説明

外壁の石材パネル取付け方法

【課題】 木造建物の外壁に石材パネルを係止レールで横張りする際に、石材パネルを、パネル割付けに応じて施工現場で切断加工しても、施工現場での新規な係合溝の作成を必要とせず、横張り係止可能とする。

【解決手段】 横張り用石材パネルに、上下面のみならず、左右側面にも、上下面と同一構造の嵌合溝GSを予め配設しておき、パネルの施工現場で、必要に応じて石材パネルを切断加工し、係止用レール9,11も必要に応じて係止用レール片90,110に切断加工し、上側面の嵌合溝GUを喪失した加工石材パネルPa2,Pa3,Pa4,Pb2,Pb3を、係止用レール片90,110の縦配置によって、側面嵌合溝GSで係止保持し、下面及び両側面の3辺で係止保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の外壁に、石材パネルを外装材として張設する取付け方法に関するものであって、建築の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
石材パネルを外装材として木造建築物の外壁に張設することは、例えば、従来例の特許文献1に示す如く周知である。
図8は従来例の説明図であって、図8(A)は、パネル張設用H型レールの斜視図、図8(B)は、石材パネル張設説明図、図8(C)は、石材パネル張設状態断面図である。
即ち、従来例は、図8(A)に示す如く、取付用フランジと、水抜き孔を穿設した中間リブと、上下嵌合突片とを備えたH型レールを、図8(B),(C)に示す如く、木造躯体にビスで固着し、上縁には上嵌合凹部を、下縁には下嵌合凹部を配設した石材パネルの、上嵌合凹部をH型レールの下部嵌合突起に、下嵌合凹部をH型レールの上部嵌合突起に嵌合して、石材パネルを外装材として張設するものである。
【特許文献1】実用新案登録第3090094号公報(平成14年11月22日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木造住宅の外壁には、窓、玄関ドア等の開口部があり、これら開口部は高さ、幅等が比較的自由に設計される。
そして、図8の従来例にあっては、石材パネルが上下の嵌合凹部(溝)を介してH型レールに嵌合係止するため、設定された窓の寸法に応じて、窓の上下の石材パネルの上縁、及び/又は、下縁を切断加工する必要が生じる。
そして、嵌合凹部を備えた上縁又は下縁を切断加工すれば、再度、切断加工縁に、嵌入凹部を加工形成する必要があり、各種の建物に対応させるためには、基準石材パネルを、その都度、溝加工する必要があり、施工性が悪い。
【0004】
また、H型レールには水抜き孔があるものの、石材パネルの溝に雨水が浸入するため、寒冷地にあっては、融雪の凍結、融解の反復による凍害が発生し、外壁(外装材)を破壊することとなる。
また、地震、風等での住宅の揺れにより、H型レールと石材パネルとの摩擦での音鳴りも生じる。
本発明は、従来例のこれら問題点を、一挙に解決又は改善するものであり、石材パネルを用いる外装仕上げでありながら、外壁の開口部(窓、玄関)の寸法変化にも合理的に対処出来るように、施工性良く、且つ凍害損傷の発生を抑制した、取付け方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、木造躯体FWの外面に、係止用のレール9,11を配設し、該レール9,11に石材パネルPa,Pbを横張り係止する石材パネル取付け方法であって、石材パネルとしては、上下、左右側面に嵌合溝GU,GD,GSを備えた横長矩形の基本AパネルPaと、基本AパネルPaの一側面から、嵌合溝の存在しない延長部BSを延出した横長矩形の基本BパネルPbとを準備し、係止用のレールとしては、石材パネルPa,Pbの上部及び下部を保持するためのH型レール9と、石材パネルPa,Pbの下部を保持するL型レール11とを準備し、基本AパネルPa、基本BパネルPb、及び、必要に応じて、基本AパネルPa及び基本BパネルPbを切断加工した加工パネルPa2,Pa3,Pa4,Pb2,Pb3を、水平配置したH型レール9、L型レール11、及び、必要に応じて垂直配置したH型レール片90及びL型レール片110に係止保持し、外壁側縁WEには、石材パネルの平坦側面FSが位置するように配置施工する外壁の石材パネル取付け方法である。
【0006】
この場合、H型レール9、及びL型レール11は、石材パネルPa,Pbを係合保持する、強度、耐久性を備えておれば、材料は問わないが、典型的には、アルミ押出成形品である。
また、石材パネルPa,Pbは、周側縁に嵌合溝が形成出来る材質であれば、模造石材でも、天然石材でも良いが、典型的には、厚さ1.7cmの天然の花崗岩(御影石)パネルである。
そして、上下の嵌合溝GU,GD、及び左右側面の嵌合溝GSは、同一形態(標準:幅3.5mm、深さ5mm)とすれば良い。
また、外壁側縁WEは、窓開口部Oの両側の外壁側縁や、外壁出隅部のコーナー形成側縁等を意味するものである。
また、嵌合溝の存在しない延長部BSとは、例えば図4(D)に示す如く、平坦上面FU、平坦下面FD及び平坦側面FSを備えた長さLx(標準:14.6cm)の部分である。
【0007】
本発明にあっては、パネルPa,Pb、及び加工パネルPa2,Pa3,Pa4,Pb2,Pb3の各上面嵌合溝GU、下面嵌合溝GD、左右の嵌合溝GSが、共に、H型レール9の上部嵌合突起Pu、下部嵌合突起Pd及びL型レール11の上部嵌合突起Puと嵌合係止で保持出来るため、建物外壁面の被覆が、基本パネルPa,Pbのみの割付けで被覆可能な場合は、外壁側縁WEには、基本パネルPbの延長部BSの平坦側面FSが位置するように配置して、最下端のパネルPa,Pbの下面嵌合溝GDをL型レール11で係止支承し、上下パネル間にはH型レール9を配置して、H型レール9の、下部嵌合突起Pdを下方パネルの上面嵌合溝GUと、上部嵌合突起Puを上方パネルの下面嵌合溝GDと、嵌合係止する配置施工を反復すれば良い。
【0008】
そして、窓開口部O等、開口部の存在で、基本AパネルPaと、基本BパネルPbのみでは割付け被覆出来ない場合は、基本AパネルPaから切断形成した加工AパネルPa2,Pa3,Pa4、基本BパネルPbから切断形成した加工BパネルPb2,Pb3等を、施工現場で、ポータブル切断機によって、適宜切断加工作成し、例えば、図1の窓台4の下面の加工パネルPa2の如く、パネル上側がH型レールで保持出来ない場合は、加工パネルPa2の両側面にH型レール片90を縦配置し、H型レール片90の各嵌合突起Pu,Pdを、左右に位置するパネルの側面嵌合溝GSに嵌合係止すれば、該パネルPa2は、下側面と左右両側面の3辺で係止保持出来る。
【0009】
従って、基本AパネルPaと基本BパネルPbと、H型レール9と、L型レール11とを準備するだけで、各基本パネルPa,Pbが側面にも嵌合溝GSを備えているため、各施工現場では、ポータブル切断機により、石材パネルPa,Pbの必要に応じた切断加工、及びH型レール9、L型レール11の必要に応じた切断加工で、所望の石材パネルの外壁面への配置施工が可能となり、外壁側縁WEが平坦側面FSで仕上がり、美観に優れた石材パネル外装が、配置施工現場での、石材パネルへの嵌合溝の加工作業を必要とせずに、単なるポータブル切断機での切断加工作業のみで自在に施工可能となり、作業性良く実施出来る。
【0010】
また、H型レール9は、図3(A)に示す如く、定着板9aとフランジ9bとウエブ9cから成り、ウエブ9cが上部嵌合突起Pu及び下部嵌合突起Pdを備えた断面H型であり、L型レール11は、定着板11aとフランジ11bと上部嵌合突起Puとを備えた断面L型であり、H型レール片90は、H型レール9の切断短寸化片であり、L型レール片110は、L型レール11の切断短寸化片であるのが好ましい。
この場合、H型レール9の上部嵌合突起Pu、下部嵌合突起Pd、及びL型レール11の上部嵌合突起Puは、共に、同一厚さ(標準:1.5mm)で同一突出長(標準:4mm)とすれば良い。
従って、H型レール9も、L型レール11も、石材パネルPa,Pbのどの嵌合溝GU,GD,GSにも嵌合係止出来るため、必要に応じて、レール9,11を切断加工して、適宜配置使用出来、石材パネルPa,Pbを必要に応じた形態に切断加工して配置施工する場合も、各レール9,11,90,110の適切な配置により、作業性良く実施出来る。
【0011】
また、本発明の実施に際しては、図3に示す如く、H型レール9、及びH型レール片90のウエブ9cには、断面C型緩衝材10を嵌着し、L型レール11、及びL型レール片110の上部嵌合突起Puには、断面U型緩衝材12を嵌着するのが好ましい。
この場合、緩衝材は、滑り易い弾性材が良く、典型的には、軟質塩化ビニル材(標準肉厚:1mm)である。
従って、緩衝材10,12は、パネルPa,Pbの繊細な溝(標準:幅0.35mm、深さ5mm)を損傷することなく嵌合突起Pu,Pdの嵌入を可能とし、金属(アルミ)製のレール9,11と、石材とのガタツキによる音鳴りが防止出来、地震、風等による住宅の揺れに対しても、音鳴りが抑制出来る。
【0012】
また、石材パネルPa,Pbは、図6に示す如く、嵌合溝GU,GD,GSを弾性緩衝材10,12によって、レール9,11,90,110と水密的に嵌合させるのが好ましい。
この場合、弾性緩衝材10,12(標準:肉厚1mm)が、図6(A),(B)の如く、レール9,11と、石材パネルとの界面f1を閉止するため、地震時等の石材パネルPa,Pbの動きが抑制出来ると共に、石材パネルPa,Pbの嵌入溝GU,GD,GS内への水溜りの生成が抑制出来、特に寒冷地での、融雪の凍結、融解、の反復による凍害の発生が抑制出来、外壁、即ち、石材パネルPa,Pb、の凍害破壊が抑制出来る。
【0013】
また、本発明の取付け方法に於いて、図1の如く、上側面が係止保持出来ない石材パネルは、下面嵌合溝GDと、側面嵌合溝GSとを保持するのが好ましい。
この場合、例えば、図4(B)の如く、上側面の大部分をアングル形態に切欠して、平坦な切断側面CHとした加工パネルPa2、及び、図4(G)の加工パネルPa4の如く、上側面全体の高さy6を切断して、基本AパネルPaの高さHPをHP´に低くした加工パネルPa4は、H型レールで上側面が係止保持出来ないパネルである。
【0014】
そして、これら加工パネルPa2,Pa4等も、側面嵌合溝GSを備えているため、縦配置の、H型レール片90、又はL型レール片110が、側面嵌合溝GSと嵌合係止することにより、該加工パネルの、下面嵌合溝GDをH型レール9、又はL型レール11が、両側面の嵌合溝GSをH型レール片90、又は、L型レール片110が係止保持し、加工パネルPa2,Pa4等のレール11、レール片90,110による配置施工が可能となる。
従って、石材パネルとして、基本パネルPa、Pbのみを準備し、係止用レールとして、H型レール9とL型レール11のみを準備しておけば、施工現場では、ポータブル切断機での、切断加工のみにより、各種サイズの外壁面への、石材パネルの臨機応変の取付け施工が可能となる。
【0015】
また、本発明の石材パネルの配置施工は、図1に示す如く、柱1、間柱2、土台13の外面に透湿防水シート5を張設し、透湿防水シート5の面上から通気材としての縦縁6,7、横縁8を、柱1、間柱2上に取付け、縦縁6,7及び横縁8上に、H型レール9、L型レール11、及び、必要に応じてH型レール片90、L型レール片110を取付けるのが好ましい。
この場合、各レール9,11、レール片90,110の選択配置は、防水シートを損傷することなく、縦横胴縁を介した柱、間柱への強固なビス固着が可能であり、且つ、各通気胴縁としての縦縁6,7、横縁8の介在によって、石材パネルPa,Pb内面の通気性が確保出来、外壁が、石材パネル張着壁でありながら、家屋内への外気温の影響が抑制出来る。
【0016】
また、本発明の石材パネル取付け方法の実施に際しては、H型レール9及びL型レール11の水平配置は、例えば図7に示す如く、水抜き用の間隔SPを形成して施工するのが好ましい。
この場合、典型的には、柱1上の縦縁6の中心間距離は910mmであるから、H型レール9及びL型レール11の長さを905mmとすれば、各レール相互の横間隔SPは、縦縁6上に5mm確保出来る。
従って、外壁外装材としての、石材パネルの裏面に浸入した雨水は、縦縁6上の間隔SPを介して下方に排出出来る。
【0017】
また、窓開口部Oの両側の外壁側縁WEは、基本BパネルPbの延長部BSを配置し、窓開口部Oの上縁OU及び下縁ODには、基本AパネルPa、又は基本AパネルPaの加工パネルPa2,Pa3,Pa4を配置するのが好ましい。
この場合、図1、図2に示す如く、窓開口部Oの側縁WEに基本BパネルPbの延長部BSを整合させ、窓開口部Oの上下寸法に応じて、下縁ODでは、基本AパネルPaを、図4(B)の如く、調整高さ寸法y2をアングル形態に切落して切断側面CV,CHを形成して、図1の如く配置しても、或いは、図4(F)の如く、基本BパネルPbの延長部BSをアングル形態に切断した加工パネルPb3を図2の如く配置し、基本AパネルPaを、図4(G)の如く、高さHPを高さHP´に切断加工して、図2の如く、加工パネルPb3に衝合配置すれば良い。
【0018】
そして、図示してないが、窓開口部Oの右側縁WE及び上縁OUも、同様に、側縁WEでは、基本BパネルPbの延長部BSが位置するようにパネルを反転配置し、上縁では加工パネルを配置すれば良い。
従って、窓開口部Oの側縁WE及び下縁ODは、窓開口部Oの大きさ(窓サイズ)の如何に関わらず、側縁WEでは、基本BパネルPb、及び該パネルの加工パネルを用い、上縁OU、下縁ODでは、基本AパネルPa、又は、該パネルPaの加工パネルPa2,Pa3を適切に配置することにより、窓開口部Oは、平坦側面FS、切断側面CV,CH等できれいに仕上がる。
【0019】
また、本発明に適用する石材パネルPa,Pbは、表面が鏡面加工であり、裏面が粗面加工であるのが好ましい。
この場合は、石材パネルPa,Pbの表裏を所望の意匠効果によって使い分け出来、側面嵌合溝GSの配置によるパネルPa,Pbの反転使用と相俟って、自在なパネル張設が可能となり、意匠設計面での自由度が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の石材パネル取付け方法は、上下、左右側面に嵌合用溝GU,GD,GSを備えた基本AパネルPaと、上下と一側に嵌合用溝GU,GD,GSを備え、他側に嵌合溝無しの延長部BSを備えた基本BパネルPbとの2種類のパネルを準備し、係止用レールとして、H型レール9とL型レール11との2種類のレールを準備し、ポータブル切断機を準備するだけで、対象建物の外壁に対するパネルの割付けによって、必要に応じて、基本AパネルPa及び基本BパネルPbを切断加工し、H型レール9と、L型レール11とからも、必要に応じて、切断短寸化したH型レール片90、及びL型レール片110を作成することにより、各種寸法の開口部(窓、玄関等)を備えた各種の壁面への対処が可能となり、施工現場で、自在に、寸法変化に対処しながらパネル張りが出来る。
【0021】
しかも、外壁の出隅や窓側縁等の外壁側縁WEは、側面嵌合溝GSの無い平坦側面FSの露出となり、きれいに仕上げることが出来る。
従って、本発明によれば、工場生産品としての、基本AパネルPaと基本BパネルPbと、H型レール9とL型レール11とを、ポータブル切断機と共に、現場に搬入し、対象建物の寸法には、単なる切断作業だけで対応施工出来るため、石材パネルPa,Pbによる外壁施工が、作業性良く実施出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔石材パネルPa,Pb(図4)〕
石材パネルは、基本AパネルPaと、基本BパネルPbとの2種を用意する。
図4(A)は、基本AパネルPaの斜視図であり、図4(D)は、基本BパネルPbの斜視図である。
基本AパネルPaは、図4(A)に示す如く、幅Laが45.4cm、高さHPが27cmで、厚さ(肉厚)TPが1.7cmの、横長矩形の天然花崗岩のパネルであり、上側面SUには嵌合溝GUを、下側面SDには嵌合溝GDを、左側面SL及び右側面SRには嵌合溝GSを連通形態で備えたものであって、各嵌合溝GU,GD,GSは、幅0.35mm、深さ5mmである。
基本BパネルPbは、図4(D)に示す如く、基本AパネルPaの一側に、長さLxが15.6cmの延長部BSを延出形成したものであり、延長部BSの、上面は平坦面FUで、側面も平坦面FSで、下面も平坦面FDである。
即ち、基本BパネルPbは、高さHPが27cm、幅Lbが60cmで、延長部BSのみ、上下側面が溝無しの平坦面、である横長矩形の花崗岩パネルである。
【0023】
そして、加工パネルとしては、例えば、図4(B)に示す如く、基本AパネルPaの上面を長さLx残して、高さy2をアングル状に切断除去すれば、上側面が、嵌合溝の無い平坦面の切断側面CV,CHを備えた加工AパネルPa2となり、図4(C)に示す如く、基本AパネルPaの下面を長さLx残して、下方から、高さy3を、アングル状に切断除去すれば、下側面が、嵌合溝の無い平坦面の切断側面CV,CHを備えた加工AパネルPa3となり、図4(E)に示す如く、基本BパネルPbの延長部BSを、上方から、高さy4で、アングル状に切断除去すれば、一側面がアングル切断側面CV,CH及び延長部BSの側面FSを備えた加工BパネルPb2となり、図4(F)の如く、基本BパネルPbの延長部BSを、下方から、高さy5で、アングル状に切断除去すれば、加工BパネルPb3となり、図4(G)の如く、基本AパネルPaの上面を、上方から、高さy6で切断除去すれば、左右側面が嵌合溝GSを、下面が嵌合溝GDを備え、上面のみが、嵌合溝の存在しない切断側面CHである加工パネルAPa4となる。
そして、これら加工パネルの切断作成に際し、高さy2〜y6は、パネル割付けから自在に決定するものである。
また、壁面へのパネル割付けに応じて、基本AパネルPa、基本BパネルPbの幅La,Lbの切断短寸化も可能である。
【0024】
〔係止用レール(図3)〕
石材パネルPa,Pbを係止保持するレール9,11は、木造躯体にビス止めするものであり、H型レール9は、上下のパネルを係止保持するものであり、L型レール11は、最下端に配置して、最下端のパネルの下側面を支承保持するものであり、図3(A)は、H型レール9の斜視図、図3(C)は、L型レール11の斜視図である。
H型レール9は、図3(A)に示す如く、取付用のビス止め穴H9を備えた定着板9aと、中間の横方向突出のフランジ9bと、フランジ9bの先端の、上部嵌合突起Puと、下部嵌合突起Pd、から成るウエブ9cとを備えた断面H型のアルミ押出成形品(標準長:905mm)であり、ウエブ9cは、厚さ1.5mm、上下幅CWが10mmで、上下嵌合突起Pu,Pdは、それぞれ4mm突出したものである。
そして、H型レール9の使用に際しては、図3(B)に示す如く、肉厚1mmの軟質塩化ビニル製の断面C型の緩衝材10をウエブ9cに嵌着する。
【0025】
また、L型レール11は、図3(C)に示す如く、木造躯体FWへの取付用のビス穴H11を備えた定着板11aと、底面を形成するフランジ11bと、フランジ11bから上方に屈曲突出する上部嵌合突起Puとを備えた、断面L型のアルミ押出成形品であり、標準長は、H型レール9と同長の905mmで上部嵌合突起Puは、H型レール9の上部嵌合突起Puと同じく、1.5mm厚で、4mm突出したものである。
そして、使用に際しては、図3(D)の如く、肉厚1mmの、軟質塩化ビニル製の断面U型の緩衝材12を上部嵌合突起Puに嵌着する。
即ち、H型レール9の、上部嵌合突起Puも、下部嵌合突起Pdも、L型レール11の上部嵌合突起Puも、共に、突出高さが4mmで、共に、肉厚1mmの軟質塩化ビニル緩衝材を嵌着して、各石材パネルPa,Pbの幅3.5mm、深さ5mmの嵌合溝GU,GD,GSに、弾性的に密着嵌合するものである。
【0026】
〔石材パネルの取付け(図1、図2、図5)〕
図1、図5(A)に示す如く、土台13上に、柱1を軸心間距離910mmで配置し、柱1間には、間柱2を配置し、窓開口部Oの、上側には窓まぐさ3、下側には窓台4を配置し、柱1及び間柱2の外面には、透湿防水シート5を張り巡らせ、透湿防水シート5の外側から、柱1、間柱2上に、通気層を確保するための、縦縁6,7を釘打ち固定し、図5(A)の如く、外壁最下端の水切り14上で、L型レール11を縦縁6,7にビス止着する。
この場合、L型レール11の長さは905mmであり、柱1の軸心間距離は910mmであるため、各L型レール11相互の端部には、図7に示す如く、5mmの間隔SPが形成出来、該間隔SPが水切り14への排水用水抜きとなる。
【0027】
そして、L型レール11をスターターとして、外壁の出隅では、図5(B)の如く、基本BパネルPbの延長部BSが来るように、パネルPbの下面の嵌合溝GDをL型レール11の上部嵌合突起Puに係合し、基本BパネルPbに隣接して、基本AパネルPaを、同様に、L型レール11上に係合保持し、順次上方へ、出隅部では、基本BパネルPbを、その他の部位では基本AパネルPaを、H型レール9を用いて、下方パネルの上面嵌合溝GUには下部嵌合突起Pdを、上方パネルの下面嵌合溝GDには上部嵌合突起Puを嵌入して、上下パネルでH型レール9を挟んでH型レール9を縦縁6,7に固定しながらパネル配置施工を実施する。
【0028】
〔窓開口部、例1(図1)〕
窓開口部Oへの石材パネルPa,Pbの取付けは、図1に示す窓開口部Oにあっては、上下寸法が基本AパネルPaの割付け寸法より大であるため、窓開口部Oの窓台4の下面に配置する基本AパネルPaは、上方が窓台4から上方に突出することとなる。
この場合、図1の窓開口部Oの左半にあっては、基本AパネルPaを、図4(B)に示す如く、上面嵌合溝GUを備えた上側面を、左側に長さLx、即ち、基本BパネルPbの延長部BSの長さLx残し、ポータブル切断機(図示せず)で、高さy2でアングル形状に切断除去し、高さHP´の加工AパネルPa2として、図1の如く、下面嵌合溝GDを、H型レール9の上部嵌合突起Puに係止保持し、右面嵌合溝GSを縦縁7上に垂直配置したH型レール片90の左側に位置する上部嵌合突起Puに係止保持し、左面嵌合溝GSを、縦縁6上に垂直配置したH型レール片90の右側に位置する上部嵌合突起Puに係止保持する。
【0029】
次いで、窓開口部Oの左側の外壁側縁WEを、順次、基本BパネルPbをH型レール9で上方に接続保持する。
また、窓開口部Oの右半にあっても、図示してないが、窓開口部Oの左半と同様に、窓開口部Oの右側の、外壁側縁WEには、基本BパネルPbの延長部BSが位置するように、且つ、窓台4の下部にあっては、基本AパネルPaの加工Aパネルを作成して、下面嵌合溝GDをH型レール9で、左側面嵌合溝GS(GL)を縦縁7上の垂直配置のH型レール片90で、右側面嵌合溝GS(GR)を縦縁6上に配置したH型レール片90(図示せず)で係止保持すれば良い。
【0030】
また、図1の窓開口部Oの上部、即ち、窓まぐさ3の前面の、横縁8上への石材パネルの配置は、左半部位では、外壁側縁WEとしての基本BパネルPbの上に、基本AパネルPaをH型レール9で載置しているため、図4(C)の如く、左側下面を長さLxを残して、下方から、高さy3でアングル形状に切断除去した加工AパネルPa3を用い、図1に示す如く、横縁8上に縦配置した両サイドのH型レール片90で、加工AパネルPa3の左側面嵌合溝GL及び右側面嵌合溝GRを挟持し、加工AパネルPa3の左側の長さLxの下方突出部を、下方基本BパネルPbの延長部BS上に載置すれば、両側面及び下面一部の3辺支持となる。
そして、図1の右半部位も、左半部位と同様に、左半部位とは左右対称の加工パネル(図示せず)を用いて配置施工すれば良い。
尚、この場合、窓開口部Oには、慣用の窓枠を配置し、窓枠外周と石材パネルの縁辺とはコーキング等で充填施工するため、各加工パネルPa3は、ガタツキ無く、両側のH型レール片90と下辺の長さLxの突出部での係止保持で、必要且つ十分な保持となる。
【0031】
〔窓開口部、例2(図2)〕
図2は、図1同様に、窓開口部Oの縦寸法が、パネル割付けより上下に若干大な場合であるが、窓開口部Oの寸法を、基本BパネルPbサイドで吸収する例であり、窓開口左半では、最下位の基本Bパネルを、図4(F)の如く、長さLxの延長部BSを、下方から、高さy5に亘って切断除去して加工BパネルPb3とし、加工BパネルPb3に、衝合配置する加工AパネルPa3を、パネル高さHP´を加工BパネルPb3の切断高さy5に整合させて、上辺のみ切断除去し、図2の如く、基本AパネルPaの加工AパネルPa4を、左側では、嵌合溝GSを縦縁6上に配置したL型レール片110に、右側では、嵌合溝GSを縦縁7上に配置したH型レール片90に、それぞれ係止し、且つ、下面嵌合溝GDをL型レール9上に係合保持し、窓開口右半は、左半と対称形態に配置施工する。
【0032】
〔パネルの保持(図6、図7)〕
石材パネルPa,Pbの、上下側縁の嵌合溝GU,GDも、左右側縁の嵌合溝GS(GL,GR)も、共に、幅0.35mmで、深さ5mmの溝である。
また、係合用レールとしてのH型レール9の、上部嵌合突起Puも、下部嵌合突起Pdも、L型レール11の、上部嵌合突起Puも、共に、厚さ1.5mmで、有効嵌入長としての突出長が4mmである。
そして、各嵌合突起Pu,Pdは、肉厚1mmの軟質塩化ビニル製の緩衝材10,12を被覆するため、緩衝材10,12を冠着した嵌合突起Pu,Pdは、石材パネルPa,Pbへの嵌合状態では、厚さ3.5mm、突出長5mmとなる。
【0033】
従って、緩衝材10,12を冠着した各嵌合突起Pu,Pdは、図6(A),(B)に示す如く、石材パネルPa,Pbの嵌合溝GU,GDと、界面f1を密閉形態で嵌合する。
この場合、緩衝材10,12は、軟質塩化ビニルが平滑性及び弾性を備えているため、嵌合突起Pu,Pdの嵌合溝GU,GDへの嵌入係止は、スムーズに達成出来る。
そして、嵌合突起Pu,Pdと嵌合溝GU,GDとの界面f1が密閉形態となるため、各嵌合溝GU,GD内への雨水の浸入は抑制出来る。
【0034】
図7は、H型レール片90の嵌合状態図であるが、上述の係止レールと石材パネルとの嵌合保持形態は、H型レール片90の嵌合突起Pu,Pd、及びL型レール片110の嵌合突起Puと石材パネルの側縁の嵌合溝GSとの関係でも同一である。
従って、本発明の実施例での石材パネルと係止レールとの嵌合保持にあっては、地震、風等による住宅の揺れに対しても、石材パネルの金物(係止レール)との摩擦による音鳴りが防止出来、しかも、石材の嵌合溝GU,GD,GSへの水の浸入が抑制出来、寒冷地にあっても、凍害の発生が抑制出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の窓開口部での、例1の一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の窓開口部での、例2の一部切欠斜視図である。
【図3】係止レール説明図であって、(A)は、H型レールの斜視図、(B)は、H型レール用緩衝材の斜視図、(C)は、L型レールの斜視図、(D)は、L型レール用緩衝材の斜視図である。
【図4】本発明のパネル斜視図であって、(A)は、基本Aパネルを、(B)は、基本Aパネルの加工パネルを、(C)は、基本Aパネルの異なる加工パネルを、(D)は、基本Bパネルを、(E)は、基本Bパネルの加工パネルを、(F)は、基本Bパネルの異なる加工パネルを、(G)は、基本Aパネルの更に別の加工パネルを示す図である。
【図5】本発明の最下端パネルの取付状態説明図であって、(A)は、L型レール取付状態を、(B)は、出隅部でのパネル取付状態を示す図である。
【図6】本発明のパネル係止状態説明図であって、(A)は、L型レールでの取付状態を、(B)は、H型レールでの取付状態を示す図である。
【図7】本発明のH型レール片の取付状態斜視図である。
【図8】特許文献1の従来例図であって、(A)は、係止用H型レールの斜視図、(B)は、パネル係止状態斜視図、(C)は、パネル係止状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 柱
2 間柱
3 窓まぐさ
4 窓台
5 透湿防水シート
6,7 縦縁(通気部材)
8 横縁(通気部材)
9 H型レール(レール)
10 緩衝材(C型緩衝材)
11 L型レール(レール)
12 緩衝材(U型緩衝材)
9a,11a 定着板
9b,11b フランジ
9c ウエブ
13 土台
14 水切り
90 H型レール片(レール片)
110 L型レール片(レール片)
BS 延長部
CV,CH 切断側面(切断面)
FD 平坦下面(平坦面)
FS 平坦側面(平坦面)
FU 平坦上面(平坦面)
FW 木造躯体
GD 下面嵌合溝(嵌合溝)
GS 側面嵌合溝(嵌合溝)
GL 左側面嵌合溝(側面嵌合溝、嵌合溝)
GR 右側面嵌合溝(側面嵌合溝、嵌合溝)
GU 上面嵌合溝(嵌合溝)
H9,H11 ビス止め穴(ビス穴)
O 窓開口部
OU 上縁
OD 下縁
Pa 基本Aパネル(石材パネル、パネル)
Pa2,Pa3,Pa4 加工Aパネル(加工パネル、石材パネル、パネル)
Pb 基本Bパネル(石材パネル、パネル)
Pb2,Pb3 加工Bパネル(加工パネル、石材パネル、パネル)
Pd 下部嵌合突起(嵌合突起)
Pu 上部嵌合突起(嵌合突起)
SP 間隔
WE 外壁側縁(壁側縁、側縁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造躯体(FW)の外面に、係止用のレール(9,11)を配設し、該レール(9,11)に石材パネル(Pa,Pb)を横張り係止する石材パネル取付け方法であって、石材パネルとしては、上下、左右側面に嵌合溝(GU,GD,GS)を備えた横長矩形の基本Aパネル(Pa)と、基本Aパネル(Pa)の一側面から、嵌合溝の存在しない延長部(BS)を延出した横長矩形の基本Bパネル(Pb)とを準備し、係止用のレールとしては、石材パネル(Pa,Pb)の上部及び下部を保持するためのH型レール(9)と、石材パネル(Pa,Pb)の下部を保持するL型レール(11)とを準備し、基本Aパネル(Pa)、基本Bパネル(Pb)、及び、必要に応じて、基本Aパネル(Pa)及び基本Bパネル(Pb)を切断加工した加工パネル(Pa2,Pa3,Pa4,Pb2,Pb3)を、水平配置したH型レール(9)、L型レール(11)、及び、必要に応じて垂直配置したH型レール片(90)及びL型レール片(110)に係止保持し、外壁側縁(WE)には、石材パネルの平坦側面(FS)が位置するように配置施工する外壁の石材パネル取付け方法。
【請求項2】
H型レール(9)は、定着板(9a)とフランジ(9b)とウエブ(9c)から成り、ウエブ(9c)が上部嵌合突起(Pu)及び下部嵌合突起(Pd)を備えた断面H型であり、L型レール(11)は、定着板(11a)とフランジ(11b)と上部嵌合突起(Pu)とを備えた断面L型であり、H型レール片(90)は、H型レール(9)の切断短寸化片であり、L型レール片(110)は、L型レール(11)の切断短寸化片である請求項1の取付け方法。
【請求項3】
H型レール(9)、及びH型レール片(90)のウエブ(9c)には、断面C型緩衝材(10)を嵌着し、L型レール(11)、及びL型レール片(110)の上部嵌合突起(Pu)には、断面U型緩衝材(12)を嵌着する、請求項1又は2の取付け方法。
【請求項4】
石材パネルは、嵌合溝(GU,GD,GS)を弾性緩衝材(10,12)によって、レール(9,11,90,110)と水密的に嵌合させる請求項3の取付け方法。
【請求項5】
上側面が係止保持出来ない石材パネルは、下面嵌合溝(GD)と、側面嵌合溝(GS)とを保持する、請求項1乃至4のいずれか1項の取付け方法。
【請求項6】
柱(1)、間柱(2)、土台(13)の外面に透湿防水シート(5)を張設し、透湿防水シート(5)の面上から通気材としての縦縁(6,7)、横縁(8)を、柱(1)、間柱(2)上に取付け、縦縁(6,7)及び横縁(8)上に、H型レール(9)、L型レール(11)、及び、必要に応じてH型レール片(90)、及びL型レール片(110)を取付ける、請求項1の取付け方法。
【請求項7】
H型レール(9)及びL型レール(11)の水平配置は、水抜き用の間隔(SP)を形成して施工する請求項6の取付け方法。
【請求項8】
窓開口部(O)の両側の外壁側縁(WE)は、基本Bパネル(Pb)の延長部(BS)を配置し、窓開口部(O)の上縁(OU)及び下縁(OD)には、基本Aパネル(Pa)、又は基本Aパネル(Pa)の加工パネル(Pa2,Pa3,Pa4)を配置する、請求項1乃至7のいずれか1項の取付け方法。
【請求項9】
石材パネル(Pa,Pb)は、表面が鏡面加工であり、裏面が粗面加工である、請求項1乃至8のいずれか1項の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−303150(P2007−303150A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132500(P2006−132500)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000188917)松本建工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】