説明

情報媒体

【課題】発光ダイオードのような通常の光源を用いることができる情報媒体を得ること。
【解決手段】トラックに識別マーク(20)が設けられ、この識別マークは、光源から放射される中心波長(λ)の光、すなわち角度(Θi)で情報媒体(10)に入射する当該光によって検出することができ、これらの識別マークから情報媒体(10)のポジションを導き出すことができる。この際、前記識別マーク(20)が、格子周期が(Λ)である少なくとも第1のパターン(22)でパターン化された領域(25)によって形成されており、これらの領域は、金属膜(40)の下面(40b)および/または金属膜(40)の表面(40a)に配置されている。この際、第1のパターン(22)の格子周期(Λ)が、数式Λ=λ/(nP−sin(Θi))、またはΛ=λ/(nP+sin(Θi))を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つの情報媒体に関する。
情報媒体、特にディスク状の情報媒体であって、基板例えばガラスからなり、1つの固定穴を備え、基板上に金属膜を配置するものが知られている。複数のトラックが、この情報媒体上に円周状に配置され、これら複数のトラックは互いに同心に位置する。トラックには識別マークが設けられ、これらの識別マークは、入射光を用いて検出することができ、基準点、例えば評価ユニットに対するその情報媒体の相対位置を特定するのに用いられる。識別マークは通常、光を透過するものとして、そして識別マークの間の各領域は、光を吸収または反射するものとして形成され、あるいは識別マークとその間の領域との関係をこの逆に形成される。相対位置を特定するのに透過光法を用いるか、反射光法を用いるかに応じて、透過光を、あるいは反射光を検出する。
【0002】
これらの識別マークを生成できるようにするには、情報媒体の表面を金属膜で被覆する。この金属膜には、さまざまなフォトリソグラフィー的および化学的パターン化工程を施さなければならない。しかしこの情報媒体に固定穴を設けるというもう1つの製造工程が、さらに必要である。従って一方では、製造コストのかさむ複数の製造工程が必要である。他方では前記の製造工程が互いに独立しているので、前記の固定穴を、トラックに対する希望の相対位置に、特に識別マークを含むトラックに対して正確な同心円位置に配置するのは困難である。
【背景技術】
【0003】
従来のシャフトエンコーダーの場合、識別マークは情報媒体の基板の材料と同じ材料で形成される。この方法によって、情報媒体を射出成形法で製造し、固定穴に対して識別マークの正確な位置あわせが可能になる。識別マークは、基板表面に対する凸部と凹部によって形成される。これにより、垂直に入射する光ビームの伝播時間に差が生じ、この差から検出可能な個々の光ビームの干渉が生じる。従って、識別マークから情報媒体のそのほかの領域とは異なる光信号が得られ、それによって、識別マークを検出できる(例えば、特許文献1参照)。ただし、干渉効果を利用するためコヒーレントな光源を必要とするのが、この方法の欠点である。
【特許文献1】独国特許出願公開第102004011146A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、簡単かつ安価に製造でき、固定穴に対するトラックの位置あわせに高い精度を可能とし、特には使用される光を得るための、例えば発光ダイオードのような通常の光源を用いることができる、情報媒体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のこの課題は、請求項1の特徴を有する情報媒体によって解決される。
本発明の有利な実施形態と発展形態を、従属請求項に記載した。
【0006】
本発明による情報媒体は、少なくとも1本のトラックを有する金属膜を備える。このトラックに識別マークが設けられ、光源から放射された中心波長λの光、かつ角度Θiで情報媒体に入射する当該光のもとで、これら識別マークを検出できる。そしてこれら識別マークから、基準点に対する情報媒体の相対的位置を導き出すことができる。識別マークは、少なくとも格子周期Λの第1のパターンによってパターン化された領域から形成される。これらの領域は、金属膜の下面および/または表面に設けられている。第1のパターンの格子周期Λは、数式Λ=λ/(nP−sin(Θi))、または数式Λ=λ/(nP+sin(Θi))を満足する。この場合λは用いられる光の中心波長、Θiは光源の光が情報媒体に入射する角度、そしてnPは金属膜に沿うプラズモンモードの等価屈折率を表す。
【0007】
決められた格子周期Λのパターンを有する識別マークの形状によって、ロングレンジおよびショートレンジのプラズモンモードの効果を用いることができる。このプラズモンモードは、少なくとも片側の面をパターン化されている薄い金属膜に沿って広がり、光が金属膜を透過するのを可能とする(F.Pigeonほか:「Identity of long‐range surface plasmons along asymmetric structures and their potential for refractometric sensors」、Journalof Applied Physics、Vol.90、No.2、852−859ページ。およびN.Bonodほか:「Resonant optical transmission through thin metallic films with and without holes」、Optics Express、Vol.11、No.5、482から490ページ参照)。この効果によって特に、例えば中心波長λの発光ダイオードのような普通の安価な光源を用いて、情報媒体の識別マークの検出が可能になる。
【0008】
情報媒体が金属膜として形成される場合、金属膜を支持基板上に配置する場合よりも、製造プロセスはたしかに複雑になるが、基板の材料を省略することができる。
【0009】
しかし本発明の1つの特に好ましい実施形態の場合、金属膜を基板上に設ける。この実施形態の場合、情報媒体の基板は、公知の製造方法によって、簡単かつ安価に製造することができる。さらには公知の方法によってやはり簡単かつ安価に、金属膜を基板上に被覆することができる。金属膜の下面に第1のパターンを配置する場合、特に基板の表面にも、同様に第1のパターンを配置する。これらのパターンも同様に、公知の製造方法例えば射出成形法によって、特に簡単に形成することができる。特には射出成形工程で情報媒体の基板を製造することにより、情報媒体の固定穴に対して識別マークパターンを正確に位置あわせすることができる。
【0010】
角度Θiは0°とするのが好ましいが、これは光の垂直な入射に相当する。その結果特に、第1のパターンの格子周期Λは、数式Λ=λ/nPを満足する。垂直な光入射によって、識別マークの特に確実な検出を保証し、特に単純なジオメトリー構造が可能となる。
【0011】
本発明の1つの特に好ましい実施形態の場合、金属膜は、識別マーク内においても識別マーク外においても、高さ(h)はほぼ均一である。その結果として、識別マーク内においては金属膜の表面にも下面にも、第1のパターンが配置される。この場合第1のパターンは、表面のものと下面のものが平行に変位された位置にあり、従って波形の金属膜が生じる。この種の金属膜は、基板上に配置されるとき、特に簡単に製造できる。なぜならば、第1のパターンを設けられた基板の上に、対応して均一な金属膜を被覆しなければならないが、これは例えば蒸着のような公知の方法によれば、特に簡単かつ安価に行うことができるからである。
【0012】
本発明の1つの特に好ましい実施形態の場合、パターン化された領域の第1のパターンが、正弦波形に形成される。このパターンは、製造が特に簡単であり、正弦波形に延びる金属膜に沿って、プラズモンモードを特に良好に形成できるようになる。
【0013】
本発明の1つの特に好ましい発展形態の場合、金属膜が基板の上に、そして金属膜の上に誘電膜が設けられる。プラズモンモードの1つ、いわゆるロングレンジのプラズモンモードは、次のような場合、金属中における損失が特に少ない。それは、電場の長手方向成分が、金属膜内部、好ましくは例えば金属膜の中心で、正負の符号反転を生じる場合である。電場の長手方向成分にこの種の対称形の分布が生じるのは、特に金属膜の表面と下面それぞれに、屈折率が等しいかまたは非常に類似した誘電体が配置される場合である。従って金属膜内部における電場の長手方向成分の分布は、特に、プラズモン波の形成に特によい条件を生じるように、金属膜表面に配置される誘電膜によって調節できる。そのため好ましくは、この誘電膜は、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、ポリカーボネート、または基板と同材料からなるものとする。誘電膜が基板と前記材料からなる場合、対称形の構造が得られる。この場合誘電膜の厚さは、1つの定められた厚さとはせず、材料へのプラズモン波の透過深さの少なくとも約2倍から3倍とするのが好ましい。誘電膜が基板の材料と異なる材料からなる場合、この誘電膜は、材料に応じた、かつ使用される光の中心波長λに応じた、1つの定められた厚さを備えなければならない。これは、電場の長手方向成分の分布に、前記に相当する調節を加えるためである。
【0014】
本発明の1つの好ましい実施形態の場合、使用される光の中心波長λは、約890nmである。これは市販の発光ダイオードに相当し、コスト上特に有利である。
【0015】
好ましくはこれらの第1のパターンは、次のような深さdを有する。すなわちこの深さは、格子周期Λより小さく、好ましくは1/5Λから1/8Λ、好ましくは―特に中心波長が約890nmの光源を用いる場合、約60nmから130nmとする。これは同様に、プラズモンモードを形成するためにも、そして入射光のできるだけ高い透過率を得るためにも有利である。
【0016】
好ましくは金属膜を、使用される光の波長領域では吸収が少ない金属からなるものとする。これにより、識別マーク外のパターン化されていない領域、すなわち金属膜が平面状に位置する同領域では、従って入射光が十分に吸収および/または反射され、その結果信頼性をもって識別マークを検出することが保証される。しかし吸収が少ないため、識別マークの領域、すなわちパターン化された領域で金属膜を共振透過するためには、入射光を十分利用できなくなる。
【0017】
好ましくは金属膜を、金、銀、銅、またはアルミニウムからなるものとする。なぜならばこれらの金属は所望の光学的特性を特に備えており、また必要ならば、情報媒体の基板表面を良好に被覆できるからである。
【0018】
本発明の1つの特に好ましい実施形態の場合、金属膜の高さhは、プラズモン波の透過深さにほぼ相当するものとし、好ましくは約20から60nmとする。こうすることによってのみ、妨げられずに金属膜に沿ってプラズモン波を伝播させることが確実にでき、それによってパターン化された領域で入射光を透過させ、パターン化されない領域では透過をわずかなものとすることができる。
【0019】
好ましくは情報媒体の背面に偏光格子を備え、この格子のパターンは、そのサイズが第1のパターンに相当するものとし、第1のパターンと平行に配置されるものとする。そのため特に光源の光は、情報媒体に垂直に入射する。プラズモン波は、入射光の偏光された成分によってのみ励起することができる。前記成分の磁場ベクトルは、第1のパターンと平行に位置する。これにより、偏光されていない光を用いる場合は、パターン化された領域と、されていない領域のコントラストが、偏光された光を用いる場合よりも小さくなる。偏光格子の構造は、入射光を相応に確実に偏光する。そしてパターン化された領域と、されていない領域のコントラストが、できるだけ大きくなるようにする。この実施形態を使用できるためには、光が情報媒体の背面から入射するのが好ましい。それは、入射光がまず偏光され、そののちパターン化された領域の第1のパターンに入射するようにするためである。
【0020】
好ましくは第1のパターンに垂直に第2のパターンを設け、第2のパターンのサイズは第1のパターンに相当するものとする。これにより、特に光が情報媒体に垂直に入射する場合、情報媒体の背面または情報媒体の外部のどちらかに偏光格子を追加する必要はなくなる。なぜならば、偏光されていない光ビームに生じた偏光成分はいずれも、プラズモンモードにカプリングし、金属膜を光が所望の通りに透過できるようになるからである。
【0021】
好ましくは、金属膜を基板の上に、そして基板と金属膜の間に接着層を設けて、金属膜と基板間の接着を、特に金属膜に金を使用する場合の接着を改善する。この接着層は、光学的影響を持たないよう、薄く形成するのが好ましい。そのため接着層は、厚さ数ナノメートルとするのが好ましい。この種の接着層に特に適するのは、酸化チタン、または光損失の少ないそのほかの材料である。
【0022】
好ましくは、パターン化されていない領域、すなわち識別マーク外部の領域は、入射光を吸収するものとする。これにより情報媒体は特に透過光法に適するものとなる。なぜならば識別マークは光を透過し、パターン化されていない領域は、ほぼ光を透過しないからである。しかしこの場合好ましくは、前記吸収は強すぎないものとするべきであろう。なぜならば、パターン化された領域の透過も弱められるからである。従って光源を、情報媒体の一方の側に配置することができ、背面には光検出器、例えば1つまたは複数のフォトダイオードを配置する。フォトダイオードは、情報媒体における光の入射点に応じて、パターン化された領域を透過した光を検出する。あるいは、パターン化されていない領域における吸収に基づいて、光が識別マーク間の領域に入射したことを確認する。
【0023】
本発明による1つの好ましい実施形態の場合、情報媒体の識別マークすべてにおける第1のパターンが、互いに平行に位置するように配置されている。これにより、製造方法が特に単純になる。
【0024】
好ましくはこの情報媒体をディスク状とし、トラックは円周状に配置されるものとする。これにより情報媒体を、シャフトエンコーダーにおけるコードディスクとして用いることができる。
【0025】
この種のコードディスクの場合好ましくは、情報媒体の識別マークすべてにおける第1のパターンを、ほぼ半径方向にまたはほぼ同心円位置に配置する。この場合1つの識別マーク内部における第1のパターンは、互いにほぼ平行に位置する。
【0026】
この情報媒体の基板は射出成形法で製造するのが有利である。なぜならばこの製造方法は、特に安価であり、かつ技術的に成熟しているからである。
【0027】
好ましい方法として、各請求項のいずれかに記載の情報媒体を、基準点に対する情報媒体の相対ポジションを特定するため、特に平行運動または回転運動を測定するため、リニアまたはロータリーエンコーダーで用いる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
下記に図面を用いて、本発明を詳細に説明する。
同一またはほぼ同じ部品には、図は異なっても同じ符号を付けた。
【0029】
図1aは、情報媒体10の一部領域を、表面10aおよび背面10bとともに示す断面図である。この情報媒体は、屈折率nsの基板12を有し、その表面12aの上に高さhの金属膜40が配置されている。基板12は、例えばガラスまたなプラスチック製、好ましくは射出成形法で加工できるPMMA製とする。情報媒体10は、識別マーク20を有し、この識別マークは、第1のパターン22を施されてパターン化された領域25から形成される。この場合、前記実施形態ではパターン22が、金属膜40の表面40aにも下面40bにも、従って基板12の表面12aにも形成されている。パターン化された領域25における第1のパターン22は、格子周期Λを有し、互いに平行に配置され、好ましくは正弦波形である。この場合第1のパターン22は深さdを有する。金属膜40は、情報媒体10の表面10a全体にわたって均一な高さhを有するので、パターン化された領域25における金属膜40は波形に、特には正弦波形に形成されている。この場合、金属膜40の第1のパターン22の深さdは、第1のパターンの深さdに相当し、金属膜40の格子周期Λは、基板12の第1のパターン22の格子周期Λに相当する。識別マーク20に隣接して、パターン化されていない領域26があり、そこでは情報媒体10の表面が平らに延びている。
【0030】
金属膜40の形状は、中心波長λの入射光がプラズモン波にカプリングし、このプラズモン波がさらに透過光に変換されるような形状とする。図9aおよび9bは、波長λの光が金属膜40に入射するときの状況を模式的に示す。この入射は、情報媒体10の表面10aの法線に対して角度Θiで行われる。角度Θiの光が金属膜40に直接入射するのでなく、基板12に、または下記に図1fで説明するように金属膜40の上の誘電膜80に入射する場合、光は基板12ないし誘電膜80を透過するとき相応に屈折する。入射光は、格子周期Λに従いながら、金属膜40に沿う方向にのみカプリングする。図9aはいわゆるフォワードカプリングの例を、図9bはいわゆるバックワードカップリングの例を示す。この場合入射光を矢印Aで、透過光を矢印Bで、入射したプラズマ波の方向を矢印Pで示す。格子周期Λは、フォワードカプリングの場合、数式Λ=λ/(nP−sin(Θi))を、バックワードカプリングの場合、数式Λ=λ/(nP+sin(Θi))を満足する。この場合nPは、金属膜40に沿ってのプラズマモードの等価屈折率を表す。
【0031】
図1aは、光が情報媒体10の表面10aに垂直に入射するという特殊な例を示す。この場合、第1のパターン22の格子周期Λは数式Λ=λ/nPを満足し、この場合λは用いられる光の中心波長、そしてnPは金属膜40に沿うプラズモンモードの等価屈折率を表す。入射光は、この場合金属膜40に沿って両方向にカプリングする。
【0032】
好ましくは金属膜40を、金、銀、銅またはアルミニウムからなるものとする。なぜならばこれらの金属は、特にプラズモン波の形成に適しているからである。金属膜40と基板12の間には、ここには図示しない接着層を配置することができる。接着層は、基板12に対する金属膜40の接着を改善するのに役立つが、かならずしも必要なわけではない。接着層は、光学的影響を持たないよう、薄く形成されべきであろう。そのため接着層の厚さは、わずか数nm、例えば10nm以下とする。接着層は、特に金からなる金属膜40を良好に接着する例えば酸化チタン、または光損失が極めて少ないそのほかの金属からなるものとする。
【0033】
さらに好ましくは金属膜40の高さhを、プラズモン波の金属膜40への透過深さにほぼ相当する高さに形成する。これはプラズモンモードの場を、金属膜の両方の境界層に沿って強くして、金属膜40を光が透過できるようにするためである。そのため金属膜40の高さhを、好ましくは20から60nmとする。プラズモン波を光学的方法で金属膜40内に形成できるようにするには、好ましくは第1のパターン22の深さdをも、入射光の中心波長λに適合させ、特には格子周期Λよりも明らかに小さくして、例えばわずか1/5Λから1/8Λ、好ましくは約60nmから130nmとするべきであろう。特に格子周期Λが60から130nmである場合、市販の発光ダイオード、例えば放射される光の中心波長がλ=890nmである発光ダイオードの光を用いて、プラズモン波を生じることができる。しかし使用される光源は、例えば500から1550nmの領域を中心波長とする場合があり、この光源に応じて第1のパターン22のサイズが決められる。しかしこの場合、金属膜40の高さhは、ほぼ同じ規模のままとなる。
【0034】
図1bから1fは、情報媒体10のそのほかの実施形態を示す。図1bおよび1cが示す情報媒体10は、主として金属膜40から形成され、基板12を有さない。この種の情報媒体10は、製造が面倒であるが、基板のための材料を必要としないという利点がある。そのほか誘電体が、金属膜40の表面40aのものと下面40bのものとが同一、すなわち空気であるため、プラズモンモードを特に良好に形成することができる。図1bの実施形態の場合、金属膜40の表面40aにも下面40bにも、第1のパターン22が設けられている。しかし図1cの実施形態の場合、金属膜の一方の面40a、40bは平らであり、第1のパターン22は他方の面40b、40aだけに形成されている。図1dから1fは、基板12と金属膜40を有する情報媒体を示す。図1dの実施形態では、第1のパターン22が金属膜40の下面40b、すなわち基板12の表面12aに形成されているが、金属膜40の表面40aは平らである。図1eの実施形態では、第1のパターン22が金属膜40の表面40aだけに形成されているが、金属膜40の下面40bと、従って基板12の表面12aも平らである。図1fの実施形態は、基板12と金属膜40を備える情報媒体であるが、この情報媒体は表面40aにも下面40bにも第1のパターン22が形成されている。そしてこの場合、さらに金属膜40の表面に誘電膜80が設けられている。誘電膜80は、プラズモン波の形成のため特に良好な条件を得るのに役立つ。プラズモン波が特に強く目立つのは、電場の長手方向成分が、金属膜40内部で、好ましくは金属膜40のほぼ中央で、正負の符号反転を示す場合である。電場の長手方向成分の分布は、基板12によって、および場合によっては金属膜40の表面に設けられた誘電膜80によって調節される。特には誘電膜80に、適切な屈折率をもつ適切な材料と、適切な厚さとを選択することによって調節される。電場の長手方向成分の分布を対称形に形成するため、好ましくは、屈折率が等しいかまたは類似した複数の誘電体を使用する。明瞭なプラズモン波を形成するのに特に適するのは、従って図1bの実施形態である。なぜならばこの場合、金属膜40の両側に空気があり、そのため完全な対称形構造が得られるからである。しかし金属膜40が、図1fのように基板12の上に配置されている場合、電場の長手方向成分の分布を適切に調節するため、誘電膜80を好ましくは、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、またまたはポリカーボネート、または基板12と同じ材料、例えばPMMAからなるものとする。誘電膜が基板と同じ材料からなる場合、対称形構造が得られる。誘電膜80の厚さは、この場合、1つの定められた厚さとする必要はなく、好ましくは、材料に対するプラズモン波の透過深さの少なくともほぼ2倍から3倍とする。誘電膜80が基板12と異なる材料からなる場合、電場の長手方向成分の分布に相応の調節を加えるためには、誘電膜80は、誘電膜80に用いられる材料と、用いられる光の中心波長λとに依存しながら、1つの定められた厚さを有さなければならない。
【0035】
ほぼ対称形に形成された情報媒体10の場合、すなわち情報媒体10が金属膜40だけからなる場合、あるいは情報媒体10が基板12の上に配置された金属膜40からなり、この金属膜が誘電膜80に覆われていて、前記誘電膜80が基板12と同一材料からなる場合、等価屈折率nPは、近似式nP=ns(εm/(ns2+εm))1/2を満足する。この場合nsは、第1の場合では空気の屈折率、第2の場合では基板12の屈折率、εmは金属膜40の誘電定数を表す。これはロングレンジおよびショートレンジのプラズモンモードの近似式である。通常、ロングレンジのプラズモンモードの等価屈折率nPは、上記の近似式で求められた等価屈折率nPよりも若干小さい。その際、ショートレンジのプラズモンモードの等価屈折率nPは、上記の近似式で求められた等価屈折率nPよりも若干大きい。従って、基板12および金属膜40の材料が決められていて、かつ決められた中心波長λを有する発光ダイオードが定められている限り、等価屈折率nPと、第1のパターン22の格子周期Λとを求めることができる。
【0036】
図2に示すように、完全な情報媒体10は、その表面10aに複数の識別マーク20を有する。これらの識別マークは、図1aの通り、それぞれが第1のパターン22でパターン化された1つの領域25によって形成される。情報媒体10はさらに、情報媒体10を取り付けるための中央の固定穴13を備える。識別マーク20を、波長λの入射光によって検出できるようにするため、次のような効果を利用する。パターン化されていない領域26では、入射光が金属膜40でほぼ吸収、または反射される。好ましくは金属膜40を、使用される光の波長領域に対しては吸収が少ない金属からなるものとする。これは、パターン化されていない領域26では、入射光の少なくとも一部が吸収または反射されるが、パターン化された領域25では、共振透過に光を十分に利用できるようにするためである。
【0037】
図7aに透過光法を模式的に示す。この方法の場合、光源30から放射された光がパターン化されていない領域26に入射する限り、光源30から見て情報媒体10の向こう側にある光検出器35によっては、光はわずかしか検出されず、もっとも好都合な場合、光は検出されない。しかし光がパターン化された領域25に入射する場合、金属膜40ではプラズモンモードが励起される。このプラズモンモードによって、入射光が金属膜40および識別マーク20を透過するようになる。光検出器35は信号を検出し、これにより識別マーク20を認識することができる。
【0038】
図2は、トラック14に、パターン化された領域25における複数の識別マーク20と、パターン化されていない領域26とが、交代に配置されている場合を示す。この場合、情報媒体10が光源30に対して相対運動すると、トラック14に沿って、通過する識別マーク20の個数がカウントされ、そこから基準点に対する情報媒体10の相対的位置に関する情報が求められる。この基準点とは、例えば光源30、光検出器35、または評価ユニットである。
【0039】
図7bに模式的に示されているように、透過光法とは別な方法では、反射光法によって基準点、例えば光源30または評価ユニットに対する、情報媒体10の相対位置を求めることができる。この方法の場合、パターン化されていない領域26から反射された光を、ビームスプリッター37によって、情報媒体10の光源30側に配置された光検出器35に方向変換して、この光検出器でその光を検出する。光が識別マーク20に入射する場合、前記の効果によって光は透過するので、光検出器35では信号を検出できない。
【0040】
図2に示すように、情報媒体10がディスク状に形成されている場合、この情報媒体を、透過光法または反射光法で、シャフトエンコーダーのコードディスクとして用いることができる。別な方法としては、情報媒体10を、線形に設けられたトラックを有するほぼ四角形のものに形成し、平行移動エンコーダーとして用いることができる。
【0041】
図2は、情報媒体10の表面10aの上記と異なる3つの実施形態を示す。図2における情報媒体10の表面10aの上面図では、誘電膜80は省略されている。識別マーク20の金属膜40は、第1のパターン22によって波形付けされており、前記金属膜でプラズモン波を生じるため重要なのは、第1のパターン22が互いに平行に位置し、互いに格子周期Λを取って配置されていることである。しかし第1のパターン22はこの場合、図2に示すように、情報媒体10がディスク状の構造であるとき、互いに同心円位置とするか、それともほぼ半径方向を向く位置とするか、それとも情報媒体10のすべての識別マーク20において互いに平行する位置するか、いずれかの配置とすることができる。まさに最後の変形例の場合、射出成形法で基板12を製造するための射出成形金型を、特に簡単に製造できる。しかしこの変形例は、下記に図3を用いて説明するような、外付けされた偏光格子と組み合わせて使用するのに適さない。なぜならば、固定光源30に対する第1のパターン22の相対的位置あわせが、いずれの識別マークにおいても変化するからである。従って用途目的に応じて、異なる実施形態から、異なる利点が得られる。
【0042】
プラズモン波は、主として偏光された光によってのみ形成される。従って、識別マーク20におけるパターン化された領域25と、基板12のそのほかの部分との間に、良好なコントラストを得るためには、入射光を偏光するのが有利である。これは例えば図3に示すように、外付けされた偏光格子45を用いて行うことができる。この偏光格子の場合、希望の効果を得るには、偏光面は第1のパターン22に平行に配置しなければならない。第1のパターン22が主として半径方向を向いて配置される場合、偏光面は中央の図に示すような配置とする。第1のパターン22が、半径方向に対してほぼ垂直に配置される場合、図3の左図に示すような偏光面の配置がえられ、そして第1のパターン22がほぼ同心円位置に配置される場合、右図に示すような偏光面の配置が得られる。
【0043】
上記と異なるものとして図4に示すような実施形態では、パターン52を形成することにより、偏光格子50を基板12に形成することができる。前記パターンは、そのサイズが第1のパターン22に相当するものとし、かつ第1のパターンに平行に配置されるものとする。この場合偏光格子50は、図4に示すように、情報媒体10の背面10bに配置される。偏光格子50も金属膜40も、好ましくは誘電膜80で覆われるものとする。図4はさらに情報媒体10の背面10bの上面図と、表面10aの上面図を示すが、誘電膜80は省略されている。ここで明らかなように、表面上には2本のトラック14が互いに同心円位置に配置され、このトラックそれぞれには、パターン化された領域25によって形成された識別マーク20が、パターン化されていない領域26と交代に配置されている。情報媒体10の上に複数のトラック14を配置することにより、情報密度は著しく上昇する。情報媒体10の背面10bに配置されている偏光格子50は、そのパターン52が、情報媒体10の表面10aにある識別マーク20の第1のパターン22と平行に位置あわせされている。この実施形態においては、光は情報媒体10の背面10bから、情報媒体10に入射するべきであろう。それは、光がまず偏光され、偏光状態になって初めて金属膜40に入射するようにするためである。
【0044】
図5は、図4にも示した、情報媒体10の背面10bに形成された偏光格子50であるが、上記と異なる実施形態を示す。偏光格子50は、情報媒体10の一部分だけに設けられるが、入射光はこの部分に入り、特にトラック14に当たれば、それで十分である。
【0045】
本発明のもう1つの上記と異なる実施形態では、偏光を行わなくても、次のようにして入射光の良好な収量を得ることができる。すなわちパターン化された領域25において、第1のパターン22とは垂直に第2のパターン60を形成し、前記第2のパターンのサイズは、第1のパターン22のサイズに相当するものとする(図6aおよび6b参照)。従って二次元の波形を持つパターンが、パターン化された領域25に形成される。この場合、パターン化された領域25における波形パターンの高さZは、そのxおよびy座標に応じて、次の式を満足するのが好ましい。
【0046】
【数1】

【0047】
この場合Hは波形パターンの高さの半分を、Λは格子周期を表す。別な方法として、二次元波形のパターンの高さZは、次の数式を満足するものとする。
【0048】
【数2】

【0049】
二次元波形のパターンの高さZが最初に挙げた数式(I)を満足する場合、そのパターンの1つの例を、図8の上面図に示す。数式Iの表記cos((2)-1/22π/Λx)は、1つの表面レリーフを定義する。この表面レリーフは、x方向に周期(2)-1/2Λを有し、その際y軸に平行に直線の格子線が延びる。入射光がプラズモンモードにカプリングする格子周期はΛであるので、この格子は、光がプラズモンモードにカプリングするのを可能としない。数式Iの表記cos((2)-1/22π/Λy)も、1つの表面レリーフを定義する。この表面レリーフも周期的であって、y方向に周期(2)-1/2Λを有し、その際格子線は、x軸に平行に延びる。この格子も、入射光がプラズモンモードにカプリングするのを可能としない。そのためには格子の周期がΛでなければならないからである。上記2つの表記の積は、図8に示すような凸部と凹部を有する表面レリーフで得られる。この場合、紙面から突出する凸部を黒丸で、紙面より低くなる凹部を白丸で示した。ここで得られる表面レリーフの深さは2Hである。
【0050】
ここに得られた表面レリーフは、x軸またはy軸に対して角度45°で配置されている周期Λの第1のパターン22と、第1のパターン22に対し角度90°で配置されている周期Λの第2のパターン60に相当する。前記第1と第2のパターン22、60は、第1のパターン22と比較して、第2のパターン60と交差しない場合の第1のパターン22と同形の凹部を持たず、正弦波形に変調された凹部を持つ。従って高い透過率という同じ効果を得るためには、二次元波形パターンで得られる表面レリーフの深さ2Hは、一次元波形だけのパターンにおける深さdより大きくなければならない。
【0051】
第1のパターン22および第2のパターン60の周期はΛであるので、両者のパターン22、60は、入射光のプラズモンモードへのカプリングを可能とする。すなわち、このうち第1のパターン22は、正のx軸にほぼ45°傾いて位置するプラズモンモードへの、そして第2のパターンは、正のx軸に135°傾いて位置するプラズモンモードへのカプリングを可能とする。その結果、任意の偏光の入射光が、二次元波形のパターンを通る高い透過性を有するようになる。
【0052】
光が垂直に入射する場合、第1のパターン22と第2のパターン60の格子周期Λは、数式Λ=λ/nPを満足する。この場合λは使用される光の中心波長、nPは金属膜40に沿ってのプラズモンモードの等価屈折率を表す。ここで注意しなければならないのは、等価屈折率nPは、一次元にパターン化された領域25では、二次元にパターン化された領域25における等価屈折率nPと、わずかながら相違することである。
【0053】
二次元波形パターンの表面レリーフが数式IIを満足し、従って2つの周期的関数の合計によって記述される場合、入射光は、周期的表面レリーフを通るx方向においてプラズモンモードにカプリングし、この表面レリーフは、cos(2π/Λx)という表記で記述される。またこの入射光は、周期的表面レリーフを通るy方向においてプラズモンモードにカプリングし、この表面レリーフは、cos(2π/Λy)という表記で記述される。
【0054】
図6aとそれに対応する部分拡大図に示すように、第1のパターン22は、すべての識別マーク20において互いに平行に形成されている。あるいは図6bとそれに対応する部分拡大図に示すように、第1のパターン22は半径方向に、かつ第2のパターン60は互いにほぼ同心円位置に、あるいは第1のパターン22は互いにほぼ同心円位置に、かつ第2のパターン60は半径方向に位置するよう、配置することができる。
【0055】
図1aまたは1dから1fの実施形態における情報媒体10は、数少ない製造工程で製造できる。まず基板12を射出成形法で製造する。その際図1a、1dおよび1fに記載の実施形態の場合、対応する射出成形金型において、第1のパターン22を有する識別マーク20および固定穴13、そして場合によっては第2のパターン60または偏光格子52のパターン50を、同時に成形することができる。その結果、トラック14における識別マーク20の固体穴13に対する位置あわせを、高い精度で行うことができ、面倒な校正段階が省かれる。つづいて金属膜40を情報媒体10の表面10aに、例えば蒸着プロセスまたはスパッタープロセスによって被覆する。その際、図1aまたは1fに記載の実施形態のため、金属膜40の均一な厚さhが、特に識別マーク20の領域に得られ、金属膜40の均一な波形パターンが、第1のパターン22の上に得られる。場合によっては金属膜40に、図1fの実施形態のような誘電膜80を、やはり例えば蒸着プロセスまたはスパッタープロセスによって被覆することができる。
【0056】
情報媒体10の第1の実施例は、次のような材料から製造され、次のようなサイズを有する。すなわち基板12は、屈折率nSが1.48のPMMAからなり、第1のパターン22のサイズだけによってパターン化されている。第1のパターン22は、深さdが87nm、格子周期Λが581nmである。情報媒体10の表面10aには、銀製の金属膜40を30nmの高さhで被覆され、この場合の銀は、誘電定数εmが−36+i2である。金属膜40は、PMMAからなる誘電膜80に覆われている。前記PMMA膜の厚さは、プラズモン波の金属膜40への透過深さより大きくするのがよく、例えば2μm以上とする。光源30としては、中心波長λが890nmの発行ダイオードを用いる。この機器構成によれば、パターン化された領域25において、入射光の相応に偏光された成分の透過率が90%以上となる。
【0057】
情報媒体10の第2の実施例は、その第1のパターン22と第2のパターン60が互いに垂直に位置するものであって、次のような材料から製造され、次のようなサイズを有する。すなわち基板12と誘電膜80とは、屈折率nSが1.48のPMMAからなる。第1のパターン22と第2のパターン60は、深さdが125nmであって、格子周期Λが583nmである。二次元でパターン化された領域25の第2の実施例として図示されているものの場合、その格子周期Λは583nmであって、第1の実施例における581nmとはわずかに相違する。前記相違は、領域25のパターン化が一次元的であるか二次元的であるかによって、等価屈折率nPにわずかな相違を生じることによるものである。格子周期Λが583nmであることから、図8のx軸とy軸に沿って、周期21/2Λ=825nmを得る。従って2種類の次元の波形において、表面レリーフの高さの差2Hは、約125nmである。情報媒体10の表面10aには、高さhが45nmの金製金属膜40を被覆されている。前記金は誘電定数εmが−36+j2である。光源30としては、中心波長が890nmの発光ダイオードが用いられる。この機器構成においては、入射光の相応に偏光された成分が、パターン化された領域25を透過する場合、その透過率は約80%である。その際、パターン化された領域25以外における基板12がフラットな領域では、透過率は約2.2%に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1a】基板とその上に設けられた金属膜とを備える情報媒体における識別マークの断面図。
【図1b】情報媒体のもう1つの実施形態における識別マークの断面図。
【図1c】情報媒体のさらにもう1つの実施形態における識別マークの断面図。
【図1d】情報媒体のさらにもう1つの実施形態における識別マークの断面図。
【図1e】情報媒体のさらにもう1つの実施形態における識別マークの断面図。
【図1f】情報媒体のさらにもう1つの実施形態における識別マークの断面図。
【図2】識別マークを有する基板を備える情報媒体の断面図と、情報媒体表面の上記と異なる3つの実施形態の上面図。
【図3】情報媒体の断面図と、模式的に示された光源および外付けの偏光フィルターを示す図。
【図4】情報媒体の断面図と、その情報媒体の背面および表面の上面図。
【図5】図4に示した情報媒体の背面であるが、それと異なる実施形態を示す図。
【図6a】もう1つの実施形態による情報媒体の表面の上面図。
【図6b】図6aに示した情報媒体の表面であるが、それと異なる実施形態を示す図。
【図7a】透過光法によるもので、情報媒体の断面図と、光源および光検出器を示す図。
【図7b】反射光法によるもので、情報媒体の断面図と、光源および光検出器を示す図。
【図8】第1のパターンと第2のパターンが互いに垂直に位置する、パターン化された領域の模式的上面図。
【図9a】光が角度Θiで入射し、フォワードカプリングが行われる場合、その状態を模式的に示す図。
【図9b】光が角度Θiで入射し、バックワードカプリングが行われる場合、その状態を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0059】
10 情報媒体
10a 表面
10b 背面
12 基板
12a 表面
12b 背面
13 固定穴
14 トラック
20 識別マーク
22 第1のパターン
25 パターン化された領域
26 パターン化されていない領域
30 光源
35 光検出器
37 ビームスプリッター
40 金属膜
40a 表面
40b 下面
45 外付けの偏光格子
50 偏光格子
52 偏光格子のパターン
60 第2のパターン
80 誘電膜
λ 波長
Λ 格子周期
Θi 角度
d 深さ
h 高さ
p 等価屈折率
S 基板の屈折率
C 誘電膜の屈折率
εm 金属膜の誘電定数
A 入射光
B 透過光
P プラズモン波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本のトラック(14)を有する金属膜(40)を備える情報媒体(10)であって、すなわちこのトラックには識別マーク(20)が設けられ、この識別マークは、光源(30)から放射される中心波長(λ)の光、すなわち角度(Θi)で情報媒体(10)に入射する当該光によって検出することができ、これらの識別マークから情報媒体(10)のポジションを導き出すことができる、上記の情報媒体であって、前記識別マーク(20)が、格子周期が(Λ)である少なくとも第1のパターン(22)でパターン化された領域(25)によって形成されており、これらの領域は、金属膜(40)の下面(40b)および/または金属膜(40)の表面(40a)に配置され、またこの際、第1のパターン(22)の格子周期(Λ)が、数式Λ=λ/(nP−sin(Θi))、またはΛ=λ/(nP+sin(Θi))を満足し、この際λは使用された光の中心波長、Θiは光源(30)の光が情報媒体(10)に入射する角度、そしてnPは金属膜(40)に沿うプラズモンモードの等価屈折率を表す、上記の情報媒体。
【請求項2】
金属膜(40)が基板(12)の上に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の情報媒体。
【請求項3】
角度(Θi)が0°であり、従って第1のパターン(22)の格子周期(Λ)が数式Λ=λ/nPを満足することを特徴とする、請求項1または2に記載の情報媒体。
【請求項4】
金属膜(40)がほぼ均一な高さ(h)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項5】
パターン化された領域(25)の第1のパターン(22)が正弦波状に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項6】
金属膜(40)の上に誘電膜(80)が設けられていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項7】
誘電膜(80)が、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、ポリカーボネート、または基板(12)と同材料からなることを特徴とする、請求項6に記載の情報媒体。
【請求項8】
使用される光の中心波長(λ)が約890nmであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項9】
第1のパターン(22)が有する深さ(d)は、格子周期(Λ)より小さいこと、好ましくは1/5Λから1/8Λ、好ましくは約60nmから130nmであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項10】
金属膜(40)が、使用される光の波長領域では吸収をわずかしか示さない金属からなることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項11】
金属膜(40)が、金、銀、銅、またはアルミニウムからなることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項12】
金属膜(40)が、プラズモン波の透過深さにほぼ相当する高さ(h)を有し、この高さは好ましくは約20から60nmであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項13】
情報媒体(10)の背面(10b)に偏光格子(50)が設けられ、この偏光格子のパターン(52)のサイズは第1のパターン(22)に相当し、そしてこの偏光格子のパターン(52)は、第1のパターン(22)に平行に配置されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項14】
光が情報媒体(10)の背面(10b)から入射することを特徴とする、請求項13に記載の情報媒体。
【請求項15】
第1のパターン(22)に垂直に第2のパターン(60)が配置され、これら第2のパターンのサイズは第1のパターン(22)に相当することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項16】
基板(12)と金属膜(40)の間に接着層が設けられていることを特徴とする、請求項2から15のいずれかに記載の情報媒体。
【請求項17】
接着層が、酸化チタンから、または光損失が極めてわずかなそのほかの金属からなることを特徴とする、請求項16に記載の情報媒体。
【請求項18】
パターン化されていない領域(26)が入射光を吸収することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項19】
第1のパターン(22)が、情報媒体(10)のすべての識別マーク(20)において互いに平行に配置されていることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項20】
情報媒体(10)がディスク状であり、トラック(14)が円周状に配置されていることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の情報媒体。
【請求項21】
第1のパターン(22)が、情報媒体(10)のすべての識別マーク(20)においてほぼ半径方向に、あるいはほぼ同心円位置に配置され、この場合1つの識別マーク(20)内にある第1のパターン(22)は、互いにほぼ平行に位置することを特徴とする、請求項20に記載の情報媒体。
【請求項22】
基板(12)が射出成形法で製造されることを特徴とする、請求項2から21のいずれかに記載の情報媒体。
【請求項23】
リニアまたはロータリーエンコーダーに、請求項1から22のいずれか一項に記載の情報媒体を用いること。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate


【公開番号】特開2007−172817(P2007−172817A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341003(P2006−341003)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(506267488)ジク ステグマン ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】