太陽電池モジュール、シリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法
【課題】太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができ、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの歩留まりを向上して、製造コストを低減することができるシリコンリボン、球状シリコン、およびこれらの製造方法、ならびにこれらを用いた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】融液から直接作製されるシリコンリボン、球状シリコンであって、シリコンリボン、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボン、球状シリコン、およびこれらの製造方法、ならびにこれらを用いた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールである。
【解決手段】融液から直接作製されるシリコンリボン、球状シリコンであって、シリコンリボン、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボン、球状シリコン、およびこれらの製造方法、ならびにこれらを用いた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンリボン、球状シリコン、太陽電池セル、太陽電池モジュール、シリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球規模での環境問題に対して、再生可能エネルギが注目を浴びており、その中でも太陽電池は大きな注目を集めている。なかでも、シリコン結晶系太陽電池は、太陽電池の主流となっている。
【0003】
シリコン結晶系太陽電池は、B(ホウ素)やGa(ガリウム)などのIII族元素が少量添加されたp型シリコン結晶基板の表面に、P(リン)などのV族元素を拡散させること等によりn型層を形成したpn接合タイプが最も一般的である。
【0004】
また、シリコン結晶系太陽電池には、P(リン)などのV族元素が少量添加されたn型シリコン結晶基板の表面にp型層を形成したもの、p型あるいはn型シリコン結晶基板上に薄膜成長によりn、p型層をそれぞれ成長させたもの(ヘテロ接合、pin構造なども含む)、およびMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造を有するものなどもある。
【0005】
シリコン結晶系太陽電池の作製に用いられるシリコン結晶基板の作製方法としては、たとえば以下の(1)〜(4)の方法がある。
(1)シリコン融液を凝固させて大きなシリコン結晶インゴットを作製し、シリコン結晶インゴットをスライスする方法(キャスト法)。
(2)シリコン融液に成長用基板を接触させることなく、直接ウエハの形状にシリコンリボンを成長させる方法。
(3)シリコン融液に成長用基板を接触させて、成長用基板上にシリコンリボンを成長させる方法。
(4)シリコン融液を不活性ガス中などに滴下して落下中に凝固させ、またはシリコン融液を小さな鋳型に投入して凝固させることによって球状シリコンを成長させる方法。
【0006】
シリコン結晶の成長速度は、概ね、(1)<(2)<(3)および(4)の大小関係を満たしている。
【0007】
また、近年においては、ダーク時の逆方向漏れ電流が太陽電池セルの重要な評価項目となりつつある。その理由は、効率良く電力を取り出すために、太陽電池モジュール内での太陽電池セルの直列数が増加傾向にあるためである。
【0008】
太陽電池モジュール内の太陽電池セルの直列数が増加すると、そのうちの1つの太陽電池セルのみが影になった場合、影になっていない残りの直列分の太陽電池セルの起電力が影になった太陽電池セルに逆方向にかかることになる。このとき、影になった太陽電池セルの逆方向漏れ電流(リーク電流)が大きい場合には、太陽電池セル内で電流がリークした部分の温度が上昇してしまう。したがって、太陽電池モジュールの信頼性を確保する観点から、太陽電池モジュール内の個々の太陽電池セルのダーク時の逆方向漏れ電流が近年の重要な評価項目となっている。
【0009】
また、非特許文献1に記載されているように、上記の(1)のキャスト法を用いて作製された多結晶シリコンにおいては、逆方向漏れ電流を増大させる要因として、不純物として混入した窒素が問題となることが知られている(非特許文献1のp.994左欄の2.1 SiC filamentsの欄参照)。
【0010】
キャスト法により多結晶シリコンを作製する場合には、原料中あるいは結晶の成長中のシリコン融液に炭素および窒素がそれぞれ不純物として混入する。そして、シリコン融液に混入した炭素不純物が炭化ケイ素(SiC)フィラメントとして析出し、窒素不純物は炭化ケイ素フィラメント中にn型不純物として取り込まれて導電性を発現させる(非特許文献1のp.994左欄の2.1 SiC filamentsの欄参照)。導電性を有する多結晶シリコン炭化ケイ素フィラメントは太陽電池セルのn+エミッタ層と裏面電界(BSF)層(p+層)とを短絡する(非特許文献1のp.994左欄の1 INTRODUCTIONの欄参照)。
【0011】
太陽電池セルに逆方向漏れ電流を生じさせる原因としては、n+/p/p+構造のごく一般的な太陽電池セルを例に挙げると、以下の(a)〜(d)などが挙げられる。
(a)太陽電池セル側面における不十分な接合分離。
(b)太陽電池セルの受光面のn電極のp層への突き抜け。
(c)シリコン結晶基板の割れ部へのリンあるいはアルミニウムなどのドーパントの滲み出しあるいは貫通。
(d)pn接合部における欠陥準位あるいは不純物準位。
【0012】
さらに、太陽電池はクリーンエネルギとして期待され、その導入量は着実に増加しているものの、今後さらに普及し、地球環境の保全に役立つためには、さらにコストパフォーマンスを上げることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Bauer et al., “INVESTIGATIONS ON DIFFERENT TYPES OF FILAMENTS IN MULTI-CRYSTALLINE SILICON FOR SOLAR CELLS”, 22nd European Photovoltaic Solar Energy Conference, 3-7 September 2007, Milan, Italy, pp.994-997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができ、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの歩留まりを向上して、製造コストを低減することができるシリコンリボンおよび球状シリコン、これらを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュール、ならびにそのシリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、融液から直接作製されるシリコンリボンであって、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンである。ここで「融液から直接作製されるシリコンリボン」は、融液からインゴットなどの他の形状を経ることなく作製されたシリコンリボンを意味する。
【0016】
ここで、本発明のシリコンリボンにおいては、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記のシリコンリボンを用いて作製された、太陽電池セルである。
また、本発明は、上記の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュールである。
【0018】
また、本発明は、融液から直接作製される球状シリコンであって、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンである。ここで「融液から直接作製される球状シリコン」は、融液からインゴットなどの他の形状を経ることなく作製された球状シリコンを意味する。
【0019】
ここで、本発明の球状シリコンにおいては、球状シリコンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記の球状シリコンを用いて作製された、太陽電池セルである。
また、本発明は、上記の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュールである。
【0021】
また、本発明は、窒素含有シリコン融液を作製する工程と、窒素含有シリコン融液から窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させる工程と、を含む、シリコンリボンの製造方法である。
【0022】
ここで、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させることが好ましい。
【0023】
また、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、シリコンリボンを成長用基板上に成長させることが好ましい。
【0024】
また、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、シリコンリボンの成長速度が20μm/秒以上であることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、窒素含有シリコン融液を作製する工程と、窒素含有シリコン融液を落下させることによって窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させる工程と、を含む、球状シリコンの製造方法である。
【0026】
ここで、本発明の球状シリコンの製造方法においては、球状シリコンを成長させる工程において、窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させることが好ましい。
【0027】
また、本発明の球状シリコンの製造方法においては、球状シリコンを成長させる工程において、球状シリコンの成長速度が20μm/秒以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができ、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの歩留まりを向上して、製造コストを低減することができるシリコンリボンおよび球状シリコン、これらを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュール、ならびにそのシリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】シリコンリボンの成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図2】シリコンリボンの成長装置の他の一例の模式的な構成図である。
【図3】(a)〜(i)は、本発明のシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製する方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図5】球状シリコンの成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図6】本発明の球状シリコンを用いた太陽電池セルの一例の模式的な断面図である。
【図7】比較例1のキャストシリコン成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図8】実施例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図9】実施例2の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図10】実施例3の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図11】比較例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0031】
<シリコンリボン>
本発明のシリコンリボンは、融液から直接作製されるシリコンリボンであって、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であることを特徴としている。これは、本発明者が鋭意検討した結果、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを用いて作製された太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができることを見出したことによるものである。逆方向漏れ電流を低減できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下のあたりで、窒素がシリコンリボンに形成されたpn接合近傍の欠陥準位をパッシベートするために逆方向漏れ電流を抑えることができると考えられる。シリコンリボンの窒素濃度が5×1017atoms/cm3を超える場合には、シリコンリボンに高濃度の窒素に起因する欠陥準位が現れるために、逆方向漏れ電流が増加すると考えられる。
【0032】
本発明のシリコンリボンの窒素濃度は1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製した場合には、太陽電池セルの逆方向漏れ電流をさらに低減することができる傾向にある。
【0033】
なお、本発明のシリコンリボンの窒素濃度は、シリコンリボンにおける窒素の総原子数をシリコンリボンの体積で割った値に相当し、たとえばSIMS(二次イオン質量分析法)やCPAA(荷電粒子放射化分析)などを用いて算出することができる。
【0034】
<シリコンリボンの製造方法>
本発明のシリコンリボンは、融液から直接作製されることを特徴としている。その理由は、融液を凝固させて結晶シリコンインゴットを一旦作製する必要のあるキャスト法と比較して、成長速度が速く、窒素の偏析効果が効きにくく、結晶中における窒素の振る舞いが異なるためであると考えられる。キャスト法で作製されたシリコン結晶基板中においても本発明のシリコンリボンと同様の振る舞いをする窒素は含まれると考えられるが、そのような窒素は非特許文献1に記載の位置(SiC中に存在)することが多いため、逆方向漏れ電流の低減に与える窒素の影響が異なっているものと考えられる。
【0035】
本発明のシリコンリボンの製造方法は、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程と、(ii)シリコンリボンを成長させる工程と、を含んでいる。
【0036】
(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程
窒素含有シリコン融液を作製する工程において、窒素含有シリコン融液は、たとえば、従来公知の方法を用いて作製されたシリコン融液に窒素を含有させることにより作製することができる。シリコン融液に窒素を含有させる方法としては、たとえば、シリコン融液が収容されたチャンバに窒素を含むガスを導入する方法、またはシリコン融液に窒化シリコンを投入する方法などを用いることができる。窒素含有シリコン融液中の窒素濃度は、たとえば、シリコン融液が収容されたチャンバに導入される窒素ガス流量および窒素ガス導入時間、またはシリコン融液への窒化シリコンの投入量を調整することにより適宜調整することが可能である。したがって、この工程においては、下記の(ii)の工程で成長するシリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となるようにシリコン融液中の窒素濃度が調整される。なお、窒素含有シリコン融液は、シリコンリボンをp型またはn型とするために、たとえば、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)などのIII族元素や、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などのV族元素などを含んでいてもよい。
【0037】
(ii)シリコンリボンを成長させる工程
上記の(i)の工程で作製された窒素含有シリコン融液からシリコンリボンを成長させて、本発明のシリコンリボンを窒素含有シリコン融液から直接作製する。図1に、シリコンリボンの成長装置の一例の模式的な構成図を示す。
【0038】
図1に示すシリコンリボンの成長装置は、坩堝台26と、坩堝台26に取り付けられた坩堝22と、坩堝台26の坩堝22とは反対側に取り付けられた坩堝昇降台28と、坩堝台26の下面に取り付けられた断熱材27と、坩堝22を加熱するための加熱用ヒータ21と、坩堝22の上方に備え付けられた軸29と、を有している。なお、図1に示されるシリコンリボンの成長装置は、真空排気ができるようにチャンバ内に設置されていることが好ましい。また、図示はされていないが、図1に示すシリコンリボンの成長装置は、たとえば軸29を図1の矢印の方向に移動させるための装置、加熱用ヒータ21を制御するための装置、および窒素含有シリコン融液を坩堝22に追加投入するための装置などを有していてもよい。
【0039】
図1に示すシリコンリボンの成長装置を用いてシリコンリボンを成長させる工程は、たとえば以下のようにして行なわれる。まず、上記の(i)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12を坩堝22の内部に収容し、加熱用ヒータ21によって坩堝22の内部の窒素含有シリコン融液12の温度をたとえば1420℃〜1440℃程度に保持する。
【0040】
次に、軸29の先端にシリコンリボン成長用基板14を取り付け、軸29を図1の矢印の方向に移動させる。これにより、坩堝22の内部の窒素含有シリコン融液12にシリコンリボン成長用基板14の表面を浸漬させて、窒素含有シリコン融液12にシリコンリボン成長用基板14を接触させる。なお、シリコンリボン成長用基板14は、熱伝導性の良い材料および/または耐熱性に優れた材料からなることが好ましく、このような材料としては、たとえば黒鉛、炭化ケイ素および窒化ホウ素などが挙げられる。
【0041】
窒素含有シリコン融液12へのシリコンリボン成長用基板14の表面の浸漬時間は、所望とするシリコンリボン11の厚みに応じて適宜の時間を採り得るが、たとえば厚み300μmのシリコンリボン11を得るための浸漬時間はおおよそ3〜4秒程度である。
【0042】
以上により、シリコンリボン成長用基板14の表面上に窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となるシリコンリボン11を成長させる。
【0043】
ここで、シリコンリボン11の成長速度は20μm/秒以上であることが好ましい。シリコンリボン11の成長速度が20μm/秒以上である場合には、逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる窒素を効率的にシリコンリボン11に取り込むことができるとともに、そのような窒素を取り込んだシリコンリボン11を安定して効率良く製造することができる。そのため、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流を効果的に低減することができるシリコンリボン11を良好な製造歩留まりで、かつ低コストに製造することができる傾向にある。なお、ここでいうシリコンリボン11の成長速度は、シリコンリボン成長用基板14の表面に対して垂直な方向におけるシリコンリボン11の成長速度である。
【0044】
その後、軸29を図1の矢印の方向にさらに移動させることによって、シリコンリボン成長用基板14の表面を窒素含有シリコン融液12から引き離し、シリコンリボン成長用基板14からシリコンリボン11を取り外して、本発明のシリコンリボン11を作製することができる。
【0045】
上記においてはシリコンリボン成長用基板14を用いて本発明のシリコンリボン11を作製する方法の一例について説明したが、以下、図2のシリコンリボンの成長装置の他の一例の模式的な構成図を用いて、シリコンリボン成長用基板14を用いずに本発明のシリコンリボン11を作製する方法の一例について説明する。
【0046】
まず、図2に示すように、上記の(i)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12に2枚の板状体13を互いに距離をあけて浸漬させる。ここで、板状体13としてはたとえば黒鉛板などを用いることができる。
【0047】
次に、2枚の板状体13の間から窒素含有シリコン融液12を矢印15の方向に引き出して窒素含有シリコン融液12を冷却することによって、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となる本発明のシリコンリボン11を成長させる。
【0048】
本発明のシリコンリボン11中の窒素による逆方向漏れ電流の低減効果は、原理的にシリコンリボンの成長速度と正の相関がある。シリコンリボンの製造方法は、大きく分けて、シリコンリボン成長用基板を用いないグループと、シリコンリボン成長用基板を用いてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させるグループと、の2種類がある。後者のグループにおいては、シリコンリボン成長用基板からの抜熱が可能であるため、前者のグループと比較して、シリコンリボンの成長速度を大きくすることができ、窒素によるシリコンリボンの逆方向漏れ電流の低減効果が大きくなる。
【0049】
なお、シリコンリボン成長用基板を用いないグループとしては、たとえば、EFG(登録商標)(Edge-Defined Film-fed Growth)やString Ribbon(登録商標)などがある。また、シリコンリボン成長用基板を用いてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させるグループとしては、たとえば、RGS(Ribbon Growth on Substrate)法、RST(Ribbon on Sacrificial Carb on Template)法、または上記の方法のように融液にシリコンリボン成長用基板を接触させてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させる方法などがある。
【0050】
<シリコンリボンを用いた太陽電池セル、太陽電池モジュール>
以下、図3(a)〜図3(i)の模式的断面図を参照して、本発明のシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製する方法の一例について説明する。
【0051】
まず、図3(a)に示すように、p型のシリコンリボン11を用意し、このシリコンリボン11のテクスチャエッチングを行なって、シリコンリボン11の表面にテクスチャ構造(図示せず)を形成する。
【0052】
次に、図3(b)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にPSG(リンシリケートガラス)液31を塗布する。
【0053】
次に、PSG液31の塗布後のシリコンリボン11を加熱することによってPSG液31からシリコンリボン11にリンを拡散させることによって、図3(c)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にn+層32を形成する。このとき、n+層32上にはPSG膜31aが形成される。その後、図3(d)に示すように、リンの拡散の際に形成されたPSG膜31aを除去する。
【0054】
次に、図3(e)に示すように、シリコンリボン11のn+層32上にたとえば窒化シリコン膜などの反射防止膜33を形成する。
【0055】
次に、図3(f)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの裏面側となる表面(裏面)にアルミニウムペースト34を塗布する。そして、アルミニウムペースト34の塗布後のシリコンリボン11を焼成することにより、アルミニウムペースト34からアルミニウムをシリコンリボン11の裏面に拡散させて、図3(g)に示すように、シリコンリボン11の裏面にアルミニウム電極34aとp+層35とを同時に形成する。
【0056】
次に、図3(h)に示すように、反射防止膜33の表面上に銀ペースト36aを塗布し、その後焼成することによって、図3(i)に示すように、n+層32と電気的に接続する銀電極36を形成する。その後、銀電極36にはんだを塗布することにより、本発明のシリコンリボンを用いた太陽電池セルの一例が作製される。
【0057】
また、図4に、上記のようにして作製された太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図を示す。ここで、太陽電池モジュールは、本発明のシリコンリボンを用いて作製された太陽電池セルの複数が直列に電気的に接続されることにより形成されている。
【0058】
すなわち、隣り合うようにして配置された、一方の太陽電池セルの受光面側の銀電極36と、他方の太陽電池セルの裏面側のアルミニウム電極34aとが、それぞれ、インターコネクタと言われる導電性部材44によって電気的に接続されることにより、これらの太陽電池セルが電気的に直列に接続されて太陽電池ストリングを構成している。
【0059】
そして、上記の太陽電池ストリングが、透明基板41と、保護シート43との間に設置された封止材42中に封止されることによって太陽電池モジュールが作製される。ここで、透明基板41としては、たとえばガラス基板などを用いることができる。また、保護シート43としては、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどを用いることができる。さらに、封止材42としては、たとえばEVA(エチレンビニルアセテート)などの透明樹脂などを用いることができる。
【0060】
上記のようにして作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下とされた本発明のシリコンリボン11を用いて作製されていることから、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流が低減されている。したがって、逆方向漏れ電流が大きいことに起因する不良品の発生率が低くなるため、良好な特性を有する太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを高い製造歩留まりかつ低コストで製造することができる。
【0061】
なお、本発明の太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、本発明のシリコンリボンを用いること以外は従来から公知の構造を用いることができる。たとえば、本発明のp型のシリコンリボンにn+層を形成した構造、本発明のn型のシリコンリボンにp+層を形成した構造、薄膜シリコン等とのヘテロ接合を形成した構造、およびMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造等であってもよい。また、太陽電池セルの製造方法についても特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を用いることができる。
【0062】
<球状シリコン>
本発明の球状シリコンは、融液から直接作製される球状シリコンであって、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であることを特徴としている。これは、本発明者が鋭意検討した結果、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを用いて作製された太陽電池セルについてもその逆方向漏れ電流を低減することができることを見出したことによるものである。逆方向漏れ電流を低減できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下のあたりで、窒素が球状シリコンに形成されたpn接合近傍の欠陥準位をパッシベートするために逆方向漏れ電流を抑えることができると考えられる。球状シリコンの窒素濃度が5×1017atoms/cm3を超える場合には、球状シリコンに高濃度の窒素に起因する欠陥準位が現れるために、逆方向漏れ電流が増加すると考えられる。
【0063】
本発明の球状シリコンの窒素濃度は1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを用いて太陽電池セルを作製した場合には、太陽電池セルの逆方向漏れ電流をさらに低減することができる傾向にある。
【0064】
なお、本発明の球状シリコンの窒素濃度は、球状シリコンにおける窒素の総原子数を球状シリコンの体積で割った値に相当し、たとえばSIMSやCPAAなどを用いて算出することができる。
【0065】
<球状シリコンの製造方法>
本発明の球状シリコンは、融液から直接作製されることを特徴としている。その理由は、融液を凝固させて大きな結晶シリコンインゴットを一旦作製する必要のあるキャスト法と比較して、成長速度が速く、窒素の偏析効果が効きにくく、結晶中における窒素の振る舞いが異なるためであると考えられる。キャスト法で作製されたシリコン結晶基板中においても本発明のシリコンリボンと同様の振る舞いをする窒素は含まれると考えられるが、そのような窒素は非特許文献1に記載の位置(SiC中に存在)することが多いため、逆方向漏れ電流の低減に与える窒素の影響が異なっているものと考えられる。
【0066】
本発明の球状シリコンの製造方法は、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程と、(II)球状シリコンを成長させる工程と、を含んでいる。なお、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程は、上記の(i)の工程と同様であるため、ここでは上記の(I)の工程の説明については省略する。
【0067】
(II)球状シリコンを成長させる工程
上記の(I)の工程で作製された窒素含有シリコン融液から球状シリコンを成長させて本発明の球状シリコンを窒素含有シリコン融液から直接作製する。図5に、球状シリコンの成長装置の一例の模式的な構成図を示す。
【0068】
図5に示す球状シリコンの成長装置は、チャンバ51と、チャンバ51の内部の上方に設置された坩堝55と、坩堝55の周囲に設置された加熱用ヒータ52と、チャンバ51の内部の下方に設置された収集用容器54と、を有している。
【0069】
図5に示す球状シリコンの成長装置を用いて球状シリコンを成長させる工程は、たとえば以下のようにして行なわれる。
【0070】
まず、チャンバ51の内部の雰囲気をたとえばアルゴンガス雰囲気とし、上記の(I)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12を坩堝55の内部に収容する。そして、加熱用ヒータ52によって坩堝55の内部の窒素含有シリコン融液12の温度をたとえば1420℃〜1440℃程度に保持する。
【0071】
次に、坩堝55の下部に設けられた開口部から窒素含有シリコン融液12をチャンバ51の内部に落下させる。このとき、窒素含有シリコン融液12は坩堝55から液滴状に落下し、その落下中に液滴状の窒素含有シリコン融液12がチャンバ51の内部で冷却されて凝固することによって球状シリコン53が成長する。
【0072】
そして、落下中に成長した球状シリコン53は、チャンバ51の内部の下部に設けられた収集用の容器54に収容されることによって、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコン53が回収される。
【0073】
ここで、球状シリコン53の成長速度は20μm/秒以上であることが好ましく、25μm/秒以上であることがより好ましい。球状シリコン53の成長速度が20μm/秒以上である場合、特に25μm/秒以上である場合には、逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる窒素を効率的に球状シリコン53に取り込むことができるとともに、そのような窒素を取り込んだ球状シリコン53を安定して効率良く製造することができる。そのため、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる球状シリコン53を良好な製造歩留まりで、かつ低コストに製造することができる傾向にある。なお、ここでいう球状シリコン53の成長速度は、結晶核の位置と、その結晶核から成長した結晶の結晶面(成長フロント)との間の距離の最小値を成長時間で割った値を意味している。
【0074】
<球状シリコンを用いた太陽電池セル、太陽電池モジュール>
図6に、本発明の球状シリコンを用いた太陽電池セルの一例の模式的な断面図を示す。図6に示す太陽電池セルは、p型の球状シリコン53と、球状シリコン53の外表面に形成されたn+層61と、p型の球状シリコン53に接する導電性シート66と、n+層61に接する導電性シート64と、導電性シート66と導電性シート64との間に設置されてこれらを電気的に絶縁するための絶縁層65と、n+層61の表面上に形成された反射防止膜62と、反射防止膜62および導電性シート64を覆う透明保護膜63と、を有している。
【0075】
ここで、導電性シート64,66としては、それぞれ、たとえばアルミニウム箔などを用いることができる。また、絶縁層65としては、たとえばポリイミドなどを用いることができる。また、反射防止膜62としては、たとえば窒化ケイ素や酸化チタンなどを用いることができる。さらに、透明保護膜63としては、たとえば透明のプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0076】
図6に示す太陽電池セルは、たとえば以下のようにして作製することができる。まず、p型の球状シリコン53を複数用意し、これらのp型の球状シリコン53の外表面にたとえばリンなどのn型ドーパントを拡散させてn+層61を形成する。
【0077】
次に、n+層61の形成後の球状シリコン53のそれぞれを穴のあいた導電性シート64の穴に設置し、導電性シート64の穴から裏面側に露出したn+層61をエッチングにより除去する。
【0078】
次に、導電性シート64の裏面に絶縁層65を形成した後に、絶縁層65の一部を除去してp型の球状シリコン53の表面を露出させ、その露出した球状シリコン53の表面に導電性シート66を設置する。
【0079】
次に、導電性シート64の表面側のn+層61の表面上に反射防止膜62を形成し、その後、反射防止膜62および導電性シート64を透明保護膜63で覆うことによって、本発明の球状シリコン53を用いた太陽電池セルの一例が作製される。
【0080】
そして、上記のようにして作製された太陽電池セルの複数を電気的に直列に接続して太陽電池ストリングを形成し、上記の太陽電池ストリングが、透明基板と、保護シートとの間に設置された封止材中に封止されることによって太陽電池モジュールが作製される。
【0081】
上記のようにして作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下とされた本発明の球状シリコン53を用いて作製されていることから、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流が低減されている。したがって、逆方向漏れ電流が大きいことに起因する不良品の発生率が低くなるため、良好な特性を有する太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを高い製造歩留まりかつ低コストで製造することができる。
【0082】
なお、本発明の太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、本発明の球状シリコンを用いること以外は従来から公知の構造を用いることができる。たとえば、本発明のp型の球状シリコンにn+層を形成した構造、本発明のn型の球状シリコンにp+層を形成した構造、薄膜シリコン等とのヘテロ接合を形成した構造、およびMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造等であってもよい。また、太陽電池セルの製造方法についても特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0083】
<実施例1のシリコンリボン>
図1に示すシリコンリボンの成長装置を用いて、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(ii)シリコンリボンを成長させる工程を行なうことによって、シリコンリボンを作製した。
【0084】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝22に投入した後、当該装置が収容されたチャンバ(図示せず)の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバの上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0085】
次に、加熱用ヒータ21によって坩堝22を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0086】
その後、チャンバ内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝22の温度を1420℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0087】
次に、上記のようにして得られた窒素含有シリコン融液12に、軸29の先端に取り付けられた黒鉛製のシリコンリボン成長用基板14の表面を浸漬時間が2秒となる条件で浸漬させて、シリコンリボン成長用基板14の表面上にシリコンリボン11を成長させた。このようにして得られたシリコンリボン11の厚みは面内平均で280μmであった(成長速度140μm/秒)。
【0088】
また、シリコンリボン11の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでシリコンリボン11の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝22に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でシリコンリボン11を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のシリコンリボン11を成長させた。
【0089】
<実施例2の球状シリコン>
図5に示す球状シリコンの成長装置を用いて、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(II)球状シリコンを成長させる工程を行なうことによって、球状シリコンを作製した。
【0090】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝55に投入した後、坩堝55が収容されたチャンバ51の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバ51の上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0091】
次に、加熱用ヒータ52によって坩堝55を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバ51の内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0092】
その後、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝55の温度を1420℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0093】
次に、上記のようにして得られた窒素含有シリコン融液12を、坩堝55の下部に設けられた開口部からチャンバ51の下部に約10m落下させた。このとき、窒素含有シリコン融液12は坩堝55から液滴状に落下し、その落下中に液滴状の窒素含有シリコン融液12がチャンバ51の内部で冷却されて凝固することによって球状シリコン53が成長した。そして、落下中に成長した球状シリコン53を、チャンバ51の内部の下部に設けられた収集用の容器54に収容して回収した。このとき、球状シリコン53の成長速度は25μm/秒であった。
【0094】
また、球状シリコン53の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまで球状シリコン53の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝55に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件で球状シリコン53を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度の球状シリコン53を成長させた。
【0095】
<実施例3のシリコンリボン>
図2に示すシリコンリボンの成長装置を用いて、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(ii)シリコンリボンを成長させる工程を行なうことによって、シリコンリボンを作製した。
【0096】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝(図示せず)に投入した後、坩堝が収容されたチャンバ(図示せず)の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバ(図示せず)の上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0097】
次に、加熱用ヒータ(図示せず)によって坩堝を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0098】
その後、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝55の温度を1415℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0099】
次に、窒素含有シリコン融液12に2枚の黒鉛板からなる板状体13を互いに距離をあけて浸漬させた。
【0100】
次に、2枚の板状体13の間から窒素含有シリコン融液12を矢印15の方向に、引き上げ速度約85μ/秒で引き上げることによって、シリコンリボン11を作製した。このとき、シリコンリボン11の成長速度は85μm/秒であった。
【0101】
また、シリコンリボン11の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでシリコンリボン11の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でシリコンリボン11を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のシリコンリボン11を成長させた。
【0102】
<比較例1のキャストシリコン>
図7に示すキャストシリコンの成長装置を用いて、(A)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(B)キャストシリコンを成長させる工程を行なうことによって、キャストシリコンを作製した。
【0103】
窒化シリコンからなる離型材が内周面に塗布されたシリカ坩堝73(四角形状の開口部を有し、その内径は830mm)にシリコン原料を400kg充填し、加熱用ヒータ71でシリカ坩堝73を加熱してシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0104】
そして、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝73の温度を1420℃に1時間保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0105】
次に、加熱用ヒータ71の設定温度を0.5℃/時間の割合で下げるとともに、シリカ坩堝73の高さを8mm/時間の速度で下げることによって、キャストシリコン72を成長させた。キャストシリコン72の成長速度は3μm/秒であった。
【0106】
また、キャストシリコンの窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでキャストシリコン72の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でキャストシリコン72を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のキャストシリコン72を成長させた。
【0107】
<窒素濃度の評価>
実施例1で作製したシリコンリボン、実施例2で作製した球状シリコン、実施例3で作製したシリコンリボン、および比較例1で作製したキャストシリコンのそれぞれについてSIMS(二次イオン質量分析法)を用いて窒素濃度の測定を行なった。窒素濃度の測定に用いた装置および条件は以下のとおりである。
装置:二次イオン質量分析計(CAMECA社製、IMS−6F)
一次イオン:Cs+、加速電圧:10kV、
二次検出イオン:29Si14N-、
二次引出電圧:4.5kV、
一次電流:100nA、
一次ビームスキャン領域:80μm□、
データ取込領域:33μmφ、
測定時間:1秒/ポイント。
【0108】
通常、二次検出イオンとして、28Si14N-を測定した方が検出限界が低いが、炭素濃度が高い場合には、30Si12C-が検出限界を上げたため、29Si14N-を採用した。また、バックグラウンドの確認は測定中に、一次ビームのスキャン領域を小さくしたときのデータ挙動から確認した。
【0109】
<実施例1の太陽電池セル>
上記の実施例1で作製した様々な窒素濃度のシリコンリボンをそれぞれ用いて互いにシリコンリボンの窒素濃度が異なる太陽電池セルを以下のようにして作製した。
【0110】
まず、実施例1で作製した厚み280μmのp型のシリコンリボンをレーザを用いて切断し、155mm×155mmの正方形状の表面を有する図3(a)に示すp型のシリコンリボン11を作製した。
【0111】
次に、このシリコンリボン11を水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させてシリコンリボン11の異方性エッチングを行なうことによって、シリコンリボン11の表面にテクスチャ構造(図示せず)を形成した。
【0112】
次に、図3(b)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にPSG液31をスピンコートにより塗布した。
【0113】
次に、PSG液31の塗布後のシリコンリボン11を拡散炉に設置して加熱することによってPSG液31からシリコンリボン11にリンを拡散させ、図3(c)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にn+層32を形成した。その後、シリコンリボン11をフッ酸中に浸漬させることにより、図3(d)に示すように、リンの拡散の際に形成されたPSG膜31aを除去した。
【0114】
次に、図3(e)に示すように、シリコンリボン11のn+層32上に窒化シリコン膜からなる反射防止膜33をプラズマCVD法により形成した。
【0115】
次に、図3(f)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの裏面側となる表面(裏面)にアルミニウムペースト34をスクリーン印刷により塗布した。そして、アルミニウムペースト34の塗布後のシリコンリボン11を焼成することにより、アルミニウムペースト34からアルミニウムをシリコンリボン11の裏面に拡散させ、図3(g)に示すように、シリコンリボン11の裏面にアルミニウム電極34aとp+層35とを同時に形成した。
【0116】
次に、図3(h)に示すように、反射防止膜33の表面上に銀ペースト36aをスクリーン印刷により所定の形状に塗布し、その後焼成することによって、図3(i)に示すように、n+層32と電気的に接続する銀電極36を形成した。その後、銀電極36にはんだディップすることにより、実施例1の太陽電池セルを作製した。なお、n+層32がシリコンリボン11の周縁部分で裏面のアルミニウム電極34aと接触すると、太陽電池セルのフィルファクタ(FF)が下がり、変換効率が低くなるため、n+層32とアルミニウム電極34aとの接合分離を行なった。
【0117】
上記の太陽電池セルの作製工程を窒素濃度が異なる実施例1のシリコンリボンのそれぞれについて行ない、シリコンリボンの窒素濃度が異なる実施例1の太陽電池セルを複数作製した。
【0118】
そして、上記のようにして作製した実施例1の太陽電池セルのそれぞれについて、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図8に示す。図8の横軸が実施例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例1の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0119】
図8に示すように、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0120】
なお、図8の横軸の窒素濃度は上記のSIMSを用いた測定結果であり、必ずしもすべてがシリコンリボン中に固溶したものばかりではなく、Si3N4などの窒化物の形で存在するものも含まれる。しかしながら、シリコンリボンの成長速度が大きい場合には、偏析効果があまり発現せず、より効率的に結晶中に固溶し、固溶限界を超えた濃度まで取り込まれているものと考えられる。なお、シリコンリボンの成長時の坩堝22の温度やシリコンリボン成長用基板14の表面を窒素含有シリコン融液12に浸漬させる条件を変更して、シリコンリボンの成長速度を20μm/秒から300μm/秒までのシリコンリボンを作製して同様の評価を行なったが、図8と同様の結果が得られた。
【0121】
<実施例2の太陽電池セル>
上記の実施例2で作製した様々な窒素濃度の球状シリコンをそれぞれ用いて互いに球状シリコンの窒素濃度が異なる図6に示す構造を有する太陽電池セルを以下のようにして作製した。
【0122】
まず、実施例2で作製したp型の球状シリコン53を複数用意し、これらのp型の球状シリコン53のそれぞれの外表面にリンを拡散させてn+層61を形成した。
【0123】
次に、n+層61の形成後の球状シリコン53のそれぞれを穴のあいたアルミニウム箔からなる導電性シート64の穴に設置し、導電性シート64の穴から裏面側に露出したn+層61をエッチングにより除去した。
【0124】
次に、導電性シート64の裏面にポリイミドからなる絶縁層65を形成した後に、絶縁層65の一部を除去してp型の球状シリコン53の表面を露出させ、その露出した球状シリコン53の表面にアルミニウム箔からなる導電性シート66を設置した。
【0125】
次に、導電性シート64の表面側のn+層61の表面上に酸化チタンからなる反射防止膜62を形成し、その後、反射防止膜62および導電性シート64を透明のプラスチックフィルムからなる透明保護膜63で覆うことによって、実施例2の太陽電池セルを作製した。
【0126】
上記の太陽電池セルの作製工程を窒素濃度が異なる実施例2の球状シリコンのそれぞれについて行ない、球状シリコンの窒素濃度が異なる実施例2の太陽電池セルを複数作製した。
【0127】
そして、上記のようにして作製した実施例2の太陽電池セルのそれぞれについて、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図9に示す。図9の横軸が実施例2の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例2の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの導電性シート64側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0128】
図9に示すように、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、球状シリコンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0129】
<実施例3の太陽電池セル>
上記の実施例3で作製した様々な窒素濃度のシリコンリボンをそれぞれ用いて互いにシリコンリボンの窒素濃度が異なる実施例3の太陽電池セルを実施例1と同様にして作製した。
【0130】
そして、実施例3の太陽電池セルのそれぞれについて、実施例1と同様にして、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図10に示す。図10の横軸が実施例3の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例3の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0131】
図10に示すように、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0132】
<比較例1の太陽電池セル>
上記の比較例1で作製した様々な窒素濃度のキャストシリコンをそれぞれ実施例1のシリコンリボンと同じ大きさに切断してシリコン結晶基板を作製し、これらのシリコン結晶基板を用いて互いにシリコン結晶基板の窒素濃度が異なる比較例1の太陽電池セルを実施例1と同様にして作製した。
【0133】
そして、比較例1の太陽電池セルのそれぞれについて、実施例1と同様にして、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図11に示す。図11の横軸が比較例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、比較例1の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0134】
図11に示すように、比較例1の太陽電池セルにおいては、シリコン結晶基板の窒素濃度が増加するにつれてダーク時の逆方向漏れ電流が増加していき、実施例1〜3のように
、ダーク時の逆方向漏れ電流が局所的に低下する窒素濃度範囲が存在しなかった。
【0135】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、シリコンリボン、球状シリコン、太陽電池セル、太陽電池モジュール、シリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0137】
11 シリコンリボン、12 窒素含有シリコン融液、13 板状体、14 シリコンリボン成長用基板、15 矢印、21 加熱用ヒータ、22 坩堝、26 坩堝台、27 断熱材、28 坩堝昇降台、29 軸、31 PSG液、31a PSG膜、32 n+層、33 反射防止膜、34 アルミニウムペースト、34a アルミニウム電極、35 p+層、36 銀電極、36a 銀ペースト、41 透明基板、42 封止材、43 保護シート、44 導電性部材、51 チャンバ、52 加熱用ヒータ、53 球状シリコン、54 容器、55 坩堝、61 n+層、62 反射防止膜、63 透明保護膜、64,66 導電性シート、65 絶縁層、71 加熱用ヒータ、72 キャストシリコン、73 坩堝。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンリボン、球状シリコン、太陽電池セル、太陽電池モジュール、シリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球規模での環境問題に対して、再生可能エネルギが注目を浴びており、その中でも太陽電池は大きな注目を集めている。なかでも、シリコン結晶系太陽電池は、太陽電池の主流となっている。
【0003】
シリコン結晶系太陽電池は、B(ホウ素)やGa(ガリウム)などのIII族元素が少量添加されたp型シリコン結晶基板の表面に、P(リン)などのV族元素を拡散させること等によりn型層を形成したpn接合タイプが最も一般的である。
【0004】
また、シリコン結晶系太陽電池には、P(リン)などのV族元素が少量添加されたn型シリコン結晶基板の表面にp型層を形成したもの、p型あるいはn型シリコン結晶基板上に薄膜成長によりn、p型層をそれぞれ成長させたもの(ヘテロ接合、pin構造なども含む)、およびMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造を有するものなどもある。
【0005】
シリコン結晶系太陽電池の作製に用いられるシリコン結晶基板の作製方法としては、たとえば以下の(1)〜(4)の方法がある。
(1)シリコン融液を凝固させて大きなシリコン結晶インゴットを作製し、シリコン結晶インゴットをスライスする方法(キャスト法)。
(2)シリコン融液に成長用基板を接触させることなく、直接ウエハの形状にシリコンリボンを成長させる方法。
(3)シリコン融液に成長用基板を接触させて、成長用基板上にシリコンリボンを成長させる方法。
(4)シリコン融液を不活性ガス中などに滴下して落下中に凝固させ、またはシリコン融液を小さな鋳型に投入して凝固させることによって球状シリコンを成長させる方法。
【0006】
シリコン結晶の成長速度は、概ね、(1)<(2)<(3)および(4)の大小関係を満たしている。
【0007】
また、近年においては、ダーク時の逆方向漏れ電流が太陽電池セルの重要な評価項目となりつつある。その理由は、効率良く電力を取り出すために、太陽電池モジュール内での太陽電池セルの直列数が増加傾向にあるためである。
【0008】
太陽電池モジュール内の太陽電池セルの直列数が増加すると、そのうちの1つの太陽電池セルのみが影になった場合、影になっていない残りの直列分の太陽電池セルの起電力が影になった太陽電池セルに逆方向にかかることになる。このとき、影になった太陽電池セルの逆方向漏れ電流(リーク電流)が大きい場合には、太陽電池セル内で電流がリークした部分の温度が上昇してしまう。したがって、太陽電池モジュールの信頼性を確保する観点から、太陽電池モジュール内の個々の太陽電池セルのダーク時の逆方向漏れ電流が近年の重要な評価項目となっている。
【0009】
また、非特許文献1に記載されているように、上記の(1)のキャスト法を用いて作製された多結晶シリコンにおいては、逆方向漏れ電流を増大させる要因として、不純物として混入した窒素が問題となることが知られている(非特許文献1のp.994左欄の2.1 SiC filamentsの欄参照)。
【0010】
キャスト法により多結晶シリコンを作製する場合には、原料中あるいは結晶の成長中のシリコン融液に炭素および窒素がそれぞれ不純物として混入する。そして、シリコン融液に混入した炭素不純物が炭化ケイ素(SiC)フィラメントとして析出し、窒素不純物は炭化ケイ素フィラメント中にn型不純物として取り込まれて導電性を発現させる(非特許文献1のp.994左欄の2.1 SiC filamentsの欄参照)。導電性を有する多結晶シリコン炭化ケイ素フィラメントは太陽電池セルのn+エミッタ層と裏面電界(BSF)層(p+層)とを短絡する(非特許文献1のp.994左欄の1 INTRODUCTIONの欄参照)。
【0011】
太陽電池セルに逆方向漏れ電流を生じさせる原因としては、n+/p/p+構造のごく一般的な太陽電池セルを例に挙げると、以下の(a)〜(d)などが挙げられる。
(a)太陽電池セル側面における不十分な接合分離。
(b)太陽電池セルの受光面のn電極のp層への突き抜け。
(c)シリコン結晶基板の割れ部へのリンあるいはアルミニウムなどのドーパントの滲み出しあるいは貫通。
(d)pn接合部における欠陥準位あるいは不純物準位。
【0012】
さらに、太陽電池はクリーンエネルギとして期待され、その導入量は着実に増加しているものの、今後さらに普及し、地球環境の保全に役立つためには、さらにコストパフォーマンスを上げることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Bauer et al., “INVESTIGATIONS ON DIFFERENT TYPES OF FILAMENTS IN MULTI-CRYSTALLINE SILICON FOR SOLAR CELLS”, 22nd European Photovoltaic Solar Energy Conference, 3-7 September 2007, Milan, Italy, pp.994-997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができ、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの歩留まりを向上して、製造コストを低減することができるシリコンリボンおよび球状シリコン、これらを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュール、ならびにそのシリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、融液から直接作製されるシリコンリボンであって、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンである。ここで「融液から直接作製されるシリコンリボン」は、融液からインゴットなどの他の形状を経ることなく作製されたシリコンリボンを意味する。
【0016】
ここで、本発明のシリコンリボンにおいては、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記のシリコンリボンを用いて作製された、太陽電池セルである。
また、本発明は、上記の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュールである。
【0018】
また、本発明は、融液から直接作製される球状シリコンであって、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンである。ここで「融液から直接作製される球状シリコン」は、融液からインゴットなどの他の形状を経ることなく作製された球状シリコンを意味する。
【0019】
ここで、本発明の球状シリコンにおいては、球状シリコンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記の球状シリコンを用いて作製された、太陽電池セルである。
また、本発明は、上記の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュールである。
【0021】
また、本発明は、窒素含有シリコン融液を作製する工程と、窒素含有シリコン融液から窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させる工程と、を含む、シリコンリボンの製造方法である。
【0022】
ここで、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させることが好ましい。
【0023】
また、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、シリコンリボンを成長用基板上に成長させることが好ましい。
【0024】
また、本発明のシリコンリボンの製造方法においては、シリコンリボンを成長させる工程において、シリコンリボンの成長速度が20μm/秒以上であることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、窒素含有シリコン融液を作製する工程と、窒素含有シリコン融液を落下させることによって窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させる工程と、を含む、球状シリコンの製造方法である。
【0026】
ここで、本発明の球状シリコンの製造方法においては、球状シリコンを成長させる工程において、窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させることが好ましい。
【0027】
また、本発明の球状シリコンの製造方法においては、球状シリコンを成長させる工程において、球状シリコンの成長速度が20μm/秒以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができ、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの歩留まりを向上して、製造コストを低減することができるシリコンリボンおよび球状シリコン、これらを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュール、ならびにそのシリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】シリコンリボンの成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図2】シリコンリボンの成長装置の他の一例の模式的な構成図である。
【図3】(a)〜(i)は、本発明のシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製する方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図5】球状シリコンの成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図6】本発明の球状シリコンを用いた太陽電池セルの一例の模式的な断面図である。
【図7】比較例1のキャストシリコン成長装置の一例の模式的な構成図である。
【図8】実施例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図9】実施例2の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図10】実施例3の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【図11】比較例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)と、ダーク時の逆方向漏れ電流(A)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0031】
<シリコンリボン>
本発明のシリコンリボンは、融液から直接作製されるシリコンリボンであって、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であることを特徴としている。これは、本発明者が鋭意検討した結果、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを用いて作製された太陽電池セルの逆方向漏れ電流を低減することができることを見出したことによるものである。逆方向漏れ電流を低減できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下のあたりで、窒素がシリコンリボンに形成されたpn接合近傍の欠陥準位をパッシベートするために逆方向漏れ電流を抑えることができると考えられる。シリコンリボンの窒素濃度が5×1017atoms/cm3を超える場合には、シリコンリボンに高濃度の窒素に起因する欠陥準位が現れるために、逆方向漏れ電流が増加すると考えられる。
【0032】
本発明のシリコンリボンの窒素濃度は1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製した場合には、太陽電池セルの逆方向漏れ電流をさらに低減することができる傾向にある。
【0033】
なお、本発明のシリコンリボンの窒素濃度は、シリコンリボンにおける窒素の総原子数をシリコンリボンの体積で割った値に相当し、たとえばSIMS(二次イオン質量分析法)やCPAA(荷電粒子放射化分析)などを用いて算出することができる。
【0034】
<シリコンリボンの製造方法>
本発明のシリコンリボンは、融液から直接作製されることを特徴としている。その理由は、融液を凝固させて結晶シリコンインゴットを一旦作製する必要のあるキャスト法と比較して、成長速度が速く、窒素の偏析効果が効きにくく、結晶中における窒素の振る舞いが異なるためであると考えられる。キャスト法で作製されたシリコン結晶基板中においても本発明のシリコンリボンと同様の振る舞いをする窒素は含まれると考えられるが、そのような窒素は非特許文献1に記載の位置(SiC中に存在)することが多いため、逆方向漏れ電流の低減に与える窒素の影響が異なっているものと考えられる。
【0035】
本発明のシリコンリボンの製造方法は、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程と、(ii)シリコンリボンを成長させる工程と、を含んでいる。
【0036】
(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程
窒素含有シリコン融液を作製する工程において、窒素含有シリコン融液は、たとえば、従来公知の方法を用いて作製されたシリコン融液に窒素を含有させることにより作製することができる。シリコン融液に窒素を含有させる方法としては、たとえば、シリコン融液が収容されたチャンバに窒素を含むガスを導入する方法、またはシリコン融液に窒化シリコンを投入する方法などを用いることができる。窒素含有シリコン融液中の窒素濃度は、たとえば、シリコン融液が収容されたチャンバに導入される窒素ガス流量および窒素ガス導入時間、またはシリコン融液への窒化シリコンの投入量を調整することにより適宜調整することが可能である。したがって、この工程においては、下記の(ii)の工程で成長するシリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となるようにシリコン融液中の窒素濃度が調整される。なお、窒素含有シリコン融液は、シリコンリボンをp型またはn型とするために、たとえば、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)などのIII族元素や、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などのV族元素などを含んでいてもよい。
【0037】
(ii)シリコンリボンを成長させる工程
上記の(i)の工程で作製された窒素含有シリコン融液からシリコンリボンを成長させて、本発明のシリコンリボンを窒素含有シリコン融液から直接作製する。図1に、シリコンリボンの成長装置の一例の模式的な構成図を示す。
【0038】
図1に示すシリコンリボンの成長装置は、坩堝台26と、坩堝台26に取り付けられた坩堝22と、坩堝台26の坩堝22とは反対側に取り付けられた坩堝昇降台28と、坩堝台26の下面に取り付けられた断熱材27と、坩堝22を加熱するための加熱用ヒータ21と、坩堝22の上方に備え付けられた軸29と、を有している。なお、図1に示されるシリコンリボンの成長装置は、真空排気ができるようにチャンバ内に設置されていることが好ましい。また、図示はされていないが、図1に示すシリコンリボンの成長装置は、たとえば軸29を図1の矢印の方向に移動させるための装置、加熱用ヒータ21を制御するための装置、および窒素含有シリコン融液を坩堝22に追加投入するための装置などを有していてもよい。
【0039】
図1に示すシリコンリボンの成長装置を用いてシリコンリボンを成長させる工程は、たとえば以下のようにして行なわれる。まず、上記の(i)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12を坩堝22の内部に収容し、加熱用ヒータ21によって坩堝22の内部の窒素含有シリコン融液12の温度をたとえば1420℃〜1440℃程度に保持する。
【0040】
次に、軸29の先端にシリコンリボン成長用基板14を取り付け、軸29を図1の矢印の方向に移動させる。これにより、坩堝22の内部の窒素含有シリコン融液12にシリコンリボン成長用基板14の表面を浸漬させて、窒素含有シリコン融液12にシリコンリボン成長用基板14を接触させる。なお、シリコンリボン成長用基板14は、熱伝導性の良い材料および/または耐熱性に優れた材料からなることが好ましく、このような材料としては、たとえば黒鉛、炭化ケイ素および窒化ホウ素などが挙げられる。
【0041】
窒素含有シリコン融液12へのシリコンリボン成長用基板14の表面の浸漬時間は、所望とするシリコンリボン11の厚みに応じて適宜の時間を採り得るが、たとえば厚み300μmのシリコンリボン11を得るための浸漬時間はおおよそ3〜4秒程度である。
【0042】
以上により、シリコンリボン成長用基板14の表面上に窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となるシリコンリボン11を成長させる。
【0043】
ここで、シリコンリボン11の成長速度は20μm/秒以上であることが好ましい。シリコンリボン11の成長速度が20μm/秒以上である場合には、逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる窒素を効率的にシリコンリボン11に取り込むことができるとともに、そのような窒素を取り込んだシリコンリボン11を安定して効率良く製造することができる。そのため、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流を効果的に低減することができるシリコンリボン11を良好な製造歩留まりで、かつ低コストに製造することができる傾向にある。なお、ここでいうシリコンリボン11の成長速度は、シリコンリボン成長用基板14の表面に対して垂直な方向におけるシリコンリボン11の成長速度である。
【0044】
その後、軸29を図1の矢印の方向にさらに移動させることによって、シリコンリボン成長用基板14の表面を窒素含有シリコン融液12から引き離し、シリコンリボン成長用基板14からシリコンリボン11を取り外して、本発明のシリコンリボン11を作製することができる。
【0045】
上記においてはシリコンリボン成長用基板14を用いて本発明のシリコンリボン11を作製する方法の一例について説明したが、以下、図2のシリコンリボンの成長装置の他の一例の模式的な構成図を用いて、シリコンリボン成長用基板14を用いずに本発明のシリコンリボン11を作製する方法の一例について説明する。
【0046】
まず、図2に示すように、上記の(i)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12に2枚の板状体13を互いに距離をあけて浸漬させる。ここで、板状体13としてはたとえば黒鉛板などを用いることができる。
【0047】
次に、2枚の板状体13の間から窒素含有シリコン融液12を矢印15の方向に引き出して窒素含有シリコン融液12を冷却することによって、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下となる本発明のシリコンリボン11を成長させる。
【0048】
本発明のシリコンリボン11中の窒素による逆方向漏れ電流の低減効果は、原理的にシリコンリボンの成長速度と正の相関がある。シリコンリボンの製造方法は、大きく分けて、シリコンリボン成長用基板を用いないグループと、シリコンリボン成長用基板を用いてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させるグループと、の2種類がある。後者のグループにおいては、シリコンリボン成長用基板からの抜熱が可能であるため、前者のグループと比較して、シリコンリボンの成長速度を大きくすることができ、窒素によるシリコンリボンの逆方向漏れ電流の低減効果が大きくなる。
【0049】
なお、シリコンリボン成長用基板を用いないグループとしては、たとえば、EFG(登録商標)(Edge-Defined Film-fed Growth)やString Ribbon(登録商標)などがある。また、シリコンリボン成長用基板を用いてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させるグループとしては、たとえば、RGS(Ribbon Growth on Substrate)法、RST(Ribbon on Sacrificial Carb on Template)法、または上記の方法のように融液にシリコンリボン成長用基板を接触させてシリコンリボン成長用基板上にシリコンリボンを成長させる方法などがある。
【0050】
<シリコンリボンを用いた太陽電池セル、太陽電池モジュール>
以下、図3(a)〜図3(i)の模式的断面図を参照して、本発明のシリコンリボンを用いて太陽電池セルを作製する方法の一例について説明する。
【0051】
まず、図3(a)に示すように、p型のシリコンリボン11を用意し、このシリコンリボン11のテクスチャエッチングを行なって、シリコンリボン11の表面にテクスチャ構造(図示せず)を形成する。
【0052】
次に、図3(b)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にPSG(リンシリケートガラス)液31を塗布する。
【0053】
次に、PSG液31の塗布後のシリコンリボン11を加熱することによってPSG液31からシリコンリボン11にリンを拡散させることによって、図3(c)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にn+層32を形成する。このとき、n+層32上にはPSG膜31aが形成される。その後、図3(d)に示すように、リンの拡散の際に形成されたPSG膜31aを除去する。
【0054】
次に、図3(e)に示すように、シリコンリボン11のn+層32上にたとえば窒化シリコン膜などの反射防止膜33を形成する。
【0055】
次に、図3(f)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの裏面側となる表面(裏面)にアルミニウムペースト34を塗布する。そして、アルミニウムペースト34の塗布後のシリコンリボン11を焼成することにより、アルミニウムペースト34からアルミニウムをシリコンリボン11の裏面に拡散させて、図3(g)に示すように、シリコンリボン11の裏面にアルミニウム電極34aとp+層35とを同時に形成する。
【0056】
次に、図3(h)に示すように、反射防止膜33の表面上に銀ペースト36aを塗布し、その後焼成することによって、図3(i)に示すように、n+層32と電気的に接続する銀電極36を形成する。その後、銀電極36にはんだを塗布することにより、本発明のシリコンリボンを用いた太陽電池セルの一例が作製される。
【0057】
また、図4に、上記のようにして作製された太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図を示す。ここで、太陽電池モジュールは、本発明のシリコンリボンを用いて作製された太陽電池セルの複数が直列に電気的に接続されることにより形成されている。
【0058】
すなわち、隣り合うようにして配置された、一方の太陽電池セルの受光面側の銀電極36と、他方の太陽電池セルの裏面側のアルミニウム電極34aとが、それぞれ、インターコネクタと言われる導電性部材44によって電気的に接続されることにより、これらの太陽電池セルが電気的に直列に接続されて太陽電池ストリングを構成している。
【0059】
そして、上記の太陽電池ストリングが、透明基板41と、保護シート43との間に設置された封止材42中に封止されることによって太陽電池モジュールが作製される。ここで、透明基板41としては、たとえばガラス基板などを用いることができる。また、保護シート43としては、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどを用いることができる。さらに、封止材42としては、たとえばEVA(エチレンビニルアセテート)などの透明樹脂などを用いることができる。
【0060】
上記のようにして作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下とされた本発明のシリコンリボン11を用いて作製されていることから、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流が低減されている。したがって、逆方向漏れ電流が大きいことに起因する不良品の発生率が低くなるため、良好な特性を有する太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを高い製造歩留まりかつ低コストで製造することができる。
【0061】
なお、本発明の太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、本発明のシリコンリボンを用いること以外は従来から公知の構造を用いることができる。たとえば、本発明のp型のシリコンリボンにn+層を形成した構造、本発明のn型のシリコンリボンにp+層を形成した構造、薄膜シリコン等とのヘテロ接合を形成した構造、およびMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造等であってもよい。また、太陽電池セルの製造方法についても特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を用いることができる。
【0062】
<球状シリコン>
本発明の球状シリコンは、融液から直接作製される球状シリコンであって、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であることを特徴としている。これは、本発明者が鋭意検討した結果、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを用いて作製された太陽電池セルについてもその逆方向漏れ電流を低減することができることを見出したことによるものである。逆方向漏れ電流を低減できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下のあたりで、窒素が球状シリコンに形成されたpn接合近傍の欠陥準位をパッシベートするために逆方向漏れ電流を抑えることができると考えられる。球状シリコンの窒素濃度が5×1017atoms/cm3を超える場合には、球状シリコンに高濃度の窒素に起因する欠陥準位が現れるために、逆方向漏れ電流が増加すると考えられる。
【0063】
本発明の球状シリコンの窒素濃度は1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを用いて太陽電池セルを作製した場合には、太陽電池セルの逆方向漏れ電流をさらに低減することができる傾向にある。
【0064】
なお、本発明の球状シリコンの窒素濃度は、球状シリコンにおける窒素の総原子数を球状シリコンの体積で割った値に相当し、たとえばSIMSやCPAAなどを用いて算出することができる。
【0065】
<球状シリコンの製造方法>
本発明の球状シリコンは、融液から直接作製されることを特徴としている。その理由は、融液を凝固させて大きな結晶シリコンインゴットを一旦作製する必要のあるキャスト法と比較して、成長速度が速く、窒素の偏析効果が効きにくく、結晶中における窒素の振る舞いが異なるためであると考えられる。キャスト法で作製されたシリコン結晶基板中においても本発明のシリコンリボンと同様の振る舞いをする窒素は含まれると考えられるが、そのような窒素は非特許文献1に記載の位置(SiC中に存在)することが多いため、逆方向漏れ電流の低減に与える窒素の影響が異なっているものと考えられる。
【0066】
本発明の球状シリコンの製造方法は、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程と、(II)球状シリコンを成長させる工程と、を含んでいる。なお、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程は、上記の(i)の工程と同様であるため、ここでは上記の(I)の工程の説明については省略する。
【0067】
(II)球状シリコンを成長させる工程
上記の(I)の工程で作製された窒素含有シリコン融液から球状シリコンを成長させて本発明の球状シリコンを窒素含有シリコン融液から直接作製する。図5に、球状シリコンの成長装置の一例の模式的な構成図を示す。
【0068】
図5に示す球状シリコンの成長装置は、チャンバ51と、チャンバ51の内部の上方に設置された坩堝55と、坩堝55の周囲に設置された加熱用ヒータ52と、チャンバ51の内部の下方に設置された収集用容器54と、を有している。
【0069】
図5に示す球状シリコンの成長装置を用いて球状シリコンを成長させる工程は、たとえば以下のようにして行なわれる。
【0070】
まず、チャンバ51の内部の雰囲気をたとえばアルゴンガス雰囲気とし、上記の(I)の工程で作製した窒素含有シリコン融液12を坩堝55の内部に収容する。そして、加熱用ヒータ52によって坩堝55の内部の窒素含有シリコン融液12の温度をたとえば1420℃〜1440℃程度に保持する。
【0071】
次に、坩堝55の下部に設けられた開口部から窒素含有シリコン融液12をチャンバ51の内部に落下させる。このとき、窒素含有シリコン融液12は坩堝55から液滴状に落下し、その落下中に液滴状の窒素含有シリコン融液12がチャンバ51の内部で冷却されて凝固することによって球状シリコン53が成長する。
【0072】
そして、落下中に成長した球状シリコン53は、チャンバ51の内部の下部に設けられた収集用の容器54に収容されることによって、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコン53が回収される。
【0073】
ここで、球状シリコン53の成長速度は20μm/秒以上であることが好ましく、25μm/秒以上であることがより好ましい。球状シリコン53の成長速度が20μm/秒以上である場合、特に25μm/秒以上である場合には、逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる窒素を効率的に球状シリコン53に取り込むことができるとともに、そのような窒素を取り込んだ球状シリコン53を安定して効率良く製造することができる。そのため、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流を効果的に低減することができる球状シリコン53を良好な製造歩留まりで、かつ低コストに製造することができる傾向にある。なお、ここでいう球状シリコン53の成長速度は、結晶核の位置と、その結晶核から成長した結晶の結晶面(成長フロント)との間の距離の最小値を成長時間で割った値を意味している。
【0074】
<球状シリコンを用いた太陽電池セル、太陽電池モジュール>
図6に、本発明の球状シリコンを用いた太陽電池セルの一例の模式的な断面図を示す。図6に示す太陽電池セルは、p型の球状シリコン53と、球状シリコン53の外表面に形成されたn+層61と、p型の球状シリコン53に接する導電性シート66と、n+層61に接する導電性シート64と、導電性シート66と導電性シート64との間に設置されてこれらを電気的に絶縁するための絶縁層65と、n+層61の表面上に形成された反射防止膜62と、反射防止膜62および導電性シート64を覆う透明保護膜63と、を有している。
【0075】
ここで、導電性シート64,66としては、それぞれ、たとえばアルミニウム箔などを用いることができる。また、絶縁層65としては、たとえばポリイミドなどを用いることができる。また、反射防止膜62としては、たとえば窒化ケイ素や酸化チタンなどを用いることができる。さらに、透明保護膜63としては、たとえば透明のプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0076】
図6に示す太陽電池セルは、たとえば以下のようにして作製することができる。まず、p型の球状シリコン53を複数用意し、これらのp型の球状シリコン53の外表面にたとえばリンなどのn型ドーパントを拡散させてn+層61を形成する。
【0077】
次に、n+層61の形成後の球状シリコン53のそれぞれを穴のあいた導電性シート64の穴に設置し、導電性シート64の穴から裏面側に露出したn+層61をエッチングにより除去する。
【0078】
次に、導電性シート64の裏面に絶縁層65を形成した後に、絶縁層65の一部を除去してp型の球状シリコン53の表面を露出させ、その露出した球状シリコン53の表面に導電性シート66を設置する。
【0079】
次に、導電性シート64の表面側のn+層61の表面上に反射防止膜62を形成し、その後、反射防止膜62および導電性シート64を透明保護膜63で覆うことによって、本発明の球状シリコン53を用いた太陽電池セルの一例が作製される。
【0080】
そして、上記のようにして作製された太陽電池セルの複数を電気的に直列に接続して太陽電池ストリングを形成し、上記の太陽電池ストリングが、透明基板と、保護シートとの間に設置された封止材中に封止されることによって太陽電池モジュールが作製される。
【0081】
上記のようにして作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下とされた本発明の球状シリコン53を用いて作製されていることから、太陽電池セルにおける逆方向漏れ電流が低減されている。したがって、逆方向漏れ電流が大きいことに起因する不良品の発生率が低くなるため、良好な特性を有する太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを高い製造歩留まりかつ低コストで製造することができる。
【0082】
なお、本発明の太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、本発明の球状シリコンを用いること以外は従来から公知の構造を用いることができる。たとえば、本発明のp型の球状シリコンにn+層を形成した構造、本発明のn型の球状シリコンにp+層を形成した構造、薄膜シリコン等とのヘテロ接合を形成した構造、およびMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造等であってもよい。また、太陽電池セルの製造方法についても特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0083】
<実施例1のシリコンリボン>
図1に示すシリコンリボンの成長装置を用いて、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(ii)シリコンリボンを成長させる工程を行なうことによって、シリコンリボンを作製した。
【0084】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝22に投入した後、当該装置が収容されたチャンバ(図示せず)の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバの上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0085】
次に、加熱用ヒータ21によって坩堝22を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0086】
その後、チャンバ内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝22の温度を1420℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0087】
次に、上記のようにして得られた窒素含有シリコン融液12に、軸29の先端に取り付けられた黒鉛製のシリコンリボン成長用基板14の表面を浸漬時間が2秒となる条件で浸漬させて、シリコンリボン成長用基板14の表面上にシリコンリボン11を成長させた。このようにして得られたシリコンリボン11の厚みは面内平均で280μmであった(成長速度140μm/秒)。
【0088】
また、シリコンリボン11の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでシリコンリボン11の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝22に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でシリコンリボン11を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のシリコンリボン11を成長させた。
【0089】
<実施例2の球状シリコン>
図5に示す球状シリコンの成長装置を用いて、(I)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(II)球状シリコンを成長させる工程を行なうことによって、球状シリコンを作製した。
【0090】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝55に投入した後、坩堝55が収容されたチャンバ51の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバ51の上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0091】
次に、加熱用ヒータ52によって坩堝55を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバ51の内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0092】
その後、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝55の温度を1420℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0093】
次に、上記のようにして得られた窒素含有シリコン融液12を、坩堝55の下部に設けられた開口部からチャンバ51の下部に約10m落下させた。このとき、窒素含有シリコン融液12は坩堝55から液滴状に落下し、その落下中に液滴状の窒素含有シリコン融液12がチャンバ51の内部で冷却されて凝固することによって球状シリコン53が成長した。そして、落下中に成長した球状シリコン53を、チャンバ51の内部の下部に設けられた収集用の容器54に収容して回収した。このとき、球状シリコン53の成長速度は25μm/秒であった。
【0094】
また、球状シリコン53の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまで球状シリコン53の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝55に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件で球状シリコン53を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度の球状シリコン53を成長させた。
【0095】
<実施例3のシリコンリボン>
図2に示すシリコンリボンの成長装置を用いて、(i)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(ii)シリコンリボンを成長させる工程を行なうことによって、シリコンリボンを作製した。
【0096】
まず、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料100kgを高純度の黒鉛からなる坩堝(図示せず)に投入した後、坩堝が収容されたチャンバ(図示せず)の内部の雰囲気をアルゴンガスで置換し、引き続き、アルゴンガスを常時チャンバ(図示せず)の上部からチャンバの内部に流し続けた。
【0097】
次に、加熱用ヒータ(図示せず)によって坩堝を加熱することによりシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0098】
その後、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝55の温度を1415℃に保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0099】
次に、窒素含有シリコン融液12に2枚の黒鉛板からなる板状体13を互いに距離をあけて浸漬させた。
【0100】
次に、2枚の板状体13の間から窒素含有シリコン融液12を矢印15の方向に、引き上げ速度約85μ/秒で引き上げることによって、シリコンリボン11を作製した。このとき、シリコンリボン11の成長速度は85μm/秒であった。
【0101】
また、シリコンリボン11の窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでシリコンリボン11の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でシリコンリボン11を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のシリコンリボン11を成長させた。
【0102】
<比較例1のキャストシリコン>
図7に示すキャストシリコンの成長装置を用いて、(A)窒素含有シリコン融液を作製する工程および(B)キャストシリコンを成長させる工程を行なうことによって、キャストシリコンを作製した。
【0103】
窒化シリコンからなる離型材が内周面に塗布されたシリカ坩堝73(四角形状の開口部を有し、その内径は830mm)にシリコン原料を400kg充填し、加熱用ヒータ71でシリカ坩堝73を加熱してシリコン原料を溶融し、その後1550℃まで昇温させることによって、シリコン原料が完全に溶解したことを確認した後、チャンバの内部にアルゴンガスとともに少量の窒素ガスを5時間導入した。ここで、窒素ガスとアルゴンガスとの流量比(窒素ガス流量:アルゴンガス流量)はおよそ1:2であり、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量は90L/minであった。
【0104】
そして、チャンバ51の内部への窒素ガスの導入を停止し、アルゴンガスのみを導入して坩堝73の温度を1420℃に1時間保持して窒素含有シリコン融液12の安定化を図った。
【0105】
次に、加熱用ヒータ71の設定温度を0.5℃/時間の割合で下げるとともに、シリカ坩堝73の高さを8mm/時間の速度で下げることによって、キャストシリコン72を成長させた。キャストシリコン72の成長速度は3μm/秒であった。
【0106】
また、キャストシリコンの窒素濃度依存性を確認するため、窒素含有シリコン融液12が50kgになるまでキャストシリコン72の作製を続け、その後、比抵抗が3Ω・cmになるようにボロン濃度が調整されたシリコン原料50kgを坩堝に投入した。そして、チャンバの内部に窒素ガスを導入せずにシリコン原料を溶融して窒素濃度を低減した窒素含有シリコン融液12を作製した。そして、上記と同一の方法および同一の条件でキャストシリコン72を成長させた。この工程を繰り返して、徐々に窒素含有シリコン融液12の窒素濃度を低減して様々な窒素濃度の窒素含有シリコン融液12を作製して、様々な窒素濃度のキャストシリコン72を成長させた。
【0107】
<窒素濃度の評価>
実施例1で作製したシリコンリボン、実施例2で作製した球状シリコン、実施例3で作製したシリコンリボン、および比較例1で作製したキャストシリコンのそれぞれについてSIMS(二次イオン質量分析法)を用いて窒素濃度の測定を行なった。窒素濃度の測定に用いた装置および条件は以下のとおりである。
装置:二次イオン質量分析計(CAMECA社製、IMS−6F)
一次イオン:Cs+、加速電圧:10kV、
二次検出イオン:29Si14N-、
二次引出電圧:4.5kV、
一次電流:100nA、
一次ビームスキャン領域:80μm□、
データ取込領域:33μmφ、
測定時間:1秒/ポイント。
【0108】
通常、二次検出イオンとして、28Si14N-を測定した方が検出限界が低いが、炭素濃度が高い場合には、30Si12C-が検出限界を上げたため、29Si14N-を採用した。また、バックグラウンドの確認は測定中に、一次ビームのスキャン領域を小さくしたときのデータ挙動から確認した。
【0109】
<実施例1の太陽電池セル>
上記の実施例1で作製した様々な窒素濃度のシリコンリボンをそれぞれ用いて互いにシリコンリボンの窒素濃度が異なる太陽電池セルを以下のようにして作製した。
【0110】
まず、実施例1で作製した厚み280μmのp型のシリコンリボンをレーザを用いて切断し、155mm×155mmの正方形状の表面を有する図3(a)に示すp型のシリコンリボン11を作製した。
【0111】
次に、このシリコンリボン11を水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させてシリコンリボン11の異方性エッチングを行なうことによって、シリコンリボン11の表面にテクスチャ構造(図示せず)を形成した。
【0112】
次に、図3(b)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にPSG液31をスピンコートにより塗布した。
【0113】
次に、PSG液31の塗布後のシリコンリボン11を拡散炉に設置して加熱することによってPSG液31からシリコンリボン11にリンを拡散させ、図3(c)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの受光面側となる表面にn+層32を形成した。その後、シリコンリボン11をフッ酸中に浸漬させることにより、図3(d)に示すように、リンの拡散の際に形成されたPSG膜31aを除去した。
【0114】
次に、図3(e)に示すように、シリコンリボン11のn+層32上に窒化シリコン膜からなる反射防止膜33をプラズマCVD法により形成した。
【0115】
次に、図3(f)に示すように、シリコンリボン11の太陽電池セルの裏面側となる表面(裏面)にアルミニウムペースト34をスクリーン印刷により塗布した。そして、アルミニウムペースト34の塗布後のシリコンリボン11を焼成することにより、アルミニウムペースト34からアルミニウムをシリコンリボン11の裏面に拡散させ、図3(g)に示すように、シリコンリボン11の裏面にアルミニウム電極34aとp+層35とを同時に形成した。
【0116】
次に、図3(h)に示すように、反射防止膜33の表面上に銀ペースト36aをスクリーン印刷により所定の形状に塗布し、その後焼成することによって、図3(i)に示すように、n+層32と電気的に接続する銀電極36を形成した。その後、銀電極36にはんだディップすることにより、実施例1の太陽電池セルを作製した。なお、n+層32がシリコンリボン11の周縁部分で裏面のアルミニウム電極34aと接触すると、太陽電池セルのフィルファクタ(FF)が下がり、変換効率が低くなるため、n+層32とアルミニウム電極34aとの接合分離を行なった。
【0117】
上記の太陽電池セルの作製工程を窒素濃度が異なる実施例1のシリコンリボンのそれぞれについて行ない、シリコンリボンの窒素濃度が異なる実施例1の太陽電池セルを複数作製した。
【0118】
そして、上記のようにして作製した実施例1の太陽電池セルのそれぞれについて、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図8に示す。図8の横軸が実施例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例1の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0119】
図8に示すように、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0120】
なお、図8の横軸の窒素濃度は上記のSIMSを用いた測定結果であり、必ずしもすべてがシリコンリボン中に固溶したものばかりではなく、Si3N4などの窒化物の形で存在するものも含まれる。しかしながら、シリコンリボンの成長速度が大きい場合には、偏析効果があまり発現せず、より効率的に結晶中に固溶し、固溶限界を超えた濃度まで取り込まれているものと考えられる。なお、シリコンリボンの成長時の坩堝22の温度やシリコンリボン成長用基板14の表面を窒素含有シリコン融液12に浸漬させる条件を変更して、シリコンリボンの成長速度を20μm/秒から300μm/秒までのシリコンリボンを作製して同様の評価を行なったが、図8と同様の結果が得られた。
【0121】
<実施例2の太陽電池セル>
上記の実施例2で作製した様々な窒素濃度の球状シリコンをそれぞれ用いて互いに球状シリコンの窒素濃度が異なる図6に示す構造を有する太陽電池セルを以下のようにして作製した。
【0122】
まず、実施例2で作製したp型の球状シリコン53を複数用意し、これらのp型の球状シリコン53のそれぞれの外表面にリンを拡散させてn+層61を形成した。
【0123】
次に、n+層61の形成後の球状シリコン53のそれぞれを穴のあいたアルミニウム箔からなる導電性シート64の穴に設置し、導電性シート64の穴から裏面側に露出したn+層61をエッチングにより除去した。
【0124】
次に、導電性シート64の裏面にポリイミドからなる絶縁層65を形成した後に、絶縁層65の一部を除去してp型の球状シリコン53の表面を露出させ、その露出した球状シリコン53の表面にアルミニウム箔からなる導電性シート66を設置した。
【0125】
次に、導電性シート64の表面側のn+層61の表面上に酸化チタンからなる反射防止膜62を形成し、その後、反射防止膜62および導電性シート64を透明のプラスチックフィルムからなる透明保護膜63で覆うことによって、実施例2の太陽電池セルを作製した。
【0126】
上記の太陽電池セルの作製工程を窒素濃度が異なる実施例2の球状シリコンのそれぞれについて行ない、球状シリコンの窒素濃度が異なる実施例2の太陽電池セルを複数作製した。
【0127】
そして、上記のようにして作製した実施例2の太陽電池セルのそれぞれについて、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図9に示す。図9の横軸が実施例2の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例2の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの導電性シート64側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0128】
図9に示すように、球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、球状シリコンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0129】
<実施例3の太陽電池セル>
上記の実施例3で作製した様々な窒素濃度のシリコンリボンをそれぞれ用いて互いにシリコンリボンの窒素濃度が異なる実施例3の太陽電池セルを実施例1と同様にして作製した。
【0130】
そして、実施例3の太陽電池セルのそれぞれについて、実施例1と同様にして、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図10に示す。図10の横軸が実施例3の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、実施例3の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0131】
図10に示すように、シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が小さくなる傾向にあり、シリコンリボンの窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下の範囲内にある場合には、ダーク時の逆方向漏れ電流が特に小さくなる傾向があることが確認された。
【0132】
<比較例1の太陽電池セル>
上記の比較例1で作製した様々な窒素濃度のキャストシリコンをそれぞれ実施例1のシリコンリボンと同じ大きさに切断してシリコン結晶基板を作製し、これらのシリコン結晶基板を用いて互いにシリコン結晶基板の窒素濃度が異なる比較例1の太陽電池セルを実施例1と同様にして作製した。
【0133】
そして、比較例1の太陽電池セルのそれぞれについて、実施例1と同様にして、ダーク時の逆方向漏れ電流を測定した。その結果を図11に示す。図11の横軸が比較例1の太陽電池セルのシリコンリボンの窒素濃度(atoms/cm3)を示しており、縦軸がダーク時の逆方向漏れ電流(A)を示している。ダーク時の逆方向漏れ電流は、比較例1の太陽電池セルに光を照射しない状態で、太陽電池セルの銀電極36側に+10Vの正電圧を印加し、太陽電池セルに流れる電流を測定することによって求めた。
【0134】
図11に示すように、比較例1の太陽電池セルにおいては、シリコン結晶基板の窒素濃度が増加するにつれてダーク時の逆方向漏れ電流が増加していき、実施例1〜3のように
、ダーク時の逆方向漏れ電流が局所的に低下する窒素濃度範囲が存在しなかった。
【0135】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、シリコンリボン、球状シリコン、太陽電池セル、太陽電池モジュール、シリコンリボンの製造方法および球状シリコンの製造方法に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0137】
11 シリコンリボン、12 窒素含有シリコン融液、13 板状体、14 シリコンリボン成長用基板、15 矢印、21 加熱用ヒータ、22 坩堝、26 坩堝台、27 断熱材、28 坩堝昇降台、29 軸、31 PSG液、31a PSG膜、32 n+層、33 反射防止膜、34 アルミニウムペースト、34a アルミニウム電極、35 p+層、36 銀電極、36a 銀ペースト、41 透明基板、42 封止材、43 保護シート、44 導電性部材、51 チャンバ、52 加熱用ヒータ、53 球状シリコン、54 容器、55 坩堝、61 n+層、62 反射防止膜、63 透明保護膜、64,66 導電性シート、65 絶縁層、71 加熱用ヒータ、72 キャストシリコン、73 坩堝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融液から直接作製されるシリコンリボンであって、前記シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である、シリコンリボン。
【請求項2】
前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンリボン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリコンリボンを用いて作製された、太陽電池セル。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュール。
【請求項5】
融液から直接作製される球状シリコンであって、前記球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である、球状シリコン。
【請求項6】
前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする、請求項5に記載の球状シリコン。
【請求項7】
請求項5または6に記載の球状シリコンを用いて作製された、太陽電池セル。
【請求項8】
請求項7に記載の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュール。
【請求項9】
窒素含有シリコン融液を作製する工程と、
前記窒素含有シリコン融液から窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させる工程と、を含む、シリコンリボンの製造方法。
【請求項10】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させることを特徴とする、請求項9に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項11】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記シリコンリボンを成長用基板上に成長させることを特徴とする、請求項9または10に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項12】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記シリコンリボンの成長速度が20μm/秒以上であることを特徴とする、請求項11に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項13】
窒素含有シリコン融液を作製する工程と、
前記窒素含有シリコン融液を落下させることによって窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させる工程と、を含む、球状シリコンの製造方法。
【請求項14】
前記球状シリコンを成長させる工程においては、前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させることを特徴とする、請求項13に記載の球状シリコンの製造方法。
【請求項15】
前記球状シリコンを成長させる工程においては、前記球状シリコンの成長速度が20μm/秒以上であることを特徴とする、請求項13または14に記載の球状シリコンの製造方法。
【請求項1】
融液から直接作製されるシリコンリボンであって、前記シリコンリボンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である、シリコンリボン。
【請求項2】
前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンリボン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリコンリボンを用いて作製された、太陽電池セル。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュール。
【請求項5】
融液から直接作製される球状シリコンであって、前記球状シリコンの窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である、球状シリコン。
【請求項6】
前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であることを特徴とする、請求項5に記載の球状シリコン。
【請求項7】
請求項5または6に記載の球状シリコンを用いて作製された、太陽電池セル。
【請求項8】
請求項7に記載の太陽電池セルを含む、太陽電池モジュール。
【請求項9】
窒素含有シリコン融液を作製する工程と、
前記窒素含有シリコン融液から窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させる工程と、を含む、シリコンリボンの製造方法。
【請求項10】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下であるシリコンリボンを成長させることを特徴とする、請求項9に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項11】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記シリコンリボンを成長用基板上に成長させることを特徴とする、請求項9または10に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項12】
前記シリコンリボンを成長させる工程においては、前記シリコンリボンの成長速度が20μm/秒以上であることを特徴とする、請求項11に記載のシリコンリボンの製造方法。
【請求項13】
窒素含有シリコン融液を作製する工程と、
前記窒素含有シリコン融液を落下させることによって窒素濃度が5×1015atoms/cm3以上5×1017atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させる工程と、を含む、球状シリコンの製造方法。
【請求項14】
前記球状シリコンを成長させる工程においては、前記窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上5×1016atoms/cm3以下である球状シリコンを成長させることを特徴とする、請求項13に記載の球状シリコンの製造方法。
【請求項15】
前記球状シリコンを成長させる工程においては、前記球状シリコンの成長速度が20μm/秒以上であることを特徴とする、請求項13または14に記載の球状シリコンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−1379(P2012−1379A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136087(P2010−136087)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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