説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布対象物の表面及び裏面に相対位置精度良くパターンを形成する。
【解決手段】塗布装置1は、塗布対象物Wの表面Wa及び裏面Wbに液を塗布してパターンを形成する塗布装置であって、液をノズルから吐出する塗布ヘッド4と、塗布対象物Wを撮像可能な撮像部6と、塗布ヘッド4のノズルから吐出された液によって塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンを撮像部6により撮像した撮像画像に基づいて、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンの位置を検出し、その検出した位置に基づいて塗布ヘッド4による塗布対象物Wの裏面Wbに対する液の塗布位置を調整する制御装置9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布装置は、表示装置や半導体装置などの各種の電気機器を製造する際に用いられており、例えば、回路パターンとなる金属層をガラス基板上に形成する場合やレジストなどの機能性薄膜を半導体ウエハ上に形成する場合などに用いられている。
【0003】
この塗布装置は、基板などの塗布対象物に向けて塗布液を複数の吐出孔(例えば、ノズル)から個別に液滴として吐出するインクジェット方式の塗布ヘッドを備えており、その塗布ヘッドと塗布対象物とを相対移動させながら、塗布対象物の被塗布面に複数の液滴を順次塗布してパターンを形成する。
【0004】
このような塗布装置では、塗布対象物の表裏の両面にパターンを形成することがあるが、製品によっては、塗布対象物の表面に形成された表面パターンと、塗布対象物の裏面に形成された裏面パターンとの相対位置関係が重要視される場合がある。このため、塗布対象物の表面と裏面のどちらか一方にアライメントマークを形成し、そのアライメントマークを表裏両側から検知し、パターンの形成位置を調整する塗布装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−100360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の塗布装置では、パターン形成前にアライメントマークを形成し、その後、アライメントマークを基準としてパターンの形成位置、すなわち塗布液の塗布位置を調整してから、塗布対象物の表面及び裏面にパターンを形成する。このとき、表面及び裏面のどちらのパターン形成でも同じアライメントマークが基準となるため、表面パターンの位置ずれと裏面パターンの位置ずれが異なる方向に生じると、表面パターンと裏面パターンとの相対位置のずれ量は大きくなってしまう。
【0007】
特に、前述の表面パターンの位置ずれと裏面パターンの位置ずれが同じ方向になることは稀であり、通常は、異なる方向に生じる。このため、前述の相対位置のずれ量は大きくなる傾向にあり、そのずれ量の増加により表面パターンと裏面パターンとの相対位置精度は低下することになってしまう。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、塗布対象物の表面及び裏面に相対位置精度良くパターンを形成することができる塗布装置及び塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る塗布装置は、塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布装置であって、液をノズルから吐出する塗布ヘッドと、塗布対象物を撮像可能な撮像部と、塗布ヘッドのノズルから吐出された液によって塗布対象物の表面に形成されたパターンを撮像部により撮像した撮像画像に基づいて、塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を検出し、その検出した位置に基づいて塗布ヘッドによる塗布対象物の裏面に対する液の塗布位置を調整する制御装置とを備える。
【0010】
本発明の実施形態に係る塗布装置は、塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布装置であって、塗布対象物の裏面にパターンを形成する場合、塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を基準として塗布対象物の裏面に対する液の塗布位置を調整する。
【0011】
本発明の実施形態に係る塗布方法は、塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布方法であって、塗布対象物の裏面にパターンを形成する場合、塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を基準として塗布対象物の裏面に対する液の塗布位置を調整する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布対象物の表面及び裏面に相対位置精度良くパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態に係る塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す塗布装置が行う塗布処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2に示す塗布処理における表面のアライメントを説明するための説明図である。
【図4】図2に示す塗布処理における表面のパターン形成を説明するための説明図である。
【図5】図2に示す塗布処理における裏面のアライメントを説明するための説明図である。
【図6】図5に示す裏面のアライメントの変形例を説明するための説明図である。
【図7】図1に示す塗布装置の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る塗布装置1は、ガラス基板や樹脂基板などの塗布対象物Wが載置されるステージ2と、そのステージ2をY軸方向に移動させるステージ移動装置3と、ステージ2上の塗布対象物Wに向けて液滴を吐出する複数の塗布ヘッド4と、それらの塗布ヘッド4を支持するヘッド支持部5と、カメラなどの撮像部6と、その撮像部6を支持する撮像支持部7と、ステージ移動装置3やヘッド支持部5、撮像支持部7などを支持する架台8と、各部を制御する制御装置9とを備えている。
【0016】
ステージ2は、塗布対象物Wが載置される載置面を有しており、Y軸方向に移動可能にステージ移動装置3上に設けられている。このステージ2には、塗布対象物Wを自重により載置しているが、これに限るものではなく、例えば、その塗布対象物Wを保持するために静電チャックや吸着チャックなどの機構を設けても良い。なお、塗布対象物Wの表面Wa及び裏面Wbの両面に塗布を行う場合には、表面Waの塗布完了後、塗布対象物Wが作業者あるいはロボットによりひっくり返されて(表裏反転されて)ステージ2上に置かれ、その後、裏面Wbの塗布が行われる。
【0017】
ステージ移動装置3は、ステージ2をY軸方向に案内して移動させる移動装置であり、架台8の上面に固定されて設けられている。このステージ移動装置3は制御装置9に電気的に接続されており、その駆動が制御装置9により制御される。ステージ移動装置3としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などを用いることが可能である。
【0018】
各塗布ヘッド4は、Y軸方向と直交するX軸方向に沿って、例えば千鳥状あるいは直線状にステージ2のX軸方向の幅全域にわたって配列されてヘッド支持部5に設けられている。これらの塗布ヘッド4は、ステージ2上の塗布対象物Wの上面に向けて、塗布液を複数の吐出孔(例えば、ノズル)から個別に液滴として吐出(噴射)するインクジェット方式の塗布ヘッドである。各塗布ヘッド4は制御装置9に電気的に接続されており、その駆動が制御装置9により制御される。
【0019】
ここで、塗布液は、その塗布液を貯留する塗布液タンクからチューブなどの配管を介して各塗布ヘッド4に供給される。この塗布液としては、例えば、塗布対象物W上に残留物として残留する金属や顔料などの溶質と、その溶質を溶解(分散)させる溶媒とを含む溶液を用いることが可能である。
【0020】
ヘッド支持部5は、X軸方向に長尺な門型の形状に形成されており、架台8上のステージ移動装置3を跨ぐように架台8の上面に設けられている。このヘッド支持部5の梁部はX軸方向に平行にステージ2の載置面に対して水平にされ、ヘッド支持部5の脚部は架台8の上面に固定されている。
【0021】
撮像部6は、ステージ2上の塗布対象物Wを撮像可能に撮像支持部7に設けられている。この撮像部6は、所定の撮像位置からステージ2上の塗布対象物Wを撮像するものであり、特に、塗布対象物Wの外形の一部や塗布対象物Wに形成されたパターンの一部などを撮像対象物として撮像する。また、撮像部6は、制御装置9による制御に応じて撮像対象物にピント(焦点)を合わせる機能を有している。この撮像部6としては、例えば、CCD(電荷結合素子)カメラや赤外線カメラなどを用いることが可能である。なお、本実施形態では塗布対象物Wの外形の一部として、例えば、塗布対象物Wの角部をアライメントマークとして用いるため、撮像部6は、塗布対象物Wがステージ2上の所定位置に載置された状態で、アライメントマークとして用いる角部を撮像領域内に取り込めるように(好ましくは撮像領域の中央に撮像可能に)設けられている。
【0022】
撮像支持部7は、撮像部6を保持するアーム7aと、そのアーム7aを支持する支柱7bにより構成されている。支柱7bは架台8の上面に固定されて設けられている。なお、本実施形態では、撮像部6は撮像支持部7に固定されているが、これに限るものではなく、上下方向(昇降方向)に移動可能に形成されても良い。また、撮像部6をX軸方向及びY軸方向に移動可能に形成し、塗布対象物W上の撮像対象物の位置に合わせて移動できるようにしても良い。また、塗布対象物Wに撮像対象物が複数ある場合には、撮像部6を複数個設け、複数の撮像対象物を複数の撮像部6で分担して撮像するようにしても良い。この場合にも、複数の撮像部6を個別にX軸方向、Y軸方向および/または上下方向に移動可能にしても良い。
【0023】
架台8は、床面上に設置され、ステージ移動装置3やヘッド支持部5、撮像支持部7などを床面から所定の高さ位置に支持する支持台である。架台8の上面は平面に形成されており、この架台8の上面にステージ移動装置3やヘッド支持部5、撮像支持部7などが設けられている。また、架台8の内部には、制御装置9が設けられている。
【0024】
制御装置9は、各部を集中的に制御する制御部と、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。各種情報としては、表裏の両面の塗布パターン(パターンデータ)や塗布速度などの塗布情報などがあり、それらの情報はあらかじめ記憶部に記憶されている。なお、記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などを用いることが可能である。
【0025】
次に、前述の塗布装置1が行う塗布処理(塗布動作)について説明する。なお、塗布装置1の制御装置9が各種プログラム及び各種情報に基づいて塗布処理を実行する。
【0026】
図2に示すように、制御装置9は、塗布開始指示に応じて、まず、塗布対象物Wの表面Waに対するアライメントを行う(ステップS1)。このとき、塗布対象物Wはその表面Waが上面にされてステージ2上の所定位置に載置されており、その表面Waが被塗布面となっている。さらにこの状態において、その塗布対象物Wの外形の一部であるアライメントマークM1として用いる角部が撮像部6の撮像領域内に位置する。
【0027】
ステップS1の表面Waのアライメントでは、図3に示すように、撮像領域R内に含まれる塗布対象物Wの表面Waの一部が撮像部6により撮像され、その撮像画像が制御装置9により画像処理され、例えば、パターンマッチングにより、塗布対象物Wの外形の一部である角部、つまり、図3中の左下の角部がアライメントマークM1として認識される。このとき、撮像部6のピントは塗布対象物Wの表面Waに合わされており、撮像領域Rの位置は固定である。
【0028】
その後、制御装置9により、撮像領域R内のアライメントマークM1の座標が求められ、そのアライメントマークM1のステージ2上での位置が認識されて、ステージ2上の塗布対象物Wの位置が把握される。さらに、ステージ2上の塗布対象物Wの位置から表面Wa用の所定パターンの形成位置(塗布液の塗布位置)を補正するための補正量(例えば、X軸方向のずれ量やY軸方向のずれ量など)が算出され、その算出された補正量が用いられて所定のパターンデータ(表面Wa用のパターンデータ)が補正される。
【0029】
ここで、例えば、塗布対象物Wの位置ずれ(ずれ量)の算出では、アライメントマークM1の撮像画像からX軸方向、Y軸方向及び回転(θ)方向の位置ずれが求められる。X軸方向及びY軸方向の位置ずれは、アライメントマークM1におけるL字形の外形の二つの直線部分の交点の位置と予め設定された位置とのずれに基づいて求められる。また、θ方向の位置ずれは、アライメントマークM1のL字形の外形の一方の直線部分のX軸方向あるいはY軸方向に対する傾きに基づいて求められる。例えば、図3において、アライメントマークM1の縦方向の直線部分とX軸方向とのなす角が求められる。このようなX軸方向、Y軸方向及びθ方向のずれをなくすようにステージ移動装置3が制御される。この場合、ステージ移動装置3は、Y軸方向の移動に加え、X軸方向の移動と回転移動を可能に構成される。なお、算出した位置ずれに基づく補正の仕方としては、塗布対象物Wに位置ずれに合わせて塗布パターンデータを補正する以外にも、例えば、塗布対象物Wの位置を補正するようにしても良い。
【0030】
このようにして、アライメントマークM1の位置が基準にされ、塗布対象物Wの表面Waに対するパターンの形成位置(塗布液の塗布位置)が調整される。なお、表面Wa用のパターンデータは、塗布対象物Wの表面Waに対するパターンの形成位置(例えば、各滴下位置)が座標により規定されたデータであるが、これに限るものではない。
【0031】
図2に戻り、前述のステップS1の表面Waのアライメントが完了すると、塗布対象物Wの表面Waにパターンを形成する(ステップS2)。
【0032】
このステップS2のパターン形成では、前述のアライメントマークM1を基準として補正したパターンデータが用いられ、図4に示すように、所定のパターンP1が塗布対象物Wの表面Waに形成される。この所定のパターンP1としては、回路パターンを形成しているが、これに限るものではなく、他のパターンを形成しても良い。なお、アライメントマークM1は、塗布対象物Wの表面WaにパターンP1を形成するための位置合わせ用のマークとして機能することになる。
【0033】
このパターン形成時、制御装置9は、前述のアライメントマークM1を基準として補正したパターンデータなどに基づいてステージ移動装置3及び各塗布ヘッド4を制御し、塗布対象物Wが載置されたステージ2をY軸方向に移動させ、各塗布ヘッド4に対して塗布対象物Wを相対移動させながら、ステージ2上の塗布対象物Wの上面である表面Waに向けて液滴を順次吐出する塗布を行い、塗布対象物Wの表面Waに所定のパターンP1を形成する。
【0034】
図2に戻り、ステップS2のパターン形成が完了すると、ステージ2上の塗布対象物Wが作業員あるいはロボットにより、図4に示した状態から左右が反転するようにひっくり返される。すなわち塗布対象物Wはその裏面Wbが上面にされてステージ2上に載置される。この状態で、塗布対象物Wの裏面Wbに対するアライメントを行う(ステップS3)。このとき、塗布対象物Wはその裏面Wbが上面にされてステージ2上の所定位置に載置されており、その裏面Wbが被塗布面となっており、さらに、その塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1の一部が撮像部6の撮像領域内に含まれている。
【0035】
ステップS3の裏面Wbのアライメントでは、図5に示すように、撮像領域R内に含まれる塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1の一部が裏面Wb側から撮像部6により撮像される。さらに、その撮像画像が制御装置9により画像処理され、表面Wa上のパターンP1の一部、例えば、図5中の左端に位置する長方形状のブロック(図5中の点線参照)の左下の角部がアライメントマークM2として認識される。このとき、撮像部6のピントは塗布対象物Wの表面Waに合わされており、撮像領域Rは固定である。なお、塗布対象物Wは、撮像部6によって裏面Wbから表面Wa上のパターンP1を撮像可能な程度の透明性又は投光性を有している。
【0036】
ここで、撮像領域Rの位置と塗布対象物Wの表面Waに形成されるパターンP1の位置は予め分かっているので、塗布対象物Wがひっくり返されたときにパターンP1のどの部分が撮像領域R内に位置することになるかは、計算によって求めることができる。そこで、撮像領域R内に位置することとなるパターンP1の一部の中からアライメントマークとして利用可能な特徴を備えた部分を、アライメントマークM2として予め登録しておく。この例においては、図5中の左端に位置する長方形状のブロック(図5中の点線参照)の左下の角部がアライメントマークM2として予め登録されたものである。
【0037】
その後、制御装置9により、撮像領域R内のアライメントマークM2の座標が求められ、そのアライメントマークM2のステージ2上での位置が認識されて、ステージ2上の塗布対象物Wの位置、すなわち、パターンP1の位置が把握される。さらに、そのパターンP1の位置から裏面Wb用の所定パターンの形成位置(塗布液の塗布位置)を補正するための補正量(例えば、X軸方向のずれ量やY軸方向のずれ量など)が算出され、その算出された補正量が用いられて所定のパターンデータ(裏面Wb用のパターンデータ)が補正される。
【0038】
このようにして、アライメントマークM2が基準にされ、塗布対象物Wの裏面Wbに対するパターンの形成位置(塗布液の塗布位置)が調整される。なお、裏面Wb用のパターンデータは、前述の表面Wa用のパターンデータと同様、塗布対象物Wの裏面Wbに対するパターンの形成位置(例えば、各滴下位置)を座標により規定しているデータであるが、これに限るものではない。また、塗布対象物Wの位置ずれ、すなわちパターンP1の位置ずれ(ずれ量)の算出では、アライメントマークM1を用いた位置ずれの算出と同様に、アライメントマークM2を用いてパターンP1の位置ずれ(ステージ2上での予め設定された位置に対する位置ずれ)を求めることができる。
【0039】
図2に戻り、ステップS3の裏面Wbのアライメントが完了すると、塗布対象物Wの裏面Wbにパターンを形成し(ステップS4)、処理を終了する。
【0040】
このステップS4のパターン形成では、前述のアライメントマークM2を基準として補正したパターンデータが用いられ、所定のパターン(図示せず)が塗布対象物Wの裏面Wbに形成される。この所定のパターンとしては、前述の表面Waに形成した回路パターンに合わせて回路パターンを形成するが、これに限るものではなく、他のパターンを形成しても良い。なお、アライメントマークM2は、塗布対象物Wの裏面Wbにパターンを形成するための位置合わせ用のマークとして機能することになる。
【0041】
このパターン形成時も、前述と同様に、制御装置9は、アライメントマークM2を基準として補正したパターンデータを含む塗布情報に基づいてステージ移動装置3及び各塗布ヘッド4を制御し、塗布対象物Wが載置されたステージ2をY軸方向に移動させ、各塗布ヘッド4に対して塗布対象物Wを相対移動させながら、ステージ2上の塗布対象物Wの上面である裏面Wbに向けて液滴を順次吐出する塗布を行い、塗布対象物Wの裏面Wbに所定のパターンを形成する。
【0042】
ここで、パターン形成用の塗布液が加熱によって乾燥が促進される塗布液である場合には、ステップS2とステップS3との間、さらに、ステップS4の後に、熱による乾燥工程を設けるようにしても良い。また、パターン形成用の塗布液が紫外線照射により乾燥する塗布液である場合には、ステップS2とステップS3との間、さらに、ステップS4の後に、紫外線照射による乾燥工程を設けるようにしても良い。
【0043】
前述の乾燥工程を設けた場合には、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1を十分に乾燥させてから、その塗布対象物Wに対して次の処理を行うことが可能となる。これにより、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1は、表裏反転時の作業員やロボット、ステージ2などとの接触により破壊されることが抑制されるため、パターン形状などの塗布精度の低下を抑止することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、塗布対象物Wの裏面Wbにパターンを形成する場合、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1の位置を基準、すなわち、パターンP1の一部をアライメントマークM2とし、そのアライメントマークM2を基準として塗布対象物Wの裏面Wbに対するパターンの形成位置(塗布液の塗布位置)を調整する。
【0045】
したがって、塗布対象物Wの裏面Wbにパターンを形成するときには、その表面Waに形成されたパターンP1、すなわち表面パターンの一部が裏面Wb用のアライメントマークM2となるため、表面パターンの一部が裏面パターンの形成位置の基準とされる。これにより、裏面パターンの形成位置は表面パターンに対して合わせ込まれるため、塗布対象物Wの表面Wa及び裏面Wbの両面とも同じアライメントマークを基準にする場合に比べ、塗布対象物Wの表面パターンと裏面パターンとの相対位置精度を向上させることが可能となる。このようにして、塗布対象物Wの表面Wa及び裏面Wbにパターンを形成する場合に、それらのパターンを相対位置精度良く形成することができる。よって、生産される製品、回路パターンが形成される場合には回路基板などの製品の品質を向上させることができる。
【0046】
さらに、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンの一部をアライメントマークM2として用いることによって、塗布対象物の表裏のどちらか一方にアライメントマークを形成する場合に比べ、そのアライメントマーク形成工程が不要となるため、アライメントマーク形成に要する時間を省くことが可能となり、全体の生産時間を短縮することができる。加えて、アライメントマークを形成する必要が無いため、そのアライメントマークを設けるようなスペース(余白)が表面Wa上にない場合にも、前述の効果を得ることができる。
【0047】
また、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンの一部として回路パターンの一部を用いる。回路パターンはその外形に直交する直線部分(例えば、角部)を多く含んでおり、撮像部6の撮像領域Rが固定であっても、直交する部分が撮像部6の撮像領域R内に確実に存在することになるため、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンの一部を裏面Wb用のアライメントマークM2としてより確実に用いることができる。さらに、要求される描画位置精度が高い回路パターンを形成する場合には、その要求精度を満たす塗布精度を有する塗布装置が用いられるので、その塗布装置で形成されたアライメントマークM2も位置精度が高いものになる。これにより、精度が高いアライメントマークM2を用いて正確に補正量を求めることが可能になるので、塗布対象物Wの表面パターンと裏面パターンとの相対位置精度をより確実に向上させることができる。
【0048】
また、塗布対象物Wの表面Waにパターンを形成する場合、塗布対象物Wの外形の一部をアライメントマークM1とし、そのアライメントマークM1の位置を基準として塗布対象物Wの表面Waに対するパターンの形成位置(塗布液の塗布位置)を調整することによって、塗布対象物Wの表面Waに対し正確な位置にパターンを形成することが可能となるので、塗布対象物Wの表面Waに対するパターン形成においても、高い位置精度でパターンを形成することができる。
【0049】
なお、前述の実施形態においては、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1である回路パターンの一部を裏面Wb用のアライメントマークM2として用いているが、これに限るものではない。
【0050】
例えば、図6に示すように、塗布対象物Wの表面Waに、回路パターンとは別にマークP1aを含むパターンP1を形成しておき、そのマークP1aを裏面Wb用のアライメントマークM2として用いるようにしても良い。このマークP1aはパターンP1の一部であり、パターンP1を形成する塗布工程で形成される。なお、マークP1aの形成位置は、塗布対象物Wをひっくり返したときに撮像領域R内となる位置である。このようなマークP1aは、例えば、パターンデータに予め含まれていたり、あるいは、マークP1aが予め記憶され、パターンP1を描画する前に読み出されてパターンデータに埋め込まれたりする。このように、アライメントマークM2となるマークP1aがパターンP1に含まれている場合には、パターンP1内にアライメントマークM2として用いることが可能な部分が必ず存在することになるので、前述の効果を確実に得ることができる。また、マークP1aの形状として、アライメントマークとして用いるに適した形状を選定することが可能であるため、位置検出精度の向上やマーク認識の安定化(認識エラーなどが生じ難くなる)を実現することができる。
【0051】
また、前述の実施形態においては、撮像部6により裏面Wbから表面Wa上のパターンP1を撮像可能な程度の透明性又は投光性を有する塗布対象物Wを用いているが、これに限るものではなく、例えば、透明性又は投光性を有していない塗布対象物を用いても良い。ただし、この場合には、撮像部6により塗布対象物Wの裏面Wb側からその表面Waを撮像することは不可能となる。
【0052】
このため、図7に示すように、ステージ2上の塗布対象物Wの上面を撮像する上面側の撮像部6に加え、ステージ2上の塗布対象物Wの下面を撮像する下面側の撮像部6を設ける必要がある。この下面側の撮像部6はステージ2に形成した穴部に設けられたり、あるいは、透明性又は投光性を有するステージ2に内蔵されたりする。これにより、ステップS3の裏面Wbのアライメントでは、塗布対象物Wの表面Waを上面側の撮像部6ではなく、下面側の撮像部6により撮像することが可能となる。このため、塗布対象物Wの表面Waに形成されたパターンP1の一部を裏面Wb用のアライメントマークM2として認識することができる。
【0053】
また、前述の実施形態においては、撮像部6をステージ2の上方に設けているが、これに限るものではなく、例えば、その撮像部6が邪魔である場合など、ステージ2の内部やステージ2の下方に設けても良い。撮像部6がステージ2の内部に設けられる場合には、撮像部6はステージ2に形成した穴部に設けられたり、あるいは、透明性又は投光性を有するステージ2に内蔵されたりする。また、撮像部6がステージ2の下方に設けられる場合には、ステージ2が透明性あるいは投光性を有する材料により形成されている。
【0054】
また、前述の実施形態においては、一台の塗布装置1により塗布対象物Wの表面Wa及び裏面Wbにパターンを形成しているが、これに限るものではなく、例えば、二台の塗布装置1を設け、一台目の塗布装置1により塗布対象物Wの表面Waにパターンを形成し、二台目の塗布装置1により塗布対象物Wの裏面Wbにパターンを形成しても良く、複数台の塗布装置1による両面パターン形成を行っても良い。なお、一台目と二台目との塗布装置1間の塗布対象物Wの受け渡しは作業者あるいはロボットにより行われる。さらに、一台目と二台目との塗布装置1間に塗布対象物Wに塗布された塗布液を乾燥させるための乾燥処理装置を配置しても良い。
【0055】
また、前述の実施形態においては、パターンP1の中から、アライメントマークM1を撮像した撮像領域Rの位置に合わせてアライメントマークM2として用いる部分を選定するようにしている。しかしながら、これに限るものでなく、撮像領域Rに対応する位置にアライメントマークM2として用いるに適した特徴を備えた部分がない場合には、パターンP1のうち撮像領域Rの位置から外れて位置する部分からアライメントマークM2として用いる部分を選定するようにしても良い。このようにした場合には、アライメントマークM1を撮像した撮像領域Rの位置ではアライメントマークM2を取り込むことができないので、アライメントマークM2を撮像可能な位置まで撮像部6を移動可能に設けるか、撮像部6とは別にアライメントマークM2撮像用の撮像部を設けるかすると良い。
【0056】
また、前述の実施形態においては、アライメントマークM1およびアライメントマークM2を一つずつ設けたものとしている。しかしながら、これに限るものではなく、それぞれ二つあるいは三つ以上設けるようにしても良い。この場合、撮像部6は、マークの数に合わせて複数個配置するようにしても良く、また、単一の撮像部6をそれぞれのマークの撮像位置にその都度移動させるようにしても良い。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 塗布装置
4 塗布ヘッド
6 撮像部
9 制御装置
M1 アライメントマーク
M2 アライメントマーク
P1 パターン
P1a マーク
W 塗布対象物
Wa 表面
Wb 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布装置であって、
前記液をノズルから吐出する塗布ヘッドと、
前記塗布対象物を撮像可能な撮像部と、
前記塗布ヘッドの前記ノズルから吐出された前記液によって前記塗布対象物の表面に形成されたパターンを前記撮像部により撮像した撮像画像に基づいて、前記塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を検出し、その検出した位置に基づいて前記塗布ヘッドによる前記塗布対象物の裏面に対する前記液の塗布位置を調整する制御装置と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布対象物の表面に形成されたパターンは回路パターンであり、
前記撮像部は前記回路パターンの一部を撮像することを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布対象物の表面に形成されたパターンはアライメントマークを含むパターンであり、
前記撮像部は前記アライメントマークを撮像することを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布装置であって、
前記塗布対象物の裏面にパターンを形成する場合、前記塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を基準として前記塗布対象物の裏面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
前記塗布対象物の表面にパターンを形成する場合、前記塗布対象物の外形の一部をアライメントマークとし、そのアライメントマークを基準として前記塗布対象物の表面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の塗布装置。
【請求項6】
塗布対象物の表面及び裏面に液を塗布してパターンを形成する塗布方法であって、
前記塗布対象物の裏面にパターンを形成する場合、前記塗布対象物の表面に形成されたパターンの位置を基準として前記塗布対象物の裏面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする塗布方法。
【請求項7】
前記塗布対象物の表面に形成されたパターンは回路パターンであり、この回路パターンの一部を基準として前記塗布対象物の裏面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする請求項6記載の塗布方法。
【請求項8】
前記塗布対象物の表面に形成されたパターンはアライメントマークを含むパターンであり、このアライメントマークの位置を基準として前記塗布対象物の裏面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする請求項6記載の塗布方法。
【請求項9】
前記塗布対象物の表面にパターンを形成する場合、前記塗布対象物の外形の一部をアライメントマークとし、そのアライメントマークを基準として前記塗布対象物の表面に対する前記液の塗布位置を調整することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一に記載の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43105(P2013−43105A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180492(P2011−180492)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】