説明

変速機

変速機は、第1軸(3)と、この軸(3)に回転可能に取付けられた第1歯車要素(13、16、17、21、22、25)と、第1軸(3)と一緒に回転するように第1歯車要素(13、16、17、21、22、25)を選択的にロックするように構成されたセレクタアセンブリ(29、31、33)と、第1軸(3)に対する第1歯車要素(13、16、17、21、22、25)のロック動作を緩衝するように構成された緩衝システム(200;300;・・・1300)を備えている。歯車要素(13、16、17、21、22、25)は、互いに相対回転するように構成された第1および第2部分(202、204;302、304;・・・1002、1004;1202、1204)と、相対回転運動を緩衝するための緩衝システム(200;300;・・・1000;1300)を備えている。歯車セレクタアセンブリ(29、31、33)は、次の動作モードから、軸(3)と一緒に回転するように歯車要素(13、16、17、21、22、25)を選択的にロックするように構成されている。この動作モードは、時計回りと反時計回りにおいて軸(3)と一緒に回転するように歯車要素(13、16、17、21、22、25)をロックする動作モードと、時計回りにおいて軸(3)と一緒に回転するように歯車要素(13、16、17、21、22、25)をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて軸(3)と一緒に回転するように歯車要素(13、16、17、21、22、25)をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードである。セレクタアセンブリ(29、31、33)は、軸(3)と一緒に回転するように歯車要素(13、16、17、21、22、25)をロックする動作を緩衝するように構成された緩衝システム(1100)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機、特にドッグ型変速機、変速機用歯車要素および歯車セレクタアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の慣用の単一クラッチ同期かみ合い式変速機の場合には、現在のギアを外して新しいギアを入れる前に、クラッチを操作することによって、エンジンやモータのような動力源から変速機を切り離す必要がある。新しいギアを入れる試みのときに、動力が切り離されていなければ、新しいギアを入れるための同期かみ合いが不可能であるかあるいは変速機の損傷および変速機におけるトルクスパイクの発生を心配してギアを入れなければならない。というのは、多くの場合、エンジン速度が新しいギアの速度に合っていないからである。慣用のギアボックスを有し、エンジンによって動力を供給される車のような自動車の場合、新しいギアレシオの選択は、一般的に、完了までに0.5〜1秒かかる。従って、例えば、高いギアを選択するとき、エンジンと変速機をクラッチで再び接続する前に、上記の時間遅れにより、エンジンは、新しいギアの速度に近づけるために、(その固有の慣性によって)その速度を低下させることができる。それによって、動力が再び加えられるときに発生するトルクスパイクの可能性が低下する。
【0003】
瞬時変速機は、現在のギアが動力下で切り離される前に、新しいギアを選択できるように形成されている。これらの変速機は、少なくとも1個の瞬時歯車セレクタ機構を備えている。この瞬時歯車セレクタ機構は一般的に、それに関連する回転可能に取付けられた歯車に関して次の4つの動作モードを有する。
両トルク方向でギアを完全に入れる(完全なギア入れ)、
両トルク方向でギアを外す(中立)、
前進トルク方向でギアを入れ、後退トルク方向でギアを外す、
前進トルク方向でギアを外し、後退トルク方向でギアを入れる。
【0004】
最後の2つのモードでは、離散的レシオギアボックスが負荷下でトルク中断なしに、レシオを瞬時にシフトアップまたはシフトダウンすることができる。或る実施の形態では、中立モードは必要でない。
【0005】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5(これら特許文献の内容は参照によって編入される)に記載された変速機のような、実質的に動力の中断なしにほとんど瞬時に新しいギアレシオを選択する変速機では、或るシフト条件下で新しいギアを入れるときに、大きなトルクスパイクが発生し得る。というのは、ギアに衝撃を与える負荷が60kNぐらいの大きさになり得るからである。
【0006】
トルクスパイクは、車両の乗員に聞こえかつ乗員が感じることができる衝撃波を、変速機を経て伝搬させる。衝撃波は、車の乗員にぎくしゃくした乗り心地を与え、変速機部品を摩耗させ、そして部品の故障を生じ得る。それにもかかわらず、車両においてこの種の変速機を使用することは非常に望まれる。なぜなら、多くのシフトタイプにとって、変速中の駆動力の損失がないからである。これは、車両を一層効率的にし、それによって燃料消費とエミッションが少なく、同時に車両の性能が高まる。なぜなら、車両が瞬時シフト中に目立つほど減速しないからである。
【0007】
特許文献2は、制御システムを使用することによって、トルクスパイク問題の解決に取り組んだ。この制御システムは、クラッチの入力側と出力側の相対回転運動によって新しいギアを入れるときに発生する大きなトルクスパイクを少なくとも部分的に吸収するために、シフトを行う前に車両クラッチ圧力を低下させる。
しかしながら、適切なこのシステムでさえも、公知の瞬時変速機は、かみ合い時に歯車と衝突するセレクタアセンブリの慣性によって大きな騒音を生じる。従って、このような変速機は、騒音、振動およびハーシュネス試験の許容限界を満足しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/099654号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/005868号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/005869号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/024261号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/026570号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/095140号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題の少なくとも幾つかを緩和する改良された変速機と歯車選択方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの様相によれば、第1軸と、この第1軸に回転可能に取付けられた第1歯車要素と、第1軸と一緒に回転させるために第1歯車要素を選択的にロックするように構成されたセレクタアセンブリと、第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するように構成された緩衝システムとを備えた変速機が提供される。
【0011】
緩衝システムは、ショックアブソーバと同様に、第1軸と一緒に回転させるために第1歯車要素をロックするセレクタアセンブリによって発生するトルクスパイクのエネルギーの大部分を吸収する。
【0012】
第1歯車要素がセレクタアセンブリによって第1軸と一緒に回転するようにロックされたときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの間で空動きを許容するように構成されていると有利である。発明者は、セレクタアセンブリと第1歯車要素の間の空動きが騒音を許容できるレベルに低下させる、すなわち通常の使用中騒音が自動車内で聞こえないということを発見した。これは、空動きが、初期係合によって衝撃を緩和させた後で第1軸と一緒に回転するように第1歯車をセレクタアセンブリによってロックさせる時間を増大するからである。発明者は、更に、特許文献2に記載された変速機のクラッチのスリップが、歯車要素の実際の係合部から遠く離れたところで起こり、しかも歯車要素が第1軸と一緒に回転するようにロックされた後で起こることを発見した。これに対して、本発明の緩衝システムは、係合部または係合部の隣で発生し、かつ初期係合が起こった後で第1歯車要素が第1軸と一緒に回転するようにロックされる前に、セレクタアセンブリによって第1歯車要素の係合を緩衝するように構成されている。
【0013】
セレクタアセンブリが第1歯車要素を駆動係合するように構成され、第1歯車要素がセレクタアセンブリによって駆動係合するときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転を許容するように構成されていると有利である。第1歯車要素がセレクタアセンブリによって駆動係合するときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きの大きさを制限するように構成されていると有利である。例えば、緩衝システムは、第1歯車要素がセレクタアセンブリによって駆動係合するときに、第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の相対回転の大きさを制限するように構成可能である。
【0014】
緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きに抵抗するための手段を備えていると有利である。例えば、緩衝システムは、弾性手段のような、第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の相対回転に抵抗するための手段を備えることができる。適当な弾性手段、例えばばね定数、すなわちスプリングレートの選択は、セレクタアセンブリと第1歯車要素の相対回転を制止する程度を決定する。弾性手段の使用は、発生する力の一部を吸収することによって、セレクタアセンブリによる第1歯車要素の係合を和らげる。第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きに逆らう手段は補強部材を備えていてもよい。この補強部材は、相対運動を一層早く制止し、特にゴムまたは類似の劣化し得る材料が弾性手段として使用されるときに、弾性手段の寿命を延ばす働きをする。
【0015】
セレクタアセンブリが第1歯車要素に係合した後で、緩衝システムが第1軸と第1歯車要素およびセレクタアセンブリの少なくとも一方との間の空動きを許容するように形成可能であると有利である。例えば、緩衝システムは、セレクタアセンブリが第1歯車要素に係合した後で、第1軸と第1歯車要素の少なくとも一部との間の相対回転を許容するように構成可能である。更に追加してあるいは代替的に、緩衝システムは、セレクタアセンブリが第1歯車要素に係合した後で、第1軸とセレクタアセンブリの少なくとも一部との間の相対回転を許容するように構成可能である。選択スリーブが第1軸に取付け可能であり、かつ第1軸と共に回転するように構成されていると有利である。
【0016】
第1歯車要素および/またはセレクタアセンブリが緩衝システムを備えることができると有利である。
【0017】
第1歯車要素は、相対回転運動するように構成された第1部分と第2部分を備えることができる。第1部分は、第1軸に回転可能に取付け可能であり、第2部分は、第1部分と相対的に制限された相対回転を行うように構成可能である。第1部分は、歯車を駆動するためにセレクタアセンブリによって選択的に係合可能である駆動構造体を備えることができる。第2部分は、他の歯車要素にかみ合うための歯かみ合い手段を備えることができる。例えば、歯かみ合い手段は、歯車の歯である。セレクタアセンブリが第1部分に駆動係合するときに、緩衝システムがセレクタアセンブリと歯車要素の第2部分との間の空動きを許容するように構成可能であると有利である。
【0018】
歯車セレクタアセンブリは、相対回転運動するように形成された第1部分と第2部分を備えていることができる。第1部分は、第1軸と一緒に回転するように固定可能であり、第2部分は、第1部分と相対的に制限された回転運動を行うように形成可能である。第2部分は、第1歯車要素に形成された駆動構造体と選択的にかみ合うための係合部材を備えることができる。係合部材が第1歯車要素に駆動係合するときに、減衰システムがセレクタアセンブリの第1部分と第1歯車要素の間の空動きを許容するように構成可能であると有利である。
【0019】
第1歯車要素および/またはセレクタアセンブリが、それらの第1部分と第2部分の相対回転運動に抵抗するための手段を備えることができると有利である。第1歯車要素および/またはセレクタアセンブリは好ましくは、それらの第1部分と第2部分の相対回転運動に抵抗するための弾性手段を備えている。第1部分と第2部分の相対回転運動に抵抗するための手段は、補強要素、例えば鋼球のような金属要素を備えることができる。弾性手段は、好ましくは、少なくとも1個のゴムブロックまたはばね要素を備えている。弾性手段が第1部分と第2部分の少なくとも一方を中立位置の方へ付勢するように構成可能であると有利である。
【0020】
緩衝システムが第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するためのクラッチ装置を備えることができると有利である。クラッチ装置が第1歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分に連結された第1クラッチ部材と、第1歯車要素またはセレクタアセンブリの第2部分に連結された第2クラッチ部材とを備え、セレクタアセンブリが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックするときに、クラッチ装置の第1部分と第2部分が相対回転運動するように構成されていると有利である。クラッチ装置は、好ましくは、複数の第1クラッチ部材と複数の第2クラッチ部材を備えている。第1クラッチ部材と第2クラッチ部材は、好ましくは交互に配置されている。クラッチ装置は、第1摩擦クラッチ部材と第2摩擦クラッチ部材を備えた摩擦クラッチによって構成可能である。
【0021】
セレクタアセンブリが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックするときに、クラッチ装置がスリップするように構成されていると有利である。スリップ個所は、セレクタアセンブリが第1歯車要素に係合するときに、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の相対回転が生じるように設定される。従って、歯車要素形状と変速機動作中に受ける負荷に従って、クラッチ装置によって伝達可能である適切なトルク値を設定することができる。例えば、車両の第1速の歯車要素の伝達可能である所望なトルク値は、第5速の歯車要素と異なるであろう。
【0022】
緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転位置に従ってクラッチ装置圧力を調節するための手段を備えることができると有利である。第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転位置に従ってクラッチ装置圧力を調節するための手段が、相対回転範囲の少なくとも一部について、相対回転運動の角度が増大するにつれてクラッチ圧力を高めるように構成可能であると有利である。これにより、セレクタアセンブリが第1歯車に係合した後で、クラッチ装置は、相対回転運動を制御可能に制限することができる。クラッチ装置圧力を調節するための手段は、液圧システム、弾性手段、カム面の相互作用あるいは類似手段によって構成可能である。例えば、第1歯車要素の第1部分と第2部分の一方は、カム部材に作用するように形成されたカム面を備えることができる。この場合、カム部材とカム面の相対回転運動が相対回転位置に従ってクラッチ部材の負荷を増大および/または減少するように、カム面がカム部材に作用する。初期係合の後で、時が経って、駆動トルクがもはやクラッチ部材の間の相対回転運動を生じなくなると、セレクタアセンブリは、第1軸と一緒に回転するように第1歯車をロックする。カム面は、好ましくは波状である。
【0023】
緩衝システムが第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するためのカムアセンブリを備えることができると有利である。カムアセンブリは、歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分と第2部分の一方と一緒に回転するように固定された第1カム部材と、歯車要素またはセレクタアセンブリの他方の部分と一緒に回転するように固定された第2カム部材を備え、カムアセンブリは、第1カム部材と第2カム部材の相互作用によって第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するように構成されている。各カム部材は、歯車要素またはセレクタアセンブリの一部と一体に形成可能であるかあるいは歯車要素またはセレクタアセンブリのそれぞれの部分に連結された付加的な要素であってもよい。第1カム面と第2カム面の相互作用が、歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分と第2部分の相対回転運動に抵抗するように構成されている。第1カム部材と第2カム部材が傾斜面を備え、この傾斜面が、カム面の相対回転時に互いに滑動または転動することによって相互作用するように構成されていると有利である。
【0024】
第1カム部材は、好ましくは、第2カム部材に対して制限された軸方向運動を行うように構成されている。例えば、第1カム部材は、歯車要素の第1部分と第2部分の間に位置する分離要素であってもよい。この分離要素は、第1カム部材と第2カム部材の相対回転位置に従って軸方向に移動可能である。カム装置は、第1カム部材と第2カム部材の間の増大する分離に抵抗するように構成された弾性手段を備えていてもよい。緩衝の程度は、カム面の傾斜と弾性部材の弾性によって決定される。
【0025】
緩衝システムが液体緩衝システム、好ましくは液圧緩衝システムであると有利である。第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転角度が増大するときに、緩衝液体が相対回転に逆らってエネルギーを吸収するように、液体緩衝システムが構成されていると有利である。例えば、第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転角度の増大が、エネルギーを吸収して最後に相対回転を制止する液体圧力を高めるように、緩衝システムを構成することができる。第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転角度が増大するときに、液体緩衝システムが圧縮領域の外へ緩衝液体を流すことができる手段を備えることができると有利である。変速機が少なくとも第1歯車要素とセレクタアセンブリを実質的に取り囲みかつ油のような潤滑液を含む囲壁を備えていると有利である。潤滑液が緩衝作用を生じるために液体緩衝システム内に供給可能であると有利である。液体緩衝システムが潤滑液を囲壁に排出して戻すように構成されていると有利である。緩衝液体の別個の供給部が液体緩衝システムに、例えば閉鎖系の態様で、緩衝液体を供給可能であると有利である。
【0026】
液体緩衝システムが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するように構成された少なくとも1個のピストン装置を備えていると有利である。1個のピストン装置または各ピストン装置が、時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するよう第1歯車要素をロックする動作を緩衝するように構成されていると有利である。1個のピストン装置または各ピストン装置が、ピストン部材を備えていると有利である。このピストン部材は、歯車要素がセレクタアセンブリによって係合するときに、液体に圧力を加えるように構成されている。液体緩衝システムが、ピストン装置室内の緩衝液体を圧縮するときに、緩衝液体によるピストン部材の迂回または通過を可能にする凹部、通路、溝、穴またはその類似ものを備えていると有利である。作動液体がピストン部材を迂回する割合を制御することは、緩衝システムの緩衝効果の決定において重要な要因である。液体緩衝システムが、歯車要素からの緩衝液体の排出を可能にする出口を備えていると有利である。
【0027】
1個のピストン部材または各ピストン部材が湾曲した経路に沿って移動するように構成されていると有利である。経路は、ほぼ円形またはほぼ円の一部の形であり、そして歯車要素の第1部分とほぼ同軸に形成されていると有利である。1個のピストン部材または各ピストン部材は、好ましくは、スタート位置から終端位置まで20〜180°の角度にわたるほぼ弓形の経路に沿って移動するように構成されている。液体緩衝システムが緩衝システム内への作動液体の流れを制御するための弁装置を備えていると有利である。弁装置が各ピストン部材の運動に応答して液体入口を閉鎖するように構成されていると有利である。液体緩衝システムが装置に作動液体を再充填することによって1個のピストン部材または各ピストン部材をスタート位置に移動させるように構成されていると有利である。
【0028】
液体緩衝システムが第1ピストン装置と第2ピストン装置を備え、第1ピストン装置が第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を時計回りにおいて緩衝するように構成され、第2ピストン装置が第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を反時計回りにおいて緩衝するように構成されていると有利である。第1ピストン装置と第2ピストン装置がそれぞれ第1ピストン部材と第2ピストン部材を備え、セレクタアセンブリがそれに形成された駆動構造体に係合するときに、両ピストン部材が歯車要素の第2部分によって駆動されるように構成されていると有利である。第1ピストン部材は、トルク方向が時計回りであるときに駆動され、第2ピストン部材は、トルク方向が反時計回りであるときに駆動される。
【0029】
液体緩衝システムは、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するための容積型ポンプ装置を備えていてもよい。例えば、液体緩衝システムは、液圧切換えシステムに従って、軸と一緒に回転するように歯車要素をロックさせるためのジェロータ(gerotor)ポンプ装置を備えることができる。
【0030】
緩衝システムが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するための妨害手段を備えていると有利である。妨害手段は、歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分と第2部分の間の相対回転運動を制限するために相互作用するように構成された第1妨害部材と第2妨害部材を備え、そして緩衝の程度を制御するための手段を備えている。第1および第2妨害部材の少なくとも一方が、歯車要素の第1部分と第2部分の相対回転位置に従って、第1部分と第2部分の間の減速の程度を制御するように構成された妨害面を備えていると有利である。妨害部材が相対回転角度の増大につれて減速の程度を高めるように構成可能であると有利である。妨害システムは、好ましくは、ゼネバ歯車システムを備えている。
【0031】
クラッチ装置、カムアセンブリ、妨害システムおよび液体緩衝システムは、それらが第1歯車要素内に設けられている場合と同様な緩衝作用あるいはそれに加えてあるいはその代わりに歯車要素内に配置されている場合と同様な緩衝作用を達成するために、そのすべてをセレクタアセンブリ内に設けることができることに留意すべきである。更に、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの両方に設けられているときには、用途にとって所望な減衰特性を達成するために、緩衝システムの類似の実施の形態または異なる実施の形態を、第1歯車要素とセレクタアセンブリの各々に設けることができる。
【0032】
変速機が瞬時変速機であると有利である。
【0033】
セレクタアセンブリは、次の動作モードから、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードである。
【0034】
歯車セレクタアセンブリは、好ましくは、第1歯車要素に関して次の動作モードを選択するように構成され、この動作モードにおいて第1歯車要素が時計回りまたは反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するようにロックされない。
【0035】
変速機が第1軸に回転可能に取付けられた第2歯車要素を備え、セレクタアセンブリが次の動作モードから、第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードである。
【0036】
セレクタアセンブリは、好ましくは、第2歯車要素に関して次の動作モードを選択するように形成され、この動作モードにおいて第2歯車要素が時計回りまたは反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するようにロックされない。
【0037】
第2歯車要素が第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作を緩衝するための緩衝システムを備えていると有利である。
【0038】
歯車セレクタアセンブリは、係合部材の第1および第2セットと、係合部材の第1セットを作動させるための第1アクチュエータと、係合部材の第2セットを作動させるための第2アクチュエータとを備えている。変速機がモードから選択するために、係合部材の第1セットを作動させるための第1アクチュエータ装置と、係合部材の第2セットを作動させるための第2アクチュエータ装置とを備えていると有利である。セレクタアセンブリが第1および第2アクチュエータ部材と、第1アクチュエータと第1アクチュエータ部材間の第1弾性変形可能手段と、第2アクチュエータと第2アクチュエータ部材間の第2弾性変形可能手段を備えていると有利である。弾性手段は、係合していない歯車要素の方への係合部材の動きを付勢するように構成されている。
【0039】
変速機が第1軸に回転可能に取付けられた第3歯車要素と、第1軸と一緒に回転するように第3歯車要素を選択的にロックするための第2セレクタアセンブリを備えていると有利である。第2セレクタアセンブリが上記の第1セレクタアセンブリの構造に類似していると有利である。第3歯車要素が上記構造に類似する緩衝システムを備えていると有利である。
【0040】
変速機が1個のセレクタアセンブリまたは各セレクタアセンブリの第1および第2アクチュエータの作動を制御するために制御システムを備えていると有利である。制御システムは好ましくは電子制御システムである。例えば、制御システムは、セレクタアセンブリの作動を制御するためにプログラミングされた処理装置を備えている。これは、適切なシーケンス制御によって起こる変速機のロックアップを防止することができる。
【0041】
1個のセレクタアセンブリまたは各セレクタアセンブリは、駆動力が伝達されるときに、係合部材の第1および第2セットの一方がかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の他方のセットが負荷されない状態にあり、負荷されていないセットが新しい歯車要素に係合するために動くことができるように、構成されている。
【0042】
少なくとも第1および第2セレクタアセンブリを有する変速機と、少なくとも2個のセレクタアセンブリの作動を必要とするシフトのために、制御システムは、新しい歯車要素にかみ合わせるために他のセレクタアセンブリを作動させる前に、現在かみ合っている歯車要素とのかみ合いを解除するように負荷されていない係合部材セットを動かすよう構成可能である。これは、1個よりも多いセレクタアセンブリの作動を必要とするシフト中にトルク逆転が起こるときに、変速機のロックアップを避けるための重要な要因である。というのは、現在の歯車要素との係合を解除するように係合部材のセットを移動させるからである。もしそうしないと、トルク逆転が起これば、現在の歯車要素が変速機をロックするであろう。例えば、第2歯車要素が第2歯車要素に駆動係合する係合部材の第2セットと一緒に(完全に係合して)加速方向および減速方向に回転するようにロックされていれば、第1セットは、負荷されていない状態にある。第2セレクタアセンブリが第3歯車要素に係合する前に、制御システムは、第2歯車要素との係合を解除するように係合部材の第1セットを動かすために、第1アクチュエータを作動させる。従って、第2歯車要素は、もはや完全に係合しておらず、加速方向と減速方向の一方にのみ回転するようにロックされ、他の方向ではロックされない。制御システムは、係合部材の相補的なセットを有する第3歯車要素を選択するために第2セレクタアセンブリを作動させ(トルクの方向を一致させるために加速方向または減速方向)一方、第2歯車要素は、第1歯車セレクタアセンブリによってまだかみ合っており、従って瞬時のギアシフトを行う。シフト中トルク逆転が起こっても、変速機はロックアップしない。なぜなら、両歯車要素が同じ方向に回転するようにロックされ、他の方向でロックされていないからである。
【0043】
制動力が伝達されるときに、係合部材の第1セットがかみ合った歯車要素に係合し、係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあり、駆動力が伝達されるときに、係合部材の第2セットがかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあるように、1個のセレクタアセンブリまたは各セレクタアセンブリが構成可能であると有利である。
【0044】
第1歯車要素と第2歯車要素の間で変速を行うために、現在の歯車が係合部材の他のセットによってまだかみ合っている間に、第1歯車セレクタアセンブリが、かみ合っていない歯車要素と駆動係合するように第1歯車セレクタアセンブリの係合部材の負荷されていないセットを動かすように構成されていると有利である。従って、第1歯車セレクタアセンブリは、同時にまたは少なくとも一時的に第1軸と一緒に回転するように第1および第2歯車要素を選択的にロックするように構成されている。一般的に、これは、シフト中非常に短い時間でしか起こらない。なぜなら、新しい歯車が選択されたときに、負荷された要素セットが負荷されなくなり、制御システムが歯車要素から要素セットを係合解除し、新しい歯車要素に係合するよう動かすように構成されているからである。これは瞬時ギアシフトである。
【0045】
変速機は、好ましくは、少なくとも3個の歯車セレクタアセンブリを備えている。各歯車セレクタアセンブリは、好ましくは第1歯車セレクタアセンブリに似ている。実用可能なあらゆる数の歯車セレクタアセンブリを変速機に設けることができる。一般的に、各歯車セレクタアセンブリは、軸と一緒の回転のために2個の歯車要素を選択的にロックするように構成されている。一般的に、回転可能に取付けられた各歯車要素は、第1軸と第2軸の間で駆動力を伝達する歯車列の一部を形成する。変速機は、好ましくは3〜20個の歯車列を有し(自動車は4〜6個の歯車列プラス後退歯車を有する傾向があり、大型トラックは、約12〜20個の歯車列プラス後退歯車を有する傾向がある)、更に好ましくは4〜8個の歯車列を有する。例えば、第1歯車要素は、第2軸に固定された第4歯車を有する第1歯車列の一部である。第2歯車要素は、第2軸に固定された第5歯車を有する第2歯車列の一部であり、そして第3歯車要素は、第2軸に固定された第6歯車を有する第3歯車列の一部である。
【0046】
セレクタアセンブリによって係合可能である各歯車要素が上記のもの似た緩衝システムを備えていると有利である。
【0047】
本発明の他の様相に従い、変速機が回転可能な第1および第2軸と、一方の軸から他方に軸に駆動力を移動させるための手段を備え、この手段が第1軸に回転可能に取付けられた第1および第2歯車要素を備え、かつこの手段に形成された駆動構造体を有し、変速機が更に、第1軸と第1歯車要素の間および第1軸と第2歯車要素の間でトルクを選択的に伝達するための歯車セレクタアセンブリと、アクチュエータシステムを備え、このセレクタアセンブリが第1および第2歯車要素に係合および係合解除するように動くことができる係合部材の第1および第2セットを備え、駆動力が伝達されるときに、係合部材の第1および第2セットの一方がかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の他方のセットが負荷されていない状態にあるように、歯車セレクタアセンブリが構成され、アクチュエータシステムが係合部材の第1セットの作動を制御するための第1アクチュエータ装置と、係合部材の第2セットの作動を制御するための第2アクチュエータ装置を備え、アクチュエータシステムが変速を行うために、負荷されていない係合部材のセットをかみ合っていない歯車要素に駆動係合するように動かすよう構成され、アクチュエータシステムが第1軸に対する少なくとも第1歯車要素のロック動作を緩衝するように構成されている。
【0048】
緩衝システムが第1軸に対する第1および第2歯車要素のロック動作を緩衝するように構成されていると有利である。緩衝システムが上記の構造に従って構成されていると有利である。
【0049】
制動力が伝達されるときに、係合部材の第1セットがかみ合った歯車要素に係合し、係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあり、駆動力が伝達されるときに、係合部材の第2セットがかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあるように、セレクタアセンブリが構成可能であると有利である。
アクチュエータアセンブリは、かみ合った歯車から係合部材の負荷されたセットを係合解除せずに、かみ合っていない歯車要素の方へ係合部材の負荷されたセットを付勢するように構成されている。
【0050】
係合部材の第1および第2セットが使用中第1軸と一緒に回転するように構成されていると有利である。好ましくは、第1軸が入力軸であり、第2軸が出力軸であり、入力軸から出力軸に駆動力が移動させられる。
【0051】
好ましくは、係合部材の第1および第2セットが第1および第2歯車要素に係合するときに、加速と減速の間を動くときのバックラシュが4°以下であるように、セレクタアセンブリが構成されている。
【0052】
好ましくは、第1および第2歯車要素の駆動構造体は、それぞれ、ドッグの第1および第2グループからなっている。例えば、ドッグの第および第2グループは、それぞれ、2〜8個のドッグからなり、それぞれ第1と第2の歯車上に均等に分配配置されている。好ましくは、ドッグの第1および第2グループは、それぞれ、2〜4個のドッグ、更に好ましくは3個のドッグからなっている。
【0053】
係合部材の第1および第2セットは、好ましくは、2〜8個の部材、更に好ましくは2〜4個の部材、更に好ましくは3個の部材からなっている。
【0054】
第1軸がキー溝を備え、係合部材の第1および第2セットがキー溝に沿って軸方向にスライドできるように、かつ係合部材のセットの位置を半径方向において制止するように、キー溝が構成されている。キー溝の横断面は、好ましくはT字形、細長い穴形またはあり溝形である。
【0055】
アクチュエータアセンブリは、好ましくは、少なくとも1個の弾性変形可能な手段を備えている。この手段は、係合部材が負荷されていない状態にあるときに、係合部材の第1および第2セットの少なくとも一方を第1および第2歯車要素に係合するように動かすよう構成されている。1個の弾性変形可能な手段または各々の弾性変形可能な手段は、係合部材が歯車要素の駆動係合するときに、係合部材の第1および第2セットの少なくとも一方を第1および第2歯車要素の方に付勢するように構成されている。
【0056】
変速機は、更に、第1軸に取付けられた第3および第4歯車と、第1軸と第2軸の間で付加的なギアレシオを提供するための第2セレクタアセンブリを備えている。
【0057】
本発明の他の様相では、互いに相対回転するように構成された第1および第2部分を備えた変速機用歯車要素と、相対回転運動を緩衝するための緩衝システムが提供される。
【0058】
歯車要素が上記の二部分型歯車要素の構造に従って構成されていると有利である。
【0059】
第1および第2の部分の一方が歯車セレクタアセンブリに係合するように構成された係合構造体を備え、他方の部分が他の歯車要素に係合するための手段を備えていると有利である。例えば、他の部分は、他の歯車要素に係合するように構成された歯車の歯を備えている。この他の歯車要素は、一般的には本発明による歯車要素ではない。
【0060】
第1部分と第2部分の少なくとも一方は、ほぼ環状であるかあるいはほぼ環状部分を備えており、そして第1部分と第2部分は、好ましくは同軸に配置されている。
【0061】
緩衝システムが第1部分と第2部分の間で達成可能な相対回転運動の角度を制限するための次の手段を少なくとも一つ備え、この手段が妨害手段と、弾性手段と、クラッチ装置と、カムアセンブリと、液体緩衝システム、好ましくは液圧緩衝システムであると有利である。
【0062】
本発明の他の様相では、変速機用歯車セレクタアセンブリが次の動作モードから、軸と一緒に回転するように歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて軸と一緒に回転するように歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて軸と一緒に回転するように歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードであり、セレクタアセンブリが軸と一緒に回転するように歯車要素をロックする動作を緩衝するように構成された緩衝システムを備えている。
【0063】
歯車セレクタアセンブリが上記のセレクタアセンブリの構造に従って構成されていると有利である。
【0064】
相対回転運動するように構成された第1部分と第2部分と、歯車要素に選択的に係合するために互いに独立して動くように構成された係合部材の第1セットと第2セットとを備え、第1部分が軸に取付けられるように構成され、第2部分が係合部材の第1セットと第2セットを支持していると有利である。係合部材の第1セットと第2セットは、第2部分に沿って軸方向に動くことができる。
【0065】
次に、添付の図を参照して、本発明の実施の形態を一例として説明する。図において、類似の参照文字は、均等な特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による変速機の全体構造の断面図である。
【図2a】歯車の側部におけるドッグのグループの配置を示す概略図である(見やすくするために歯は示していない)。
【図2b】空動き機構を有する歯車を示す図である。
【図2c】空動き機構を有する歯車を示す図である。
【図2d】空動き機構を有する歯車を示す図である。
【図2e】空動き機構を有する歯車を示す図である。
【図3】セレクタ機構と歯車の側部のドッグとの相互作用を示す概略図である。
【図4】セレクタ機構の係合要素を示す斜視図である。
【図5a】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図5b】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図5c】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図5d】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図5e】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図6】セレクタ機構の動作を図式的に示す。
【図7a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図7b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図7c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図7d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図8a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図8b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図8c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図9a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図9b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図9c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図9d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図10a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図10b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図10c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図10d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図11a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図11b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図11c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図11d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図12a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図12b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図12c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図12d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図13a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図13b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図13c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図13d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図14a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図14b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図14c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図14d】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図15a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図15b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図16a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図16b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図16c】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図17a】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【図17b】入力軸および/またはセレクタ機構に回転可能に取付けられた歯車に組み込まれた代替的な空動き機構設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、出力軸1と、入力軸3と、入出力軸3、1の間で駆動力を伝達するように構成された第1、第2、第3、第4、第5、第6歯車列(またはギアレシオ)5、7、9、11、12、14(ファースト、セカンド、サード、フォース、フィフスおよびシックスス)を備えた変速機を示している。第1歯車列5は、軸受を介して入力軸3に回転可能に取付けられた第1歯車13と、出力軸1に固定されかつ第1歯車13にかみ合っている第2歯車15とからなっている。第2歯車列7は、出力軸3に回転可能に取付けられた第3歯車17と、入力軸1に固定されかつ第3歯車17にかみ合っている第4歯車19とからなっている。第3歯車列9は、入力軸3に回転可能に取付けられた第5歯車21と、出力軸1に固定されかつ第5歯車21にかみ合っている第6歯車23とからなっている。第4歯車列11は、入力軸3に回転可能に取付けられた第7歯車25と、出力軸1に固定されかつ第7歯車25にかみ合っている第8歯車27とからなっている。第5歯車列12は、入力軸3に回転可能に取付けられた第9歯車16と、出力軸1に固定されかつ第9歯車16にかみ合っている第10歯車18とからなっている。第6歯車列14は、入力軸3に回転可能に取付けられた第11歯車22と、出力軸1に固定されかつ第7歯車25にかみ合っている第12歯車24とからなっている。
【0068】
更に、第1、第2および第3セレクタ機構29、31、33が入力軸3に取付けられている。各セレクタ機構29、31、33は、入力軸3と一緒に回転するように入力軸3に回転可能に取付けられた歯車を選択的にロックすることにより、歯車列を介して入力軸3と出力軸1の間で駆動力を選択的に伝達するように構成されている。第1セレクタ機構29は、入力軸3と一緒に回転するように、ファーストギアレシオの第1歯車13と、セカンドギアレシオの第3歯車17を選択的にロックするように構成されている。第2セレクタ機構31は、入力軸3と一緒に回転するように、サードギアレシオの第5歯車21と、フォースギアレシオの第7歯車25を選択的にロックするように構成されている。第3セレクタ機構31は、入力軸3と一緒に回転するように、フィフスギアレシオの第9歯車16と、シックススギアレシオの第11歯車22を選択的にロックするよう構成されている。
【0069】
歯車は、歯車セレクタ機構にかみ合っているときは、入力軸3と一緒に回転するようにロックされている。従って、第3歯車列9の場合、第2歯車セレクタ機構31が第5歯車21にかみ合い、第1および第3歯車セレクタ機構29、33が中立位置にある(歯車がかみ合っていない)ときには、入力軸3と出力軸1の間で第3歯車列9を介して駆動力が伝達される。
【0070】
各セレクタ機構29、31、33は、類似しており、そして類似の方法で入力軸3に取付けられている。次に、第1歯車セレクタ機構29の構造と、それが第1および第3歯車13、17に選択的にかみ合う方法について説明する。一般的な構造と作動原理は、第2および第3歯車セレクタ機構31、33とそれらの各歯車に適用可能である。
【0071】
歯車セレクタ機構29は、第1および第3歯車13、17に設けられた駆動構造体20に係合するように配置されている。各歯車13、17の駆動構造体20は、ドッグのグループからなっている。類似の駆動構造体が第5、第7、第9および第11の歯車21、23、28、32に設けられている。
【0072】
第1ドッググループ20は、第1歯車13の一方の側に設けられている。ドッグは、好ましくは第1歯車と一体に形成されているが、これは必須ではない。第1ドッググループ20は、3個のドッグからなり、このドッグは、歯面の周りに周方向に均等に配置されている、すなわち一対のドッグの中央の間の角度は、約120°である(図2a、3参照)。第2ドッググループ20は、3個のドッグからなり、同様に第3歯車17の一方の側に配置されている。3個のドッグが使用される理由は、この配置構造が大きな係合ウインドウを提供することにある。この係合ウインドウは、係合要素を受け入れるための、ドッグの間のスペースである。大きな係合ウインドウは、駆動力を歯車13、17に伝達する前に、この歯車を完全に係合させるために、第1歯車セレクタ機構29に大きなチャンスを提供する。もし、部分的にのみ係合したときに、第1歯車セレクタ機構29が歯車を駆動すれば、結果としてドッグおよび/または第1歯車セレクタ機構29を損傷させることになる。
【0073】
第1および第3歯車13、17は、入力軸3上に互いに離して設けられ、そして第1および第2ドッググループを有する側が互いに向き合うように構成されている。
【0074】
図2b〜2fは、空動き機構200を備えた第1および第3歯車13、17を示している。この空動き機構は、第1および第3歯車13、17と入力軸3および/またはセレクタアセンブリ21との間の相対回転運動を制限するように構成されている。この構成は、制限された相対回転運動がセレクタ機構29と新しい歯車13、17との係合を優しくし、それによって発生する騒音を許容レベルに低下させる。相対回転運動は、入力軸3と共に回転させるために歯車13、17をロックさせる時間を効果的に増大させる。
【0075】
第1および第3歯車13、17は、外側環状部分202と内側環状部分204を備えている。内側部分204は、外側部分204と同軸に配置され、かつ外側部分と相対的に制限された回転運動を行うように構成されている。外側部分202は、周辺部分に形成された歯を有し、この歯は、出力軸3に固定された対応する歯車にかみ合っている。内側部分202は、軸受を介して入力軸3上に回転可能に取付けられ、かつその一方の端面にドッグ20を備えている。
【0076】
外側部分202は、環状凹部206を有する。この凹部206内には、少なくとも1個の弾性手段208、好ましくは多数の弾性手段208が設けられている。この弾性手段は、外側部分202と内側部分204の相対回転運動に逆らうように構成されている。弾性手段208は、好ましくは1個またはそれ以上のゴムブロックからなっているが、代替的な材料を使用することができる。好ましくは一連のゴムブロックが使用される。各ブロックは、異なる弾性を有することができ、第1部分と第2部分の間で拘束されている。例えば、幾つかのゴムブロックがブロックの剛性を変更するために空洞を有していてもよい。この場合、内側歯車部分204が約340°の角度にわたって外側部分202と相対的に時計回りおよび反時計回りに動くことができる。しかしながら、実際には、弾性手段208の存在によって、運動が可能な最大運動の或る割合に制限される。この相対回転運動は、弾性手段208によって制限される。従って、ドッグ20が歯車セレクタ機構29に係合するときに、衝撃が外側部分202と内側部分204の相対回転運動を生じ、それによって弾性手段208を圧縮する。これは、衝撃騒音を車両の運転手に聞こえないようにあるいは気持ちの良いレベルに低下させるように低減する。弾性手段208は、その圧縮限界に達しそれ以上圧縮できなくなるまで圧縮される。これは、所望な弾性応答性を達成するために凹部206の容積を制御することによって左右される。変速機の動作中、弾性手段208は、その位置を中立位置に戻そうとする。
【0077】
ゴムブロックを使用する代わりに、弾性手段は、1個またはそれ以上のばねからなっていてもよい。更に、ゴムブロックは、剛性を高めるために(鋼のような)金属フレームまたはインサートを含んでいてもよい。
【0078】
第5、第7、第9および第11歯車21、25、16、22は、第1および第3歯車13、17と同様に構成されている。しかしながら、幾つかの変速機では、選択可能なすべての歯車に空動き機構200を設ける必要がないかもしれない。というのは、幾つかのギアレシオ/シフト状態の場合、例えば幾つかの高いギアでは、発生するトルクスパイクが既に許容騒音限度、許容振動限度および許容ハーシュネス限度内にあるからである。このような状況では、緩衝されない歯車が慣用のタイプであり得る。
【0079】
第1歯車セレクタ機構29は、スリーブ34、係合要素35、36の第1および第2セットおよびアクチュエータアセンブリ38を備えている。
【0080】
第1歯車セレクタ機構29は、第1および第3歯車13、17の間において入力軸3に取付けられている。係合要素35、36の第1および第2セットは、スリーブ34上に取付けられている。係合要素35の第1セットは、3個の要素28からなり、この要素は、その基部が内側に向き、かつ要素28の軸線が互いにかつ入力軸3に対してほぼ平行になるように、入力軸3の周りに均等に分配配置されている。係合要素36の第2セットは、3個の要素30からなっている。この要素は、同様に入力軸3の周りに配置されている。係合要素35、36のセットは、入力軸3と共に回転し、かつアクチュエータアセンブリ38の切換え動作に応答してスリーブ34、ひいては入力軸3に沿って軸方向にスライドできるように構成されている。これを容易にするために、スリーブ34は、各係合要素28、30を有するその湾曲した表面に形成された6つのキー溝41を備えている。この係合要素は、その基部に相補形状を有する。キー溝41は、ほぼT字形の断面形状を有し、それによって要素は、キー溝41内で半径方向と接線方向に拘束され、軸方向には拘束されていない(図2参照)。その代わりに、キー溝41は、半径方向において要素を拘束するために、細長い溝またはあり溝状の断面形状を有していてもよい。
【0081】
要素は、好ましくは、負荷領域が半径方向に大きく離れていることによる大きな片持ち作用を防止するために、入力軸3に接近するように形成されている。それによって、構造的な破壊の可能性が低下する。
【0082】
係合要素セット35、36の配置は、特定のセットの要素が交互のキー溝41内に位置し、かつセット35、36がスリーブ34に沿ってスライドできるように行われている。各セットの係合要素は、環状部材100によって互いに固定連結され、一体として動く。各セット35、36は、他のセットとは関係なく動くことができる。環状部材100は、その全周にわたって延在する外側湾曲表面に形成された溝102を有する。係合要素の第1セット35の係合要素28は好ましくはその環状部材100と一体に形成されているがしかし、これは重要ではない。係合要素28は、環状部材100の周りに均等に分配配置されている。係合要素の第2セット36は、3個の要素30からなっている。この要素は、第2環状部材100によって類似の固定配置方法で保持されている。係合要素の第1および第2のセット35、36が相対的に運動するときには、第1係合要素セット35の環状部材100は、第2係合要素セット36上を移動し、第2係合要素セット36の環状部材100は、第1係合要素セット35上をスライドする。
【0083】
第1係合要素セット35の各係合要素28は、第1歯車13に取付けられたドッグ20の第1グループに係合するように配置された第1端部28aと、第3歯車17上のドッグ20の第2グループに係合するように配置された第2端部28bを有する。第1および第2端部28a、28bは、一般的には、同じ形状を有するが左右逆であり、例えば第1端部28aは、第1歯車13の減速中(後退トルク方向)ドッグ20の第1グループに係合するように構成され、第2端部28bは、第3歯車17の加速中(前進トルク方向)ドッグ20の第2グループに係合するように構成されている。第2係合要素セット36の各係合要素30は、第1端部30aが第2歯車15の加速中にドッグ20の第1グループに係合するように構成され、かつ第2端部30bが第3歯車17の減速中ドッグ20の第2グループに係合するように構成されていることを除いては、同じように構成されている。
【0084】
係合要素の第1および第2の両セット35、36が歯車に係合するとき、歯車が加速されていようと減速されていようと、入力軸3と出力軸1の間で駆動力が伝達される。
【0085】
各係合要素の第1および第2端部28a、30a、28b、30bは、ドッグ20に係合するための係合面43、傾斜面45、端面42を有し、そして肩部44(図4に図式的に示した)を有していてもよい。端面42は、歯車の側部に接触することによって係合要素28、30の軸方向運動を制限する。係合要素28、30が回転して係合するように係合面43は、ドッグの側部20aに対して相補的に角度を付けることができ、それによって面と面の接触が生じ、摩耗を減少する。各傾斜面45は、好ましくはらせん状に形成され、端面42から傾斜している。傾斜面45の傾斜角度は、端面42から最も遠い傾斜面のエッジと端面42の平面との間の縦方向距離がドッグ20の高さよりも大きくなるように定められている。これにより、ドッグ20に係合する方へ傾斜面45を動かす、係合要素28、30とドッグ20の間の相対回転運動が存在するときに、変速機は、ロックアップしない。ドッグ20は、係合要素28、30の側部に衝突せずに傾斜面45に係合する。更に、ドッグ20と係合要素28、30の間に相対回転運動が発生するので、ドッグ20が傾斜面45を越えてスライドし、傾斜面のらせん状表面が係合要素28、30を、ドッグ20から離れるように入力軸3に沿って軸方向に動かし、従って変速機は、ロックアップしない。
【0086】
歯車セレクタ機構の構造は、新しいギアを選択するときに発生する変速機のロックアップを生得的に防止するようになっている。
【0087】
第1および第2係合要素セット35、36が図1に示すように交互に配置されているとき、第1係合要素セット35の第1端部28aの係合面43は、第2係合要素セット36の第1端部30aの係合面43に隣接している。第1および第2係合要素セット35、36が歯車に完全に係合しているとき、ドッグ20は、隣接する係合面43の各々の対の間に位置している。ドッグ20と要素の端部の寸法は、好ましくは、歯車が加速から減速へあるいはその逆に動くときに、歯車のバックラッシュがほとんどないかまたは全くないようにするために、加速要素の係合面43と減速要素の係合面43の間で各ドッグがほとんど動かないように選定されている。
【0088】
アクチュエータアセンブリ38は、第1および第2係合要素セット35、36の動きを制御する。アセンブリ38は、第1および第2アクチュエータ46、64と、第1および第2アクチュエータ部材48、58を備えている。第1および第2アクチュエータ46、64は、力発生器アクチュエータであり、好ましくは電気システム、例えば電気機械式システムまたは電気油圧式システムの一部である。第1および第2アクチュエータ部材48、58は好ましくは独立して制御可能なフォークの形をしている。第1係合要素セット35の運動は、第1アクチュエータ46によって制御される第1アクチュエータ部材48の運動によって制御される。第2係合要素セット36の運動は、第2アクチュエータ64によって制御される第2アクチュエータ部材58の運動によって制御される。従って、第1および第2係合要素セットは、両係合要素セットの動作を制御するためにアクチュエータを1個しか備えていない特許文献1のシステムのように、互いに異なっている公知のシステムとは、全く関係なく動く。公知のシステムによって係合要素セットは、相対的に動くことができるが、運動を生じるためにアクチュエータが1個しか設けられていないので、各係合要素セットの動作は相互に依存する。
【0089】
各アクチュエータ部材48、58は、その各係合要素セットの溝102の周りに約180°にわたって延在するように構成され、かつこの溝102内に位置する半環状部分を備えている。各係合要素セット35、36は、その各アクチュエータ部材48、58と相対的に回転可能であり、かつ環状部材100に力を加えるアクチュエータ部材48、58によって入力軸3に沿って軸方向に動かされる。
【0090】
アクチュエータアセンブリ38は、随意的に、コイルばね(図示せず)のような弾性手段を備えることができる。ばねは、第1および第2係合要素セットが歯車に駆動係合し、動くことができないときに、第1および第2係合要素セットを軸方向に動かすために付勢するように配置されている。例えば、ばねは、第1アクチュエータ46と第1アクチュエータ部材48の間あるいは第1アクチュエータ部材48と第1係合要素セット35、36の間に配置可能である。
【0091】
第1および第2アクチュエータ46、64の動作、ひいては第1および第2係合要素セットの運動は、変速機制御ユニットによって制御される。この変速機制御ユニットは、変速機内でのセレクタ機構29、31、33の作動状態を測定するためのセンサを備えている。一般的に、このセンサは、アクチュエータ部材48、58の位置、ひいては係合要素セットの位置を監視し、例えばアクチュエータ部材が歯車に係合しているか否かを監視する。センサは、アクチュエータ46、64内に設けることができ、例えばホール効果型のセンサである。
【0092】
変速機制御ユニットは、好ましくは、プロセッサによって駆動される電子論理制御システムの形をしている。このプロセッサは、第1および第2アクチュエータ48、64、ひいては第1および第2係合要素セット35、36の動作を制御するソフトウェアを実行する。相容れない複数のシフトの発生を防止するように変速機内のトルクの方向を制御すると共に歯車セレクタ機構29、31、33の動きを制御するために一般的に、シーケンスプログラミングが行われている。第1および第2アクチュエータ46、64を使用することによって第1および第2係合要素セット35、36の動作全体が独立して制御可能であると、各アクチュエータによって加えられる付勢力の大きさおよび加えるタイミングを独立して制御可能であるという利点がある。これは、低い回転歯車速度でも、係合要素セット35、36が係合した歯車から誤って係合を解除することがなく、従って駆動力の損失がないことを意味する。
【0093】
次に、図5a〜5eと図6を参照して、第1歯車セレクタ機構29の動作を説明する。これらの図は、明確にするために、各セットの1個のみの要素の相対位置によって、第1および第2要素セット35、36の動きを図式的に示している。
【0094】
図5aは、中立位置にある第1および第2係合要素セット35、36を示している。この中立位置ではどちらの係合要素セットも歯車に係合していない。
図5bは、入力装置94からのギアシフト要求に応答して第1および第2アクチュエータ46、64の作用を受けて、第1歯車13と係合するように動く第1および第2係合要素セットを示している。好ましくは、第1ギアシフトのためにクラッチが開放している。
【0095】
図5cは、第1歯車13が改善に係合しているときの状態、すなわち係合要素28、30がドッグ20の第1グループと交互に配置されている状態を示している。第1および第2アクチュエータ46、64は、アクチュエータ部材48、58が第1歯車13との第1および第2係合要素セット35、36の係合を維持するように構成されている。従って、駆動力は、減速時に第1歯車13から第1係合要素35を経て入力軸3に伝達され、そして加速時に第2係合要素セット36を経て伝達される。
【0096】
第1歯車列5を用いて加速している間(第1歯車13が図5cにおいて矢印B方向に回転する)、第1係合要素セット35の係合要素の係合面43は、負荷されないが、第2係合要素セット36の係合要素の係合面43は負荷される。使用者またはエンジン制御ユニットが第2歯車列7をかみ合わせようとするとき、入力信号が入力装置またはエンジン制御ユニットからプロセッサに送られる。プロセッサは、第1アクチュエータ部材48を駆動するために第1アクチュエータ46を作動させるよう変速機制御ユニットに指示する。この第1アクチュエータ部材は、第1係合要素セット35の係合要素28を、スリーブ34のキー溝41に沿って軸方向にスライドさせる。それによって、第1係合要素セット35が第1歯車13との係合を解除する(図5d参照)。
【0097】
第2アクチュエータ64は、第2アクチュエータ部材58、ひいては第2係合要素セット36を第3歯車17の方へ動かすように作動させられる。しかしながら、第2係合要素セット36が負荷されているので、すなわち、第1歯車13を駆動しているので、第1歯車13との係合を解除することができず、第2係合要素セット36は、静止したままであり、その際第2アクチュエータ64は、第2係合要素セットを第3歯車17の方へ付勢している。
【0098】
第1係合要素セット35が入力軸3に沿って軸方向にスライドすると、係合面43は、ドッグ20の第2グループに係合する(図5e参照)。この段階で、空動き装置200の内側部分204が外側部分202と相対的に動き、弾性手段208を圧縮する。それによって、衝撃の一部を吸収し、ギア選択によって生じる騒音を大幅に低減する。弾性手段208が負荷されてその圧縮限界に達すると、相対回転が制止され、係合要素28が図5eの矢印C方向に第3歯車17の外側部分206を駆動し、その際入力軸3と出力軸1の間で第2歯車列7を介して駆動力が伝達される。これが起こると、第2係合要素セット36の負荷が停止し、第1ドッググループ20との係合解除を自由に行うことができる。第2係合要素セット36が第2アクチュエータ64によって付勢されているので、第2係合要素セットは、スリーブ34のキー溝41に沿って軸方向にスライドし、それによって第1歯車13と入力軸3との係合解除を終える。第2係合要素セット36は、第3歯車17に係合するまで、キー溝41に沿ってスライドする。それによって、第3歯車17と入力軸3の係合を終える(図6参照)。
【0099】
歯車列のこの選択方法は、トルク中断を実質的に排除する。というのは、第1歯車列5がかみ合いを解除する前に、第2歯車列7がかみ合うからである。従って一時的には、第1と第2歯車列5、7が同時にかみ合い、入力軸3と一緒の回転をロックする。これは、新たにかみ合った歯車の回転が元の歯車の回転よりも高くなるまで行われる。
【0100】
歯車が第1および第2係合要素セット35、36の両方に係合しているときに、2つの状態の間で切換えるときに生じるきわめて小さなバックラッシュを有する歯車を用いて加速および減速することができる。バックラッシュは、加速から減速へまたはその逆に移動する際に、ドッグが加速係合要素の係合面43から減速係合要素の係合面43に移動するときの空動きである。慣用のドッグ型変速機は、約30°のバックラッシュを有する。本発明による代表的な自動車用変速機は、4°よりも小さなバックラッシュを有する。
【0101】
バックラッシュは、ギアシフト中に係合部材とドッグの間で必要とされるクリアランス、すなわちドッグと次の係合部材の間のクリアランス(図5bの寸法「A」参照)を最小限に抑えることによって低減される。ドッグと次の係合部材の間のクリアランスは、0.5〜0.03mmの範囲であり、一般的に0.2mmよりも小さい。バックラッシュは、更に、保持角度の関数である、すなわちドッグの係合面20aのアンダーカットの角度と同じである係合面43の角度の関数である。保持角度は、ドッグと係合面43の間の相対運動の有無に影響を及ぼす。保持角度が小さければ小さいほど、バックラッシュは、小さくなる。保持角度は、一般的に2.5〜15°である。
【0102】
減速中の第2歯車列7から第1歯車列5への移行は、同様なプロセスで行われる。
【0103】
減速中、第2歯車列7では、第1要素セット35の要素の係合面43は、負荷されず一方、第2要素セット36の要素の係合面43は、負荷される。使用者または、エンジン制御ユニットが第1歯車列5をかみ合わせようとするとき、信号が入力装置または、エンジン制御ユニットからプロセッサに送られる。プロセッサは、第1アクチュエータ部材48を軸方向に動かすために第1アクチュエータ46を作動させるよう変速機制御ユニットに指示する。この第1アクチュエータ部材は、第1係合要素セット35を、第1歯車13の方向に入力軸に沿ってキー溝41内を軸方向にスライドさせる。それによって、第1係合要素セット35が第3歯車17との係合を解除する。
【0104】
変速機制御装置は、第2アクチュエータ64を作動させる。しかしながら60、第2係合要素セット36が負荷されているので、すなわち第3歯車17のドッグ20に駆動係合しているので、第2係合要素セットは、静止したままであるが、第1歯車13の方へ付勢されている。
【0105】
第1係合要素セット35は、キー溝41内を軸方向にスライドするので、第1歯車13のドッグ20に係合する。この段階で、空動き装置200の内側部分204が外側部分202と相対的に動き、弾性手段208を圧縮する。それによって、衝撃の一部を吸収し、ギア選択によって生じる騒音を大幅に低減する。弾性手段208が負荷されてその圧縮限界に達すると、入力軸3と出力軸1の間で第1歯車列5を介してエネルギーが伝達されるように、第1係合要素セット35が第1歯車13の外側部分206を駆動する。これが起こると、第2係合要素セット36の負荷が停止し、第2アクチュエータ64の付勢が第2係合要素セットを第1歯車13の方へ入力軸3に沿ってキー溝41内を軸方向にスライドさせ、それによって第3歯車17の係合解除を終える。第2係合要素セット36は、第1歯車13に係合するまで、入力軸3に沿ってキー溝41内をスライドし続ける。それによって、第1歯車13と入力軸3の係合を終える。
【0106】
キックダウンシフト、すなわち高い歯車列から低い歯車列へのギアシフトであってしかも、加速中のギアシフト、例えば車両が坂を登るときおよびドライバーが坂で加速するために低いギアを選択するときのギアシフトは、シフトの前に駆動要素セットの係合解除を可能にするために短いトルク中断を必要とする。
【0107】
上記の構造は、セレクタ機構が入力軸3上に幾つ取付けられていても繰り返し設けることができる。更に、選択器アセンブリと回転可能に取付けられた歯車は、出力軸に取付けることができ、固定歯車は入力軸に取付けることができる。
【0108】
本発明の範囲に含まれる、上記実施の形態の変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。例えばセレクタ機構29、31、33と空動き機構200を出力軸1上に配置することができるかあるいは幾つかのセレクタ機構と空動き機構を両軸に配置することができ、例えば交互に配置することができる(特許文献6参照)。図2b〜2eに示した空動き機構200を使用する代わりに、変速機は、少なくとも1個の歯車13、17、21、25、16、22のために、後述する空動き機構300;400;500;600;700;800;900;1000;1200;1300を代替的に備えることができる。異なる歯車13、17、21、25、16、22は、同じ変速機内で異なる空動き機構を備えることができ、例えば第1歯車13は、空動き機構300を備え、第3歯車17は、空動き機構800を備えることができる。
【0109】
幾つかのまたはすべての歯車13、17、21、25、16、22に備えられる空動き機構300;400;500;600;700;800;900;1000;1200;1300に加えてあるいはこの空動き機構の代わりに、変速機は、1個またはそれ以上のセレクタアセンブリ29、31、33に第13空動き機構1100を備えることができる(下記参照)。
【0110】
第2空動き機構300は、歯と凹部306を有する歯車外側部分302と、この外側部分302と同軸に配置された歯車内側部分304を備えている。この内側部分304は、端面に形成されたドッグ20と、凹部302内に配置された1個またはそれ以上のゴムブロックまたはばね要素のような弾性手段308と、内側部分304と外側部分302の軸方向位置を保持するためのスナップリング311とを備えている。この弾性手段は、外側部分302と内側部分304の相対回転運動に反対するように配置されている。この構造により、外側部分302は約170°の角度にわたって時計回りまたは反時計回りに内側部分304と相対的に動くことができ、それによって妨害部材309の間で弾性手段308を圧縮する。しかしながら、実際には、弾性手段308が運動の全体の大きさに比例して、歯車部分302、304の間の相対回転を制限する。第2空動き機構300の作動原理は、図2b〜2eの実施の形態の作動原理に似ている。主たる違いは、達成可能な相対回転運動の大きさである。
【0111】
図8a〜8cは、歯と凹部406を有する歯車外側部分402と、歯車内側部分404を備えている。この内側部分404は、その端面に形成されたドッグ20と、ゴムリングの形をした弾性手段408を備えている。このゴムリングは、制限部材409の間で圧縮可能であり、かつその中に配置された、補強要素として作用する一連の鋼球410を備えている。内側部分は、更に歯車部分402と404の軸方向位置を保持するためのスナップリング411とを備えている。この実施の形態の動作は、図2b〜2eの実施の形態と非常に似ている。主たる違いは、弾性要素408が係合中に加えられる負荷に耐えるために補強要素として鋼球を備えていること、すなわち弾性にある。この負荷は、特に低いギアの場合に大きい。リングの弾性によって初期衝撃が吸収され、そしてゴムが圧縮されるときに鋼球410の存在によって弾性手段が剛性を高めるように構成されている。従って、鋼球410は、弾性部材408に剛性を与える。鋼球410の数と鋼球410の間隔は、、弾性部材408に与えられる剛性の程度を決定する。
【0112】
相対回転運動が時計回りおよび反時計回りに生じるように構成されている。
【0113】
図9a〜9dは、第4空動き機構500、すなわち軸方向カムバージョンを示している。第4空動き装置500は、歯、凹部506および内側スプライン構造体516を有する歯車外側部分502を備えている。第4空動き装置は、更に、ドッグ20とフランジを有する歯車内側部分504を備えている。このフランジは、波状カム面512を有する。空動き機構500は、弾性手段508と歯車中間部分510を備えている。この歯車中間部分は、歯車外側部分502に形成された内側スプライン516にかみ合うように配置された外側スプライン514を備えている。外側スプラインは、内側スプラインと一緒に回転するように固定されている。歯車中間部分510は、更に、歯車内側部分502の波状面512に対して相補形の波状面を備えている。歯車がセレクタ機構29、31、33にかみ合うときに、歯車内側部分504と歯車中間部分510(ひいては歯車外側部分502)が相対回転運動するように構成されている。
【0114】
しかしながら、この運動に対して、波状カム面とゴムリング508の弾性との相互作用が抵抗する。波状面の頂部が係合するとき、歯車内側部分504と中間部分510の軸方向間隔が増大する。それによって、ゴムリング508が圧縮され、歯車中間部分510が歯車内側部分502の方へ付勢される。係合力が充分の大きさであると、部分510、512は、互いに滑ることができ、それによって各カム面に形成された頂部が少なくとも1回互いに通り越し、相補形の谷部に降りる。その際、内側部分504と中間部分510の軸方向間隔は、ゴムリング508の弾性のため減少する。相対回転運動は、歯車のかみ合い衝撃の少なくとも一部を吸収する。配置構造は、双方向性である。
【0115】
新しい歯車にかみ合うときの初期衝撃と、内側部分504と外側部分502の間の相対回転運動の後で、カム面は、駆動のつり合い状態に達し、内側部分504と外側部分502は互いに回転する。
【0116】
図10a〜10dは、第5空動き機構600、すなわち制限された軸方向カムバージョンを示している。第5空動き機構600は、歯と凹部606を有する歯車外側部分602を備えている。機構600は、更に、ドッグ20、フランジ612および外側スプライン614を有する歯車内側部分604と、ゴムリングの形をした弾性手段608と、中間要素610と、スナップリング611を備えている。歯車外側部分602は、内側カム面616を有し、中間部分610は、相互形のカム面618を有する。カム面618は、成形された3つの突出部620を有し、この突出部は、それぞれ複数の面を有する。各面の角度は、所望なカム特性を提供するように設定可能である。このカム特性は、歯車内側部分604と歯車外側部分602の相対運動を生じるために必要な力の大きさを決定する。例えば、外面は、内面よりも急勾配に形成可能である。
【0117】
歯車外側部分602のカム面616は、3つの窪み部分622を有する。この窪み部分は、所望なカム特性を達成するように成形されている。例えば、窪み部分622の曲率をその長さに沿って変化させることができる。
【0118】
歯車中間要素610は、歯車内側部分604の外側スプライン614に係合する内側スプライン624を備えている。
【0119】
ドッグ20が歯車セレクタ機構29、31、33と係合するときに、歯車内側部分604は、カム面616の周りに歯車中間要素610を駆動する。突出部620が窪み部分622をよじ登るので、歯車内側部分604と歯車外側部分602の間の運動に対する抵抗が変化する。歯車内側部分604と歯車外側部分602の相対運動は、ドッグ20におけるセレクタ機構の衝撃を吸収する。中間要素610がカム面616に沿って進むので、中間要素は、フランジ612の方へ軸方向に移動し、それによって弾性部材608を圧縮する。駆動圧力が取り除かれると、弾性部材608は、中間要素610を中立位置に戻す。
【0120】
歯車中間要素610と外側部分602の相対回転運動中の或る時に、つり合いが達成され、内側部分604と外側部分602が一緒に回転する。初期衝撃が非常に大きければ、カム面は、お互いを越えて次の谷内に移動することができる。
【0121】
図11a〜11dは、第6空動き機構700、すなわち自由回転カムバージョンを開示している。この第6空動き機構700は、歯車外側部分702と歯車内側部分704を備えている。歯車外側部分702は、凹部706と内側スプライン構造体716を有する。空動き機構700は、スナップリング711と中間要素710を備えている。この中間要素は、波状カム面712、凹部720内に位置する4個の鋼球および外側スプライン構造体714を備えている。内側要素704は、フランジ端面に形成されたドッグ20を備えている。内側要素は、更に、ドッグ20とは、反対のフランジの側に波状カム面720を有する。中間要素710と歯車外側部分702との間に弾性部材708が設けられている。鋼球718は、歯車内側要素704の波状カム面720内に設けられた溝722に入るように配置されている。
【0122】
セレクタ機構がドッグ20に係合すると、歯車内側要素704と中間要素710の波状カム面は、内側部分704と外側部分702の相対回転運動の或る量を許容するように相互作用する。カム面712、720がお互いを越えて移動するので、内側部分704と中間要素710の間の分離が変化する。これにより、弾性手段708が圧縮される。弾性手段708の弾性を決定することにより、外側部分702と内側部分704の相対回転運動に対する抵抗がある程度決定される。
【0123】
歯車中間要素710と外側部分702の相対回転運動中の或る時に、つり合いが達成され、内側部分704と外側部分702が一緒に回転する。初期衝撃が非常に大きければ、カム面は、お互いを越えて次の谷内に移動することができる。
【0124】
図12a〜12dは、第7空動き機構800、すなわちゼネバホイールバージョンを示している。この第7空動き機構800は、歯を有する外側部分802と、ドッグ20を有する内側部分804を備えている。内側部分804は、外側部分802の凹部806内に位置している。内側部分804は、フランジ812を備え、このフランジは、内側部分804の軸線に対して平行に配置された位置決め部材810を備えている。空動き機構は、ほぼI字状の3個の妨害手段808を備えている。この妨害手段は、外側部分802の周りに均等に分配配置され、所定位置に固定され、そして位置決め部材810との相互作用によって内側部分804と外側部分802の相対回転運動を制限する。妨害手段808は、、位置決め部材810が妨害手段808に係合するときに、位置決め部材と妨害手段が傾斜面814に乗り上げるように形成されている。この傾斜面の角度は、妨害手段と位置決め部材が内側部分804と外側部分802の相対回転運動を最終的に停止するまで、穏やかな制動力を位置決め部材810に加える。係合面814を有する傾斜面の角度を決定することにより、制動速度が決定される。
【0125】
位置決め部材810の運動が制止されると、内側部分804と外側部分802は、一緒に回転する。内側部分804と外側部分802を中立位置に付勢するために、戻しばね816が設けられている。
【0126】
図13a〜13dは、第8空動き機構900、すなわち傾斜面作動クラッチバージョンを示している。空動き機構900は、歯を有する外側部分902と、ドッグ20を有する内側部分904を備えている。内側部分904は、波状カム面を有するフランジ912と、外側スプライン914を備えている。中間要素910は、内側部分904に隣接して設けられ、外側スプライン構造体914を備えている。この外側スプライン構造体は、歯車外側部分902上の内側スプライン構造体917にかみ合うように配置されている。中間要素910は、更に、波状カム面912と相互作用するように配置された波状カム面915を備えている。中間要素910と歯車外側要素902の間に、4個のクラッチ板918、920が設けられている。クラッチ板918は、内側スプライン917にかみ合うように配置された外側スプライン構造体919を備え、クラッチ板920は、内側部分904の外側スプライン914にかみ合うように配置された内側スプライン構造体921を備えている。サークリップ911は、要素の相対アキシアル位を固定する。
【0127】
セレクタ機構29、31、33がドッグ20にかみ合うと、波状カム面912、915は、クラッチ板918、920に加えられる圧力を制御するために相互作用する。中間要素910と内側部分904のフランジの間の分離が増大するとき、クラッチ板がロックアップするまで、クラッチ板の圧力が増大する。カム面の形状を決定することにより、クラッチのロック圧力が決定される。従って、ドッグ20がセレクタ機構29、31、33に係合すると、クラッチがロックアップするまで、内側部分904と外側部分902の相対回転運動が生じる。
【0128】
トルクの方向が変化すると、相対回転運動が生じるが、向きが反対である。
【0129】
図14a〜14dは、第9空動き機構1000、すなわちブレークアウトクラッチバージョンを示している。この機構1000は、図13a〜13dに類似するクラッチ構造体であるがしかし、クラッチに加えられる圧力を決定するためにカム面を使用する代わりに、弾性部材1008がクラッチ板1018、1020を付勢している。それによって、スリップ圧力が決定される。従って、ドッグ20がセレクタ機構29、31、33に係合するとき、係合力がスリップ圧力に打ち勝てば、内側部分1004と外側部分1002が相対回転運動する。
【0130】
空動き装置構造体は、液圧システムに基づいて構成することができる。係合時のショックを吸収するために、液圧は、歯車の内側部分と外側部分の予定された相対回転を可能にするように設定または、制御される。この種のシステムの例、すなわち第10空動き装置1200が、図15a、15bに示してある。図15a、15bは、ジェロータポンプ(第10)実施の形態を示している。この実施の形態は、軸3に連結された内側ロータ1204と、内側成形面1207と外側成形部1209を有する浮動リング1205とを備えている。この内側成形面は、内側ロータ1204の成形部を収容しかつこの成形部に係合し、外側成形部は、歯車の外側部分1202の内側成形部1211に係合するように配置されている。歯車の外側部分1202は、軸3に回転可能に取付けられ、内側ロータ1204と同心的な一方の側面にドッグ20を備えている。
【0131】
軸3は、緩衝装置から圧液を排出供給するための液圧管路1213を備えている。この液圧管路は、液圧制御回路1215に接続されている。制御回路は、ジェロータポンプ内および外への圧液の流れを制御する。制御回路は、更に、歯車の外側部分1202が軸3と共に回転するようにロックされるか否かを決定する。回路が開放し、圧液がジェロータポンプを経て流れると、外側部分1202が軸3と相対的に回転する。液体がジェロータポンプから流出できないように回路が切換えられると、外側部分1202は、軸3と共に回転するようにロックされる。
【0132】
従って、外側部分1202が軸と相対的に自由に回転するとき、セレクタ機構29、31、33は、ドッグ20に係合することができ、それによって穏やかな係合が生じる。更に、液圧ロックおよび二次ロックを生じることによって駆動力を伝達するために、軸3と一緒に回転するように外側部分1202をロックさせるよう制御回路1215を切り替えることができる。
【0133】
液圧管路1213を有する閉鎖液圧系を提供するための別の方法として、空動き装置1200は、ギアボックス内で潤滑油を使用することができる。供給管路は、ギアボックスの油溜めと、空動き装置1200に油を供給するために使用されるポンプまで延びている。油は、油溜めに戻すことができる。
【0134】
図16a〜16cは、液圧ピストン操作型空動き機構1300を備えた第11実施の形態を示している。第12空動き機構1300は、外側部分1302と、この外側部分1302と相対的に制限されて回転運動するように配置された内側部分1304を備えている。歯車の外側部分1302は、出力軸1に取付けられた他の歯車の歯にかみ合う歯を備えている。内側部分1304は、セレクタ機構29、31、33と係合するように配置された3個のドッグを側面に備えている。
【0135】
歯車外側部分1302の一方の側面に、ほぼ環状の溝1306が形成されている。ドッグ20とは、反対の歯車内側部分1304の側面に取付けられたほぼ腎臓形の駆動部材1308は、溝1306内に位置し、第1ピストン1312を溝1306に沿って時計回りに駆動し、そして第2ピストン1312を溝1306に沿って反時計回りに駆動する。ピストン1312の運動は、スタート位置で支持部1315によって制限され、端位置では、シャトル弁1318と停止部材1319によって制限される。端位置は、スタート位置から環状溝1306の周りに約180°離れた位置にある。従って、第1ピストン1312は、駆動部材1308によって180°弱の角度にわたって溝1306に沿って時計回りに駆動可能である。第2ピストン1312は、180°弱の角度にわたって溝1306に沿って反時計回りに駆動可能である。各ピストン1312は、駆動部材1308および尖った先端部とかみ合うほぼU字状本体を備えている。
【0136】
第1溝1306は、歯車外側部分1302と同軸的に配置されている。溝1306の側壁1317は、第1および第2アンダーカット部分1314を有する。各アンダーカット部分1314は、溝1306のほぼ半分の部分(約135°)の周りに延在し、そして停止部材1319に隣接するスタート位置から、支持部1315から短い距離にある最大深さまで徐々に深くなっている。この支持部から短い距離のところでアンダーカット部分1314は、終わっている。各アンダーカット部分1314は、第1および第2ピストン1312が環状溝1306に沿って駆動されるときに、溝1306から油を逃がすための液体通路を提供する。油は、溝1306から、アンダーカット部分1314と、駆動部材1308内に形成された穴1310とを経て歯車周囲に出ることができる。
【0137】
歯車は、ブッシュ1303と第1供給リング1322を介して入力軸3に取付けられている。油は、入力軸3に取付けられた第2供給リング1317と、入力軸の中心軸線に沿って入力軸3内に形成された軸方向供給管路1313と、少なくとも1個の半径方向供給管路1320(図16b、16cの図示では4個)とを経て、歯車内部に供給される。半径方向供給管路は、ブッシュ1303と第1供給リング1322に形成された穴と、歯車の外側部分1302に形成された開口部1316とを介して、歯車の内部と軸方向供給管路1313を接続する。第1供給リング1322は、歯車内部への油の連続供給を可能にするためにその外面に形成された環状溝を有する。
【0138】
開口部1316は、環状溝1306の両側に油を時計回りおよび反時計回りに供給するように配置されている(図16b参照)。溝1306への油の供給は、シャトル弁1318によって制御される。負荷されていない状態では、開口部1316が完全に開放し、環状溝の両側に油を供給することができる。シャトル弁1318が一方のピストン1312によって負荷されると、シャトル弁1318は、負荷ピストンと同じ側の開口部1316を閉鎖するが、反対側の開口部は、開放したままであり、従って油は、依然として溝1306の反対側に供給される。
【0139】
作動中、溝1306は、供給管路1313、1320と開口部1316を経て油がほぼ完全に充填されている。歯車がセレクタ機構29、31、33の一つによって選択されると、歯車の内側部分1304のドッグ20の係合により、駆動部材1308は、ピストン1312の一方を溝1306に沿って、セレクタ機構29、31、33によって加えられるトルクの方向に駆動する。ピストン1312が溝1306に沿って動くので、溝1306のそこの部分内にある油に圧力が加えられる。それによって、シャトル弁1318は、圧力を加えた側の開口部1316を閉鎖するが、溝1306の反対側(負荷されていない側)には、依然として油が流れ込む。ピストン1312が溝1306に沿って移動し続けるので、油は、アンダーカット部分1314を経てピストン1312を通過し始め、そして駆動部材内の穴1310を経て、周囲に出ることができる。この周囲は、一般的にギアボックスの内側である。油は、アンダーカット部分1314から、溝1306の底と駆動部材1308の間の隙間内にそして穴1310内に流れる。これにより、係合エネルギーの大部分が吸収され、それによって騒音と衝撃波が低減され、従って係合が緩衝される。
【0140】
溝内でのピストン312の運動は、ピストンがシャトル弁1318と停止部材1319に到達するときに停止される。これが起こると、歯車の内側部分1304は、外側部分1302と一緒に回転するようにロックされ、それによって入力軸3と出力軸1の間で駆動力が伝達される。
【0141】
トルクの方向が変化すると、あるいは加えられるトルクが油圧によってピストン1312に加えられるトルクよりも小さくなると、油が溝1306内に送出され、支持部1315に隣接するスタート位置にピストン1312を戻す。新しいトルク方向の力が充分に大きいと、駆動部材1308は、溝1306の周りに動いて他のピストン1312に係合し、溝1306の他の半分内の油溜め内にピストンを駆動する。それによって、ピストン1316は、上記と同じように油を付勢する。従って、同じような緩衝作用が生じる。
【0142】
従って、時計回りと反時計回りの両方で、緩衝が起こる。
【0143】
異なる緩衝効果を提供するために、ピストン1312の移動距離を変えることができる。例えば、10〜180°にわたって延在する円弧状軌道に沿って移動させることができる。更に、或る変形では、1個のピストンを使用することが必要であるにすぎない。例えば、上述の実施の形態から自由運動ピストン1312を取り去り、溝1306内で動く駆動部材1308だけによってピストン作用を提供することができる。駆動部材1308の大きさと形状は、溝1306内での一層密着した嵌め合いを提供するために調節可能である。或る実施の形態では、歯車の内側部分1304に固定された、駆動部材1308に類似する複数のピストン要素を設けることができる。正確な数は、特定の用途に適した緩衝作用に依存する。更に、1個以上のアンダーカット部分1314を設けることに加えてあるいはその代わりに、油がピストン要素1308によって圧縮されるときに圧縮された油がピストン要素1308を通過できるようにするために、ピストン要素1308は、その本体に形成された少なくとも1つの穴を有することができる。穴の大きさと形状は、緩衝作用の決定における重要な要因である。
【0144】
油供給系は、閉鎖系でもよいし、開放系でもよい。例えば、開放系は、ギアボックス潤滑油を使用することができ、そしてギアボックスの油溜めから、空動き機構を備えた各歯車の内部に油を送出するための系を備えている。
【0145】
図17a、17bは、第12の空動き機構1100を示している。第12空動き機構1100は、幾つかのまたはすべての歯車セレクタ機構29、31、33を備えることができる。第12空動き機構1100は、外側部分1102と内側部分1104を備えている。内側部分1104は、スリーブ部材1106を備え、このスリーブ部材は、軸3の外面に形成したスプライン1110にかみ合うスプラインを形成した内面1108を有する。従って、内側部分1104は、軸3と一緒に回転するようにロックされる。内側部分1104は、更に、その外面から半径方向外側に延在する3本のアーム1112を備えている。外側に延在するアーム1112は、120°だけ互いに離隔されている。実際には、適当な数のアーム1112、例えば2本またはそれ以上のアームを使用することができる。
【0146】
外側部分1102は、外側スリーブ部材1114と、このスリーブ部材の内面から半径方向内側に延在する3本のアーム1116と、係合要素35、36のセットを収容するために外側スリーブ部材の外面に形成されたキー溝1141とを備えている。内側に延在するアーム1116は、120°だけ互いに離隔されている。実際には、適当な数のアーム1116、例えば2本またはそれ以上のアームを使用することができる。一般的には、外側に延在するアーム1112と同じ数のアーム1112が設けられている。
【0147】
外側部分1102は、内側に延在するアーム1116と外側に延在するアーム1112が交互に配置されかつその間に隙間1118を生じるように、内側部分1104に取付けられている。これにより、外側部分1102と内側部分1104は、互いに制限された距離だけ相対回転することができる。内側に延在するアーム1116と外側に延在するアーム1112の間の隙間1118の少なくとも一部には、ばねまたはゴムブロックのような弾性手段1120が充填されている。弾性手段1120は、両方向において外側部分1102と内側部分1104の相対運動に抵抗し、最終的にはこの相対運動を制限するように配置されている。弾性手段1120は、加速方向と減速方向において異なる弾性を提供するために、異なる格付け、例えば異なるばね定数を有することができる。
【0148】
係合要素35、36のセットが歯車のドッグ20に係合するときに、係合力によって係合要素35、36が外側部分1102を内側部分1104と相対的に回転運動させるように駆動する。これにより、係合要素35、36と歯車および軸3との間に空動きが生じ、幾つかの弾性手段1120を圧縮する。それによって、係合時に生じるトルクスパイクの少なくとも一部を吸収する。
【0149】
第12空動き機構1100は、上記の他の空動き装置200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1300の幾つかの原理に沿って作動するように構成および配置可能である。すなわち、歯車のために使用可能な幾つかの空動き機構は、歯車セレクタ機構29、31、33と共に使用可能である。
【0150】
第12空動き機構1100は、上記の歯車取付け型空動き装置200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1300の代わりにまたはそれに追加して使用可能である。
【0151】
各空動き装置200;300;400;500;600;700;800;900;1000;1100は、油で潤滑可能である。
【0152】
変速機は、あらゆる乗り物、例えば道路走行車両、レーシングカー、貨物自動車、オートバイ、自転車、列車、路面電車、バス、ブルドーザ、掘削機のような排土車両、クレーン、ホーバークラフトや船舶のような水上乗り物、飛行機やヘリコプターを含む航空機、および軍用車両で使用可能である。変速機は、更に、第1および第2回転可能物体を有する、運搬装置、旋盤やフライス盤を備えた製造機器および専用生産装置のようなあらゆる機械において使用可能である。この場合、駆動力が一方の回転可能物体から他方の回転可能物体へ、変更可能な速度およびトルク特性で伝達される。
【0153】
瞬時型歯車セレクタ機構の使用は、性能改良、少ない燃料消費および少ないエミッションをもたらす。というのは、変速時に駆動中断が実質的に無くなるからである。更に、変速機は、慣用のギアボックスよりも一層コンパクトであり、ギアボックスを軽量化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸と、この第1軸に回転可能に取付けられた第1歯車要素と、第1軸と一緒に回転させるために第1歯車要素を選択的にロックするように構成されたセレクタアセンブリと、第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するように構成された緩衝システムとを備えた変速機。
【請求項2】
第1歯車要素が、セレクタアセンブリによって第1軸と一緒に回転するようにロックされたときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの間で空動きを許容するように構成されている、請求項1記載の変速機。
【請求項3】
セレクタアセンブリが、第1歯車要素を駆動係合するように構成され、第1歯車要素がセレクタアセンブリによって駆動係合するときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転を許容するように構成されている、請求項2記載の変速機。
【請求項4】
第1歯車要素が、セレクタアセンブリによって駆動係合するときに、緩衝システムが第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きの大きさを制限するように構成されている、請求項2または3に記載の変速機。
【請求項5】
緩衝システムが、第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きに抵抗するための手段を備えている、請求項2〜4のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項6】
第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きに抵抗するための手段が、弾性手段を備えている、請求項5記載の変速機。
【請求項7】
第1歯車要素とセレクタアセンブリの間の空動きに抵抗するための手段が、補強部材を備えている、請求項5または6に記載の変速機。
【請求項8】
セレクタアセンブリが、第1歯車要素に係合した後で、緩衝システムが第1軸と第1歯車要素およびセレクタアセンブリの少なくとも一方との間の空動きを許容するように形成されている、請求項1〜7のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項9】
第1歯車要素および/またはセレクタアセンブリが緩衝システムを備えている、請求項1〜8のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項10】
第1歯車要素が相対回転運動するように構成された第1部分と第2部分を備えている、請求項9記載の変速機。
【請求項11】
第1部分が第1軸に回転可能に取付けられ、第2部分が第1部分と相対的に制限された相対回転を行うように構成されている、請求項10記載の変速機。
【請求項12】
第1部分が歯車要素を駆動するためにセレクタアセンブリに選択的に係合可能である駆動構造体を備えている、請求項10または11に記載の変速機。
【請求項13】
第2部分が、他の歯車要素にかみ合うための歯車かみ合い手段を備えている、請求項10〜12のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項14】
歯車セレクタアセンブリが、相対回転運動するように構成された第1部分と第2部分を備えている、請求項9〜13のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項15】
第1部分が、第1軸と一緒に回転するように固定され、第2部分が第1部分と相対的に制限された回転運動を行うように構成されている、請求項14記載の変速機。
【請求項16】
第2部分が、第1歯車要素に形成された駆動構造体に選択的に係合するための係合部材を備えている、請求項14または15に記載の変速機。
【請求項17】
第1歯車要素および/またはセレクタアセンブリが、それらの第1部分と第2部分の相対回転運動に抵抗するための手段を備えている、請求項10〜16のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項18】
緩衝システムが、第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するためのクラッチ装置を備えている、請求項1〜17のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項19】
セレクタアセンブリが、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックするときに、クラッチ装置がスリップするように構成されている、請求項18記載の変速機。
【請求項20】
第1歯車要素とセレクタアセンブリの相対回転位置に従ってクラッチ装置圧力を調節するための手段を備えている、請求項19記載の変速機。
【請求項21】
緩衝システムが、第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するためのカムアセンブリを備えている、請求項1〜20のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項22】
カムアセンブリが、歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分と第2部分の一方と一緒に回転するように固定された第1カム部材と、歯車要素またはセレクタアセンブリの他方の部分と一緒に回転するように固定された第2カム部材を備え、カムアセンブリが第1カム部材と第2カム部材の相互作用によって第1軸に対する第1歯車要素のロック動作を緩衝するように構成されている、請求項21記載の変速機。
【請求項23】
第1カム部材が、第2カム部材と相対的に制限された軸方向運動を行うように構成されている、請求項22記載の変速機。
【請求項24】
第1カム部材と第2カム部材の間の増大する分離に抵抗するように構成された弾性手段を備えている、請求項23記載の変速機。
【請求項25】
緩衝システムが、液体緩衝システム、好ましくは液圧緩衝システムである、請求項1〜24のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項26】
液体緩衝システムが、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するための容積型ポンプ装置を備えている、請求項25記載の変速機。
【請求項27】
液体緩衝システムが、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するように構成された少なくとも1個のピストン装置を備えている、請求項25記載の変速機。
【請求項28】
第1ピストン装置と第2ピストン装置を備え、第1ピストンが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を時計回りにおいて緩衝するように構成され、第2ピストンが第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を反時計回りにおいて緩衝するように構成されている、請求項27記載の変速機。
【請求項29】
1個のピストン装置または各ピストン装置がピストン部材とピストン室を備え、液体緩衝システムが、ピストン室内の緩衝液体を圧縮するときに、緩衝液体による、1個のピストン部材または各ピストン部材の迂回または通過を可能にする手段を備えている、請求項27または28に記載の変速機。
【請求項30】
緩衝システムが、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作を緩衝するための妨害手段を備えている、請求項1〜29のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項31】
妨害手段が、歯車要素またはセレクタアセンブリの第1部分と第2部分の相対回転運動を制限するように構成された第1妨害部材と第2妨害部材を備え、第1妨害部材と第2妨害部材が緩衝速度を制御するための手段を備えている、請求項30記載の変速機。
【請求項32】
変速機が、瞬時変速機である、請求項1〜31のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項33】
セレクタアセンブリが、次の動作モードから、第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第1歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードである、請求項1〜32のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項34】
歯車セレクタアセンブリが、第1歯車要素に関して次の動作モードを選択するように構成され、この動作モードにおいて第1歯車要素が時計回りまたは反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するようにロックされない、請求項33記載の変速機。
【請求項35】
第1軸に回転可能に取付けられた第2歯車要素を備え、セレクタアセンブリが次の動作モードから、第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードである、請求項1〜34のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項36】
セレクタアセンブリが、第2歯車要素に関して次の動作モードを選択するように構成され、この動作モードにおいて第2歯車要素が時計回りまたは反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するようにロックされない、請求項35記載の変速機。
【請求項37】
第2歯車要素が、第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作を緩衝するための緩衝システムを備えている、請求項35または36に記載の変速機。
【請求項38】
駆動力が伝達されるときに、係合部材の第1セットと第2セットの一方がかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の他方のセットが負荷されていない状態にあり、負荷されていない歯車セットが新しい歯車要素に係合するために動くことができるように、セレクタアセンブリが構成されている、請求項37記載の変速機。
【請求項39】
制動力が伝達されるときに、係合部材の第1セットがかみ合った歯車要素に係合し、係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあり、駆動力が伝達されるときに、係合部材の第2セットがかみ合った歯車要素に駆動係合し、そのとき係合部材の第2セットが負荷されていない状態にあるように、1個のセレクタアセンブリまたは各セレクタアセンブリが構成可能である、請求項37または38に記載の変速機。
【請求項40】
互いに相対的に回転するように形成された第1部分および第2部分と、相対回転運動を緩衝するための緩衝システムを備えている、変速機用歯車要素。
【請求項41】
第1部分と第2部分の一方が、歯車セレクタアセンブリに係合するように構成された係合構造体を備え、他方の部分が他の歯車要素に係合するための手段を備えている、請求項40記載の歯車要素。
【請求項42】
第1部分と第2部分の少なくとも一方が、ほぼ環状であるかあるいはほぼ環状の部分を備えている、請求項40または41に記載の歯車要素。
【請求項43】
第1部分と第2部分が、同軸に配置されている、請求項40〜42のいずれか一つに記載の歯車要素。
【請求項44】
緩衝システムが、第1部分と第2部分の間で達成可能な相対回転運動の角度を制限するための次の手段を少なくとも一つ備え、この手段が妨害手段と、弾性手段と、クラッチ装置と、カムアセンブリと、液体緩衝システム、好ましくは液圧緩衝システムである、請求項40〜43のいずれか一つに記載の歯車要素。
【請求項45】
歯車セレクタアセンブリが、次の動作モードから、軸と一緒に回転するよう歯車要素を選択的にロックするように構成され、この動作モードが時計回りと反時計回りにおいて第1軸と一緒に回転するように第2歯車要素をロックする動作モードと、時計回りにおいて軸と一緒に回転するように歯車要素をロックし、反時計回りにおいてロックしない動作モードと、反時計回りにおいて軸と一緒に回転するように歯車要素をロックし、時計回りにおいてロックしない動作モードであり、セレクタアセンブリが軸と一緒に回転するように歯車要素をロックする動作を緩衝するように構成された緩衝システムを備えている、変速機用歯車セレクタアセンブリ。
【請求項46】
相対回転運動するように構成された第1部分と第2部分と、歯車要素に選択的に係合するために互いに独立して動くように構成された係合部材の第1セットと第2セットとを備え、第1部分が軸に取付けるように構成され、第2部分が係合部材の第1セットと第2セットを支持している、請求項45記載の歯車セレクタアセンブリ。
【請求項47】
係合部材の第1セットと第2セットが第2部分に沿って軸方向に動くことができる、請求項46記載の歯車セレクタアセンブリ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17a】
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【図17b】
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【公表番号】特表2010−510464(P2010−510464A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537695(P2009−537695)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004460
【国際公開番号】WO2008/062192
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505411505)ゼロシフト リミテッド (8)
【Fターム(参考)】