説明

外板用補強材および外板の補強方法

【課題】補強材形状を変更することなく、外板意匠面に発生する歪を抑制することのできる外板用補強材および外板の補強方法を提供する。
【解決手段】25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着後、180℃で20分加熱後の1mm変位時強度が20N以上であり、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下であることを特徴とする外板用補強材7と、この外板用補強材を外板4に貼着した後、発泡硬化させることにより、外板を補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外板用補強材および外板の補強方法に関し、詳しくは、輸送機械などの各種産業機械の外板に貼着して、その外板を補強するための外板用補強材および外板の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体外板は、車体重量を軽減するために、一般的に0.6〜0.8mmの薄肉鋼板に加工されている。そのため、薄肉鋼板の内側に、鋼板補強シートを貼着して補強することが実施されている。
【0003】
また、このような鋼板補強シートとして、ガラスクロス、金属薄板などの拘束層に、加熱硬化性の樹脂組成物からなるシート状の樹脂層が積層されたものが知られており、加熱硬化性の樹脂組成物としては、エポキシ樹脂組成物(特許文献1参照)や、スチレン・ブタジエン系ゴム、エポキシ系樹脂およびその硬化剤を含むゴム−エポキシ系組成物(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、近年更なる車体重量軽量化の流れから鋼板の更なる薄肉化や車両外板素材を従来の鋼板から比重の軽いアルミニウム板に変更するという傾向が見られる。
【0005】
鋼板の更なる薄肉化や素材のアルミニウム板への変更によって、それらに従来の鋼板補強用接着シートを用いた場合、外板に歪が発生し、車両意匠面に悪影響を与えるという不具合が発生する場合がある。このため車両意匠面に発生する歪を抑制する補強材として補強材の外周部の厚みを減少させたものが提案されている。(例えば、特許文献3参照)。また補強材端部を波型形状に加工することにより歪を抑制する手法なども用いられている。(例えば、特許文献4参照)。しかしながらこれらのように補強材形状を変更することは、製造工程上煩雑な上、十分な歪低減の効果を得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−325349号公報
【特許文献2】特開平11−246827号公報
【特許文献3】特開2006−341821号公報
【特許文献4】特開2004−106603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、補強材形状を変更することなく、外板意匠面に発生する歪を抑制することのできる外板用補強材および外板の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の外板用補強材は、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の1mm変位時強度が20N以上であり、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下であることを特徴としている。
【0009】
また本発明の外板用補強材は、少なくとも低極性ゴムとアクリロニトリル・ブタジエンゴムを含むゴム成分、可とう性エポキシ樹脂、硬化剤および発泡剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂層を有することが好適である
【0010】
また、本発明の外板用補強材は、上記ゴム成分と可とう性エポキシ樹脂との重量比率が、20:80〜95:5であることが好適である。
【0011】
また、本発明の外板用補強材は、硬化剤が、加熱硬化型硬化剤であることが好適である。
【0012】
また、本発明の外板用補強材は、発泡剤が、熱分解性発泡剤であることが好適である。
【0013】
また、本発明の外板用補強材は、前記樹脂層に積層される補強層を備えていることが好適である。
【0014】
さらに、本発明は、上記した外板用補強材を、外板に貼着した後、発泡硬化させる工程を含む、外板の補強方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外板用補強材および外板の補強方法によれば、補強材の形状等を変更することなく車両意匠面に発生する歪を抑制し、車両意匠面を補強することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の外板用補強材を用いて、鋼板を補強する方法の一実施形態を示す工程図であって、(a)は、鋼板補強シートを用意して、離型紙を剥がす工程、(b)は、鋼板補強シートを鋼板に貼着する工程、(c)は、鋼板補強シートを加熱して発泡硬化させる工程を示す。
【図2】本発明の外板用補強材の歪量を評価する評価方法を示すものであって、(a)は、評価用のアルミパネルに鋼板用補強材を貼り合わせた状態を示し、(b)は、表面凹凸の測定ピッチを示す。なお図面中、長さの単位はmmである。
【図3】本発明の外板用補強材の歪の状態を評価した結果を示すものであって、(a)は、比較例1の外板用補強材をアルミパネルに貼り合わせた状態を示し、(b)は、実施例1の外板用補強材をアルミパネルに貼り合わせた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の外板用補強材は、外板に貼着して補強する外板用補強材であって、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の1mm変位時強度が20N以上であり、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明において、冷間圧延鋼板に対する1mm変位時強度の測定には、日本テストパネル社製の冷間圧延鋼板(SPCC−SD)を用いる。
【0019】
本発明においては、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の1mm変位時強度を20N以上とする外板用補強材を用いることで、外板を効率的に補強できるという利点を有する。本発明においては、1mm変位時強度は20〜150N、更に22〜70Nであることが好ましい。
【0020】
また本発明においては、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の2mm変位時強度が25N以上、好ましくは25〜250N、更に30〜100Nであることが望ましい。2mm変位強度はより大きな変形に対する補強性を示し、実際の使用で想定される衝撃に対応するためには、上記範囲内であることが望ましい。
【0021】
また本発明において、アルミニウムパネルの歪量の測定には、日本テストパネル社製のアルミパネル(A6061P)を用いる。
【0022】
本発明においては、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下である外板用補強材を用いることで、外板の意匠性に影響を与えずに外板を補強することができるという利点を有する。本発明においては、歪量は100μm以下、更に80μm以下(通常30μm以上)であることが好ましい。
【0023】
本発明の外板用補強材は、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の1mm変位時強度が20N以上であり、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下であれば、その構成は特に限定されないが、少なくとも低極性ゴムとアクリロニトリル・ブタジエンゴムを含むゴム成分、可とう性エポキシ樹脂、硬化剤および発泡剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂層を有することが望ましい。
【0024】
一般の鋼板補強材では、補強強度を上げるためにエポキシ樹脂を用いることが多い。しかしながら従来使用されてきたエポキシ樹脂は、硬化する際の体積収縮が大きく、歪を発生する原因となると考えられる。本発明においては、可とう性エポキシ樹脂を用いることで樹脂硬化物に可とう性を付与し、強度を低下させることなく歪量のみを低減させる樹脂組成物を好適に調整することができる。
【0025】
また低極性ゴムを用いることで広範囲にわたる温度領域での良好な取り扱い作業性及び、油面鋼板に対する十分な接着性を発現することが出来る。
【0026】
またアクリロニトリル・ブタジエンゴムを用いることで、低極性ゴムと可とう性エポキシ樹脂成分の相溶化効果を高め、混練作業性及び取り扱い作業性の良好な樹脂組成物を調整することができる。
【0027】
本発明において用いられるゴム成分は、少なくとも低極性ゴムとアクリロニトリル・ブタジエンゴムを含む。
【0028】
本発明において、低極性ゴムは、アミノ基、カルボキシル基、ニトリル基などの極性基を分子内に有さないゴムであって、スチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソプレン・イソブチレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ポリブテンゴムなど固形もしくは液状のものが挙げられる。本発明においては混練作業性、及び成形性に優れるという点でスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムが好ましく、特にスチレン・ブタジエンゴムが望ましい。低極性ゴムの配合割合は、例えば、可とう性エポキシ樹脂およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、1〜300重量部、好ましくは、5〜200重量部である。低極性ゴムを含有させることにより、外板に油分が付着している場合などにおいて、油面接着性を向上させることができる。
【0029】
本発明において、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体)は、アクリロニトリルとブタジエンとの乳化重合により得られる合成ゴムであり、特に制限されず、例えば、カルボキシル基が導入されているものや、硫黄や金属酸化物などにより部分架橋されているものなども、用いることができる。アクリロニトリル・ブタジエンゴムは、固形ゴムであって、エポキシ樹脂との相溶性が良好である。そのため、アクリロニトリル・ブタジエンゴムを含有させることで、常温付近における広範囲の温度領域において、粘着性および取扱性、さらには補強性を向上させることができる。また、このようなアクリロニトリル・ブタジエンゴムは、アクリロニトリル含量が、10〜50重量%のものが好ましく用いられ、また、ムーニー粘度が、25(ML1+4、at100℃)以上のものが好ましく用いられる。
【0030】
また本発明においては、低極性ゴムおよびアクリロニトリル・ブタジエンゴム以外のゴム成分を併用してもよく、例えばアクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーン変性ゴム等を併用することが出来る。低極性ゴムおよびアクリロニトリル・ブタジエンゴム以外のゴム成分を併用する場合、油面接着性を損なう場合があり、その配合割合をゴム成分中50重量%以下、好ましくは30重量%以下とすることが望ましい。
【0031】
本発明において、可とう性エポキシ樹脂は、骨格中に柔軟性成分を有するエポキシ樹脂であり、例えば脂肪族変性エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂、ゴム(NBR、カルボキシル基末端NBR、アミノ基末端NBR、等)変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリオール変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等があげられる。これらの可とう性エポキシ樹脂の中でもゴム成分との相溶性の点、油面への接着性で脂肪族変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂を好適に用いることができ、特にダイマー酸変性エポキシ樹脂を用いることが望ましい。これらの可とう性エポキシ樹脂は1種又は2種類以上併せて用いることができる。
【0032】
本発明において可とう性エポキシ樹脂のエポキシ当量は200g/eq〜2000g/eq、好ましくは500g/eq〜1200g/eqが望ましい。エポキシ当量が200g/eq未満では可とう性に乏しいという不具合があり、エポキシ当量が2000g/eqを超えると補強材として必要な貼付け作業性と補強性を両立しないという不具合が発生するおそれがある。
【0033】
また本発明においては、可とう性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を併用してもよく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂 、ビスフェノールF型エポキシ樹脂 、フェノールノボラック型エポキシ樹脂 、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂 、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂 、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂 、脂肪族系エポキシ樹脂 、グシシジルエーテル型エポキシ樹脂 、ビスフェノールS型エポキシ樹脂 、ビフェニル型エポキシ樹脂 、ジシクロ型エポキシ樹脂 、ナフタレン型エポキシ樹脂等も併用することが出来る。このようなエポキシ樹脂は低温で良好な粘着性を発現させるべく常温で液状もしくは半固形ものが好ましく用いられる。
【0034】
なお可とう性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を併用する場合、外板に歪が発生する場合があり、可とう性エポキシ100重量部に対してその他のエポキシ樹脂を100重量部以下、好ましくは50重量部以下とすることが望ましい。
【0035】
本発明の外板用補強材は、ゴム成分と可とう性エポキシ樹脂との重量比率が20:80〜95:5、好ましくは30:70〜80:20であることが好適である。ゴム成分が20%未満では取り扱い作業性が悪く、また油面鋼板に対する接着性が十分でない場合がある。一方ゴム成分が95%を越える場合には硬化後鋼板に対する接着性が弱くなる場合がある。
【0036】
アクリロニトリル・ブタジエンゴムは、可とう性エポキシ樹脂との重量比率において、可とう性エポキシ樹脂:アクリロニトリル・ブタジエンゴムが、70:30〜95:5、さらには、75:25〜92:8であることが好ましい。可とう性ポキシ樹脂との重量比率において、アクリロニトリル・ブタジエンゴムが、30%を超えると、補強効果が減少する場合がある。また、5%未満であると、鋼板補強用樹脂組成物の粘度が低くなり過ぎて、取り扱い性が不良となる場合がある。その一方で、上記の重量比率の範囲において、可とう性エポキシ樹脂との良好な相溶性に起因する低温粘着性、アクリロニトリル・ブタジエンゴムが固形ゴムであることに起因する高温凝集性を発現させることができ、優れた取り扱い性および補強効果を得ることができる。
【0037】
本発明において、硬化剤としては、加熱により硬化する加熱硬化型硬化剤が好ましく、例えば、アミン系化合物類、酸無水物系化合物類、アミド系化合物類、ヒドラジド系化合物類、イミダゾール系化合物類、イミダゾリン系化合物類などが挙げられる。また、その他に、フェノール系化合物類、ユリア系化合物類、ポリスルフィド系化合物類などが挙げられる。
【0038】
アミン系化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0039】
酸無水物系化合物類としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0040】
アミド系化合物類としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0041】
ヒドラジド系化合物類としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0042】
イミダゾール系化合物類としては、例えば、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0043】
イミダゾリン系化合物類としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0044】
これらは、単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。これらのうち、接着性を考慮すると、ジシアンジアミドが好ましく用いられる。
【0045】
また、硬化剤の配合割合は、使用する硬化剤とエポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂)との当量比にもよるが、例えば、エポキシ樹脂およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、0.5〜50重量部、好ましくは、1〜40重量部である。
【0046】
また、硬化剤とともに、必要により、硬化促進剤を配合してもよい。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、尿素類、3級アミン類、リン化合物類、4級アンモニウム塩類、有機金属塩類などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。硬化促進剤の配合割合は、例えば、エポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂)およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0047】
本発明において、発泡剤としては、熱分解により発泡する熱分解性発泡剤が好ましく、例えば、無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。
【0048】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。
【0049】
また、有機系発泡剤としては、例えば、N−ニトロソ系化合物(N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミドなど)、アゾ系化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミド、バリウムアゾジカルボキシレートなど)、フッ化アルカン(例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなど)、ヒドラジン系化合物(例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)など)、セミカルバジド系化合物(例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)など)、トリアゾール系化合物(例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなど)などが挙げられる。
【0050】
なお、発泡剤としては、加熱膨張性の物質(例えば、イソブタン、ペンタンなど)がマイクロカプセル(例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセル)内に封入された熱膨張性微粒子などを用いてもよく、そのような熱膨張性微粒子としては、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を用いてもよい。
【0051】
これらは、単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。これらのうち、外的要因に影響されず安定した発泡を考慮すると、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)が好ましく用いられる。
【0052】
また、発泡剤の配合割合は、例えば、エポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂)およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは、0.5〜20重量部である。
【0053】
また、発泡剤とともに、必要により、発泡助剤を配合してもよい。発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、尿素系化合物、サリチル酸系化合物、安息香酸系化合物などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。発泡助剤の配合割合は、例えば、エポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂)およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0054】
また、本発明の外板用補強材に用いる樹脂組成物には、上記成分に加えて、充填剤を含んでいることが好ましい。充填剤を含有させることにより、補強効果を向上させることができる。
【0055】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、タルク、マイカ、クレー、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、酸化チタン、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム粉、ガラスバルーンなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。充填剤の配合割合は、例えば、エポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂)およびアクリロニトリル・ブタジエンゴムの合計100重量部に対して、10〜500重量部、好ましくは、50〜300重量部である。
【0056】
さらに、本発明の外板用補強材に用いる樹脂組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて、例えば、粘着付与剤(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、石油系樹脂など)、顔料(例えば、カーボンブラックなど)、揺変剤(例えば、モンモリロナイトなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸など)、スコーチ防止剤、安定剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの公知の添加剤を適宜含有させてもよい。
【0057】
そして、本発明の外板用補強材に用いる樹脂組成物は、上記した各成分を、上記した配合割合において配合することにより得ることができ、特に制限されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などによって混練して、混練物として調製することができる。
【0058】
より具体的には、例えば、可とう性エポキシ樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、充填剤、低極性ゴムを、加熱したミキシングロールで混練した後、冷却後、さらに、硬化剤、硬化促進剤、発泡剤を加えて、ミキシングロールで混練することにより、混練物として調製することができる。
【0059】
その後、混練物として得られる樹脂組成物を、特に制限されないが、発泡剤が実質的に分解しない温度条件下で、例えば、カレンダー成形、押出成形あるいはプレス成形などによって圧延して、樹脂層を形成し、その樹脂層を補強層に貼り合わせて積層することにより、外板用補強材を得る。
【0060】
なお、圧延された樹脂層の厚みは、例えば、0.4〜3mm、好ましくは、0.5〜2.5mmである。
【0061】
また、補強層は、発泡後の樹脂層(以下、発泡体層とする。)に靭性を付与するものであり、シート状をなし、また、軽量および薄膜で、発泡体層と密着一体化できる材料から形成されることが好ましく、そのような材料として、例えば、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、合成樹脂不織布、金属箔、カーボンファイバーなどが挙げられる。
【0062】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが用いられる。また、樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが用いられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA−塩化ビニル樹脂共重合体などが用いられる。また、上記した熱硬化性樹脂と上記した熱可塑性樹脂と(例えば、メラミン樹脂と酢酸ビニル樹脂と)を混合して用いることもできる。
【0063】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などの公知の金属箔が用いられる。
【0064】
これらのなかでは、重量、密着性、強度およびコストを考慮すると、ガラスクロスおよび樹脂含浸ガラスクロスが、好ましく用いられる。
【0065】
このような補強層の厚みは、例えば、0.05〜3mm、好ましくは、0.1〜1.5mmである。
【0066】
また、樹脂層と補強層との厚みの合計は、例えば、0.4〜5mm、好ましくは、0.6〜3.5mmである。
【0067】
なお、得られた外板用補強材には、必要により、補強層の表面にセパレータ(離型紙、離型フィルム等)を貼着してもよい。
【0068】
また、このようにして得られた外板用補強材において、樹脂層の発泡時の体積発泡倍率は、1.1〜5.0倍、さらには、1.5〜4.0倍であることが好ましい。また、発泡体層における発泡体の密度(発泡体の重量(g)/発泡体の体積(cm3))が、例えば、0.2〜1.0g/cm3、さらには、0.3〜0.8g/cm3であることが好ましい。
【0069】
また、本発明の外板用補強材は、油面冷間圧延鋼板に対する23℃における接着力が、0.5N/25mm以上、好ましくは、1.0〜10N/25mmであることが望ましい。接着力が0.5N/25mm未満であると、鋼板に対して剥がれやすくなる場合がある。
【0070】
そして、このようにして得られた本発明の外板用補強材は、例えば、輸送機械などの各種産業機械の外板に貼着し、発泡硬化させて、その外板を補強するために用いられる。
【0071】
より具体的には、図1(a)に示すように、本発明の外板用補強材7は、樹脂層2に補強層1が積層され、その樹脂層2の表面に必要によりセパレータ3が貼着されており、使用時には、仮想線で示すように、樹脂層2の表面からセパレータ3を剥がして、図1(b)に示すように、その樹脂層2の表面を、外板4に貼着し、その後、図1(c)に示すように、所定温度(例えば、160℃〜210℃)で加熱することにより、発泡硬化させて、発泡体層5を形成するようにして、用いられる。
【0072】
このような本発明の外板用補強材は、軽量化が要求される自動車の車体外板の補強に好適に用いることができ、その場合には、この外板用補強材は、例えば、まず、車体外板の組立工程において貼着された後、次いで、電着塗装時の熱を利用して、加熱して発泡硬化させて、発泡体層を形成するようにして、用いられる。
【0073】
そして、本発明の外板用補強材によれば、車両意匠面に発生する歪を抑制することができる。
【0074】
そのため、本発明の外板の補強方法によれば、補強材の形状を変更することなく車両意匠面に発生する歪を抑制し、外板を確実に補強することができる。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0076】
(実施例および比較例)
表1および表2に示す配合処方において、各成分を配合し、これをミキシングロールで混練することにより、樹脂組成物を混練物として調製した。なお、表中の各成分の配合量は「重量部」を表す。
【0077】
なお、この混練においては、まず、エポキシ樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、充填剤、低極性ゴム、粘着付与剤を、120℃に加熱したミキシングロールで混練した後、この混練物を、50〜80℃に冷却し、さらに、エポキシ硬化剤、エポキシ硬化促進剤、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤を加えて、ミキシングロールで混練し樹脂組成物を調整した。
【0078】
次いで、この樹脂組成物を、プレス成形機により厚さ0.6mmに圧延して樹脂層を形成した。その後、この樹脂層に、補強層として、厚さ0.2mmの樹脂含浸ガラスクロスを貼り合わせ、樹脂層における補強層が貼り合わされた反対側の表面に、離型紙を貼着することにより、外板用補強材を得た。
【0079】
(評価)
得られた各実施例および各比較例の外板用補強材について、補強性、油面接着性、歪量を、次のように評価した。その結果を表1、表2に示す。
【0080】
1)補強性
各実施例および各比較例の外板用補強材の離型紙を剥がし、各外板用補強材を、25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板(SPCC−SD)(日本テストパネル社製)の全面に、20℃雰囲気下でそれぞれ貼着し、180℃で20分加熱することにより、樹脂層を発泡硬化させ、試験片を作製した。なお、各外板用補強材の樹脂層の発泡倍率(体積発泡倍率)を表1、表2に示す。発泡倍率は発泡硬化後の試料厚みを発泡硬化前の試料厚みで除する事で求めた。
【0081】
その後、鋼板が上向きとなる状態で、各試験片をスパン100mmで支持し、その長手方向中央において、テスト用バーを垂直方向上方から圧縮速度1mm/分にて降下させ、鋼板に接触してから発泡体層が、1mm変位したとき、および、2mm変位したときの曲げ強度(N)を、補強性として評価した。
【0082】
2)油面接着力
冷間圧延鋼板(SPCC−SD)(日本テストパネル社製)を、各外板用補強材に対応して用意し、その表面に防錆剤(出光興産社製、ダフニーオイルZ−5)を塗布し、20℃にて一晩垂直に立て掛けた。
【0083】
その後、各実施例および各比較例の外板用補強材を、25mm幅で切り出し、離型紙を剥がして、防錆剤が塗布された各鋼板の塗布面に、23℃雰囲気下、2kgのローラにより圧着させ、それから30分後に、23℃雰囲気下、接着力(N/25mm)を90°ピール試験(引張速度300mm/分)により測定し、これを油面接着性として評価した。
【0084】
3)歪量
図2に示すとおり、200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのA6061アルミニウムパネル6の中央部分に50mm幅×100mm長さの外板用補強材7を常温下、2kgのローラにより図2(a)のように圧着させ、図2(b)のように外板用補強材の長さ方向に180mm幅、1mmピッチ、幅方向に200mm幅、5mmピッチでアルミニウムパネル6の表面(外板用補強材7を圧着した裏面)の凹凸測定箇所8の表面凹凸をレーザー変位計により測定した。
【0085】
その後補強材貼着アルミニウムパネルを垂直に立てた状態で180℃、20分加熱乾燥炉で加熱することにより発泡硬化させた。発泡硬化後、常温まで冷却した補強材貼着アルミニウムパネルを再度、同条件で表面凹凸を測定した。発泡硬化後の測定値から発泡硬化前の測定値の差をとり、最大値を歪量として表1、表2に記載した。また発泡硬化前後の意匠面の外観の状態を画像処理した結果を図3に示した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表中の略号などを以下に示す。
・♯828: ビスフェノールA型エポキシ樹脂、品名「エピコート♯828」、エポキシ当量180g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製
・♯872: ダイマー酸変性エポキシ樹脂(可とう性エポキシ樹脂)、品名「エピコート♯872」、エポキシ当量600〜700g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製
・YL7515−500:ポリオール変性エポキシ樹脂、エポキシ当量487g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製
・EP4000S: ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル(ポリオール変性エポキシ樹脂)、品名「アデカレジンEP−4000S」、エポキシ当量320g/eq、(株)ADEKA製
・EXA4816: 脂肪族変性エポキシ樹脂、品名「EPICLON EXA−4816」、エポキシ当量403g/eq、DIC(株)製
・EPR1309: NBR変性エポキシ樹脂、品名「アデカレジンEPR1309」、エポキシ当量300g/eq、(株)ADEKA製
・EPU−78−11: ウレタン変性エポキシ樹脂、品名「アデカレジンEPU−78−11」、エポキシ当量220g/eq、(株)ADEKA製
・アクリロニトリル・ブタジエンゴム: 品名「NBR1042」、アクリロニトリル含量33.5%、ムーニー粘度77.5(ML1+4、at100℃)、日本ゼオン(株)社製
・カーボンブラック: 絶縁性カーボンブラック、品名「旭#50」、旭カーボン(株)製
・スチレン・ブタジエンゴム: 品名「タフデン2003」、スチレン含量25%、ムーニー粘度35(ML1+4、at100℃)、旭化成(株)製
・天然ゴム:品名「SVR−L」、DAU TIENG RUBBER CORPORATION製
・ブタジエンゴム:品名「BR01」、ムーニー粘度45(ML1+4、at100℃)、JSR(株)製
・ポリイソブチレン:品名「ビスタネックスMML80」、 粘度平均分子量 0.9×106、トーネックス(株)製
・石油系樹脂:品名「エスコレッツ1202」、トーネックス(株)製
・ナフテンオイル:「NS−100」出光興産社製
・尿素類(DCMU): 3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、保土ヶ谷化学(株)製
・チアゾール系:2−メルカプトベンゾチアゾール、品名「ノクセラーM」、大内新興化学(株)製
・OBSH:4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、品名「ネオセルボン(登録商標)N#1000S」、永和化成(株)製
【0089】
図3のうち、「面状態」は評価に用いたアルミニウムパネルの意匠面の凹凸の状態を三次元的に画像処理した図であり、着色部分により凸に変形していることを示し、「A−A´断面変化量」は図面に示した特定断面での凹凸の変化量を示している。これらの結果から分かるように、比較例1では、発泡硬化前に比べ発泡硬化後に意匠面が大きく歪み、変形していることが分かる。これに対し実施例1では、歪はほとんど発生しておらず、実用上問題になることはない。
【符号の説明】
【0090】
1 補強層
2 樹脂層
3 セパレータ(剥離紙)
4 鋼板
5 発泡体層
6 アルミニウムパネル
7 外板用補強材
8 凹凸測定箇所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板に貼着して補強する外板用補強材であって、
25mm幅×150mm長さ×0.8mm厚さの冷間圧延鋼板の全面に貼着し、180℃で20分加熱した後の1mm変位時強度が20N以上であり、
200mm幅×300mm長さ×1mm厚さのアルミニウムパネルの中央部に50mm幅×100mm長さの長方形状で貼着し、180℃で20分加熱した後の歪量が170μm以下であることを特徴とする外板用補強材。
【請求項2】
少なくとも低極性ゴムとアクリロニトリル・ブタジエンゴムを含むゴム成分、可とう性エポキシ樹脂、硬化剤および発泡剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂層を有することを特徴とする請求項1に記載の外板用補強材。
【請求項3】
上記ゴム成分と可とう性エポキシ樹脂との重量比率が、20:80〜95:5であることを特徴とする請求項1または2に記載の外板用補強材。
【請求項4】
硬化剤が、加熱硬化型硬化剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の外板用補強材。
【請求項5】
発泡剤が、熱分解性発泡剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の外板用補強材。
【請求項6】
前記樹脂層に積層される補強層とを備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の外板用補強材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の外板補強シートを、外板に貼着した後、発泡硬化させることを特徴とする、外板の補強方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−148091(P2011−148091A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2926(P2010−2926)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】