説明

変速位置検出装置

【課題】 電源を供給する制御装置が故障した場合であっても、変速装置のニュートラルを表示することができる変速位置検出装置を提供する。
【解決手段】 車両の変速装置の変速位置を操作するシャフトに連動して回動する回転部材1と、回転部材1とともに回動する磁石2と、磁石2が回転することによって磁石2の磁界の強さを検出する磁気検出部3と、この磁気検出部3からの検出信号を受ける制御装置8と、を備えた変速位置検出装置Aにおいて、磁気検出部3は、前記変速装置の変速位置を前記シャフトの位置から検出する第1の磁気検出部31Aと前記変速装置のニュートラルを前記シャフトの位置から検出する第2の磁気検出部31Bとを備え、第2の磁気検出部31Bは、制御装置8以外の他の装置から駆動電源が供給されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速装置の変速位置を検出する変速位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変速位置検出装置は、特許文献1に開示されるものが知られている。この変速位置検出装置は、変速装置のギアの組み合わせを操作するシフトレバーの揺動と連動して回転するシフトカムと、このシフトカムの回転角度を検出すべくシフトカムと対向して固設された端子台と、この端子台に配設されたアース用固定端子および複数の接触固定端子と、シフトカムと連動し得る一方、端子台に対して回転が許容されつつ連結されて一体化すると共に、シフトカムと端子台との間に介在された連動部材と、この連動部材に配設されてシフトカムの回転角度に応じて所定の接触固定端子と接触する可動端子と、この可動端子をアース用固定端子および接触固定端子側に付勢するコイルスプリングとを具備し、可動端子が何れの接触固定端子と接触して導通するかに応じてシフトレバーによるギアの組み合わせである変速位置を検出するものである。即ち、シフトカムの回転角度を検出することで、変速位置が検出できるというものである。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の変速位置検出装置は、可動端子の接触部が固定端子に接触する接触式であるため、繰り返し使用されることによって接触箇所の耐久性が低下しやすい。また、機械的な接点による検出であるため、小刻みな回転角度での検出が不可能である。よって、位置検出数も限られてしまい、数多くの位置検出を必要とした際に対応できないという問題点を有している。
【0004】
この問題を解決するものとして、本願出願人は、特許文献2に開示される変速位置検出装置を提供している。この変速位置検出装置は、回転部材と、この回転部材に固着され回転部材の回転に伴って回転する磁石と、この磁石に対向して配置され磁石が回転することによって磁石の磁界の強さを検出する磁気検出部とを備えたものであり、耐久性に優れ、連続した回転角度での検出が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−208834号公報
【特許文献2】特開2009−204567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の変速位置検出装置では、前記磁気検出部は、エンジンを制御するエンジンコントロールユニットなどの制御装置から電源供給がなされており、前記制御装置が故障した場合に前記制御装置からの電源供給が閉ざされてしまうため、変速位置を検出できなくなるとともに計器で変速位置を表示できなくなってしまう。
【0007】
二輪車の場合、故障時には手押しにより車両を移動させる場合に、変速装置のクラッチを切るか、あるいは、変速位置をニュートラルとし、車両を移動させるが、この変速位置をニュートラルにする操作を行う時に、変速位置の表示ができない場合に、車両利用者のクラッチ操作の感触にてニュートラルを探さなければならず不便であるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、電源を供給する制御装置が故障した場合であっても、変速装置のニュートラルを表示することができる変速位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の変速装置の変速位置を操作する被検出体であるシャフトに連動して回動する回転部材と、前記回転部材とともに回動する磁石と、前記磁石が回転することによって前記磁石の磁界の強さを検出する磁気検出部と、この磁気検出部からの検出信号を受ける制御装置と、を備えた変速位置検出装置において、前記磁気検出部は、前記変速装置の変速位置を前記シャフトの位置から検出する第1の磁気検出部と前記変速装置のニュートラルを前記シャフトの位置から検出する第2の磁気検出部とを備え、前記第2の磁気検出部は、前記制御装置以外の他の装置から駆動電源が供給されるものである。
【0010】
また、本発明は、前記第1の磁気検出部は前記他の装置から駆動電源が供給されるものである。
【0011】
また、本発明は、前記第1、第2の磁気検出部を配設する回路基板を備えたものである。
【0012】
また、本発明は、前記他の装置が、計器である。
【0013】
また、本発明は、前記他の装置が、バッテリである。
【0014】
また、本発明は、前記回路基板に前記他の装置から前記第2の磁気検出部へ供給する前記駆動電源の電圧を調整する安定化電源回路を設けたものである。
【0015】
また、本発明は、前記安定化電源回路は、前記他の装置から前記第1の磁気検出部へ供給する前記駆動電源の電圧を調整するものである。
【0016】
また、本発明は、前記回路基板には、検出値と回転部材の回転角度との関連する検出データを記憶する前記第1の磁気検出部及び前記第2の磁気検出部に内蔵の記憶部のプログラム時のみに使用する専用端子又は配線を設け、プログラム後は前記専用端子又は配線がオープンとなる
ものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、電源を供給する制御装置が故障した場合であっても、変速装置のニュートラルを表示することができる変速位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態を示す変速位置検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の変速位置検出装置の回転角度検出センサの断面図。
【図3】本発明の第2実施形態を示す変速位置検出装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第3実施形態を示す変速位置検出装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、車両に於ける例えば変速装置のシフトレバーの操作と連動して回転するシフトカムの回転角度を検出する変速位置検出装置を実施形態として説明する。
【0020】
変速位置検出装置Aは、図示しない変速装置のギアの組み合わせを操作するシフトレバー(2輪車の場合、シフトペダルともいう)の操作に連動して回転するシフトカムの回転角度を検出する回転角度検出センサRと、制御装置であるエンジンコントロールユニット(以下、ECUという)8と、車両の状態を表示する計器9と、電源であるバッテリ10とからなる。なお、VLは、電源ライン、SL1は、第1の磁気検出部31Aの信号ライン、SL2は、第2の磁気検出部31Bの信号ライン、GLは、グランドラインである。
【0021】
回転角度検出センサRは、前記シフトカムに連結され、前記シフトカムの回転に伴って回転する回転部材1と、この回転部材1に固着され回転部材1の回転に伴って回転する磁石2と、この磁石2に対向して配置され磁石2が回転することによって磁石2の磁界の強さを検出する磁気検出部3を備えている。また、回転角度検出センサRは、磁石2と磁気検出部3と回転部材1とが収納されるハウジング4を備えている。
【0022】
ハウジング4は、上ハウジング4Aと下ハウジング4Bとに分かれており、それぞれが例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)からなる合成樹脂で形成されている。上ハウジング4Aは、周壁41Aと、円筒部42などを有しており、周壁41Aで囲まれた空間SA内に磁石2が収納されるようになっている。円筒部42内には空間SA側から回転部材1が挿入されるようになっている。
【0023】
下ハウジング4Bは、上ハウジング4Aの周壁41Aと外径が同じ周壁41Bと、仕切壁43などを有しており、周壁41Bと仕切壁43を設けることによって下ハウジング4Bの空間SBが形成される。そして、磁石2と一体となった回転部材1が上ハウジング4Aの円筒部42内に挿通された後に、上ハウジング4Aの周壁41Aと下ハウジング4Bの周壁41Bとが圧入によって装着されるように構成されている。なお、上ハウジング4Aの周壁41Aと下ハウジング4Bの周壁41Bとを溶着するようにしても良い。
【0024】
回転部材1は、例えば真鍮にニッケルめっきを施した略円柱状を成しており、その一部(上端側)が上ハウジング4A外に露出する露出部11を有し、下端側は上ハウジング4Aの円筒部42の内径よりも大きい径大部12としてある。また、露出部11近辺の上ハウジング4Aの円筒部42に対応した回転部材1箇所の周囲には第1の受け部13が設けてある。また、磁石2近辺の上ハウジング4Aの円筒部42に対応した回転部材1箇所の周囲には第2の受け部14が設けてある。この第1および第2の受け部13,14は、円筒部42に対応した回転部材1箇所の両端箇所(第1および第2の受け部13,14となる箇所)を除いて径小とすることによって形成されるものである。
【0025】
また、回転部材1の露出部11箇所には溝15が設けてあり、回転部材1が円筒部42内に挿通された後にEリング5を溝15に嵌入することによって、回転部材1が上ハウジング4Aに装着される。更に、Eリング5と径大部12とによって回転部材1の軸方向の移動が規制され、その状態で回転部材1が回転した際、回転部材1の露出部11近辺である上ハウジング4Aの円筒部42内と、磁石2近辺である上ハウジング4Aの円筒部42内とで第1の受け部13および第2の受け部14が摺動するようになっている。
【0026】
磁石2は、プラスチックマグネットからなり、回転部材1と一体的に形成されている。即ち、回転部材1の下端部(磁気検出部3側)に芯部16を設け、この芯部16の周囲にプラスチックマグネットを射出成形したものである。この磁石2は、N極とS極に着磁(2極着磁)された円板状であり、回転部材1の中心軸と磁石2の中心とは一致している。従って、磁石2の着磁方向は、回転部材1の回転軸に対して垂直方向となっている。
【0027】
磁気検出部3は、例えばホールICからなり、磁石2の回転に伴う磁界の強さを検出するものであり、2つの磁気検出部(第1の磁気検出部31Aと第2の磁気検出部31B)と、金属製のリード部32と、各磁気検出部31A,31Bとリード部32とを導通接続するワイヤ(図示せず)などを備えており、これらが樹脂からなるパッケージ34に内蔵されている。リード部32は硬質な回路基板6に半田付けされている。この磁気検出部3の磁気検出面33は磁石2の着磁方向と略平行となっている。
【0028】
本実施形態において、磁気検出部31A、31Bは、ホール素子から構成されており、磁石2の回転軸方向に対して垂直であるX方向と、磁石2の回転軸方向に対して垂直でかつX方向に対して直角に交わるY方向とにそれぞれホール素子を備えていればよく、本実施形態では、磁気検出部31A、31Bは、それぞれ4つのホール素子を備えている。
【0029】
磁気検出部3の第1の磁気検出部31Aは、回転部材1の回転に伴って回転する磁石2の磁界の変化を検出値に変換するものであり、この検出値に基づいて、変速位置を検出するものである。第1の磁気検出部31Aは、検出値と回転部材1の回転角度(変速位置)との関連する検出データを記憶する図示しない記憶部を備えており、検出値ではなく、変速位置の検出データを検出信号として出力するものである。なお、前記記憶部は、例えばEEPROMからなる。
【0030】
また、第2の磁気検出部31Bは、回転部材1の回転に伴って回転する磁石2の磁界の変化を検出値に変換するものであり、この検出値に基づいて、ギアシフトのニュートラル位置を検出するものである。第2の磁気検出部31Bは、検出値と回転部材1の回転角度(ニュートラル位置)との関連する検出データを記憶する図示しない記憶部を備えており、検出値ではなく、ニュートラル位置の検出データを検出信号として出力するものである。なお、前記記憶部は、例えばEEPROMからなる。
【0031】
回路基板6は、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料からなり、その表面に銅などの導電体からなる配線パターンが形成されている。回路基板6は、下ハウジング4Bの周壁41Bに例えば溶着することによって取り付けられ、それによって磁気検出部3が空間SB内に収納されるようになっている。なお、図示しないが、回路基板6を周壁41Bに取り付けた後にエポキシ樹脂を回路基板6の裏面側に流し込んで、磁気検出部3が収納された下ハウジング4Bの空間SB内に水や埃が浸入しないようにしてある。
【0032】
7は、回路基板6に固着された例えばコードからなる電気的接続部材であり、磁気検出部3と電気的に接続されている。この接続部材7の先端側は、ECU8と、計器9とに接続されており、磁気検出部3が出力した検出信号をECU8や計器9へ出力する。
【0033】
ECU8は、エンジンの点火時期や燃料噴射量などを制御するものであり、磁気検出部3の第1の磁気検出部31Aが出力する変速位置に応じた検出信号を受け取り、点火時期や燃料噴射量などを制御する。また、第1の磁気検出部31Aから受け取った変速位置のデータを計器9に送信する。
【0034】
計器9は、車両の走行速度やエンジン回転数やエンジン冷却水温などや、変速装置の変速位置を表示するものである。計器9は、ECU8が出力する変速位置のデータに基づいて変速位置を表示する。また、計器9は、磁気検出部3の第2の磁気検出部31Bが出力するニュートラルの検出信号を受け取りニュートラルを表示する。
【0035】
バッテリ10は、車両に搭載される鉛蓄電池であり、本実施形態では、電圧は12Vである。
【0036】
ECU8は、バッテリ10から供給される12Vの電源を、5Vにする安定化電源回路を備えており、第1の磁気検出部31Aを駆動する5Vの第1駆動電源を第1の磁気検出部31Aに供給するものである。
【0037】
計器9は、バッテリ10から供給される12Vの電源を、5Vにする安定化電源回路を備えており、第2の磁気検出部31Bを駆動する5Vの第2駆動電源を第2の磁気検出部31Bに供給するものである。
【0038】
次に、上記の様に構成された変速位置検出装置Aの作用について説明する。車両の運転者が変速装置のシフトレバーを操作することで、このシフトレバー操作に連動して前記シフトカムが回転する。このシフトカムの回転に伴って回転部材1が回転する。回転部材1が回転することによって、回転部材1と一体的に形成された磁石2が、磁気検出部3(第1、第2の磁気検出部31A、31B)上を回転する。
【0039】
磁気検出部3(第1、第2の磁気検出部31A、31B)は、磁石2の回転角度に応じた磁界の変化を検出する。本実施形態の場合、前記シフトカムの回転によって、「1速、ニュートラル、2速、3速、4速、5速、6速」と変速装置の変速位置が変化するものであり、第1の磁気検出部31Aが、磁石2の回転角度を検出することで、「1速、2速、3速、4速、5速、6速」を検出し、第2の磁気検出部31Bが、磁石2の回転角度を検出することで、「ニュートラル」を検出する。
【0040】
例えば、前記シフトカムの位置が、「2速」の場合、第1の磁気検出部31Aが、ECU8に変速位置が「2速」の検出信号を出力し、ECU8は、計器9へ変速位置のデータを出力し、計器9にて、変速位置が「2速」であることを表示する。
【0041】
また、前記シフトカムの位置が、「ニュートラル」の場合、第2の磁気検出部31Bが、計器9に「ニュートラル」の検出信号を出力し、計器9にて、変速位置が「ニュートラル」であることを表示する。
【0042】
以上のように構成したことによって、ECU8が故障した場合であっても、車両のニュートラル位置を検出する第2の磁気検出部31Bに電源を供給することができるので、計器9でニュートラルを表示することができる。
【0043】
次に本発明の第2実施形態を図3を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一及び相当箇所には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。第1実施形態では、第1の磁気検出部31Aは、ECU8から第1の駆動電源を供給されており、第2の磁気検出部31Bは、計器9から第2の駆動電源を供給されていたが、本実施形態では、計器9から第1、第2の磁気検出部31A、31Bに駆動電源を供給している。また、本実施形態では、安定化電源回路17を第1、第2の磁気検出部31A、31Bを実装した回路基板6に設けたものである。安定化電源回路17は、例えば、3端子レギュレータからなり、バッテリ10から供給される12Vの電圧を5Vの電圧に調整するものである。
【0044】
18は、ニュートラルを表示する発光ダイオードなどの光源を駆動する光源点灯用回路である。この光源点灯用回路18は、例えば、デジタルトランジスタであり、回路基板6に設けられている。なお、本実施形態では、磁気検出部3のアースは、計器9を介して接地している。
【0045】
以上の構成によって、安定化電源回路を計器9に設ける場合に比べて、第1、第2の磁気検出部31A、31Bに供給する駆動電源の経路を短くすることができ、外部要因による電圧の変動を受けにくくなる。また、磁気検出部3の検出精度は、駆動電源の変動により影響を受けるので、安定化電源回路17を回路基板6に実装したことによって、第1、第2の磁気検出部31A、31Bを回路基板6に実装した状態で、第1、第2の磁気検出部31A、31Bへ供給する駆動電源の電圧を最適な電圧に設定することができ、駆動電源のバラツキを抑え、検出精度の向上が図れる。
【0046】
次に本発明の第3実施形態を図4を用いて説明する。なお、前記各実施形態と同一及び相当箇所には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態の変速位置検出装置Aでは、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの前記記憶部に、前記検出データをあらかじめ書き込むプログラムという作業を、前記記憶部をプログラムモードとすることで行うことが可能である。
【0048】
このプログラムモードの切り替えは、電源ラインVLの電圧値、例えば7V以上の電圧入力にて自動的に切り替えられ、それと同時に磁気検出部31A、31Bの信号ラインSL1,SL2がプログラム信号ラインとなり、前記検出データは、信号ラインSL1,SL2を経由して、前記記憶部へと書き込まれる。
【0049】
しかし、安定化電源回路17を介する図3の構成とした場合には、電源ラインVLは常に5Vとなるため、プログラムモードに切り替えることができず、前記検出データをプログラムできない。
【0050】
また、例えば、第2の磁気検出部の信号ラインSL2の途中に回路網、例えば、光源点灯用回路18が存在する場合には、その回路の影響により、前記検出データを前記記憶部に送り込むことができない。
【0051】
そこで、図4で示すように、プログラム時のみ使用する専用端子として、例えば、安定化電源回路17の出力である電源ラインVLに、外部からの電源も接続できるよう、電源ラインVLと配線にて接続された電源ライン端子VTと、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの信号ラインSL1,SL2が、プログラムの際のプログラム信号を入力する役割を兼ねており、第1の磁気検出部31Aの前記記憶部の書き込み用端子として使用する信号ラインSL1と配線にて接続された信号ライン端子ST1、第2の磁気検出部31Bの前記記憶部の書き込み用端子として使用する信号ラインSL2と配線にて接続された信号ライン端子ST2を設け、これらの端子VT、ST1、ST2を使用することにより、前記問題点を解決し、更にプログラム後はオープン状態とすることで、通常使用において何ら支障の無い変速位置検出装置Aを提供する。
【0052】
図4の構成とした場合の具体的なプログラム手順を説明する。まず、図示しない外部のプログラム装置の電源とグランドを、電源ライン端子VTとグランドラインGLに接続し、更に第1、第2の磁気検出部31A、31Bの信号ライン端子ST1、ST2を前記プログラム装置の当該端子へ接続する。
【0053】
その後、プログラムモードとするために、プログラムに必要な所定の電源電圧として、例えば7Vを電源ライン端子VTに印加する。
【0054】
その後、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの信号ラインST1、ST2に、前記プログラム装置の当該端子より前記検出データを送信し、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの前記記憶部に前記検出データを書き込み、電源をオフし、プログラム作業を終了する。
【0055】
前記プログラム後の通常使用における配線について説明する。前記検出センサRの電源ラインVLとグランドラインGL、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの信号ラインSL1,SL2は、図3のごとく接続する。プログラム時に用いた電源ライン端子VLと、第1、第2の磁気検出部31A、31Bの前記記憶部の書き込み用端子として使用した信号ライン端子ST1、ST2は何も接続しないオープン状態とし、この配線の処理は端子、例えばリセプタクルを追加してコネクタに収納し、相手方となるコネクタの当該端子にはいずれにも接続させないこととする。以上により、通常動作をさせることができる。
【0056】
この方法の利点は、例えば組立工程では、配線をコネクタ付きで前記検出装置に組み込み、プログラムすることにより、特別な作業が発生せず、工数を低減できるところである。
【0057】
なお、各実施形態では、計器9が、第2の磁気検出部31Bに電源を供給していたが、本実施形態に限定されるものではなく、バッテリ10が、第2の磁気検出部31Bに電源を供給するものであってもよい。この場合、安定化電源回路を回路基板6に設けてバッテリ10の電圧を、12Vから5Vに調整すると良い。
【0058】
なお、本実施形態では、2つの磁気検出部(第1の磁気検出部31Aと第2の磁気検出部31B)を1つのパッケージ34に内蔵していたが、本実施形態に限定されるものではなく、各磁気検出部31A、31Bをそれぞれ別々のパッケージに収納してもよい。
【0059】
なお、磁気検出部3は、ホールICに限定されるものではなく、MR(磁気抵抗)素子等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
車両の変速装置の変速位置を検出する変速位置検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
A 変速位置検出装置
R 回転角度検出センサ
1 回転部材
2 磁石
3 磁気検出部
6 回路基板
8 制御装置(エンジンコントロールユニット)
9 計器
10 電源(バッテリ)
17 安定化電源回路
18 光源点灯用回路
31A 第1の磁気検出部
31B 第2の磁気検出部
GL グランドライン
SL1、SL2 信号ライン
ST1、ST2 信号ライン端子
VL 電源ライン
VT 電源ライン端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速装置の変速位置を操作する被検出体であるシャフトに連動して回動する回転部材と、前記回転部材とともに回動する磁石と、前記磁石が回転することによって前記磁石の磁界の強さを検出する磁気検出部と、この磁気検出部からの検出信号を受ける制御装置と、を備えた変速位置検出装置において、前記磁気検出部は、前記変速装置の変速位置を前記シャフトの位置から検出する第1の磁気検出部と前記変速装置のニュートラルを前記シャフトの位置から検出する第2の磁気検出部とを備え、前記第2の磁気検出部は、前記制御装置以外の他の装置から駆動電源が供給されることを特徴とする変速位置検出装置。
【請求項2】
前記第1の磁気検出部は前記他の装置から駆動電源が供給されることを特徴とする請求項1に記載の変速位置検出装置。
【請求項3】
前記第1、第2の磁気検出部を配設する回路基板を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の変速位置検出装置。
【請求項4】
前記他の装置が、計器であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の変速位置検出装置。
【請求項5】
前記他の装置が、バッテリであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の変速位置検出装置。
【請求項6】
前記回路基板に前記他の装置から前記第2の磁気検出部へ供給する前記駆動電源の電圧を調整する安定化電源回路を設けたことを特徴とする請求項3に記載の変速位置検出装置。
【請求項7】
前記安定化電源回路は、前記他の装置から前記第1の磁気検出部へ供給する前記駆動電源の電圧を調整することを特徴とする請求項6に記載の変速位置検出装置。
【請求項8】
前記回路基板に、検出値と前記回転部材の回転角度との関連する検出データを記憶する前記第1の磁気検出部及び前記第2の磁気検出部に内蔵の記憶部のプログラム時のみに使用する専用端子又は配線を設け、プログラム後は前記専用端子又は配線がオープンとなることを特徴とする請求項3に記載の変速位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149924(P2011−149924A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217731(P2010−217731)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】