説明

情報収集方法、情報収集システム、及び情報収集用のプログラム

【課題】不良の原因を特定するために必要な情報のみを収集することにより、迅速な工程改善を行う。
【解決手段】本発明は、素材としてのプリント基板に対して半田ペースト印刷処理、部品実装処理及びリフロー処理を行う部品実装ラインにおける情報収集システムであって、データ管理装置8を有する。このデータ管理装置8は、各処理の処理条件に関するプロセス情報を製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置に記憶させ、生産された製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する全プロセス情報を記憶装置から削除し、それ以外を保持させる機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集方法、情報収集システム、及び情報収集用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、表面実装方式の電子回路基板の製造は、回路を形成した素材としてのプリント基板に印刷機によってクリーム半田を印刷し、ここに必要な電子部品を実装機により実装し、これをリフロー炉に通してリフロー半田付けを行い、最終的に半田付け不良等の検査を行う。これらの各工程で不具合があったために最終製品としての電子回路基板に不良が発生していた場合、その原因を早期に突き止めて工程改善に役立てることは、歩留まり改善のために重要である。
【0003】
このため、検査機を取り扱う検査機メーカーにおいて、例えば下記特許文献1に記載の管理システムが知られている。この管理システムは、実装工程の各工程における全てのプリント基板の状態を撮像手段により撮像して記録しておき、検査機において電子回路基板の不良が発見された場合に、その電子回路基板の実装工程におけるプリント基板の状態を確認することで工程改善に役立てようとするものである。
【特許文献1】特開2006−216589公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この管理システムは、検査工程で取得されたデータと判定結果を記憶する一方で生産工程内の他工程のプロセス情報が記録されないため、記録された情報から問題原因を特定することはできず、過去の実績に基づいた推測とならざるを得なかった。不良原因を正しく調査するにはできるだけ多くのプロセス情報を記録しておくことが必要であり、また、不良品率が下がれば下がるほど良品に関するプロセス情報の割合が増加するため、もし仮に他工程のプロセス情報も含めて記録するシステムとしたとしても、不良原因特定に必要なデータは良品のデータ中に埋もれることになる。このため、仮に、この選別作業をコンピュータにさせるにしても、不要なデータが膨大な量になるため、検索に多大な時間を要し、迅速に不良原因の調査を開始することができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、不良の原因を特定するために必要な情報のみを収集することにより、迅速な工程改善を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報収集方法は、素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集方法であって、生産工程における処理に関するプロセス情報を製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置に記憶し、生産された製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関するプロセス情報を記憶装置から削除し、それ以外を保持するところに特徴を有する。このような方法によると、検査工程の結果、良品と判定されたものに関するプロセス情報を削除し、それ以外の情報を保持することができる。したがって、不良原因を特定するために必要なプロセス情報のみを収集することができ、迅速な工程改善が可能となる。
【0007】
本発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
検査工程は、製品を自動的に検査する検査装置によって不良品と判定されたものについて作業者が目視検査を行い、その目視検査により良品と判定されたものに関するプロセス情報を記憶装置から削除し、それ以外を保持してもよい。このようにすると、目視検査によって不良品と判定されたものに関する情報のみを収集することができる。したがって、検査装置のみによって判定する場合よりもさらにプロセス情報を絞り込むことが可能となる。
【0008】
本発明は、素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集システムであって、生産工程における処理に関するプロセス情報を前記製品を特定する識別符号と対応させて記憶する記憶装置と、生産された製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関するプロセス情報を記憶装置から削除し、それ以外を保持するデータ管理装置とを備えた構成としてもよい。このような構成によると、データ管理装置により、良品に関するプロセス情報を削除し、それ以外の情報を保持することができる。したがって、不良原因を特定するために必要なプロセス情報のみを収集することができ、迅速な工程改善が可能な情報システムを提供することができる。
【0009】
また、上記生産工程は、素材としてのプリント基板に対して半田ペースト印刷処理、部品実装処理及びリフロー処理のうちの少なくとも2つの処理を順次実行するようになっており、上記情報収集システムは更に上記両処理の間に実行されてプリント基板の状態を撮影する撮像装置を備え、その撮像装置により撮像された画像データが製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置にプロセス情報と共に記憶され、上記データ管理装置は生産された製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する画像データをプロセス情報と共に記憶装置から削除し、それ以外を保持する構成としてもよい。このような構成によると、撮像画像を確認することにより不良が発生した工程を知ることができ、撮像画像から不良原因の調査を行うこともできる。
【0010】
さらに、上記記憶装置は、処理条件の数値情報に関して識別符号毎に累計平均値を算出すると共に、その累計平均値の算出後の最新の数値情報と累計平均値との差である偏差が所定値以上のものを記憶してもよい。このようにすると、記憶装置により偏差が所定値以上の処理条件の数値情報を記憶することができる。したがって、生産工程の途中において記憶装置に記憶されるプロセス情報を間引くことができる。
【0011】
本発明は素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集用のプログラムであって、コンピュータに、生産工程における処理に関するプロセス情報を製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置に記憶させ、生産された製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関するプロセス情報を記憶装置から削除させ、それ以外を保持させる情報収集用のプログラムとしてもよい。このプログラムによると、不良原因を特定するために必要なプロセス情報のみを収集することができ、迅速な工程改善を実行することができる。
【発明の効果】
【0012】
不良原因を特定するために必要なプロセス情報のみを収集することにより、迅速な工程改善を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の情報収集システムが適用される部品実装ライン(本発明の「生産工程」の一例)を概略的に示している。この生産ラインは、例えば自動車用の電子回路基板を製造するものであり、ローダー(図示省略)、印刷機1、印刷後検査機2、実装機3、実装後検査機4、リフロー炉5、リフロー後検査機6、及びアンローダー(図示省略)を一列に備え、これらを互いにコンベア7で連結した構成となっている。そして、コンベア7により素材としてのプリント基板(以下、単に基板という。)を搬送しながら、順次、半田ペースト印刷、部品実装、及びリフローの各処理を施すと共に、各検査機2,4,6により上記各処理後の基板を検査し、最終的に、必要な部品を実装した電子回路基板を製造する。
【0014】
各検査機2,4,6は、図示を省略するがCCDカメラ(本発明の「撮像装置」の一例)を搭載したヘッドとこのヘッドを平面的に移動させる駆動装置等を備えており、基板の被実装面を撮像することによりその画像データに基づいて各処理の検査、具体的には、印刷後検査機2では半田塗布量等の検査、実装後検査機4では部品の実装ずれ等の検査、リフロー後検査機6では半田塗布量及び部品の実装ずれ等の検査を実施する。
【0015】
上述の印刷機1、実装機3及びリフロー炉5(これらの装置を「処理機」ということがある)並びに印刷後検査機2、実装後検査機4及びリフロー後検査機6は、それぞれ制御装置が搭載された自律型の装置であって、各装置の動作が各自の制御装置により個別に駆動されるようになっている。さらに、この部品実装ラインでは、さらに上記の各処理機1,3,5及び検査機2,4,6に通信ケーブルを介してデータ管理装置8が接続されている。
【0016】
データ管理装置8は、図2に示すように、論理演算を実行するCPU12、そのCPU12において実行される種々のプログラム等を予め記憶したROM13、装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM14、HDD15、外部記憶装置17及びI/Oコントローラ(IOC)16等を備え、RAM14,HDD15及び外部記憶装置17が本発明の記憶装置10を構成する。
【0017】
HDD15には、各種アプリケーションソフト用のプログラムや各処理機1,3,5における各種処理の処理条件に関して設定された情報、例えば基板データ(基板の種別、品番、サイズ等)、部品データ(部品の種別、品番、サイズ等)、印刷データ(ランド等の印刷位置、サイズ等)、実装位置データ(部品の種別、品番に対応した部品の実装位置等)及びリフロー炉5における硬化温度データ等の種々のデータが格納されている。また、各検査機2,4,6で実施される検査項目及び各検査項目の検査条件等に関して設定された情報もこのHDD15に格納されている。
【0018】
IOC16には、キーボードやマウス等の入力手段18、CRTモニタやLCDモニタからなる表示手段19が接続されると共に各処理機1,3,5及び検査機2,4,6が接続されており、CPU12は、入力手段18を操作して入力された入力情報や、各処理機1,3,5及び検査機2,4,6からの信号を受けてデータ管理装置8全体の制御を行う。
なお、図示はしないが、各処理機1,3,5及び検査機2,4,6には、基板に例えばバーコードやQRコードによって記録された基板の識別符号を読み取るための基板コード読取装置が付されており、各処理機1,3,5が現に処理の対象としている基板又は各検査機2,4,6が現に検査の対象としている基板を識別符号によって特定することができる(この識別符号を「製品ID」ということがある)。そして、各処理機1,3,5及び各検査機2,4,6が処理又は検査を行う際に、その処理条件や検査結果に関する各種の情報(画像情報を含む)が通信ケーブルを介してデータ管理装置8に伝送され、データ管理装置8の記憶装置10(RAM14,HDD15及び外部記憶装置17のいずれか)に製品IDと対応させて記憶される。
さて、本実施形態では、記憶装置10に記憶される情報は、15年保管義務データ、3ヶ月保管データ、1週間保管データ、品質改善データの4種類に分類される。各データの内容は次の通りである。
【0019】
(1)15年保管義務データ…自動車が自動車メーカーから最終消費者に販売された後に当該自動車に搭載された電子回路基板に欠陥が見つかった場合に、品質責任の所在を明確にしリコール対象を特定するために用いられる。なお、15年保管義務データは、自動車の耐用年数が約15年であることを考慮して電子回路基板を納入してから15年間保管される。
【0020】
(2)3ヶ月保管データ…電子回路基板が自動車メーカーの工場内にある場合に当該基板に欠陥が見つかったとき、自動車メーカーの工場内において当該基板の回収対象を絞り込むために用いられる。なお、3ヶ月保管データは、納入後、3ヶ月間保管される。
【0021】
(3)1週間保管データ…電子回路基板が部品実装メーカーの工場内にある場合に当該基板に欠陥が見つかったとき、部品実装メーカーの工場内において当該基板を即時回収したり、あるいは当該基板の手直しをしたりする際に対象を特定するために用いられる。なお、1週間保管データは、当該基板が生産されてから1週間保管される。
【0022】
(4)品質改善データ…部品実装メーカーにおいて電子回路基板に不良が見つかった場合に、その不良原因を特定して品質改善を行うために用いられる。この品質改善データが、本発明にいう各種処理の「生産工程における処理に関するプロセス情報」に相当し、各工程における材料組成、処理条件、検査結果等の数値情報及び画像情報を含む。
【0023】
上述の15年保管義務データ、3ヶ月保管データ、1週間保管データ、及び品質改善データの具体的内容は、表1〜表7に示す。表1は基板、電子部品及び半田等の材料組成についてのデータであり、これらは各処理機1,3,5における処理や各検査機2,4,6における検査が実際に実行される前に既知の情報であって予め記憶装置10に記録されている。表2は印刷工程を、表3は印刷検査工程を、表4は実装工程を、表5は実装検査工程を、表6はリフロー工程を、表7はリフロー後検査工程をそれぞれ実行した時に取得されるデータであり、各処理機1,3,5及び各検査機2,4,6から通信ケーブルを介してデータ管理装置8に伝送されて記憶装置10に記憶される。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】

【0024】
そして、本実施形態の情報収集システムは、各処理及び検査が進行するに従い、前述した4種類のデータの全てを記憶装置10に一旦記憶するものの、それらのデータのうち、検査の結果、良品と判定された電子回路基板に関する品質改善データを削除する機能(図3参照)、修正工程で修正された基板に関する基板の情報を記憶装置に追加記憶する機能(図3参照)あるいは計測値の偏差に基づいて生産の途中で不要な品質改善データを削除する機能(図4参照)を備えている。
【0025】
上記各機能について電子回路基板の製造手順と共に説明する。電子回路基板の製造手順は図3のフローチャートに示した通りである。基板がローダーから印刷工程に投入されると、印刷機1により基板上の所定の位置にクリーム半田が印刷される(S301)。このとき、印刷機1において表2に示した印刷工程に関する4種の全てのデータが印刷中の基板毎に取得され、それらのデータと、表1に示した材料組成のデータのうち基板材料及び印刷工程に関するものが、製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0026】
印刷機1による印刷が完了すると、印刷検査工程に移行して印刷後検査機2によりクリーム半田が印刷された基板の状態について検査が行われる(S302)。すると、印刷後検査機2において表3に示す画像データを含む全てのデータが取得され、これが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0027】
印刷後検査機2による検査が完了すると、実装工程に移行して実装機3によりクリーム半田が印刷された基板上の所定位置に部品が搭載される(S303)。この際、実装機3においては表4に示す画像情報を含む全てのデータが取得され、これらのデータと共に、表1に示すデータのうち実装工程に関係するデータが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0028】
実装機3による部品搭載が完了すると、実装検査工程に移行して実装後検査機4により部品が搭載された基板の状態について検査が行われる(S304)。ここでは、実装後検査機4において、表5に示す画像データを含む全てのデータが取得され、これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0029】
実装後検査機4による検査が完了すると、リフロー工程に移行してリフロー炉5により部品の半田付けが行われる(S305)。ここでは、リフロー炉5において表6に示す全てのデータが取得され、これが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0030】
そして、リフロー炉5による半田付けが完了すると、リフロー後検査工程に移行してリフロー後検査機6により硬化が完了した基板の状態について検査が行われる(S306)。この際、リフロー後検査機6において、表7に示す画像データを含む全てのデータが取得され、これが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0031】
なお、各処理機1,3,5において取得される処理条件に関する数値情報については、上述の通りに製品IDと対応させて記憶装置10に記憶されるが、これらの情報は次のようにして間引かれるようになっている。
【0032】
すなわち、製品ID毎に数値情報の累計平均値を算出し、その累計平均値を算出した後の最新の数値情報と前記累計平均値との差である偏差が所定値以上となる場合に、その最新の数値情報が記憶装置10に記録される(それ以外が削除される)のである。この手順を表4の行番号108に示した「部品を吸着した直後の負圧レベル」の計測値を例として、以下に説明する。
【0033】
実装工程において吸着ノズル(図示せず)に負圧が供給され部品が吸着ノズルによって吸着されると、図4に示すように、実装機3による負圧レベルの計測が開始され(S3031)、実装機3に設けた負圧計(図示せず)により計測値が取得されると(S3032)、計測値がデータ管理装置8に送出されRAM14に記憶されると共に、CPU12によって製品IDと対応させて累計平均値及びサンプル偏差が算出される。
【0034】
累計平均値は計測値の合計をサンプル数で割ったものであって、製品ID02の累計平均値678を例にして説明すると、製品ID01の計測値578と製品ID02の計測値778との和をサンプル数2で割ることにより算出される。また、サンプル偏差は計測値から累計平均値を引いたものであって、製品ID02のサンプル偏差100を例にして説明すると、製品ID02の計測値778から製品ID02の累計平均値678を引くことにより算出される。
【0035】
このようにして算出されたサンプル偏差が所定値(例えば10)以下の場合には(S3033)(図5の製品ID03〜製品ID06)、累計平均値を記録し(S3034)、計測値をRAM14から削除して(S3035)計測を終了する(S3037)。一方、サンプル偏差が所定値以上の場合には(S3033)(図5の製品ID02)、累計平均値を記録し(S3036)、その計測値をRAM14からHDD15へ送って記憶装置10に不揮発的に記録すると共に、RAM14に記憶された計測値を削除して計測を終了する(S3037)。なお、1つの部品について計測が終了して別の部品の計測を行う場合には、その部品についてS3031からこのプログラムが実施される。
【0036】
以上の通りの処理及び検査の全工程が全て終了すると、リフロー後検査工程における検査結果に基づき、製品の良否の自動判定が行われる(S307)。この自動判定の結果、ある製品が良品と判定されると、その良品と判定された特定の製品の製品IDに関する全ての品質改善データは記憶装置10から削除される。
【0037】
一方、上記の自動判定の結果、良品と判定されない場合には、目視検査工程へ移行して作業者の目視による検査が行われる(S308)。ここで、作業者が良品と判定し、それを判定結果の記録装置(図示せず)に記録すると、その製品の製品IDに関する全ての品質改善データが記憶装置10から削除される。
【0038】
なお、目視検査において不良品と判定された製品について、不良部分が修正可能な場合には、修正工程(S310)へ移行して、図4に示すフローチャートに基づいて修正履歴が15年保管義務データとして記憶装置10に追加記憶されるようになっている。
【0039】
このように本実施形態では、素材に関して得られているデータ並びに各処理及び各検査の工程において得られた4種類のデータについてデータ管理装置8の記憶装置10に全て一旦記録し、それらの記録情報のうち品質改善データについては、リフロー後検査工程及び目視検査工程を経て最終的に良品と判定された製品の製品IDに対応するものを記憶装置10から削除することとしている。この結果、品質改善データに関しては、不良品と判定された製品に関する品質改善データのみを自動的に収集することができ、不良品に関する品質改善データのみを選別する必要がない。
【0040】
このようにすると記憶装置10に記憶される情報量は、良品に関する品質改善データも保持していた従来の情報システムから得られるものに比べて格段に少なくなる。しかし、情報量が少ないとしても、保持されている情報は不良品に関する品質改善データであるから、極めて価値は高い。例えば、特定の不良品の発生原因を調査するにあたっては、記憶装置10に保持された品質改善データの中から、まず不良と判定された製品IDをキーとして品質改善データを抽出することにより、迅速に不良原因の究明を行うことができる。
【0041】
例えば、リフロー後検査工程において基板上の所定の実装位置に部品が欠落した不良が見つかった場合には、各処理後の検査工程における撮像画像を確認することにより、異常が発生した工程を把握することができる。そして、仮に印刷工程後に上記部品の実装位置においてクリーム半田が印刷されていなかったことが確認されたとすると、印刷マスクID、印刷マスクの直前自動クリーニング日時、及び直前自動クリーニング後使用回数等の品質改善データを調べることにより、印刷マスク自体に問題があったのか、あるいは印刷マスクの自動クリーニング作業に問題があったのか等の不良原因を究明することができる。
【0042】
また、リフロー後検査工程において基板上の所定の実装位置に対して位置ずれした位置に部品が実装された不良が見つかった場合には、上記と同様に各処理後の検査工程における撮像画像を確認することにより、異常が発生した工程を把握することができる。そして、仮に実装工程において部品の搭載時に位置ずれ不良が発生していたことが確認されると、ノズルID、部品を吸着した直後の負圧レベル、及び部品を搭載した直後の正圧レベル等の品質改善データを調べることにより、吸着ノズルに問題があったのか、あるいは負圧供給装置に問題があったのか等の不良原因を究明することができる。
【0043】
従って、本実施形態によれば、不良原因を特定するために必要なプロセス情報のみを収集することができるから、不良原因の調査を直ちに開始することができ、迅速な工程改善を行うことができる。
なお、本実施形態では特に、リフロー後検査工程後に目視検査を追加し、そこで良品と判定された製品に関する品質改善データも削除して不良原因の調査に役立つ品質改善データをさらに絞り込んで保持するから、記憶情報量を一層少なくすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、品質改善データには、各検査機2,4,6における検査で使用された画像データを含めるようにしているから、それらの画像を確認することにより、不良が発生した工程を迅速に知ることができると共に、撮像画像から不良原因の究明をより正確、迅速に行うこともできる。
【0045】
加えて、本実施形態では、品質改善データ(プロセス情報)のうち数値情報に関しては、サンプル偏差が所定値以上であるもののみを記憶装置10に記憶させるようにしているから、全ての数値情報を記憶する場合に比べて、情報量をより少なくすることができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では、部品実装工程を例として説明しているが、本発明によると、部品実装工程には限定されず、例えばプリント基板を製造する基板製造工程であってもよい。
【0047】
(2)本実施形態では、印刷工程、印刷後検査工程、実装工程、実装後検査工程、リフロー工程及びリフロー後検査工程からなる部品実装工程を例として説明しているが、本発明によると、いずれか一つの処理工程と、その検査工程とを含んだものであれば他の実施形態であってもよい。例えば、印刷工程及び印刷後検査工程、あるいは実装工程及び実装後検査工程、あるいはリフロー工程及びリフロー後検査工程、あるいは印刷工程、実装工程、リフロー工程及びリフロー後検査工程であってもよい。
【0048】
(3)本実施形態では、RAM14とHDD15と外部記憶装置17とからなる記憶装置10を例示しているが、本発明によると、他の形態であってもよく、例えば外部記憶装置17を設けない構成としてもよい。
(4)本実施形態では、目視検査工程を含めたものを例示しているが、本発明によると、目視検査工程を含めなくてもよい。
(5)本実施形態では、修正工程を含めたものを例示しているが、本発明によると、修正工程を含めなくてもよい。
【0049】
(6)本実施形態では、実装機3の上流側に、ペースト塗布装置として印刷機1を配設し、その処理の検査装置として印刷後検査機2を配設しているが、ペースト塗布装置としてディスペンサを配設し、その処理の検査装置として塗布検査装置を配設するようにしてもよい。
【0050】
(7)各検査機2,4,6は、それぞれ以下のような構成であってもよい。
1.印刷検査機
実施形態において、印刷後検査機2は、印刷機1と実装機3との間に独立して設けられているが、印刷機1に一体化されたもの(例えば、印刷機1の基板搬出部分に一体的に組み込まれたもの)、あるいは上工程側の実装機3に一体化されたもの(例えば、実装機3の基板搬入部分に一体に組み込まれたもの)であってもよい。この場合、上記(6)の構成を採用する場合には、塗布検査装置についても同様である。
【0051】
2.実装検査機
実施形態においては、1台の実装機3が設けられているが、2台の実装機、すなわち上工程の実装機3Aと下工程の実装機3Bとを備える構成としてもよい。このような構成とした場合、実装機3A,3B毎に専用の実装検査機を設けるようにしてもよい。
また、実装後検査機4は、実装機3に一体化されたもの(例えば、実装機3の基板搬出部分に一体的に組み込まれたもの)、あるいは上工程側のリフロー炉5に一体化されたもの(例えば、リフロー炉5の基板搬入部分に一体に組み込まれたもの)であってもよい。
【0052】
3.リフロー後検査機
実施形態において、リフロー後検査機6は、リフロー炉5の下流側に独立して設けられているが、リフロー炉5に一体化されたもの(例えば、リフロー炉5の基板搬入部分に一体的に組み込まれたもの)であってもよい。
なお、検査機と処理機とが一体化される態様としては、処理機の構成の一部を検査機の構成の一部として共有することにより、処理機に対して検査機が一体的に組み込まれているような態様でもよい。例えば、実装機3が、部品吸着用のヘッドを備えたヘッドユニットを有し、基板に対してこのヘッドユニットを相対的に移動させながら、部品を実装するような場合には、このヘッドユニットに基板撮像用のカメラを搭載し、実装処理後、ヘッドユニットの移動に伴いこのカメラにより実装ポイントを撮像、検査するという構成、つまり、ヘッドユニット(及びその駆動手段)を共有する状態で実装後検査機4が実装機3に一体に組み込まれているものでもよい。
【0053】
(8)処理機(印刷機1、実装機3、リフロー炉5)及び検査機(印刷後検査機2、実装後検査機4、リフロー後検査機6)にCRTモニタやLCDモニタ等の表示手段を設けておき、プロセス情報や検査情報等のトレース情報を表示するようにしてもよい。このようにすれば、部品実装ラインの近傍で作業者が監視中である場合には、作業者が表示内容を確認することにより、不良品の原因を速やかに特定し、対象となる処理機及び検査機の設定条件を変更する等、迅速な対応が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1における情報収集システムが適用される部品実装ラインを概略的に示した図
【図2】そのデータ管理装置の制御系を示したブロック図
【図3】その電子回路基板の製造手順を示したフローチャート
【図4】その実装工程において計測値のサンプル偏差に基づいて計測値を削除する手順を示したフローチャート
【図5】その吸着ノズルにより部品を吸着した直後における負圧レベルの計測値、累計平均値、及びサンプル偏差を例示した表
【符号の説明】
【0055】
1…印刷機
2…印刷後検査機
3…実装機
4…実装後検査機
5…リフロー炉
6…リフロー後検査機
8…データ管理装置
14…RAM
15…HDD
17…外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集方法であって、
前記生産工程における前記処理に関するプロセス情報を前記製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置に記憶し、
生産された前記製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する前記プロセス情報を前記記憶装置から削除し、それ以外を保持する情報収集方法。
【請求項2】
前記検査工程は、前記製品を自動的に検査する検査装置によって不良品と判定されたものについて作業者が目視検査を行い、その目視検査により良品と判定されたものに関する前記プロセス情報を前記記憶装置から削除し、それ以外を保持する請求項1に記載の情報収集方法。
【請求項3】
素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集システムであって、
前記生産工程における前記処理に関するプロセス情報を前記製品を特定する識別符号と対応させて記憶する記憶装置と、
生産された前記製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する前記プロセス情報を前記記憶装置から削除し、それ以外を保持するデータ管理装置とを備えた情報収集システム。
【請求項4】
前記生産工程は、前記素材としてのプリント基板に対して半田ペースト印刷処理、部品実装処理及びリフロー処理のうちの少なくとも2つの処理を順次実行するようになっており、前記情報収集システムは更に前記両処理の間に実行されて前記プリント基板の状態を撮影する撮像装置を備え、その撮像装置により撮像された画像データが前記製品を特定する識別符号と対応させて前記記憶装置に前記プロセス情報と共に記憶され、前記データ管理装置は生産された前記製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する前記画像データを前記プロセス情報と共に前記記憶装置から削除し、それ以外を保持する請求項3に記載の情報収集システム。
【請求項5】
前記記憶装置は、前記処理条件の数値情報に関して前記識別符号毎に累計平均値を算出すると共に、その累計平均値の算出後の最新の数値情報と前記累計平均値との差である偏差が所定値以上のものを記憶する請求項3又は4に記載の情報収集システム。
【請求項6】
素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集用のプログラムであって、
コンピュータに、前記生産工程における前記処理に関するプロセス情報を前記製品を特定する識別符号と対応させて記憶装置に記憶させ、
生産された前記製品について行われた検査工程の結果、良品と判定されたものに関する前記プロセス情報を前記記憶装置から削除させ、それ以外を保持させる情報収集用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−171330(P2008−171330A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5921(P2007−5921)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】