。前記昇降機構は例えば昇降モータMにより構成されており、この昇降モータMはエンコーダEに接続され、エンコーダEのパルス値は後述する制御部6に出力されるように構成されている。
【0018】
この例では、前記保持体41の上面に、基端側及び先端側に夫々ガイド部材45,46が設けられている。これらガイド部材45,46は、例えば夫々ウエハWを載置する載置面45a,46aと、これら載置面45a,46aから立設し、ウエハWの外端面の一部を当接させてウエハWを位置決めする壁部45b,46bと、を備えている。ウエハWは、これらガイド部材45,46に、裏面側の周縁部の一部を載置することにより、位置決めした状態で保持体41に保持される。
【0019】
また、保持体41には、例えば2本に分岐されている領域よりも基端側に寄った位置に圧電体5が設けられている。この圧電体5は、例えばチタン酸鉛やジルコン酸鉛等の圧電性セラミックスにより、厚さが1mm程度の薄膜状に構成され、例えば保持体41の下面に耐熱性のある接着剤により接着されている。
【0020】
前記圧電体5は例えば矩形状に構成され、電極51,52を備えている。これら電極51,52は、例えば図4に示すように、圧電体5の上面側及び下面側に互いに対向するように形成されており、夫々給電路53a,53bを介して、外部の給電部をなす電圧供給部54に接続されている。この例では、電極51,52は、圧電体5の上面全体及び下面全体を夫々覆うように設けられている。これら電極51,電極52及び給電路53は、例えば金属層により構成され、例えば保持体41や圧電体5に耐熱性のある接着剤により接着されている。
【0021】
前記圧電体5は、図5(a)に示すように、電圧を印加しない場合には変形しないが、電圧を印加したときに保持体41に上向きに反る方向に曲げ応力を与える構成であれば、種々の構成を用いることができる。例えば、保持体41の下面側に圧電体5を設ける場合には、図5(b)に示すように、電圧を印加すると、長さ方向(図2、図5中X方向)に伸長するものが用いられる。これにより、電圧を印加すると保持体41の下面側が伸長するため、保持体41に上向きに反る方向に曲げ応力が与えられる。
【0022】
また、保持体41の上面側に圧電体5を設ける場合には、図5(c)に示すように、電圧を印加すると、長さ方向(図2、図5中X方向)に収縮するものが用いられる。これにより、電圧を印加すると保持体41の上面側が収縮するため、保持体41に上向きに反る方向に曲げ応力が与えられる。
【0023】
この例の圧電体5の一例を挙げると、圧電体5の上面側の電極51を正電極とし、及び下面側の電極52を負電極とするように電圧を印加することにより、逆圧電効果によって、伸長するように構成された圧電体5が用いられている。この際、印加する電圧の大きさに比例して収縮の程度が大きくなる。
【0024】
従って、圧電体5の長さ方向を保持体41の長さ方向に揃えた状態で、圧電体5を保持体41の下面に貼設すると共に、電極51及び電極52を図4のように設けて電圧を印加すると、圧電体5によって保持体41に上向きに反る方向に曲げ応力が与えられ、当該保持体41は先端側が反り上がるように変形することになる。前記電圧供給部54は、制御部6からの制御信号に基づいて、圧電体5に対して電圧を印加するように構成されている。
【0025】
このような基板搬送装置4によって、例えばFOUP2からウエハWを受け取るときには、先ず、搬送基体43により保持体41の高さを調整してから、FOUP2内にて支持部22に保持されているウエハWの下方側に保持体41を前進させる。次いで、保持体41を支持体22に対して上昇させて、支持部22に保持されているウエハWを保持体41上に受け取った後、支持部22に干渉しない位置まで保持体41を上昇させてから、ウエハWを保持した保持体41をFOUP2から後退させる。これらの一連の動作では、保持体41の昇降動作は搬送基体43を昇降することにより行われる。以降では、FOUP2の支持部22からウエハWを受け取るときの保持体41の動作を例にして説明する。
【0026】
続いて、前記制御部6について図6を参照して説明する。この制御部6は、例えばコンピュータからなり、プログラム61、CPU62、ボートエレベータ制御部63及び搬送制御部64を備えている。ボートエレベータ制御部63は、ボートエレベータ34の昇降動作を制御するものであり、搬送制御部64は、基板搬送装置4の進退機構42、回転機構及び昇降機構を備えた駆動機構44を制御するものである。また、図6中60はバスである。
【0027】
前記プログラム61には、制御部6から基板搬送装置4に搬送制御部63を介して制御信号を送り、所定の基板搬送操作を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部6にインストールされる。また、前記プログラム61には、保持体41がウエハWを保持する際に、圧電体5に所定の電圧パターンで電圧を印加するように電圧供給部54に制御指令を出力する命令(ステップ)が組み込まれている。
【0028】
具体的には、電圧供給部54は、図7に示す電圧パターンに基づいて電圧を発生するように構成されている。前記電圧パターンは、保持体41の相対的高さ位置と圧電体5に印加される電圧との関係を示すものであり、図7中、横軸は、保持体41の相対的高さ位置、縦軸は圧電体5に印加される電圧を夫々示している。高さ位置h1は、前記保持体41が前記支持部22上のウエハWの下方側から上昇して当該ウエハWに接触する高さ位置、つまり支持部22にて保持されているウエハWの下面と保持体41の上面が接触するときの保持体41の基端側の高さ位置である。また、高さ位置h2は、図8に示すように、圧電体5に電圧を印加しないでウエハWを保持した場合、ウエハWの自重で保持体41の先端が下がったときに、この先端がウエハWを保持していた支持部22から離れるときの保持体41の基端側の高さ位置である。
【0029】
保持体41は搬送基体43を駆動機構44により昇降させることにより昇降されるので、前記高さ位置h1,h2は、駆動機構44の昇降モータMのエンコーダEのパルス値により管理された値である。また、前記高さ位置h1,h2は、FOUP2の全ての支持部22及びウエハボート3の全ての支持部との間で共通する値である。
【0030】
そして、前記電圧パターンは、前記保持体41にウエハWが保持されているときには、保持体41にウエハWが保持されていないときよりも大きな電圧が前記圧電体5に印加されるように設定されており、この例では保持体41にウエハWが保持されていないときの電圧はゼロに設定されている。また、前記電圧は、前記保持体41が前記高さ位置h1にあるときの電圧値よりも、前記保持体41の上昇により前記ウエハWが前記支持部22から離れた後の電圧値の方が大きくなるように設定されている。
【0031】
より具体的に説明すると、図7に示すように、保持体41を保持予定のウエハWの下方側に進入させ、保持体41を前記高さ位置h1に上昇させるまでは電圧はゼロに設定されている。そして、保持体41の基端側を前記高さ位置h1に上昇したときに電圧の印加を開始し、次いで、高さ位置h2まで上昇させるまでは、昇降量の増大に比例して徐々に電圧値を大きくして、前記高さ位置h2以上では電圧V1を印加するように設定されている。
【0032】
ここで、保持体41は、支持部22からウエハWを受け取る際、高さ位置h1にて保持体41の上面にウエハWの下面が接触するが、この時点ではウエハWは支持部22に保持されているので、ウエハWの自重が保持体41にかかっていない状態である。この段階で、電圧を一気に印加すると、保持体41へのウエハWの荷重がない状態、またはほとんど荷重がない状態で保持体41の先端側が反り上がるという曲がり応力が発生するので、これにより保持体41上でウエハWの位置ずれが発生するおそれがある。一方、保持体41の基端側が高さ位置h2になった段階で電圧を一気に印加すると、FOUP2等でのウエハWの上下方向の配列間隔を(h2−h1)よりも小さくすることができなくなってしまう。このため、この例では、保持体41の基端側が高さ位置h1になったときに電圧の印加を開始し、高さ位置h2になるときまで、前記保持体41の上昇に応じて電圧値が連続的に大きくなる領域を含むように、電圧パターンが設定されている。こうして、圧電体5に電圧を印加したときには、保持体41の基端側が高さ位置h2まで上昇したときに、図9に示すように、保持体41がほぼ水平になるように、保持体41の姿勢が補正されるようになっている。
【0033】
この際、電圧値V1及びV2は、予め実験により求められた値であり、高さ位置h1に対応する電圧V1と、高さ位置h2に対応する電圧V2とを決定して、その間を徐々に電圧を上昇させるようにしてもよいし、段階的に測定して求めてもよい。また、図8以降の説明では、説明の便宜上、高さ位置h1とh2の大きさや、保持体41の撓みの程度を極めて誇張して描いている。
【0034】
続いて、本発明の基板搬送装置4の作用について、FOUP2内のウエハWをウエハボート3に移載する場合を例にして、図10〜図14を用いて説明する。先ず、図10に示すように、保持予定のウエハWの下方側に保持体41を進入させる。このウエハWは図示しない支持部22により保持されている。次いで、図11に示すように、保持体41を上昇させ、保持体41の基端側を高さ位置h1に上昇させる。この段階では、ウエハWは図12のステップS1の状態であり、既述のように、ウエハWの自重が保持体41にかからず、保持体41の姿勢は水平である。
【0035】
そして、圧電体5へ電圧の印加を開始し、圧電体5に印加する電圧を徐々に大きくしながら、保持体41を上昇させる。電圧の印加により保持体41が上向きに反り上がるように変形するが、保持体41へウエハWの自重が徐々にかかって来ており、この自重の増加に合わせて電圧を大きくしているので、ウエハWの跳ね上がりが起きにくい。また、保持体41自体が上昇しているので、この保持体41の動きによって、保持体41の変形がウエハWに与える影響が抑制され、ウエハWの位置ずれはガイド部材45,46により抑えられる。
【0036】
図12のステップS2のウエハWは、保持体41の基端側は高さ位置h1により上昇しているものの、図13に示すようにウエハWの先端側は未だ支持部22に載置されている状態であり、保持体41にある程度のウエハWの自重がかかっている。この段階では、保持体41の撓みが小さく、印加電圧も小さい。続いて、ステップS3のウエハWは、保持体41の上昇により、ウエハWの先端側が支持部22から離れた状態である。この段階では、保持体41への荷重が大きくなるため、ステップS2よりも大きな電圧を印加する。さらに、ステップS4では、ステップS3よりも大きな電圧を印加しているので、保持体41の上向きに反る方向への曲げ応力が大きくなり、より水平に近い状態になる。
【0037】
そして、図14に示すように、保持体41の基端側が前記高さ位置h2に上昇したときのウエハWの状態がテップS5であるが、このステップS5では、ステップS4よりもさらに大きな電圧を印加しているので、保持体41の曲げ応力がさらに大きくなり、保持体41はほぼ水平な状態に補償される。このように、保持体41の高さ位置に応じて、圧電体5への印加電圧を連続的に大きくしているので、保持体41の撓みが保持体41の変形で補償され、ウエハWの位置ずれを抑えながら、保持体41をなるべく水平に近い状態で上昇させ、高さ位置h2ではほぼ水平な状態で保持することができる。
【0038】
そして、保持体41にて保持されたウエハWを例えばウエハボート3の支持部に受け渡すときには、電圧V1を圧電体5に印加した状態で、ウエハボート3の支持部の上方側に前記保持体41を進入させる。次いで、その位置から保持体41を下降させてウエハWを支持部に受け渡すが、当該支持部に対する高さ位置h2から高さ位置h1まで下降させる際、図7に示す電圧パターンに従って圧電体5に印加する電圧値を調整する。こうして、保持体41は前記高さ位置h1より下方側の進入位置まで下降させてから後退させるが、前記高さ位置h1より下方側の位置では、電圧をゼロにする。
【0039】
このようにして、FOUP2内のウエハWをウエハボート3に移載した後、ボートエレベータ34を上昇させて、ウエハボート3を縦型熱処理炉35内のロード位置に搬入し、ウエハWに対して一括して所定の熱処理を行う。熱処理後は、ウエハボート3をアンロード位置に下降し、基板搬送装置4により、既述の手法にて、ウエハボート3上の支持部のウエハWを、FOUP2の支持部22に受け渡す。
【0040】
上述の実施の形態によれば、保持体41の上面に、電圧の印加により上面側が収縮する圧電体5を設けているので、ウエハWの保持により撓む保持体41に、上向きに反る方向に曲げ応力が与えられる。これにより、前記ウエハWの自重により発生する保持体41の撓みを、圧電体5の収縮変形により補償することができ、前記保持体41の撓みを抑えて、ウエハWを保持した保持体41をほぼ水平な状態にすることができる。
【0041】
この際、保持体41の基端側の高さ位置に応じて、徐々に圧電体5へ印加する電圧が大きくなるように調整している。これにより、保持体41を上向きに反るように変形させる場合であっても、保持体41上のウエハWの位置ずれを抑えながら、ウエハWの自重による保持体41の撓み量に合わせて保持体41を変形させることができ、保持体41の姿勢をほぼ水平な状態、又は水平に近い状態に保った状態で上昇させることができる。
【0042】
この結果、例えば450mmの大きなサイズのウエハWを保持する場合であっても、保持体41の基端側から先端側までの上下方向の大きさの増大を抑えることができる。これにより、ウエハWの受け渡しの際の上下方向の移載マージンの増大が抑制され、例えばFOUP2やウエハボート3のように多数枚のウエハが多段に搭載される構成において、ウエハWの配列ピッチを小さくすることができる。このため、多数枚のウエハを多段に搭載する構成部材を備えた装置の大型化を抑えることができ、また、装置内において、所定の容量の領域に多数枚のウエハWを収納することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、圧電体5を保持体41の下面側に設けているので、圧電体5とウエハWとが接触するおそれが少なく、コンタミネーションの発生を抑えることができる。
【0044】
続いて、上述の圧電体5に供給される電圧パターンの他の例について、図15及び図16を用いて説明する。この例の電圧パターンは、前記保持体の上昇に応じて電圧値が段階的に大きくなっており、保持体41の基端側の高さが、高さ位置h1と高さ位置h2との間にあるときに、圧電体5へ一定の大きさの電圧を印加するものである。図16のステップS11は、保持体41の基端側を高さ位置h1に上昇させた状態であり、この時点では、既述のようにウエハWは支持部22に保持されているので、ウエハWの姿勢は水平である。
【0045】
次いで、保持体41を上昇させるが、図16のステップS12は、保持体41の基端側は高さ位置h1と高さ位置h2との間にあるものの、ウエハWの先端側は未だ支持部22に載置され、保持体41の先端側が下方に垂れた状態のウエハWであり、ここで圧電体5への電圧V1の印加を開始する。この段階では、保持体41にウエハWの自重がある程度かかった状態であるので、保持体41に電圧V1を印加して保持体41を収縮させても、ウエハWが跳ね上がりにくく、保持体41自体が上昇していることとも合わせて、ウエハWの位置ずれの発生が抑えられる。
【0046】
ステップS12以降は、圧電体5への電圧の印加により、保持体41に上向きに反る方向で曲げ応力が発生し、保持体41の先端が反り上がった状態で上昇していくが、ステップS13は、保持体41先端の反り上がりが途中の段階のウエハW、ステップS14は、保持体41先端の反り上がりが終了した段階のウエハWである。このように、保持体41の基端側が高さ位置h1及びh2の間にあるときに、一定の電圧V1の印加を開始しても、ウエハWの位置ずれを抑えながら、ウエハWの自重による保持体41の撓みを保持体41の変形を補償し、高さ位置h2ではウエハWをほぼ水平な状態で保持することができる。
【0047】
また、この図15に示す電圧パターンにおいても、ステップS12にて前記保持体41にウエハWが保持されているときに、ウエハWが保持されていないときよりも大きい電圧が前記圧電体5に印加され、前記保持体41にウエハWが保持されていないときの電圧はゼロに設定されている。また、前記電圧は、前記保持体41が前記高さ位置h1にあるときの電圧値よりも、前記保持体41の上昇により前記ウエハWが前記支持部22から離れた後の電圧値の方が大きくなるように設定されている。
【0048】
続いて、本実施の形態の他の例について、図17により説明する。この例の基板搬送装置4Aは、保持体41の先端側のアーム部41a,41bにも圧電体55,56を備えている。これら圧電体55,56は、アーム部41a,41bの形状に合わせて、細長い矩形状に形成されており、圧電体5と同様に、耐熱性のある接着剤によりアーム部41a,41bの下面に貼設されている。
【0049】
前記圧電体55は、圧電体5と同様に、その上面側に電極51aを備えると共に、その下面側に電極52aを備えており、電極51aは、給電路531により給電路53aを介して電圧供給部54に接続され、電極52aは、給電路532により給電路53bを介して電圧供給部54に接続されている。また、前記圧電体56は、圧電体5と同様に、その上面側に電極51bを備えると共に、その下面側に電極52bを備えており、電極51bは、給電路533,531により給電路53aを介して電圧供給部54に接続され、電極52bは給電路534,532により給電路53bを介して電圧供給部54に接続されている。なお、図17では、図示の便宜上、電極51,51a,51b及び電極52,52a,52bは、保持体41の上面側に並ぶように描いている。
【0050】
そして、圧電体55,56は、電圧を印加しない場合には変形しないが、電圧を印加したときには、長さ方向(図17中X方向)に伸長するように構成されている。この例では、電極51,51a,51bが正電極となり、電極52,52a,52bが負電極となるように電圧供給部54から電圧が印加されている。また、この際、これら圧電体55,56に対しても、前記電圧供給部54から、保持体41の高さ位置に対応した電圧を印加するように構成され、例えば図7又は図15に示す電圧パターンに従って、電圧が印加されるようになっている。その他の構成は、上述の図2に示す基板搬送装置4と同様である。
【0051】
このような構成によれば、保持体41の下面の長さ方向全体に圧電体5,55,56が設けられているので、圧電体5,55,56に電圧を印加したときの当該圧電体5,55,56の伸長によって、保持体41の長さ方向全体に上向きに反る方向に曲げ応力が発生する。このため、保持体41の長さ方向の変形量を大きくすることができるので、ウエハWを保持したときの撓み量が大きい場合にも、保持体41の姿勢を水平状態に近付けることができる。
【0052】
続いて、上述の実施の形態の他の例として、保持体41の撓み量を検出する撓み検出部を設け、この検出値に基づいて電圧供給部24から圧電体5に印加する電圧値を制御することにより、前記撓み量を小さくなるように補正する構成について、図18を用いて説明する。ここでは、撓み検出部として、歪みセンサ400を用いる場合を例にして説明する。この歪みセンサ40は、例えば、図18に示すように、保持体41の先端側の上面に設けられている。この歪みセンサ400は、保持体41の下面に設けるようにしてもよいし、保持体41の内部に設けるようにしてもよい。
【0053】
この例の電圧供給部54は、フィードバック信号をなす前記歪みセンサ400からの検出値と、圧電体5に印加する電圧の設定値との差分に応じた大きさの電圧を出力するように構成されている。具体的には、図18に示すように、前記電圧供給部54には、加算部411と積分機能を備えたアンプ412とを含む演算増幅部410が接続されると共に、前記加算部411は信号変換部420を介して歪みセンサ400に接続されている。
【0054】
前記加算部411は、歪みセンサ400から信号変換部420を介して送られた保持体41の歪みに対応する電圧(歪み検出値)と、圧電体5に印加する電圧の設定値との差分を求めるものであり、前記アンプ412は、この差分を積分して出力するものである。従って、歪みセンサ400の歪み検出値は、フィードバック信号として機能する。
【0055】
そして、ウエハWが保持体41に保持されていないときに、保持体41及びウエハWの自重により保持体41が撓む作用を解消して保持体41を水平に維持するために、必要な圧電体41への印加電圧をE0とすると、電圧設定値はE0に対応する大きさである。また、信号変換部420においては、ウエハWが保持体41に保持されていないときに歪みセンサ400から得られる歪みの大きさに応じた電圧値をE0に相当する値とし、歪みが大きくなるにつれて電圧値が増えるように設定する。
【0056】
このような構成とすれば、ウエハWが保持体41に保持されていないときには、加算部411の出力はゼロであり、保持体41は水平に維持されているが、ウエハWが保持体41に保持されると、保持体41が撓んで歪みセンサ400で検出される歪みの値が大きくなり、信号変換部420の出力値がE0を越えるので、概略的な言い方をすれば、当該出力値と電圧設定値E0との差分に応じた電圧が、圧電体5に供給される。このため、圧電体5が伸長して、保持体41に上向きに反る方向に曲げ応力が与えられるので、歪み検出値が小さくなり、加算部411における加算値が小さくなり、やがて当該加算値がゼロとなって、保持体41が水平に維持されることになる。
【0057】
以上の構成によれば、保持体41の撓み量を歪みセンサ400により検出し、この検出値に基づいて圧電体5に印加する電圧値を制御しているので、保持体41の撓みの発生に追従して、圧電体5が伸長する。このため、保持体41が水平に近い状態に維持されやすく、短い時間でウエハWを保持した保持体41をほぼ水平な姿勢に安定させることができる。
【0058】
また、撓み検出部としては歪みセンサの代わりに光センサを用いるようにしてもよい。例えば前記光センサは、光軸が上下方向に並ぶように設けられたラインセンサ等により構成され、前記上下方向に並ぶ光軸は、保持体41がウエハWを保持したときに、前記光軸の一部が遮断されるように設けられる。これにより、保持体41がどの位置の光軸を遮断するかによって、保持体41の撓み量が検出されるようになっている。そして、図18に示す例と同様に、電圧供給部54は、フィードバック信号をなす光センサからの検出値と、圧電体5に印加する電圧の設定値との差分に応じた大きさの電圧を出力するように構成される。
【0059】
続いて、本発明の第2の実施の形態について、図19〜図23を用いて説明する。この実施の形態の基板搬送装置4Bが、上述の実施の形態の基板搬送装置4と異なる点は、薄膜状の圧電体5の代わりに、保持体41に多数個の圧電素子70を積層した圧電体7(7A,7B)を設けたことである。当該実施の形態では、保持体41の上面に圧電体7を設ける場合を例にして説明する。
【0060】
この例では、前記圧電素子70は、図19に示すように薄い板状に構成され、保持体41の幅方向(図15中Y方向)の両側において、夫々保持体41の長さ方向(図15中X方向)全体に亘って配列されている。前記圧電素子70は、例えばチタン酸鉛等により構成されている。
【0061】
これら圧電素子70は、並列に入力電圧が印加されるように結線されている。つまり、図19及び図22に示すように、給電路71により一つ置きの圧電素子70aが電圧供給部73の正極側に接続され、前記圧電素子70aに隣接する圧電素子70bは給電路72により電圧供給部73の負極側に接続されている。図22中の矢印は、分極方向を示している。前記給電路71,72は例えば金属層により構成され、保持体41の表面に前記金属層を形成し、この金属層に配線回路を印刷して、不要の薄膜を除去することにより形成される。
【0062】
前記圧電素子70a,70bは、分極方向が保持体41の長さ方向に揃い、かつ圧電素子70aの分極方向が保持体41の基端側から先端側へ向かうように配列することにより、電圧を印加したときに保持体41の長さ方向に収縮するように構成されている。
【0063】
この例においても、各圧電素子70a,70bには、図7又は図15に示す電圧パターンに応じて電圧が供給され、既述の実施の形態と同様の動作で、FOUP2とウエハボート3との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0064】
このような構成によれば、保持体41の上面に、圧電素子70を多数積層した圧電体7を設けているので、電圧を印加したときのトータルの変位量(収縮量)が大きくなる。このため、サイズの大きいウエハWを保持する場合等、ウエハWの自重による保持体41の撓みが大きい場合にも、撓みを補償して、保持体41をほぼ水平な状態かまたは水平に近い状態に補正することができる。
【0065】
以上において、本発明の基板搬送装置の保持体81は、図23のように、先端部が2本のアーム部に分岐せず、ウエハWの裏面側中央領域にウエハWの直径方向に伸びる矩形状に構成してもよい。この場合、保持体81に圧電素子70の圧電体7を設ける場合には、保持体81の上面に、例えば保持体81の長さ方向に沿って圧電素子70が配列される。また、この形状の保持体81に図2又は17に示す圧電体5を設けるようにしてもよい。
【0066】
ここで、図19に示す例や、図23に示す例では、保持体41,81の長さ方向全体に圧電素子70が配列されているが、圧電素子70の数や保持体41,81上の設置領域は、保持体41,81の撓みの程度に応じて、適宜選択可能である。また、圧電体5の設置領域や、その大きさ、設置枚数についても、保持体41,81の撓みの程度に応じて、適宜選択可能である。この際、圧電体5は、上下方向に積層して設けるようにしてもよい。
【0067】
以上において、本発明の基板搬送装置では、保持体41,81によりウエハWを保持していないときには、圧電体5、圧電素子70に電圧を印加せず、ウエハWを保持しているときに、圧電体5、圧電素子70に所定の電圧を印加するようにしてもよい。この際、本発明の基板搬送装置は、図24及び図25に示すように、ガイド部材46(45)の載置面46a(45a)に、ウエハWが載置されたときに接触するように感圧センサ82を設け、この感圧センサ82によって、圧電体5、圧電素子70への電圧供給を制御してもよい。
【0068】
具体的には、保持体41、81上にウエハWを保持して、感圧センサ82がオン状態となったときに、例えば制御部6により電圧供給部54,73に、圧電体5、圧電素子70への電圧印加を開始するように指令を出力する。また、保持体41、81からウエハWが離れ、感圧センサ82がオフ状態となったときに、例えば制御部6により電圧供給部54,73に、圧電体5、圧電素子70への電圧印加を停止するように指令を出力するように構成される。この場合、ウエハWを保持している保持体41,81の高さ位置に応じて、印加する電圧値を調整するようにしてもよいし、前記保持体41,81の高さ位置によらず、一定の電圧値に維持するようにしてもよい。
【0069】
さらに、圧電体5,7に印加される電圧パターンは、図26に示すように、保持体41にウエハWが保持されていないときの電圧を、前記保持体41にウエハWが保持されているときよりも小さい値に設定するものであり、このように、保持体41が高さ位置h1にてウエハWの下面に接触する前から電圧の印加を開始するようにしてもよい。ウエハWの下面に接触する前に印加される電圧は小さいため、保持体41には大きな曲げ応力が発生せず、保持体41へ支持部22からウエハWを受け渡すときに、ウエハWの跳ね上がりが起こるおそれが小さく、ウエハWの荷重がかかると、水平に近い状態になるからである。
【0070】
また、本発明では、圧電体5や圧電素子70は、電圧を印加すると、保持体41,81に上向きに反る曲げ応力を与える構成であれば、保持体41,81の上面又は下面のどちらに設けてもよいし、保持体41,81の内部に設けるようにしてもよい。また、保持体41,81の上面、下面又は内部のいずれかを組み合わせて設けてもよい。
【0071】
さらに、本発明では、進退機構42に保持体41,81を取り付けたときの保持体41,81自体の自重による撓みを補正するために、圧電体5、7に電圧を印加して、保持体41,81自体の撓みの解消するようにしてもよい。この場合には、保持体41にウエハWを保持したときには、さらに撓み量が大きくなるため、保持体41にウエハWが保持されているときには、ウエハWが保持されていないときよりも大きい電圧が前記圧電体5,7に印加される。移載マージンを小さくするため、保持体41,81を薄くする要請がある一方、ウエハWが大口径化しつつあることから、ウエハWを保持していないときに保持体41,81自体に撓みが発生するおそれがあり、この撓みの軽減は有効である。
【0072】
ここで、圧電体は、その種別に応じて、0〜+E1の電圧を印加することにより、保持体41に上向きに反る曲げ応力を与えるように動作するものもあれば、−E2〜−E3の電圧を印加することにより動作するものもある。このため、圧電体の種別に応じて、動作する範囲の電圧値から選択して使用すればよい。従って、本発明でいう電圧値が大きいとは、電圧値の絶対値が大きいことを意味している。
【0073】
さらにまた、本発明では、基板を保持することにより発生する保持体41の撓みを抑えることが目的であり、保持体41が水平状態ではなくても、本来の撓みが軽減される場合は本発明の範囲に含まれる。
【0074】
さらにまた本発明は、半導体ウエハWのみならずガラス基板の搬送にも適用できる。また、本発明の基板搬送装置は、基板が多段に保持されている支持部に対しての基板の受け渡しに限らず、基板を支持する全ての支持部に対して基板の受け渡しを行う基板搬送装置に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
W 半導体ウエハ
2 FOUP
22 支持部
3 ウエハボート
4 基板搬送装置
41 保持体
42 進退機構
5,7 圧電体
51,52 電極
54 電圧供給部
6 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、搬送基体に進退自在に設けられた板状の保持体により、支持部との間で基板の受け渡しを行う基板搬送装置において、
前記保持体に撓みを抑えるために設けられ、電圧が印加されると収縮又は伸長する圧電体と、
前記保持体に上向きに反る方向に曲げ応力を与えるように当該圧電体に電圧を印加するための給電部と、を備えたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記電圧は、前記保持体が前記支持部上の基板の下方側から当該基板に接触する高さ位置での電圧値の絶対値よりも、前記保持体の相対的上昇により前記基板が前記支持部から離れた後の電圧値の絶対値の方が大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記給電部は、前記保持体の相対的高さ位置と前記電圧の値との関係を示す電圧パターンに基づいて電圧を発生するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記電圧パターンは、前記保持体の上昇に応じて電圧値が段階的あるいは連続的に大きくなる領域を含むことを特徴とする請求項3記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記保持体の撓み量を検出する撓み検出部を設け、
前記給電部は、フィードバック信号をなす前記撓み検出部からの検出値と、圧電体に印加する電圧の設定値との差分に応じた大きさの電圧を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項6】
搬送基体に設けられた板状の保持体を前進させ、支持体に支持された基板の下方側に位置させる工程と、
次いで前記保持体を支持体に対して相対的に上昇させて基板を受け取る工程と、
前記保持体に設けられた圧電体に、基板が保持されていないときよりも絶対値が大きい電圧を印加して当該圧電体を収縮又は伸長させ、基板の自重による保持体の撓みに抗して、当該保持体に上向きに反る方向に曲げ応力を与える工程と、を含むことを特徴とする基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−212746(P2012−212746A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77033(P2011−77033)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】