説明

塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置

【課題】基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減する。
【解決手段】ウェハを第1の回転数で回転させ、ウェハ上に純水が拡散しないように、ウェハの中心部に純水を供給する(工程S1)。ウェハの回転を第2の回転数まで加速させ、ウェハ上の純水の中心部に塗布液を供給し、塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成する(工程S2)。ウェハの回転を第3の回転数まで加速させ、塗布液をウェハ上の全面に拡散させる(工程S3)。ウェハの回転を第4の回転数まで減速させ、ウェハ上の塗布液の膜厚を調整する(工程S4)。ウェハの回転を第5の回転数まで加速させ、ウェハ上の塗布液を乾燥させる(工程S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に水溶性の塗布液を塗布する塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。
【0003】
上述したレジスト塗布処理などの各種塗布処理においては、回転中のウェハの中心部にノズルから塗布液を供給し、遠心力によりウェハ上で塗布液を拡散することによってウェハ上に塗布液を塗布する、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。また、このスピン塗布法において、塗布液を少量で均一に塗布する方法として、例えばウェハ上に塗布液の溶剤を供給してプリウェットした後、ウェハの回転を第1の回転数まで加速して、この回転中のウェハに塗布液を供給し、続いてウェハの回転を第2の回転数まで一旦減速して、ウェハ上の塗布液の膜厚を調整し、その後ウェハの回転を第3の回転数まで再び加速して、ウェハ上の塗布液を振り切り乾燥させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3330324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスピン塗布法を用いて、例えば水溶性の塗布液を基板に塗布する場合、プリウェットの際に、塗布液の溶剤として例えば純水がウェハ上に供給される。しかしながら、この純水は、接触角が大きいため、供給されるとすぐにウェハ上に拡がってしまう。このように純水の濡れ性が悪いため、プリウェット後であってもウェハ上に純水で濡れていない部分が生じる場合があった。この場合、その後塗布液がウェハ上に供給されても、塗布液の流動性が向上しない。したがって、ウェハ面内で塗布液を均一に塗布するために、多量の塗布液の供給を必要とする場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板上に水溶性の塗布液を塗布する際に、基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板上に水溶性の塗布液を塗布する方法であって、基板上の全面に純水が拡散しないように、基板の中心部に純水を供給する第1の工程と、その後、前記基板上の純水の中心部に水溶性の塗布液を供給し、当該塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成する第2の工程と、その後、前記混合層を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、基板上の全面に純水が拡散しないように、基板の中心部に純水を供給した後、基板の中心部に塗布液を供給して当該塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成している。この混合層は、純水に比べて接触角が小さいため、濡れ性が良くなる。そうすると、その後混合層が基板上を拡散し、この混合層に先導されて塗布液が基板上に拡散しやすくなる。したがって、基板面内において塗布液を均一に塗布することができ、しかも塗布液の供給量を低減することができる。
【0009】
前記第1の工程において、基板を回転させて、前記基板上の純水の表面を下方に窪ませ、当該純水の周辺部を中心部よりも高くしてもよい。
【0010】
前記第1の工程において、基板を第1の回転数で回転させ、前記第2の工程において、基板の回転を前記第1の回転数よりも速い第2の回転数まで加速させて、当該第2の回転数で基板を回転させ、前記第3の工程において、基板の回転を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させて、当該第3の回転数で基板を回転させてもよい。
【0011】
前記第3の工程の後、基板の回転を前記第3の回転数よりも遅い第4の回転数まで減速させ、当該第4の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液の膜厚を所定の膜厚に調整する第4の工程と、その後、基板の回転を前記第4の回転数よりも速い第5の回転数まで加速させ、当該第5の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液を乾燥させる第5の工程と、をさらに有していてもよい。
【0012】
別な観点による本発明によれば、前記塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0013】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【0014】
さらに別な観点による本発明は、基板上に水溶性の塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板に所定のタイミングで塗布液を供給する塗布液ノズルと、基板に所定のタイミングで純水を供給する純水ノズルと、を有し、前記純水ノズルによって、基板上の全面に純水が拡散しないように、基板の中心部に純水を供給する第1の工程と、その後、前記基板上の純水の中心部に水溶性の塗布液を供給し、当該塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成する第2の工程と、その後、前記混合層を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を実行するように、前記塗布液ノズル及び前記純水ノズルの動作を制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0015】
前記塗布処理装置は、基板を保持して当該基板を所定の速度で回転させる回転保持部をさらに有していてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板を回転させて、前記基板上の純水の表面を下方に窪ませ、当該純水の周辺部が中心部よりも高くなるように前記回転保持部の動作を制御してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板を第1の回転数で回転させ、前記第2の工程において、基板の回転を前記第1の回転数よりも速い第2の回転数まで加速させて、当該第2の回転数で基板を回転させ、前記第3の工程において、基板の回転を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させて、当該第3の回転数で基板を回転させるように、前記回転保持部の動作を制御してもよい。
【0018】
前記制御部は、前記第3の工程の後、基板の回転を前記第3の回転数よりも遅い第4の回転数まで減速させ、当該第4の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液の膜厚を所定の膜厚に調整する第4の工程と、その後、基板の回転を前記第4の回転数よりも速い第5の回転数まで加速させ、当該第5の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液を乾燥させる第5の工程と、を実行するように、前記回転保持部の動作を制御してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に水溶性の塗布液を塗布する際に、基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布処理装置1の構成の概略を示す縦断面図であり、図2は、塗布処理装置1の構成の概略を示す横断面図である。なお、本実施の形態において、塗布液としては、露光処理時の光の反射を防止する反射防止膜を形成するため、レジスト膜が形成されたウェハW上に塗布される反射防止膜液体材料が用いられる。この塗布液としての反射防止膜液体材料は、例えば水溶性樹脂と、カルボン酸又はスルホン酸等の低分子有機化合物を含んでいる。
【0021】
塗布処理装置1は、図1に示すように処理容器10を有し、その処理容器10内の中央部には、ウェハWを保持して回転させる回転保持部材としてのスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック20上に吸着保持できる。
【0022】
スピンチャック20は、例えばモータなどを備えたチャック駆動機構21を有し、そのチャック駆動機構21により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構21には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック20は上下動可能になっている。
【0023】
スピンチャック20の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ22が設けられている。カップ22の下面には、回収した液体を排出する排出管23と、カップ22内の雰囲気を排気する排気管24が接続されている。
【0024】
図2に示すようにカップ22のX方向負方向(図2の下方向)側には、Y方向(図2の左右方向)に沿って延伸するレール30が形成されている。レール30は、例えばカップ22のY方向負方向(図2の左方向)側の外方からY方向正方向(図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール30には、例えば二本のアーム31、32が取り付けられている。
【0025】
第1のアーム31には、図1及び図2に示すように塗布液を供給する塗布液ノズル33が支持されている。第1のアーム31は、図2に示すノズル駆動部34により、レール30上を移動自在である。これにより、塗布液ノズル33は、カップ22のY方向正方向側の外方に設置された待機部35からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム31は、ノズル駆動部34によって昇降自在であり、塗布液ノズル33の高さを調整できる。
【0026】
塗布液ノズル33には、図1に示すように、塗布液供給源36に連通する供給管37が接続されている。塗布液供給源36内には、塗布液が貯留されている。供給管37には、塗布液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群38が設けられている。
【0027】
第2のアーム32には、塗布液の溶剤、例えば純水を供給する純水ノズル40が支持されている。第2のアーム32は、図2に示すノズル駆動部41によってレール30上を移動自在であり、純水ノズル40を、カップ22のY方向負方向側の外方に設けられた待機部42からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動させることができる。また、ノズル駆動部41によって、第2のアーム32は昇降自在であり、純水ノズル40の高さを調節できる。
【0028】
純水ノズル40には、図1に示すように純水供給源43に連通する供給管44が接続されている。純水供給源43内には、純水が貯留されている。供給管44には、純水の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群45が設けられている。なお、以上の構成では、塗布液を供給する塗布液ノズル33と純水を供給する純水ノズル40が別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、塗布液ノズル33と純水ノズル40の移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0029】
上述のスピンチャック20の回転動作と上下動作、ノズル駆動部34による塗布液ノズル33の移動動作、供給機器群38による塗布液ノズル33の塗布液の供給動作、ノズル駆動部41による純水ノズル40の移動動作、供給機器群45による純水ノズル40の純水の供給動作などの駆動系の動作は、制御部50により制御されている。制御部50は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、塗布処理装置1におけるレジスト塗布処理を実現できる。なお、塗布処理装置1におけるレジスト塗布処理を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部50にインストールされたものが用いられている。
【0030】
次に、以上のように構成された塗布処理装置1で行われる塗布処理プロセスについて説明する。図3は、塗布処理装置1における塗布処理プロセスの主な工程を示すフローチャートである。図4は、塗布処理プロセスの各工程におけるウェハWの回転数と、塗布液及び純水の供給タイミングを示すグラフである。図5は、塗布処理プロセスの各工程におけるウェハ上の液膜の状態を模式的に示している。なお、図4におけるプロセスの時間の長さは、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の時間の長さに対応していない。また、図5において、ウェハ上に予め形成されたレジスト膜は図示していない。
【0031】
塗布処理装置1に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック20に吸着保持される。続いて第2のアーム32により待機部42の純水ノズル40がウェハWの中心部の上方まで移動する。次に、図4に示すようにチャック駆動機構21を制御してスピンチャック20によりウェハWを第1の回転数である例えば1rpm〜30rpm、本実施の形態においては10rpmで回転させる。このウェハWの回転と同時に、図5(a)に示すように純水ノズル40からウェハWの中心部に純水Pが供給される(図3及び図4の工程S1)。このようにウェハWを第1の回転数で低速回転させた場合、ウェハWに供給された純水PはウェハW上をほとんど拡散しない。また、この低速回転によって、純水Pに遠心力がかかり、当該純水Pの周辺部P1は中心部P2に比べて高くなり、純水Pの表面は中心部P2が下方に窪んだ状態になる。なお、この工程S1は例えば4秒間行われる。
【0032】
純水Pの供給が終了すると、純水ノズル40がウェハWの中心部上方から移動し、第1のアーム31により待機部35の塗布液ノズル33がウェハWの中心部上方まで移動する。
【0033】
その後、図4に示すようにウェハWの回転を第2の回転数である例えば30rpm〜100rpm、本実施の形態においては40rpmまで加速させ、その後第2の回転数でウェハWを回転させる。そして、このウェハWの回転が加速されると同時に、図5(b)に示すように塗布液ノズル33から純水Pの中心部P2に塗布液Tを供給する(図3及び図4の工程S2)。このようにウェハWを第2の回転数で低速回転させた場合、純水PはウェハW上をほとんど拡散しない。また、塗布液Tの下層に、塗布液Tと純水Pが混合した混合層Cが形成される。なお、この工程S2は例えば0.5秒間行われる。
【0034】
塗布液Tの下層に混合層Cが形成されると、図4に示すようにウェハWの回転を第3の回転数である例えば2000rpm〜4000rpm、本実施の形態においては3600rpmまで加速させ、その後第3の回転数でウェハWを回転させる。この間、図5(c)に示すように塗布液ノズル33から塗布液Tは供給され続けている。このようにウェハWを第3の回転数で高速回転させた場合、混合層CはウェハW上を拡散し、塗布液Tは混合層Cに先導されてウェハW上を拡散する(図3及び図4の工程S3)。そして混合層Cは、純水Pに比べて接触角が小さく濡れ性が良いため、塗布液TはウェハW上の全面を円滑かつ均一に拡散することができる。なお、この工程S3は例えば1.1秒間行われる。
【0035】
塗布液TがウェハW上の全面に拡散すると、図4に示すようにウェハWの回転を第4の回転数である例えば100rpmまで減速させる。そして、このようにウェハWが第4の回転数で回転中、ウェハW上の塗布液Tに中心へ向かう力が作用し、図5(d)に示すようにウェハW上の塗布液Tの膜厚が調整される(図3及び図4の工程S4)。なお、この工程S4は例えば1秒間行われる。
【0036】
ウェハW上の塗布液Tの膜厚が調整されると、図4に示すようにウェハWの回転を第5の回転数である例えば1250rpmまで加速させる。そして、このようにウェハWが第5の回転数で回転中に、図5(e)に示すように、ウェハWの全面に拡散した塗布液Tは乾燥され、塗布膜Fが形成される(図3及び図4の工程S5)。なお、この工程S5は例えば18秒間行われる。
【0037】
以上の実施の形態によれば、ウェハWを低速の第1の回転数で回転させて、当該回転中のウェハWに純水Pを供給しているので、純水PがウェハW上を拡散せず、純水Pの表面を下方に窪ませることができる。そうすると、その後ウェハWを第2の回転数で回転させ、純水Pの中心部P2に塗布液Tを供給した場合に、塗布液Tが純水P上から流れ出ることがない。またこのようにウェハWを第2の回転数で回転させ、純水Pの中心部P2に塗布液Tを供給しているので、塗布液Tの下層に塗布液Tと純水Pの混合層Cを形成することができる。そうすると、混合層Cは純水Pに比べて接触角が小さく濡れ性が良くなるので、その後ウェハWを高速の第3の回転数で回転させた場合に、塗布液Tは混合層Cに先導されて、ウェハW上の全面を円滑かつ均一に拡散することができる。したがって、ウェハW面内で塗布液Tを均一に塗布することができ、しかも塗布液Tの供給量を低減することができる。
【0038】
また、塗布液TがウェハW上の全面に拡散した後、ウェハWを低速の第4の回転数で回転させているので、ウェハW上の塗布液Tに中心へ向かう力が作用し、塗布液Tの膜厚を調整することができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば上述した実施の形態では、水溶性の塗布液として反射防止膜を形成する塗布液を例にとって説明したが、本発明は、RELACS(Resolution Enhancement Lithgraphy Assisted by Chemical Shrink)技術におけるレジストパターン寸法縮小剤(RELACS剤)にも適用できる。また、上述した実施の形態では、ウェハに塗布処理を行う例であったが、本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板の塗布処理にも適用することができる。
【実施例1】
【0040】
以下、ウェハ上に塗布液を塗布する実施例において、塗布処理後にウェハ上に形成される塗布膜の膜厚の均一性について説明する。なお、ウェハWの塗布処理を行う塗布処理装置としては、先に図1及び図2で示した塗布処理装置1を用いた。また、塗布液T及び純水Pの供給するタイミングあるいはウェハWの回転数等のレシピは、先に図4で示したレシピと同一である。
【0041】
かかる条件下において、塗布処理後のウェハW上に形成される塗布膜Fの目標膜厚を3400Åに設定し、塗布処理装置1で18枚のウェハWに対して同一のレシピで塗布処理を行った。この結果を図6に示す。図6の横軸は、処理した18枚のウェハWを処理順に番号付けし、その番号を順番に示している。図6の縦軸の“Thickness”(図6中の右側縦軸)は、ウェハW上に形成された塗布膜FのウェハW面内の平均膜厚を示し、“Average”(図6中の左側縦軸)は、ウェハW面内における塗布膜Fの最大膜厚と最小膜厚の差を示している。
【0042】
図6に示したとおり、本発明の塗布処理方法を用いた場合、塗布膜Fの平均膜厚“Thickness”の平均値は3400.55Åであり、ほぼ目標膜厚と同一膜厚で形成できることが分かった。また、塗布膜Fの最大膜厚と最小膜厚の差“Average”は平均16.28Åと小さく、ウェハW面内において塗布液Tを均一に塗布できることが分かった。
【0043】
さらに、本実施例を行うに際し、ウェハWに供給した塗布液Tの供給量は1.0ccであった。一方、発明者らが調べたところ、特許文献1に提案された従来の塗布処理方法で塗布液Tを塗布した場合、ウェハW面内において塗布液Tを均一に塗布するために必要な塗布液の供給量は2.5ccであった。したがって、本発明の塗布処理方法を用いた場合、塗布液Tの供給量を格段に低減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に水溶性の塗布液を塗布する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施の形態にかかる塗布処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】塗布処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図3】塗布処理プロセスの主な工程を示すフローチャートである。
【図4】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と塗布液及び純水の供給タイミングを示すグラフである
【図5】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハ上の液膜の状態を模式的に示した説明図である。
【図6】実施例において、塗布処理後にウェハ上に形成される塗布膜の膜厚の測定結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 塗布処理装置
20 スピンチャック
33 塗布液ノズル
40 純水ノズル
50 制御部
F 塗布膜
P 純水
P1 周辺部
P2 中心部
T 塗布液
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に水溶性の塗布液を塗布する方法であって、
基板上の全面に純水が拡散しないように、基板の中心部に純水を供給する第1の工程と、
その後、前記基板上の純水の中心部に水溶性の塗布液を供給し、当該塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成する第2の工程と、
その後、前記混合層を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を有することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、基板を回転させて、前記基板上の純水の表面を下方に窪ませ、当該純水の周辺部を中心部よりも高くすることを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、基板を第1の回転数で回転させ、
前記第2の工程において、基板の回転を前記第1の回転数よりも速い第2の回転数まで加速させて、当該第2の回転数で基板を回転させ、
前記第3の工程において、基板の回転を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させて、当該第3の回転数で基板を回転させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗布処理方法。
【請求項4】
前記第3の工程の後、基板の回転を前記第3の回転数よりも遅い第4の回転数まで減速させ、当該第4の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液の膜厚を所定の膜厚に調整する第4の工程と、
その後、基板の回転を前記第4の回転数よりも速い第5の回転数まで加速させ、当該第5の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液を乾燥させる第5の工程と、をさらに有することを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項7】
基板上に水溶性の塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
基板に所定のタイミングで塗布液を供給する塗布液ノズルと、
基板に所定のタイミングで純水を供給する純水ノズルと、を有し、
前記純水ノズルによって、基板上の全面に純水が拡散しないように、基板の中心部に純水を供給する第1の工程と、その後、前記基板上の純水の中心部に水溶性の塗布液を供給し、当該塗布液の下層に塗布液と純水の混合層を形成する第2の工程と、その後、前記混合層を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を実行するように、前記塗布液ノズル及び前記純水ノズルの動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項8】
基板を保持して当該基板を所定の速度で回転させる回転保持部をさらに有することを特徴とする、請求項7に記載の塗布処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板を回転させて、前記基板上の純水の表面を下方に窪ませ、当該純水の周辺部が中心部よりも高くなるように前記回転保持部の動作を制御することを特徴とする、請求項8に記載の塗布処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板を第1の回転数で回転させ、前記第2の工程において、基板の回転を前記第1の回転数よりも速い第2の回転数まで加速させて、当該第2の回転数で基板を回転させ、前記第3の工程において、基板の回転を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させて、当該第3の回転数で基板を回転させるように、前記回転保持部の動作を制御することを特徴とする、請求項8又は9に記載の塗布処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第3の工程の後、基板の回転を前記第3の回転数よりも遅い第4の回転数まで減速させ、当該第4の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液の膜厚を所定の膜厚に調整する第4の工程と、その後、基板の回転を前記第4の回転数よりも速い第5の回転数まで加速させ、当該第5の回転数で基板を回転させて、前記基板上の塗布液を乾燥させる第5の工程と、を実行するように、前記回転保持部の動作を制御することを特徴とする、請求項10に記載の塗布処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−207984(P2009−207984A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52881(P2008−52881)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】