説明

基板樹脂積層構造体及び光導波路モジュール

【課題】Si基板等の基板の表面に樹脂層を積層した基板樹脂積層構造体において、新規な構造の中間層を用いて樹脂層と基板との接合強度を向上させる。
【解決手段】Siからなる基板12の表面に熱酸化等により表面改質膜15(SiO熱酸化膜)が形成される。表面改質膜15の上にスパッタやCVDにより酸化膜16(SiOx膜)が少なくとも1層成膜され、酸化膜16の上に樹脂層が形成される。酸化膜16は、表面改質膜15よりも密度が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板樹脂積層構造体及び光導波路モジュールに関し、具体的にいうと、Si基板等の基板の表面に樹脂層を積層した基板樹脂積層構造体において、樹脂層と基板との接合強度を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな技術分野においてSi基板の表面に樹脂層を積層一体化させた基板樹脂積層構造体が用いられているが、樹脂層とSi基板との接合強度を得ることは難しい。そのため、樹脂層とSi基板との接合強度を得るためには、中間層を設けて密着力を確保することが一般的である。
【0003】
一方、熱酸化膜(シリコン酸化膜)はSi基板に対して非常に強い密着膜となることは、一般的に知られている。しかし、特許文献1などに記載されているように、熱酸化膜では樹脂層と高い密着性が得られない。特に、Si基板の上に光導波路を接合させた光導波路モジュールの場合には、アクリル樹脂からなる光導波路にフッ素を混入させて光導波路の性能向上を図っているので、光導波路中のフッ素が析出して光導波路とSi基板との密着を妨げる。そのため、Si基板と光導波路の接合強度を得ることは困難であった。
【0004】
よって、樹脂層とSi基板との間の中間層としては、一般に、有機ジルコニウムや酸化チタンなどが含まれたカップリング剤を用いるか、フッ素を含有しない樹脂が用いられている。あるいは、両者を併用する場合もある。
【0005】
しかしながら、有機ジルコニウムや酸化チタンなどを含むカップリング剤を中間層として用いた場合には、特許文献2に記載されているように、カップリング剤に含まれている粒子が起点となって中間層にクラックやスポットが成長し、粒子位置から中間層の剥離が拡がるために強固な密着膜を得ることができなかった。これを防止しようとすれば、フィルタなどを通してカップリング剤に含まれる粒子を除去しなければならず、工程数が多くなる不都合があると共に粒子を完全に除去することは困難であった。
【0006】
フッ素を含有しない樹脂を中間層として用いた場合には、密着性は改善されるものの、その密着性は未だ不十分であった。また、フッ素を含有しない樹脂を用いて中間層を形成する場合には、当該樹脂の塗布厚を正確に制御することが困難であるため、中間層を目的とする厚みにすることが難しかった。さらに、Si基板の表面に凹凸があった場合には、通常のプロセスではフッ素を含有しない樹脂をSi基板の凸部上の表面に均一に塗布することができない。また、光学部品等の部品をその上に載せる場合において、サブミクロンオーダーでアライメント及び位置決めを要求される場合にはアライメントおよび位置決めができず、また均等な密着力を得ることができなかった。
【0007】
たとえば、Si基板の表面にフッ素を含有しない樹脂を一般的に最も良く使われるスピンコータで塗布する場合には、回転数、時間、温度、樹脂粘度などを厳密に管理していても塗膜の厚みがばらつく。しかも、塗膜を多層にすると、さらに誤差が大きくなって厚みのばらつきがより大きくなる。また、スピンコート法では、使用する樹脂溶液のうちSi基板に塗布される量はほんの一部で、大半が塗膜となることなく廃棄されるため、樹脂溶液の消費量が大きい。よって、中間層として使用される樹脂の無駄が大きく、費用的なロスが大きかった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−100055号公報
【特許文献2】特開2005−75978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Si基板等の基板の表面に樹脂層を積層した基板樹脂積層構造体において、新規な構造の中間層を用いて樹脂層と基板との接合強度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる第1の基板樹脂積層構造体は、基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりも密度の低い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂層が形成されている。酸化膜とは、酸化物を含む膜であって、酸化物とその他の物質(例えば窒化物)との混合物でもよい。また、酸化膜の密度が厚み方向で変化している場合には、樹脂層と接触している酸化膜上面の密度が表面改質膜の密度よりも低ければよい。樹脂層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、常温硬化型樹脂などどのような樹脂でも用いることができる。必要に応じて酸化膜上にプライマ等を塗布した上で樹脂層を形成してもよい。
【0011】
本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、樹脂層と中間層との密着性は、結合に寄与するOH基の数の問題であることに想到した。すなわち、中間層の密度が高いと互いの分子どうしがくっつき合ってOH基の結合手が出る比率が少なくなるが、中間層の密度が低いと互いにくっつき合う分子が少なくなってOH基の余っている結合手が多くなる。また、密度が高いと膜の表面のOH基しか現れないが、密度が低くなると分子の充填率が小さくなるので、膜内部のOH基も外に現れて結合し易くなる。
【0012】
本発明の第1の基板樹脂積層構造体は、かかる見知に基づいてなされたものであり、表面改質膜よりも密度の低い酸化膜を表面改質膜の上に形成しているので、表面改質膜の場合よりも多くのOH基の結合手が酸化膜に現れる。そのため酸化膜のOH基と樹脂層のOH基(あるいは、プライマ等を塗布している場合には、プライマ等のOH基でもよい。)とが反応しやすくなり、酸化膜と樹脂層との間で強い密着性が得られる。また、表面改質膜も基板の表面に強固に形成されており、酸化膜は表面改質膜の上にエネルギーを与えられた堆積膜として強い密着性でもって成膜されるので、樹脂層を強い密着性で基板の上に接合させることができる。
【0013】
本発明の第1の基板樹脂積層構造体のある実施態様は、前記酸化膜が2層以上形成され、このうちいずれか任意の2層の酸化膜について、前記基板に近い側に位置する酸化膜よりも、前記基板から遠い側に位置する酸化膜の方が密度が低くなっている。かかる実施態様にあっては、表面改質膜側で酸化膜の密度が大きくなっているので、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜の密度が小さくなっているので、酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0014】
本発明の第1の基板樹脂積層構造体の別な実施態様は、前記酸化膜が2層以上形成され、前記表面改質膜に隣接する酸化膜よりも、前記樹脂層に隣接する酸化膜の方が密度が低くなっている。かかる実施態様にあっても、表面改質膜側で酸化膜の密度が大きくなっているので、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜の密度が小さくなっているので、酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。中間の酸化膜の密度は特に問題としなくても、酸化膜どうしは密度が異なっていても強い密着性を持つ。
【0015】
本発明の第1の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記酸化膜が前記基板に近い側から遠い側に向けて次第に密度が低くなっている。なお、この場合、酸化膜が酸化物と他の物質との混合物又は化合物であって、酸化物と他の物質との組成比が徐々に変化しているものであってもよい。かかる実施態様にあっても、表面改質膜側で酸化膜の密度が大きくなっているので、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜の密度が小さくなっているので、酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0016】
本発明の第1の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記酸化膜は前記基板の表面に垂直な方向で密度が変化しており、前記表面改質膜に隣接する領域よりも、前記樹脂層に隣接する領域の方が密度が低くなっている。かかる実施態様にあっても、表面改質膜側で酸化膜の密度が大きくなっているので、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜の密度が小さくなっているので、酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。中間の酸化膜の密度は特に問題としなくても、酸化膜どうしは密度が異なっていても強い密着性を持つ。
【0017】
本発明の第2の基板樹脂積層構造体は、基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりもOH基の数密度の多い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂層が形成されていることを特徴としている。表面改質膜よりもOH基の数密度の少ない酸化膜を形成することにより酸化膜と樹脂層との密着性を高めることができ、樹脂層を基板の上に強固に接合させることができる。
【0018】
本発明の第2の基板樹脂積層構造体のある実施態様は、前記酸化膜が2層以上形成され、このうちいずれか任意の2層の酸化膜について、前記基板に近い側に位置する酸化膜よりも、前記基板から遠い側に位置する酸化膜の方がOH基の数密度が大きくなっている。かかる実施態様にあっては、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0019】
本発明の第2の基板樹脂積層構造体の別な実施態様は、前記酸化膜が2層以上形成され、前記表面改質膜に隣接する酸化膜よりも、前記樹脂層に隣接する酸化膜の方がOH基の数密度が大きくなっている。かかる実施態様にあっては、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0020】
本発明の第2の基板樹脂積層構造体の別な実施態様は、前記酸化膜は、前記基板に近い側から遠い側に向けて次第にOH基の数密度が大きくなっている。かかる実施態様にあっては、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0021】
本発明の第2の基板樹脂積層構造体の別な実施態様は、前記酸化膜は前記基板の表面に垂直な方向で密度が変化しており、前記表面改質膜に隣接する領域よりも、前記樹脂層に隣接する領域の方がOH基の数密度が大きくなっている。かかる実施態様にあっては、酸化膜と表面改質膜が化学結合で結合する分子数が多くなり、酸化膜と表面改質膜との密着性が高くなる。一方、樹脂層側で酸化膜にOH基による結合手が出やすく、より強固に樹脂層を接合させることができる。
【0022】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体における基板としては、Si基板を用いることができる。この場合には、表面改質膜として、SiO、SiOx、SiC、SiN等の珪素化合物を用いることができる。また、酸化膜としては、SiOxや、TiOx又はAlOxなどの金属酸化膜を用いることができる。また、表面改質膜の上に酸化膜を堆積させる手段としてはスパッタ、CVD法、蒸着などの堆積法を用いることができる。スパッタ、CVD法、蒸着などの堆積法によれば、酸化膜に活性を有するOH基が数多く生じる。この中でもスパッタやCVD法によれば特に酸化膜に活性を有するOH基が数多く生じるのでよい。
【0023】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体における基板としては、Ti基板やAl基板等の金属基板を用いることができる。この場合には、表面改質膜として、TiOx、AlOxなどの金属酸化膜や、金属炭化膜、金属窒化膜を用いることができる。また、酸化膜としては、SiOxや、TiOx又はAlOxなどの金属酸化膜を用いることができる。また、表面改質膜の上に酸化膜を堆積させる手段としてはスパッタ、CVD法、蒸着などの堆積法を用いることができる。スパッタ、CVD法、蒸着などの堆積法によれば、酸化膜に活性を有するOH基が数多く生じる。この中でもスパッタやCVD法によれば特に酸化膜に活性を有するOH基が数多く生じるのでよい。
【0024】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記基板の表面及び/又は前記表面改質膜の表面及び/又は前記酸化膜の表面が荒れていることを特徴としている。表面を荒らす方法としてはエッチングやサンドブラストによればよく、荒さとしては十分の数μm〜1μm程度が好ましい。かかる実施態様においては、基板の表面及び/又は表面改質膜の表面及び/又は酸化膜の表面が荒れているので、表面積が増すことに加えミクロなアンカー効果により基板と表面改質膜の間、表面改質膜と酸化膜の間、あるいは酸化膜と樹脂層との間の密着性をより高めることができる。またこの際、基板などの下側の層のみを荒らしておけばその上の膜は、粗さは小さくなるものの荒れが再現される。このため各層を荒らさずとも一定の効果が得られる。
【0025】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記基板の表面に凹凸が存在していることを特徴としている。かかる実施態様にあっては、基板の表面に凹凸が形成されていて表面積が大きくなっているので、基板と表面改質膜の間の密着性をより高めることができる。さらに、凸凹形状はその上に形成される表面改質膜や酸化膜の形状においても再現若しくは複製されるので、表面改質膜と酸化膜の間、酸化膜と樹脂層との間の密着性をより高めることができる。またこれに加え、凸凹を形成された基板の各層をエッチングやサンドブラストにより表面を微小に荒らすことで更なる表面積増とミクロなアンカー効果により基板と表面改質膜の間、表面改質膜と酸化膜の間、酸化膜と樹脂層との間の密着性をより高めることができる。またこの際、基板などの下側の層のみを荒らしておけば、その上に形成される膜の粗さは小さくなるものの荒れが再現される。このため各層を荒らさずとも一定の効果が得られる。
【0026】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記樹脂層がフッ素を含有していることを特徴としている。樹脂層が光学部品特に光導波路の場合には、樹脂にフッ素を含有させることにより光学性能を向上させることができる。しかし、一方で樹脂層にフッ素を含ませると酸化膜と樹脂層との間の密着性が低下する恐れがあるが、本発明によれば樹脂層にフッ素が含まれている場合でも充分な密着性を得ることができる。
【0027】
本発明の第1又は第2の基板樹脂積層構造体のさらに別な実施態様は、前記表面改質膜と前記酸化膜が同一元素によって構成されていることを特徴としている。かかる実施態様では、表面改質膜と酸化膜とが同じ元素で構成されているため化学結合し易く、表面改質膜と酸化膜との密着性がより向上する。
【0028】
なお、本発明の基板樹脂積層構造体においては、基板として金属基板を用いることもできる。そして、金属基板を用いた場合には、その上に形成する表面改質膜として、AlOx(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、TiN(窒化チタン)、TiC(炭化チタン)といった酸化物や窒化物、炭化物などを用いることができる。
【0029】
本発明にかかる光導波路モジュールは、基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりも密度の低い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂により形成された光導波路が接合されていることを特徴としている。かかる光導波路モジュールは、本発明の第1の基板樹脂積層構造体の構成を光導波路モジュールに適用したものであるので、基板の上に光導波路を強固に接合させることができる。
【0030】
なお、本発明の以上説明した構成要素は、可能な限り任意に組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。以下に述べる実施例では、光導波路モジュールを例にとってに説明するが、本発明は光導波路モジュールに限定されるものでなく、基板と樹脂層との接合部位において広く用いることが可能である。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の一実施例を示す光導波路モジュール11の側面図、図2はその分解斜視図である。図2に示すように、Siよりなる基板12の上面中央部には光導波路固定面13が形成されており、また上面両端部には光ファイバ固定面14が形成されている。光導波路固定面13及び光ファイバ固定面14の表面には表面改質膜15が形成され、さらにその上には酸化膜16が形成されている。
【0033】
両光ファイバ固定面14にはそれぞれ、光ファイバ17を位置決めするためのV溝状をした光ファイバ位置決め溝18が、基板12の長手方向と平行に1本ないし複数本凹設されている。光導波路固定面13と光ファイバ固定面14との間では、基板12の上面にそれぞれ全幅にわたる凹溝19が形成されている。図1に示すように、凹溝19の断面形状は側面方向から見て斜めに傾斜している。
【0034】
光導波路20は、透明なクラッド用樹脂からなる上クラッド部21内に、上クラッド部21よりも屈折率の高いコア用樹脂で成形された光導波路コア22を埋め込んだものであり、上クラッド部21及び光導波路コア22の下面には上クラッド部21と同じ屈折率の同じ樹脂により下クラッド部23が形成されている。光導波路コア22は、信号の合波、分波、合成、分岐などの目的に応じた構造を有しており、光導波路コア22の端面は光導波路20の両端面に露出している。光導波路20は、下クラッド部23側を酸化膜16に接合され、光導波路固定面13の上に実装されている。このとき光ファイバ位置決め溝とコアが精密にアライメントされ位置決めされている。上記クラッド用樹脂としては、フッ素を含んだアクリル樹脂等の透明樹脂が用いられている。また、この樹脂としては、アクリル樹脂以外の樹脂であっても、OH基を有する樹脂であればよい。また、OH基を有さない樹脂の場合でも、酸化膜16の上にプライマなどを塗布するなどによって用いることができる。
【0035】
各光ファイバ17は、光ファイバ位置決め溝18内に嵌り込むことによって左右方向及び上下方向の位置決めをされており、光ファイバ17のコア中心が光導波路コア22の端面の中心と一致するように位置決めされている。光ファイバ位置決め溝18内に嵌った光ファイバ17は、カバープレート25の下面に設けられた窪み24内に納められカバープレート25によって上から押えられている。カバープレート25は接着剤26を用いて光ファイバ17及び光ファイバ固定面14の酸化膜16に接着されている。この接着剤26は、フッ素を含まない接着樹脂である。なお、カバープレート25は用いないで、接着剤26のみによって光ファイバ17を基板12に接着していてもよい。この際、OH基を有さない接着剤の場合でも、酸化膜16の上にプライマなどを塗布するなどによって用いることができる。またフッ素を含有した接着剤を用いても良い。
【0036】
図3は図1のX部を模式的に示した拡大図であって、基板12と光導波路20との接合部分を表わしている。Siからなる基板12の表面にはSiOxからなる表面改質膜15が形成されている。表面改質膜15は、基板12の表面を熱酸化させることによって形成されたSiOx膜でもよく、基板12の表面に酸素イオンビームを照射して酸素イオンを打ち込んだものでもよい。このような表面改質膜15としては、SiO膜が構造上安定していて、基板12との良好な密着性が得られるので、SiO膜が特に望ましい。従って、これ以降においては、主にSiO膜からなる表面改質膜15の場合について述べるが、SiO膜からなる表面改質膜15はSiOx膜からなる表面改質膜15に置き換えることができる。表面改質膜15の上にはスパッタ、CVD法、蒸着などの堆積法によってSiOxを堆積させて酸化膜16が成膜されている。
【0037】
表面改質膜15の膜厚t1は、0.005μm≦t1≦3μmであればよい。自然酸化膜は普通の状態では、0.001μm(=10Å)くらいの膜厚しかなく、欠陥が多くて充分な密着力が得られないが、表面改質膜15の膜厚t1を0.005μm(=50Å)以上にすれば一般的な装置を用いて欠陥の少なく表面改質膜15を安定に成膜することができる。また、表面改質膜15の膜厚t1が3μm以下であれば、一般的な装置で作製可能であり、また破損させることなく熱酸化膜を作成することができるからである。さらに、表面改質膜15の膜厚t1は、上記範囲内のうちでも、特に0.05μm≦t1≦0.5μmが好ましい。簡略なプロセスで表面改質膜15が得られるためよく使用される熱酸化等を用いた方法においては、膜厚t1が0.05μm(=500Å)以上あれば安定したSiO膜を形成でき、これ以下の膜厚ではSiリッチの組成になり、また分子構造が不均一になり密着性のばらつきが生じ、そのため酸化膜16との密着性が下がるからである。また、膜厚t1が0.5μm以下であれば、実製作上問題のない時間で表面改質膜15を作成することができ、成膜コストを下げることができるからである。
【0038】
酸化膜16の膜厚t2は、0.022μm<t2≦2μmであればよい。酸化膜16の膜厚t2が0.022μm(=220Å)よりも薄いと酸化膜16がアイランド状になる恐れがあるが、0.022μm以上あれば酸化膜16を層状に形成することができるからである。また、酸化膜16の膜厚t2が2μmよりも厚いと膜自体の応力によって酸化膜16が割れる恐れがあるので、酸化膜16の膜厚は2μm以下とするのが好ましい。さらに。酸化膜16の膜厚t2は、上記範囲のうちでも、特に0.05μm≦t2≦1μmが好ましい。酸化膜16の膜厚t2が0.05μm(=500Å)以上あれば、表面に荒れなどの凹凸がある場合でも表面改質膜15の全面を覆って酸化膜16を層状に形成できるからである。また、酸化膜16の膜厚t2が1μm以下にすれば、実製作上問題のない時間で酸化膜16を作成することができ、成膜コストを下げることができるからである。
【0039】
酸化膜16は、表面改質膜15よりも密度(重量密度)が低くなっており、表面改質膜15よりも元素の充填率がかなり小さくなっている。酸化膜16であるSiOxにおけるxの値は特に限定されず、例えばx=2などであってもよいが、SiOx(1≦x≦1.5)特にSiO1.3でOH基が多く出ることが確認されており、後述のように酸化膜16と樹脂層(下クラッド部23)との密着力を高くできる。表面改質膜15と酸化膜16の密度比率としては、表面改質膜15に対し、酸化膜16が1未満〜0.60の比率が密着性の強度が取れるためより良い。この際たとえばSiの場合、密度は表面改質膜15が2.6〜2.15g/cm、酸化膜16が2.15〜1.6g/cmであればよい。さらにこの際、同密度比率が0.95以上であれば屋外の用途などに適したより高い信頼性レベルの密着性を実現できるためさらに良い。また、屈折率比率としては、表面改質膜15の値が1に対し酸化膜16は1未満〜0.89の比率が密着性の強度が取れるためよりよく。この際たとえば、SiOの場合、表面改質膜15が1.475〜1.460、酸化膜16が1.460〜1.320の範囲であればよい。さらにこの際、同屈折率比率が0.99以上であれば屋外の用途などに適したより高い信頼性レベルの密着性を実現できるためさらに良い。
【0040】
光導波路20を光導波路固定面13の上に実装するに当たっては、上クラッド部21の凹部内に光導波路コア22を成形した後、基板12の酸化膜16の上にクラッド用樹脂を滴下し、光導波路コア22が露出している面を下にして上クラッド部21及び光導波路コア22を光導波路固定面13の上に重ねて押圧する。ついで、上クラッド部21及び光導波路コア22と酸化膜16の間にクラッド用樹脂を押し広げて下クラッド部23を成形すると共に酸化膜16の上に光導波路20を接合させている。このとき、使用する樹脂種を考え必要により密着性を上げるためにプライマなどを酸化膜上に塗布してから実装しても良い。またクラッド用樹脂はフッ素を含有しないものであればより強力な密着性が得られるためなおよい。
【0041】
このような構造では、表面改質膜15を形成されている基板12の表面が化学変化して表面改質膜15と強く結合しているので、基板12と表面改質膜15とは良好な密着性が得られ、表面改質膜15が基板12から剥がれることはない。また、酸化膜16はスパッタ、CVD等によりエネルギーを与えられた付着物(堆積膜)として表面改質膜15の上に成膜されるので、表面改質膜15と酸化膜16とは充分に強固な化学結合が得られる。しかも、表面改質膜15(SiO膜)と酸化膜16(SiOx膜)とは、同じ元素で構成されているため化学結合し易く、基板12上に直接酸化膜16を形成するよりも高い密着性が得られる。
【0042】
膜の密度が高いと互いの分子どうしがくっつき合ってOH基の結合手が出る比率が少なくなるが、膜の密度が低いと互いにくっつき合う分子が少なくなってOH基の余っている結合手が多くなる。また、密度が高いと膜の表面のOH基しか現れないが、密度が低くなると分子の充填率が小さくなるので、膜内部のOH基も外に現れて結合し易くなる。因みに、密度が低くなると密着性が向上する点は、実験データからも確認された。よって、この実施例1のように、酸化膜16の密度が表面改質膜15の密度よりも低くなっていれば、OH基の結合手が数多く現れ、そのため酸化膜16のOH基と光導波路20を構成する樹脂のOH基とが反応しやすくなり(OH基とOH基とが反応して−O−となる。)、酸化膜16と光導波路20との間で強い密着性が得られる。特に、光導波路20の光学的性能を向上させるために光導波路20、特に上クラッド部21及び下クラッド部23を構成する樹脂にフッ素が含まれている場合でも、酸化膜16と光導波路20との間で強い密着力が得られる。よって、このような構成によれば、基板12と表面改質膜15の間、表面改質膜15と酸化膜16の間、酸化膜16と光導波路20の間のいずれでも強い密着力を得ることができ、剥離が生じないように光導波路20を強い密着力で基板12の上に実装させることができる。
【0043】
また、基板12の表面、表面改質膜15の表面、酸化膜16の表面のうち任意の表面あるいは全ての表面をエッチングやサンドブラストによって荒らして粗面としておいてもよい。粗面の荒さとしては、十分の数μm〜1μm程度が好ましい。これらの表面を荒らしておけば、表面積増加に加えミクロなアンカー効果によりその上の部材(つまり、表面改質膜15、酸化膜16、下クラッド部23)との密着性をより高めることができる。基板などの下側の層を荒らしておけばその上の層は粗さは小さくなるものの荒れが再現されるため各層を荒らさずとも一定の効果が得られる。
【0044】
図4は図1のY部を模式的に示した拡大図であって、基板12とカバープレート25との接合部分を表わしている。この接合部分も図3に示した基板12と光導波路20との接合部分と同様な構成となっている。よって、基板12と光導波路20との接合と同じ理由により、基板12と表面改質膜15の間、表面改質膜15と酸化膜16の間、酸化膜16と接着剤26の間のいずれでも強い密着力を得ることができ、剥離が生じないように強い密着力で接着剤26を基板12の上に付着させることができる。さらに、この箇所では、フッ素を含まない接着剤26を用いているので、接着剤26と酸化膜16との密着力は光導波路20と酸化膜16との密着力よりも大きくなる。なお、カバープレート25は、接着剤26と接着性のよい材料のものを選択すればよく、また、カバープレート25は無くても差し支えない。
【0045】
よって、実施例1の光導波路モジュール11によれば、基板12の上に強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。このとき使用する接着剤はフッ素を含有するものであっても十分な密着性を得られるため差し支えない。
【0046】
なお、表面改質膜15の上に形成する酸化膜16としては、基板12や表面改質膜15と同種の材料が好ましく、特にOH基による結合手を多く持つスパッタ等によるSiOxが好ましい。しかし、TiOx、AlOx(特に、Al)等の異種材料であってもOH基を有するものであればよい。基板12等と異種材料の場合でも、基板12に直接酸化膜16を形成するよりも、表面改質膜15(SiO)の上から酸化膜16を形成する方が密着力が高くなる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明の実施例2による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0048】
実施例2では、Siからなる基板12の上面に熱酸化等により表面改質膜15(SiO膜)が形成され、その上に2層の酸化膜16a、16bが形成され、その上に樹脂層27が接合されている。ここで、樹脂層27とは、実施例1の光導波路20又は接着剤26であり、説明を簡略にするためにこれ以降は光導波路20及び接着剤26をまとめて樹脂層27で表わすことにする。
【0049】
表面改質膜15に接する下側の酸化膜16aと樹脂層27に接する上側の酸化膜16bとはいずれもスパッタにより成膜されたSiOx膜であるが、上側の酸化膜16bの方が下側の酸化膜16aよりも密度(重量密度)が低くなっている。かかる構成によれば、下側の酸化膜16aは密度が比較的高いために表面改質膜15と化学結合し易く、表面改質膜15と酸化膜16aとの密着力が大きくなる。また、上側の酸化膜16bは密度が比較的低いので、樹脂層27と結合するOH基の結合手が増加すると共に酸化膜16bの凹凸が大きくなり、酸化膜16bと樹脂層27との密着力が大きくなる。もちろん、酸化膜16aと酸化膜16bは密度が異なるだけであるから、たがいの密着性も高いものである。
【0050】
よって、実施例2によれば、樹脂層27の基板12への接着強度がより大きくなって樹脂層27が剥離しにくくなり、基板12の上により強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。
【0051】
図6に示すものは実施例2の変形例であって、SiOからなる表面改質膜15の上に3層以上の酸化膜(SiOx)が積層されている。これらの酸化膜を下層から順に酸化膜16a、酸化膜16b、酸化膜16c、酸化膜16dとすると、これらの酸化膜16a、16b、16c、16dは互いに密度が異なっている(最下層の酸化膜16aと最上層の酸化膜16dを除けば、一部密度が同じであっても差し支えない。)。酸化膜16a、16b、16c、16dの密度をn1、n2、n3、n4とすれば、好ましくは密度が、
n1>n2>n3>n4
となっている。しかし、n1>n4となっていれば、表面改質膜15と酸化膜16aの密着性と、酸化膜16dと樹脂層27の密着性を高めることができるので、中間の酸化膜16b、16cの密度は任意でよい。例えば、
n2>n1>n3>n4
などとなっていても差し支えない。
【実施例3】
【0052】
図7は、本発明の実施例3による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0053】
実施例3では、Siからなる基板12の上面に熱酸化等により表面改質膜15(SiO膜)が形成され、その上にスパッタによって酸化膜16が形成され、その上に樹脂層27が接合されている。酸化膜16は厚み方向で密度が変化しており、下面側から上面側に向けて徐々に、あるいは段階的に密度が低くなっている。
【0054】
実施例3でも、酸化膜16は下面側で密度が高いために表面改質膜15と化学結合し易く、表面改質膜15と酸化膜16との密着力が大きくなる。また、酸化膜16は上面側で密度が低いので、樹脂層27と結合するOH基の結合手が増加すると共に酸化膜16の凹凸が大きくなり、酸化膜16と樹脂層27との密着力が大きくなる。
【0055】
よって、実施例3によれば、樹脂層27の基板12への接合強度がより大きくなって樹脂層27が剥離しにくくなり、基板12の上により強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。
【0056】
また、実施例3においても、酸化膜16の密度は下面側から上面側に向けて徐々に減少する場合に限らない。表面改質膜16に隣接する側における酸化膜16の密度よりも、樹脂層27に隣接する側における酸化膜16の密度の方が小さくなっていれば、その中間では酸化膜16の密度がどのように変化していても差し支えない。
【実施例4】
【0057】
図8は、本発明の実施例4による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0058】
実施例4においては、Siからなる基板12の表面に窒化膜(SiN)からなる表面改質膜15が形成されている。表面改質膜15は、窒素ガス雰囲気中で基板12を加熱することによって基板12の表面に窒化膜を形成したものでもよく、あるいは窒素イオンビームを照射して基板12の表面に窒素イオンを打ち込んだものであってもよい。
【0059】
酸化膜16はSiOxと他の物質(この場合はSiN)との混合物(SiN/SiOx)又は化合物(SiN1-xOx)であって、厚み方向で両物質の組成比が次第に変化している。すなわち、酸化膜16の密度は表面改質膜15の密度よりも低くなっており、そのSiOxの組成は下面側から上面側に向かうに従って次第に大きくなっており、SiNの組成は下面側から上面側に向かうに従って次第に小さくなっている。表面改質膜15と接触する酸化膜16の下面はSiNであり、樹脂層27と接触する酸化膜16の上面はSiOxである。
【0060】
Si基板の表面に形成された窒化膜(SiN)がSi基板の表面に化学結合して強固に密着することは良く知られているので、実施例4においても表面改質膜15は基板12に強固に密着する。しかし、窒化膜の表面改質膜15はOH基を出さないので、酸化膜16の組成を下方から上方へ向けて窒化膜から酸化膜へと次第に変化させ、酸化膜16の上面ではOH基を出すようにしている。よって、表面改質膜15と酸化膜16の下面とは同じ材料であるから強固に密着する。また、酸化膜16の密度が表面改質膜15の密度よりも低いので、酸化膜16の上面においてはOH基による結合手が多くなり、酸化膜16の上面と樹脂層27との密着性も高くなる。このように、表面改質膜と酸化膜で異種の材料を用いる場合、酸化膜の密度が表面改質膜より低いというのは、酸化膜の密度が同種の表面改質膜の密度より低いことも含む。つまり、異種の材料において密度の高い低いを比較することには、それぞれの材料における表面改質膜の密度で規格化した密度と比較することを含む。
【0061】
従って、実施例4によっても、樹脂層27の基板12への接合強度がより大きくなって樹脂層27が剥離しにくくなり、基板12の上により強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。
【0062】
上記実施例4においては、Si基板(基板12)の上にSiNからなる表面改質膜を形成していたが、Si基板の上であれば、SiOやSiCなどの珪素化合物を表面改質膜を形成してもよい。また、基板1としてTi基板やAl基板等の金属基板を用いてもよく、その場合には表面改質膜として、TiOxやAlOxなどの金属酸化物、TiNやAlNなどの金属窒化物、TiCなどの金属炭化物などを基板上に形成することもできる。
【0063】
特に、表面改質膜がSiOであれば基板及び酸化膜と強力な密着性が得られ、また半導体製造工程を利用できるのでもっとも好ましい。また、この場合基板がSi基板であれば、表面改質膜と密着性がよく、SiOを表面改質膜として形成しやすく、また異方性エッチングにより高精度にファイバ位置決め溝などの機能形状を作製でき、もっとも望ましい。さらに、表面改質膜がTiOx又はAlOxの場合にも、基板及び酸化膜との良好な密着性が得られるため、これらも好ましい。また、これらの表面改質膜を用いる場合には、基板としてそれぞれTi基板又はAl基板を用いれば、これら表面改質膜と密着性がよく、また成膜も容易である。
【0064】
また、酸化膜としては、特にSiOxが望ましい。SiOxの酸化膜によれば、表面改質膜および樹脂層と強力な密着性が得られ、また半導体製造工程で成膜できるので最も望ましい。ついで、TiOx、AlOx等の金属酸化膜からなる酸化膜も、表面改質膜や樹脂層と良好な密着性を得られる。
【実施例5】
【0065】
図9は、本発明の実施例5による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0066】
実施例5においては、Tiよりなる基板12の上面に熱酸化等によってTiOxからなる表面改質膜15が形成されている。さらに表面改質膜15の上には、スパッタやCVDにより堆積されたTiOxからなる酸化膜16が形成されている。この酸化膜16は、表面改質膜15よりも密度が小さくなっており、その上に樹脂層27が接合されている。
【0067】
このような構造であっても、熱酸化等による表面改質膜15は基板12に強固に密着している。また、表面改質膜15と酸化膜16は同じ材料であり、しかも酸化膜16が表面改質膜15の上に堆積するときにエネルギーをもって堆積するので、表面改質膜15と酸化膜16も強固に密着する。さらに、酸化膜16は表面改質膜15よりも密度が小さいので、酸化膜16の表面側には表面改質膜15よりも多くのOH基による結合手が現れて強固に樹脂層27と接合する。
【0068】
よって、実施例5によっても、樹脂層27の基板12への接合強度がより大きくなって樹脂層27が剥離しにくくなり、基板12の上により強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。
【0069】
図10は実施例5の変形例を示す断面図である。この変形例では、酸化膜16として実施例5のTiOxに代えて、表面改質膜15よりも密度の低いSiOxを用いている。酸化膜16をSiOxとしても同種のTiOx酸化膜を用いるより密着性は劣るが、TiOxからなる表面改質膜15との密着性には問題ないので、この変形例でも基板12の上に強固に光導波路20を接合することができる。さらに密着度を上げるため実施例4のようにSiOxとTiOxの組成比を変更して境界をなくして密着度を得る方法もあり、この方が密着力の点でなお良い。
【実施例6】
【0070】
図11は、本発明の実施例6による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0071】
実施例6においては、Alよりなる基板12の上面に熱酸化等によってAlOxからなる表面改質膜15が形成されている。さらに表面改質膜15の上には、スパッタやCVDにより堆積されたAlOxからなる酸化膜16が形成されている。この酸化膜16は、表面改質膜15よりも密度が小さくなっており、その上に樹脂層27が接合されている。
【0072】
このような構造であっても、熱酸化等による表面改質膜15は基板12に強固に密着している。また、表面改質膜15と酸化膜16は同じ材料であり、しかも酸化膜16が表面改質膜15の上に堆積するときにエネルギーをもって堆積するので、表面改質膜15と酸化膜16も強固に密着する。さらに、酸化膜16は表面改質膜15よりも密度が小さいので、酸化膜16の表面側には表面改質膜15よりも多くのOH基による結合手が現れて強固に樹脂層27と接合する。
【0073】
よって、実施例6によっても、樹脂層27の基板12への接合強度がより大きくなって樹脂層27が剥離しにくくなり、基板12の上により強固に光導波路20や光ファイバ17を実装することができ、光導波路モジュール11の信頼性を向上させることができる。
【実施例7】
【0074】
図12は、本発明の実施例7による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0075】
実施例7にあっては、基板12の表面に凹凸28aを形成している。この実施例では基板12の表面に凹凸28aを形成しているので、表面改質膜15にも凹凸28bができ、さらに酸化膜16にも凹凸28cができる。そのため、凹凸28a、28b、28cによって基板12、表面改質膜15及び酸化膜16の表面積を大きくすることができ、それによって基板12と表面改質膜15、表面改質膜と酸化膜、酸化膜と樹脂それぞれの密着性を向上させることができる。また加えて基板や膜の表面を荒らしておけば更なる表面積増とアンカー効果が得られるため、より良い。このような基板においても、表面改質膜、酸化膜の厚さは均一に形成できるため、実施例1のようなモジュールを基板12上に作製する際にも、ファイバ位置決め溝とコアの高さが精密にアライメントされ位置決めできる。
【実施例8】
【0076】
図13は、本発明の実施例8による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。光導波路モジュールの構造は実施例1に示したものと同じであるので説明を省略し、接合構造のみを説明する。
【0077】
実施例8にあっては、樹脂層27の上にSiやガラスからなる補強部材29を設けている。補強部材29を上面に貼り付けると、使用時の歪みなどを軽減することができるので、各層の膜界面に応力が発生しにくくなり、各層間の密着性がより向上する。
【0078】
また、補強部材29は基板12と同じ熱膨張率を有するものが好ましい。基板12と同じ熱膨張率を有する補強部材29を用いれば、周囲温度の変化に伴う基板樹脂積層構造体の反りを防止することができる。
【0079】
なお、上記各実施例では、酸化膜の密度が表面改質膜の密度よりも小さくなっていたが、同一組成、同一組成比を持つ透明物質の場合では、その密度が小さいほど屈折率が小さいということができるので、表面改質膜よりも屈折率が小さい酸化膜といってもよい。このように、表面改質膜と酸化膜で異種の材料を用いる場合、酸化膜の屈折率が表面改質膜より低いというのは、酸化膜の密度が同種(同一組成、同一組成比)の表面改質膜の屈折率より低いことも含む。つまり、異種の材料において屈折率の高い低いを比較することには、それぞれの材料における表面改質膜の屈折率で規格化した屈折率と比較することを含む。
【0080】
また、酸化膜16の上面と樹脂層27との間には、樹脂層27の密着性をさらに上げるための層(膜)を形成しておいてもよい。たとえば、カップリング剤やプライマなどが挙げられる。このようなケースも本発明の範囲に入ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の実施例1を示す光導波路モジュールの側面図である。
【図2】図2は、実施例1の光導波路モジュールの分解斜視図である。
【図3】図3は、図1のX部を模式的に示した拡大図である。
【図4】図4は、図1のY部を模式的に示した拡大図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例2の変形例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施例3による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例4による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施例5による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図10】図10は、実施例5の変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例6による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施例7による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施例8による光導波路モジュールに用いられている接合構造を模式的に表わした断面図である。
【符号の説明】
【0082】
11 光導波路モジュール
12 基板
13 光導波路固定面
14 光ファイバ固定面
15 表面改質膜
16 酸化膜
16a、16b 酸化膜
17 光ファイバ
18 光ファイバ位置決め溝
19 凹溝
20 光導波路
21 上クラッド部
22 光導波路コア
23 下クラッド部
24 窪み
25 カバープレート
26 接着剤
27 樹脂層
28 凹凸
29 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりも密度の低い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂層が形成されていることを特徴とする基板樹脂積層構造体。
【請求項2】
前記酸化膜が2層以上形成され、このうちいずれか任意の2層の酸化膜について、前記基板に近い側に位置する酸化膜よりも、前記基板から遠い側に位置する酸化膜の方が密度が低くなっていることを特徴とする、請求項1に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項3】
前記酸化膜が2層以上形成され、前記表面改質膜に隣接する酸化膜よりも、前記樹脂層に隣接する酸化膜の方が密度が低くなっていることを特徴とする、請求項1に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項4】
前記酸化膜は、前記基板に近い側から遠い側に向けて次第に密度が低くなっていることを特徴とする、請求項1に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項5】
前記酸化膜は前記基板の表面に垂直な方向で密度が変化しており、前記表面改質膜に隣接する領域よりも、前記樹脂層に隣接する領域の方が密度が低くなっていることを特徴とする、請求項1に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項6】
基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりもOH基の数密度の多い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂層が形成されていることを特徴とする基板樹脂積層構造体。
【請求項7】
前記酸化膜が2層以上形成され、このうちいずれか任意の2層の酸化膜について、前記基板に近い側に位置する酸化膜よりも、前記基板から遠い側に位置する酸化膜の方がOH基の数密度が大きくなっていることを特徴とする、請求項6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項8】
前記酸化膜が2層以上形成され、前記表面改質膜に隣接する酸化膜よりも、前記樹脂層に隣接する酸化膜の方がOH基の数密度が大きくなっていることを特徴とする、請求項6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項9】
前記酸化膜は、前記基板に近い側から遠い側に向けて次第にOH基の数密度が大きくなっていることを特徴とする、請求項6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項10】
前記酸化膜は前記基板の表面に垂直な方向で密度が変化しており、前記表面改質膜に隣接する領域よりも、前記樹脂層に隣接する領域の方がOH基の数密度が大きくなっていることを特徴とする、請求項6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項11】
前記基板がSi基板であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項12】
前記基板が金属基板であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項13】
前記金属基板が、Ti基板又はAl基板であることを特徴とする、請求項12に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項14】
前記表面改質膜が、珪素化合物であることを特徴とする、請求項11に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項15】
前記珪素化合物が、SiOxであることを特徴とする、請求項14に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項16】
前記珪素化合物が、SiC又はSiNであることを特徴とする、請求項14に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項17】
前記珪素化合物が、SiOであることを特徴とする、請求項14に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項18】
前記表面改質膜が、金属酸化膜、金属炭化膜又は金属窒化膜であることを特徴とする、請求項13に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項19】
前記表面改質膜である金属酸化膜が、TiOx又はAlOxであることを特徴とする、請求項18に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項20】
前記酸化膜がSiOxであることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項21】
前記酸化膜が金属酸化膜であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項22】
前記酸化膜である金属酸化膜が、TiOx又はAlOxであることを特徴とする、請求項21に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項23】
前記酸化膜が堆積法により形成されていることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項24】
前記基板の表面及び/又は前記表面改質膜の表面及び/又は前記酸化膜の表面が荒れていることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項25】
前記基板の表面に凹凸が存在していることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項26】
前記樹脂層がフッ素を含有していることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項27】
前記表面改質膜と前記酸化膜は、同一元素によって構成されていることを特徴とする、請求項1又は6に記載の基板樹脂積層構造体。
【請求項28】
基板の表面に表面改質による表面改質膜が形成され、前記表面改質膜の上に堆積により形成された前記表面改質膜よりも密度の低い酸化膜が少なくとも1層成膜され、前記酸化膜の上に樹脂により形成された光導波路が接合されていることを特徴とする光導波路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−175891(P2007−175891A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373928(P2005−373928)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】