説明

容量性ポリイミド・ラミネート

本発明は、電気的および機械的性能が向上したポリイミドベースの材料、ならびにまたかかる材料の製造方法に関する。本発明の組成物は、i.少なくとも60重量パーセントの量でのポリイミドベースポリマーと、ii.少なくとも4重量パーセントの量で存在する不連続相の無機材料と、iii.少なくとも0.1重量パーセントの量での非イオン性ハロゲン化分散剤と、iv.充填剤、加工助剤、着色剤などの、30重量パーセント以下の他の任意の成分とを含む。本発明の組成物は一般に、優れた高周波数性能を示し、分散剤と無機材料とをポリアミド酸溶液中へ組み入れ、次にポリアミド酸溶液を従来手段または非従来手段によってポリイミドへ転化することに製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電子タイプ用途、特に、平面コンデンサ基材、コンデンサペーストなどの、高周波数電子回路用途に有用なポリイミドベースの組成物に関する。より具体的には、本発明は、電子タイプ用途に有用な特性を有する無機添加剤と少なくとも1つの非イオン性ハロゲン化分散剤とを含有するポリイミドベースの材料に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、全体を参照により本明細書に援用される2006年3月31日出願の米国特許出願第11/395,096号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
パリシュ(Parish)らに付与された米国特許公報(特許文献1)は、導電性ポリイミド物品を開示している。この物品は、炭素ベースの粒子を極性溶媒中で混合してスラリーを形成し、次にスラリーをポリアミド酸と混合してポリイミド前駆体材料を形成することによって製造される。前駆体材料は次に、所定の構造に成形されされ、ポリイミドベースの物品へ変換される。
【0004】
アルバートセン(Albertsen)らに付与された米国特許公報(特許文献2)は、分散剤と組み合わせて有機ポリマー中へ組み入れられた誘電性無機材料を開示している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,078,936号明細書
【特許文献2】米国特許第6,721,164号明細書
【特許文献3】米国特許第5,166,308号明細書
【特許文献4】米国特許第5,298,331号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電気的および機械的性能が向上したポリイミドベースの材料、そしてまたかかる材料の製造方法に関する。本発明の組成物は、i.少なくとも60、70、80、85、90または95重量パーセントの量でのポリイミドベースポリマーと、ii.ベースポリマー間の不連続相の無機材料であって、容量性、抵抗性、導電性または他の電子タイプ特性を有し、少なくとも4、5、10、15、20、25、30、35、または40重量パーセントの量で存在する無機材料と、iii.少なくとも0.1、0.2、0.5、0.8、1、1.2、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、10、または15重量パーセントの量での非イオン性ハロゲン化分散剤と、iv.充填剤、加工助剤、着色剤などの、0、2、5、10、12、15、20、25または30重量パーセントの他の成分とを含む。本発明の組成物は一般に、優れた高周波数性能、そしてまた優れた機械的性能を有する。本発明の組成物は、分散剤と無機材料とをポリアミド酸溶液へ組み入れ、次にポリアミド酸溶液を従来手段または非従来手段によってポリイミドへ転化することによって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
チタン酸バリウムは、コンデンサタイプ用途向けに有用な無機材料である。二酸化チタン、シリカ、およびアルミナなどの他のセラミックスもまた有用であり得る。一実施形態では、無機材料は、達成できる最小の商業上実用的な粒度で使用される。小さい粒子を水性および非水性系に分散させる技術は非常に数多く、ここで繰り返して言及する必要はない。一実施形態では、平均粒度(無機材料の)は500、250、100、または50ナノメートル未満である。
【0008】
分散される粒子のサイズがさらに小さくなるにつれて、材料がもはや粒子ではなく、その代わりに「溶解固形物」と考えられる遷移が可能である。本発明の組成物内の無機材料は、ベースポリマー内に(または間に)粒子のみならず、溶解固形物をも含める手段として、(「粒子」とよりむしろ)「不連続ドメイン」または「不連続相」と呼ばれることがある。
【0009】
一実施形態では、非イオン性分散性と一緒に、セラミックがポリアミド酸中へ(不連続相として)分散させられる。ポリアミド酸は、イミド化プロセスによって最終的にポリイミドに転化されるポリイミド前駆体溶液を意味することが意図される。ポリイミドへのポリアミド酸の転化は、ポリイミド化学の技術では周知であり、ここで繰り返して言及する必要はない。
【0010】
非イオン性ハロゲン化分散剤は、無機材料をポリアミド酸中へ分散させるのを助けるために、そして場合により、望ましくない粒子凝集塊を破壊するのを助けるために使用される。さらに、機械的エネルギー(すなわち、機械的研削もしくは剪断)または沈澱タイプ処理もまた、無機材料の平均ドメインサイズを小さくするために用いることができる。
【0011】
分散剤を説明するために本明細書で用いられる用語「非イオン性」は、イオン性部分を実質的に含まない、すなわち、分散剤のモル当たり、1.0、0.5、0.2、0.1、0.05または0.01モル未満の部分が電荷を有する任意の分散剤を意味することを意図される。
【0012】
本発明に従って使用されるとき、非イオン性ハロゲン化分散剤は、イオン性分散剤と比較して、高周波数用途で向上した電気的特性を与えることが分かった。イオン性分散剤は、微粒子充填剤をポリアミド酸中へ分散させるときに優れた分散特性を与える傾向があるが、これらの分散剤のイオン性質は電気的性能、特にコンデンサ性能を、最も特に、1メガヘルツより高い周波数などの、高周波数が用いられる用途で阻害し得るかまたは妨げ得ることが発見された。
【0013】
一実施形態では、本分散法は少なくとも2つの工程を含む。第1工程で、分散剤は溶媒中へ十分に混合されて分散液を生成し、その後、無機充填剤粒子が加えられる。粒子は次に分散させられ、そして理想的には、高剪断混合などの、機械的エネルギーを用いてそれらの非凝集化粒度に下げられる。かかる実施形態では、有用な分散剤は、フッ素含有界面活性分散剤である。
【0014】
それらから形成される液体スラリーは次に、ポリイミド前駆体材料(例えば、ポリアミド酸)と混合してポリアミド酸キャスティング液を形成することができる。キャスティング液は次に、単独でキャストして金属箔上へ直接キャストされたフィルムを形成してポリイミド複合金属ラミネートを形成するか、または別の方法で任意の可能な形状に成形することができる。熱エネルギーの使用などの、従来のイミド化処理を用いて酸をイミドへ硬化させてポリイミド複合材料を形成することができる。
【0015】
本発明のポリイミド複合材料の合成のための有用な有機溶媒は好ましくは、ポリイミド前駆体材料(例えば、様々なポリアミド酸)を溶解させることができる、溶媒、または溶媒混合物である。かかる溶媒は典型的には、ポリイミドを適度の(より好都合な、かつ、あまりコストのかからない)温度で乾燥させることができるように比較的低い沸点(例えば、225℃未満)を有する。典型的には、210℃、205℃、200℃、195℃、190℃、または180℃未満の沸点を有する溶媒が有用であり得る。本発明の溶媒は、単独でまたは他の溶媒(すなわち、共溶媒)と組み合わせて使用されてもよい。有用な有機溶媒には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチル−ピロリジン−3−オン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジメチル−ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ガンマ−ブチロラクトン、およびピリジンが含まれる。一実施形態では、好ましい溶媒には、N−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルアセトアミド(DMAc)が含まれる。
【0016】
共溶媒もまた、全溶媒の約5〜50重量パーセントで一般に使用することができる。有用な共溶媒には、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、1,2−ビス−(2−メトキシエトキシ)エタン(トリグライム)、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル)]エーテル(テトラグライム)、ビス−(2−メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、「セロソルブ(CELLOSOLVE)TM」(エチレングリコールエチルエーテル)、ブチル「セロソルブTM」(エチレングリコールブチルエーテル)、「セロソルブTMアセテート」(エチレングリコールエチルエーテルアセテート)、および「ブチルセロソルブTMアセテート」(エチレングリコールブチルエーテルアセテート)が含まれる。
【0017】
本発明の実施では、非イオン性フッ素含有分散剤を有機溶媒、または共溶媒混合物(もしくは溶媒系)に加え、そして溶解させて分散液を形成することができる。分散液は典型的には、次の数、0.1、0.5、1.0、2.0、4.0、5.0、10.0、15.0および20.0パーセントの任意の2つ間の濃度の非イオン性フッ素含有分散剤を含む。分散液は次に、無機充填剤成分、典型的には無機充填剤粒子を(必要に応じて剪断力を用いて)分散させるために使用される。無機充填剤成分は分散液に直接加えることができるが、低イオン性(または非イオン性)フッ素含有分散剤を加える前に無機充填剤成分を有機溶媒(共溶媒または溶媒系)に加えることが可能である。一般的に言えば、これらの成分の添加の順序は、本発明の実施に決定的に重要であるわけでない。本発明の実施に使用される有用な非イオン性フッ素含有分散剤は、以下により十分に説明される。
【0018】
本明細書で用いるところでは、用語「非イオン性」フッ素含有分散剤は、次の構造式:
f−CH2−CH2−O−(CH2CH2O)x−H
(式中、Rf=CF3CF2(CF2−CF2yであり、式中、yは1〜10の整数であり、そして式中、xは1〜20の整数である)
で表される分子を含む界面活性剤を意味することを意図される。本発明の実施に使用される有用な非イオン性(または低イオン性)過フッ素化ポリマーには、本願特許出願人によって製造される非イオン性ゾニール(ZONYL)(登録商標)製品が含まれるが、それらに限定されない。これらの非イオン性フルオロ界面活性剤には、多数のエトキシル化材料が含まれ、その幾つかは商品名ゾニール(登録商標)FSN−100、ゾニール(登録商標)FSO、ゾニール(登録商標)FSO−100、ゾニール(登録商標)FSH、ゾニール(登録商標)FS−300およびゾニール(登録商標)FS−610で商業的に販売されている。
【0019】
一般的に言えば、フルオロ界面活性剤は、i)非イオン性、ii)陰イオン性、iii)イオン性、およびiv)両性をはじめとする4つの主要なカテゴリーに分類することができる。原則として、本発明の非イオン性フルオロ界面活性剤は、ポリマー鎖の末端に水素側基を有することができる。陰イオン性フルオロ界面活性剤は一般に、負電荷を有する部分を有するが、イオン性フルオロ界面活性剤は一般に、正電荷を有する部分を(ポリマー鎖の末端に)有する。両性フルオロ界面活性剤は、正および負電荷を有する官能基の混合を有することができる。
【0020】
本発明の一実施形態では、分散剤は、少量のカルボキシレート(−COOH)および/またはメチルエステル(−COOCH3)官能基をポリマーの一端または両端に含有する過フッ素化ポリマーである。これらのポリマーは、次のモノマー:
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Xはカルボキシレート(−COOH)基またはメチルエステル(−COOCH3)基に等しいことができる)
の重合生成物から形成することができる。これらの過フッ素化ポリマーは、商品名ナフィオン(NAFION)(登録商標)で本願特許出願人によって販売される溶液として見いだすことができる。多くのナフィオン(登録商標)溶液はスルホネート基(−SOOOH3)を含有し、「イオン性」であると考えられるが、本発明者は、非イオン性または低イオン性と分類される、ある種のナフィオン(登録商標)溶液が本発明でうまく機能し得ることを見いだした。
【0023】
正電荷、負電荷、または両方のいずれかを有する分散剤は、多くの無機粒子充填剤用の分散剤としてうまく機能することができるが、これらの分散剤は、特に高周波数で、不十分な電気的性能を有する材料を形成する傾向がある。例えば、平面コンデンサとして使用されるとき、イオン性分散剤を含む組成物は、1メガヘルツより大きい操作周波数で望ましくないエネルギー損失(高い「散逸率」を有するという観点から測定された)を示す傾向がある。一般に、本発明の組成物についての散逸率は0.08、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.008、0.005、または0.001未満である。
【0024】
本発明の非イオン性ハロゲン含有界面活性剤は、(i)無機充填剤をポリイミド処理に一般的な溶媒にうまく分散させる、および(ii)高周波数用途でポリマー複合材料の電気的性能に悪影響を(たとえあったにしても)ほとんど与えない、の両方であることが分かった。
【0025】
本発明の平面コンデンサは0.08、0.075、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01未満または0.001未満の散逸率を与える傾向がある。
【0026】
本発明の非イオン性分散剤は、固体または液体のいずれかとして有機溶媒(または溶媒系、共溶媒、もしくは共溶媒系)に加えて分散液を形成することができる。一実施形態では、分散剤は、ポリマー(および/または化学薬品)を有機溶媒に溶解させる任意の公知の方法を用いて完全に溶解させられる。有用な分散方法には、機械攪拌、加熱などが含まれるが、それらに限定されない。本発明の一実施形態では、有機溶媒は約100〜120℃に加熱され、次に約1〜4時間攪拌または剪断混合下に置かれる。
【0027】
本発明の別の実施形態では、非イオン性フッ素含有分散剤は、次の数、0.01、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、10.0および20.0重量パーセントの任意の2つ間の範囲内で有機溶媒に加えられる。分散ポリマーは、無機充填剤が加えられる前にまたは加えられた後に有機溶媒に加えることができる。典型的には、分散ポリマーは、望ましくない凝集塊を形成することなく粒子を容易に分散させ得る混合物に粒子が加えられることを確実にするために無機充填剤粒子の添加前に溶媒に加えられる。典型的には、(既に溶解された分散ポリマーを典型的には含有する)溶媒混合物に加えられる無機充填剤粒子の量は、ポリイミド複合材料の最終用途に依存して変動することができる。
【0028】
本発明に従って、約10〜150重量部の無機充填剤粒子を100重量部の溶媒に加えてスラリーを生成することができる。有機溶媒と、非イオン性分散剤と、無機充填剤とのスラリーは、より一般には無機充填剤成分と呼ぶことができる。無機充填剤成分は、粒子を、次のサイズの任意の2つ間の(およびそれらを含む)範囲の平均粒度を有するレベルまで分散させることができる:50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500および5,000ナノメートル、ここで、分散される充填剤の少なくとも80、85、90、92、94、95、96、98、99または100パーセントは上記サイズ範囲内にある。一般的に言えば、「充填剤サイズ」は、レーザー粒子分析計(例えば、堀場(HORIBA)(登録商標)レーザー粒子分析計)によって測定することができる。
【0029】
一般に、本発明の実施は、製造業者が「低い散逸損失」などの良好な電気的性能を維持しながら、どれほど多くの無機充填剤成分をポリマーバインダー(例えば、ポリイミドバインダーマトリックス)中へ分散させることができるかの限度を両方とも広げることを可能にする。場合によっては、許容される充填剤の量が劇的に増加するとき、形成されるポリイミド複合材料はコンデンサとしてのより大きい性能特性を有することができる(すなわち、より高いDkを有するコンデンサになる)。ポリイミドフィルム複合材料が(可撓性のまたは剛性の回路基板での埋込型コンデンサとして典型的に使用される)複合フィルムとして使用するためにチタン酸バリウム充填剤を含む一実施形態では、チタン酸バリウムの最大許容量は、散逸率を実質的に一定のレベルに維持しながら、約60重量パーセントから約80重量パーセントにしばしば上げることができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、ポリイミドフィルム複合材料は、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250および300ミクロンからの範囲の厚さを有して形成され、または金属箔上へキャストされるとき約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250および300ミクロンからの範囲の厚さを有することができる。本発明の充填剤成分は、ある種の所望の物理的特性を有するポリイミドフィルムを提供するために選択される。この特性には、導電率、キャパシタンス、熱伝導率、色などが含まれる。本発明の実施に使用することができる可能な無機充填剤粒子の包括的なリストは存在するが、幾つかの有用な充填剤には、シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素被覆酸化アルミニウム、顆粒アルミナ、顆粒シリカ、溶融シリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム被覆窒化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、炭化ケイ素、ダイヤモンド、リン酸二カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、導電性ポリマー、銀、パラジウム、金、白金、ニッケル、銅またはこれらの材料の混合物もしくは合金、Ta25、HfO2、Nb25、Al23のような常誘電性充填剤粉末、ステアタイトおよびこれらの混合物、一般式ABO3のペロブスカイト、結晶性チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ストロンチウムバリウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ランタン鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸マグネシウム鉛(PMN)、およびチタン酸銅カルシウム、ならびにそれらの混合物が含まれる(がそれらに限定されない)。
【0031】
(ポリイミドバインダー)
本発明の有用な高絶縁耐力ポリイミドバインダーは、二無水物成分(または対応する二酸ジエステル、二酸ハロゲン化物エステル、もしくは二無水物のテトラカルボン酸誘導体)とジアミン成分とから誘導される。二無水物成分は典型的には任意の芳香族、脂肪族、または脂環式二無水物である。ジアミン成分は典型的には任意の芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、または脂環式ジアミンである。
【0032】
本発明の有用な二無水物には、芳香族二無水物が含まれる。これらの芳香族二無水物には、
1.ピロメリット酸二無水物(PMDA)、
2.3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、
3.3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、
4.4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、
5.3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、
6.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、
7.4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、
8.2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、
9.1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、
10.1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、
11.2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、
12.2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、
13.2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
14.2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
15.2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
16.2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
17.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、
18.1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、
19.1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、
20.ビス−(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、
21.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、
22.4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、
23.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、
24.テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、
25.ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、
26.チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、
27.フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、
28.ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、
29.ビス−1,3−イソベンゾフランジオン、
30.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、
31.ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、
32.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物、
33.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物、
34.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物、
35.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)2,5−オキサジアゾール1,3,4−二無水物、
36.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物、
37.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物、
38.5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、
39.トリメリット酸無水物2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、
40.1,2,3,4−シクロブタン二無水物、
41.2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
42.それらの酸エステルおよび酸ハロゲン化物エステル誘導体、
43.その他
が含まれる(がそれらに限定されない)。
【0033】
本発明の有用な芳香族ジアミンには、
1.2,2ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、
2.4,4’−ジアミノジフェニルメタン、
3.4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(4,4’−DDS)、
4.3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)、
5.4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
6.4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、
7.3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、
8.1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA)、
9.1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、
10.1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
11.1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
12.1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
13.1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
14.1,5−ジアミノナフタレン、
15.1,8−ジアミノナフタレン、
16.2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、
17.4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、
18.4,4’−ジアミノジフェニルシラン、
19.4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、
20.4,4’−ジアミノジフェニル−N−メチルアミン、
21.4,4’−ジアミノジフェニル−N−フェニルアミン、
22.1,2−ジアミノベンゼン(OPD)、
23.1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、
24.1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、
25.2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、
26.2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、
27.5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン、
28.2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン(BDAF)、
29.2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
30.ベンジジン、
31.4,4’−ジアミノベンゾフェノン、
32.3,4’−ジアミノベンゾフェノン、
33.3,3’−ジアミノベンゾフェノン、
34.m−キシリレンジアミン、
35.ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、
36.4,4’−イソプロピリデンジアニリン、
37.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)メチルアミン、
38.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)アニリン、
39.3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
40.4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、
41.2,4−ジアミノトルエン、
42.2,5−ジアミノトルエン、
43.2,6−ジアミノトルエン、
44.2,4−ジアミン−5−クロロトルエン、
45.2,4−ジアミン−6−クロロトルエン、
46.4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、
47.4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、
48.2,4−ビス−(ベータ−アミノ−t−ブチル)トルエン、
49.ビス−(p−ベータ−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、
50.p−ビス−2−(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、
51.1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
52.1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
53.2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、
54.ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、
55.2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m−BAPS)、
56.4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、
57.ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル(BAPE)、
58.2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6Fジアミン)、
59.ビス(3−アミノフェニル)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド、
60.2,2’−ビス−(4−フェノキシアニリン)イソプロピリデン、
61.2,4,6−トリメチル−1,3−ジアミノベンゼン、
62.4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド、
63.3,3’−ジアミノ−5,5’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド、
64.4,4’−トリフルオロメチル−2,2’−ジアミノビフェニル、
65.4,4’−オキシ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、
66.4,4’−オキシ−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、
67.4,4’−チオ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼン−アミン]、
68.4,4’−チオビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、
69.4,4’−スルホキシル−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、
70.4,4’−スルホキシル−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、
71.4,4’−ケト−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、
72.9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
73.1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、
74.3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、
75.その他
が含まれるが、それらに限定されない。
【0034】
単独でまたは芳香族ジアミンのいずれかと併せて使用される、本発明の有用な脂肪族ジアミンには、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン(DMD)、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DDD)、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン、イソホロンジアミン、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0035】
本発明の二無水物およびジアミン成分は特に、ある種の望ましい特性のポリイミドバインダーを与えるために選択される。かかる一特性は、ポリイミドバインダーがある一定のガラス転移温度(Tg)を有することである。有用な一Tg範囲は、例えばバインダーの良好な接着力が必要とされる場合には、次の数、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃および100℃の任意の2つ間であるおよびそれらを含むことができる。別の有用な範囲は、自己接着力が他の特性ほど重要でない場合には、550℃、530℃、510℃、490℃、470℃、450℃、430℃、410℃、390℃、370℃、350℃、330℃、310℃、290℃、270℃、および250℃からである。上にリストされた二無水物およびジアミンの全てが低いTgポリイミドバインダーまたは高いTgバインダーのいずれかを形成するわけではないであろう。従って、どの二無水物成分、およびどのジアミン成分が必要とされるかの選択は、ポリマーバインダーの最終特性をカスタマイズするために重要な問題である。
【0036】
本発明の一実施形態では、p−フェニレンジアミンは、第2ジアミンとしての4,4’−ODAと組み合わせて使用される。この実施形態では、BPDAとPMDAとの組み合わせがポリイミドバインダーを形成するために二無水物成分として使用される。別の実施形態では、PMDAがポリイミドを形成するために4,4−ODAと共に使用される。この実施形態では、ポリイミドバインダー成分への前駆体(すなわち、ポリアミド酸)は、約50重量パーセントの酸化アルミニウム充填剤と均一に混合された。生じた混合ポリマーは、1ミル厚さの充填剤入りポリイミドフィルム複合材料に熱変換された。本フィルム複合材料は、約0.7ワット/(メートル*K)の熱伝導率、および350℃より高いTgを有した。
【0037】
本発明の別の実施形態では、有用な二無水物には、BPADA、DSDA、ODPA、BPDA、BTDA、6FDA、およびPMDAまたはそれらの混合物が含まれる。これらの二無水物は容易に商業的に入手可能であり、許容できる性能を一般に与える。1つの注目に値する二無水物は、それが比較的低い水分吸収係数をまた有しながら、優れた接着力および良好な曲げ寿命を有するポリイミドを生成することができるので、BPADAである。
【0038】
本発明の一実施形態では、ポリイミドは、先ずポリイミド前駆体(典型的にはポリアミド酸溶液)を形成することによって合成される。ポリアミド酸は、1つまたは複数の二無水物モノマーを1つまたは複数のジアミンモノマーと(溶媒系中で)反応させることによって生成される。一実施形態では、充填剤粒子が無機充填剤成分中に十分に分散させられる場合、ポリアミド酸は無機充填剤成分に加えることができる。より一般的には、無機充填剤成分はポリアミド酸に加えられる。このことは一般に、ポリマーのイミド化(すなわち、溶媒除去および硬化)が、無機充填剤成分がバインダーに十分に分散させられ得る点を越えてポリマーの粘度を上げるまでは少なくとも当てはまる。
【0039】
本発明のポリイミドバインダーでの無機充填剤の重量負荷は一般に、100重量部ポリイミドバインダー当たり次の数40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140および150重量部の任意の2つ間のおよびそれらを含む範囲であることができる。一実施形態では、無機充填剤成分は、望ましくない粒子凝集を破壊するために広範な微粉砕および濾過を必要とし得る。実際に本発明の一実施形態では、チタン酸バリウムは100重量部ポリイミド当たり120重量部で懸濁可能である。
【0040】
本発明の一実施形態では、無機充填剤成分はポリアミド酸と混合されて混合ポリマーブレンドを形成する。混合ポリマーブレンドは、平らなシート上へキャストされて湿潤フィルムを形成する。最終的に、ポリイミド前駆体(すなわち、ポリアミド酸)は、(充填剤を考慮に入れないで)約99.5重量パーセントより多い固形分含有率を有する高温ポリイミド材料へ転化される。本方法での幾つかの時点で、バインダーの粘度は、充填剤材料がポリイミド前駆体と混合され得る点を越えて上げられる。本明細書での特定の実施形態に依存して、バインダーの粘度は、場合により、おそらくバインダーへのより多くの充填剤材料の分散を可能にするのに十分に多く材料を溶媒和することによって再び下げることができる。
【0041】
本発明の別の実施形態では、混合ポリマーブレンドは金属箔上へキャストされる。金属ラミネート上のキャスト物は、ポリアミド酸がポリイミドへ転化されるように加熱される。ここで、ポリイミド複合材料は金属箔の一面上にあり、ポリイミド複合材料金属ラミネートが形成される。さらに別の実施形態では、これらの一面ラミネートは、ポリマー複合材料が2つの金属箔の間にあるように一緒に接合することができる。ポリイミドバインダーがそれ自体に接合するのに十分な接合強度を有する、このタイプの積層は、接着剤を使用せずに行うことができ、(またはより高いTgポリイミドが使用される場合)接着層を使用することができる。本発明の単一ポリイミド金属−クラッドは、銅、アルミニウム、ニッケル、鋼またはこれらの金属の1つまたは複数を含有する合金などの金属箔に接着することができる可撓性のポリイミド複合層を含む。場合によっては、ポリイミド複合層は、金属にしっかり接着することができ、追加の接着剤を使用せずに、直線インチ当たり2ポンド以上より大きい剥離強度を有する。金属は、ポリイミド層の一面または両面に接着されてもよい。他の場合には、接着剤は、ポリイミドフィルム複合材料を金属層に積層するために使用することができる。一般的な接着剤はポリイミド接着剤、アクリルベースの接着剤、およびエポキシである。
【0042】
本明細書で用いるところでは、金属箔という用語は、純粋な形の元素として使用される必要がなく、それらはまた、ニッケル、クロム、鉄、および他の金属を含有する銅合金などの、金属箔合金として使用されてもよい。他の有用な金属には、銅、鋼、アルミニウム、真ちゅう、銅モリブデン合金、コバール(KOVAR)(登録商標)、インバール(INVAR)(登録商標)、バイメタル、トリメタル、銅の2層とインバール(登録商標)の1層とから誘導されるトリメタル、および銅の2層とモリブデンの1層とから誘導されるトリメタルが含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
ポリアミド酸溶液は、加熱または従来のポリイミド転化化学などの当該技術分野で一般的に知られている方法および技法を用いて高温ポリイミドへ転化することができる。かかるポリイミド製造方法は数十年間実施されてきた。ポリイミド製造に関する公開文献の量は非常に数多いため、本明細書でのさらなる説明は不要である。いかなる従来または非従来ポリイミド製造方法も、充填剤材料を混合させるのに十分に低い粘度を有する前駆体材料が入手可能であるという条件で、本発明に従った使用に適切であることができる。同様に、ポリイミドがその十分にイミド化された状態で可溶である場合、充填剤は、最終複合材料に成形する前にこの段階で分散させることができる。
【0044】
本発明に従ってポリイミドフィルムを製造するための他の有用な方法は、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)に見いだすことができ、それらの中の全ての教示が参照により本明細書に援用される。
(a)ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーが一緒に予め混合され、次に混合物が溶媒に撹拌しながら少しずつ加えられる方法、
(b)(上の(a)に反して)溶媒がジアミンと二無水物モノマーとの撹拌混合物に加えられる方法、
(c)ジアミンが専ら溶媒に溶解され、次に二無水物がそれに反応速度の制御を可能にするような速度で加えられる方法、
(d)二無水物モノマーが専ら溶媒に溶解され、次にアミン成分がそれに反応速度の制御を可能にするような速度でそれに加えられる方法、
(e)ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーが別々に溶媒に溶解され、次にこれらの溶液が反応器で混合される方法、
(f)過剰のアミン成分入りポリアミド酸および過剰の無水物成分入りポリアミド酸が予め形成され、次に反応器で、特に非ランダムまたはブロックコポリマーを生成するように互いに反応させられる方法、
(g)アミン成分および二無水物成分の特定部分が先ず反応させられ、次に残りの二無水物モノマーが反応させられるか、または逆もまた同様である方法、
(h)充填剤粒子が溶媒に分散され、次にポリアミド酸の流れへ注入されて充填剤入りポリアミド酸キャスティング液を形成し、次にキャストされて未加工フィルムを形成する方法。これは、高分子量ポリアミド酸で、またはその後高分子量ポリアミド酸に鎖延長される低分子量ポリアミド酸で行うことができる。
(i)成分が任意の順番に少しずつまたは全部を、溶媒の一部または全体のいずれかに加えられ、またここで、任意の成分の一部または全てを溶媒の一部または全て中の溶液として加えることができる方法、
(j)二無水物モノマーの1つをジアミンモノマーの1つと先ず反応させて第1ポリアミド酸を与え、次に他の二無水物モノマーを他のアミン成分と反応させて第2ポリアミド酸を与え、次にこのアミド酸をフィルム形成前に多数の方法の任意の1つで組み合わせる方法
などの、多数の変形もまた可能である。
【0045】
本発明の一実施形態では、複数の加熱セクションまたはゾーンを有する加熱システムが用いられる。最高加熱温度は、約200〜600℃、より好ましくは350〜500℃のオーブンの最高空気(または窒素)温度を与えるために調節することができる。未加工フィルムの最高硬化温度を上に明示されたような範囲内に調節することによって、優れた機械的強度および良好な熱寸法安定性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能である。
【0046】
あるいはまた、加熱温度は、加熱時間を変えながら200〜600℃に設定することができる。硬化時間に関しては、本発明のポリイミドフィルム複合材料(または金属箔ラミネート)は約1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50秒間〜約60、70、80、90、100、200、400、500、700、800、900、1000、1100または1200秒間(時間の長さは加熱温度に依存する)最高加熱温度に曝されることが好ましい。加熱温度は、速く乾燥させることによってフィルムにしわを作らせないように段階的に変えられてもよい。
【0047】
ポリイミド複合材料の厚さは、フィルムまたはラミネートの意図される目的に依存して調節されてもよい。選ばれた任意の特定の実施形態の構造基準に依存して、ポリイミド複合材料厚さは、次のフィルム厚さ:5、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、80、100、125、150、175、200、300、400および500ミクロンの任意の2つ間の(およびそれらを含む)範囲であることができる。一実施形態では、厚さは約12〜約125ミクロンであり、好ましくは15〜25ミクロンである。
【0048】
別の実施形態では、ポリイミドフィルム複合材料は、多層ポリイミド層フィルム構成での別々の層であることができる。例えば、ポリイミドフィルム複合層は、2層ポリイミドでの1層として、または3層ポリイミドでの中間(もしくは外)層として共押出することができる(参照により本明細書に援用される、米国特許公報(特許文献4)をまた参照されたい)。
【0049】
別の実施形態では、本発明のポリイミドは、平面変圧器部品を構成するために使用される材料として使用することができる。これらの平面変圧器部品は電力供給装置に一般的に用いられる。さらに別の実施形態では、本発明のポリイミド接着剤は、フレキシブルヒーターを形成するために(インコネル(Inconel)のような)厚い金属箔と共に使用されてもよい。これらのヒーターは典型的には自動車および航空宇宙用途に用いられる。
【0050】
一般に、本発明のポリイミドフィルム複合材料は、良好な絶縁耐力を必要とする電子デバイスで単層ベース基材(誘電体)として有用である。かかる電子デバイスの例には、平面コンデンサ、熱電モジュール、熱電冷却器、DC/ACおよびAC/DCインバーター、DC/DCおよびAC/ACコンバーター、電力増幅器、電圧調整器、点火器、発光ダイオード、ICパッケージなどが挙げられる(がそれらに限定されない)。
【0051】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが限定しない以下の実施例を参照することにより観察することができる。全ての部および百分率は、特に明記しない限り重量による。
【0052】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが限定しない以下の実施例を参照することにより観察することができる。全ての部および百分率は、特に明記しない限り重量による。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
チタン酸バリウム無機充填剤(すなわち、タイコン(TICON)(登録商標)CNとして商業的に公知である)と、ゾニール(登録商標)FSO−100分散剤とDMAc溶媒とを、250gのセラミック球(0.65mmYTZ媒体、すなわち、ZrO2ベースのセラミック球)を含有する500mlセラミックジャーに加えた。セラミックジャーをロールミル上へ約20rpmの回転速度で一晩置いた。次に、19重量パーセントのPMDA//4,4−ODAポリアミド酸をジャーに加え、10分間撹拌し続けた。25ミクロン厚さのフィルム(ポリマー重量基準で80重量パーセントのチタン酸バリウム充填剤と2.0重量パーセントの分散剤とを有する)をガラスプレート上にキャストし、約80〜100℃の温度に加熱した。フィルムを次にプレートから剥離し、150℃で10分間および350℃でもう10分間熱「イミド化」した。
【0054】
硬化ポリイミド複合材料は、
誘電率(Dk)
・1KHzで31
・1MHzで30
散逸率(Df
・1KHzで0.014
・1MHzで0.072
キャパシタンス
・1KHzで4200pf
・1MHzで4018pf
を有するとして評価された。
【0055】
(比較例1)
次の比較例を実施例1に従って製造した。対照的に(ゾニール(登録商標)FSO−100(登録商標)を分散剤として使用する代わりに)ナフィオン(登録商標)スルホネート、すなわち、イオン性分散剤を分散剤として使用した。上記の電気的特性のほとんどは同じままであったが、散逸率(Df)は0.1097と測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーバインダー層と金属層とを含む容量性ポリイミド複合金属ラミネートであって、前記ポリマーバインダー層が少なくとも60重量パーセントのポリイミドベースポリマー、少なくとも4重量パーセントの無機ドメイン、および少なくとも0.1パーセントの非イオン性ハロゲン化分散剤を含み、分散剤の量が1メガヘルツで0.08未満の散逸率をポリイミドベースの組成物に与えるのに十分であることを特徴とするラミネート。
【請求項2】
前記ポリマーバインダー層が配向され、かつ、前記分散剤がフッ素部分を含有することを特徴とする請求項1に記載のラミネート。
【請求項3】
前記分散剤が次の構造式:
【化1】

(式中、Xは非イオン性基である)
で表されるモノマーから誘導される過フッ素化ポリマーであることを特徴とする請求項2に記載のラミネート。
【請求項4】
前記分散剤が次の構造式:
f−CH2−CH2−O−(CH2CH2O)x−H
(式中、Rf=CF3CF2(CF2−CF2yであり、
式中、yは1〜10の整数であり、そして
式中、xは1〜20の整数である)
で表されることを特徴とする請求項1に記載のラミネート。
【請求項5】
前記無機ドメインが、シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素被覆酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、ダイヤモンド、リン酸二カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、導電性ポリマー、銀、パラジウム、金、白金、ニッケル、銅、常誘電性充填剤粉末、ステアタイト、一般式ABO3のペロブスカイト、結晶性チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ストロンチウムバリウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ランタン鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸マグネシウム鉛(PMN)、およびチタン酸銅カルシウム、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載のラミネート。
【請求項6】
前記ポリマーバインダー層が、2,2ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(4,4’−DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA)、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン(OPD)、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン(BDAF)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ベンジジン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス(3−アミノフェニル)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド(BDAF)、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m−BAPS)、4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル(BAPE)、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6Fジアミン)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるジアミン成分から誘導されることを特徴とする請求項5に記載のラミネート。
【請求項7】
前記ポリマーバインダー層が、また、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス−(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス−1,3−イソベンゾフランジオン、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物、2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物、2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)2,5−オキサジアゾール1,3,4−二無水物、ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,2,3,4−シクロブタン二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、それらの酸エステルおよび酸ハロゲン化物エステル誘導体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される二無水物成分から誘導されることを特徴とする請求項6に記載のラミネート。
【請求項8】
アクリル、エポキシまたは熱可塑性ポリイミドを含む接着層をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属層が、銅、ニッケル、クロム、鉄、鋼、アルミニウム、真ちゅう、モリブデンおよびそれらの組み合わせまたは合金からなる群から選択される金属箔であることを特徴とする請求項8に記載のラミネート。
【請求項10】
前記金属層が金属シード層の無電解スパッタリング、その後の電解金属メッキから誘導されることを特徴とする請求項9に記載のラミネート。
【請求項11】
プリント配線板用の埋込型平面コンデンサを提供することを特徴とする請求項10に記載のラミネート。

【公表番号】特表2009−532227(P2009−532227A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502809(P2009−502809)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/005460
【国際公開番号】WO2007/126533
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】