説明

外形欠点の検出方法及びプログラム

【課題】検査物の外形の欠点を検出する場合に、検査物が流れているオンラインリアルタイムの状態で、簡易な手法により、精度が低下することのない疑似直線を算出可能な欠点検出方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】判別装置4の計測データ取込手段11は、1次元のCCDカメラ3からガラス板1の電圧レベルの出力波形を入力し、ガラス板1の角(かど)を特定して検査辺毎の計測データを生成する。疑似直線算出手段12は、疑似直線の算出にあたり、その切片及び傾きの初期値を最小二乗法により算出する。そして、計測データと初期値の切片及び傾きによる初期疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いを示す関数を用いて、囲い込み法により2つの傾きを算出する。また、その2つの傾きに対して2分法により最適な傾きを算出し、当該傾き及びそのときの切片による疑似直線を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板等の外形に発生する欠点を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板等の外形に発生する欠点を検出する手法の研究が進められている。例えば、特許文献1には、ガラス板の切口に発生した欠点を検出する装置が記載されている。一般に、ガラス板製造ラインにおいて、ガラス板の製造は、窯から引き上げられたガラス板を、ラインコンベア上で搬送方向に平行な方向及び垂直な方向にそれぞれ切断することにより行われる。具体的には、トリンマにより搬送方向に平行な方向の切断線(トリンマ線)を引き、斜行カッタにより搬送方向に直角な方向の切断線(カッタ線)を引き、ブレーカによりカッタ線に沿って切断し、中割装置によりトリンマ線に沿って切断する。この切断の際に、ガラス板の切口であるエッジには、ガラス板の面方向の外側に突き出た角(つの)や、ガラス板の面方向の内側に欠けた欠け等の欠点が発生する場合がある。切口欠点検出装置が欠点を検出することにより、切口不良のあるガラス板は、その程度に応じて不良品として廃棄される。このように、切口欠点検出装置は、切口の欠点検出を目視で行う代わりに開発されたものであり、ガラス板が高速で搬送されている状態の下で、そのガラス板の切口に発生した角及び欠け等の欠点を、オンラインリアルタイム処理にて検出することができる。
【0003】
ここで、切口欠点検出装置は、切口を検査する際に、ガラス板の切口面であるエッジ部分の疑似直線を求め、実際に計測したエッジ部分の座標データ(計測データ)とその疑似直線とを比較し、角及び欠けの大きさを算出し、基準値と照合することにより、許容範囲内の欠点であるか否かを判定する。この疑似直線を求めるためには、様々が手法が用いられており、例えば、最小二乗法、ハフ変換法等を用いた手法が様々な検査分野において提案されている。
【0004】
例えば、非特許文献2には、電子部品の外周上の欠点を、最小二乗法及びハフ変換法を用いて検出する装置が記載されている。具体的には、ハフ変換法により正常な外周領域を算出する際に最大度数を与える(ρ,θ)の近傍を検索範囲として、外周座標の出現頻度を計算し、その出現頻度を座標に重み付ける。そして、重み付けした座標データを用いて最小二乗法により、疑似直線を算出するものである。これにより、許容範囲内の湾曲及び歪みを有する電子部品は良品として判定されるから、誤差の少ない正常領域を検出することができる。
【0005】
また、非特許文献3には、物品の検査を、ハフ変換法、固有ベクトル法及び最小二乗法を用いて行う方法が記載されている。具体的には、ハフ変換法により粗近似直線を求め、直線候補点としての距離diを算出し、それらの中央値と前後n個ずつの平均値DMを求めて、その平均値DMと距離ditの間の差の絶対値が基準値を超える点を直線候補点群から除去する。そして、最後に残った直線候補点から、固有ベクトル法または最小二乗法により疑似直線を算出するものである。これにより、直線候補点群に著しくかけ離れた点が含まれていてもその点を除外することができるから、疑似直線を精度高く検出することができる。
【0006】
また、非特許文献4には、物品の欠点を最小二乗法を用いて検査する方法が記載されている。具体的には、最小二乗法を用いて、欠点を検査するための疑似直線を算出し、その後に疑似直線と計測点の座標と間の差を求める。そして、その差が一定値を超えた計測点を除外し、再度最小二乗法を用いて疑似直線を算出し、これを直線近似の係数が収束するまで繰り返すものである。
【0007】
【特許文献1】特開平01−169343号公報
【特許文献2】特開平15−139519号公報
【特許文献3】特開平11−096371号公報
【特許文献4】特開平10−283473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の特許文献2〜4に記載された手法は、いずれも比較的小さい物を検査対象としており、物が流れているオンラインリアルタイムの状態で疑似直線を算出し検査を行うものではない。例えば、検査物を固定できない場合、検査物の流れを制御できない場合、検査物が比較的大きい場合には、検査物がカメラの視野内に収まらないことがある。この場合、検査物を一度に撮影できないため、分離した画像を接合する必要があり、全体として処理が複雑になってしまうという問題があった。
【0009】
また、前述の特許文献3及び4に記載された手法では、疑似直線を算出する際に、不都合な計測点を除外している。このため、疑似直線を算出するための情報量が少なくなり、全体として精度の低い疑似直線が算出される可能性があるから、除外した計測点が必ずしも除外するのに相応しいものではない場合があるという問題があった。一般に、疑似直線を精度高く算出するためには、計測点の情報量はできる限り多いことが望ましい。
【0010】
また、前述の特許文献2〜4に記載された手法は、最小二乗法を用いて疑似直線を算出している。このため、著しく離れた計測点があると、疑似直線を精度高く算出することができなくなるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2及び3に記載された手法は、ハフ変換法を用いて疑似直線を算出している。ハフ変換法は、その処理を行うためのメモリを大量に必要とし、投票方式を用いているため、処理時間がかかるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明はこのような問題に着目してなされたものであり、その目的は、検査物の外形の欠点を検出する場合に、検査物が流れているオンラインリアルタイムの状態で、簡易な手法により、精度が低下することのない疑似直線を算出可能な欠点検出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明において、疑似直線を算出する原理を説明する。算出する疑似直線を(1)式に示す。
【数1】


ここで、計測データ(x,y)は、1次元の撮像装置が検出した光に対応する信号に基づいて生成した座標データを示す。また、bは傾きを、aは切片をそれぞれ示す。
【0014】
そして、最小化したい評価関数は、
【数2】


である。
【0015】
一般に、データcの集合において、これらの中間値であるメディアンcにより、(3)式の絶対偏差の和を最小にすることが知られている。
【数3】

【0016】
したがって、仮に傾きbを固定すると、(2)式の評価関数を最小にする切片aの値は、メディアン関数を用いて(4)式のように表すことができる。
【数4】

【0017】
傾きbについては、(5)式の関数を用いて算出する。
【数5】


本発明は、最小二乗法を用いて疑似直線の傾き及び切片の初期値を求め、囲い込み法を用いて前述の(4)(5)式により2つの傾きを求め、2分法を用いて(4)(5)式により2つの傾きの間に存在する最適な傾きを求め、(1)式を算出する。ここで、最小二乗法は、初期値を求めるために1回のみ用いられる。
【0018】
すなわち、本願発明による欠点検出方法は、検査物の流れ方向に対して斜め方向に細長光源を配置し、該細長光源と平行に1次元の撮像装置を配置し、該撮像装置が検出した光から、前記検査物の外形に発生した欠点を検出する方法において、前記撮像装置が検出した光に対応する信号を入力し、該信号に基づいて計測データを生成する計測データ生成ステップと、該生成した計測データにより、最小二乗法を用いて、初期値としての疑似直線の傾き及び切片を求め、囲い込み法を用いて、前記初期値としての傾き及び切片から、求めるべき疑似直線の傾きをその間の値として有する2つの傾きを求め、2分法を用いて、前記2つの傾きから、疑似直線の傾きを求め、該傾きに対する切片を求めて疑似直線を算出する疑似直線算出ステップと、該算出した疑似直線と、前記生成した計測データとの間の誤差を算出し、該誤差により欠点の幅及び長さを算出し、許容範囲の欠点であるか否かを判定する欠点判定ステップとを有することを特徴とする。
【0019】
本発明を欠点検出方法として説明したが、本発明はコンピュータによって実行されるプログラムとしても実質的に実現し得るものであり、本発明には、欠点検出プログラムも含まれる。すなわち、本発明による欠点検出プログラムは、検査物の流れ方向に対して斜め方向に配置した細長光源、該細長光源と平行に配置した1次元の撮像装置、及び、該撮像装置が検出した光から、前記検査物の外形に発生した欠点を検出する判別装置を備えた装置による欠点検出プログラムであって、前記装置を構成するコンピュータに、前記撮像装置が検出した光に対応する信号を入力し、該信号に基づいて計測データを生成する処理と、該生成した計測データにより、最小二乗法を用いて、初期値としての疑似直線の傾き及び切片を求める処理と、囲い込み法を用いて、前記初期値としての傾き及び切片から、求めるべき疑似直線の傾きをその間の値として有する2つの傾きを求める処理と、2分法を用いて、前記2つの傾きから、疑似直線の傾きを求める処理と、前記求めた傾きに対する切片を求め、前記傾き及び切片により疑似直線を算出する処理と、該算出した疑似直線と、前記生成した計測データとの間の誤差を算出する処理と、該誤差により欠点の幅及び長さを算出し、許容範囲の欠点であるか否かを判定する処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、検査物の外形の欠点を検出する場合に、検査物が流れているオンラインリアルタイムの状態で、簡易な手法により、精度が低下することのない疑似直線を算出することが可能となる。これにより、検査物の外形の欠点を検出する際に、誤判定が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔構成〕
まず、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置の構成について説明する。図1は、切口欠点検出装置の全体構成を示す概略図である。図1(a)(b)において、この反射型の切口欠点検出装置10は、ラインコンベア(図示せず)上を一定速度で搬送されるガラス板1の上方に、長手方向が所定の角度(例えばY軸方向に対して45°の角度)をなすように配置した蛍光灯2と、同じくガラス板1の上方に、CCD素子の配列方向が所定の角度(例えばY軸方向に対して45°の角度)をなし、かつ、蛍光灯2に平行に配置した複数台の1次元のCCDカメラ3と、CCDカメラ3からの出力波形を処理し、欠点の大きさを算出して、許容範囲内の欠点であるか否かを判別する判別装置4とを備えている。
【0022】
この切口欠点検出装置10によれば、蛍光灯2からの光はガラス板1の表面を反射してCCDカメラ3により受光される。この受光量は、ガラス板1のエッジに欠点がある場合と欠点がない場合とでは異なるものとなる。したがって、判別装置4は、この受光量の違いにより、ガラス板1の4辺(搬送方向に平行なトリンマ辺、及び搬送方向に垂直なブレーカ辺)についての欠点情報を得ることができるから、欠点が存在した場合の長さ及び幅を算出し、欠点を検出することができる。
【0023】
図1(c)は、欠点の幅及び長さを説明する図である。ガラス板1の右エッジのトリンマ辺に角の欠点がある場合、欠点の長さは、ガラス板1の搬送方向に平行した方向の角の大きさをいい、欠点の幅は、ガラス板1の搬送方向に垂直の方向の角の大きさをいう。また、ガラス板1のブレーカ辺に欠けの欠点がある場合、欠点の長さは、ガラス板1の搬送方向に垂直の方向の欠けの大きさをいい、欠点の幅は、ガラス板1の搬送方向に平行した方向の欠けの大きさをいう。
【0024】
次に、図1に示した判別装置4の構成について説明する。図2は、判別装置4の構成を示すブロック図である。この判別装置4は、計測データ取込手段11、疑似直線算出手段12、欠点判定手段13及び記憶手段14を備えている。
【0025】
計測データ取込手段11は、CCDカメラ3からガラス板1の各辺における電圧レベルの出力波形を入力し、4つの検査辺の計測データ(検査辺における計測点の座標データ)を生成し、この計測データに基づいて、ガラス板1の2つの辺の接点である角(かど)の計測データを特定し、検査辺毎に計測データを区別し、記憶手段14に格納する。
【0026】
疑似直線算出手段12は、記憶手段14から検査辺毎の計測データを読み出し、当該計測データに基づいて検査辺毎に疑似直線を算出する。この疑似直線の算出(疑似直線の切片及び傾きの算出)にあたり、切片及び傾きの初期値を最小二乗法により算出する。そして、計測データと初期値の切片及び傾きによる初期疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いを示す関数を用いて、囲い込み法により2つの傾きを算出し、その2つの傾きに対して2分法により最適な傾きを算出し、当該傾き及びそのときの切片による疑似直線を算出する。この場合、切片は、メディアン(median)関数を用いて傾きから算出する。
【0027】
欠点判定手段13は、疑似直線算出手段12により算出された疑似直線と、記憶手段14から読み出した計測データとの間の誤差を算出し、欠点の幅及び長さを算出し、許容範囲内の欠点であるか否かを判定する。
【0028】
〔動作〕
次に、図1に示した切口欠点検出装置10における判別装置4の動作について説明する。図3は、切口欠点検出装置10の判別装置4による欠点検出処理の全体を説明するためのフローチャート図である。まず、計測データ取込手段11は、CCDカメラ3からガラス板1の各検査辺における電圧レベルの出力波形を入力し、出力波形に基づいて各検査辺における計測点の座標データである計測データ(x,y)を生成する(ステップS2−1)。
【0029】
図4、図5及び図6は、図3に示したステップ2−1の計測データ取り込み処理の詳細を説明する図である。図4は、ガラス板1の左エッジにおいて、A、B及びC部分の計測データを生成する際の電圧レベルの出力波形等を示す。ガラス板1が上から下方向に搬送されるとして、CCDカメラ3は、(1)(2)(3)の順に図4の下に示した電圧レベルの出力波形を判別装置4に出力する。判別装置4は、これらの出力波形を入力し、入力時間に応じたCCDカメラ3による検出位置(ドット位置)のプロット図を生成する。この場合、出力波形の変化するドット位置がエッジ部分に相当するから、このプロット図(時間とドット位置との関係)及びガラス板1の移動速度に基づいて、左エッジにおけるA、B及びC部分のx−y座標を得ることができる。このx−y座標を計測データ(x,y)として扱う。ここで、iは計測データのプロット番号(計測番号)を示す。
【0030】
図5は、ガラス板1の右エッジにおいて、A、B及びC部分の計測データを生成する際の電圧レベルの出力波形等を示す。図4と同様に、判別装置4は、出力波形を入力し、入力時間に応じたCCDカメラ3による検出位置(ドット位置)のプロット図を生成し、このプロット図(時間とドット位置との関係)及びガラス板1の移動速度に基づいて、右エッジにおけるA、B及びC部分のx−y座標を得る。このx−y座標を計測データ(x,y)として扱う。
【0031】
図6は、ガラス板1の中央部分において、A及びC部分の計測データを生成する際の電圧レベルの出力波形等を示す。図4及び図5と同様に、判別装置4は、出力波形を入力し、入力時間に応じたCCDカメラ3による検出位置(ドット位置)のプロット図を生成し、このプロット図(時間とドット位置との関係)及びガラス板1の移動速度に基づいて、中央部分におけるA及びC部分のx−y座標を得る。このx−y座標を計測データ(x,y)として扱う。
【0032】
図3に戻って、ステップ2−1によりガラス板1における4つの検査辺の計測データ(x,y)を得た後に、計測データ取込手段11は、ガラス板1の4つのコーナーである角(かど)に相当する計測データを特定し(ステップS2−2)、検査辺毎に計測データを区別して各検査辺の計測データを特定する(ステップS2−3)。
【0033】
具体的には、計測データ取込手段11は、図4及び図5に示したプロット図(時間とドット位置との関係)に基づいて4つの角(かど)1〜4を特定する。図4において、計測データ取込手段11は、まず、検査の最初の点pの計測データ及び最後の点である角2の計測データを、プロット図に基づいて、時間軸におけるドット位置情報の有無や変化量等によって特定する。そして、角qの計測データを、プロット図に基づいて、ドット位置情報の有無や変化量等によって特定する。そして、角1の計測データを、プロット図が平行四辺形であることを利用して、角2、点p及び点qの計測データにより特定する。
【0034】
図5において、計測データ取込手段11は、前述と同様に、まず、検査の最初の点である角3の計測データ及び最後の点sの計測データを、プロット図に基づいて、時間軸におけるドット位置情報の有無や変化量等によって特定する。そして、点rの計測データを、プロット図に基づいて、ドット位置情報の有無や変化量等によって特定する。そして、角4の計測データを、プロット図が平行四辺形であることを利用して、角3、点r及び点sの計測データにより特定する。このようにして、ガラス板1の4つの角1〜4の計測データが特定される。
【0035】
ガラス板1の4つの角1〜4の計測データを特定したことにより、計測データ取込手段11は、図4に示したB部分に相当する左エッジのトリンマ辺の計測データを、角1の計測データ及び角2の計測データに基づいて特定する。また、図5に示したB部分に相当する右エッジのトリンマ辺の計測データを、角3の計測データ及び角4の計測データに基づいて特定する。また、図4、図5及び図6に示したA部分に相当する先方エッジのブレーカ辺の計測データを特定し、同様に、C部分に相当する後方エッジのブレーカ辺の計測データを特定する。このようにして、各検査辺の計測データが特定される。
【0036】
図3に戻って、疑似直線算出手段12は、計測データ取込手段11により特定された各検査辺の計測データに基づいて、疑似直線(y=bbx+aa)を算出する(ステップS2−4)。ここで、bbは疑似直線の傾きを示し、aaは疑似直線の切片を示す。具体的には、疑似直線算出手段12は、最小二乗法により、切片a1及び傾きb1を初期値として算出する(ステップS2−4−1)。そして、計測データと初期値の切片a1及び傾きb1による初期疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いを示す関数を用いて、囲い込み法により、2つの傾きを算出し(ステップS2−4−2)、2分法により、前記2つの傾きの間に存在する疑似直線の傾きbbを算出する(ステップS2−4−3)。この場合、切片aaは、メディアン(median)関数を用いて傾きbbから算出する。この疑似直線算出手段12による処理の詳細については後述する。
【0037】
欠点判定手段13は、ステップ2−3で計測データ取込手段11により特定された計測辺毎の計測データ、及び、ステップ2−4で疑似直線算出手段12により算出された疑似直線に基づいて、各検査辺について欠点の幅及び長さを算出する(ステップS2−5)。具体的には、欠点判定手段13は、検査辺毎に、計測データと疑似直線との間の差を算出する。ガラス板1の左エッジのトリンマ辺については、欠点の幅がx軸方向であるから(図1(c)を参照)、その検査辺のx軸における計測データと疑似直線との間の差を算出し、その差の最大値を欠点の幅として設定する。この欠点の幅の算出に際して、x軸における計測データと疑似直線との間の差が所定の値以上である場合の計測データの数をカウントし、その数に応じた距離を、欠点の長さとして設定する。ガラス板1の右エッジのトリンマ辺についても、左エッジのトリンマ辺の場合と同様に、欠点の幅及び長さを算出する。
【0038】
また、ガラス板1の前方エッジ及び後方エッジのブレーカ辺については、欠点の幅がy軸方向であるから(図1(c)を参照)、その検査辺のy軸における計測データと疑似直線との間の差を算出し、その差の最大値を欠点の幅として設定する。この欠点の幅の算出に際して、y軸における計測データと疑似直線との間の差が所定の値以上である場合の計測データの数をカウントし、その数に応じた距離を、欠点の長さとして設定する。
【0039】
欠点判定手段13は、ステップ2−5で各検査辺についての欠点の幅及び長さを算出した後、その欠点の幅及び長さを、それぞれ予め設定された基準値と比較し、幅及び長さのうちの少なくとも一方がその基準値よりも大きい場合に、その欠点を許容範囲外の欠点であると判定し、幅及び長さが共にそれぞれの基準値以下の場合に、その欠点を許容範囲内の欠点であると判定する(ステップS2−6)。
【0040】
次に、図3に示したステップ2−4(ステップ2−4−1〜3)における疑似直線を算出する処理の詳細について説明する。図7は、その疑似直線算出処理の詳細を説明するフローチャート図である。この処理は、検査辺毎に、検査辺の計測データ(x,y)、及び前述した(4)式及び(5)式を用いて行われる(ステップS3−1)。まず、疑似直線算出手段12は、最小二乗法により、切片a1及び傾きb1を初期値として算出し(ステップS3−2)、傾きの標準偏差sigbを算出する(ステップS3−3)。この最小二乗法は、図7の処理において、初期値を求めるために1回のみ用いられる。
【0041】
疑似直線算出手段12は、(4)式により傾きb1のときの切片aを求め、(5)式によりf(b1)を求めて0以上であるか否かを判定する(ステップS3−4)。ここでは、計測データと切片a及び傾きb1による初期疑似直線との間の位置関係を求め、その位置関係における計測データの分布度合いに応じて、傾きをb1に比べて大きくすべきか小さくすべきかを判定する。そして、f(b1)>0の場合は、傾きをb1よりも大きくすべきであると判断し、標準偏差sigbに基づいた値をb1に加算した傾きb2を算出する(ステップS3−5)。また、f(b1)>0でない場合は、傾きをb1よりも小さくすべきであると判断し、標準偏差sigbに基づいた値をb1から減算した傾きb2を算出する(ステップS3−6)。
【0042】
そして、疑似直線算出手段12は、(4)式により傾きb2のときの切片aを求め、(5)式によりf(b2)を求め、f(b1)とf(b2)との積が0以上であるか否かを判定する(ステップS3−7)。ここでは、計測データと傾きb1による疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合い、及び、計測データと傾きb2による疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いについて、これらの分布度合いの関係を判定する。そして、その積が0よりも大きい場合は、新たな傾きb1及びb2を設定して(ステップS3−8)ステップ3−7に戻る。また、積が0以下の場合は、その傾きb1とb2との間に存在する傾きによる疑似直線が、求める疑似直線になるとして、次のステップ3−9に移行する。このようにして、ステップ3−7及び3−8の囲み込み法により、傾きb1及びb2が算出される。
【0043】
そして、疑似直線算出手段12は、傾きb1とb2との差が標準偏差sigbに基づいた値よりも大きいか否かを判定する(ステップS3−9)。その差が標準偏差sigbに基づいた値よりも大きい場合は、傾きb1とb2との中間の値bbにより(4)式を介して(5)式を求め(ステップS3−10)、f(bb)とf(b1)との積が0以上であるか否かを判定し(ステップS3−11)、傾きb1またはb2の値を中間の値bbに置き換えながら(ステップS3−12,13)、ステップ3−9〜3−13の処理を行う。そして、ステップ3−9において、傾きb1とb2との差が標準偏差sigbに基づいた値以下の場合は、そのときの中間の値である傾きbb、及び、(4)式により求めた傾きbbの場合の切片aaを求める疑似直線の傾き及び切片として設定する(ステップS3−14)。このようにして、ステップ3−9〜13の2分法により、疑似直線の傾きbb及び切片aaが算出される。
【0044】
以上のように、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置10によれば、計測データ取込手段11が、搬送されているガラス板の電圧レベルの波形を1次元のCCDカメラ3から入力し、検査辺毎の計測データを特定するようにした。また、判別装置4が、検査辺毎の計測データを用いて、最小二乗法により初期値となる切片及び傾きを算出し、囲い込み法及び2分法により、計測データと初期値の切片及び傾きによる初期疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いを示す関数、及びメディアン関数を用いて、疑似直線を算出するようにした。これにより、ガラス板の切口に発生した欠点を検出する場合に、ガラス板が流れているオンラインリアルタイムの状態で、簡易な手法により疑似直線を算出することが可能となる
【0045】
また、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置10によれば、1次元のCCDカメラ3を用いて、搬送されているガラス板1の各所を撮影し、検査辺毎の計測データを特定してガラス板1の切口の欠点を検出するようにした。従来は、検査物を固定できない場合、検査物の流れを制御できない場合、または検査物が比較的大きい場合に、2次元カメラの視野内に収まらないことから、複数の画像を接合する必要があった。本発明の実施の形態では、このような複数の画像を接合する複雑な処理を行う必要がない。
【0046】
また、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置10によれば、疑似直線算出手段12が、不都合な計測データを除外することなく、全ての計測データを用いて疑似直線を算出するようにした。これにより、有用な計測データを誤って除外することがなくなり、疑似直線を算出するための情報量が少なくなることがないから、全体として精度の高い疑似直線を算出することが可能となる。したがって、欠点を許容するか否かの判定において、誤判定が少なくなる(図8を参照)。
【0047】
また、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置10によれば、判別装置4が、最小二乗法を、初期値を求めるために最初の1回だけ用いるようにした。これにより、著しく離れた計測データがあったとしても、精度の高い疑似直線を求める上で、大きな影響を受けることはない(図9を参照)。
【0048】
また、本発明の実施の形態による切口欠点検出装置10によれば、判別装置4が、最小二乗法、囲い込み法及び2分法を用いて疑似直線を算出するようにした。これにより、ハフ変換法を用いることなく疑似直線を算出することができるから、ハフ変換法の処理を行うためのメモリを大量に必要とすることがない。また、投票方式を用いる必要がないから、それに伴う処理時間がかかることもない。
【0049】
尚、切口欠点検出装置10の判別装置4は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。判別装置4に備えた計測データ取込手段11、疑似直線算出手段12及び欠点判定手段13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピィーディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0050】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、ガラス板1を対象として説明したが、ガラス板1の代わりにシート形状の検査物であってもよい。また、上記実施の形態では、切口欠点検出装置10を、オンラインリアルタイム処理で、ガラス板1のエッジにおける切口の欠点を検出するために用いるようにしたが、同様のオンラインリアルタイム処理で、ガラス板1等の検査物のエッジ自体を検査するために用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態による切口欠点検出装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の判別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】欠点検出処理の全体を説明するフローチャート図である。
【図4】図3の計測データの取り込み処理の詳細を説明する第1の図である。
【図5】図3の計測データの取り込み処理の詳細を説明する第2の図である。
【図6】図3の計測データの取り込み処理の詳細を説明する第3の図である。
【図7】図3の疑似直線を算出する処理の詳細を説明するフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態による効果を説明する図である。
【図9】最小二乗法により求めた疑似直線と本発明の実施の形態により求めた疑似直線とを比較する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス板
2 蛍光灯
3 CCDカメラ
4 判別装置
10 切口欠点検出装置
11 計測データ取込手段
12 疑似直線算出手段
13 欠点判定手段
14 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査物の流れ方向に対して斜め方向に細長光源を配置し、該細長光源と平行に1次元の撮像装置を配置し、該撮像装置が検出した光から、前記検査物の外形に発生した欠点を検出する方法において、
前記撮像装置が検出した光に対応する信号を入力し、該信号に基づいて計測データを生成する計測データ生成ステップと、
該生成した計測データにより、最小二乗法を用いて、初期値としての疑似直線の傾き及び切片を求め、囲い込み法を用いて、前記初期値としての傾き及び切片から、求めるべき疑似直線の傾きをその間の値として有する2つの傾きを求め、2分法を用いて、前記2つの傾きから、疑似直線の傾きを求め、該傾きに対する切片を求めて疑似直線を算出する疑似直線算出ステップと、
該算出した疑似直線と、前記生成した計測データとの間の誤差を算出し、該誤差により欠点の幅及び長さを算出し、許容範囲の欠点であるか否かを判定する欠点判定ステップとを有することを特徴とする欠点検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠点検出方法において、
前記疑似直線算出ステップが、囲い込み法を用いて、計測データと初期値の切片及び傾きによる初期疑似直線との間の位置関係における計測データの分布度合いにを示す関数により、前記2つの傾きを求めることを特徴とする欠点検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の欠点検出方法において、
前記疑似直線算出ステップが、計測データを(x,y)、Nを計測データの数、bを傾き、aを切片とした場合に、計測データの分布度合いを示す関数を


として、前記2つの傾きを求めることを特徴とする欠点検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の欠点検出方法において、
前記疑似直線算出ステップが、メディアン関数を用いて、前記傾きに対する切片を求めることを特徴とする欠点検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の欠点検出方法において、
前記疑似直線算出ステップが、計測データを(x,y)、Nを計測データの数、bを傾き、及びaを切片とした場合に、以下のメディアン関数


を用いて、傾きbに対する切片aを求めることを特徴とする欠点検出方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の欠点検出方法において、
前記計測データ生成ステップが、入力した信号から、検査物の4つの角(かど)の計測データを特定し、該4つの角の計測データから4つの検査辺の計測データをそれぞれ生成し、
前記疑似直線算出ステップ及び欠点判定ステップが、前記検査辺毎に、疑似直線を算出し、欠点を判定することを特徴とする欠点検出方法。
【請求項7】
検査物の流れ方向に対して斜め方向に配置した細長光源、該細長光源と平行に配置した1次元の撮像装置、及び、該撮像装置が検出した光から、前記検査物の外形に発生した欠点を検出する判別装置を備えた装置による欠点検出プログラムであって、前記装置を構成するコンピュータに、
前記撮像装置が検出した光に対応する信号を入力し、該信号に基づいて計測データを生成する処理と、
該生成した計測データにより、最小二乗法を用いて、初期値としての疑似直線の傾き及び切片を求める処理と、
囲い込み法を用いて、前記初期値としての傾き及び切片から、求めるべき疑似直線の傾きをその間の値として有する2つの傾きを求める処理と、
2分法を用いて、前記2つの傾きから、疑似直線の傾きを求める処理と、
前記求めた傾きに対する切片を求め、前記傾き及び切片により疑似直線を算出する処理と、
該算出した疑似直線と、前記生成した計測データとの間の誤差を算出する処理と、
該誤差により欠点の幅及び長さを算出し、許容範囲の欠点であるか否かを判定する処理とを実行させる欠点検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−263696(P2007−263696A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88212(P2006−88212)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】