説明

弁装置および継手

【課題】内部流体通路を流れる流体への金属イオンの混入を防止することができ、かつ弁枠体の軸心方向とこれに直交する方向における変形を防止した状態で小型化を図る。
【解決手段】屈曲部2aおよび両端に開口が設けられた内部流体通路2と、内部流体通路2の一端側に設けられた弁座13とを有する弁枠体3と、弁枠体3に、屈曲部2aと一端側開口11とを結ぶ方向へスライド可能に設けられた軸部材4と、軸部材4の先端部に、屈曲部2aの開口から内部流体通路2内へ進出可能に設けられた弁体5とを備え、弁枠体3は、保持カバー20、21、22が連結された状態で弁枠体本体10における軸部材4のスライド方向の両側部分と軸部材4の周方向に沿った部分とを覆う構成となっており、弁体5は、軸部材4の先端部に取付けられる金属製の弁体基部17と、この弁体基部17の外側を覆いかつ屈曲部2aの開口を塞ぐ樹脂製の弁体膜18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体分野で使用されるウエハ洗浄液や基板コート剤などの薬品等の流体を対象とした通路の連結に好適に用いられる弁装置および継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した弁装置として、図8に示すものが知られている(例えば特許文献1参照)。この弁装置は、容器100のフランジ101に設けられた貫通孔102に挿入して取付けられていて、弁枠体103の軸心に沿って設けた孔104に弁体105がスライド可能に配され、弁体105の拡径上端部106が、孔104の上側に設けた弁座107に当接すると弁装置が閉になり、拡径上端部106が弁座107から離れると、弁装置が開になる。そして、弁装置が開のとき、孔104の弁座107よりも下側に設けた受入部材108から受入れた流体が、孔104と弁体105との隙間にて形成される内部流体通路109を経て孔104の弁座107よりも上側に設けた送出部材110から容器100の内部へ送出すように構成されている。
【0003】
このように構成された弁装置の材質は、流体への金属イオンの混入を防止するために、流体と接する、弁枠体103、弁体105、受入部材108および送出部材110の全ての部分が樹脂材料により形成されている。
【特許文献1】特開2004−308740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した弁装置は、フランジ101により弁枠体103の周方向周りが保持されているものの、弁枠体103の軸心方向に関しては金属で保持されていないため、その弁枠体103の軸心方向での強度を確保し変形を防止する上で長くせざるを得なく、小型化が困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、内部流体通路を流れる流体への金属イオンの混入を防止することができ、かつ弁枠体の軸心方向とこれに直交する方向における変形を防止した状態で小型化を図れる弁装置および継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る弁装置は、途中で屈曲し、その屈曲部および両端に開口が設けられた内部流体通路と、該内部流体通路の一端側に設けられた弁座とを有する弁枠体と、該弁枠体に、上記内部流体通路の屈曲部と一端側開口とを結ぶ方向へスライド可能に設けられた軸部材と、該軸部材の先端部に、上記屈曲部の開口から内部流体通路内へ進出可能に設けられた弁体とを備え、上記弁枠体は、上記内部流体通路を有する樹脂製の弁枠体本体と、少なくとも2つに分割され、上記弁枠体本体を覆う状態に連結される金属製の保持カバーとを有し、その保持カバーが連結された状態で弁枠体本体における軸部材のスライド方向の両側部分と軸部材の周方向に沿った部分とを覆う構成となっており、上記弁体は、上記軸部材の先端部に取付けられる金属製の弁体基部と、この弁体基部の外側を覆いかつ上記屈曲部の開口を塞ぐ樹脂製の弁体膜とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明に係る弁装置は、請求項1に記載の弁装置において、前記保持カバーは、前記内部流体通路の一端側の開口に対応する部分に第1貫通孔が、前記内部流体通路の他端側の開口に対応する部分に第2貫通孔が、前記内部流体通路の屈曲部の開口に対応する部分に弁体挿通孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明に係る弁装置は、請求項2に記載の弁装置において、内側の樹脂管と外側の金属管とを有する外部管路を備え、上記外部管路は、前記樹脂管が前記他端側の開口に連通するように、上記金属管が前記保持カバーにおける第2貫通孔の周縁部に取付けられることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明に係る弁装置は、請求項3に記載の弁装置において、前記樹脂管の前記弁枠体本体側の端部には、樹脂製の鍔が溶着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明に係る弁装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の弁装置において、前記弁体膜は、前記弁座に接離する弁頭部と、これに繋がる筒状部とを有し、該筒状部の裾部が前記弁枠体に固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明に係る弁装置は、請求項5に記載の弁装置において、前記筒状部の裾部は、前記弁枠体本体と保持カバーとの間に挟持されていて、弁枠体本体と保持カバーとにおける裾部を挟持する部分が内部流体通路へ近づく程に縮径する縮径部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明に係る弁装置は、請求項2乃至6のいずれかに記載の弁装置において、前記保持カバーは、前記弁枠体本体における前記軸部材の周方向に沿った部分を覆い、かつ前記第2貫通孔を有する第1保持カバーを備え、弁枠体本体に対する第1保持カバーの周方向位置を決める位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明に係る弁装置は、請求項2乃至7のいずれかに記載の弁装置において、前記保持カバーは、前記弁枠体本体における前記軸部材のスライド方向の片側部分であって前記第1貫通孔を有する第2保持カバーを備え、その第2保持カバーの第1貫通孔の縁と弁枠体本体との間にOリングが、上記第1貫通孔の縁から第1貫通孔の中心に向かって突出させた突起により抜け防止された状態で、設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明に係る継手は、請求項8に記載の弁装置を用いた継手において、前記第2保持カバーを相手側継手に当接して両継手が接続される構成となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弁装置にあっては、内部流体通路に露出する弁枠体本体と弁体膜とが樹脂で形成されているので、内部流体通路を流れる流体への金属イオンの混入を防止することが可能である。また、樹脂からなり変形の容易な弁枠体本体における軸部材の周方向に沿った部分だけでなく、弁枠体本体における軸部材のスライド方向の両側部分も金属製の保持カバーで保持して弁枠体が構成されているので、弁枠体における軸部材のスライド方向での変形を防止でき、これにより弁枠体における軸部材のスライド方向長さを短くすることができる。
【0016】
請求項2の発明による場合には、保持カバーに、弁枠体本体の両端の開口に対応して第1、第2貫通孔がそれぞれ形成されているので、内部流体通路における流体の流れを邪魔することなく、樹脂製の弁枠体本体の変形を低減することができる。
【0017】
請求項3に記載の弁装置による場合には、金属管は金属製の保持カバーに固定されるため金属管の内側に設けた樹脂管の位置を規定することができる。これにより、樹脂管と内部流体通路の他端側開口の周縁との位置がズレ難くなり、両者間の接続状態を長時間維持することができる。また、外部管路を着脱可能に構成することで、その交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0018】
請求項4による場合には、樹脂管とは別体の鍔を樹脂管に溶着するため、鍔の弁枠体本体側の端面における外部管路の軸心に対する角度を直角に確実に出すことが可能となり、弁枠体本体の他端側開口の周縁と鍔との接続部に凹部が形成されることを防止することができる。これにより接続部において流体の淀みが発生するのを防止することができる。また、鍔により弁枠体本体の他端側開口との接続面積を広くすることが可能となり、その接続部にOリングを配置することもでき、これにより弁枠体本体の他端側開口と鍔との接続部の水密性を向上させ得る。
【0019】
請求項5による場合には、弁体膜における弁頭部に繋がる筒状部の裾部が弁枠体にて固定されるので、弁体基部、軸部材および軸受が金属製であっても、これら金属部分と内部流体通路との間を樹脂製の弁体膜にて区分けすることができる。これにより、軸部材および軸受で発生する金属粉などが内部流体通路へ混入するのを防止することができる。
【0020】
請求項6による場合には、弁枠体本体と保持カバーとにおける裾部を挟持する部分が縮径して湾曲(または屈曲)しているので、その挟持する部分の裾部との接触面積の増加が図れ、樹脂製の弁枠体本体が経年変化に伴って劣化しても裾部の挟持状態を長期間にわたり維持することが可能になる。
【0021】
請求項7による場合には、位置決め手段により弁枠体本体の他端側開口と第1保持カバーの第2貫通孔との位置を一致させることが可能になる。特に、請求項3のように他端側開口に連通する外部管路を設ける場合に、その接合部からの流体漏れを防止する上で有効となる。すなわち、他端側開口と第2貫通孔との位置にズレがある場合には、外部管路の樹脂管を他端側開口に、外部管路の金属管を第2貫通孔にそれぞれ接続させるときに、樹脂製の弁枠体本体が変形した状態に外部管路が取付けられる虞があり、接合部が接合不良となり、流体漏れの発生が招来される。これに対し、請求項7のように他端側開口と第2貫通孔との位置を一致させる構成の場合には、外部管路の樹脂管を他端側開口に、外部管路の金属管を第2貫通孔にそれぞれ一致させることができ、接合部に接合不良が発生せず、流体漏れの発生を防止することができる。
【0022】
請求項8による場合には、Oリングを抜け防止する突起を金属製の第2保持カバーに形成しているので、確実にOリングの抜けを防止することができる。換言すると、樹脂製の弁枠体本体に抜け防止用の突起を形成した場合には、その突起が変形し易くOリングの抜けを防止することができないが、突起を第2保持カバー側に形成することで確実にOリングの抜けを防止することができる。
【0023】
請求項9の本発明の継手による場合には、金属製の保持カバーで接続の際の力を受けるため、樹脂製の弁枠体本体に力が及ぶのを防止して変形を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき具体的に説明する。
【0025】
図1は本発明の弁装置を適用した継手を示す縦断面図であり、中心線(一点鎖線)の右側は閉弁状態を示し、同じく左側は開弁状態を示すように表している。図2はその継手の底面図である。
【0026】
この継手1は、内部流体通路2を有する弁枠体3と、弁枠体3の内部に設けられた軸部材4と、軸部材4の先端部(図の下部)に設けられた弁体5と、軸部材4の途中をスライド自在に支持する軸受6と、軸部材4をスライドさせるスライド機構7とを備える。
【0027】
弁枠体3は、内部流体通路2を内部に有する樹脂製の弁枠体本体10と、3つに分割され、弁枠体本体10を覆う状態に連結される金属製の保持カバー20、21、22と、その保持カバー20〜22の上側に設けられる筒状部材23とを有する。
【0028】
弁枠体本体10は、図3に示すように、合成樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂を用いた一体成形により、上下方向を軸心方向とする概略円筒状に形成されている。弁枠体本体10の内部に設けられた内部流体通路2は、弁枠体本体10の下面の軸心部に配された第1開口11を一端とし、その第1開口11から上方に延び、上下方向の途中に設けられた屈曲部2aから周面に向かうL字状に形成されていて、弁枠体本体10の周面に内部流体通路2の他端である第2開口12が配されている。
【0029】
このようにL字状に形成された内部流体通路2には、屈曲部2aの下側(屈曲部2aの曲率中心側)に弁座13が設けられている(図1参照)。弁座13は、第1開口11と同一軸心状であって、下側半径よりも上側半径が長い円環状に形成されている。弁座13の縦断面形状は、この図示例では直線状になっている。
【0030】
弁枠体本体10の外周における形状は、縦方向に同じであって、水平方向では第2開口12の近傍部分を直線状に、これ以外の部分を円形状に形成されている。つまり、第2開口12の近傍部分は、概略平面状に形成されている。また、弁枠体本体10の第2開口12とは反対側部分には、縦方向(軸心方向)に長い位置決め用の凹溝10aが形成されている(図1および図3参照)。
【0031】
図1に示すように弁枠体本体10における第1開口11とは反対側(図の上側)の上面14であって、屈曲部2aの上側(屈曲部2aの曲率中心とは反対側)には、軸心部に下側へ窪んだ凹部14aが形成され、その凹部14aの底部には、弁体5の挿通を可能にする開口15が形成されている。凹部14aにおける開口15の周辺部は、内部流体通路2へ近づく程に縮径した縮径部分16となっており、この縮径部分16の外周面部分における軸心に沿った形状は、屈曲した状態となっている(図6参照)。なお、縮径部分16の外周面部分における軸心に沿った形状は、湾曲した状態でもよい。
【0032】
上記保持カバー20〜22は、樹脂製の弁枠体本体10の外側を囲むように設けられており、第1保持カバー20は弁枠体本体10における軸部材4の周方向に沿った部分を覆い、第2保持カバー21は弁枠体本体10における軸部材4のスライド方向の下側部分を覆い、第3保持カバー22は弁枠体本体10における軸部材4のスライド方向の上側部分を覆う。
【0033】
これら保持カバー20〜22は、図1および図4に示すように構成される。
第1保持カバー20は、矩形状ブロック20aの軸心部に平面視で円形をした内部空洞20bが形成されるとともに、矩形状ブロック20aの四隅にボルト挿通孔20cが形成されている。また、第1保持カバー20の周面には、前記第2開口12に対応する位置に第2貫通孔20dが設けられるとともに、前記凹溝10aに入る位置決めピン20eが取付けられる。上記第2貫通孔20dは、本実施形態では第2開口12よりも大きい内径に形成されている。
【0034】
第2保持カバー21は、第1保持カバー20の底面と同一の形状かつ寸法で形成されていて、軸心部に第1貫通孔21aが、四隅にはボルト挿通孔21bが形成されている。第1貫通孔21aは、第1開口11に対応する位置に配されていて、本実施形態では第1開口11よりも大きい内径に形成されている。
【0035】
第3保持カバー22は、高さ方向の上側から下側に向けて中径部22a、大径部22b、小径部22cが同心状かつ一体的に設けられている。小径部22cは、第1保持カバー20と第3保持カバー22との軸心を一致させた状態で第1保持カバー20の内部空洞20bに挿入される。その小径部22cには、上記開口15に対応して弁体挿通孔22eがその軸心方向を上下方向に一致させて設けられている。また、大径部22bの下面であって小径部22cよりも外側には、上向きのボルト取付穴22dが軸心回りに4つ形成されている。
【0036】
これら保持カバー20〜22は、図1および図4に示すように、第2保持カバー21と第3保持カバー22との間に第1保持カバー20を挟み込み、第2保持カバー21の下側からボルト挿通孔21b、20cを経て第3保持カバー22のボルト取付穴22dに達するように4本のボルト24を取付けることで連結される。
【0037】
このようにして連結された保持カバー20〜22の内側には、図1に示すように弁枠体本体10が丁度入り得る大きさの内部空間Aが形成され、その内部空間Aには上述した概略円筒状の弁枠体本体10が配置される。この配置に際し、上記凹溝10aに位置決めピン20eを入れるようにすることで、第1保持カバー20に対する弁枠体本体10の角度方向を所定方向に調整することが可能になる。上記内部空間Aと弁枠体本体10の周面との間の隙間は、弁枠体本体10の変形に伴って第1保持カバー20の内周面と接触し、弁枠体本体10の変形を軽減できる寸法に設定される。但し、弁枠体本体10における第2開口12の近傍の概略平面状をした部分では、外部管路25により弁枠体本体10の変形を軽減できるようになっている。
【0038】
上記外部管路25は、弁枠体本体10の第2開口12に連通する状態で第1保持カバー20に取付けられていて、内側の樹脂管26と外側の金属管27とを有する。金属管27の両端にはフランジ27a、27bが設けられ、樹脂管26の両端には鍔26a、26bが設けられている。フランジ27aと鍔26aは第1保持カバー20に近い側のもので、フランジ27bと鍔26bは第1保持カバー20から遠い側のものである。
【0039】
フランジ27bとそれに対応する鍔26bとは面一となるように形成されている。一方の鍔26aは、厚み一定のリング状に別途形成されたもので、樹脂管26の端部に鍔26aの内周部が溶着されている。鍔26aの外周部は樹脂管26の外周面よりも外側に突出しており、その鍔26aの突出部分における鍔26b側には、フランジ27aの端面が当接している。上記鍔26aは、鍔26aの第2開口12側端面における外部管路25の軸心に対する角度を直角に確実に出すことを可能とするもので、弁枠体本体10の第2開口12と鍔26aとの接続部に凹部が形成されることを防ぎ、流体の淀みが発生するのを防止する。
【0040】
フランジ27aの周面は、段付き状に形成されていて、内側の小径部27cは第1保持カバー20に設けた第2貫通孔20aの内側に入り、外側の大径部27dは第2貫通孔20aの周縁部に着脱可能に固定される。その固定により樹脂管26が第2開口12に押圧された状態で連通連結されるようになっており、これにより弁枠体本体10の変形を軽減する。この固定は、金属管27を金属製の第1保持カバー20に対して行うので樹脂管26の位置を規定することを可能となし、これにより樹脂管26と第2開口12との位置をズレ難くして両者間の接続状態を長時間維持することを可能にする。また、外部管路25が着脱可能であるので、その交換やメンテナンスを容易に行うことを可能にする。
【0041】
上記弁枠体本体10の第2開口12の近傍にはOリング35が設けられている。このOリング35は、鍔26aにより弁枠体本体10の第2開口12との接続面積を広くすることが可能となることに伴って、その接続部に配置されている。そのOリング35は上記鍔26aにより弁枠体本体10の軸心側へ押圧されることにより、弁枠体本体10の第2開口12と鍔26aとの接続部の水密性を向上させる。
【0042】
前記第3保持カバー22に設けた前記弁体挿通孔22eには、軸部材4が第1開口11に対して接離する方向(図の上下方向)へスライド可能に設けられていて、軸部材4の先端部(図の下部)には弁体5が取付けられている。弁体5は、軸部材4の先端部に取付けられた金属製の弁体基部17と、その弁体基部17の外側を覆いかつ軸部材4のスライドに伴って弁座13に接触して内部流体通路2を閉にする樹脂製の弁体膜18とを有し、上記開口15から内部流体通路2の内側への進出が可能になっている。
【0043】
上記弁体5を構成する弁体膜18は、第1開口11の周縁に接触して内部流体通路2を閉にする弁頭部18aと、これに繋がる筒状部18bとを有し、筒状部18bの裾部18cが、弁枠体3を構成する弁枠体本体10と第3保持カバー22との間に挟持されている。より詳細には、図6に示すように弁枠体本体10の前記縮径部分16と、第3保持カバー22の外表面に取付けた撓み変形が可能なパッド19との間で、ボルト24の締結力を受けることにより挟持されている。そして、裾部18cの固定には、屈曲した(または湾曲した)縮径部分16を用いているので、裾部18cとの接触面積を増加させることが可能となり、樹脂製の弁枠体本体10が経年変化に伴って劣化しても裾部18cの挟持状態を長期間にわたり維持することとなる。また、上記弁体膜18は、上記開口15を塞ぐように設けられていて、弁体基部17と内部流体通路2との間、軸部材4と内部流体通路2との間、および軸受6と内部流体通路2との間をそれぞれ区分けする。
【0044】
第3保持カバー22と、上記筒状部材23の上端に設けた軸受部材23aとには、軸部材4をスライド自在に支持する前記軸受6が設けられている。また、第3保持カバー22と軸受部材23aとの間には、軸部材4に固定した円環状部材29が配されていて、円環状部材29と軸受部材23aとの間には円環状部材29を下方に押圧付勢するコイルばね30が設けられている。
【0045】
また、第3保持カバー22の内部には、第3保持カバー22と円環状部材29との密封空間31にエアを供給するエア通路32が設けられ、第3保持カバー22と軸部材4と弁体5とで囲まれた箇所には、弁体5の上下スライドを許容する隙間33が設けられ、その隙間33へのエアの出入れを行うエア通路34が設けられている。そして、これら円環状部材29、エア通路32、34およびコイルばね30は、軸部材4をスライドさせる前記スライド機構7を構成する。
【0046】
エア通路32にエアを供給すると、密封空間31が広くなって、円環状部材29がコイルばね30の押圧付勢力に抗して上方に押し上げられ、軸部材4および弁体5が上方へスライドし、弁体5が弁座13から離れて内部流体通路2が開状態となる。このとき、隙間33にはエア通路34を介してエアが排出される。一方、エア通路32からエアを排出すると、密封空間31が狭くなって、円環状部材29がコイルばね30の押圧付勢力により下方に押し下げられ、軸部材4および弁体5が下方へスライドし、弁体5が弁座13に当接して内部流体通路2が閉状態となる。このとき、隙間33にはエア通路34を介してエアが吸引される。
【0047】
内部流体通路2が開状態のとき、ウエハ洗浄液や基板コート剤などの薬品等からなる流体が、内部流体通路2を通流することになる。このとき、第2保持カバー21には、第1開口11に対応する部分に第1貫通孔21aが、第1保持カバー20には第2開口12に対応する部分に第2貫通孔20dがそれぞれ形成されているので、内部流体通路2における流体の流れを邪魔することなく、樹脂製の弁枠体本体10の変形を低減する。
【0048】
上記第2保持カバー21の下面にはOリング36が設けられている。より詳細には、図7に示すように第1貫通孔21aの縁と弁枠体本体10との間であって、第1貫通孔21aの縁から第1貫通孔21aの中心に向かって突出させた突起37により抜け防止された状態で設けられている。このように金属製の第2保持カバー21に突起37を形成したのは、樹脂製の弁枠体本体10に変形のし易い突起37を形成する場合とは異なり、Oリング36を確実に抜け防止するためである。
【0049】
また、相手側の継手1Aとの接続は、上記金属製の第2保持カバー21に当接するようにして行われる。これにより、金属製の保持カバー20、21、22で接続の際の力を受けるため、樹脂製の弁枠体本体10に力が及ぶのを防止して変形を防いでいる。相手側の継手1Aとしては、本実施形態の継手1の構成から上記Oリング36が省略されたものなどを用いることができる。
【0050】
このように構成された本実施形態の継手1による場合には、内部流体通路2に露出する弁枠体本体10と弁体膜18とが樹脂で形成されているので、内部流体通路2を流れる流体への金属イオンの混入を防止することが可能である。特に、弁体膜18の裾部18cを弁枠体3に固定させることで、弁体基部17と内部流体通路2との間、軸部材4と内部流体通路2との間、および軸受6と内部流体通路2との間を樹脂製の弁体膜18にて区分けすることが可能となり、これら弁体基部17、軸部材4および軸受6が金属製であっても、これら金属部分から内部流体通路2を分離させ、相互に摺接する軸部材4および軸受6で発生する金属粉などが内部流体通路2へ混入することを防止する。
【0051】
また、本実施形態においては、樹脂からなり変形の容易な弁枠体本体10における軸部材4の周方向に沿った部分だけでなく、弁枠体本体10における軸部材4のスライド方向の両側部分も金属製の保持カバー20〜22で保持して弁枠体3を構成しているので、弁枠体3における軸部材4のスライド方向での変形を防止でき、これにより弁枠体3における軸部材4のスライド方向長さを短くすることができる。
【0052】
更に、本実施形態においては、第1保持カバー20と弁枠体本体10とに両者の周方向での位置を決める位置決め手段(凹溝10aと位置決めピン20e)が設けられているので、弁枠体本体10の第2開口12と第1保持カバー20の第2貫通孔20dとの位置を一致させることが可能になる。特に、第2開口12に連通する外部管路25を設ける場合に、その接合部からの流体漏れを防止する上で有効となる。すなわち、第2開口12と第2貫通孔20dとの位置がズレている場合には、外部管路25の樹脂管26を第2開口12に、外部管路25の金属管27を第2貫通孔20dにそれぞれ接続させるときに、樹脂製の弁枠体本体10が変形した状態に外部管路25が取付けられる虞があり、接合部が接合不良となり、流体漏れの発生が招来される。これに対し、本実施形態のように第2開口12と第2貫通孔20dとの位置を一致させる構成の場合には、外部管路25の樹脂管26を第2開口12に、外部管路25の金属管27を第2貫通孔20dにそれぞれ一致させることができ、接合部に接合不良が発生せず、流体漏れの発生を防止することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、保持カバーを3つに分割した構成としているが、本発明はこれに限らない。例えば、第1保持カバーと第2保持カバーとを一体化し、これを第3保持カバーに連結する構成、或いは、第1保持カバーと第3保持カバーとを一体化し、これを第2保持カバーに連結する構成、つまり2つに分割した構成としてもよく、更には、3つに分解するタイプであっても別の箇所で連結する構成としてもよく、或いは4以上に分割する構成としてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、スライド機構として空気アクチュエータとばねを用いた構成を採っているが、本発明はこれに限らず、電磁石或いは手動ハンドル等の公知手段などが用いられる。
【0055】
更に、本発明の弁装置および継手は、上述した半導体分野で使用されるウエハ洗浄液や基板コート剤などの薬品に限らず、清浄性が要求される食品等の流体に対しても適用されることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の弁装置を適用した継手を示す縦断面図である。
【図2】図1の継手の底面図である。
【図3】弁枠体本体を示す外観斜視図である。
【図4】保持カバーの分解斜視図である。
【図5】弁枠体本体と第1保持カバーとの位置決めの説明図(平面図)である。
【図6】弁体膜の裾部の固定状態を示す縦断面図である。
【図7】相手側継手との接続状態を説明するための図(正面図)である。
【図8】特許文献1の説明図(縦断面図)である。
【符号の説明】
【0057】
1 継手
1A 相手側の継手
2 内部流体通路
2a 屈曲部
3 弁枠体
4 軸部材
5 弁体
6 軸受
7 スライド機構
10 弁枠体本体
10a 凹溝(位置決め手段)
11 第1開口(一端側の開口)
12 第2開口(他端側の開口)
13 弁座
16 縮径部分
17 弁体基部
18 弁体膜
18a 弁頭部
18b 筒状部
18c 裾部
20、21、22 保持カバー
20d 第2貫通孔
20e 位置決めピン(位置決め手段)
21a 第1貫通孔
22e 弁体挿通孔
25 外部管路
26 樹脂管
26a 鍔
27 金属管
36 Oリング
37 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
途中で屈曲し、その屈曲部および両端に開口が設けられた内部流体通路と、該内部流体通路の一端側に設けられた弁座とを有する弁枠体と、
該弁枠体に、上記内部流体通路の屈曲部と一端側開口とを結ぶ方向へスライド可能に設けられた軸部材と、
該軸部材の先端部に、上記屈曲部の開口から内部流体通路内へ進出可能に設けられた弁体とを備え、
上記弁枠体は、上記内部流体通路を有する樹脂製の弁枠体本体と、少なくとも2つに分割され、上記弁枠体本体を覆う状態に連結される金属製の保持カバーとを有し、その保持カバーが連結された状態で弁枠体本体における軸部材のスライド方向の両側部分と軸部材の周方向に沿った部分とを覆う構成となっており、
上記弁体は、上記軸部材の先端部に取付けられる金属製の弁体基部と、この弁体基部の外側を覆いかつ上記屈曲部の開口を塞ぐ樹脂製の弁体膜とを有することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記保持カバーは、前記内部流体通路の一端側の開口に対応する部分に第1貫通孔が、前記内部流体通路の他端側の開口に対応する部分に第2貫通孔が、前記内部流体通路の屈曲部の開口に対応する部分に弁体挿通孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
内側の樹脂管と外側の金属管とを有する外部管路を備え、上記外部管路は、前記樹脂管が前記他端側の開口に連通するように、上記金属管が前記保持カバーにおける第2貫通孔の周縁部に取付けられることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載の弁装置において、
前記樹脂管の前記弁枠体本体側の端部には、樹脂製の鍔が溶着されていることを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の弁装置において、
前記弁体膜は、前記弁座に接離する弁頭部と、これに繋がる筒状部とを有し、該筒状部の裾部が前記弁枠体に固定されることを特徴とする弁装置。
【請求項6】
請求項5に記載の弁装置において、
前記筒状部の裾部は、前記弁枠体本体と保持カバーとの間に挟持されていて、弁枠体本体と保持カバーとにおける裾部を挟持する部分が内部流体通路へ近づく程に縮径する縮径部を有することを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載の弁装置において、
前記保持カバーは、前記弁枠体本体における前記軸部材の周方向に沿った部分を覆い、かつ前記第2貫通孔を有する第1保持カバーを備え、弁枠体本体に対する第1保持カバーの周方向位置を決める位置決め手段が設けられていることを特徴とする弁装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれかに記載の弁装置において、
前記保持カバーは、前記弁枠体本体における前記軸部材のスライド方向の片側部分であって前記第1貫通孔を有する第2保持カバーを備え、その第2保持カバーの第1貫通孔の縁と弁枠体本体との間にOリングが、上記第1貫通孔の縁から第1貫通孔の中心に向かって突出させた突起により抜け防止された状態で、設けられていることを特徴とする弁装置。
【請求項9】
請求項8に記載の弁装置を用いた継手において、
前記第2保持カバーを相手側継手に当接して両継手が接続される構成となっていることを特徴とする継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−111525(P2008−111525A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296276(P2006−296276)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(598174923)大阪サニタリー金属工業協同組合 (6)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】