説明

塗膜の乾燥硬化方法および塗膜乾燥硬化装置

【課題】VOCガスを効率よく処理しつつ、発生する熱エネルギーまたは熱エネルギーと動力を究極的に有効利用して、帯状体のVOCを含む塗膜を乾燥、硬化させる。
【解決手段】帯状体Sが通過可能な通路16a,16bを有する壁体で仕切られた複数の加熱パート12a,12b,12cを備える乾燥オーブン11の該複数の加熱パート内に搬送しつつ帯状体Sに対して加熱空気を送風することにより、搬送方向下流に向けて塗膜からVOCを蒸発させて硬化するに際し、VOCを蒸発させる加熱パート12aから排出された空気に含まれるVOCを燃焼装置23で燃焼し、この燃焼装置23から排出される排気および/または燃焼装置23から排出される排気中の熱を廃熱回収装置25で回収した排気を、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給することで、加熱パート12b,12cを加熱パート12aより高い温度に維持して、塗膜を硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)を含有する空気との混合ガス(以下、VOCガスという場合がある。)を効率よく処理しつつ、発生する熱エネルギーまたは熱エネルギーと動力を究極的に有効利用して、帯状体上に形成された揮発性有機化合物を含む塗膜を乾燥させ、硬化させる方法および装置に関する。特に、ガスタービンなどの内燃機関を用いて熱エネルギーと動力を究極的に有効利用して揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体の塗膜を乾燥させ、硬化させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂フィルム、アルミ箔などの金属箔、紙等の帯状の基材に塗布されたインキや塗料等からなる塗膜は、乾燥オーブンに導入され、乾燥オーブンに設けられた流入口から供給される加熱空気をノズルから吹き付けることによって塗膜に含まれる溶剤等の揮発性有機化合物を乾燥させている。(特許文献1、2参照。)
【0003】
具体的には、印刷機や塗工機等を用いて塗膜が形成された帯状体を搬入口から乾燥オーブンに導入する。そして、乾燥オーブンに設けられた空気加熱器に吸気ファンで通常の空気を送り、乾燥する対象品の耐熱性等の物性に応じて80〜130℃程度に加熱して、流入口から乾燥オーブンに供給する。乾燥オーブンにおいては、供給される加熱空気をノズルから吹き付けることによって、塗膜に含まれる溶剤等の揮発性有機化合物を乾燥させ、搬出口から搬出する。発生したVOCガスは、VOCを処理して、あるいは処理することなく、乾燥オーブンの図示しない流出口から流出させ、大気中に放出する。
したがって、空気加熱器や吸気ファンを駆動させるためのエネルギーが必要である。また、空気加熱器は、ヒーターやバーナーで加熱するため、温度が安定するまでに時間がかかるという問題がある。
【0004】
さらに、大気汚染防止法の改定に基づき、大気中への揮発性有機化合物の排出が規制され、工場等の施設から排出される排気中のVOCを高いレベルで処理する必要があり、VOCの処理にもエネルギーが必要である。従来から、VOCを処理する方法としては、排気ガス中のVOCを燃焼する方法が知られている。燃焼に際しては、単純に燃焼する方法と、VOCを活性炭やゼオライト等の吸着剤で吸着し濃縮して燃焼する方法、蓄熱材を用いて熱を再生しながら燃焼する方法、白金触媒等を用いて燃焼させる方法等が知られている。
【0005】
しかし、従来、これらの方法で得られる燃焼熱は、自己の処理系を効率的に加熱するために再利用される程度であり、結局、発生する熱エネルギーのほとんどは、大気中に廃棄されている。したがって、エネルギー利用の効率化に限界があり、この点を改善すべく、併せて他のエネルギー形態で利用することで相乗効果を図る提案がなされている。
【0006】
例えば特許文献3には、異物が含まれている空気を回収し、回収した空気を、排気浄化装置を備えた内燃機関に対して、燃焼用空気として供給し、前記内燃機関における燃焼により、前記空気に含まれている異物を燃焼あるいは熱分解して、前記空気から異物を除去する空気浄化方法が記載されている。そして、内燃機関として自動車用エンジンを用いることが提案されている。
【0007】
また、特許文献4には、臭気ガスを含む空気を集めるための吸込みダクトと、該吸込みダクトからの吸込み空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサによる圧縮空気に燃料を投入して燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で生成した燃焼ガスによって駆動されるタービンとを具備し、タービンとコンプレッサが回転軸で直結されてガスタービン構造をなした脱臭装置において、脱臭動作中、タービン入口部分における燃焼ガス温度を臭気ガスが分解される温度以上に制御される機能を有し、さらに前記回転軸により駆動されて臭気ガスを含まない空気を圧縮する第2のコンプレッサを具備した脱臭・圧縮装置が記載されている。そして、タービン排気の熱を乾燥対象に伝え、これを加熱することが提案されている。
【特許文献1】特開2003−080118号公報
【特許文献2】特開2001−191008号公報
【特許文献3】特開2005−037111号公報
【特許文献4】特開2002−004890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に記載されるVOCガスの処理方法は、内燃機関が発生させる高温の環境でVOCを処理し、内燃機関が発生させる動力を電力として利用するのみである。
その点、特許文献4に記載されるVOCガスの処理方法は、内燃機関が発生させる高温の環境でVOCを処理し、内燃機関が発生させる動力を電力として利用することの他、臭気ガスを含む空気を集めるための吸込みおよび第2のコンプレッサの駆動にタービンの動力を利用しており、動力を電力に変換することなく利用するので効率的である。また、タービン排気の熱を乾燥対象に伝えて加熱する分、エネルギーを有効利用している。しかし、熱交換後の高温の排気は、そのまま大気中に放出しているので、まだ、有効利用の余地が残されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、VOCガスを効率よく処理しつつ、発生する熱エネルギーまたは熱エネルギーと動力を究極的に有効利用して揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体の塗膜を乾燥させ、硬化させる方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の発明者は、鋭意検討した結果、VOCを含む加熱空気を燃焼装置で燃焼すると、VOCが燃焼によって処理されてVOCの濃度がほとんど0%になっているので、これを乾燥後の塗膜の加熱処理に使用しても、VOCが乾燥後の塗膜に戻ることがなく、かつVOCの濃度が爆発の下限界を超えることがないこと、燃焼装置を運転するための燃料およびVOCの燃焼により生成する二酸化炭素や一酸化炭素および水蒸気等が塗膜の硬化に影響を及ぼさないこと、ならびに、乾燥オーブン内の温度を正確に制御することが可能との知見を得て本発明はなされたのである。
【0011】
すなわち本発明は、揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体を、該帯状体が通過可能な通路を有する壁体で仕切られた複数の加熱パートを備える乾燥オーブンの該複数の加熱パート内に搬送しつつ前記帯状体に対して加熱空気を送風することにより、前記帯状体の搬送方向下流に向けて前記塗膜から揮発性有機化合物を蒸発させて硬化する、塗膜の乾燥硬化方法であって、前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートから排出された空気に含まれる揮発性有機化合物を燃焼装置で燃焼し、この燃焼装置から排出される排気および/または前記燃焼装置から排出される排気中の熱を廃熱回収装置で回収した排気を、少なくとも、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することで、前記塗膜を硬化させる加熱パートの温度を、揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートの温度より高い温度に維持して、前記塗膜を硬化することを特徴とする塗膜の乾燥硬化方法を提供する。
【0012】
ここで、本発明においては、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気を前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給し、廃熱回収装置からの排気の温度が前記下限温度より低いときに、燃焼装置から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置を通すことなく直接、廃熱回収装置からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することが好ましい。
また、本発明においては、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気に空気を混合し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することが好ましい。
そして、本発明においては、燃焼装置として自ら気体の吸引および排出を行う内燃機関を用い、前記内燃機関の吸引力を利用して前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートから空気を吸引し、および/または前記内燃機関の排出力を利用して前記塗膜を硬化させる加熱パートに廃熱回収装置からの排気を供給することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、帯状体が通過可能な通路を有する壁体で仕切られた複数の加熱パートを備える乾燥オーブンを有する塗膜乾燥硬化装置であって、前記複数の加熱パートは、それぞれ空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを備えて揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体を搬送しつつ前記帯状体に対して加熱空気を送風することにより、前記帯状体の搬送方向上流で前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートと、前記帯状体の搬送方向下流で前記塗膜を硬化させる加熱パートを含み、前記塗膜乾燥硬化装置は、さらに、前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートの前記流出口から排出された揮発性有機化合物を含有する空気の供給を受けて該揮発性有機化合物を燃焼する燃焼装置と、前記燃焼装置から排出された排気中の熱を回収する廃熱回収装置と、前記燃焼装置から排出される排気および/または前記廃熱回収装置から排出される排気を少なくとも、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給する排気供給装置とを備えることを特徴とする塗膜乾燥硬化装置を提供する。
【0014】
ここで、本発明の塗膜乾燥硬化装置が、さらに、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定する温度計と、該温度計で測定した前記排気の温度を予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気を前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給し、廃熱回収装置からの排気の温度が前記下限温度より低いときに、前記燃焼装置から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置を通すことなく直接、廃熱回収装置からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給するように流路を変更する流路切替弁とを有することが好ましい。
また、本発明の塗膜乾燥硬化装置が、さらに、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定する温度計と、該温度計で測定した前記排気の温度を予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気に空気を混合し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給する空気混合弁とを有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の塗膜乾燥硬化装置において、前記燃焼装置が自ら気体の吸引および排出を行う内燃機関であることが好ましい。
また、本発明の塗膜乾燥硬化装置が、さらに、前記燃焼装置の動力を利用して発電を行う発電機を有することが好ましい。
また、本発明の塗膜乾燥硬化装置において、前記燃焼装置がガスタービンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗膜から蒸発させた揮発性有機化合物を燃焼装置の燃料として有効活用し、塗膜を硬化させる加熱パートの温度を維持することができる。
また、廃熱回収装置が、ボイラーである場合、乾燥オーブンに供給する空気として130℃前後の加熱空気が得られ、そのまま塗膜を硬化させる加熱パートに流入させることができる。また、ボイラーは、汎用的なエネルギー供給装置であるので、長時間運転される場合が多く、24時間常時運転される場合もある。そのため、塗膜を硬化させる加熱パートに流入させる排気の温度が安定するまでに時間がかかるという問題がない。そして、VOCの燃焼装置からの排気は、乾燥オーブンに供給する空気に比べて十分に温度が高いので、排気の温度や流量の変更が容易である。
【0017】
本発明においては、乾燥するVOCの性状や廃熱回収装置の稼働状況によっては排気の温度が適用可能でない場合に備えて、塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気を前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給し、廃熱回収装置からの排気の温度が前記下限温度より低いときに、燃焼装置から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置を通すことなく直接、廃熱回収装置からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することによって、塗膜材料の種類や乾燥条件によって、廃熱回収装置からの排気の温度よりも高い温度が要求される場合に、塗膜を硬化させる加熱パートに供給される排気の温度を所定の温度へと上げることができる。
また、万が一、加熱空気の温度が高すぎて適用可能でない場合に備えて、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気に外気を混合することによって、塗膜を硬化させる加熱パートに供給する空気として、適用可能な温度とすることができる。
【0018】
本発明の塗膜乾燥硬化装置の燃焼装置が自ら気体の吸引および排出を行う内燃機関であることによって、乾燥オーブンのVOCを蒸発させる加熱パートから空気を吸引する吸引装置、および/または、塗膜を硬化させる加熱パートに排気を供給する送風装置として活用することができる。これにより、吸引装置または送風装置を小型化ないしは省略が可能となる。
また、本発明の塗膜乾燥硬化装置が、さらに、燃焼装置の動力を利用して発電を行う発電機を有することによって、エネルギーの利用形態を多様化させることができ、VOCの燃焼装置を24時間常時運転してもエネルギーが無駄となることがない。
そして、本発明の塗膜乾燥硬化装置の燃焼装置がマイクロガスタービンであることによって、大量のVOCを処理することができ、高温の排気を、塗膜を硬化させる加熱パートに安定して供給することができる。また、強力な圧縮装置を備えることができるので、塗膜を硬化させる加熱パートに排気を供給、排出するための送風装置を省略することも可能である。また、マイクロガスタービンを用いることでVOCを効率よく処理すると同時に、タービンを駆動して発電及び廃熱利用を行うことが可能となる。したがって、VOCガスを処理する装置及びそれに掛かる運転費用も抑制でき、低コストにて大気汚染防止法のVOC排出規制に対応することができる。また、VOCのもつ燃焼エネルギーを利用することで、ガスタービンの燃料消費を減少させることができるので、省エネルギーのコージェネレーションシステム(CGS)として用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の塗膜乾燥硬化装置の一例を示す概略構成図である。本発明の塗膜乾燥硬化装置10は、帯状体Sが通過可能な通路16a,16bを有する壁体で仕切られた複数の加熱パート12a,12b,12cを備える乾燥オーブン11と、VOCガスを燃焼して処理する燃焼装置23としてマイクロガスタービン(以下、MGTという場合がある。)と、廃熱回収装置25としてのボイラーと、燃焼装置23から排出される排気および/または燃焼装置23から排出される排気中の熱の一部を廃熱回収装置25で回収した排気を、少なくとも、前記乾燥オーブン11の塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給する排気供給装置24を接続して構成される。本発明の塗膜乾燥硬化装置10において、それらの接続は、具体的には配管やダクトなどが用いられる。排気供給装置24は、少なくとも燃焼装置23及び廃熱回収装置25と乾燥オーブン11とを接続する流路を備えるものである。
【0020】
印刷機や塗工機等を用いて塗膜が形成された帯状体Sは、搬入口15から乾燥オーブン11に導入される。そして、乾燥する対象品の耐熱性等の物性に応じて80〜130℃程度に加熱された空気を、乾燥オーブン11の上流に設けられた空気供給装置21の吸気ファン31を用いて、あるいは用いることなく、流入口13から乾燥オーブン11に供給する。乾燥オーブン11中、塗膜のVOCを蒸発させる加熱パート12aにおいては、流入口13から供給された加熱空気を図示しない複数のノズルから吹き付けることによって、塗膜に含まれる溶剤等のVOCを乾燥させる。
【0021】
なお、VOCの蒸発は、帯状体Sの搬送方向上流で多く蒸発し、下流に向かうにしたがい蒸発量は漸減し、少なくとも乾燥オーブン11の終端近傍、好ましくは、乾燥オーブン11の中間付近で蒸発が終了する様に設定される。したがって、塗膜のVOCを蒸発させる加熱パートは、特定の加熱パートが割り当てられるわけではなく、乾燥条件等によって、流動的で、例えば、加熱パートが5つに仕切られている場合は、上流の2つ、あるいは、3つが塗膜のVOCを蒸発させる加熱パートとなる。また、VOCの蒸発と熱硬化が並行して進行する加熱パートもあり得る。本形態例では、加熱パート12aで蒸発が終了する様に設定されている。加熱パート12aは、壁体で加熱パート12bと仕切られているので、加熱パート12aの温度条件や風速、風量等を的確に制御することができ、蒸発したVOCを効率よく回収することができる。
【0022】
乾燥オーブン11中、塗膜のVOCを蒸発させる加熱パート12aよりも帯状体Sの搬送方向下流(図1の右側)には、塗膜を硬化させる加熱パート12b、12cが配置されており、VOCを乾燥させた後の塗膜を加熱処理して硬化させる。塗膜を硬化させる加熱パート12b、12c内の温度は、通常、塗膜のVOCを蒸発させる加熱パート12a内の温度より高く維持されており、その温度は、塗膜や帯状体Sの材料などによるが、例えば100〜150℃程度である。また、材質により、熱硬化(キュア)を2段階もしくはそれ以上の多段階の温度で行うことが望ましい場合が多く、本形態例においては、複数の加熱パート12b、12cにかけて硬化処理を行うように設定されている。加熱パート12bは、壁体で加熱パート12aおよび加熱パート12cと仕切られているので、それぞれの加熱パートにおける熱硬化の温度条件や風量を的確に制御することができる。通常は、加熱パート12cの温度を加熱パート12bの温度より高く設定することで、帯状体Sと硬化した塗膜の密着度を高くすることができる。そして、塗膜を硬化させた帯状体Sは、最終的に、乾燥オーブン11の搬出口17から搬出される。
なお、加熱パート12aの温度を加熱パート12b、12cの温度より低く設定するのは、VOCの蒸発中に塗膜の表面が硬化して皮膜が形成されると内部にVOCが残留して硬化した塗膜の強度等の物性が低下するので、これを防ぐためである。この様な問題が小さいか無い場合は、加熱パート12aでも熱硬化が進行する様に設定してもよい。
【0023】
図1に示す本発明の塗膜乾燥硬化装置10においては、乾燥オーブン11のVOCを蒸発させる加熱パート12aから発生したVOCガスは、この加熱パート12aの流出口14から流出させ、流路22を通じて下流に設置されたMGT23で吸引し、MGT23内で燃焼処理され、排気される。流路22には、乾燥オーブン11のVOCを蒸発させる加熱パート12aからVOCガスの吸引を補助するための吸気ファン32を設けても良い。また、MGT23の上流側で流路22に外気を取り入れるための空気混合弁38を設けて、VOCガス中のVOC濃度の調整(希釈)やMGT23の運転に必要な空気が不足する場合に空気の補充を可能にすることが好ましい。
【0024】
MGT23からの排気は、550〜650℃程度の高温であり、これを廃熱回収装置25であるボイラーで廃熱を回収し、ボイラー25からの排気を150℃前後に調整して、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給する。途中の経路で温度が下がるので、加熱パート12b,12cに供給されるときには、80〜130℃程度となる。このように高温の加熱空気である排気を、少なくとも、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給することで、塗膜から蒸発させたVOCをMGT23の燃料として有効活用し、加熱パート12b,12cの温度を維持することができる。途中の経路で温度が下がる程度によっては、ボイラー25からの排気をもっと高い温度に設定してもよい。
【0025】
また、加熱パート12b,12c内に赤外線ヒーターなどの加熱手段を補助的に設置してもよい。さらに、VOCをMGT23で処理すると燃焼装置を運転するための燃料およびVOCの燃焼により水蒸気が発生し、加熱パート12b,12cが停止して冷えている場合、運転開始に際してボイラー25からの排気を供給すると結露する場合があるが、加熱手段が設置されていれば、加熱パート12b,12c内を60℃ないし70℃程度に予備加熱しておくことで、結露を防止することもできるので好ましい。
【0026】
加熱パート12b,12c内の余剰空気は、流出口19b,19cを通じて排出経路26から排出される。このとき、吸気ファン39で吸気して排出を補助することが好ましい。
【0027】
本形態例においては、VOCガスを燃焼して処理する燃焼装置23としてMGTを用いるが、レシプロエンジンやロータリーエンジンなどの内燃機関を用いてもよい。あるいは、蓄熱燃焼や触媒燃焼などの燃焼方式の燃焼装置を用いてもよい。MGTを含む上記の内燃機関は、熱とともに動力も発生させるので好ましい。発生した動力は、そのまま他の装置を駆動させるために用いてもよいが、発電機27に接続して電力の形態で取り出すことで利用の自由度が高まり、24時間常時運転が容易となるので好ましい。そして、VOCの燃焼装置を24時間常時運転することで、得られる排気の温度も安定したものとなる。
【0028】
また、燃焼装置23で発生した熱は、そのまま他の装置に利用してもよいが、排気の経路24をボイラー25に接続して蒸気の形態で取り出すことで利用の自由度が高まるので好ましい。特に、本形態例においては、MGTなどの内燃機関を用いるので、燃焼装置23から排出される排気の温度は十分高く、ボイラー25で高温の蒸気を発生させることができる。そして、ボイラー25から排出される排気の温度も150℃程度と設定することで、この排気をそのまま加熱パート12b,12cの流入口18b,18cに加熱空気として流入させることができる。
【0029】
本形態例で用いるMGT23は、VOCガスを吸入して圧縮する圧縮機と、圧縮機にて圧縮されたVOCガスに燃料を補給して燃焼させる燃焼器と、燃焼器にて生成した燃焼ガスが噴射されて回転駆動されるタービンとを備えて構成されている。タービンと圧縮機は、一本の回転軸で接続されており、圧縮機はタービンで得られた駆動力を利用してVOCガスを吸入して圧縮するようになっている。タービンを回転駆動した燃焼ガスは、タービンから下流に排気される。したがって、タービンは、自身を駆動した燃焼ガスを排出する排気装置でもあり、圧縮機は、吸気装置でもある。
【0030】
燃料供給装置から燃焼器に供給される燃料としては特に限定されないが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、重油などが挙げられる。処理すべきVOCが液状で存在する場合は、タービンの排気の廃熱で気化または蒸留して燃料としてもよい。燃焼器内でVOCガスに燃料を補給して燃焼させることで、VOCは水や二酸化炭素に分解され、処理することができる。
【0031】
ただし、市販のコージェネレーション用のMGTは、吸気した空気の一部のみを燃焼器に送り、大部分は、燃焼ガスの冷却に用いるので、吸気装置にVOCガスを供給する場合は、VOCガスが完全には分解されず、一部、一酸化炭素が発生する場合がある。したがって、MGTの下流に図示しない触媒燃焼装置を付設することが好ましい。触媒燃焼装置は、一酸化炭素の酸化反応を触媒する白金やパラジウム等の酸化作用の強い活性金属を担持させたハニカム、ぺレット、メタルフォーム、繊維状等の酸化触媒を備える装置であり、一酸化炭素を酸化して分解処理することが可能である。
【0032】
なお、MGTは、大量の排気を生成するので、排気を乾燥オーブン11の塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに流入させても余剰の排気が残る場合がある。この余剰の排気は、接続経路24dを通じて空気供給経路21に接続し、空気と混ぜて所定の温度に下げて、加熱パート12aに流入させることが好ましい。それでも排気が余る場合は、加熱パート12b,12cの直前の経路24cに余剰排気排出弁(不図示)を設けて排出するのであるが、この排気中の一酸化炭素も処理する必要がある。燃焼装置として他には、ガス、灯油、重油等により、VOCを750℃から950℃の高温下で直接酸化分解(燃焼)する装置、砂やセラミック等の耐熱性、蓄熱性のある固定床(蓄熱床)を媒体として800℃から1000℃の高温下にてVOCを接触させて酸化分解する蓄熱燃焼装置を用いても良い。
【0033】
触媒燃焼装置に使用される酸化触媒の予備加熱のため、MGT23のタービンから排出された排気をそのまま、あるいは排気の経路を2つに分岐させ、経路の一方を触媒燃焼装置と熱交換可能に通じることにより、排気が保有する廃熱を利用して酸化触媒を加熱できるように構成することがエネルギーの有効利用の観点からは好ましい。
【0034】
また、燃焼装置23として、吸気装置にVOCガスを供給してVOCを処理する専用のMGTを用いることもできる。その様なMGTとしては、例えば、特表2000−500837号公報に記載されるような、燃焼器に隣接して反応室を設け、燃焼器にて生成した燃焼ガスを反応室内で螺旋状に旋回させて反応させるMGTを用いれば、一酸化炭素の処理の必要はない。なお、VOCガスのVOC濃度が著しく低い場合は、例えば、特開2001−70750号公報に記載されるような、吸脱着装置を用いて、吸着時より小風量の通過ガスで脱着を行う吸脱着操作を繰り返すことで吸気装置に供給するVOCガスを濃縮するMGTを用いれば、効率よくVOCガスを処理することができる。
【0035】
本形態例の塗膜乾燥硬化装置10は、廃熱回収装置25として最も一般的なボイラーを有する。ボイラーは、汎用的なエネルギー供給装置であるので、長時間運転される場合が多く、24時間常時運転される場合もある。そのため、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給する排気の温度を安定したものとすることができる。
本形態例においては燃焼装置23としてMGTを用いるのでボイラー25において高温の蒸気が得られ、廃熱利用の自由度が高い。熱水が必要な場合は、このボイラーで熱水を生成してもよい。そして、廃熱回収装置25を作動させる場合は、廃熱回収装置25から排出される排気の温度が150℃前後に設定することが好ましい。この様に設定することによって、本形態例においては、乾燥オーブン11の塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給する排気として130℃前後の加熱空気が得られ、そのまま、通常の塗膜に適用可能となる。この温度は、加熱処理する塗膜の性状によって多少異なるので、加熱処理する塗膜に合わせて調整することが好ましい。
【0036】
本形態例の塗膜乾燥硬化装置10は、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに排気を供給する流入口18b,18cの上流に、廃熱回収装置25からの排気の温度を測定する温度計34を有することが好ましい。そして、この温度計34で排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較する。その結果、廃熱回収装置25からの排気の温度が上限温度より低く、かつ、下限温度より高いときには、廃熱回収装置25からの排気をそのまま加熱パート12b,12cに供給する。一方、廃熱回収装置25からの排気の温度が前記下限温度より低いときには、MGT23から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置25を通すことなく、廃熱回収装置25からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して加熱パート12b,12cに供給するように流路を変更する流路切替弁35を有することが好ましい。
【0037】
具体的には、MGT23から排出される排気の経路24を2つの経路24a,24bに分岐させ、一方の排気経路24bは、排気に含まれる熱量の一部を回収するためのボイラー25に接続させ、他方の排気経路24aは、ボイラー25を通すことなく加熱パート12b,12cに直接流入させるように接続させ、MGT23から排出される高温の排気の少なくとも一部を流入させるように流路を切り替える。この様に流路を切り替えることによって、加熱パート12b,12cで熱処理される塗膜材料の種類や熱処理条件によっては、ボイラー25からの排気の温度よりも高い温度が要求される場合に、MGT23から排出される高温の排気を一部混入させることで、加熱パート12b,12cに供給される排気の温度を所定の温度へと上げることができる。
【0038】
本形態例の塗膜乾燥硬化装置10は、さらに、この温度計34で廃熱回収装置25からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置25からの排気の温度が上限温度より高いときに、廃熱回収装置25からの排気に外気(装置外から取り込まれる空気)を混合し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節してから加熱パート12b,12cに供給されるようにする空気混合弁36を有することが好ましい。この様に外から空気を混合することによって、例えば、MGT23に発電機27が付設され、MGT23の運転が発電機27の稼働に依存し、かつ、発電機27に大きな電力が要求されると、MGT23からの排気が高温になり、加熱パート12b,12cで熱処理される塗膜材料の種類や熱処理条件によっては、ボイラー25からの排気の温度が塗膜の熱処理に必要な温度よりも高くなる場合があるが、その様な場合に加熱パート12b,12cに供給される排気の温度を所定の温度へと下げることができる。温度計34による温度情報は、加熱空気制御装置37に送られ、加熱空気制御装置37により、流路切替弁35および空気混合弁36の作動が制御される。
【0039】
本形態例の塗膜乾燥硬化装置10は、排気経路24から分岐した加熱パート12b,12cに排気を供給する経路24e,24fに吸気ファン33を有することが好ましい。MGT23からの排気は、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cに供給する加熱空気を賄うには余りある大量かつ高圧の排気ではあるが、MGT23に発電機27が付設されて、MGT23の運転が発電機27の稼働に依存し、かつ、発電機27に要求される電力が小さい場合に、MGT23の運転が絞られ排気の圧力も低下するが、この様な場合において、塗膜を硬化させる加熱パート12b,12cで熱処理される塗膜材料の種類や熱処理条件によっては、ボイラー25からの排気の圧力が加熱パート12b,12cで必要な圧力よりも低い場合に、排気の圧力を所定の圧力へと上げることができる。
【0040】
吸気ファン33は、加熱パート12b,12cが停止して冷えている場合のボイラー25からの排気に含まれる水蒸気による結露を防止するために、外部空気を吸入して加熱パート12b,12c内を60℃ないし70℃程度に予備加熱する加熱手段(不図示)を備えることが好ましい。吸気ファン33に設ける加熱手段の熱源は、ヒーターやバーナーであってもよいが、ボイラー25で生成された蒸気を熱源として用いてもよい。また、吸気ファン33は、流量計(不図示)を備えることが好ましく、流量計による流量情報は、図示しない加熱空気制御装置に送られ、この加熱空気制御装置により、ボイラー25からの排気の内、加熱パート12b,12cに供給する排気と大気中に放出する余剰の排気を振り分ける余剰排気排出弁(不図示)および吸気ファン33の作動が制御される。
【0041】
本発明におけるMGT23は、発電機27を有することが好ましい。発電機27は、図示しないタービンの回転軸および必要に応じて変速機を介してMGT23に連結されており、タービンの動力によって発電機27が回転駆動されるように構成されている。MGT23の燃焼器内でVOCガスと燃料とを混合して燃焼させたとき生成する燃焼ガスは、タービンの回転駆動に利用される。タービンが回転すると、回転軸に連結された発電機27が駆動され、発電を行う。発電機27で起こした電力は、電力利用設備(不図示)で利用することができる。なお、発電に際しては、回転軸の回転数を一定に制御するか、インバーターなどを使用して周波数を一定に制御することが好ましい。
【0042】
MGT23が発電機27に連結されている場合、MGT23の運転が発電機27の稼働に依存することが好ましい。本形態例の塗膜乾燥硬化装置10を有する工場などは、通常、乾燥オーブン11でVOCを乾燥させていないときでも一定量の電力を消費しており、MGT23を空運転させておいても電力の利用に困ることはないからである。そして、MGT23を空運転させておくことで、乾燥オーブン11でVOCを乾燥させる必要が生じた場合に、VOCを含む塗膜が形成された帯状体Sを乾燥オーブン11内に搬送し、加熱空気制御装置により、ボイラー25からの排気を加熱パート12b,12cへ流入させる様に余剰排気排出弁を操作するだけで乾燥作業を開始することができ、従来の空気加熱器が有していたヒーターやバーナーで加熱するため、温度が安定するまでに時間がかかるという問題がない。また、MGT23を空運転することで、加熱パート12b,12cへ流入させる排気の温度も安定したものとなる。加熱パート12b,12cに必要な加熱空気の量や温度に変動があっても、加熱空気制御装置で調整が可能であり、MGT23の運転を制御する必要がないので、MGT23の制御が容易である。なお、MGT23が発電機27に連結されていない場合であっても、MGT23は、空運転させておくことが好ましい。この場合は、熱エネルギーしか得られないので、必要な熱エネルギー量によって、MGT23を制御することが好ましい。そして、いずれの場合であっても、MGT23の能力は、想定される処理すべきVOCガスの最大量よりも大きなVOCガス処理能力を有することが好ましい。
【0043】
MGT23の能力は、特に制限はないが、例えば、加工幅が1000mm程度の通常のドライラミネーター用の乾燥オーブンであれば、発電機を付設して運転したときに発電能力が300kW・h程度のものでよい。乾燥オーブンが小型の場合や大型のガスタービンを用いる場合は、一つのガスタービンに複数の乾燥オーブンを接続してもよい。また、乾燥オーブンが大型の場合は、一つの乾燥オーブンに複数のMGTを接続してもよい。
【0044】
本発明におけるボイラー25は、水の導入及び水蒸気の導出のための管路(図示略)を備えており、タービンの排気が保有する廃熱を利用して水を加熱し、水蒸気を発生させる公知の熱交換式のボイラーを使用することができる。ボイラー25で生成された蒸気は、蒸気利用設備(図示略)で利用することができる。あるいは、加熱パート12a、12b、12cに供給する空気や排気を加熱する熱源として用いてもよい。
なお、コージェネレーションにおける排気が有する廃熱の利用手段としては、水蒸気に限定されるものではなく、この他、温水などによることも可能である。
【0045】
本発明の燃焼装置23で処理されるVOCガス中のVOCの種類は、可燃性のものであれば特に限定されないが、一般的な例としてはトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。これらのVOCの発火点は400〜500℃であるが、本発明においては、燃焼装置23の排気を廃熱回収装置25で温度を下げて加熱パート12b,12cに流入させるので、問題はない。なお、MGT23の圧縮機内でVOCの発火を防止するため、圧縮機内の温度は、350℃以下に設定することが望ましい。また、圧縮機で圧縮する前のVOCガス中のVOCの濃度は、当該VOCの爆発下限界の1/4以下であることが好ましい。例えばトルエンであれば、圧縮機に導入するときの濃度を3000ppm以下、更には1000ppm以下とすることが好ましい。また、VOCガスが高濃度である場合には、空気混合弁38より空気を混入させて爆発下限界の1/4以下の濃度に調整して処理することが可能である。
【0046】
また、MGT23は、燃料の効率的な消費の観点から、VOCガスを燃料と一緒に燃焼させたときに一定の出力が安定的に得られるようにするため、VOCガス中のVOCの量に応じて燃料の供給量を減らすことができるように構成されている。そして、MGT23の出力は、回転軸の回転数を測定して出力を制御することができる。
【0047】
以上説明したように、本形態例の塗膜乾燥硬化装置10によれば、燃焼ガスを動力源とするガスタービンにおいて、VOCと空気との混合ガスを供給し、圧縮機で圧縮した後に燃料を補給して燃焼させることによって、VOCを効率よく処理すると同時に、タービンを駆動して発電及び廃熱利用を行うことが可能となる。したがって、VOCガスを処理する装置及びそれに掛かる運転費用も抑制でき、低コストにて大気汚染防止法のVOC排出規制に対応することができる。また、VOCのもつ燃焼エネルギーを利用することで、ガスタービンの燃料消費を減少させることができるので、省エネルギーのコージェネレーションシステム(CGS)として用いることが可能である。
【0048】
また、本形態例の塗膜乾燥硬化装置10によれば、VOCガスが発生しない場合には、通常の大気を吸引した状態で運転(空運転)することで、通常のCGSのガスタービンとしての使用も可能となっている。このため、VOCの発生の有無にかかわらずガスタービンを継続して安定的に運転し、いつでも乾燥オーブン11に加熱空気を供給することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、有機溶剤などの揮発性有機化合物を使用する工場等の施設、特に、乾燥オーブンを有する溶剤型塗工機を設置した施設において、揮発性有機化合物(VOC)を含有するガスを効率よく処理するために利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態例を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0051】
S…帯状体、10…塗膜乾燥硬化装置、11…乾燥オーブン、12a,12b,12c…加熱パート、13,18b,18c…流入口、14,19b,19c…流出口、16a,16b…通路、23…燃焼装置(MGT)、24…排気供給装置(排気経路)、25…廃熱回収装置(ボイラー)、27…発電機、34…温度計、35…流路切替弁、36…空気混合弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体を、該帯状体が通過可能な通路を有する壁体で仕切られた複数の加熱パートを備える乾燥オーブンの該複数の加熱パート内に搬送しつつ前記帯状体に対して加熱空気を送風することにより、前記帯状体の搬送方向下流に向けて前記塗膜から揮発性有機化合物を蒸発させて硬化する、塗膜の乾燥硬化方法であって、
前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートから排出された空気に含まれる揮発性有機化合物を燃焼装置で燃焼し、この燃焼装置から排出される排気および/または前記燃焼装置から排出される排気中の熱を廃熱回収装置で回収した排気を、少なくとも、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することで、前記塗膜を硬化させる加熱パートの温度を、揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートの温度より高い温度に維持して、前記塗膜を硬化することを特徴とする塗膜の乾燥硬化方法。
【請求項2】
前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気を前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給し、廃熱回収装置からの排気の温度が前記下限温度より低いときに、燃焼装置から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置を通すことなく直接、廃熱回収装置からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することを特徴とする請求項1に記載の塗膜の乾燥硬化方法。
【請求項3】
前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定し、予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気に空気を混合し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給することを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜の乾燥硬化方法。
【請求項4】
燃焼装置として自ら気体の吸引および排出を行う内燃機関を用い、前記内燃機関の吸引力を利用して前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートから空気を吸引し、および/または前記内燃機関の排出力を利用して前記塗膜を硬化させる加熱パートに廃熱回収装置からの排気を供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の塗膜の乾燥硬化方法。
【請求項5】
帯状体が通過可能な通路を有する壁体で仕切られた複数の加熱パートを備える乾燥オーブンを有する塗膜乾燥硬化装置であって、
前記複数の加熱パートは、それぞれ空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを備えて揮発性有機化合物を含む塗膜が形成された帯状体を搬送しつつ前記帯状体に対して加熱空気を送風することにより、前記帯状体の搬送方向上流で前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートと、前記帯状体の搬送方向下流で前記塗膜を硬化させる加熱パートを含み、
前記塗膜乾燥硬化装置は、さらに、前記塗膜の揮発性有機化合物を蒸発させる加熱パートの前記流出口から排出された揮発性有機化合物を含有する空気の供給を受けて該揮発性有機化合物を燃焼する燃焼装置と、
前記燃焼装置から排出された排気中の熱を回収する廃熱回収装置と、
前記燃焼装置から排出される排気および/または前記廃熱回収装置から排出される排気を少なくとも、前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給する排気供給装置とを備えることを特徴とする塗膜乾燥硬化装置。
【請求項6】
前記塗膜乾燥硬化装置が、さらに、
前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定する温度計と、
該温度計で測定した前記排気の温度を予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気を前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給し、廃熱回収装置からの排気の温度が前記下限温度より低いときに、前記燃焼装置から排出される排気の少なくとも一部を、廃熱回収装置を通すことなく直接、廃熱回収装置からの排気に混入し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給するように流路を変更する流路切替弁とを有することを特徴とする請求項5に記載の塗膜乾燥硬化装置。
【請求項7】
前記塗膜乾燥硬化装置が、さらに、
前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給される廃熱回収装置からの排気の温度を測定する温度計と、
該温度計で測定した前記排気の温度を予め設定された上限温度および下限温度と比較して、廃熱回収装置からの排気の温度が前記上限温度より高いときに、廃熱回収装置からの排気に空気を混合し、前記上限温度より低く、かつ、前記下限温度より高い温度に調節して前記塗膜を硬化させる加熱パートに供給する空気混合弁とを有することを特徴とする請求項5または6に記載の塗膜乾燥硬化装置。
【請求項8】
前記燃焼装置が自ら気体の吸引および排出を行う内燃機関であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の塗膜乾燥硬化装置。
【請求項9】
前記塗膜乾燥硬化装置が、さらに、前記燃焼装置の動力を利用して発電を行う発電機を有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載の塗膜乾燥硬化装置。
【請求項10】
前記燃焼装置がガスタービンであることを特徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載の塗膜乾燥硬化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−101297(P2009−101297A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275685(P2007−275685)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】