説明

実装部品、電子機器および実装方法

【課題】ハンダ付けによる実装強度が高い実装部品を提供することを課題とする。
【解決手段】回路基板8上に形成したパッド9に底面がハンダ付けされる実装部品1の脚部7の側面に、底面には開口しないように側方に開口し、好ましくは脚部7を貫通する補助穴10を、同一の脚部7に複数設け、溶融したハンダSを受け入れるようにし、さらに好ましくは、補助穴10より高い位置に、ハンダSのフラックスFを受け入れるトラップ穴11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装部品、電子機器および実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子やマイクロスイッチ等の様々な実装部品が、金属製の脚部をプリント回路基板のような導電パターンに形成したパッドにハンダ付けすることによって実装されている。近年、装置の小型化のために、実装部品の脚部や導電パターンのパッドが小さくなり、それらの配列ピッチも狭くなってきている。このため、脚部とハンダの接着面積が小さくなり、実装部品の導電パターンに対する実装強度が不十分になる問題が生じている。
【0003】
特に、マイクロスイッチやコネクタのような実装部品では、使用時に、ハンダ付けされた脚部に比較的大きな外力が加わるので、より高い実装強度が要求される。さらに、マイクロスイッチやコネクタのような実装部品では、ハンダ付けする脚部と接点機構を構成するばね等とを一体に形成することが多く、ハンダとの親和性が余り高くない材料で脚部を形成せざるを得ないこともあり、ハンダの剥離がより大きな問題となる。
【0004】
これに対して、使用するハンダの量を増やして濡れ面積を大きくすれば実装強度を高められるが、ハンダを多くし過ぎると、各パッドからハンダがはみ出して、隣接するパッド同士を短絡してしまうという問題が生じる。また、ハンダを溶融するとハンダに含まれるフラックスが流れ出して脚部を這い上がる。このため、マイクロスイッチやコネクタのような完全にモールド化されない実装部品では、ハンダの使用量を増やすと、フラックスが実装部品の内部に進入し、接点の接触不良等の不具合を引き起こす場合もある。
【0005】
実装強度を高める技術として、特許文献1には、例えばその図3に、ハンダ付けされるリード3の脚部の底面に開口し、毛細管現象によってハンダを吸い上げる縦穴6または溝5を設けることで、ハンダによる濡れ面積を大きくして接着強度を高めた発明が開示されている。しかしながら、マイクロスイッチやコネクタのように大きな外力が作用する実装部品では、特許文献1のような縦穴を設けたとしても、脚部とハンダとの接合強度が十分ではない。
【0006】
特に、特許文献1の実装構造では、縦穴の内周面が導電パターンに垂直であり、脚部の外周面と同じ方向に延伸しているため、脚部を導電パターンから垂直に引き剥がすような力が加わると、縦穴の内周面および脚部の外周面とハンダとの間に剪断力が作用して接着面に滑りを生じさせ、脚部がハンダから引き抜かれる結果となりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−334964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、本発明は、ハンダ付けによる実装強度が高い実装部品、電子機器および実装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点に鑑みて、本発明による実装部品は、パッドに底面がハンダ付けされる脚部の側面に、前記底面には開口しないように側方に開口し、且つ、溶融したハンダを受け入れる補助穴を設けたものとする。
【発明の効果】
【0010】
この構成によれば、補助穴の内面にもハンダが接着されるので、脚部のハンダによる濡れ面積が大きく、ハンダの接着強度が高くなる。また、脚部の側面と補助穴の内面とでは、その向きが異なるので、ハンダが剥離しやすい力の向きが異なり、外力の方向に拘わらず高い実装強度を発揮できる。さらに、ハンダが補助穴を係止して脚部の浮き上がりを防止するフックになるため、ハンダの剥離強度だけでなくハンダの変形耐力も実装強度に寄与する。
【0011】
また、本発明の実装部品において、前記補助穴は、前記脚部を貫通してもよい。
【0012】
この構成によれば、補助穴を通して脚部の両側のハンダを接続するので、脚部を係止するフックとしての機械的強度を高められる。
【0013】
また、本発明の実装部品において、前記補助穴は、同一の前記脚部に複数設けられてもよい。
【0014】
この構成によれば、ハンダの濡れ面積を一段と大きくできるので、実装強度がより高められる。
【0015】
また、本発明の実装部品は、前記補助穴より高い位置に、前記ハンダのフラックスを受け入れるトラップ穴を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、実装部品の内部へのフラックスの進入を防止できる。このため、補助穴の容積を大きくして、使用するハンダの量を増やすことができる。
【0017】
また、本発明による電子機器は、前記実装部品のいずれかを導電パターンにハンダ付けしたものとする。
【0018】
この構成によれば、上述のように、実装部品の実装強度が高いので、実装部品の接続不良による故障が少なく、電子機器の信頼性が高い。
【0019】
また、本発明による実装方法は、底面をパッドにハンダ付けする実装部品の脚部の側面に、前記底面に開口しないように側方に開口する補助穴を設け、前記パッドまたは前記脚部に塗布したハンダをリフローし、前記補助穴に溶融したハンダを受け入れる方法とする。
【0020】
この方法によれば、補助穴の内面にもハンダが接着されるので、脚部のハンダによる濡れ面積が大きく、脚部の側面と補助穴の内面とでは、ハンダが剥離しやすい力の向きが異なり、且つ、ハンダが補助穴を係止して脚部の浮き上がりを防止するフックになるため、実装部品の実装強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の電気コネクタの斜視図である。
【図2】図1の電気コネクタの実装状態の斜視図である。
【図3】図1の電気コネクタの接点部材の断面図である。
【図4】図1の電気コネクタの脚部近傍の拡大側面図である。
【図5】図1の電気コネクタの実装状態の脚部近傍の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の電気コネクタの脚部近傍の側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の電気コネクタの実装状態の脚部近傍の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態の電気コネクタの実装状態の脚部近傍の断面図である。
【図9】図1の電気コネクタを実装した本発明の実施形態に係る携帯電話の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る第1実施形態の電気コネクタ1を示す。電気コネクタ1は、ハウジング2に形成した3つのスロット3に、それぞれ、接点部材4を1つずつ挿入してなる。
【0023】
3つの接点部材4は、中央の1つが制御用の接点であり、その両側が、それぞれ、電源供給のためにバッテリの電極(相手方電極)に接触する接点として用いられる。尚、電力供給用の接点を、それぞれ、2つの接点部材4からなる接点対として構成すれば、相手方電極との導電接触の信頼性をより向上させられる。
【0024】
図2に示すように、接点部材4は、ハウジング2に固定される固定部5と、固定部5から湾曲して延伸する接点ばね部6と、固定部5からハウジング2の外側まで後方下側に突出する脚部7とを有する。図3に示すように、固定部5は、先端がハウジング2に圧入されるようになっている。接点ばね部6は、先端がハウジング2から前方に突出し、相手方電極と当接可能な接点を構成する。脚部7は、底面がプリント基板8にハンダ付けされることによって、電気コネクタ1をプリント基板8に固定するとともに、接点部材4をプリント基板8上の印刷回路に接続するための電極となる。
【0025】
電気コネクタ1は、図3に示すように、プリント基板8の回路パターン上に、ハンダSのリフローによって実装される。詳しくは、先ず、プリント基板8に形成した電極パッド9の上にクリームハンダSを塗布する。ついで、その上に脚部7を載置した状態で、クリームハンダSを加熱して溶融(リフロー)させることで、ハンダSで脚部7を電極パッド9に接合する。このとき、溶融したハンダSの表面張力は、それぞれの脚部7を対応する電極パッド9の中央に移動させるように作用する。
【0026】
図4に、脚部7の詳細を示す。脚部7は、その側面に、側方に開口する3つの補助穴10が形成されている。補助穴10は、脚部7の底面に開口しないように、水平に貫通し、脚部7の両側面に開口している。また、接点部材4は、補助穴10よりも高い位置に、固定部5まで水平に延伸する溝状のトラップ穴11が形成されている。トラップ穴11も、接点部材4の全幅を貫通して形成されている。
【0027】
図5に、プリント基板8に実装した状態の電気コネクタ1の断面を示す。リフローされたハンダSは、その濡れ性により、脚部7の両側の側面を這い上がり、補助穴10の中に進入する。この結果、図示するように、脚部7の両側のハンダSが補助穴10を通して接続される。
【0028】
補助穴10は、脚部7のハンダSによる濡れ面積を増大させるため、ハンダSの接合力を高める。また、脚部7の側面と補助穴10の内面とでは、その向きが異なっているため、脚部7に接合しているハンダSの全体を同時に引きはがす方向に作用するような外力を加えることはできない。例えば、脚部7をプリント基板8から引き剥がす方向に外力が作用するとき、補助穴10の下側の面には、接合されているハンダSが押圧されることになる。このように、ハンダSが接合する面の向きが多様になることで、あらゆる方向の外力に対して高い実装強度を発揮できる。
【0029】
さらに、ハンダSは、補助穴10を係止するフックの役目を果たす。仮に、接点部材4全体をハンダSとの親和性の低い材料で形成したとしても、ハンダSが補助穴10の内部に延伸していることで、電極パッド9に堅固に接合されているハンダSを機械的に変形させて破断しなければ、ハンダSを脚部7から剥離させられない。このように、ハンダSが補助穴10内に進入して固化することで、電気コネクタ1の実装強度を高めることができる。
【0030】
また、ハンダSを溶融すると、ハンダSのフラックスFが流れ出し、その濡れ性によって、脚部7をさらに這い上がり、固定部5および接点ばね部6の方向にも拡がる。このとき、トラップ穴11は、フラックスFを受け入れることにより、フラックスFが接点ばね部6を這い上がらないようにする。
【0031】
本実施形態では、水平に並んで3つの補助穴10が形成されている。これは、1つの大きな補助穴を形成するよりも、その表面積が大きくなり、濡れ面積が大きくなるからである。非常に小さい脚部7には、複雑な形状の補助穴10やトラップ穴11を形成するのが困難であるため、本実施形態のような丸穴または長穴を形成することが現実的である。しかしながら、補助穴10やトラップ穴11をより複雑な形状にすることができれば、ハンダSの濡れ面積を増大させて実装強度をより高めたり、毛細管現象によるフラックスFの取り込みを促進したりすることも可能である。
【0032】
トラップ穴11は、本実施形態のように細長く形成することで、毛細管現象によって、フラックスFを引き込み、電気コネクタ1の内部にフラックスFが進入しないようにする。フラックスFは、硬化して、電気コネクタ1の他の要素の動作を阻害したり、接点の接触不良を引き起こしたりする可能性があるが、トラップ穴11に取り込むことで、フラックスFによる不具合を防止できる。
【0033】
続いて、図6に、本発明の第2実施形態の実装部品である電気コネクタの接点部材4aの脚部7aを示す。尚、これ以降の実施形態については、第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本実施形態の脚部7には、平行に延伸する3本の水平なスリット状の補助穴10aが形成されている。本実施形態において、上側に形成された補助穴10aは、ハンダの量が多いときに、ハンダを受け入れて実装強度を高めることに寄与するだけでなく、ハンダの量が少ないときには、フラックスを取り込むトラップ穴として機能する。
【0035】
図7に、本発明の第3実施形態の実装部品である電気コネクタ1bの接点部材4bの脚部7bを示す。本実施形態の脚部7bには、その両側面に形成した貫通しない凹部からなる補助穴10bが形成されている。このような補助穴10bであっても、ハンダSの濡れ面積を増大させるとともに、ハンダSの接着方向を多様化し、且つ、フック状のハンダSによって係止されるので、電気コネクタ1bの実装強度が高い。
【0036】
さらに、図8に、本発明の第4実施形態の実装部品である電気コネクタ1cの接点部材4cの脚部7cを示す。本実施形態の脚部7cには、片側の側面から反対側の側面まで傾斜して貫通する補助穴10cが形成されている。本実施形態が示すように、本発明の補助穴は、必ずしも脚部の底面と平行でなくてもよい。
【0037】
但し、脚部の底面に開口するような穴は、内周面に対するハンダの接着方向が脚部の側面に対するハンダの接着方向が大きく異ならないので、脚部を導電パターンから引きはがすような外力によって剪断されて剥離しやすく、且つ、ハンダがフックとして十分に機能しないので、本発明の補助穴としては適当でない。
【0038】
また、本発明の補助穴は、その奥行き方向に形状が変化するものであってもよい。例えば、奥側ほど径が小さくなる円錐状の穴であっても、ハンダによる濡れ面積が大きく、且つ、ハンダがフックとして係止できるので、本発明の補助穴として採用し得る。
【0039】
さらに、図9に、第1実施形態の電気コネクタ1を備える、本発明に係る電子機器の1つの実施形態である携帯電話12を示す。携帯電話12は、内部に前記電気コネクタ1が配設されており、電気コネクタ1に隣接する内部空間に、バッテリ13を収容可能である。携帯電話12にバッテリ13を収容すると、電気コネクタ1の接点ばね部6にバッテリ13の電極14が圧接されるようになっている。
【0040】
電気コネクタ1は、上述のように、プリント基板8に対する実装強度が高く、接点圧力を高くしても、ハンダSの剥離による導電接続の不良が起こりにくい。このため、携帯電話12は、常に、その本体にバッテリ13から電力が供給され、待ち受けなどの処理を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1a,1b,1c…電気コネクタ(実装部品)
2…ハウジング
4,4a,4b,4c…接点部材
7,7a,7b,7c…脚部
8…プリント基板
9…電極パッド
10,10a,10b,10c…補助穴
11…トラップ穴
12…携帯電話(電子機器)
13…バッテリ
14…電極
S…ハンダ
F…フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドに底面がハンダ付けされる脚部の側面に、前記底面には開口しないように側方に開口し、且つ、溶融したハンダを受け入れる補助穴を設けたことを特徴とする実装部品。
【請求項2】
前記補助穴は、前記脚部を貫通していることを特徴とする請求項1に記載の実装部品。
【請求項3】
前記補助穴は、同一の前記脚部に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の実装部品。
【請求項4】
前記補助穴より高い位置に、前記ハンダのフラックスを受け入れるトラップ穴を有することを特徴とする請求項1に記載の実装部品。
【請求項5】
請求項1に記載の実装部品を導電パターンにハンダ付けしたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
底面をパッドにハンダ付けする実装部品の脚部の側面に、前記底面に開口しないように側方に開口する補助穴を設け、
前記パッドまたは前記脚部に塗布したハンダをリフローし、前記補助穴に溶融したハンダを受け入れることを特徴とする部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159710(P2011−159710A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18657(P2010−18657)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】