説明

封止用樹脂シートおよびそれを用いた半導体装置、並びにその半導体装置の製法

【課題】半導体素子・配線回路基板間の熱膨張率差による接続不良を改善するとともに、半導体素子・配線回路基板の端子間での無機質充填剤の噛みこみを、より確実に抑え、接続信頼性を向上させた、封止用樹脂シートおよびそれを用いた半導体装置、並びにその半導体装置の製法を提供する。
【解決手段】配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止するための封止用樹脂シート1であって、上記封止用樹脂シート1が、無機質充填剤含有層3と無機質充填剤不含層2との二層構造のエポキシ樹脂組成物シートであり、無機質充填剤含有層3の溶融粘度が1.0×102〜2.0×104Pa・s、無機質充填剤不含層2の溶融粘度が1.0×103〜2.0×105Pa・s、両層の粘度差が1.5×104Pa・s以上であり、無機質充填剤不含層2の厚みが、半導体素子に設けられた接続用電極部の高さの1/3〜4/5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続用電極部を有する半導体素子を、マザーボード等の配線回路基板上に実装する際に用いられる封止用樹脂シート、およびそれを用いた実装体である半導体装置、並びにその半導体装置の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ分野、特に携帯機器向け等の高密度実装が要求される半導体パッケージ分野では、一般的に、小型・薄型化が可能な実装方法であるフリップチップ実装が採用されている。フリップチップ実装は、半導体素子(チップ)の端子と、配線回路基板の端子とを向かい合わせて接続する実装方式であり、半導体素子・配線回路基板間の熱膨張率差による熱応力により接続不良が発生しやすい。そのため、フリップチップ実装では、通常、半導体素子と配線回路基板との間に、無機質充填剤を含有した熱硬化性樹脂を封入し、これにより補強することによって、半導体素子・配線回路基板間の端子接続部に集中する応力を分散させ、接続信頼性を向上させている。
【0003】
上記熱硬化性樹脂を半導体素子と配線回路基板との間に充填する方法として、現在主に用いられている方法は、半導体素子を配線回路基板にボンディングした後、液状のアンダーフィルを、半導体素子と配線回路基板との間に注入する方法である。しかしながら、この方法では、近年の半導体パッケージの低背化、端子ピンの多数化に伴う狭ギャップのために、上記注入する際にボイドが発生しやすいといった問題がある。そこで、このような問題を解決する方法として、近年、半導体素子と配線回路基板との間に、無機質充填剤を含有する封止用樹脂シートを挟み込み、これを加熱溶融させて封止樹脂層を形成するとともに、半導体素子・配線回路基板の端子間を加圧により圧着接合するといった樹脂封止方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−242211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように封止用樹脂シートを用いて樹脂封止する手法では、半導体素子と配線回路基板との間に封止用樹脂シートを挟み込む際に、半導体素子と配線回路基板の端子間に、封止用樹脂シート中の無機質充填剤が噛みこむことにより、導通特性が低下し、結果、接続信頼性を低下させるおそれがある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、特許第3999840号において、本出願人は、封止用樹脂シートを、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層との積層体とし、これを用いて樹脂封止したときに、半導体素子・配線回路基板間の端子接続部が無機質充填剤不含層のところに位置するように工夫して、半導体素子と配線回路基板の端子間での無機質充填剤の噛みこみを抑制する手法を、既に提案している。しかしながら、このように、半導体素子と配線回路基板の端子間に、確実に無機質充填剤がない状態をつくり、接合信頼性を向上させることは、実際には難しい。そのため、上記特許発明においても、未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、半導体素子・配線回路基板間の熱膨張率差による接続不良を改善するとともに、半導体素子・配線回路基板の端子間での無機質充填剤の噛みこみを、より確実に抑え、接続信頼性を向上させた、封止用樹脂シートおよびそれを用いた半導体装置、並びにその半導体装置の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は、半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置を対象とし、その配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止するために用いられる封止用樹脂シートであって、上記封止用樹脂シートが、(α)無機質充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物層と、(β)無機質充填剤を含有しないエポキシ樹脂組成物層との二層構造からなり、かつ上記(α)層および(β)層が下記の特性(x)〜(z)を備えている封止用樹脂シートを第1の要旨とする。
(x)60〜125℃から選ばれるラミネート温度における溶融粘度が、上記(α)層が1.0×102〜2.0×104Pa・sであり、上記(β)層が1.0×103〜2.0×105Pa・sである。
(y)上記(β)層の溶融粘度と(α)層の溶融粘度の差〔(β)層−(α)層〕が、1.5×104Pa・s以上である。
(z)上記封止用樹脂シートの(β)層の厚みが、上記接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/3h〜4/5hである。
【0009】
また、本発明は、半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子を対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置であって、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙が、上記第1の要旨の封止用樹脂シートからなる、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層の二層構造からなる封止樹脂層によって、上記無機質充填剤含有層が半導体素子側に位置するよう樹脂封止されている半導体装置を第2の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、剥離シートの片面に、上記第1の要旨の封止用樹脂シートの(β)層が直接積層されるよう、上記封止用樹脂シートが積層されてなる剥離シート付封止用樹脂シートを準備する工程と、接続用電極部が設けられた半導体素子面に、上記剥離シート付封止用樹脂シートを貼付し加圧して、接続用電極部が設けられた半導体素子に剥離シート付封止用樹脂シートを貼り合わせる工程と、上記剥離シートを剥離した後、接続用端子が設けられた配線回路基板に、上記半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させるよう、上記配線回路基板上に、封止用樹脂シート付半導体素子を載置し、加圧する工程と、上記封止用樹脂シートを加熱硬化することにより、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止する工程とを備えた半導体装置の製法を第3の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その過程で、先の特許第3999840号に係る特許発明を基礎とし、より確実に、無機質充填剤の噛みこみによる接続信頼性の低下が生じないよう、本発明者らは封止用樹脂シートの改良を重ねた。そして、本発明者らは、封止用樹脂シートを、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層との二層構造のエポキシ樹脂組成物シートにするとともに、その各層の融解粘度(ラミネート温度における溶融粘度)と厚みの関係に着目し、各種実験を重ねた結果、これらを本発明に規定する特定範囲内に設定したところ、良好な結果が得られることを突き止めた。すなわち、本発明者らは、このように各層の融解粘度や厚みが設定された封止用樹脂シートの、無機質充填剤含有層側を、接続用電極部(バンプ)が設けられた半導体素子面に貼付し加圧して、半導体素子に封止用樹脂シートを貼り合わせ、バンプ先端部が無機質充填剤含有層を貫通し無機質充填剤不含層内に位置するようにし、端子接合時に確実にバンプ先端部付近に無機質充填剤がない状態をつくり、この状態で、上記封止用樹脂シートの無機質充填剤不含層側を、接続用端子が設けられた配線回路基板に貼り合わせた。そして、特許第3999840号に係る特許発明と同様、上記封止用樹脂シートの加熱溶融、および半導体素子・配線回路基板間の圧着接合により、樹脂封止を行ったところ、半導体素子の接続用電極部と、配線回路基板の接続用端子との間での無機質充填剤の噛みこみをより確実に抑えることができ、その結果、接続信頼性が向上するとともに、半導体素子・配線回路基板間の熱膨張率差による接続不良も改善されるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の封止用樹脂シートは、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層との二層構造のエポキシ樹脂組成物シートであり、その各層の融解粘度(60〜125℃から選ばれるラミネート温度における溶融粘度)が特定の範囲内であり、両層の融解粘度差が特定の範囲内であるとともに、無機質充填剤不含層の厚みが特定の範囲内である。そして、本発明では、上記封止用樹脂シートを、配線回路基板と半導体素子との間で、所定の配置で介在させ、上記封止用樹脂シートの加熱溶融、および半導体素子・配線回路基板間の圧着接合により、樹脂封止を行うことから、半導体素子の接続用電極部と、配線回路基板の接続用端子との間での無機質充填剤の噛みこみをより確実に抑えることができ、その結果、接続信頼性が向上するとともに、半導体素子・配線回路基板間の熱膨張率差による接続不良も改善されるようになる。したがって、半導体素子と配線回路基板間の導通特性の低下が抑制されて、信頼性の高い半導体装置が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る封止用樹脂シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【図3】上記半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【図4】上記半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【図5】上記半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0015】
本発明の封止用樹脂シートは、先に述べたように、半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置を対象とし、その配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止するために用いられるシートである。そして、図1に示すように、本発明の封止用樹脂シート1は、(α)無機質充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物層(無機質充填剤含有層3)と、(β)無機質充填剤を含有しないエポキシ樹脂組成物層(無機質充填剤不含層2)との二層構造からなり、かつ上記(α)層および(β)層が下記の特性(x)〜(z)を備えていることを最大の特徴とするものである。なお、下記の特性(x)における溶融粘度は、一般的なレオメーターを用いて測定すればよいが、例えば、回転型粘度計(HAKKE社製、レオストレスRS1)を用い、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s-1という条件で測定することにより導き出すことができる。
(x)60〜125℃から選ばれるラミネート温度における溶融粘度が、上記(α)層が1.0×102〜2.0×104Pa・sであり、上記(β)層が1.0×103〜2.0×105Pa・sである。
(y)上記(β)層の溶融粘度と(α)層の溶融粘度の差〔(β)層−(α)層〕が、1.5×104Pa・s以上である。
(z)上記封止用樹脂シートの(β)層の厚みが、上記接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/3h〜4/5hである。
【0016】
上記封止用樹脂シートの使用に際し、半導体素子・配線回路基板の端子間での無機質充填剤の噛みこみを、より確実に抑え、接続信頼性を向上させる観点から、上記特性(x)における、(α)層の溶融粘度は、好ましくは、5.0×102〜1.0×103Pa・sの範囲であり、(β)層の溶融粘度は、好ましくは、1.0×104〜2.0×105Pa・sの範囲である。
【0017】
また、上記と同様の観点から、上記特性(y)における、(β)層の溶融粘度と(α)層の溶融粘度の差〔(β)層−(α)層〕は、好ましくは、1.5×104〜2.0×105Pa・sの範囲である。
【0018】
また、上記と同様の観点から、上記特性(z)における、(β)層の厚みは、好ましくは、半導体素子に設けられた接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/2h〜2/3hの範囲である。
【0019】
さらに、本発明の封止用樹脂シートにおいては、上記と同様の観点から、その(α)層の厚みが、上記接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/2h〜2/3hであることが好ましい。
【0020】
なお、上記接続用電極部の高さ(h)は、通常、10〜200μmの範囲である。したがって、この値に従い、上記(α)層および(β)層の厚みは決定する。
【0021】
上記(α)層の形成材料としては、好ましくは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とエラストマー成分と無機質充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物が用いられ、上記(β)層の形成材料としては、好ましくは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とエラストマー成分を含有するエポキシ樹脂組成物が用いられる。また、各層の形成材料には、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0022】
上記エポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が用いられる。また、上記フェノール樹脂としては、具体的には、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂等が用いられる。また、エラストマー成分としては、具体的には、アクリル酸エチルとアクリル酸ブチルとアクリロニトリルの共重合ポリマー等が用いられる。上記無機質充填剤としては、具体的には、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末等が用いられる。
【0023】
そして、前記特性(x)に示すように、(α)層および(β)層の溶融粘度を調整する方法としては、例えば、各層の形成材料中のエラストマー量、無機質充填剤量によって調整する方法があげられるが、熱応力信頼性のための低熱線膨張化の観点から、エラストマー量で調整することが好ましい。そして、前記特性(x)を満足させるために、(α)層の形成材料中のエラストマー量を1重量%以上20重量%未満とし、(β)層の形成材料中のエラストマー量を20重量%以上50重量%未満とすることが、粘度調整の容易化の観点から好ましい。
【0024】
本発明の封止用樹脂シートは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0025】
すなわち、まず、(α)層および(β)層の材料である樹脂組成物を、それぞれ、その各配合成分が均一に分散混合されるまで混合し、調製する。そして、上記調製された樹脂組成物を、シート状に形成する。この形成方法としては、例えば、上記調製された樹脂組成物を押出成形してシート状に形成する方法や、上記調製された樹脂組成物を有機溶剤等に溶解または分散してワニスを調製し、このワニスを、ポリエステル等の基材上に塗工し乾燥させることにより樹脂組成物シートを得る方法等があげられる。なかでも、均一な厚みのシートを簡便に得ることができるという観点から、ワニスの塗工による形成方法が好ましい。なお、上記のように形成された樹脂組成物シートの表面には、必要に応じ、樹脂組成物シートの表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせ、封止時に剥離するようにしてもよい。また、上記のポリエステル等の基材を、この剥離シートとしてもよい。
【0026】
上記ワニスを調製する際に用いる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0027】
このようにして得られた、(α)層および(β)層に相当するシート状エポキシ樹脂組成物を積層して、本発明の封止用樹脂シートとする。
【0028】
本発明の半導体装置は、上記封止用樹脂シートを用いて、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、まず、剥離シートの片面に、上記封止用樹脂シートの(β)層が直接積層されるよう、上記封止用樹脂シートが積層されてなる剥離シート付封止用樹脂シートを準備する。つぎに、接続用電極部が設けられた半導体素子面に、上記剥離シート付封止用樹脂シートを貼付し加圧して、接続用電極部が設けられた半導体素子に剥離シート付封止用樹脂シートを貼り合わせる。続いて、上記剥離シートを剥離した後、接続用端子が設けられた配線回路基板に、上記半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させるよう、上記配線回路基板上に、封止用樹脂シート付半導体素子を載置し、加圧する。そして、上記封止用樹脂シートを加熱硬化することにより、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止する。
【0029】
このようにして得られた本発明の半導体装置は、半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子を対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置であって、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙が、上記封止用樹脂シートからなる、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層の二層構造からなる封止樹脂層によって、上記無機質充填剤含有層が半導体素子側に位置するよう樹脂封止されている。
【0030】
先に述べた本発明の半導体装置の製造工程は、具体的には、図2〜図6に示す工程順序で行われる。
【0031】
すなわち、まず、図2に示すように、上記封止用樹脂シート1の、無機質充填剤含有層3〔(α)層〕の表面を、ステージ上に載置した半導体素子5の接続用電極部4設置面に対し、ロールラミネーター(ロール9)を用いて貼り合わせる。この貼り合わせ時のステージ温度が、本発明に規定するラミネート温度であり、無機質充填剤含有層3〔(α)層〕と無機質充填剤不含層2〔(β)層〕とが特定の粘度範囲を示す、60〜125℃から選ばれる任意の温度である。なお、無機質充填剤含有層3〔(α)層〕の表面に剥離シート(ポリエステルフィルム等)がある場合は、剥離してから貼り合わせる。また、半導体素子5の接続用電極部4の先端部が無機質充填剤含有層3を貫通して無機質充填剤不含層2に位置するよう、ラミネート圧力は0.1〜1MPaが好ましい。
【0032】
上記のようにして貼り合わせ、封止用樹脂シート1の裁断を行うと、図3に示すような状態となる。なお、上記封止用樹脂シート1の裁断は、上記貼り合わせ前に行うようにしてもよく、さらに、後記のように半導体素子5がウエハの場合におけるダイシング工程の際に同時に行うようにしてもよい。続いて、上記のようにして貼り合わせた封止用樹脂シート1の、無機質充填剤不含層2側の剥離シート10(ポリエステルフィルム等)を剥離し、これにより露呈した無機質充填剤不含層2の表面を、図4に示すように、配線回路基板7上の、接続用端子6設置面に貼り合わせる。次いで、フリップチップボンダー(パナソニック社製)等の装置を用いて、所定の圧力および熱を加え、図5に示すように、上記半導体素子5の接続用電極部4と、配線回路基板7の接続用端子6との接合を行う。接合条件としては、ボンディング圧力(接続用電極部1個あたりの荷重)が0.0196〜0.98N/bump(0.002〜0.1kgf/bump)、接合温度が260〜290℃、接合時間が2〜20秒であることが好ましい。これにより、上記封止用樹脂シート1は溶融し、その後熱硬化して樹脂封止が行われ、図6に示すように、樹脂硬化体8となる。このようにして、半導体素子5と配線回路基板7を接合し、半導体装置を得る。
【0033】
なお、半導体素子5がウエハの場合は、バックグラインド工程、ダイシング工程が、図3に示す工程と図4に示す工程との間に追加される。すなわち、ウエハに対するバックグラインド処理およびダイシング処理が行われた後、無機質充填剤不含層2側の剥離シート10を剥離する。
【実施例】
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0035】
まず、封止用樹脂シートの形成材料として、下記に示すエポキシ樹脂、フェノール樹脂、エラストマー、硬化促進剤および無機質充填剤を準備した。
【0036】
〔エポキシ樹脂A〕
エポキシ基当量が142g/eqのナフタレン型エポキシ樹脂(製品名:HP4032D(DIC))
【0037】
〔エポキシ樹脂B〕
エポキシ基当量が169g/eqのトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(製品名:EPPN501HY(日本化薬社製))
【0038】
〔エポキシ樹脂C〕
エポキシ基当量が185g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:YL−980(ジャパンエポキシレジン社製))
【0039】
〔フェノール樹脂A〕
水酸基当量175g/eqのアラルキル型フェノール樹脂(製品名:MEHC−7800S(明和化成社製))
【0040】
〔フェノール樹脂B〕
水酸基当量105g/eqのフェノールノボラック樹脂(製品名:CS−180(群栄化学社製))
【0041】
〔エラストマーA〕
重量平均分子量450000のアクリル酸エチルとアクリル酸ブチルとアクリロニトリルの共重合ポリマー(ガラス転移温度:−15℃)
【0042】
〔エラストマーB〕
重量平均分子量450000のアクリル酸エチルとアクリル酸ブチルとアクリロニトリルの共重合ポリマー(ガラス転移温度:15℃)
【0043】
〔硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン(製品名:TPP−K(北興化学社製))
【0044】
〔無機質充填剤〕
平均粒径0.5μmの球状溶融シリカ(製品名:SE−2050(アドマテックス社製))
【0045】
〔熱硬化性樹脂組成物シートの作製〕
上記各材料を、下記の表1に示す割合(表1において、組成1〜11に示される各材料の割合)で配合し、これにメチルエチルケトンを加えて混合溶解し、この混合溶液を、離型処理したポリエステルフィルム上に塗布した。次に、上記混合溶液を塗布したポリエステルフィルムを110℃で乾燥させ、メチルエチルケトンを除去した。これにより、上記ポリエステルフィルム上に、組成1〜11のいずれかからなり、所望の厚みを有する熱硬化性樹脂組成物シートを作製した。なお、下記の表1に示すように、組成1〜5からなるシートは、無機質充填剤含有層(α層)を構成するものであり、組成6〜11からなるシートは、無機質充填剤不含層(β層)を構成するものである。
【0046】
【表1】

【0047】
〔実施例1〜9、比較例1〜10〕
上記作製の熱硬化性樹脂組成物シートを、ポリエステルフィルムをつけたまま、後記の表2および表3に示すα層およびβ層の組み合わせ(各層の厚みは、表2および表3に示す。)で、その樹脂組成物シート面同士を貼り合わせ、二層構造の封止用樹脂シートを作製した。
【0048】
このようにして作製した封止用樹脂シートの、α層側のポリエステルフィルム(剥離シート)を剥離し、これにより露呈したα層の表面を、ステージ上に載置した半導体素子のバンプ(接続用電極部)設置面に接するようにし、ロールラミネーター(ロール速度:0.1m/分、ロール圧力:0.5MPa、製品名:DR3000II(日東精機社製))を用いて貼り合わせた(図2参照)。なお、上記貼り合わせに用いた封止用樹脂シートは、半導体素子と同寸法に裁断されている。また、貼り合わせ時のステージ温度(ラミネート温度)は、表2および表3に示す通りである。また、そのラミネート温度におけるα層およびβ層の溶融粘度は、回転型粘度計(HAKKE社製、レオストレスRS1)を用い、測定温度130℃、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s-1という条件で測定した。この測定結果も、後記の表2および表3に併せて示した。また、半導体素子のバンプは、半田バンプであり、そのバンプの高さは60μmである。
【0049】
続いて、上記のようにして貼り合わせた封止用樹脂シートのβ層側のポリエステルフィルム(図3参照)を剥離し、これにより露呈したβ層の表面を、配線回路基板上の、接続用端子設置面に貼り合わせた(図4参照)。次いで、パナソニック社製のフリップチップボンダー(ボンディング圧力:0.029N/bump(0.003kgf/bump)、接合温度:280℃×10秒、ステージ温度:140℃)を用いて、半導体素子のバンプと、配線回路基板の接続用端子との接合を行い(図5参照)、樹脂封止を行うことにより、半導体装置(図6参照)を得た。
【0050】
このようにして行われた半導体装置の製造過程において、下記の基準に従い、本発明の基準を充分に満足し得るものであったか否かを評価した。その結果を、後記の表2および表3に併せて示した。
【0051】
〔「貼り合わせ」評価〕
半導体素子に封止用樹脂シートを貼り合わせた後、その断面を、顕微鏡(キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX−500)を用いて1000倍に拡大して観察した。その結果、バンプ先端に無機質充填剤がない場合を○、完全にβ層にバンプが理没している場合を◎、バンプ先端に無機質充填剤層が確認された場合を×と評価した。
【0052】
〔「接合」評価〕
半導体素子と配線回路基板とを接合した後、その断面を、顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−500)を用いて1000倍に拡大して観察した。その結果、半導体素子のバンプと、配線回路基板の接続用端子との接合部に無機質充填剤がない場合を○、上記接合部に無機質充填剤層が確認された場合を×と評価した。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
上記表の結果より、実施例では、封止用樹脂シートのα層(無機質充填剤含有層)とβ層(無機質充填剤不含層)とが、本発明の規定(α層の溶融粘度が1.0×102〜2.0×104Pa・sであり、β層の溶融粘度が1.0×103〜2.0×105Pa・sであり、両層の粘度差が1.5×104Pa・s以上であり、β層の厚みが20〜48μm(バンプ高さの1/3〜4/5)である。)を満たしていることから、上記の「貼り合わせ」および「接合」評価において良好な結果が得られ、無機質充填剤の噛みこみによる半導体素子・配線回路基板間での接続信頼性の低下を防止することができていることがわかる。
【0056】
これに対し、比較例では、実施例と同様、α層(無機質充填剤含有層)とβ層(無機質充填剤不含層)とからなる封止用樹脂シートを用いて半導体封止を行っているが、そのα層、β層の一方あるいは双方が、上記の、本発明の規定を満たしていないことから、「貼り合わせ」および「接合」評価に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0057】
1 封止用樹脂シート
2 無機質充填剤不含層
3 無機質充填剤含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置を対象とし、その配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止するために用いられる封止用樹脂シートであって、上記封止用樹脂シートが、(α)無機質充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物層と、(β)無機質充填剤を含有しないエポキシ樹脂組成物層との二層構造からなり、かつ上記(α)層および(β)層が下記の特性(x)〜(z)を備えていることを特徴とする封止用樹脂シート。
(x)60〜125℃から選ばれるラミネート温度における溶融粘度が、上記(α)層が1.0×102〜2.0×104Pa・sであり、上記(β)層が1.0×103〜2.0×105Pa・sである。
(y)上記(β)層の溶融粘度と(α)層の溶融粘度の差〔(β)層−(α)層〕が、1.5×104Pa・s以上である。
(z)上記封止用樹脂シートの(β)層の厚みが、上記接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/3h〜4/5hである。
【請求項2】
上記封止用樹脂シートの(α)層の厚みが、上記接続用電極部の高さ(h)を基準として、1/2h〜2/3hである請求項1記載の封止用樹脂シート。
【請求項3】
上記(α)層が、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とエラストマー成分と無機質充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物からなり、上記(β)層が、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とエラストマー成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる請求項1または2記載の封止用樹脂シート。
【請求項4】
半導体素子に設けられた接続用電極部と、配線回路基板に設けられた接続用端子を対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載されてなる半導体装置であって、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止用樹脂シートからなる、無機質充填剤含有層と無機質充填剤不含層の二層構造からなる封止樹脂層によって、上記無機質充填剤含有層が半導体素子側に位置するよう樹脂封止されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
剥離シートの片面に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止用樹脂シートの(β)層が直接積層されるよう、上記封止用樹脂シートが積層されてなる剥離シート付封止用樹脂シートを準備する工程と、接続用電極部が設けられた半導体素子面に、上記剥離シート付封止用樹脂シートを貼付し加圧して、接続用電極部が設けられた半導体素子に剥離シート付封止用樹脂シートを貼り合わせる工程と、上記剥離シートを剥離した後、接続用端子が設けられた配線回路基板に、上記半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた接続用端子とを対向させるよう、上記配線回路基板上に、封止用樹脂シート付半導体素子を載置し、加圧する工程と、上記封止用樹脂シートを加熱硬化することにより、上記配線回路基板と半導体素子との間の空隙を樹脂封止する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−169414(P2012−169414A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28470(P2011−28470)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】