説明

基板搬送装置

【課題】
搬送される基板面に付着したゴミ等の異物を効果的に除去する簡単、小型且つ安価な基板搬送装置を提供する。
【解決手段】
基板40の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数個の搬送コロ22A〜22Dを含む搬送部20と、この搬送部20の搬送コロ22A〜22Dのスリットノズル24からエアー等の気体を吹き出し又は吸引する気体吹付/吸引部30とを備えている。気体吹付/吸引部30のブロアファン31の吸気および排気を複数個の搬送コロ22A〜22Dへ交互に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板搬送装置に関し、特に液晶表示パネル(LCD)や半導体集積回路(IC)等の電子デバイスの製造に使用されるガラス基板又はサブストレート(以下、単に基板という)の裏面に付着したゴミ等の異物を除去しながら基板を1つの場所から他の場所へ搬送する基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示パネル等の電子デバイスは、斯かる表示パネルの多数の画素(ピクセル)を駆動する駆動用の半導体デバイスと共に基板の表面にマスキング、露光、エッチング、ボンディング等の複数の製造工程(ステップ又はプロセス)を経て形成されるのが一般的である。そこで、基板は、基板搬送装置により電子デバイス製造工程中に1つの場所から他の場所へ自動的に搬送される。斯かる基板は、表示パネルの大型化および製造コストの低減化のために益々大型化している。
【0003】
斯かる電子デバイスでは、基板の表面にゴミ等の異物が付着すると、製造される画素やその駆動用半導体素子に欠陥が生じ、電子デバイスの品質、製造歩留まり(生産性)、製造コスト等を決定する。従って、基板面にゴミ等の異物が付着しないように又は付着する異物の個数を最小にすることが斯かる電子デバイスの生産性や製造コストを改善するために必須不可欠である。
【0004】
斯かる電子デバイス用の基板面にゴミ等の異物が付着する最大の原因は、複数の製造工程中における1つの場所から他の場所へ基板を搬送又は移動させる基板搬送にあることが知られている。搬送された基板面にゴミ等の異物が付着していると、斯かる基板を重ねた際に隣接する基板面に異物が付着することとなる。そこで、電子デバイスの製造に使用される複数の基板を、基板面にゴミ等の異物が付着することなく搬送することが可能な基板搬送装置が望まれる。
【0005】
基板面にゴミ等の異物の付着を生じさせることなく又は付着する異物を最小限に抑えるための従来技術が幾つかの文献に開示されている。基板を搬送ローラで搬送し、第1回転ブラシで基板の下面に付着している異物を掃き取り、更にこの回転ブラシの下方に配置された第2回転ブラシで叩き落すことにより、基板に付着している異物を確実に除去する異物除去装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
また、搬送ローラの上を搬送されている基板の下面にエアーナイフから気体を噴射することにより、基板の付着液を気体の噴射圧力により除去して乾燥させる基板の乾燥装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、搬送路上で基板が上下エアーナイフの傍らを通過する際に、基板表面より発生するミストをミスト吸込口から吸い込んで排出し、ミストが基板へ再付着するのを防止して基板の処理品質を向上させる基板処理装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、クリーンユニット内でエアーナイフにより基板の乾燥処理時に、ダウンフロー流を形成して不純物質を排出口から排出させることにより不純物質の基板への付着を防止する基板乾燥装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−15187号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−22359号公報(第3−4頁、第2図)
【特許文献3】特開2003−229404号公報(第10−11頁、第7図)
【特許文献4】特開平7−14819号公報(第4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の如き従来技術では、基板裏面に付着したゴミ等の不純物を除去するために複雑、大型且つ高価な装置を必要とする。また、搬送中の基板から不純物を効果的に除去することが困難であるという課題があった。
【0009】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、比較的簡単、小型且つ安価な構成で確実に搬送中の基板の下面に付着した異物を除去して、斯かる基板を使用する電子デバイスの生産性や性能を改善する基板搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明による基板搬送装置は次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)所定幅および長さを有する基板を該基板の長さ方向に所定間隔で設けられた複数個の搬送コロの回転により搬送する基板搬送装置において、
前記各搬送コロ内にノズルを設け、前記回転中の相互に隣の搬送コロの前記ノズルから交互に気体を吹き付けおよび吸引する基板搬送装置。
(2)前記各搬送コロは、長手方向に直径が連続的に変化する中空の略筒状部材であり、前記ノズルは前記筒状部材の外周面の複数のスリットにより形成される上記(1)の基板搬送装置。
(3)前記各搬送コロは、長手方向に複数の狭い最大直径部を有し、該最大直径部において前記基板の幅方向の複数箇所と接触する上記(2)の基板搬送装置。
(4)前記基板の搬送方向に配置された複数個の搬送コロには、ブロアファンの吸気および排気配管が交互に接続される上記(1)、(2)又は(3)の基板搬送装置。
(5)所定の幅および長さを有する基板を予め決められた一方向へ搬送する基板搬送装置において、
前記基板の搬送方向に所定間隔で配置され、外周面に複数のスリットが形成され所定速度で回転する複数個の略筒状の搬送コロを含む基板搬送部と、
該複数個の搬送コロに接続され、前記スリットから前記基板に対して気体を交互に吹き付けおよび吸引する気体吹付/吸引部と、
を備える基板搬送装置。
(6)前記各搬送コロの外周面のスリットは、千鳥配置されている上記(5)の基板搬送装置。
(7)前記気体吹付/吸引部は、共通ブロアファンの吸気および排気を利用する上記(5)又は(6)の基板搬送装置。
(8)前記気体吹付/吸引部の排気配管に設けられたフィルタを備え、前記ブロアファンにより吸い込まれたエアー中の異物を前記基板面に吹き付けられる前に除去する上記(5)、(6)又は(7)の基板搬送装置。
(9)前記複数個の搬送コロの下面および側面を覆うフレームを備える上記(5)、(6)、(7)又は(8)の基板搬送装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板搬送装置によると、次の如き実用上の顕著な効果を奏する。即ち、基板搬送部の搬送コロ自体にエアー等の気体吹付/吸引部を一体的に設けるので、簡単、小型且つ安価な構成で基板面の異物を除去することが可能である。また、基板の搬送方向に所定間隔で配置された複数個の搬送コロに設けられたスリットノズルから交互にエアー等の気体吹付および吸引を行うことにより、搬送コロに千鳥配置されたスリットノズルからのブローエアーで吹き飛ばされたゴミ等の異物を隣接する搬送コロで直ちに吸引するので、基板面の異物を効果的に除去することが可能である。
【0013】
更に、共通のブロアファンの吹き出しおよび吸引配管の気体を利用することにより、簡単且つ安価に基板面のゴミ等の異物が除去可能である。また、基板面に吹き付けるブロー用配管内にフィルタを設けることにより、基板面に吹き付けられる気体からゴミ等が除去され、ゴミ等の基板面への再付着を防止可能である。また、各搬送コロは、基板の幅方向に直径が連続して変化する構成であるので、基板面との接触面積は最少であり、ゴミ等の異物が付着する可能性を最少にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による基板搬送装置の好適実施形態の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
先ず、図1は、本発明による基板搬送装置の好適実施の形態の側断面図を示す。この基板搬送装置10は、主として基板搬送部20および気体吹付/吸引部30により構成されている。薄い板状部材であるガラス基板等の基板40は、後述する如く図1中において紙面と垂直方向へ搬送される。
【0016】
基板搬送部20は、底面および両側面を覆うフレーム(又はブロック)21の両側面間を貫通する回転軸(シャフト)23に挿通された搬送コロ22を有する。後述する如く斯かる搬送コロは、基板40の搬送(又は長さ)方向に沿って所定間隔で複数個設けられている。回転軸23は、搬送モータ25によりタイミングベルト26を介して所望の回転速度で回転駆動される。尚、回転軸23とフレーム21の側壁間には、周知のベアリング(図示せず)が設けられ、搬送コロ22の回転を円滑に行う。また、必要に応じて、この搬送モータ25の回転速度および回転方向を調節することにより、基板40の搬送速度および搬送方向が制御可能である。
【0017】
ここで、各搬送コロ22は、好ましくは図示の如く中空の略筒状であり、長手方向に沿ってその直径が連続的に変化する。即ち、各搬送コロ22の直径は、回転軸23に沿って略直線状且つ連続的に変化している。そして、各搬送コロ22は、その最大半径部において基板40の底面と最小面積で接触し、搬送コロ22の回転に応じて基板40を一定方向へ搬送又は移動する。図示の如く、各搬送コロ22の外周面には、多数のスリット(又はスリットノズル)24が千鳥配置で形成されている。
【0018】
一方、気体吹付/吸引部30は、ブロアファン31、このブロアファン31と搬送コロ22間の配管32および33、調節バルブ34、フィルタ(HEPAフィルタ)35およびブロー配管36により構成されている。
【0019】
次に、図2は、図1に示す本発明による基板搬送装置10の基板搬送部20および気体吹付/吸引部30の関係を詳細に示すために図1と直交方向における断面図である。図2に示す特定例では、矢印Pが示す如く、基板40は、図中左から右方向へ搬送されていると仮定する。
【0020】
図1および図2から理解される如く、搬送コロ22は、搬送される基板40の幅、長さおよび搬送距離に応じて、所定間隔で複数列の搬送コロ22A〜22Dが配置形成されている。そして各列の搬送コロ22A〜22Dには、交互に気体(例えば、エアー)が吹き付け又は吸引されるように構成されている。即ち、例えば第1列および第3列の搬送コロ22Aおよび22Cにはフィルタ35からのブロー配管36が結合され、第2列および第4列の搬送コロ22Bおよび22Dにはブロアファン31への吸引配管32が結合されている。各搬送コロ22の形状を、図1に示す如く連続した合成円錐台形とすることにより、スリットノズル24からの気体(エアー)が基板40の一層広い面に吹き付けられることに注目されたい。また、吹き付けられた気体の別(又は隣)の搬送コロによる吸引についても同様である。
【0021】
図1および図2を参照して更に詳細に説明すると、基板40は、基板搬送部20の搬送コロ22により一定方向(図2中の矢印P)へ搬送される基板である。吸引用配管32は、選択された搬送コロ(例えば、搬送コロ22B)のスリットノズル24より吸引したエアーをブロアファン31へ送る配管である。一方、配管33は、他の搬送コロ(例えば、搬送コロ22D)より吸引されるエアー用配管である。ブロアファン31は、気体(例えばエアー)を吸引又は吹き付け(ブロー)するための動力である。タイミングベルト26は、複数個の搬送コロ22を回転させるために搬送モータ25の動力を伝達するものである。搬送モータ25は、搬送コロ22を回転させる動力源である。バルブ34は、搬送コロ22のスリットノズル24より吸引される気体(エアー)の流量を、例えば手動により調節するためのものである。
【0022】
フィルタ(HEPAフィルタ)35は、スリットノズル24より吸引したエアー中のゴミ等の異物を除去するためのフィルタである。ブロー(気体吹付)用配管36は、スリットノズル24よりブローするエアーを送る配管である。フレーム31は、スリットノズル24より吹き付け(ブロー)又は吸引されるエアーを効率よく基板40の裏面に当てるため、基板40の裏面に無効な領域のスリットノズル24を封止するためのものである。ブローエアー37は、例えば搬送コロ22Aおよび22Cのスリットノズル24よりブローされるエアーの流れを示す。一方、吸引エアー38は、例えば搬送コロ22Bおよび22Dのスリットノズル24より吸引されるエアーの流れを示す。
【0023】
次に、本発明の好適実施形態による基板搬送装置10の動作を、図1および図2を参照して説明する。
【0024】
搬送コロ22は、タイミングベルト26を介して搬送モータ25に接続されている。この搬送モータ25の動力により搬送コロ22を回転させる。搬送コロ22を回転させることにより、基板40は搬送モータ25の回転速度および方向により決まる一定速度および方向へ搬送される。各搬送コロ22には、好ましくは千鳥配置でスリットノズル24が形成されている。このスリットノズル24は、次の両機能を有している。先ず第1に、回転軸23の内部からエアーを供給されることにより基板40の裏面をブローする。第2に、気体の吹き付け(ブロー)により基板40の面から吹き飛ばされた異物を含むエアーを、回転軸23を介して吸引する。
【0025】
図2に示す如く、基板40の裏面にエアーを吹き付ける(ブローする)搬送コロ(例えば、22Aおよび22C)とエアーを吸引する搬送コロ(例えば、22Bおよび22D)が基板40の搬送方向に所定間隔で交互に配置されている。このように気体吹付用搬送コロと気体吸引用搬送コロを交互に配置することにより、搬送される基板40の裏面にエアーブローしてゴミ等の異物を取り除き且つ取り除かれた異物を吸引している。また、基板40の裏面におけるゴミ等の異物を除去する上で不必要なエアーを遮断(又はカット)し、ゴミ等の異物除去能力を向上させるために搬送コロ22の下部や側部はフレーム21で覆われている。搬送コロ22は、回転しながら千鳥配置のスリットノズル24によりエアーをブローしているので、基板40の裏面を均一にブローすることが可能である。
【0026】
ここで、気体(又はエアー)を循環する機構として、吹付け(ブロー)および吸引するためのブロアファン31を有している。エアー吸引力は、必要に応じてブロアファン31をインバータ制御することで調節可能である。また、エアーの吹付け(ブロー)力は、ブロアファン31から排出されるエアーをバルブ34の、例えば手動開閉により調節する。また、吸引したエアーは、HEPAフィルタ35を経由して基板40の裏面にブローする構造であるため、吸引したゴミ等の異物が基板40の裏面に再付着することはない。
【0027】
以上、本発明による基板搬送装置の好適実施形態の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【0028】
例えば、上述の実施形態では、基板裏面に付着したゴミ等の異物除去を目的として気体(エアー)を使用していたが、気体に代えて洗浄液の如き液体を使用しても同様の効果が期待できる。また、基板を搬送コロで搬送しながら基板表面に処理をする場合(例えば、基板表面にブラシをかける場合等)には、そのままでは基板が正常に搬送されない。そこで、スリットノズルを全て吸引しながら搬送すれば、基板はより確実に搬送可能である。
【0029】
上述の如き構成および特徴を備えるので、本発明による基板搬送装置は、例えば大型のカラー液晶製造装置や大型サブストレートを使用する半導体集積回路に使用される基板の製造工程における基板搬送装置に極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による基板搬送装置の好適実施形態の概略正面図である。
【図2】図1に示す基板搬送装置の基板搬送方向の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 基板搬送装置
20 基板搬送部
21 フレーム
22 搬送コロ
23 回転軸
24 スリットノズル
25 搬送モータ
30 気体吹付/吸引部
31 ブロアファン
32、33、36 配管
34 バルブ
35 フィルタ(HEPAフィルタ)
40 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅および長さを有する基板を該基板の長さ方向に所定間隔で設けられた複数個の搬送コロの回転により搬送する基板搬送装置において、
前記各搬送コロ内にノズルを設け、前記回転中の相互に隣の搬送コロの前記ノズルから交互に気体を吹き付けおよび吸引することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記各搬送コロは、長手方向に直径が連続的に変化する中空の略筒状部材であり、前記ノズルは前記筒状部材の外周面の複数のスリットにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記各搬送コロは、長手方向に複数の狭い最大直径部を有し、該最大直径部において前記基板の幅方向の複数箇所と接触することを特徴とする請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記基板の搬送方向に配置された複数個の搬送コロには、ブロアファンの吸気および排気配管が交互に接続されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
所定の幅および長さを有する基板を予め決められた一方向へ搬送する基板搬送装置において、
前記基板の搬送方向に所定間隔で配置され、外周面に複数のスリットが形成され所定速度で回転する複数個の略筒状の搬送コロを含む基板搬送部と、
該複数個の搬送コロに接続され、前記スリットから前記基板に対して気体を交互に吹き付けおよび吸引する気体吹付/吸引部と、
を備えることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項6】
前記各搬送コロの外周面のスリットは、千鳥配置されていることを特徴とする請求項5に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記気体吹付/吸引部は、共通ブロアファンの吸気および排気を利用することを特徴とする請求項5又は6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記気体吹付/吸引部の排気配管に設けられたフィルタを備え、前記ブロアファンにより吸い込まれたエアー中の異物を前記基板面に吹き付けられる前に除去することを特徴とする請求項5、6又は7に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
前記複数個の搬送コロの下面および側面を覆うフレームを備えることを特徴とする請求項5、6、7又は8に記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308232(P2007−308232A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137412(P2006−137412)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】