説明

導電性インキ、導電回路および非接触型メディア

【課題】 印刷によりICチップを実装する際に適した膜厚を持ち、高温・高圧下の実装条件に耐えうる導電回路が得られ、十分な低体積抵抗値を実現でき、かつインキの安定性、流動性に優れた導電性インキ、およびそれを用いた非接触型メディアの提供。
【解決手段】 導電性物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、導電性物質がBET比表面積0.5〜2.5m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉およびBET比表面積1.0〜2.5m2/g、タップ密度0.5〜1.5g/cmの箔状金属粉を用い、ヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂に脂肪族のジイソシアネートを架橋剤として用いた導電性インキ、および基材上に前記導電性インキ用いて形成された導電回路と、該導体回路に導通された状態で実装されたICチップとを具備する非接触型メディア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インキ、それを用いて基材上に印刷または塗工して形成される印刷物に関し、さらに導電性インキを用いた導電回路および導電回路に導通された状態で実装されたICモジュールとを具備する非接触型メディアに関する。さらに、詳しくは、印刷によりICチップを実装する際に適した膜厚を有し、高温・高圧下の実装条件に耐えうる導電回路が得られ、十分な低体積抵抗率を実現でき、かつインキの安定性、流動性に優れた導電性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品あるいは電磁波シールド用の薄膜形成あるいは導電回路のパターニングは、一般的に、熱硬化型、熱可塑型の導電性インキなどによる回路あるいは回路パターンを印刷し、熱処理による焼結する方法、または銅張り基材からのエッチング法が知られている。
焼結法の例としては、特開2000−305260号公報には、感光性導電性ペーストとして、アルカリ可溶性ネガ型感光性樹脂組成物、光重合開始剤、金属粉末および金属超微粒子からなる感光性ペーストが開示されている。該公報では、感光性樹脂組成物をパターニングした後、電気炉やベルト炉等の焼成炉で有機成分を揮発させ、無機粉末を焼成させることにより導電性パターン膜を形成しており、その際の焼成の雰囲気は、大気中または窒素雰囲気あるいは水素雰囲気で、500℃以上であり、大型の設備が必要となる。
【0003】
エッチング法は、金属の表面や形状を、化学的あるいは電気化学的に溶解除去する加工技術である。エッチングはすなわち化学加工の一種であり、主に金属表面に希望のパターン形状を得るために行われるが、一般的に工程が煩雑であり、また後工程で廃液処理が必要であるため、問題が多い。また、エッチング法によって形成された導電回路は、アルミニウムや銅など金属のみで形成されたものであるため、折り曲げ等の物理的衝撃に対して弱いという問題がある。
【0004】
導電性インキは、電子部品の小型軽量化あるいは生産性の向上、低コスト化が期待でき、また基材に印刷あるいは塗工し、乾燥させることによって容易に導電性を付与できる。この乾燥、硬化工程では、基材や電子部品に高温を加えることなく、低温にて行うことが出来ることから、近年急速に需要が高まっている。熱硬化型導電性インキの内、バインダー成分としてガラスフリットなどの無機物質を用いている物は、基材に塗布または印刷後に高温で過熱する必要がある。加熱による硬化には、多大なエネルギー、時間、装置設置のための床の面積を必要とし、不経済であるばかりでなく、次に示すような大きな制約がある。
【0005】
すなわち、ガラスフリット等の無機物質をバインダーとする導電性インキは、通常800℃以上での焼成を必要とするため、合成樹脂系の基材には適用できない。一方、熱硬化性樹脂をバインダーとする導電性インキは、合成樹脂系の基材に対して適用可能であるが、導電性インキを硬化させる際の過熱によって基材が変形し、得られたプリント配線回路を用いた後工程の部品搭載に支障を来たすなどの大きな障害があった。
【0006】
また、熱可塑型の導電性インキとしては特許2974256号公報、特開2005−56778号公報にあるように銀粉、極性基を有する塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体にマレイン酸等あるいはビニルアルコールを導入し極性基を有する導電性インキが開示され、特開2005−56778号公報にはブロックイソシアネート化合物を含む導電性ペーストが開示されているが、印刷したアンテナ回路にICを実装する際、異方性導電接着剤若しくは異方性導電フィルムを用いて実装を行うが、その際200℃前後の温度と300kgf/cm2以上の加圧が必要となるが、この条件では導電インキ被膜が溶融・破壊されてしまう。
【0007】
更にICを実装する際、導電インキが印刷されていない基材フィルムとICバンプ部分により形成された間隙が一定のクリアランスを保つ事がアンテナの性能として必要であり、その為には10μm以上の導電インキ被膜が必要とされる。特開2005−56778号公報には銀微粉末は0.1〜100μm、一般的には0.1〜20μmの大きさの鱗片状ものが記載されているが、一般的に10μm以上の銀粉は13μm以上の膜厚の被膜を得る事は可能であるが、スクリーン印刷を行う際、銀粉がスクリーンメッシュに詰まりやすく、ロングランの印刷には適していない。
【特許文献1】特開2000−305260号公報
【特許文献2】特表平05−506876号公報
【特許文献3】特開2005−56778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の導電性インキを使用した印刷による導通回路の形成に於いては、異方性導電性接着剤若しくは異方性導電性フィルムを用いて導通回路とICバンプ部分を接合する際、200℃前後で300kgf/cm2の高温、高圧の条件では導電性インキ被膜が変形あるいは破壊されてしまい、非接触メディアのアンテナとしての性能が損なわれてしまう。
本発明は200℃前後300kgf/cm2前後の高温高圧化で異方性導電性接着剤若しくは異方性導電性フィルムを使用しICを接合する際、形状安定性に優れた導通回路の印刷物を提供する物であり、更に、基材フィルムとICバンプ部分との間隙を一定とするために13μm以上のインキ被膜を安定的に印刷する事ができる導電性インキを提供し、大量生産性、コストダウン、省エネルギー化に寄与する新しい非接触型メディアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の導電性インキは、導電性物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、導電性物質として、BET比表面積2.5m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を導電性インキの固形分換算で75〜85重量%と、BET比表面積1.0〜2.5m2/g、タップ密度0.5〜1.5g/cmの箔状金属粉が導電性インキの固形分換算で5〜15重量%とを併用して用い、さらにヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂に脂肪族ジイソシアネートを架橋剤として用いることを特徴とした導電性インキをスクリーンメッシュ250メッシュ以下で尚かつ総厚80μm以上の版を用いてスクリーン印刷により導電回路を形成させる事により、課題を解決する事ができる。
また、金属粉は銀であることが好ましい。
タップ密度0.5〜1.5g/cmの箔状金属粉が導電性インキの固形分として5重量%以下ではインキの流動性がニュートニアンとなり13μm以上の膜厚が得られず、15重量%以上ではインキの流動性が極端に損なわれ、均一な皮膜が得られない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性インキは、乾燥皮膜としての耐熱性および耐圧性が良好であり、更にインキの流動性が良好である事からシルクスクリーン印刷により安定的に13μm以上の厚膜の導通回路が得られるため、従来の導電性インキでは困難であった異方性導電接着剤或いは異方性導電性フィルムを用いたIC実装工程に於いて、導電インキ被膜の変形・破壊が抑制され、ICチップを搭載する際の歩留まりが向上し、更に、本発明の導電性インキを使用することにより、大量生産によるコストダウンに貢献することができ将来低コストで新しい非接触型ICメディアの普及が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、実施の形態に基づいて更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
まず、本発明における導電性インキについて説明する。
本発明に係わる導電性インキに用いるバインダー成分はヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂であり、更に詳しくはヒドロキシアルキルアクリレートとはヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレートより選ばれる少なくとも1種類の物質を用い、ヒドロキシアクリレートが10〜15%、塩化ビニルが75〜85%、酢酸ビニルが1〜7%の比率の共重合体であり、重合度が300〜500、平均分子量Mnが22000〜35000の樹脂を用い、更に導電性物質がBET比表面積0.5〜2.5m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉が導電性インキの固形分として75〜85重量%およびBET比表面積1.0〜2.5m2/g、タップ密度0.5〜1.5g/cmの箔状金属粉が導電性インキの固形分として5〜15重量%を用い、更に脂肪族ジイソシアネートを架橋剤として用いることで基材への密着性、屈曲性が良好であり、13μm以上の膜厚と表面抵抗率が100mΩ/□以下の導電性硬化被膜が得られる。ヒドロキシアクリレート以外の水酸基を有する塩化ビニル、酢酸ビニルの共重合体では塩化ビニルから脱塩素反応がし易く、導電体に銀を用いた場合に塩化銀が生成してしまい導電性を阻害する。
【0012】
導電性インキには、導電物質として銀粉末を用いる事が好ましいが、必要に応じて他の導電性物質、例えば銀メッキ銅、銀−銅複合体、銀−銅合金、アモルファス銅等の金属、これらの金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明の導電性インキはヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂他に、別の有機樹脂を併用することができる。その他の有機樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルなどの各種変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。
【0014】
本発明の導電性インキに用いる硬化剤は本発明の導電性インキに用いるヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂に反応し得る硬化剤であれば良いが、接着性、耐屈曲性、硬化性などから脂肪族イソシアネート化合物が特に好ましい。さらに、これらのイソシアネート化合物はブロック化して使用しても良い。また、イソシアネート化合物以外の硬化剤として、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ベンゾグアナミン、尿素樹脂などのアミノ樹脂、酸無水物、イミダゾール類、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの公知の化合物を併用しても良い。
【0015】
脂肪族イソシアネート化合物としては、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよく、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。また、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の芳香族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを併用しても良い。
【0016】
イソシアネート基のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第三級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。このうち、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類がとくに好ましい。
【0017】
これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。本発明に係わる導電性インキは、必要に応じて、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0018】
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0019】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1─ブトキシエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等が挙げられる。
【0020】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。脂肪族系溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが挙げられ、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレンが挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電回路と、該導体回路に導通された状態で実装されたICチップとを具備する非接触型メディアについて説明する。
【0021】
本発明の導電性インキを、使用用途に応じて紙、プラスチック等の基材の片面または両面上に、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷により印刷することで導電回路を形成することができる。
【0022】
紙基材としては、コート紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、非接触メディアとして安定した抵抗値を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど好ましい。
【0023】
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のタグ、カードとして使用されるプラスチックからなる基材を使用することができる。
【0024】
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
導電回路を印刷、形成する前の行程において、基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電回路印刷後に回路の保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。
【0025】
また、導電回路上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、または、プラスチックの溶融押出し等によりラミネートして非接触メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0027】
[バインダー1]
日信化学工業製塩ビ酢ビ共重合樹脂ソルバインTA2(塩ビ、酢ビ、ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体)40部をイソホロン60部と混合し60℃にて加熱攪拌しワニス状のバインダー1を調整した。
[バインダー2]
日信化学工業製塩ビ酢ビ共重合樹脂ソルバインTAO(塩ビ、酢ビ、ビニルアルコール共重合体)40部をイソホロン60部と混合し60℃にて加熱攪拌しワニス状のバインダー2を調整した。
[バインダー3]
日信化学工業製塩ビ酢ビ共重合樹脂ソルバインME(塩ビ、酢ビ、マレイン酸共重合体)40部をイソホロン60部と混合し60℃にて加熱攪拌しワニス状のバインダー3を調整した。
【0028】
[銀粉A]
福田金属箔粉工業製フレーク状銀シルコートAgC−A(BET比表面積0.8m3/g、タップ密度3.5g/cm3)を銀粉Aとした。
[銀粉B]
福田金属箔粉工業製白状銀ナノメルトAg−XF301(BET比表面積1.7m3/g、タップ密度1.0g/cm3)を銀粉Bとした。
[銀粉C]
三井金属鉱業製フレーク状銀3100CP(BET比表面積1.5m3/g、タップ密度3.5g/cm3)を銀粉Bとした。
[銀粉D]
三井金属株式会社製球状銀TPS(BET比表面積1.9m3/g、タップ密度1.1g/cm3)を銀粉Dとした。
[硬化剤1]
脂肪族ポリイソシアネート:住友バイエルウレタン製スミジュールN75を硬化剤1とした。
【0029】
【表1】

【0030】
記載の配合比率にて銀粉、バインダー、硬化剤、溶剤をディスパーにて混合し導電性インキを調整し、250メッシュスクリーン版および400メッシュシルクスクリーン版を用いて50μmPETフィルムに50mm×80mmのテストパターンを印刷した。印刷物を80℃オーブン中で20分間乾燥させた。得られた印刷物の表面抵抗率をダイアインスツルメント社製抵抗率計ロレスタ−GPにて測定し、膜厚を株式会社仙台ニコン製MH−15M型測定器を用いて測定した。また、乾燥皮膜の耐熱・耐圧性については上記の方法で得られた乾燥皮膜に1mm×1mm、膜厚0.5mmのポリイミドフィルムを乗せ、加熱プレス機にて200℃、300kgf/cm2の条件にて10秒間加熱加圧した時の外観を目視にて評価した。
【0031】
耐熱・耐圧性 ○・・・乾燥皮膜が破壊されていない。
×・・・乾燥皮膜が破壊された。
【0032】
更に、印刷物の外観を目視にて評価した。
印刷物外観 ○ ・・・ 表面が平滑に印刷されている。
× ・・・ 表面の凹凸が多い
【0033】
[インキ流動性]
導電性インキを所定量秤り取り、E型粘度計を使用して、スクリーンインキの場合はローター回転数2及び20回転の粘度を、25℃環境下で測定した。次に、チキソトロピックインデックス値(TI値)、即ち(2回転時の粘度)÷(20回転時の粘度)を算出してインキ流動性の指標とした。
○:流動性良好、TI値<4.0
△:使用可能な範囲、5.0≦TI値≦7.0
×:流動性悪い、TI値>7.0
【0034】
[実施例1〜2]
良好なインキ流動性を有し、250メッシュスクリーン版で13μm以上の膜厚が得られ、表面抵抗率も非常に低く、更に耐熱・耐圧試験に於いても良好な結果が得られた。
[比較例3〜7]
球状銀粉を用いた比較例3ではインキ流動性、印刷物外観は良好であるが、13μm以上の膜厚が得られず、表面抵抗率も高くなった。実施例1と同じ銀粉を用いたが配合比率を変更した比較例4ではインキの流動性が損なわれ、良好な外観を有する乾燥皮膜が得られず、表面抵抗率も非常に高くなった。樹脂を変更した比較例5、比較例6および硬化剤を添加しなかった比較例7は何れも耐熱・耐圧性が不良であった。
また、何れも配合においても400メッシュスクリーン版を用いた印刷では13μm以上の膜厚を有する乾燥皮膜が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の導電性インキにより、従来の導電性インキでは困難であった異方性導電接着剤或いは異方性導電性フィルムを用いたIC実装工程に於いて、導電インキ被膜の変形・破壊が抑制され、ICチップを搭載する際の歩留まりが向上し、更に、本発明の導電性インキを使用することにより、大量生産によるコストダウンと、貢献することができ、将来、低コストで新しい非接触型ICメディアの普及が可能となる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、導電性物質として、BET比表面積2.5m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を導電性インキの固形分換算で75〜85重量%と、BET比表面積1.0〜2.5m2/g、タップ密度0.5〜1.5g/cmの箔状金属粉が導電性インキの固形分換算で5〜15重量%とを併用して用い、さらにヒドロキシアルキルアクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニルの3成分共重合体からなる熱可塑性樹脂に脂肪族ジイソシアネートを架橋剤として用いることを特徴とした導電性インキ。
【請求項2】
基材上に、請求項1記載の導電性インキを用いてシルクスクリーン印刷により導電回路を印刷し、乾燥することによって、導電回路を形成させることを特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の導電性インキをスクリーンメッシュ250メッシュ以下で尚かつ総厚80μm以上の版を用いて導電回路を形成させる事を特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項4】
基材上に、請求項3記載の導電回路及びICチップを積載した非接触型メディア。












【公開番号】特開2008−94997(P2008−94997A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279644(P2006−279644)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】