説明

弾性波デバイス

【課題】歩留まりを低下させずに、モジュール化の際の圧力で変形しない中空構造を得ること。
【解決手段】本発明は、圧電基板10上に設けられた弾性波素子12上に空洞部16を有するように設けられた感光性樹脂の第1封止部26と、第1封止部上に設けられた感光性樹脂の第2封止部28と、第2封止部上に設けられた外部接続部22と、第1封止部及び第2封止部を貫通して第1封止部及び第2封止部に直接接し、弾性波素子と外部接続部を電気的に接続させる柱状電極20と、を具備し、第1封止部は、基板側の幅が反対側の幅よりも広くなる段差を有するように、弾性波素子の機能部分を囲うように設けられた第3封止部30と、機能部分上に空洞部を形成するように第3封止部上に設けられた第4封止部32と、を有し、第3封止部の幅が第4封止部の幅よりも広く、第2封止部は、第1封止部の段差の部分を含んで第1封止部に直接接している弾性波デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイスに関し、より詳細には弾性波素子の上部に空洞部を有する封止部を備えた弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を利用した弾性波デバイスの1つとして、圧電基板の表面に形成したIDT(Interdigital Transducer)からなる櫛型電極を備え、この櫛型電極に電力を印加することで励振した弾性波を用いる弾性表面波デバイスは良く知られている。この弾性表面波デバイスは、例えば45MHz〜2GHzの周波数帯域における無線信号を処理する各種回路、例えば送信用バンドパスフィルタ、受信用バンドパスフィルタやアンテナ共用器等に広く用いられている。
【0003】
また、最近では圧電薄膜の表裏に一対の電極を形成しその厚み振動を利用する圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)を用いた弾性波デバイスも開発されている。圧電薄膜共振器を用いた弾性波デバイスは特に高周波数帯域での特性が良好であることから、例えば1GHz〜10GHzの周波数帯域で用いられている。
【0004】
近年、特に移動体通信分野の進歩はめざましいものがあり、これらに用いられる信号処理機器は小型化が進み、合わせて弾性波デバイスの電子部品も小型化が求められている。同時に、弾性波素子の特性を維持するために、弾性波素子の機能部分(弾性表面波素子:IDTの電極指、圧電薄膜共振器素子:圧電薄膜を挟みこむ上下電極の重なる領域)上に空洞部を設ける必要がある。
【0005】
このような要求を満たすために、弾性波素子の機能部分上に空洞部を有する封止部を設けた構造(いわゆる中空構造)を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、弾性波素子上に空洞となるべき領域に溶解用樹脂を形成し、溶解用樹脂上に上部板を形成した後、溶解用樹脂を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例1)が開示されている。特許文献2には、電気的構造素子を包囲するフレーム構造体を形成し、電気的構造素子上が空洞になるように、フレーム構造体上に補助フィルムを貼り、その上に樹脂層を形成し、フレーム構造体の屋根部分以外を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例2)が開示されている。特許文献3には、弾性波素子を形成した圧電基板上に樹脂フィルムを貼り、弾性波素子が複数設けられた基板の機能部分上部の樹脂フィルムを開口し、樹脂フィルム上に回路基板を密着し中空構造を形成する方法(従来例3)が開示されている。特許文献4には、弾性波素子を複数設けた基板上に感光性樹脂を形成し、弾性波素子の機能部分上の感光性樹脂を開口し、その上に配線基板集合体の基板を実装し、ダイシングで分割することにより中空構造を形成する方法(従来例4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3291046号公報
【特許文献2】特表2003−523082号公報
【特許文献3】特許3196693号公報
【特許文献4】特許3225906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例1から4の方法で形成された弾性波デバイスは、モジュール化の際に加わる圧力に対し耐えられず、中空構造の天井部が凹んでしまう。この課題を解決する方法として、中空構造の天井部の厚さを厚くする方法が考えられる。しかしながら、樹脂を用いて形成した中空構造の天井部上にさらに樹脂を形成すると、歩留まりが低下するという課題が新たに生じる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、歩留まりを低下させずに、モジュール化の際の圧力で変形しない中空構造を有する弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板上に設けられた弾性波素子と、前記弾性波素子上に空洞部を有するように前記基板上に設けられた感光性樹脂からなる第1封止部と、前記第1封止部上に設けられた感光性樹脂からなる第2封止部と、前記第2封止部上に設けられた外部接続部と、前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通して、前記第1封止部及び前記第2封止部に直接接し、前記弾性波素子と前記外部接続部とを電気的に接続させる柱状電極と、を具備し、前記第1封止部は、前記基板側の幅が前記基板に反対側の幅よりも広くなるような段差を有するように、前記弾性波素子の機能部分を囲うように前記基板上に設けられた第3封止部と、前記機能部分上に空洞部を形成するように前記第3封止部上に設けられた第4封止部と、を有し、前記第3封止部の幅は前記第4封止部の幅よりも広く、前記第2封止部は、前記第1封止部の前記段差の部分を含んで前記第1封止部に直接接していることを特徴とする弾性波デバイスである。本発明によれば、第2封止部の剥離を防止することができるため、歩留まりを低下させずに、モジュール化の際の圧力で変形しない中空構造を有する弾性波デバイスを提供することができる。
【0010】
上記構成において、前記段差の形状は階段形状またはラウンド形状である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1封止部は、前記弾性波素子の機能部分を囲うように前記基板上に設けられた第3封止部と、前記機能部分上に空洞部を形成するように前記第3封止部上に設けられた第4封止部と、を有し、前記第3封止部の幅が前記第4封止部の幅より広い構成とすることができる。この構成によれば、段差を有する第1封止部を容易に形成することができる。
【0012】
上記構成において、前記第3封止部の表面と前記第4封止部の側面との前記第4封止部側のなす角度は鋭角である構成とすることができる。また、上記構成において、前記第3封止部の表面と前記第4封止部の側面との前記第4封止部側のなす角度は鈍角である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記基板の表面と前記第3封止部の側面との前記第3封止部側のなす角度は鋭角である構成とすることができる。この構成によれば、第2封止部と基板との接触面積が大きくなるため、第2封止部と基板との密着力を向上させることができる。
【0014】
上記構成において、前記第3封止部は前記第4封止部との接触面が平面状である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第3封止部は前記第4封止部との接触面に凸凹を有する構成とすることができる。この構成によれば、第3封止部と第4封止部との接触面積が大きくなるため、第3封止部と第4封止部との密着力を向上させることができる。
【0016】
上記構成において、前記第1封止部および前記第2封止部は感光性樹脂からなる構成とすることができる。この構成によれば、第1封止部および第2封止部の形成を容易に行うことができる。また、上記構成において、前記第2封止部の端面は、前記基板上で且つ前記基板の端面よりも内側に位置している
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、段差を有する第1封止部上に第2封止部を設けることにより、第2封止部の剥離を防止することができるため、歩留まりを低下させずに、モジュール化の際の圧力で変形しない中空構造を有する弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)は比較例1に係る弾性波デバイスの上視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A間の断面図であり、図1(c)は図1(a)のB−B間の断面図である。
【図2】図2(a)から図2(f)は比較例1に係る弾性波デバイスの製造工程を示す断面図である。
【図3】図3は比較例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
【図4】図4は比較例3に係る弾性波デバイスの断面図である。
【図5】図5はウエハの反りの影響による課題を説明するための図(その1)である。
【図6】図6はウエハの反りの影響による課題を説明するための図(その2)である。
【図7】図7(a)は実施例1に係る弾性波デバイスの上視図であり、図7(b)は図7(a)のA−A間の断面図であり、図7(c)は図7(a)のB−B間の断面図である。
【図8】図8(a)から図8(f)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
【図9】図9(a)から図9(f)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
【図10】図10(a)から図10(f)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その3)である。
【図11】図11(a)から図11(f)は実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その4)である。
【図12】図12はラウンド形状を説明するための図である。
【図13】図13は第3封止部と第4封止部の接触面が凸凹をした形状をしている場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず発明者が従来例1から4の課題を明確にするために行った実験について説明する。図1(a)から図1(c)は感光性樹脂を用いて中空構造を形成した弾性波デバイス(比較例1)である。図1(a)は上視図、図1(b)は図1(a)のA−A間の断面図、図1(c)は図1(a)のB−B間の断面図である。なお、図1(a)は第1封止部26を透視して弾性波素子12、配線14および空洞部16を図示し、弾性波素子12および配線14は実線、空洞部16は破線で示している。図1(a)および図1(b)を参照に、圧電基板10表面に金属膜で形成されたIDT、反射器等からなる弾性波素子12が設けられ、さらに圧電基板10上には弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を有する第1封止部26が設けられている。第1封止部26は弾性波素子12の機能部分を囲うように圧電基板10上に設けられた第3封止部30と、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を形成するように第3封止部30上に設けられた第4封止部32とで構成されている。なお、第1封止部26の高さは60μm、空洞部16の高さは30μmである。
【0020】
図1(a)および図1(c)を参照に、圧電基板10表面に配線14および電極パッド24が形成され、配線14上に第1封止部26が設けられている。第1封止部26を貫通する貫通電極20が電極パッド24上に設けられ、弾性波素子12と貫通電極20とは配線14および配線14上の電極パッド24により接続されている。貫通電極20上にはハンダボール22が設けられている。これにより、貫通電極20およびハンダボール22は弾性波デバイスを表面実装する際、弾性波素子12を外部に電気的に接続する端子部として機能する。このように、弾性波素子12は中空構造を有する第1封止部26で封止され、配線14および貫通電極20を介しハンダボール22に接続されている。
【0021】
図2(a)から図2(f)を参照に、比較例1に係る弾性波デバイスの第1封止部26の形成工程を説明する。図2(a)から図2(c)は図1(a)のA−A間に相当する箇所の断面図であり、図2(d)から図2(f)は図1(a)のB−B間に相当する箇所の断面図である。図2(a)および図2(d)を参照に、弾性波素子12、配線14および電極パッド24が形成された圧電基板10上に、ネガ型感光性エポキシ樹脂を30μmの膜厚になるようにスピンコート法を用い塗布する。その後乾燥する。露光現像することで、弾性波素子12上および電極パッド24上のネガ型感光性エポキシ樹脂を除去する。これにより、弾性波素子12の機能部分上に開口部36および電極パッド24上に開口部42が形成され、これにより、弾性波素子12の機能部分を囲うように第3封止部30が形成される。さらに、約200℃の窒素雰囲気中で約1時間加熱し、第3封止部30を硬化させる。
【0022】
図2(b)および図2(e)を参照に、開口部36および42を保持するように、厚さが30μmのフィルム状のネガ型感光性エポキシ樹脂をラミネート法を用い貼り付ける。これにより、弾性波素子12の機能部分上に蓋がされ、開口部36は空洞部16に開口部42は空洞部44になる。図2(c)および図2(f)を参照に、露光現像することで、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16が形成されるように第3封止部30上に第4封止部32が形成される。また、電極パッド24上には貫通電極20を形成すべき開口部42も形成される。さらに、約200℃の窒素雰囲気中で約1時間加熱し、第4封止部32を硬化させる。これにより、比較例1に係る弾性波デバイスの第1封止部26の形成が完成する。
【0023】
比較例1に係る弾性波デバイスをモジュール用基板に実装し表面保護用の樹脂をトランスファーモールドしたところ、中空構造の天井部が圧力で凹んでしまい、第1封止部26が弾性波素子12の機能部分に接触することが判明した。
【0024】
次に、図3に示すような、第3封止部30の幅が狭い弾性波デバイス(比較例2)を作製した。図3は図1(a)のA−A間に相当する箇所の断面図である。図3を参照に、比較例2は第3封止部30の幅t1が30μmである。その他の構成については比較例1と同じであり、図1(a)から図1(c)に示しているので説明を省略する。
【0025】
比較例2に係る弾性波デバイスは、図3に示すように、第3封止部30の幅t1が30μmと細いため、第3封止部30と第4封止部32との接触面積が小さい。このため、第3封止部30と第4封止部32との密着が不十分となり、図2(c)に示す第4封止部32の形成工程中の現像により、現像液が第3封止部30と第4封止部32との界面から中空構造内に進入してしまう。これにより、弾性波素子12の機能部分(IDTからなる電極指)が現像液により汚染され、特性不良が発生することが判明した。
【0026】
比較例2より、第3封止部30と第4封止部32との接触面積は大きくする必要がある。図4は第3封止部30と第4封止部32との接触面積を大きくした比較例3に係る弾性波デバイスの断面図である。図4を参照に、比較例3は第3封止部30の幅t1が80μmになっている。その他の構成については比較例1と同じであり図1(a)から図1(c)に示しているので説明を省略する。
【0027】
比較例3は比較例2に比べて圧電基板10のウエハ内に占める第3封止部30の面積が大きくなる。このため、図2(a)および図2(d)に示すような第3封止部30の形成工程中の加熱により、第3封止部30に生じる圧縮力が比較例3は比較例2に比べて大きくなる。これにより、比較例3は比較例2に比べてウエハに大きな反りが発生する。圧電基板10が4インチウエハである場合、この反り量は最大2.5mmである。反りが発生しているウエハに、図2(c)に示すような第4封止部32の形成工程である露光を行うと、反りの影響が大きいウエハ外周部では紫外線(UV光)がウエハに対して斜めに照射されてしまい、図5に示すように、第4封止部32のパターンが第3封止部30のパターンに対してずれて形成されてしまう。また、ウエハ外周部に行くほど反りの影響が大きくなるため、第4封止部32のパターンのずれもウエハ外周部に行くほど必然的に大きくなる。
【0028】
図5に示すように、第4封止部32のパターンが第3封止部30のパターンに対してずれている弾性波デバイスでは、第3封止部30と第4封止部32との接触面積が小さい領域Aが発生してしまう。このため、比較例2で説明したように第4封止部32の形成工程中の現像で、現像液が中空構造内に進入し弾性波素子12の機能部分(IDTからなる電極指)が汚染され特性不良が発生してしまう。4インチウエハの場合、現像液が中空構造内に進入しない領域、つまり特性が良好な領域はウエハの中心から90mmの領域である。
【0029】
また、図5に示すように、第4封止部32のパターンが第3封止部30のパターンに対してずれているため、第4封止部32が庇となる領域Bが発生する。この状態で、モジュール化の際の圧力で中空構造の天井部が凹まないよう、第1封止部26を強化する目的で第1封止部26上に第2封止部28の形成を行うと、庇となっている領域Bは露光において紫外線(UV光)が照射されず、図6に示すように、現像によって空洞部16aが発生してしまう。この空洞部16aのため第2封止部28と圧電基板10との接触面積が小さくなり、第2封止部28と圧電基板10との密着力が低下してしまう。このため、第2封止部28が剥離してしまう現象が発生する。4インチウエハの場合、第2封止部28が剥離しない領域、つまり良品領域はウエハの中心から70mmの領域である。このように、第1封止部26上に第2封止部28を設けることで、歩留まりが低下するという課題が生じる。
【0030】
以下、上記課題を解決するための実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
図7(a)は実施例1に係る弾性波デバイスの上視図である。図7(b)は図7(a)のA−A間の断面図、図7(c)は図7(a)のB−B間の断面図である。なお、図7(a)において、第1封止部26および第2封止部28を透視して弾性波素子12、配線14および空洞部16を図示し、弾性波素子12および配線14は実線、空洞部16および第1封止部26は破線で示している。
【0032】
図7(a)および図7(b)を参照に、圧電基板10表面に金属膜で形成されたIDT、反射器等からなる弾性波素子12が設けられている。圧電基板10上に、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を有する第1封止部26が設けられている。第1封止部26は、弾性波素子12の機能部分を囲うように圧電基板10上に設けられた第3封止部30と、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を有するように第3封止部30上に設けられた第4封止部32と、で構成されている。第3封止部30の幅は第4封止部32の幅より広く、これにより第3封止部30と第4封止部32とは段差を有している。つまり、第3封止部30の側面P1は第4封止部32の側面P2より突出していて、第3封止部30と第4封止部32とは階段形状をした段差を有している。よって、第1封止部26は圧電基板10側の幅t2が圧電基板10に反対側の幅t3より広くなるような段差を有している。圧電基板10の表面と第3封止部30の側面との第3封止部30側のなす角度θ1は直角である。第3封止部30の表面と第4封止部32の側面との第4封止部32側のなす角度θ2も直角である。第3封止部30は第4封止部32との接触面が平面状をしている。第1封止部26上に第2封止部28が設けられている。なお、第3封止部30の高さは30μm、第4封止部32の高さは30μm、第2封止部28の高さは30μmである。また、第3封止部30と第4封止部32との接触面の幅t4は40μm以上、第4封止部32に接していない第3封止部30の幅t5は30μm以下である。
【0033】
図7(a)および図7(c)を参照に、圧電基板10表面に配線14および電極パッド24が形成され、配線14上に第1封止部26と第2封止部28とが設けられている。第1封止部26と第2封止部28とを貫通する貫通電極20が電極パッド24上に設けられ、弾性波素子12と貫通電極20とは配線14および配線14上の電極パッド24により接続されている。貫通電極20上にはハンダボール22が設けられている。これにより、貫通電極20およびハンダボール22は弾性波デバイスを表面実装する際、弾性波素子12を外部に電気的に接続する端子部として機能する。
【0034】
次に、図8(a)から図11(f)を用い、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。なお、図8(a)から図8(c)、図9(a)から図9(c)、図10(a)から図10(c)並びに図11(a)から図11(c)は図7(a)のA−A間に相当する箇所における製造工程を示した断面図である。図8(d)から図8(f)、図9(d)から図9(f)、図10(d)から図10(f)並びに図11(d)から図11(f)は図7(a)のB−B間に相当する箇所における製造工程を示した断面図である。また、図8(a)から図11(f)は、ウエハ状態の圧電基板10を用いて行われる製造工程であり、複数の弾性波デバイスとなるべき領域がウエハ上に存在するが、複数の弾性波デバイスのうち1つの弾性波デバイスとなるべき領域を図示して説明する。そして、図11(c)および図11(f)において、周辺領域をダイシングで分離することにより、ウエハ上に形成された複数の弾性波デバイスがそれぞれ1つに分離される。
【0035】
図8(a)および図8(d)を参照に、LiNbO(ニオブ酸リチウム)あるいはLiTaO(タンタル酸リチウム)等からなる圧電基板10表面にAl(アルミニウム)やCu(銅)等を用い金属膜を形成し、弾性波素子12および配線14を形成する。配線14上に貫通電極20を形成すべき領域に電極パッド24を形成する。図8(b)および図8(e)を参照に、圧電基板10、弾性波素子12および配線14上にネガ型感光性エポキシ樹脂である第1樹脂膜31をスピンコート法により30μm塗布しベークする。図8(c)および図8(f)を参照に、マスクを用い紫外線(UV光)を弾性波素子12の機能部分上の空洞部16を形成すべき領域、電極パッド24上の貫通電極20を形成すべき領域および周辺領域、以外の領域の第1樹脂膜31に照射する。
【0036】
図9(a)および図9(d)を参照に、第1樹脂膜31を現像することで紫外線(UV光)を照射していない領域の第1樹脂膜31を除去する。これにより、弾性波素子12の機能部分上の空洞部16となるべき箇所に開口部36が形成され、弾性波素子12の機能部分の周囲に第3封止部30が形成される。また、電極パッド24上には開口部42が形成される。窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理することで第3封止部30を硬化させる。図9(b)および図9(e)を参照に、開口部36および42を保持するように、保護フィルム40に塗られたフィルム状のネガ型感光性エポキシ樹脂である厚さ30μmの第2樹脂膜33をラミネータ等の押し付けロール38を用い、第3封止部30上に押し付け貼り付ける。これにより、弾性波素子12の機能部分上に蓋がされ、開口部36は空洞部16に開口部42は空洞部44になる。図9(c)および図9(f)を参照に、マスクを用い紫外線(UV光)を照射する。
【0037】
図10(a)および図10(d)を参照に、保護フィルム40を剥がし、現像することにより紫外線(UV光)を照射していない領域の第2樹脂膜33を除去する。これにより、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を形成するように第3封止部30上に第4封止部32が形成される。また、電極パッド24上には開口部42が形成される。窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理することで第4封止部32を硬化させる。これにより、第3封止部30と第4封止部32とからなり、弾性波素子12上に空洞部16を有し、圧電基板10側の幅t2が圧電基板10に反対側の幅t3より広くなるような段差を有する第1封止部26が形成される。図10(b)および図10(e)を参照に、第1封止部26を覆うように、ネガ型感光性エポキシ樹脂である厚さ30μmの第3樹脂膜35を形成する。第3樹脂膜35は例えばフィルム状であり、真空ラミネートまたは真空プレス法を用い形成する。また、第3樹脂膜35は液状でスピンコート法により形成してもよい。図10(c)および図10(f)を参照に、マスクを用い電極パッド24上の領域および周辺領域、以外の領域に紫外線(UV光)を照射する。
【0038】
図11(a)および図11(d)を参照に、現像することにより紫外線(UV光)を照射していない領域の第3樹脂膜35を除去する。これにより、第1封止部26上に第2封止部28が形成される。窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理することで第2封止部28を硬化させる。第2封止部28は電極パッド24上に開口部42を有している。また、周辺領域には第2封止部28は形成されていない。図11(b)および図11(e)を参照に、開口部42内にNi(ニッケル)、CuまたはAu(金)等を無電解メッキし導電性の貫通電極20を形成する。貫通電極20は銀ペースト等の導電性物質を印刷で開口部42内に充填する方法で形成してもよい。図11(c)および図11(f)を参照に、貫通電極20上に、貫通電極20に接続するハンダボール22をSnAgハンダボールの搭載もしくはSnAgハンダペーストをマスク印刷、リフローすることにより形成する。以上により、弾性波素子12と電気的に接続する貫通電極20およびハンダボール22が形成される。その後、周辺領域で圧電基板10をダイシングにより切断する。以上により、実施例1に係る弾性波デバイスが完成する。
【0039】
実施例1によれば、図7(b)に示すように、第1封止部26は圧電基板10側の幅t2が圧電基板10に反対側の幅t3に比べて広くなるような段差を有している。これにより、圧電基板10のウエハの反りの影響によりウエハ周辺部で第4封止部32のパターンが第3封止部30のパターンに対してずれた場合でも、図5に示す比較例3のように、第4封止部32が庇となる領域Bは発生しない。このため、第1封止部26上に第2封止部28を形成した場合に、比較例3に比べてウエハ周辺部で第2封止部28と圧電基板10との接触面積が大きくなり、第2封止部28の密着力が向上し剥離を抑制することができる。したがって、実施例1では比較例3よりも歩留まりを向上させることができる。また、第1封止部26上に第2封止部28が設けられているため、実施例1に係る弾性波デバイスをモジュール化しても、モジュール化の際の圧力で弾性波素子12の機能部分上の第1封止部26および第2封止部28の天井部が凹むことを防ぐことができる。
【0040】
また、図7(b)に示すように、第1封止部26は、弾性波素子12の機能部分を囲うように圧電基板10上に設けられた第3封止部30と、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を形成するように第3封止部30上に設けられた第4封止部32と、を有している。また、第3封止部30の幅は第4封止部32の幅より広く、このため、第3封止部30と第4封止部32とは段差を有している。これにより、圧電基板10側の幅t2が圧電基板10の反対側の幅t3に比べて広くなるような段差を有する第1封止部26を容易に形成することができる。
【0041】
さらに、図7(b)に示すように、第3封止部30と第4封止部32との接触面の幅t4は40μm以上である。この場合は、ウエハの反りの影響により第4封止部32のパターンが第3封止部30のパターンに対してずれた場合でも、第3封止部30と第4封止部32との接触面の幅t4を十分確保することができる。このため、第4封止部32の形成工程の現像において、第3封止部30と第4封止部32との界面から現像液が空洞部16内に進入することを防止できる。また、第4封止部32に接していない第3封止部30の幅t5は30μm以下である。弾性波デバイスの小型化という点から第4封止部32に接していない第3封止部30の幅t5は30μm以下である場合が好ましい。
【0042】
さらに、図7(a)および図7(c)に示すように、第3封止部30と第4封止部32とからなる第1封止部26は、弾性波素子12の機能部分上に空洞部16を形成すべき領域以外の領域、例えば貫通電極20の周辺の領域にも形成されている場合を例に示した。しかしながら、第1封止部26は貫通電極20の周辺の領域等に形成されていなくてもよい。これにより、第1封止部26のウエハに占める面積が小さくなるため、第1封止部26の熱処理により生じる第1封止部26の圧縮力を抑えることができ、ウエハの反り量を緩和することができる。同様の理由から、貫通電極20の周辺の領域に第3封止部30のみ形成され、第4封止部32が形成されていない場合でもよい。
【0043】
さらに、図7(b)に示すように、第1封止部26に設けられた段差の形状が階段形状をしている場合、つまり、第3封止部30の側面と表面および第4封止部32の側面と表面はそれぞれ平面からなる場合を例に示した。しかしながら、図12に示すような、第3封止部30の側面と表面との角および第4封止部の側面と表面との角の少なくとも一方の角が丸くなったラウンド形状をしている場合でもよい。この場合でも、歩留まりが向上し、モジュール化の際の圧力で弾性波素子12の機能部分上の第1封止部26および第2封止部28の天井部が凹まない弾性波デバイスを得ることができる。
【0044】
さらに、図7(b)に示すように、第3封止部30の表面と第4封止部32の側面との第4封止部32側のなす角度θ2は直角である場合を例に示したが、鋭角や鈍角の場合でもよい。しかしながら、鈍角の角度が大きくなりすぎると、庇となる領域が発生し、第2封止部28の形成工程で第2封止部28が形成されない領域が発生してしまう。このため、第2封止部28の密着力が低下し、剥離が発生しやすくなってしまう。よって、第3封止部30の表面と第4封止部32の側面との第4封止部32側のなす角度θ2は直角、鋭角またはわずかな鈍角であることが好ましい。
【0045】
さらに、図7(b)に示すように、圧電基板10の表面と第3封止部30との第3封止部30側のなす角度θ1は直角である場合を示したが、これに限らず、鋭角である場合でもよい。この場合でも、第1封止部26により庇となる領域が発生しないため、第2封止部28と圧電基板10との接触面積を大きくすることができる。よって、第2封止部28の密着性を向上させることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0046】
さらに、図7(b)に示すように、第3封止部30は第4封止部32との接触面が平面状である場合を例に示したが、図13に示すような、凸凹を有している場合でもよい。凸凹を有している場合は、第3封止部30と第4封止部32との接触面積が大きくなるため、第3封止部30と第4封止部32との密着力を向上させることができる。なお、凸凹の形状は、所望の凸凹のパターンを有するマスクを用いて、第3封止部30を露光現像することで形成することができる。
【0047】
さらに、図7(b)に示すように、第1封止部26は第3封止部30と第4封止部32とにより段差が1段設けられている場合を示したが、これに限らず、複数の段差が設けられている場合でもよい。この場合でも、第2封止部28の剥離を防止することができるため、歩留まりを向上させることができる。
【0048】
実施例1において第1封止部26および第2封止部28は感光性エポキシ樹脂である場合を例に示したが、これに限らず、弾性波素子12の機能部分を保護できればその他の材料でもよい。しかしながら、段差を有する第1封止部26や第1封止部26上に形成する第2封止部28を容易に形成することができるため、感光性ポリイミド樹脂等、感光性樹脂である場合が好ましい。
【0049】
また、実施例1において、弾性波素子12は圧電基板10上に形成された弾性表面波(SAW)素子の場合を例に示したが、例えばシリコン基板等の基板上に形成した圧電膜に形成されたSAW素子の場合でもよい。また、圧電薄膜共振器(FBAR)素子を用いることもできる。FBAR素子を用いる場合、基板は圧電基板ではなく、例えばシリコン基板、ガラス基板、サファイア基板等を用い、FBARは基板上の圧電膜を用い形成される。
【0050】
さらに、実施例1において図7(a)に示すように、弾性波素子12および空洞部16はそれぞれ2つづつ形成されている場合を示したが、これらの数に限られるものではない。また、実施例1において、端子部として貫通電極20およびハンダボール22の場合を例に説明したが、表面実装のために外部と電気的に接続するためのものであれば良く、例えばAu、Cu等の金属を用いたバンプであっても良い。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 圧電基板
12 弾性波素子
14 配線
16、16a 空洞部
20 貫通電極
22 ハンダボール
24 電極パッド
26 第1封止部
28 第2封止部
30 第3封止部
31 第1樹脂膜
32 第4封止部
33 第2樹脂膜
35 第3樹脂膜
36 開口部
38 押し付けロール
40 保護フィルム
42 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた弾性波素子と、
前記弾性波素子上に空洞部を有するように前記基板上に設けられた感光性樹脂からなる第1封止部と、
前記第1封止部上に設けられた感光性樹脂からなる第2封止部と、
前記第2封止部上に設けられた外部接続部と、
前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通して、前記第1封止部及び前記第2封止部に直接接し、前記弾性波素子と前記外部接続部とを電気的に接続させる柱状電極と、を具備し、
前記第1封止部は、前記基板側の幅が前記基板に反対側の幅よりも広くなるような段差を有するように、前記弾性波素子の機能部分を囲うように前記基板上に設けられた第3封止部と、前記機能部分上に空洞部を形成するように前記第3封止部上に設けられた第4封止部と、を有し、前記第3封止部の幅が前記第4封止部の幅よりも広く、
前記第2封止部は、前記第1封止部の前記段差の部分を含んで前記第1封止部に直接接していることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記段差の形状は階段形状またはラウンド形状であることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第3封止部の表面と前記第4封止部の側面との前記第4封止部側のなす角度は鋭角であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記第3封止部の表面と前記第4封止部の側面との前記第4封止部側のなす角度は鈍角であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記基板の表面と前記第3封止部の側面との前記第3封止部側のなす角度は鋭角であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第3封止部は前記第4封止部との接触面が平面状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記第3封止部は前記第4封止部との接触面に凸凹を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記第2封止部の端面は、前記基板上で且つ前記基板の端面よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の弾性波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−239236(P2012−239236A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191871(P2012−191871)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2007−12100(P2007−12100)の分割
【原出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】