説明

基準電圧発生回路

【課題】 基準電流源となるデプレッション型のMOSトランジスタが基板バイアス効果やチャネル長変調効果の影響を受けることがないようにする。
【解決手段】 基板バイアス無しで基準電流源として働くデプレッション型のNMOSトランジスタMD1と、ダイオード接続のエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN1と、制御入力端子1Bに入力する電圧に応じたバイアス電流をバイアス出力端子1C,1DからMOSトランジスタMD1、MN1のドレインに供給するバイアス回路1と、MOSトランジスタMD1のドレイン電圧とMOSトランジスタMN1のドレイン電圧の差分に対応する電圧をバイアス回路1の制御入力端子1Bに出力する差動増幅器3とを具備し、MOSトランジスタMD1のドレイン電流と同じ電流をMOSトランジスタMN1に供給し、両ドレイン電圧が同一となるよう制御して、MOSトランジスタMN1のゲート・ソース間の電圧を基準電圧Vrefとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧を発生する基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基準電圧発生回路として、図6に示す回路が知られている(例えば、特許文献1の図1参照)。この基準電圧発生回路は高電位電源端子(VDD)11と接地端子(GND)12との間に、デプレッション型のNMOSトランジスタMD11、MD12、およびエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN11を直列接続したもので、トランジスタMD11のゲートとソースは共通接続され、トランジスタMD12のゲートとソースおよびトランジスタMN11のゲートとドレインは出力端子13に接続され、さらに、それらトランジスタMD11,MD12、MN11のバックゲートは接地端子12に接続されている。
【0003】
トランジスタMD11,MD12はノーマリオンで基準電流源として動作し、トランジスタMN11にドレイン電流を供給する。これにより、トランジスタMN11のゲート・ソース間に電圧が発生して、これが基準電圧Vrefとして出力端子13から出力する。また、この回路では、電源電圧VDDが変動しても、トランジスタMD11によってトランジスタMD12のドレイン電圧の変動が抑制され、電源電圧VDDの変動に対する出力基準電圧Vrefの安定化を図ることができる。
【0004】
図7は別の従来の基準電圧発生回路の構成を示す回路図である(例えば、特許文献2参照)。この基準電圧発生回路は、カレントミラー接続されたエンハンスメント型のPMOSトランジスタMP11,MP12と、トランジスタMP11のドレインと接地端子22と間に接続されたデプレッション型のNMOSトランジスタMD13と、トランジスタMP12のドレインと接地端子22と間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN12と、電源端子21と接地端子22との間に直列接続された抵抗R3、エンハンスメント型のNMOSトランジスタMN13および抵抗R4からなる。トランジスタMN13のゲートはトランジスタMP12,MN12のドレインに、ソースと抵抗R4の共通接続点は第1の出力端子23Aに、ドレインと抵抗R3の共通接続点は第2の出力端子23Bに、それぞれ接続されている。なお、全てのトランジスタのバックゲートはソースに接続されている。
【0005】
トランジスタMD13はノーマリオンで基準電流源として動作し、トランジスタMP11,MP12からなるカレントミラー回路の基準側電流源となる。トランジスタMN12のゲート電圧が低く、そのドレイン電流がトランジスタMP12のドレイン電流よりも少ないときは、トランジスタMN13のゲート電位が高くなり、そのソース電流が増大し、逆に、トランジスタMN12のゲート電圧が高く、そのドレイン電流がトランジスタMP12のドレイン電流よりも多いときは、トランジスタMN13のゲート電位が低くなり、そのソース電流が減少する。よって、トランジスタMP12のドレイン電流とトランジスタMN12のドレイン電流が等しくなるように、トランジスタMN12のゲート電圧が決まり、この電圧が第1の基準電圧Vref1として第1の出力端子23Aに出力する。このとき、第2の基準電圧Vref2はトランジスタMN13のドレイン電流と抵抗R3によって決まり、第2の出力端子23Bから出力する。この回路では、以上のようにして、第1および第2の基準電圧Vref1、Vref2を得ることができる。また、温度特性の良好なデプレッション型のMOSトランジスタの閾値電圧とエンハンスメント型のMOSトランジスタの閾値電圧に基づいて基準出力電圧が決定できるので、温度変化に対してフラットな温度特性を得ることができる。
【特許文献1】特開平11−135732号公報
【特許文献2】特許第3519958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、デプレッション型あるいはエンハンスメント型のNMOSトランジスタの飽和領域におけるドレイン電流IDは、次の式(1)で表される。


ここで、μはNMOSトランジスタのキャリア移動度、COXはゲート酸化膜の単位面積当りの容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、VGSはソースに対するゲート電圧、VTHN(0)はバックゲートバイアス無しのときの閾値電圧、λはチャネル長変調係数、γは基板バイアス効果係数、VSBは基板に対するソース電圧、ΦFはフィルミレベルである。
【0007】
さて、図6に示した回路構成では、トランジスタMD11とMD12のソースが基準電圧Vref以上になるが、それらの基板バイアスは接地電位となるため、ソース電圧が基板電圧よりも高くなって、式(2)より、基板バイアスがゼロのときよりも、閾値電圧VTHNが高くなる。このように、閾値電圧VTHNが高くなると、ドレイン電流は式(1)より、基板バイアスがゼロのときよりも少なくなる。
【0008】
このように、図6の回路構成は、基板バイアス効果が大きくなり、基準電流源であるトランジスタMD11,MD12のドレイン電流が流れにくくなり、基準電圧Vrefを適正に得ることができなくなるという問題が生じる。
【0009】
また、図7の回路構成では、基準電流源であるトランジスタMD13の基板はソースに接続されているので、上記のような基板バイアス効果の影響はない。しかし、トランジスタMP11,MP12で構成されているカレントミラー回路において、トランジスタMP11はゲートとドレインを共通接続しているので、ドレイン・ソース間電圧は少しの電流変化に対してほぼ一定となるため、電源電圧VDDが変化したときは、トランジスタMD13におけるドレイン・ソース間電圧が変化し、式(1)より、チャネル長変調効果により、ドレイン電流が変化する。このため、カレントミラー回路での電流のミラーリングによりトランジスタMN12のドレイン電流も変化し、よって、基準電圧Vref1、Vref2も変動する。
【0010】
このように、図7の回路構成では、トランジスタMD13のチャネル長変調効果によって、出力基準電圧Vref1、Vref2が電源電圧VDDの変動の影響を受けやすいという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、基準電流源となるデプレッション型のMOSトランジスタが基板バイアス効果やチャネル長変調効果の影響を受けることがなく、さらに低電源電圧で動作して基準電圧を出力できるようにした基準電圧発生回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる発明の基準電圧発生回路は、ゲート、ソースおよびバックゲートを第1の電源端子に接続したデプレッション型の第1のMOSトランジスタと、ソースおよびバックゲートを前記第1の電源端子に接続しゲートおよびドレインを出力端子に接続した前記第1のMOSトランジスタと同一極性のエンハンスメント型の第2のMOSトランジスタと、前記第1の電源端子とは異なる電圧の第2の電源端子に接続され、制御入力端子に入力する電圧に応じたバイアス電流を前記第1および前記第2のMOSトランジスタのドレインに個別に供給するバイアス回路と、前記第1のMOSトランジスタのドレイン電圧と前記第2のMOSトランジスタのドレイン電圧を2つの入力端子に入力しその差分に対応する電圧を出力端子から前記バイアス回路の前記制御入力端子に出力する差動増幅器とを具備し、前記第1のMOSトランジスタのドレイン電流と同じ電流を前記第2のMOSトランジスタに供給し、前記第1のMOSトランジスタのドレイン電圧と前記第2のMOSトランジスタのドレイン電圧が同じになるよう制御して、前記前記第2のMOSトランジスタのゲート・ソース間に現れる電圧を基準電圧として出力することを特徴とする。
【0013】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の基準電圧発生回路において、前記第1のMOSトランジスタおよび前記第2のMOSトランジスタの少なくとも一方のドレインと前記第1の電源端子との間にパッシブ素子又はアクティブ素子を接続したことを特徴とする。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の基準電圧発生回路において、前記バイアス回路は、ドレインが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが前記第2の電源端子に接続されゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、且つ前記第1のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタと、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが前記第2の電源端子に接続されゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、且つ前記第2のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第4のMOSトランジスタと、を具備することを特徴とする。
【0015】
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の基準電圧発生回路において、前記バイアス回路は、ドレインとゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続され、且つ前記第1のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第5のMOSトランジスタを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1にかかる発明によれば、デプレッション型の第1のMOSトランジスタはバックゲートをソースに接続しているので、基板バイアス効果によりドレイン電流が減少するとはない。また、デプレッション型の第1のMOSトランジスタのドレイン電圧はエンハンスメント型の第2のMOSトランジスタのドレイン電圧、つまり基準電圧とほぼ同じで一定となるよう制御されるため、チャネル長変調効果がなくそのドレイン電流は電源電圧の変動による影響を受けない。よって、バイアス回路から第2のMOSトランジスタへ流れるバイアス電流も、電源電圧変動に対する影響を排除することが可能となる。このようなことから、第1のMOSトランジスタは基板バイアス効果およびチャネル長変調効果のない基準電流を発生するので、この基準電流に基づき、電源電圧の変動を受けない高精度な基準電圧を発生することが可能となるという利点がある。
【0017】
請求項2にかかる発明によれば、差動増幅器は2つの入力端子の小信号的な動作点が一定となって安定したバイアス回路の制御が可能となり、安定性の良い基準電圧発生回路を構成できるという利点がある。
【0018】
請求項3にかかる発明によれば、バイアス回路を第3および第4のPMOSトランジスタのみのシンプルな構成で実現でき、バイアス回路の出力電圧は第3および第4のMOSトランジスタのドレイン電圧であるから、それらドレイン電圧と第2の電源端子の電圧との差分電圧を数100mV程度まで小さくできるので、増幅器を低電源電圧動作可能な回路構成にすると低電源電圧で動作できる利点がある。
【0019】
請求項4にかかる発明によれば、バイアス回路において第5のMOSトランジスタを加えることにより、第3、第4および第5のMOSトランジスタでカレントミラー回路が構成されるので、差動増幅器の動作によって第3、第4のMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧が大きくなりすぎ線形領域動作になることが回避され基準電圧回路動作の安定性を確保するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の基準電圧発生回路の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1の基準電圧発生回路の回路構成を示す図であり、請求項1にかかる発明の実施例である。図1において、1はバイアス回路であり、電源端子1A、制御入力端子1B、および第1,第2のバイアス出力端子1C,1Dをもち、電源端子1Aが高電位電源端子(VDD)2に接続されている。3は非反転入力端子と反転入力端子をもち出力端子をバイアス回路1の制御入力端子1Bに接続した演算増幅器であり、差動増幅器から構成される。MD1はデプレッション型のNMOSトランジスタであって、ゲート、ソースおよびバックゲートが接地(GND)4に接続され、ドレインはバイアス回路1の第1のバイアス出力端子1Cと演算増幅器3の非反転入力端子に接続されている。MN1はエンハンスメント型のMOSトランジスタであって、ソースとバックゲートが接地4に接続され、ドレインとゲートが出力端子5、演算増幅器3の反転入力端子、およびバイアス回路1の第2のバイアス出力端子1Dに接続されている。
【0022】
バイアス回路1は、その動作の一例として、制御入力端子1Bに入力する電圧に応じて、第1のバイアス出力端子1Cと第2のバイアス出力端子1Dから、同じ値のバイアス電流Ibiasを出力するが、そのバイアス電流Ibiasは制御入力端子1Bの電圧が低くなると増加し、高くなると減少する。トランジスタMD1は基準電流源として動作し、ドレイン電流IMD1を流す。
【0023】
さて、バイアス回路1の第1のバイアス出力端子1Cから出力するバイアス電流IbiasがトランジスタMD1のドレイン電流IMD1より少ない場合、トランジスタMN1はダイオード接続しているので、そのトランジスタMN1のドレイン電流IMN1変化してもドレイン電圧VMN1は僅かに変化するだけでほぼ一定電圧となる。このため、トランジスタMD1のドレイン電圧VMD1はトランジスタMN1のドレイン電圧VMN1より低くなり、演算増幅器3の反転入力電圧より非反転入力電圧のほうが低くなるので、演算増幅器3の出力電圧、すなわちバイアス回路1の制御入力端子1Bの電圧は低くなり、バイアス電流Ibiasが増える。
【0024】
逆に、バイアス電流Ibiasがドレイン電流IMD1より多い場合には、トランジスタMD1のドレイン電圧VMD1はトランジスタMN1のドレイン電圧VMN1より高くなり、演算増幅器3の動作によりバイアス回路1の制御入力端子1Bの電圧が高くなって、バイアス電流Ibiasは減少する。
【0025】
以上のような動作が小信号的に行われることにより、バイアス電流IbiasがトランジスタMD1のドレイン電流IMD1と等しくなるよう動作し、この結果、トランジスタMN1のドレイン電流IMN1がトランジスタMD1のドレイン電流IMD1と等しくなり、トランジスタMN1のドレイン電圧VMN1がトランジスタMD1のドレイン電圧VMD1と等しくなり、基準電圧Vrefとして出力端子5から出力する。このとき、トランジスタMD1のバックゲートはソースと接続されているので、基板バイアス効果は無く、トランジスタMD1に電流が流れにくくなることは無い。また、トランジスタMD1のドレイン電圧VMD1はダイオード接続のトランジスタMN1のドレイン電圧VMN1と等しくなるので、基準電圧Vrefは電源電圧VDDの変動の影響を受けることは無い。
【0026】
このときの基準電圧Vrefについて説明する。トランジスタMN1のドレイン電流IMN1は次のように表せる。

また、トランジスタMD1のドレイン電流IMD1は次のように表せる。


よって、上記式(3)と(5)より基準電圧Vrefは次のようになる。

ここで、VTEN、μEN、(W/L)MN1は、トランジスタMN1のそれぞれ閾値電圧、キャリア移動度、サイズであり、VTDN、μDN、(W/L)MD1は、トランジスタMD1のそれぞれ閾値電圧、キャリア移動度、サイズであり、VTDN<0である。
【0027】
上記式(7)より、基準電圧VrefはほぼトランジスタMN1の閾値電圧とトランジスタMD1の閾値電圧の和になる。そして、式(7)の基準電圧Vrefを温度Tに関して偏微分して得られる偏微分係数dVref/dTが0となるように、KD/KEの値を適宜調整することによって、温度特性の小さい基準電圧Vrefを発生することができる。
【実施例2】
【0028】
図2は実施例2の基準電圧発生回路の回路構成を示す図であり、請求項2にかかる発明の実施例である。ここでは、図1の回路構成に、トランジスタMD1のドレインと接地間に抵抗R1を接続し、トランジスタMN1のドレインと接地間に抵抗R2を接続した回路構成とした。トランジスタMD1のドレイン電流とトランジスタMN1のドレイン電流を等しくするためには、抵抗R1とR2を同じ値に設定することが望ましい。
【0029】
バイアス回路1の第1バイアス出力端子1Cおよび第2のバイアス出力端子1Dの出力抵抗をrbiasとすると、トランジスタMD1のドレインから見た出力抵抗r1、トランジスタMN1のドレインから見た出力抵抗r2は、次のように表すことができる。トランジスタMD1のドレイン出力抵抗をrdd1、トランジスタMN1のドレイン出力抵抗を1/gmn1とする。


ここで、R1=R2である。抵抗R1をR1<<rbias、R1<<rdd1となるように設定すると、上記式(8)は、

となる。バイアス回路1の出力抵抗rbiasがトランジスタMN1の出力抵抗1/gm1より大きい場合、つまり、rbias>>1/gm1の場合には、上記式(9)は、

となる。
【0030】
出力抵抗r1はトランジスタMD1側の演算増幅器3とバイアス回路1の系での利得に効いてくるので、抵抗R1を接続して出力抵抗r1の値を下げることによって回路の安定性を高めることができる。もう少し簡単に説明すると、トランジスタMD1のドレイン電流IMD1が小信号的にΔIMD1だけ変化すると、トランジスタMD1のドレイン電圧変化分ΔV1は、

となるので、出力抵抗r1を小さくすることによりドレイン電圧変化△V1を小さくすることができる。つまり、抵抗R1を加えることによりトランジスタMD1のドレインにおける動作点の安定度が高まるのである。なお、トランジスタMN1側では、バイアス回路1の出力抵抗rbiasが、rbias>>1/gm1であると、出力抵抗r2は上記式(11)のようになり、値は低くなるので、トランジスタMN1のドレイン電圧の小信号的な変動は小さい。
【0031】
図2の回路構成では抵抗R1と抵抗R2を接続したが、回路動作を安定させる目的であれば、抵抗(パッシブ素子)の代わりにコンデンサなどのパッシブ素子やダイオードなどのアクティブ素子を接続してもよく、また基準電圧Vrefの出力に影響を及ぼさなければトランジスタMD1またはMN1のどちらか片方のドレインと接地との間にコンデンサなどのパッシブ素子やダイオードなどのアクティブ素子を接続しても構わない。
【実施例3】
【0032】
図3は実施例3の基準電圧発生回路の回路構成を示す図であり、図2におけるバイアス回路1の具体的な内部回路の構成を示したものである。バイアス回路1は、ソースとバックゲートを電源端子1Aに接続した2つのエンハンスメント型のPMOSトランジスタMP1,MP2からなり、該トランジスタMP1,MP2の各ドレインは第1,第2のバイアス出力端子1C,1Dに接続し、ゲートは制御入力端子1Bに共通接続している。
【0033】
このバイアス回路1は、演算増幅器3の出力電圧が下がるとトランジスタMP1,MP2のドレイン電流が増え、演算増幅器の出力電圧が上がると減るので、図1の実施例1で説明した動作と同じ動作となる。トランジスタMP1,MP2においてドレイン電流を等しくするには、トランジスタサイズ(形状)を同一にすればよい。また、第1のバイアス出力端子1Cと第2のバイアス出力端子1Dの出力電圧については、電源電圧VDDよりトランジスタMP1,MP2の最小飽和電圧分だけ下がった電圧が限度になり、最小飽和電圧は数100mV程度であることから、低い電源電圧VDDでの動作が可能となる。トランジスタMP1,MP2のチャネル長変調効果を改善するため、トランジスタMP1,MP2はそれぞれカスコード構成にすることもできる。
【実施例4】
【0034】
図4は実施例4の基準電圧発生回路の回路構成を示す図であり、図3におけるバイアス回路1に対して、ソースとバックゲートを電源端子1Aに接続し、ゲートとドレインをトランジスタMP1,MP2のゲートに接続したエンハンスメント型のPMOSトランジスタMP3を追加した構成である。トランジスタMP3とトランジスタMP1,MP2はカレントミラー回路を構成し、演算増幅器4の出力電流により第1および第2のバイアス出力端子1C,1Dに流れるバイアス電流が制御され動作となる。このようにすることにより、トランジスタMP1,MP2のゲート電圧はトランジスタMP3のソース・ドレイン間電圧で制限され、基準電圧発生回路の動作安定性が高められる。
【実施例5】
【0035】
図5は実施例1〜4の回路構成を組み合わせた基準電圧発生回路の具体的な回路構成を示す図である。演算増幅器3は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタMP4,MP5,MP6,MP7とエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN2,MN3,MN4と位相補償コンデンサCcで構成される。エンハンスメント型のPMOSトランジスタMP8はトランジスタMP6,MP7とカレントミラー回路を構成し、電流源6の電流Iaをバイアス電流として演算増幅器3に供給している。
【0036】
なお、図5に示した演算増幅器は基本的な回路であり一例であって、他に様々回路構成の演算増幅器を使用可能である。また、図5の演算増幅器のトランジスタPM4,MP5,MP7,MN2,MN3の部分のみで構成したしたような差動増幅器の出力を、トランジスタMP1,MP2のゲートに接続した構成にしてもよい。
【実施例6】
【0037】
以上、実施例1〜5について説明したが、デプレッション型のNMOSトランジスタをデプレッション型のPMOSトランジスタに、エンハンスメント型のPMOSトランジスタをエンハンスメント型のNMOSトランジスタに、エンハンスメント型のNMOSトランジスタをエンハンスメント型のPMOSトランジスタに、それぞれ置き換えるなど、回路構成は同じでトランジスタの極性を入れ替え、電源の極性を入れ替えても同じ動作が行われることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の基準電圧発生回路の回路図である。
【図2】実施例2の基準電圧発生回路の回路図である。
【図3】実施例3の基準電圧発生回路の回路図である。
【図4】実施例4の基準電圧発生回路の回路図である。
【図5】実施例5の基準電圧発生回路の回路図である。
【図6】従来の基準電圧発生回路の回路図である。
【図7】従来の別の基準電圧発生回路の回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1:バイアス回路、1A:電源端子、1B:制御入力端子、1C,1D:バイアス出力端子
2:高電位電源端子
3:演算増幅器
4:接地
5:出力端子
6:電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート、ソースおよびバックゲートを第1の電源端子に接続したデプレッション型の第1のMOSトランジスタと、
ソースおよびバックゲートを前記第1の電源端子に接続しゲートおよびドレインを出力端子に接続した前記第1のMOSトランジスタと同一極性のエンハンスメント型の第2のMOSトランジスタと、
前記第1の電源端子とは異なる電圧の第2の電源端子に接続され、制御入力端子に入力する電圧に応じたバイアス電流を前記第1および前記第2のMOSトランジスタのドレインに個別に供給するバイアス回路と、
前記第1のMOSトランジスタのドレイン電圧と前記第2のMOSトランジスタのドレイン電圧を2つの入力端子に入力しその差分に対応する電圧を出力端子から前記バイアス回路の前記制御入力端子に出力する差動増幅器とを具備し、
前記第1のMOSトランジスタのドレイン電流と同じ電流を前記第2のMOSトランジスタに供給し、前記第1のMOSトランジスタのドレイン電圧と前記第2のMOSトランジスタのドレイン電圧が同じになるよう制御して、前記前記第2のMOSトランジスタのゲート・ソース間に現れる電圧を基準電圧として出力することを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項2】
請求項1に記載の基準電圧発生回路において、
前記第1のMOSトランジスタおよび前記第2のMOSトランジスタの少なくとも一方のドレインと前記第1の電源端子との間にパッシブ素子又はアクティブ素子を接続したことを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基準電圧発生回路において、
前記バイアス回路は、ドレインが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが前記第2の電源端子に接続されゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、且つ前記第1のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタと、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが前記第2の電源端子に接続されゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、且つ前記第2のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第4のMOSトランジスタと、を具備することを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項4】
請求項3に記載の基準電圧発生回路において、
前記バイアス回路は、ドレインとゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続され、且つ前記第1のMOSトランジスタと反対極性のエンハンスメント型の第5のMOSトランジスタを具備することを特徴とする基準電圧発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−338434(P2006−338434A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163472(P2005−163472)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】