説明

多層熱可塑性シート材料およびそれから調製された熱成形物品

本発明は、表面非発泡層Aおよび表面発泡層Bを含み、約0.5〜約20ミリメートル(mm)の総シート厚さを有する、特に熱成形用途、例えば冷蔵庫キャビネットおよびドアライナーに好適な多層シートを提供する。サイクル時間の短縮およびポリマーとエネルギーの節減を含めた熱成形性の向上が与えられる。好ましくは、非発泡熱可塑性ポリマー表面層(A)は、約0.25〜約6ミリメートルの厚さを有し、そして発泡熱可塑性ポリマー表面層(B)は、いずれかの他の発泡ポリマー層とともに少なくとも約五(5)質量%の総密度低下を有し、そしていずれかの他の非発泡層をともに備えた非発泡層の総厚さよりも大きな総厚さを有している。また、熱成形プロセス、熱成形物品、断熱性物品を与える方法および断熱性物品における改善が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年8月25日出願の米国仮出願第61/091,572号への利益を主張する。
【0002】
本発明は、冷蔵庫ライナーの熱成形を含めた、熱成形用途のために好適な、多層熱可塑性シート材料に関する。また、本発明は、熱成形された冷蔵庫ライナーを含めた、多層熱可塑性シート材料から製造される物品および、そのような多層シート材料からの、熱成形された冷蔵庫ライナーを含めた物品の製造方法に関する。
【0003】
押出成形された熱可塑性シート材料は、基になる熱可塑性樹脂の選択に応じて、消費者耐久財用の部品、例えば冷蔵庫ライナー、浴槽の筐体とシャワー器具、種々の長椅子と腰掛け器具、多様な種類の車両用の車体パネル、標示パネルなど、への熱成形を含めた広範囲な用途で用いられている。また、幾分か肉薄の押出成形された熱可塑性シート材料は、広範囲な材料、例えば食品、飲料、洗浄および洗濯用製品、化粧品、ならびに医薬品用の包装材料に熱成形して用いることができ、あるいはまた、連続した異形材へと押出されて用いることができる。
【背景技術】
【0004】
製品およびその製造プロセスの費用効果と効率の向上に対する現在の経済的および環境上の関心にともなって、原材料の低減ならびに、その製造において、および熱成形された物品を製造するためのそれらの更なる使用において必要とされるエネルギーの量の低減を促進する熱可塑性シート材料を与え、そして得ることへの持続する関心が存在する。また、発泡熱可塑性層および少なくとも1つの非発泡もしくは中実の熱可塑性層を有する熱可塑性シートが知られており、そしてAB構造(単一の中実スキン層および発泡層)およびABA構造(2つの中実スキン層の間に発泡層)と称されている。
【0005】
米国特許第6,544,450号明細書には、溶融したポリマーを発泡剤と接触させること、シート押出ライン内部でその混合物を低圧領域で発泡させること、および押出品を引き取りかつ圧縮して均一な厚さを有する熱可塑性発泡シートを形成させること、を含む熱可塑性発泡シートの製造方法が教示されている。シート材料は、2つの非発泡表面層の間に挟まれた発泡層(ABA構造)を有していることが示されている。
【0006】
米国特許第6,589,646号明細書には、少なくとも1つのより厚い中実基材層A(Aは、0.1〜50mmの厚さを有している)および、少なくとも1つのより薄い発泡機能層B(Bは0.04〜2mmの厚さを有している)を有するAB構造を備えた複合材層状シートまたはフィルムを教示している。これらは、特に、断熱性成形品、例えば冷蔵庫ライナーの製造における使用が指向されており、そこではポリウレタン発泡断熱材が前記発泡表面へ適用されている。
【0007】
英国特許第1,595,128号明細書には、熱可塑性材料から造られ、そして2つの外側中実層の間に中心発泡層を有する(ABA構造)軽量の管が記載されている。この管は、共押出によって製造され、そして中心層の材料は、発泡剤を含んでいる。
【0008】
英国特許第1,411,132号明細書には、平滑な、そして光沢のあるスキン層を有する、独立気泡発泡中芯から造られる成形品が記載されている。この成形品は、充填剤および発泡剤を含む熱可塑性樹脂の押出成形によって製造されている。そこでは、押出ダイの表面は、発泡剤の分解温度未満の温度に保たれている。
【0009】
米国特許第5,364,696号明細書には、発泡ポリスチレンシートの、場合によっては、一体となった高密度のスキン層を有する、深絞り物品への熱成形のための使用が教示されている。
【0010】
欧州特許出願公開第0084360号明細書には、発泡および非発泡ポリスチレン層から造られる収縮包装外装が記載されている。十分な衝撃吸収を得るためには、この発泡層の厚さは、0.1〜1mmである。非発泡層の厚さは、2〜160mmである。これは、印刷適性を与え、またガラス製ビン用の保護層として用いることができる。
【0011】
米国特許第4,069,934号明細書には、ポリスチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から造られた内側独立気泡発泡層およびポリエチレンから造られた非発泡の外層から造られた他の収縮フィルムが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの教示は、成形可能なシート材料に、質量の低減を含む幾つかの利点を与えはしたものの、原材料および、熱成形物品の製造において必要なエネルギーの両方の量の低減を促進させる熱可塑性シート材料を得ることへの継続した関心が存在していることが見出されている。また、特に、大型の、深型の熱成形部品、例えば冷蔵庫ライナーの製造においては、これらの教示は、ライナー製品に必要な性質と、熱成形されたシート製品の表面にポリウレタン発泡体が適用されるライナー製造プロセスとの十分なバランスを与えはしないことが見出されている。このような状況における主要な課題は、必要な原材料の低減を達成する一方で、必要な性能、主として剛性もしくは弾性率を得ることである。あるいは、さもなければ同じ水準の原材料を用いながら、製品に向上した性能をもたらすことが望まれるであろう。また、他の課題としては、熱可塑性樹脂原材料使用を低減させたシート材料での環境応力亀裂への耐性を向上させる、または維持することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明によれば、これらの課題および多くの他の課題の1つもしくは2つ以上の解決が、2つの表面層および場合による1つもしくは2つ以上の内層を有する多層シートによって与えられ、この多層シートは、非発泡熱可塑性ポリマー表面層(A)、発泡熱可塑性ポリマー層(B)および場合による非発泡熱可塑性ポリマー表面層(C)を含んでおり、かつ約0.5〜約20ミリメートル(mm)の総シート厚さおよび1超の発泡対中実比を有しており、そして(a)非発泡熱可塑性ポリマー表面層(A)は約0.25〜約6ミリメートル(mm)の範囲の厚さを有しており、そして(b)発泡熱可塑性ポリマー層(B)は、少なくとも約五(5)質量パーセントの総密度低下を有しており、場合による表面層(C)が存在しない場合には、表面層となる。本発明の他の態様では、非発泡表面層Aの厚さは、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.75mmである。1つの態様では、発泡対中実比は、少なくとも約1.86、好ましくは少なくとも約2.33である。
【0014】
更なる態様では、本発明による多層シートは、少なくとも約十(10)質量パーセント、好ましくは約二十(20)質量パーセントの密度低下を有している。
【0015】
更なる他の態様では、多層シート層において、層Bは、発泡された、HIPS、GPPS、ABS、これらの2種もしくは3種以上の混合物、およびこれらの1種もしくは2種以上と、1種もしくは2種以上の更なるポリマーとの混合物、からなる群から選ばれた、モノビニリデン芳香族ポリマー樹脂を含んでいる。また、本発明は、層AおよびBが共押出されており、層Aが層B上にラミネートされたフィルムである、または層Aが層B上に押出コーティングされている態様を含んでいる。更なる他の態様では、層Bは、物理的発泡剤もしくは化学的発泡剤もしくは物理的発泡剤と化学的発泡剤核剤との組み合わせを用いて発泡されている。更なる態様では、本発明は、上記の多層シートから、または下記の方法によって調製された、熱成形物品を含んでいる。
【0016】
本発明の方法の態様は、ここに記載された多層シートを加熱して、熱で柔軟化され、熱で可塑化されて熱成形可能な状態にすること;熱で柔軟化され、熱で可塑化された熱成形可能なシートに、ガス、真空および/または物理的圧力を適用し、そしてこのシートを最終の部品と近似の寸法に延伸すること;このシートを真空または圧力で型の形状に適合させること;ならびに熱成形された部品を型から分離すること、を含む熱成形プロセスである。本発明の更なる方法の態様は、断熱性の成形部品の調製方法であって、断熱性の発泡層をここに記載されたように製造された熱成形された部品の発泡表面層側に与えることを含み、ここで好ましくは断熱性の発泡層は、ポリウレタン発泡体であり、より好ましくは熱成形された部品発泡表面層と外側ケーシングもしくは筐体構造体との間の空洞または空間中に与えられ、外側ケーシングもしくは筐体構造体は最も好ましくは冷蔵庫キャビネットまたは冷蔵庫ドアである。更なる態様は、上記の1つもしくは2つ以上の方法によって調製された断熱性の成形部品である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、冷蔵庫のキャビネット部分用の熱成形されたライナーの三次元図である。
【図2】図2は、冷蔵庫のキャビネット部分用の熱成形されたライナーの概略図である。
【図3】図3は、冷蔵庫のキャビネット中に配置された熱成形され、かつ発泡されたライナーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における数値範囲は、下側値および上側値を含めて、下側値と上側値の間が少なくとも2単位離れている場合には、1単位づつの増分での下側値および上側値からの全ての値を含んでいる。例としては、組成上の、物理的または他の性質、例えば厚さおよび密度低下などが、10超である場合には、全ての個々の値、例えば10、11、12など、および小範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などが明確に列挙されることが意図されている。1未満である、または分数を含む1超の値(例えば、1.1、1.5など)を含んだ範囲では、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。10未満の1桁の数(例えば1〜5)を含む範囲では、1単位は典型的には0.1であると考えられる。これらは具体的に意図されていることの例に過ぎず、そして示された下側値と上側値の間の数値の全ての可能な組合せが、本明細書中に明確に記載されていると考えられなければならない。本明細書内では、数値範囲は、とりわけ厚さと密度低下について与えられている。
【0019】
本発明による多層シートは、一般的には熱成形用途用に好適であり、そしてこの用途における使用では、特定の熱成形用途に必要であろう特定の厚さと表面層を有している。一般には、熱成形可能なシートは、熱成形プロセスにおいてシートが延ばして成形される深さおよび最終的な熱成形される部品もしくは物品に要求される厚さに応じて、少なくとも約0.5ミリメートル(mm)、好ましくは少なくとも約0.75ミリメートル(mm)、より好ましくは少なくとも約1、より好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも1.75、そして最も好ましくは少なくとも約2ミリメートルである。また、熱成形プロセスの能力および延ばして成形される深さと最終的な部品厚さの必要度に応じて、これらのシート材料は、約20ミリメートル以下の、好ましくは14mm以下の、好ましくは約12以下、より好ましくは約10以下、より好ましくは約8以下、そして最も好ましくは約5mm以下の厚さを有している。
【0020】
熱成形の実践において知られているように、熱成形工程の間のシートの出発厚さは、熱成形工程の延ばして成形される深さに比例して通常は減少する。本発明による熱成形可能なシートは、典型的な熱成形絞り比で用いることができ、その多くは、約1〜約5そして通常は約2.5の範囲である。シートの出発厚さは、通常は熱成形された部品における最も薄い領域および/または臨界点において、最小の厚さ(例えば0.5または1mm)を与える必要性によって定められる。熱成形される部品のための典型的な絞り領域では、最小厚さ(最も薄い領域の厚さ)は、少なくとも約0.25mm、好ましくは少なくとも約0.5mmであり、そして最終的な熱成形された部品の平均厚さは、約0.5〜約2ミリメートルの範囲、好ましくは約1mmである。本発明によるシート構造体は、典型的には熱成形部品の臨界的および/または肉薄領域において、より良い厚さを維持して、特に良く延ばして成形されることが見出された。このことは、出発シートの厚さの低減、または与えられたシート厚さから出発した場合には、従来技術の熱成形可能なシート構造体と比較しての、最終的な部品における改善のいずれかを、いずれの場合においても、臨界的および/または肉薄領域でのより良い厚さの保持に基づいて、可能にする。
【0021】
本発明によるシート材料に必要とされる発泡および非発泡層は、それらの用途における要求に応じて、非常に広範囲な熱可塑性ポリマーから選択することができる。熱可塑性ポリマーの範囲としては、モノビニリデン芳香族ポリマー(スチレン系ポリマーとも称され、GPPS、HIPS、ABSおよびSANが挙げられる)、広範囲なポリオレフィン(PE、PP、LDPE、LLDPE、HDPEが挙げられる)、アクリレートおよびメタクリレートポリマー、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの種類の熱可塑性ポリマーの2つもしくは3種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
モノビニリデン芳香族ポリマーは、本発明によるシート材料における使用に好ましい熱可塑性ポリマーであり、そして単独重合体および、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、そしてより好ましくは少なくとも約75質量%、そして最も好ましくは少なくとも約90質量%の少なくとも1種のモノビニリデン芳香族モノマーを繰り返しモノマー単位として最終的な樹脂中に含む共重合体が挙げられる。好ましくは、モノビニリデン芳香族モノマーは下記の式のものである。
【0023】
【化1】

【0024】
式中、R’は、水素もしくはメチル、Arは、アルキル、ハロもしくはハロアルキル置換基を有する、または有しない1〜3個の芳香環を有する芳香環構造であり、ここでいずれかのアルキル基は1〜6個の炭素原子を含み、そしてハロアルキルはハロ置換アルキル基を表す。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、ここでアルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を表し、フェニルが最も好ましい。用いることができる典型的なモノビニリデン芳香族モノマーとしては、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエンの全ての異性体、特にパラビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの全ての異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。2種もしくは3種以上のモノビニリデンモノマーの混合物も、1種もしくは2種以上の他の共重合可能なモノマーとの1種もしくは2種以上のモノビニリデン芳香族モノマーの混合物と同様に、ここでのモノビニリデンポリマーを調製するのに用いることができる。そのような共重合可能なモノマーの例としては、アクリル系モノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびメチルアクリレート、マレイミド、フェニルマレイミド、および無水マレイン酸が挙げられるが、それらには限定されない。
【0025】
更に、モノビニリデン芳香族ポリマーは、分散したゴム状ポリマーまたはエラストマーを、向上した靭性および/または耐衝撃性を与えるために、更に含むことができ、これらの種類のモノビニリデン芳香族ポリマーは、ゴム補強もしくは高衝撃と称される。ゴム状ポリマーは、物理的な混合、または予め溶解されたゴム状ポリマーの存在下でモノビニリデン芳香族モノマーを重合して、衝撃改良、もしくはグラフト化ゴム含有製品を調製することによって組み込むことができる。特に、このポリマーは高衝撃ポリスチレン樹脂であることができる。更に、本発明のプロセスは、上記のポリマーのいずれかの混合物または組合せを用いることができる。好適なモノビニリデン芳香族ポリマーとしては、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、スチレン共重合体、例えばポリ(スチレンアクリロニトリル)(SAN)、およびABSと称されるそのブタジエンゴム改質型がある。
【0026】
また、ポリオレフィンは好ましい熱可塑性ポリマーであり、そして種々のアルファオレフェインモノマー、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、1−へキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、オクテン、および3−メチル−1−へキサンなどの単独重合体および共重合体が挙げられ、1種もしくは2種以上の更なる共重合可能なモノマー、例えば他のアルファオレフィンおよび種々の既知の共重合可能なモノマー、例えばビニルアセテート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、および無水マレイン酸、とのそれらの共重合体が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、オレフィン共重合体、例えばエチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。好ましいポリオレフィンでは、好ましいオレフィンモノマーは、エチレンまたはプロピレンであり、最も好ましいポリオレフィンは、ポリプロピレンである。
【0027】
本発明による多層シート材料は、非発泡熱可塑性ポリマー表面層Aを有しており、それは通常は、シートまたはそれから造られた部品/物品の外観もしくは審美的な表面を与えるように選択される。この層は、通常は、比較的に薄く、そして最終的な用途におけるいずれかの特定の性能もしくは外観の特徴にとって必要とされる材料から、造られる。例えば、このような材料は、上記の熱可塑性ポリマーの範囲から選択することができ、そして光沢、色相、印刷適性、塗装適性、耐候性、耐UV性、剛性などの所望の組合せを与えるように、いずれかの混合された添加剤/成分と組み合わせることができる。
【0028】
非発泡熱可塑性ポリマー表面層は、通常は、多層シート材料上に比較的に薄い層で与えられるが、しかしながら発泡シート材料を単に調製した場合に通常生得的に形成されるスキン層または発泡シート材料上にしばしば与えられるフィルム層(約50〜約100μmの水準)のいずれとも異なり、またいずれよりも厚い。好ましい態様では、積層シート材料用の非発泡熱可塑性ポリマー表面層Aは、少なくとも約0.25ミリメートル、好ましくは少なくとも約0.5mm、そしてより好ましくは少なくとも約0.75mmの厚さを有している。これらのシート材料中の非発泡熱可塑性ポリマー表面層Aの厚さは、通常は、原材料および熱成形プロセスのエネルギーの最大の節減を与えるために、可能な限り低減され、その層厚さは、好ましくは通常は約6mmよりも小さく、好ましくは約5mmよりも小さく、より好ましくは約3mmよりも小さく、そして最も好ましくは約2mmよりも小さい。また、特許請求した本発明による多層シート材料は、本発明によるシート材料構造体を造るために所望により用いることができる共押出もしくはフィルム積層技術に応じて、内部に配置された非発泡熱可塑性ポリマー表面層を含むことができ、および/またはこの表面層は、1つもしくは2つ以上の更なる副層および/または薄肉フィルム表面層を含むことができることに注目しなければならない。好ましい態様では、多層シート中の非発泡熱可塑性ポリマー層の総厚さは、非発泡表面層と、どこに配置されようともいずれかの他の非発泡層とを含めて、発泡された熱可塑性ポリマー層の総厚さよりも小さい。しかしながら、好ましくは、生産費用節減および最適なプロセス効率と単純性のために、非発泡熱可塑性ポリマー表面層は、所望により表面コーティング層および/または接着性副層を備えた単一の熱可塑性ポリマー層、そして最も好ましくは単一の熱可塑性ポリマー表面層である。
【0029】
発泡された熱可塑性ポリマー層の調製に関しては、広範囲の技術が知られており、そして用いることができる。本発明の多層シートの発泡層は、真空発泡によって、溶融熱可塑性樹脂組成物混合物の物理的な攪拌によって、またはポリマー組成物への発泡剤の混合によって造ることができる。好ましい態様では、発泡剤が、発泡性の中間ポリマー組成物を与えるために、熱可塑性ポリマー組成物中に混合される。
【0030】
物理的発泡剤は、通常は圧縮されたガスまたは低沸点の液体である。化学的発泡剤は、通常は固体の化合物であり、分解して、ガス、例えば窒素、アンモニアもしくは二酸化炭素を発生する。発泡性の中間体は、次いで、ガスを発生する化学的発泡剤の加熱活性化による膨張(すなわち、「発泡」)および/または発泡性中間体の低圧区域中への押出によって、低沸点の気体状物理的発泡剤の膨張を可能とする。用いることができる発泡剤としては、既知の物理的発泡剤、化学的発泡剤、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
好適な物理的発泡剤としては、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、水(HO)、脂肪族炭化水素、例えばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ネオペンタン、イソペンタンおよびヘキサン、脂環式炭化水素、例えばシクロブタン、シクロペンタンおよびシクロへキサン、およびハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタンが挙げられるが、これらには限定されない。好ましい物理的発泡剤は、二酸化炭素を含む。二酸化炭素は、本発明の実施において、液体として好ましく用いられるが、二酸化炭素ガスの使用もまた許容できる。窒素は気体として好ましく用いられ、一方で、水は典型的には液体として用いられるが、しかしながらいずれの形態でも許容される。
【0032】
化学的発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウム、クエン酸およびクエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、無水フタル酸、安息香酸、安息香酸塩、例えば安息香酸アルミニウム、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチロニトリルおよびジニトロペンタメチレンが挙げられる。好ましい化学的発泡剤は、重炭酸ナトリウムとクエン酸の混合物を含んでおり、Bergen Internationalから商業的に入手可能な、ペレット形態の、クエン酸と重炭酸ナトリウムの混合物を含む濃縮物である、Foamazol 72という商標のCBAが挙げられる。
【0033】
発泡剤は、一般には発泡層に所望の量の密度低下を与えるのに必要であろう量が用いられる。用語「密度低下」および密度低下パーセントは、化学的および/または物理的発泡剤を用いることによって、発泡層および/またはシート構造体中で低下された密度の百分率比を意味している。例えば、出発ポリマー(中実シート)の密度1g/ccからは、0.9g/ccへの密度の低下は10%密度低下であり、0.85g/ccへの密度の低下は15%密度低下である。費用効率とシート性能の組合せを有するためには、発泡された熱可塑性ポリマー層は、望ましくは、出発の熱可塑性ポリマー密度を基準にして、少なくとも約5質量%(wt%)、好ましくは少なくとも約10質量%、最も好ましくは少なくとも約15質量%の密度低下を有している。シート性能特性と熱成形性を維持するためには、発泡熱可塑性ポリマー層は、望ましくは、出発の熱可塑性ポリマー密度を基準にして、約40質量%(wt%)以下、好ましくは約35質量%以下、より好ましくは約30質量%以下、最も好ましくは約25質量%以下の密度低下を有している。好ましくは、これらの密度低下範囲および水準は、最終的な多層シート構造体中で与えられる。
【0034】
所望の密度低下の水準を与えるために発泡性組成物中に混合される活性な化学的発泡剤の質量は、具体的な発泡剤の効率および効果に依存するが、しかしながら通常は、化学的発泡剤活性成分の総質量を基準として、少なくとも約0.016、好ましくは少なくとも約0.02、そしてより好ましくは少なくとも約0.16質量%の量で、かつ化学的発泡剤活性成分および発泡性ポリマー組成物の総質量を基準として、約0.8、好ましくは0.4、そしてより好ましくは0.36質量%の量以下で加えられる。
【0035】
発泡押出プロセスにおける気体発生液体または他の物理的発泡剤の使用に関しては、発泡性組成物中に混合される物理的発泡剤の加えられる量は、密度低下の所望の水準および具体的な発泡剤の効率と効果に依存するが、しかしながら、物理的発泡剤の総質量を基準として、少なくとも約0.0001、好ましくは少なくとも約0.001、より好ましくは少なくとも約0.01、そしてより好ましくは少なくとも約0.063質量%の量で、かつ物理的発泡剤の総質量を基準として、約0.7質量%以下、好ましくは約0.3、より好ましくは約0.2、そして最も好ましくは約0.128質量%以下の量で用いることが好適であることが見出された。
【0036】
発泡性熱可塑性ポリマー組成物は、発泡体気泡の寸法を制御するために、所望により核剤を含むことができる。好ましい核剤としては、微細に分割された無機物質、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸鉛、シリカ、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、好ましくはケイ酸カルシウム、タルク、クレー 二酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫化物、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クレー、炭素、金属粉末、酸化亜鉛、アスベスト、ガラス繊維、ステアリン酸バリウム、および珪藻土が挙げられる。微細に分割された無機物質核剤の粒子径は、通常は、約0.005〜約10マイクロメートル(μmまたはミクロン)、好ましくは約0.01〜約1ミクロンである。所望による微細に分割された無機の核剤成分は、ポリマー樹脂の100質量部当たりに少なくとも約0.001質量部、好ましくはポリマー樹脂の100質量部当たりに少なくとも約0.02質量部の量で用いることができる。一般に、所望による核剤は、ポリマー樹脂の100質量部当たりに約10質量部未満、好ましくはポリマー樹脂の100質量部当たりに約2質量部未満の量で用いなければならない。
【0037】
有意な密度低下を引き起こすには不十分な、少量の化学的発泡剤が、しかしながら物理的に発泡される熱可塑性ポリマー中で核形成を与えることができることが見出された。これらの所望による核剤は、それらの活性成分および効率を基に、ポリマー樹脂の100質量部当たりに少なくとも約0.0004質量部、ポリマー樹脂の100質量部当たりに好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.04、そしてより好ましくは少なくとも約0.08質量部の量で用いることができる。一般には、これらの所望による核剤は、ポリマー樹脂の100質量部当たりに約0.2質量部未満、ポリマー樹脂の100質量部当たりに好ましくは約0.15未満、より好ましくは約0.14未満、そしてより好ましくは約0.12質量部未満の量で用いなければならない。
【0038】
上記のように、非発泡熱可塑性ポリマー層は、上記に列挙したものの中から選択した同種の、または異種のポリマーから調製することができる。好ましくは、本発明によるシード構造体の層は、同種のポリマーまたは同種のポリマータイプから調製されて、最適な層相溶性および接着性を与え、そしてスクラップと最終製品の再生利用の機会を最大化させる。好ましくは、冷蔵庫ライナー用途のためには、両方の層は熱可塑性モノビニリデン芳香族ポリマーであり、好ましくは発泡層は、環境応力亀裂抵抗を与えるのに最良と知られているものの中から選択される。
【0039】
また、多層シートが、2つまたは3つ以上の発泡熱可塑性層を含む場合もある。発泡は、内部の発泡層における最大の、および/または費用効果の高い密度低下の目的のために最適化され、そして異なる発泡熱可塑性層が、表面層として用いることができ、またポリウレタンもしくは他の絶縁発泡成分への接着を促進するとの観点から、最適化された表面特性を得るように誂えることができる。従って、非発泡層とともに、本発明による多層シートは、発泡された熱可塑性表面層に加えて、またはその一部として1種もしくは2種以上の所望による層を含むことができる。ここで用いられる多層シート中の「発泡」熱可塑性ポリマー層の総厚さは、どこに配置されようとも、全ての発泡された層を含んでいる。しかしながら、好ましくは、製品コスト節減および最適なプロセス効率と単純性のためには、多層シートは、非発泡表面層および、所望による非発泡接着性副層を備えた発泡熱可塑性ポリマー層として、単一の発泡熱可塑性ポリマー表面層のみを、そして最も好ましくは、単に単一の発泡熱可塑性ポリマー表面層を含んでいる。
【0040】
また、本発明による多層シート構造体は、所望による非発泡表面層(C)を含むことができ、これは上記のいずれかの熱可塑性ポリマーから造ることができるが、しかしながら好ましくは非発泡表面層(A)と同じか、または類似のものである。用いられる場合には、この層は発泡層(B)にコーティングまたはスキン層を与え、そしてABA構造と称される構造を与える。用いられる場合には、所望による非発泡表面層(C)は、非発泡表面層(A)よりも小さい厚さを有し、通常は、少なくとも約0.03ミリメートル、好ましくは少なくとも約0.05mm、そしてより好ましくは少なくとも約0.07mm、そして約1mm未満、より好ましくは約0.7mm未満そして最も好ましくは約0.5mm未満の水準である。断熱性物品の製造のための本発明による多層シートへの更なる絶縁発泡層の適用のためには、絶縁発泡体への十分な接着性と表面被覆を得るためには、所望による非発泡表面層(C)の表面処理が必要となる可能性があることに注意しなければならない。本発明の1つの態様では、発泡層(B)が多層シートの第2の表面を与え、そして所望による非発泡表面層(C)は用いられない。
【0041】
本発明の好ましい態様では、所望の原料節減と熱成形プロセスのエネルギー節減を得るために、本発明による多層シートの発泡層(単一または複数)は、非発泡もしくは中実の熱可塑性ポリマー層よりも厚い総厚さを有している。発泡層と非発泡層の厚さの間の関係は、「発泡対中実厚さ比」と称され、そして発泡層の総厚さが中実層の総厚さよりも大きい場合には、「発泡対中実厚さ比」は1より大きいと表される。好ましくは、発泡ポリマー層の相対厚さは、多層シート材料の厚さの、50%超、より好ましくは55%超、より好ましくは60%超、より好ましくは65%超、そして最も好ましくは70%超である。これらの相対厚さは、それぞれ好ましい「発泡対中実厚さ比」の、好ましくは約1超、より好ましくは約1.22超、より好ましくは約1.50超、より好ましくは約1.85超、そして最も好ましくは約2.33超に相当する。
【0042】
上記の層(複数)および相対層厚さを得た場合には、その多層シートへ層を調製または適用するのに用いることができる種々の既知の方法およびプロセスがあり、共押出、押出コーティング、および/またはフィルムラミネーションが挙げられる。これらのプロセスの全て、および積層シート材料を与えるためのそれらの使用は、熱可塑性ポリマーシート材料を造りそして用いる分野における実務家には通常良く知られており、本出願中に与えられた相対層厚さの教示を用いることで、本発明による多層シート材料の調製に、容易に用いることができる。包括的には、Giles, Harold F. Jr.、Wagner, John R. Jr.およびMount, Eldridge、The Definitive Processing Guide and Handbook、2005年発行、William Andrew Publishing/Plastics Design Libraryを参照せよ。これには関連する以下の章があり、これを参照することによって本明細書の内容とする:Part VI: Co extrusion、p.391; Part VII Sheet and cast film、p.435; およびPart VII: Extrusion coating and lamination、p.465。
【0043】
また、例えば、共押出プロセスは、米国特許第6,544,450号明細書中に記載されており、本発明による発泡および非発泡表面層の組合せを与えるために適用することができる。米国特許第6,589,646号明細書中には、フィルムラミネーションプロセスが、発泡層フィルムを非発泡熱可塑性ポリマー層上に与えることが示されている。
【0044】
本発明の好ましい態様では、本発明による多層シートは、改善された熱成形プロセスおよび改善された熱成形物品を与えるために用いられる。熱成形は、熱成形可能な熱可塑性シート材料から成形された部品または物品を与えるための、一般によく知られた技術である。熱成形された部品または物品は、断熱性成形品、例えば輸送用枠箱、蓄熱器、冷蔵もしくは冷凍装置または部品、ポリウレタン発泡体のような更なる絶縁発泡体層の更なる適用によって、特に冷蔵庫ドアの製造のために、特に好適である。
【0045】
熱成形プロセスは、当技術分野において知られており、そして例えば、Throne, James、"Technology of Thermoforming"、1996年、Hanser Publishers、p.16〜29中に教示されているように、幾つかの方法で実施することができる。「正」の熱成形プロセスでは、ガスまたは空気圧が、柔軟化されたシートに適用され、次いでこのシートが延伸されて、そして気泡のように引き伸ばされて、そして雄型が内側から「気泡」の中に導かれる。次いで真空が適用されて、更に引き伸ばしそして部品を雄型表面に適合させる。この熱成形プロセスでは、柔軟化されたシートにガスもしくは空気圧が適用されたときに、本質的に1工程で、二軸延伸/配向がなされる。成形工程は、次いで真空および雄型で完結され、シートに配向を固定させて、物理的特性と外観性能の良好なバランスを与える。
【0046】
「負」の熱成形プロセスでは、真空または物理的なプラグが熱で柔軟化されたシートに適用され、そしてシートを、最終的な部品の近似の寸法まで、延伸および引き伸ばす。次いで、内側からの陽空気圧または更に外側からの更なる外側の真空が、シートを引き伸ばしそして、外側の、雌型に適合させ、配向がポリマー中に固定されて、そしてシートは物品へと成形される。
【0047】
冷蔵庫ライナーに典型的に用いられる熱成形プロセスの種類においては、押出成形された熱成形可能なシートは、回転もしくは連続インライン熱成形装置上で成形され、そこでは、シートは「正」の成形区域に行く前に、先ず異なる加熱区域(接触加熱による予備加熱、それに続くIR加熱)に運ばれる。当業者によって通常知られているように、この予備加熱/加熱の間に、シートは、熱成形可能な、熱で柔軟化される、熱で可塑化される温度に加熱されるが、その温度はポリマーに依存する。一般に、無定形ポリマーでは、これはそれらのガラス転移温度(Tg)よりも約20〜約60℃高い温度である。一般に、ポリプロピレンおよび半結晶性ポリマーでは、これはそれらの溶融温度の直下の温度である。
【0048】
成形区域では、熱で可塑化されたシートは、真空を発生させ、そして吸引することによって延伸される。生成した気泡は、例えば、冷凍室を成形するために、しばしばプラグの助けを用いることによって予備成形される。これに続いて、シートを上昇してくる「正」の型の上に覆い掛けて、そして成形し、そして次いで角部と棚ガイドなどが、真空を適用することによって型中に引き込まれる。用具から取り外した後に、部品は、ライナーを製造するために必要とされるように、仕上げし、穴開けし、そして角部を切断することができる。
【0049】
冷蔵庫ライナーのような熱成形部品を製造するプロセスにおいて実施される一般的な工程は、
A:シートを、熱で柔軟化され、熱で可塑化された熱成形可能な状態まで加熱すること、
B:熱で柔軟化され、熱で可塑化された熱成形可能なシートに、ガス、真空および/または物理的な圧力を加え、そしてこのシートを最終的な部品の近似の寸法にまで延伸すること、
C:このシートを、真空または圧力によって型の形状に適合させること、および
D:熱成形された部品を型から分離すること、である。
【0050】
本発明による多層シートから造られた熱成形された部品または物品は、断熱性成形品、例えば輸送用枠箱、蓄熱器、冷蔵または冷凍装置もしくは部品、更なる断熱性発泡体層、例えばポリウレタン発泡体を、好ましくは発泡された熱可塑性ポリマー表面層の上に更に適用することによって、特に冷蔵庫ライナー(ドアライナーおよび内側キャビネットライナーの両方を含む)を製造するために特に好適である。例えば、図3に示されているように、発泡冷蔵庫キャビネットライナー1の場合には、熱成形されたライナー部品4は、冷蔵庫の外側ケーシングまたは筐体構造体2の中に配置され、そして断熱性発泡体3の層を有している。好ましくは、この発泡体は、ライナーと外側ケーシングとの間の空洞または空間を発泡性の混合物で満たすことによって提供される。例えば、発泡性ポリウレタン混合物は、熱成形されたライナー部品(好ましくは発泡された表面層表面と接触して)とハウジングもしくは他の外側筐体、例えば冷蔵庫キャビネット筐体、冷蔵庫ドアケーシングまたは他の筐体、の間の空洞領域中に配置または注入することができる。また、断熱性層は、他の知られた発泡体または発泡技術によって提供することもできる。
【0051】
この断熱性成形体の調製の場合には、上記の熱成形工程に続いて、下記の更なる一般的な発泡工程:
E:断熱性発泡層、例えばポリウレタン発泡体を、熱成形された部品の表面、好ましくは発泡された表面層に、そして好ましくは発泡性の混合物を熱成形された部品表面と、好ましくは冷蔵庫の、外側ケーシングもしくは筐体構造体との間に与えられた空洞または空間中に与えることによって提供すること、がある。
【0052】
一般的に知られているように、冷蔵庫ライナーでは、最も重要な性質の1つは環境応力亀裂抵抗(ESCR)であり、これはPU絶縁体中に用いられる発泡剤、洗浄剤およびライナーの内部と接触するオイル含有食品、に対する樹脂に要求される耐化学薬品性である。環境応力亀裂として知られる現象においては、ポリウレタン発泡体を適用し、そして生成するのに含まれる炭化水素発泡剤ならびに、冷蔵される食品の油性の内容物が、成形されたプラスチック部品表面の表面を攻撃し、または劣化させる可能性があり、そして比較的に低い水準の力もしくは応力で、その亀裂または破壊を引き起こす。この場合において、同時に、液体もしくは蒸気の化学品応力亀裂剤に暴露され、かつ応力の下に置かれたプラスチックは、それらが乾燥した、空気の環境中にある場合よりもより低い応力またはより短い時間で破壊される傾向にある。クレージングによって破壊されるようなHIPSのようなポリマーでは、応力亀裂剤は表面欠陥の近傍でポリマーを可塑化すると信じられる。表面欠陥は、応力集中部分として作用し、そしてクレージング開始箇所として作用する。加えられた応力と応力亀裂剤との両方が存在する場合には、クレージングは、液体もしくは蒸気の化学薬品応力亀裂剤が存在しない場合よりも、より低い応力で、欠陥から開始し、そして成長する。本発明によるシート材料から調製された熱成形部品は、従来技術によるシート構造体よりも、より少ないポリマーおよび/または発泡剤を用いる一方で、非常に良好な水準のESCRを維持することが見出された。
【0053】
発泡された熱可塑性樹脂の薄肉層を供えたシート材料は、特定の物品の調製に用いることができ、そしてまた発泡された表面層を与えることができることは知られているが(すなわち、米国特許第6,589,646号明細書)、より厚い層(すなわち、「発泡対中実比」が増大する)が、改善された熱成形プロセスを与えることができることは予想されなかったであろう。
【0054】
しかしながら、驚くべきことに、本発明によれば、より厚い発泡体層とより薄い中実層を含むシート材料は、部品へと熱成形された場合に、良好なバランス/組合せの特性、例えば熱成形された部品の厚さ分布(特に、熱成形された部品の臨界的な、薄い区域)、ESCR性能、シート剛性、および熱成形プロセスのエネルギー節減の組合せ、を与えることが見出された。従って、本発明によるシート構造体は、中実のプラスチックシートおよび/または肉薄の発泡層を基にした多層シートに比べて、改善された熱成形可能なシートの押出成形、改善された深絞り熱成形処理能力(サイクル時間の短縮)および熱成形プロセスにおけるエネルギー費用低減を可能とさせる。1つの態様では、本発明は、生産構成が、本発明によるシート構造体を用い、そして標準的な、現在利用できるシート押出および熱成形装置を用いる熱成形プロセスである。また、更なる絶縁発泡層を含む、改善された熱成形された絶縁部品または物品で利益が与えられ、例えば、熱成形された部品に適用された絶縁発泡材料を更に有する熱成形された冷蔵庫ライナーは、更なる絶縁発泡材料、特にポリウレタン発泡体の改善された均一な適用および接着性を有している。
【0055】
本発明によるシート材料によって、発泡体または発泡性の混合物、例えば発泡性ポリウレタンが断熱性層を与えるために適用される場合には、発泡体表面層もまた、熱成形された部品の発泡体表面層上への、良好な発泡体接着を備えた、完全な、そして均一なポリウレタン発泡体被覆を促進し、一方で十分なシート剛性および環境応力亀裂抵抗を維持することが見出された。
【実施例】
【0056】
以下の例は、本発明の種々の態様を説明するために与えられている。これらは、説明し、そして特許請求したこと以外に、本発明を限定することを意図してはいない。全ての数値は近似的なものであり、そして全ての部およびパーセントは特に断りのない限り質量基準である。以下の用語および省略形がこれらの例中で用いられている。
【0057】
例1〜4は、本発明の例を表している。下記の表1中にまとめたように、4.0mmの多層熱可塑性シートが、Reifenhauser共押出ライン上で、非発泡熱可塑性ポリマー表面層および、化学的発泡剤(CBA)またはCBA核剤を備えたCO物理的発泡剤(PBA)を用いることによって与えられた発泡熱可塑性ポリマー表面層を備えて、押出成形された。STYRON A-TECH 1175商標の高衝撃ポリスチレン(HIPS)熱可塑性ポリマーを、発泡および非発泡層の両方に用いた。2台の押出機を備えたフィードブロック共押出プロセス中で、発泡剤を含むHIPSおよび発泡剤を含まないHIPSを、平坦な押出ダイを通して共押出し、そして垂直に配置された3本ロール装置を通して引き取ることによって冷却した。このことによって、4mmの厚さであり、そして1mmの非発泡もしくは中実層を備えた3mmの発泡層を有する、共押出成形された本発明によるシートが製造された。
【0058】
発泡剤含有HIPS樹脂層は、下記の表1中に示したように、示した量のCO物理的発泡剤が与えられ、および/または示した量の分散したCBAを含んでいる。ここで、CBAはFoamazol 72であり、Bergen Internationaからの、ポリスチレンでのマスターバッチ中のクエン酸と重炭酸ナトリウムの混合物であり、40質量%の活性成分を与え、その結果、CBAのグラム当たりに0.2グラムのCOを発生する。下記の表1中の用語「CBA質量%」は、発泡性/発泡層の熱可塑性ポリマー中に混合されたCBAの質量パーセントを意味している(40%の活性成分マスターバッチとして)。例えば、実験4では、100グラムの発泡性ポリスチレンは、0.5グラムのCBAマスターバッチを含み、0.2グラムの活性CBAを与え、発泡性ポリスチレン層中に0.04グラムのCOを与える。CBAは、熱可塑性ポリマー中に、押出機中での溶融混合によって混合される。
【0059】
物理的発泡剤の発泡層中への混合のために、HIPSは、COを押出バレル中にベント口の位置で供給するための高圧ピストンポンプを有するシート共押出ラインの押出機中に供給され、そこでCOは可塑化された溶融ポリマーと混合される。CO物理的発泡剤は、液化された発泡剤とポリマーとを混合するように設計されたスクリューによって、溶融ポリマー流中に混合され、一方で加えられた液体が「上流」へと押し戻されることのないように「下流」へと移動する。下記の表1中の用語「COPBA質量%」は、発泡性/発泡層の溶融ポリマー流中に混合される二酸化炭素ガス(液体)の、熱可塑性ポリマーの質量を基準とした質量%を表している。用語「CO放出(質量%)」は、放出された/CBAおよび/またはPBAによって与えられた、シート構造体中の熱可塑性ポリマーを基準とした二酸化炭素ガスの全質量パーセントを意味しており、そして加えられた発泡剤の既知の量から、理想気体の法則を用いて計算される。
【0060】
グラム/立方センチメートル(g/cc)での「シート密度」は、シート質量を測定し、そしてそれを計算されたシート体積で割り算することによって計算され、そして下記の表1中に示されている。「発泡層密度」(ρfoam)は、下記の式によって計算される。
【0061】
【数1】

【0062】
式中、ρfoamは、発泡層の密度であり、ρoverallは全体のシート密度であり、toverallはシートの総厚さであり、ρsolidは中実層の密度であり、tsolidは中実層の厚さであり、そしてtfoamは発泡層の厚さである。
【0063】
用語「密度低下%」は、化学的および/または物理的発泡剤を用いることによって、発泡された熱可塑性樹脂およびシート構造体の低下した密度のパーセンテージを意味しており、表1中に示されている。
【0064】
シートは、3本ロール艶出し装置によって引き取られ、そして圧縮されて、下記の表1中に示された特性を備えた、最終的な4mmのシートおよび層厚を与える。
【0065】
これらのシート試料は、次いで小型冷蔵庫(「ミニ冷蔵庫」)用のライナーへと「深絞り」熱成形した。このミニ冷蔵庫ライナーは、示した実験および比較例の中実シート試料から、Illig UA-100実験室規模の熱成形設備上で熱成形した。これらの熱成形試験では、2つのシート試料を、熱成形プロセスの全てのプロセス設定:IRヒータの温度設定、型温、予備発泡圧力、予備発泡時間、および冷却時間、を両方のシートについて同じにして、下記のようにミニ冷蔵庫へと熱成形した。
A:シート材料を、熱で柔軟化され、熱で可塑化されて熱成形可能で、たるみが始まる状態まで加熱すること、
B:熱で柔軟化され、熱で可塑化された熱成形可能なシートに、ガスで圧力を加え、そしてこのシートを最終的な部品の近似の寸法にまで延伸すること、
C:このシートを、真空によって型の形状に適合させること、および
D:熱成形された部品を型から分離すること。
【0066】
しかしながら、下記の表2中にまとめたように、本発明によるシートは、より短い加熱時間しか必要としないこと(55秒間に対して40秒間)、および従って、中実のシートに比べてプロセスサイクル時間で、27%の短縮を与えることが注目される。
【0067】
ミニ冷蔵庫ライナー構造体の評価が、図1〜図3中に示されており、そして実際の標準寸法の冷蔵庫からは、約半分に物理的寸法を小型化した大きさを備えた、2室の、「内側」(すなわち、キャビネット)ライナーを表している。ミニ冷蔵庫ライナーの設計は、試験(熱成形およびESCRを含む)をより厳格にするために幾つかの特徴を有している。この設計の重要な点は、(i)鋭角の角部(8mm半径、図2では50として示されている)、(ii)設計された棚ガイド(3mm半径、図2では60として示されている)、および(iii)2室の間の仕切り(図2および3では5)の、非常に深く絞った深さ(図2では「d」として示されている)および、それに応じた、熱成形性シートの比較的に小さい領域での高い絞り比、である。深絞りされた室の壁部(図2の30)で、臨界的な、最小の厚さである0.6mmを得るためには、仕切り(図2および3中の5)は、成功したシート熱成形性および部品熱成形の決定的要因であり、そして下記の実施例中で用いられた種々の4ミリメートルの熱成形可能なシートを用いることによって達成された。
【0068】
ミニ冷蔵庫構造体中の壁の構造的強度の試験のために、MTS 810 hydraulic frameを、ライナーを、特定の位置(図2中で、「x」によって印を付け、そして100で示されている)で、10mmだけ変位させるために用いた。結果として得られた抵抗力を、変位の関数として記録した。「最大力」として、ニュートンで示される、最終的な変形における力は、ライナーの全体的な強度の指標である。表1中に示したように、ポリマーグラム当たりの記録した構造的強度を得るために、シートの密度の影響を取り除き、そしてポリマーのグラム当たりを基準とした特性を比較するように、変形力を試料の質量で割り算した。これは非破壊試験であり、そしてそれぞれの試料単位について繰り返し、比較的に高度な整合性および再現性を示した。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果の解析は、特許請求した多層発泡シート構造体およびそれらの製造のための発泡プロセスは、効率的かつ効果的であり、そして著しい密度と質量の低減を与えることを示している。
【0071】
ミニ冷蔵庫の構造的強度試験結果の解析は、構造体を10mm変形させるために要する最大力は、予想されるように中実のライナーの対照材料よりも小さかったけれども、発泡層を有するシート材料による良好な性能を示している。
【0072】
上記のように、そして実施したミニ冷蔵庫ライナーの熱成形実験のまとめである表2によって示されるように、本発明による実験2の発泡シートの熱成形への使用は、加熱時間を短縮させ、そして中実のシートに比べて、熱成形サイクルを27%だけ短縮させた。これらの熱成形試験では、2種類のシート試料が、熱成形プロセスの全ての設定を両方のシートについて同じにして、ミニ冷蔵庫へと熱成形された。
【0073】
【表2】

【0074】
食用油または液体発泡剤などの、液体の環境応力亀裂剤への暴露では、ESCRを試験するための最も一般的な実験室模擬の実験の1つは、ISO4599(ASTM D543)に基づく試験である。多層シートの熱成形された試料を、ISO4599と同様の試験で、液体の環境応力亀裂剤への暴露の下での環境応力亀裂への抵抗力を評価した。この試験では、犬の骨型の、ISO型の切断された引張用バーを、このバーを曲げもしくは歪位置に保持する、「成形具(former)」とも称される曲げクランプを用いて、一定歪で保持した。試験片の表面における名目歪、εは、成形具内で与えられる曲げの半径によって決まり、そして以下のように計算される。
【0075】
【数2】

【0076】
式中、dは試験片の厚さ、そしてrは成形具の半径である。
これらのバーは、成形具中で曲げられたままであり、そして変形された状態にあり(0.35%)、そして次いで室温で、コーン油に暴露(浸漬)して、「食料品ESCR」を試験した。引張強度特性(ISO527またはASTM D638Mによって測定した、パーセントでの破断時伸び)を、増加させた浸漬時間(数日間)後に測定し、そして出発時引張特性と比較した。最初の特性測定値からのこの特性の低下が小さいほど、この材料は暴露した物質へより良く抵抗すると考えられる。
【0077】
【表3】

【0078】
上記の表3中にまとめたように、本発明による構造体についての、11日間の浸漬後の最終的な引張強度(21および16)は、満足のゆくものである;本出願では、一般的に少なくとも約10%の値を要求している。これらの観察された値は、従来技術の中実シートの11日間浸漬後(18)と概略で同じであり、そして重要なことには、観察された引張伸びの最初の特性からの低下は比較的に小さい(中実シートの69%に対して、本発明によれば53%と32%の引張伸び減少)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの表面層および場合によって1つもしくは2つ以上の内層を有する多層シートであって、前記多層シートは、非発泡熱可塑性ポリマー表面層A、発泡熱可塑性ポリマー層B、および場合による非発泡熱可塑性ポリマー表面層Cを含み、かつ約0.5〜約20ミリメートル(mm)の総シート厚さと1超の発泡対中実比を有しており、ここで、
(a)前記非発泡熱可塑性ポリマー表面層(A)は、約0.25〜約6ミリメートル(mm)の範囲の厚さを有し、かつ
(b)発泡熱可塑性ポリマー層(B)は、少なくとも約五(5)質量%の総密度低下を有し、そして場合による表面層(C)が存在しない場合には、表面層である、
多層シート。
【請求項2】
前記非発泡表面層Aの厚さが、少なくとも0.5mmである、請求項1記載の多層シート。
【請求項3】
前記非発泡表面層Aの厚さが、少なくとも0.75mmである、請求項1記載の多層シート。
【請求項4】
前記発泡対中実比が、少なくとも1.86である、請求項1記載の多層シート。
【請求項5】
前記発泡対中実比が、少なくとも2.33である、請求項1記載の多層シート。
【請求項6】
少なくとも約十(10)質量%の密度低下を有する、請求項1記載の多層シート。
【請求項7】
少なくとも約二十(20)質量%の密度低下を有する、請求項1記載の多層シート。
【請求項8】
約1〜約10mmの総シート厚さを有する、請求項1記載の多層シート。
【請求項9】
約2〜約5mmの総シート厚さを有する、請求項1記載の多層シート。
【請求項10】
層Bが、発泡された、HIPS、GPPS、ABS、これらの2種もしくは3種以上の混合物、およびこれらの1種もしくは2種以上と1種もしくは2種以上の追加のポリマーとの混合物、からなる群から選ばれるモノビニリデン芳香族ポリマー樹脂を含む、請求項1記載の多層シート。
【請求項11】
層AおよびBが、共押出されたものである、請求項1記載の多層シート。
【請求項12】
層Aが、層B上にフィルムラミネートされた、または押出コーティングされたものである、請求項1記載の多層シート。
【請求項13】
層Bが、物理的発泡剤または、物理的発泡剤と化学的発泡剤核剤との組合せ、または化学的発泡剤のみ、を用いて発泡されている、請求項1記載の多層シート。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項記載の多層シートから調製された、熱成形物品。
【請求項15】
A:請求項1〜13のいずれか1項記載の多層シートを加熱して熱で柔軟化され、熱で可塑化されて熱成形可能な状態とすること、
B:ガス、真空および/または物理的圧力を、熱で柔軟化され、熱で可塑化された熱成形可能なシートに加え、そして前記シートを延伸して最終的な部品に近似の寸法とすること、
C:前記シートを真空または圧力によって型の形状に適合させること、ならびに
D:熱成形された部品を前記型から分離すること、
を含む熱成形方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法によって製造された熱成形部品に、断熱性発泡層を与えることを含む、断熱性成形部品の調製方法。
【請求項17】
前記断熱性発泡層がポリウレタン発泡体である、請求項16記載の断熱性成形部品の調製方法。
【請求項18】
前記断熱性層が、前記熱成形部品の発泡表面層と外側ケーシングもしくは筐体構造体との間の空洞もしくは空間中に与えられる、請求項17記載の断熱性成形部品の調製方法。
【請求項19】
前記外側ケーシングもしくは筐体構造が、冷蔵庫キャビネットまたは冷蔵庫ドアである、請求項18記載の断熱性成形部品の調製方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項記載の方法によって調製された断熱性成形部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−500741(P2012−500741A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525092(P2011−525092)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/054243
【国際公開番号】WO2010/027655
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510288530)スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】