説明

基板洗浄装置および基板洗浄方法

【課題】機械的な裁断や研磨処理などを行った後のガラス基板の端面などに付着した異物を効果的に除去する。
【解決手段】液体と気体とをスプレーノズルに供給し、上記スプレーノズルで上記液体と上記気体とを混合した流体を基板に噴射することにより上記基板を洗浄する基板洗浄装置において、スプレーノズルに供給する液体を加熱して上記液体の温度を制御する液体加熱手段を有し、上記スプレーノズル入口における上記液体の温度を40〜100℃に制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置および基板洗浄方法に関し、さらに詳細には、液晶表示器のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板あるいは光ディスク用の基板などの各種の基板(本明細書においては、液晶表示器のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板あるいは光ディスク用の基板などの各種のガラス基板を総称して単に「基板」と称する。)に洗浄液を供給して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板の洗浄装置として、例えば、半導体ウエハの周縁部に沿って複数の噴射ノズルを均等な間隔で配置し、当該周縁部に流速250m/s以上の水滴流を当該複数の噴射ノズルから吹き付けて基板を洗浄する洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1を参照する。)。
【0003】
ここで、上記したような洗浄装置においては、流速250m/s以上の水滴流を噴射させるために、噴射ノズルに洗浄水およびガスを混合して高圧で供給する供給源が設けられている。
【0004】
そして、こうした供給源の作動により流速250m/s以上の超高速の水滴流を半導体ウエハの周縁部に噴射させることより、単に洗浄水に浸漬しただけでは除去できない半導体ウエハの周縁部の付着した研磨くずを、超高速の水滴流による衝突で半導体ウエハを傷つけることなく除去することができる。
【0005】

しかしながら、例えば、ガラス基板などの製造過程において、機械的な裁断もしくは研磨処理を行った後の基板の端面を洗浄する場合に、上記したような従来の洗浄装置における噴射ノズルでは、基板の端面に付着した異物を充分に除去することができないという問題点があった。
【特許文献1】特開2003−7668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械的な裁断や研磨処理などを行った後の基板の端面などに付着した異物を効果的に除去することができるようにした基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による基板洗浄装置および基板洗浄方法は、液体加熱手段により噴射ノズルに流入する液体の温度を調節し、こうして温度調節された液体を気体と混合させて基板に噴射するようにしたものである。本明細書に記載した気体は、狭義には空気もしくはアルゴン、窒素などの不活性ガスを指す。
【0008】
また、本発明による基板洗浄装置および基板洗浄方法は、蒸気と、その同一成分からなる液体を混合させて基板に噴射するようにしたものである。本明細書に記載した蒸気は、狭義には水、純水、超純水のいずれか1つからなる水蒸気を指す。
【0009】
従って、本発明によれば、上記のようにして温度調節された液体と気体とを混合させた流体もしくは蒸気とその液体を、基板、例えば、機械的な裁断や研磨処理などを行った後の基板の端面に噴射することにより、機械的な裁断や研磨処理などを行った後の基板の端面などを効果的に洗浄することができるようになる。
【0010】
[請求項の詳細説明]
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、液体と気体とをスプレーノズルに供給し、上記スプレーノズルで上記液体と上記気体とを混合した流体をガラス基板の端面に噴射することにより上記基板を洗浄する基板洗浄装置において、スプレーノズルに供給する液体を加熱して上記液体の温度を制御する液体加熱手段を有し、上記スプレーノズル入口における上記液体の温度を40〜100℃に制御するようにしたものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記液体加熱手段は、上記液体を上記スプレーノズルに導入する経路における上記スプレーノズルの近傍に配設されるようにしたものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、スプレーノズルから噴射される流体により基板を洗浄する基板洗浄装置において、基板の近傍に配設されたスプレーノズルと、蒸気を発生して上記スプレーノズルに供給する蒸気発生手段とを有し、上記スプレーノズルは、上記蒸気発生手段から供給された蒸気と、その同一成分からなる液体を混合させて基板に噴射するようにしたものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2または3のいずれか1項に記載の発明において、上記スプレーノズルの噴射口の形状を線状にしたものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項3または4のいずれか1項に記載の発明において、上記スプレーノズルから噴射される混合流を、沸点40℃以上の液体の蒸気と、その同一成分からなる液体の混合流としたものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、液体と気体とをスプレーノズルに供給し、上記スプレーノズルで上記液体と上記気体とを混合した流体を基板に噴射することにより上記基板を洗浄する基板洗浄方法において、スプレーノズルに供給する液体を加熱して上記液体の温度を40〜100℃に制御するようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、スプレーノズルからの噴射される流体により基板を洗浄する基板洗浄方法において、スプレーノズルに蒸気と、その同一成分からなる液体を供給し、上記スプレーノズルから該供給された蒸気と、その同一成分からなる液体の混合流を基板に噴射するようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、請求項3または4のいずれか1項に記載の発明において、上記スプレーノズルから噴射される蒸気は、水、純水、超純水のいずれか1つからなる水蒸気であるようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の発明において、上記スプレーノズルから噴射された流体によって、基板端面の温度を40〜100℃に昇温させることを特徴とする基板洗浄装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明したように40〜100℃に制御された液滴を噴射することができ、機械的な裁断や研磨処理などを行った後の基板の端面などに付着した異物を、上記端面からリフトオフさせるとともに、瞬時に、噴流による高い運動エネルギーを与え、上記端面上から吹き飛ばすことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による基板洗浄装置および基板洗浄方法の実施の形態の一例について説明する。
【0021】

半導体ウエハの端面の凹凸は1〜10μm以下と比較的平坦であり、付着した異物もそのほとんどが1μm以下であるのに対して、ガラス基板の端面には0.1〜500μm程度の凹凸が存在し、その凹凸の内部および表面に1〜100μm程度のガラスもしくは研磨剤に起因する異物が付着しているためその除去が困難なものであった。
【0022】

本発明による基板洗浄装置10により高い洗浄効果が得られる理由は、図7に示すように、1〜100μmの大きさの異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空間が大きく、空間内の空気が体積膨張することによって起こる当該異物のガラス基板端面14bからのリフトオフに起因すると考えている。1μm以下の異物に比べ、1〜100μm程度の大きさをもつ異物と0.1〜500μm程度の凹凸を有するガラス基板端面14bとの間には、より大きな体積空間が存在し、リフトオフ効果を促進したと考えられる。一般に、空気の体積膨張係数は3.7×10−3−1であり固体に比べて2桁以上大きい値を示すことから、該空間体積の増大によるリフトオフ効果の促進は著しい。
【0023】

従って、本発明による基板洗浄装置10により得られた高い洗浄効果は、スプレーノズル18から噴出される液体と気体との混合流によって、液滴の与える運動エネルギーと該異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空気の体積膨張の双方を瞬時に引き起こすことによって得られる相乗効果であり、新しい異物除去の手法といえる。
【0024】
[実施例1]
(基本構成)
図1には、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図が示されている。なお、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置においては、基板としてガラス基板を洗浄するものとする。
【0025】
この図1に示す基板洗浄装置10は、筐体12を備えており、この筐体12内には、ガラス基板14を水平に載置して、当該ガラス基板14を図1の紙面に対して垂直方向に搬送するローラーコンベア16が配設されている。
【0026】
また、筐体12内におけるガラス基板14の周縁部14aのそれぞれの近傍には、噴射口18aをガラス基板14の端面14bに向けて配置されたスプレーノズル18が(1個)配設されている。
【0027】
そして、このスプレーノズル18には、ガスタンクなどの外部の気体供給源(図示せず。)に接続された気体供給パイプ20が接続されており、この気体供給パイプ20を介して当該気体供給源からスプレーノズル18に気体が供給される。
【0028】
また、基板洗浄装置10には、液体を加熱するための液体加熱装置22が配設されている。そして、この液体加熱装置22には、液体タンクなどの外部の液体供給源(図示せず。)に接続された第1液体供給パイプ24が接続されており、この第1液体供給パイプ24を介して当該液体供給源から液体加熱装置22に液体が供給される。液体加熱装置22は、第1液体供給パイプ24を介して液体供給源から供給された液体を加熱する。
【0029】
さらに、スプレーノズル18と液体加熱装置22との間には第2液体供給パイプ26が配設されており、この第2液体供給パイプ26を介して液体加熱装置22からスプレーノズル18に加熱された液体が供給される。
【0030】
また、筐体12の底面には排水口(図示せず。)が設けられており、当該排水口には廃水槽(図示せず。)に接続された排水パイプ28が取り付けられていて、当該排水口から排水パイプ28を介して排水が当該廃水槽へ送られる。
【0031】
(構成の詳細説明)
次に、上記した各構成をさらに詳細に説明すると、まず、液体加熱装置22は、例えば、液体供給源から供給された液体を貯留する液体貯留槽、液体貯留槽に貯留された液体の水位を測定するための液体の水位センサー、液体貯留槽に貯留された液体を加熱する加熱ヒーター、加熱ヒーターにより加熱された液体の温度を測定する液体温度センサー、加熱ヒーターにより加熱される液体の加熱温度を制御するために当該加熱ヒーターへの投入電力を制御する電力制御機構、加熱ヒーターにより加熱された液体を第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18に供給するための液体供給ポンプならびに廃液の排出口などを備えている。
【0032】
また、スプレーノズル18は、気体供給パイプ20を介して供給される1〜10kgf/cmに保持した高圧ガスの流入口を備えるとともに、第2液体供給パイプ26を介して供給される1〜10kgf/cmに保持した液体の流入口を備え、内径0.1〜50mmの配管内でこれら高圧ガスと液体とを混合させ、噴射口18aと連通した内径0.1〜50mmの1本の配管からガスと液体との混合流を排出する構造を備えている。
【0033】
なお、スプレーノズル18へ供給する液体としては、例えば、純水や超純水を用いることができる。
【0034】
さらに、スプレーノズル18へ供給する液体としては、純水や超純水に代えて、例えば、フッ化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウムまたはリン酸トリエチルのうち少なくとも一成分を含む液体を用いるようにしてもよい。
【0035】
即ち、異物とガラス基板14との密着性が比較的小さい場合には、スプレーノズル18へ供給する液体としては純水や超純水を用いればよいが、異物とガラス基板14とが固着している場合(例えば、異物およびガラス基板14以外の固体を介して異物とガラス基板14とが密着している場合である。)には、フッ素イオン、リン酸イオンあるいは有機カルボン酸イオンなどを生成する上記したフッ化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウムまたはリン酸トリエチルなどの物質を、0.01〜50%の範囲で純水や超純水に添加した流体を用いることが好ましい。また、水溶性を示すテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、有機アミン、水酸化カリウム、N−メチルピロリドン、イソプロピルアルコール、酢酸エチルなどの物質を、0.01〜50%の範囲で純水や超純水に添加した流体を用いることも好ましい。その理由は、これらのイオンもしくは溶剤が異物とガラス基板14との界面に存在する固体の一部を溶解することで、異物とガラス基板14との間の付着力を弱めることができるからである。
【0036】
(手段)
以上の構成において、液体加熱装置22により液体を加熱して、この加熱した液体を気体と混合してスプレーノズル18の噴射口18aから噴射することにより、ガラス基板14の端面14bに40〜100℃に温度制御された液滴を高速で吹きつける。これにより、ガラス基板14の端面14bを洗浄する。
【0037】
即ち、スプレーノズル18の噴射口18aからガラス基板14の端面14bに対して噴射される液滴の温度を40〜100℃に制御することにより、ガラス基板14の端面14bに付着した異物をガラス基板14の端面14bからリフトオフすることができるとともに、瞬時に、スプレーノズル18の噴射口18aからガラス基板14の端面14bに対して噴射される液滴の噴流によって異物に高い運動エネルギーを与えることができるので、機械的な裁断や研磨処理を行った後のガラス基板14の端面14bに付着した異物を効果的に除去して、ガラス基板14の端面14bを効率的に洗浄することができる。
【0038】
(方法)
次に、本願発明者が基板洗浄装置10を用いて行った実験の結果について説明するが、この実験においては、液体加熱装置22を用いて40〜100℃に液温調整された純水を、液体加熱装置22から第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18へ約0.5L/minの流量で導入する。それとともに、気体供給源から気体供給パイプ20を介してスプレーノズル18へ約150L/minの流量で窒素を導入し、スプレーノズル18において40〜100℃に液温調整された純水と窒素とを混合した流体を生成し、この生成した流体を噴射口18aからガラス基板14の端面14bに対して噴射することにより、ガラス基板14の端面14bに付着した1〜100μmの異物を除去した。
【0039】
ここで、この流体をスプレーノズル18の噴射口18aから噴射する際には、ガラス基板14の水平面に対して流体の噴射角度が0〜30度になるようにスプレーノズル18の角度を調整した。
【0040】
なお、液体の温度については、より詳細には、液体の流入口における液温が40〜100℃になるように液体加熱装置22を用いて制御した。また、ローラーコンベア16を移動するガラス基板14の速度は8m/minであり、実質的にガラス基板14の端面14bを洗浄する時間は約1秒であった。
【0041】
なお、この実験においては、ガラス基板14の端面14bに付着している異物の量を顕微鏡写真から求めることにより、異物除去効果を評価した。
【0042】
(効果)
図2には、上記した条件により行われた異物除去効果の実験結果が示されている。より詳細には、本発明による基板洗浄装置10を用いて液体たる純水の温度(液温)を60℃に設定してガラス基板14の端面14bを洗浄した場合における当該ガラス基板14の端面14bに残存する異物の量と、液体たる純水を加熱しない従来の基板洗浄装置を用いてガラス基板14の端面14bを洗浄した場合における当該ガラス基板14の端面14bに残存する異物の量とを比較して示している。
【0043】
この図2に示す実験結果によれば、本発明による基板洗浄装置10により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量は、液体を加熱する手段を備えていない従来の基板洗浄装置により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量と比較すると、その量は約1/3以下まで減少しており、本発明による基板洗浄装置10によれば高い洗浄効果が得られることが判明した。
【0044】
また、本発明による基板洗浄装置10を用いて液体たる純水の温度(液温)を10〜100℃に変えた場合、実験結果は図6のようになり、純水の温度を40〜100℃とした場合においても、上記した図2に示す実験結果と同様に、液体を加熱する手段を備えていない従来の基板洗浄装置と比較すると高い洗浄効果が得られた。このとき、基板端面の温度は液滴の衝突によって、40〜100℃に上昇した。
【0045】
(作用)
なお、本発明による基板洗浄装置10による高い洗浄効果は、異物の大きさが1〜100μmの場合に顕著であったが、1μm以下の異物の場合には液体の加熱による顕著な異物除去効果は見られなかった。
【0046】
本発明による基板洗浄装置10により高い洗浄効果が得られる理由は、図7に示すように、1〜100μmの大きさの異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空間が大きく、空間内の空気が体積膨張することによって起こる当該異物のガラス基板端面14bからのリフトオフに起因すると考えている。1μm以下の異物に比べ、1〜100μm程度の大きさをもつ異物と0.1〜500μm程度の凹凸を有するガラス基板端面14bとの間には、より大きな体積空間が存在し、リフトオフ効果を促進したと考えられる。一般に、空気の体積膨張係数は3.7×10−3−1であり固体に比べて2桁以上大きい値を示すことから、該空間体積の増大によるリフトオフ効果の促進は著しい。
【0047】

一方、ガラス基板14を60℃の温水に浸漬したところ、異物除去効果は全く見られなかった。即ち、異物が体積膨張するだけでは、異物がガラス基板14から離れることはなく、そのままガラス基板14の端面14bにとどまっていた。
【0048】
従って、本発明による基板洗浄装置10により得られた高い洗浄効果は、スプレーノズル18から噴出される液体と気体との混合流によって、液滴の与える運動エネルギーと該異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空気の体積膨張の双方を瞬時に引き起こすことによって得られる相乗効果であり、新しい異物除去の手法といえる。
【0049】

なお、本発明による基板洗浄装置10においてスプレーノズル18に設けた液体の流入口における純水の液温が40℃未満の場合には、液体として常温の純水を用いた従来の基板洗浄装置により得られる洗浄効果と大差ない洗浄効果が得られるのみであり、純水の液温上昇による相乗効果は得られなかった。
【0050】
これは、純水の温度が40℃未満の場合には、該異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空気の体積膨張が小さく、リフトオフ効果が起こらなかったためと考えられる。
【0051】
一方、本発明による基板洗浄装置10においてスプレーノズル18に設けた液体の流入口における純水の液温が沸点である100℃付近に近づくにつれて、スプレーノズル18の噴射口18aから純水と気体とを混合した流体を噴射する際に、液滴の粒子径が大きくなってガラス基板14の端面14bに均一に運動エネルギーを与えることができなかったためと考えられる。
【0052】
また、液体の温度としては、40〜100℃の範囲の中で、特に45〜90℃の場合が比較的高い洗浄力を示した。また、さらに高い洗浄力が必要な場合には、スプレーノズル18に設けた液体の流入口に流入される液体の温度を50〜80℃に制御することが好ましい。
【0053】
(補足例1)
さらに、液体として、フッ素イオン、リン酸イオン、有機カルボン酸イオンなどを生成するフッ化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウムまたはリン酸トリエチル、もしくは、水溶性を示すテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、有機アミン、水酸化カリウム、N−メチルピロリドン、イソプロピルアルコール、酢酸エチルなどの物質を0.01〜50%の範囲で添加した純水を用いた場合には、純水単体の場合と比較すると比較的高い洗浄能力が得られた。
【0054】
この理由は、これらのイオンや溶剤が異物とガラス基板14との界面に存在する固体の一部を溶解することで、異物とガラス基板14との間の付着力を弱めることができるからと考えられる。この場合でも、液体の温度としては、40〜100℃の範囲の中で45〜90℃の場合が特に高い洗浄力を持っていた。また、スプレーノズル18に設けた液体の流入口に流入される液体の温度を50〜80℃に制御した場合には、さらに高い洗浄力が示された。
【0055】
(補足例2)
また、本発明による基板洗浄装置10においては、わずか1秒程度の洗浄時間でガラス基板14の端面14bの洗浄を行うことができることから、例えば、ローラーコンベア16の支軸の間にスプレーノズル18を設置するという簡単な構成によって高い洗浄能力が得られることになり、その実用上の価値は極めて高いものがある。
【0056】
即ち、本発明による基板洗浄装置10においては、わずか1秒程度の洗浄時間でガラス基板14の端面14bの洗浄を行うことができることから、ローラーコンベア16によるガラス基板14の搬送の間に、当該ガラス基板14の両側の端面14bの洗浄を行うことが可能となる。
【0057】
また、スプレーノズル18の設置角度を変えたときの実験結果を図8に示す。本発明によるスプレーノズル18の設置箇所は、図8に示すように流体の噴射角度が基板と垂直方向に0〜30゜の範囲内にあればよく、スプレーノズル18とガラス基板14とが接触しない範囲であれば、水平方向には制限されない。これは、ガラス基板14の端面14bに存在する凹凸の形状に異方性があり、垂直方向に角度を変えた場合に、上記凸部分が障壁となり、液滴が該異物に衝突することが困難になるためであると考えられる。即ち、上記範囲内において、ガラス基板14の洗浄中にスプレーノズル18の角度を自由に操作しても、設置角度の異なる複数のスプレーノズル18を配置して基板洗浄を行っても同様の効果がえられることを示す。
【0058】
なお、垂直方向の角度とは、スプレーノズル18の中心線とガラス基板14の面との角度を指している。また、水平方向の角度とは、ガラス基板14の面と同一平面内にあり、ガラス基板14の端面14bを形成する直線に直交する直線に対して、スプレーノズル18の中心線がなす角度である。
【0059】
また、液滴の噴射速度を変えたときの実験結果を図9に示す。本発明による効果を得るためには、50m/s以上の噴射速度を必要とする。即ち、ガラス基板14とスプレーノズル18の噴射口18aとの間の距離および純水や気体の流量・圧力を任意に設定し、50m/s以上の流速を得ることによって本発明の効果が得られることを示す。なお、本発明による洗浄方法において、噴射距離を1〜100mmに変えた場合、いずれの条件においても50m/s以上の流速を得ることが可能であり、本発明による高い洗浄効果が得られた。
【0060】
(補足例3)
なお、図1に示す基板洗浄装置10においては、図1の紙面に対して垂直方向に搬送されるガラス基板14の搬送方向の前方端面14cおよび後方端面は、スプレーノズル18が設置されていないため洗浄することができない。
【0061】
これらガラス基板14の搬送方向の前方端面14cおよび後方端面を洗浄するには、例えば、スプレーノズル18を配置するに際にして、スプレーノズル18がローラーコンベア16の周囲を移動自在となるように配設すればよい。
【0062】
上記のようにスプレーノズル18を設置することにより、ガラス基板14の端面14b、前方端面14cおよび後方端面を洗浄する際には、ガラス基板14を搬送するローラーコンベア16の上で当該ガラス基板14の移動を一旦停止させ、その後にスプレーノズル18をローラーコンベア16の周囲をまわるように移動させながら、噴射口18aから基板14に対して液滴を噴射させればよい。これにより、ガラス基板14の端面14b、前方端面14cおよび後方端面に液滴を噴射することが可能になり、ガラス基板14の全ての端面を洗浄することが可能となる。
【0063】
また、ガラス基板14の搬送方向の前方端面14cおよび後方端面を洗浄するには、以下のような手法を採用してもよい。
【0064】
即ち、スプレーノズル18の噴射口18aの先端形状を長方形状もしくは楕円形状に加工することにより、噴射口18aから噴射される液体と気体との混合流として、その形状の縦横の比率が2:1〜50:1に変形した混合流が得られることになる。ここで、ローラーコンベア16に載置されたガラス基板14の周囲を取り囲むようにして、噴射口18aの先端形状を長方形状もしくは楕円形状に加工されたスプレーノズル18を2〜20個配置する。この際に、噴射口18aから噴射される混合流の長辺側がガラス基板14の平面方向に沿うように各スプレーノズル18を配置し、各スプレーノズル18から噴射される混合流によってガラス基板14の全ての端面たる端面14b、前方端面14cおよび後方端面が覆われるようにする。このようにすると、スプレーノズル18を固定した状態において、ガラス基板14の全ての端面たる端面14b、前方端面14cおよび後方端面に一度に混合流を噴射することができる。つまり、ローラーコンベア16に載置したガラス基板14をローラーコンベア16上で数秒停止させ、その停止中にスプレーノズル18から混合流を噴射することより、ガラス基板14の全ての端面たる端面14b、前方端面14cおよび後方端面に一度に洗浄することが可能となる。
【0065】
(補足例4)
また、ガラス基板14の搬送方向の前方端14cおよび後方端面を洗浄するには、以下のような手法を採用してもよい。図11に示すように、洗浄装置の搬送経路をL字型にして、L字カーブの前後にそれぞれ、スプレーノズルを配設し、カーブの手前でガラス基板14の端面14bを洗浄し、カーブの後にガラス基板の前方端面14cおよび後方端面を洗浄してもよい。
【0066】

また、ガラス基板14の搬送方向の前方端14cおよび後方端面を洗浄するには、以下のような手法を採用してもよい。図12に示すように、洗浄装置の搬送経路の途中に、ガラス基板を90度回転する機構を設け、回転機構の前後にそれぞれ、スプレーノズルを配設し、回転機構の手前でガラス基板14の端面14bを洗浄し、回転機構の後にガラス基板の前方端面14cおよび後方端面を洗浄してもよい。また、回転機構部分にもスプレーノズルを配設してよい。
【0067】
上述したガラス基板14の端面14b、前方端面14cおよび後方端面を洗浄する手法は、特に、厚さ5mm以下、幅×奥行き900×700mm以上の大きさのガラス基板14において有効である。
【0068】
(補助構成)
また、本発明による効果を得る方法は、流速50m/s以上の液滴を噴射する手段と、基板温度を40℃以上に加熱する手段を備えることが必要である。ガラス基板14の温度を加熱する手段には、ハロゲン、UV、IRなどのランプヒーターを用いて加熱する方法および上記ランプヒーターもしくは電熱線などを内蔵する送風機により、温風を吹き付け加熱する方法などを用いても、本発明におけるリフトオフ効果を得ることができる。なお、上記手段によってガラス基板14を加熱した場合、液滴噴射手段によって噴射される液滴の温度に特に制限はなく、流速50m/s以上であれば、上記リフトオフ効果によってガラス基板14から離れた該異物を吹き飛ばすことが可能である。
【0069】
[実施例2]
(構成と手段)
次に、図3には、本発明の第2の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図が示されている。なお、以下の本発明の第2の実施の形態による基板洗浄装置の説明においては、図1に示す本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置と同一または相当する構成については、図1と同一の符号を付して示すことにより、それらの詳細な構成ならびに作用の説明は適宜に省略する。
【0070】
この本発明の第2の実施の形態による基板洗浄装置30は、液体加熱装置22に代えて蒸気発生装置32を備えている点においてのみ、図1に示す本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置10と異なる。
【0071】
ここで、蒸気発生装置32は、液体供給源から供給された液体を貯留する液体貯留槽、液体貯留槽に貯留された液体を加熱して気化することにより蒸気を発生するスチーマー、液体貯留槽からスチーマーへ液体を供給するための供給ポンプ、液体貯留槽からスチーマーへ供給する液体の流量を測定する流量計、スチーマーにより発生された蒸気圧を測定する圧力計、液体貯留槽からスチーマーへ供給する液体中の異物を除去するフィルター、スチーマーに発生された蒸気を第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18に供給するためのポンプなどを備えている。なお、スチーマーは、例えば、約3kWのヒーターであり、当該ヒーターの出力を調節することによりスプレーノズル18から40〜100℃の液滴を含む水蒸気を発生することができる。
【0072】
(方法)
ここで、本願発明者が基板洗浄装置30を用いて行った実験の結果について説明するが、この実験においては、蒸気発生装置32により発生された純水の蒸気を、蒸気発生装置32から第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18へ約0.13L/minの流量で導入し、スプレーノズル18において生成した蒸気と、その同一成分からなる液体の混合流を噴射口18aからガラス基板14の端面14bに対して噴射することにより、高速で噴射される液滴によりガラス基板14の端面14bに付着した1〜100μmの異物を除去した。
【0073】
ここで、この蒸気と、その同一成分からなる液体の混合流をスプレーノズル18の噴射口18aから噴射する際には、ガラス基板14の水平面に対して混合流の噴射角度が0〜30度になるようにスプレーノズル18の角度を調整するとともに、ガラス基板14の端面14bへ0.2〜0.5MPaの衝撃圧が加わるようにガラス基板14の端面14bへ噴射した。
【0074】
なお、この実験においては、ガラス基板14の端面14bに付着している異物の量を顕微鏡写真から求めることにより、異物除去効果を評価した。
【0075】
(効果)
図4には、上記した条件により行われた異物除去効果の実験結果が示されている。より詳細には、本発明による基板洗浄装置30を用いて純水の蒸気、その同一成分からなる液体の混合流の温度(蒸気温度)を60℃に設定してガラス基板14の端面14bを洗浄した場合における当該ガラス基板14の端面14bに残存する異物の量と、液体たる純水を加熱しない従来の基板洗浄装置を用いてガラス基板14の端面14bを洗浄した場合における当該ガラス基板14の端面14bに残存する異物の量とを比較して示している。
【0076】
この図4に示す実験結果によれば、本発明による基板洗浄装置30により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量は、液体を加熱する手段を備えていない従来の基板洗浄装置により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量と比較すると、その量は約1/5以下まで減少しており、本発明による基板洗浄装置30によれば高い洗浄効果が得られることが判明した。また、本発明による基板洗浄装置30においては、混合流の温度が40〜100℃の場合に特に高い洗浄効果が得られた。このとき、基板端面の温度は液滴の衝突によって、40〜100℃に上昇した。
【0077】
(作用)
なお、本発明による基板洗浄装置30による高い洗浄効果は、本発明による基板洗浄装置10の場合と同様に、異物の大きさが1〜100μmの場合に顕著であったが、1μm以下の異物の場合には液体の加熱による顕著な異物除去効果は見られなかった。
【0078】
本発明による基板洗浄装置30により高い洗浄効果が得られる理由は、1〜100μmの大きさの異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空間が大きいために、空間内の空気が体積膨張することによって起こる当該異物のガラス基板14の端面14bからのリフトオフ効果と、0.2〜0.5MPaの衝撃圧による運動エネルギーを瞬時に異物に与えられるという両者の相乗効果があったためと考えられる。
【0079】
さらに、本発明による基板洗浄装置30によれば、実施例1による基板洗浄装置10よりも高い洗浄効果が得られたが、その理由は、蒸気発生装置32を用いたために平均粒径の小さい液滴をより均一に形成できるようになり、ガラス基板14の端面14bに均一な運動エネルギーを与えることができるとともに、スプレーノズルから大気中に噴射された蒸気が凝縮されて、温度上昇した液滴を形成できるためにリフトオフ効果が促進されたと考えられる。
【0080】
(補足例1)
さらに、蒸気として、フッ素イオン、リン酸イオン、有機カルボン酸イオンなどを生成するフッ化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウムまたはリン酸トリエチル、もしくは、水溶性を示すテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、有機アミン、水酸化カリウム、N−メチルピロリドン、イソプロピルアルコール、酢酸エチルなどの物質を0.01〜50%の範囲で添加した純水の蒸気を用いた場合には、純水単体の場合と比較すると比較的高い洗浄能力が得られた。
【0081】
この理由は、これらのイオンや溶剤が異物とガラス基板14との界面に存在する固体の一部を溶解することで、異物とガラス基板14との間の付着力を弱めることができるからと考えられる。
【0082】
[実施例3]
(構成と手段)
次に、図5には、本発明の第3の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図が示されている。なお、以下の本発明の第3の実施の形態による基板洗浄装置の説明においては、図1に示す本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置と同一または相当する構成については、図1と同一の符号を付して示すことにより、それらの詳細な構成ならびに作用の説明は適宜に省略する。
【0083】
この本発明の第3の実施の形態による基板洗浄装置40は、第2液体供給パイプ26の経路中において、スプレーノズル18に隣接して第2液体加熱装置42を備えている点においてのみ、図1に示す本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置10と異なる。
【0084】
この基板洗浄装置40においては、液体加熱装置22により液体を加熱して、この加熱した液体を第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18へ供給することになるが、第2液体供給パイプ26を介してスプレーノズル18へ供給される液体は、スプレーノズル18に隣接して配置された第2液体加熱装置42により再度加熱された後にスプレーノズル18に供給される。この再度加熱した液体を気体と混合してスプレーノズル18の噴射口18aから噴射することにより、ガラス基板14の端面14bに40〜100℃に温度制御された液滴を高速で吹きつける。これにより、ガラス基板14の端面14bを洗浄する。
【0085】
このように、基板洗浄装置40によれば、第2液体加熱装置42により第2液体供給パイプ26を通過してきた液体を再度加熱することができるので、液体が第2液体供給パイプ26を通過することによる液温低下を補償して、液体の温度を所望の温度に維持することができる。
【0086】
(方法と効果)
次に、本願発明者が基板洗浄装置40を用いて行った実験の結果について説明するが、この実験においては、液体加熱装置22から第2液体供給パイプ26および第2液体加熱装置42を介してスプレーノズル18へ約0.5L/minの流量で導入する。それとともに、気体供給源から気体供給パイプ20を介してスプレーノズル18へ約150L/minの流量で窒素を導入し、スプレーノズル18において純水と窒素とを混合した流体を生成し、この生成した流体を噴射口18aからガラス基板14の端面14bに対して噴射することにより、ガラス基板14の端面14bに付着した1〜100μmの異物を除去した。
【0087】
ここで、この流体をスプレーノズル18の噴射口18aから噴射する際には、ガラス基板14の水平面に対して流体の噴射角度が0〜30度になるようにスプレーノズル18の角度を調整した。
【0088】
また、液体の温度については、液体の流入口における液温が40〜100℃になるように液体加熱装置22および第2液体加熱装置42を用いて制御した。
【0089】
こうした本願発明者の実験結果によれば、本発明による基板洗浄装置40により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量は、液体を加熱する手段を備えていない従来の基板洗浄装置により洗浄を行った後のガラス基板14の端面14bの異物量と比較すると、その量は約1/3以下まで減少しており、本発明による基板洗浄装置40によれば高い洗浄効果が得られることが判明した。また、本発明による基板洗浄装置40においては、純水の温度が40〜100℃の場合に特に高い洗浄効果が得られた。このとき、基板端面の温度は液滴の衝突によって、40〜100℃に上昇した。
【0090】
(作用)
なお、本発明による基板洗浄装置40による高い洗浄効果は、本発明による基板洗浄装置10の場合と同様に、異物の大きさが1〜100μmの場合に顕著であったが、1μm以下の異物の場合には液体の加熱による顕著な異物除去効果は見られなかった。
【0091】
本発明による基板洗浄装置40により高い洗浄効果が得られる理由は、1〜100μmの大きさの異物とガラス基板14の端面14bとの間に存在する空間が大きく、空間内の空気が体積膨張することによって起こる当該異物のガラス基板14の端面14bからのリフトオフ効果があったためと考えている。
【0092】
また、本発明による基板洗浄装置40では、気温などの外的要因に影響を受けることなく、より安定した高い洗浄効果を得ることができた。
【0093】
[構成の補足説明]
なお、以上において説明した上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に説明するように変形してもよい。
【0094】
(1)上記した実施の形態においては、スプレーノズル18には特に温度センサーを設けるようにしなかったが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、スプレーノズル18へ液体を供給する第2液体供給パイプ26におけるスプレーノズル18に隣接した箇所に液体温度センサーを設置して、当該液体温度センサーが検出した温度に応じて液体加熱装置22の電力制御機構を制御することによりヒーターに投入される電力を調整し、スプレーノズル18へ供給される直前の液体の温度を20〜100℃の範囲で自由に設定するようにしてもよい。
【0095】
(2)上記した実施の形態においては、液体をスプレーノズル18に導入する経路に単数の液体加熱手段として液体加熱装置22を備えた本発明の第1の実施の形態たる基板洗浄装置10と、液体をスプレーノズル18に導入する経路に複数の液体加熱手段として液体加熱装置22および第2液体加熱装置42を備えた本発明の第2の実施の形態たる基板洗浄装置30とを示したが、液体加熱手段の設置数は上記に限られものではなく、液体をスプレーノズル18に導入する経路の長さなどに応じて適宜の数を設置すればよいが、複数の液体加熱手段を設置する際には少なくともスプレーノズル18の近傍には設置することにより、スプレーノズル18に導入する経路を液体が通過することによる液温低下を補償して、液体の温度を所望の温度に維持するように構成することが好ましい。
【0096】
また、液体をスプレーノズル18に導入する経路に単数あるいは複数の液体加熱手段を設定する際には、スプレーノズル18の近傍にのみ配置するようにしてもよい。即ち、本発明の第2の実施の形態たる基板洗浄装置30において、液体加熱装置22を除去し、第2液体加熱装置42のみを配設するようにしてもよい。
【0097】
(3)上記した実施の形態においては、蒸気発生装置32はスチーマーから液体貯留槽への液体の逆流を防止するために逆止弁を特に設けるようにしなかったが、これに限られるものではないことは勿論であり、スチーマーから液体貯留槽への液体の逆流を防止するために逆止弁を設けるようにしてもよい。
【0098】
(4)上記した実施の形態においては、蒸気発生装置32は供給ポンプにより液体貯留槽からスチーマーへ液体を供給するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、供給ポンプを使用することなしに、加圧した窒素を液体貯留槽に供給して液体を圧力でスチーマーへ押し出すようにしてもよい。
【0099】
(5)上記した実施の形態においては、スプレーノズル18の噴射口18aの形状については詳細な説明を省略したが、スプレーノズル18の噴射口18aは、図10(a)に示すような線状形状、即ち、スリット状の長方形状に形成してもよい。本発明の第2の実施の形態たる基板洗浄装置30のスプレーノズル18として、図10(a)に示すような線状形状、即ち、スリット状の長方形状の噴射口18aを備えたものを用いると、図10(b)に示すように蒸気のスプレーパターンSが広角に広がるようになり、一度に広い面積を洗浄することができるようになる。
【0100】
(6)上記した実施の形態においては、スプレーノズル18の噴射口18aから噴射する蒸気についての詳細な説明は省略したが、沸点40℃以上の液体の蒸気を用いると効率よく洗浄することができる。
【0101】
(7)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(6)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、液晶表示器のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板あるいは光ディスク用の基板などの各種のガラス基板を洗浄する際に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置を用いて行った実験の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態による基板洗浄装置を用いて行った実験の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の第3の実施の形態による基板洗浄装置の概略的な構成説明図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置を用いて行なった実験の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置を用いて行なった実験の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の効果を説明する概略的な説明図である。
【図9】図9は、本発明の第1の実施の形態による基板洗浄装置を用いて行なった実験の結果を示すグラフである。
【図10】図10(a)は、スプレーノズルの噴射口の形状を示す概念斜視説明図であり、また、図10(b)は、図10(a)の噴射口から蒸気を噴射した状態を示す概念斜視説明図である。
【図11】図11は、本発明による基板洗浄装置の変形例を示す説明図である。
【図12】図12は、本発明による基板洗浄装置の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0104】
10 基板洗浄装置
12 筐体
14 ガラス基板
14a 周縁部
14b 端面
16 ローラーコンベア
18 スプレーノズル
18a 噴射口
20 気体供給パイプ
22 液体加熱装置
24 第1液体供給パイプ
26 第2液体供給パイプ
28 排水パイプ
30 基板洗浄装置
32 蒸気発生装置
40 基板洗浄装置
42 第2液体加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とをスプレーノズルに供給し、前記スプレーノズルで前記液体と前記気体とを混合した流体をガラス基板の端面に噴射することにより前記基板を洗浄する基板洗浄装置において、
スプレーノズルに供給する液体を加熱して前記液体の温度を制御する液体加熱手段を有し、前記スプレーノズル入口における前記液体の温度を40〜100℃に制御する
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板洗浄装置において、
前記液体加熱手段は、前記液体を前記スプレーノズルに導入する経路における前記スプレーノズルの近傍に配設された
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項3】
スプレーノズルから噴射される流体により基板を洗浄する基板洗浄装置において、
基板の近傍に配設されたスプレーノズルと、
蒸気を発生して前記スプレーノズルに供給する蒸気発生手段と
を有し、
前記スプレーノズルは、前記蒸気発生手段から供給された蒸気を基板に噴射する
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の基板洗浄装置において、
前記スプレーノズルの蒸気を噴射する噴射口の形状が線状である
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項5】
請求項3または4のいずれか1項に記載の基板洗浄装置において、
前記スプレーノズルから噴射される蒸気は、沸点40℃以上の液体の蒸気である
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項6】
液体と気体とをスプレーノズルに供給し、前記スプレーノズルで前記液体と前記気体とを混合した流体を基板に噴射することにより前記基板を洗浄する基板洗浄方法において、
スプレーノズルに供給する液体を加熱して前記液体の温度を40〜100℃に制御する
ことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項7】
スプレーノズルから噴射される流体により基板を洗浄する基板洗浄方法において、
スプレーノズルに蒸気を供給し、前記スプレーノズルから該供給された蒸気を基板に噴射する
ことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項8】
請求項3または4のいずれか1項に記載の基板洗浄装置において、
前記スプレーノズルから噴射される蒸気は、水、純水、超純水のいずれか1つからなる水蒸気である
ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項9】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の基板洗浄装置において、
前記スプレーノズルから噴射された流体によって、基板端面の温度を40〜100℃に昇温させることを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−38209(P2007−38209A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144690(P2006−144690)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】