感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法
【課題】従来の電極方法であるフォトリソグラフィ、マスクスパッタリングは、工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において解決するには困難な課題があり、インクジェット方式では高精細度なパターンが得られないという課題がある。
【解決手段】感光性塗布型電極材料を用いて、所望の電極パターンニングを行う。本発明による電極作成工程において、コストメリットがある拡散光を光源とするランプを用いて第1の露光と第1の露光よりも大きい露光量をもった第2の露光を施すことで、所望の電極パターンを得ることができる。拡散光を用いた2回露光プロセスによって、例えばTFT作成において従来の方法では解決できない材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応という課題かつ、インクジェット方式では解決できない高精細パターニングを解決するものである。
【解決手段】感光性塗布型電極材料を用いて、所望の電極パターンニングを行う。本発明による電極作成工程において、コストメリットがある拡散光を光源とするランプを用いて第1の露光と第1の露光よりも大きい露光量をもった第2の露光を施すことで、所望の電極パターンを得ることができる。拡散光を用いた2回露光プロセスによって、例えばTFT作成において従来の方法では解決できない材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応という課題かつ、インクジェット方式では解決できない高精細パターニングを解決するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子、有機EL素子、液晶表示装置などの分野において、様々な形状、用途の電極及び配線のパターンがされており、特に駆動素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いるアクティブマトリクス駆動方式を採用する場合、絶縁層を介してTFT電極部と素子を積層して形成することが多い。
【0003】
通常、有機ELや液晶表示装置に使用されるTFT電極部を作成する方法としてフォトリソグラフィ、マスクスパッタリング、インクジェット印刷などが用いられている。
【0004】
これらのうち、一般的にTFT電極パターニングを行う場合、フォトリソグラフィが広く適用されている。しかしフォトリソグラフィは目的材料で形成した膜上に、一旦フォトレジスト膜を積層し、これを露光、現像しフォトレジストパターンを作製する工程を数回必要とするため、工程が複雑で、エネルギー、材料等の利用効率が低く、コストが高価となるという課題が付随する。
【0005】
また配線電極で使用されるITO(Indium Tin Oxide:以下、ITO)などをパターニングする際にマスクスパッタリングで作成されることが一般的である。しかしマスクスパッタリングはマスク開発費用と併せて材料使用効率が悪いため、コストが高価になるという課題と基板とマスクの位置合わせを厳密に設定しなければ、所望のITOパターンが得られないという技術的な課題がある。
【0006】
更に以上の有機ELや液晶表示装置に用いられるTFT、配線電極に使用されるITOにおいて基板サイズにより対応できる装置が異なるため、近年の基板サイズの大型化に伴う装置の変更、改造によるコストが発生する。
【0007】
そこで、例えば特許文献1ではマスクレス、材料使用効率、大面積対応可という利点からインクジェット印刷による有機EL素子作成方法が検討されている。また特許文献2のように有機ELの品質向上のためTFTの凹部に導電性高分子を埋める方法としてインクジェット方式が提案されており、特許文献3では基板上の配線をインクジェット方式で成膜する方法が提案されている。
【0008】
これらのように近年では工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応できる方法としてインクジェットによる素子作成方法及び電極作成方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−231264号公報
【特許文献2】特開2009−211859号公報
【特許文献3】特開2009−38185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の電極作成方法であるフォトリソグラフィ、マスクスパッタリングは上述したように、工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において解決するには困難な課題がある。そこでこれらの課題を持たないインクジェット方式による素子作成方法及び電極作成方法が検討されている。
【0011】
しかし、インクジェット方式では感光性塗布型電極材料(以下、電極材料)と対象となる基板との濡れ性、吐出量、吐出環境によって精細度が著しく悪くなり、所望のパターン輪郭が得られないという課題がある。また、ヘッド部から噴出された導電性インクが基板に付着するまでに位置ずれを起こすことが知られており、所望の位置に正確なパターンが施せない場合もある。
【0012】
特に高解像度の表示装置の場合、このように電極及び配線のパターニング精度が悪いものだと、画素間でショートまたは断線が生じ、正常な表示機能を果たさない場合がある。
【0013】
本発明では上記のような課題を克服し、簡便な方法で高解像度且つ高精度の電極及び配線パターンを形成する方法を提案するものである。本発明によれば、従来の金属等を成膜し、レジストを塗布し露光現像後、エッチングしてパターン形成する方法よりもはるかに工程が簡略化できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、基板上に感光性有機物からなる電極材料によって電子回路を形成する感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法において、基板上にゲート電極および絶縁膜を形成する工程と、前記基板上に電極材料を塗布しプリベーク乾燥させる工程と、前記電極材料に所定のマスクを通して光を照射する第1の露光工程と、前記電極材料を現像液に浸漬し不要な部分を除去する工程と、前記電極材料を前記第1の露光工程よりも照射強度の強い光により硬化させる第2の露光工程と、を備えることを特徴とする感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法である。
【0015】
本発明ではガラス基板上にスクリーン印刷及びスピンコータを用いて電極および配線をパターンニングするものであり、使用する電極材料はPDOT:PSSやポリアニリン系、銀粒子が混入されている電極材料である。
【0016】
通常これらの材料で電極を作成する場合は精細度の低いパターン、若しくは基板全体に塗布する場合が多い。これらの理由として精細度の高いパターンの場合、現像の際に電極部分が断線、または電極間などに電極材料が残り、短絡を起こす現象など、所望のパターンが得られないことを起因とする。
【0017】
また露光の光源として基板表面に対して垂直に進入するような垂直な光(以下、平行光)を用いる場合が多い。この理由もマスク露光を行う際に基板表面に対してランダムな方向で進入するような光(以下、拡散光)だと不必要な電極部分まで露光されることになり、所望のパターンが得られないことを起因とする。しかし、通常平行光は設備上コストが高く、また基板と光源の平行度がパターンニング精度に大きく影響を与えるため、露光の際はその都度、基板位置を固定する必要がある。以上のように平行光はコストと生産性の両面で課題を抱えている。
【0018】
本発明では印刷と拡散光を用いることで、コストと生産性を両立させ、さらに通常のインクジェット方法よりもパターンニング精度が向上した電極作成方法を提供するものである。また本発明はパターンニングを目的とする第1の拡散光と導電性を発現させることを目的とする第1の露光よりも大きい照射量を持った第2の拡散光を用いるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電極材料を用いた2回露光による電極作成方法によると、従来の方法で課題となった工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において、その課題を解決するものとなり、簡便、低コストかつ高精度な配線などを含む電極パターニングを提供するものとなる。
【0020】
なお、課題を解決するための手段において電極材料の塗布法として、スクリーン印刷とスピンコーターによる方法を挙げたが、塗布法はそれに限定されるものではなく、ロールコーターやバーコーター等、適宜に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に用いた基板にスクリーン印刷による外形印刷を施した基板状態を模式的に示すものである。
【図2】本発明に用いたエッチングを施した基板状態を模式的に示すものである。
【図3】本発明に用いた電極材料の断面構成を模式的に示すものである。
【図4】本発明に用いたプリベーク後の電極材料の断面構成を模式的に示すものである。
【図5】本発明に用いた第1のUV露光を施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図6】本発明に用いた第2のUV露光を施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図7】本発明に用いたポストベークを施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図8】本発明に用いた実施例1における予めガラス上にゲート電極とその電極上に絶縁膜を施した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図9】本発明に用いた実施例2における電極材料を塗布した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図10】本発明に用いた背面から第1のUV露光を照射している基板断面構成を模式的に示すものである。
【図11】本発明に用いた現像工程を施した後の基板状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図12】本発明に用いた液体有機半導体を滴下している状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図13】本発明に用いた実施例1におけるプラナー型有機TFT完成状態の基板断面構成を模式的に示すものである。
【図14】本発明に用いた実施例2における絶縁層上に液体有機半導体を滴下している状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図15】本発明に用いた実施例2における半導体層上に電極材料を塗布した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図16】本発明に用いた実施例2における基板背面からUV露光を照射している断面構成を模式的に示すものである。
【図17】本発明に用いた実施例2におけるスタガー型有機TFT完成状態の基板断面構成を模式的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電極材料を用いた2回露光による電極作成方法を概念的に示す図1から図7を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
図1にスクリーン印刷による外形印刷を模式的に示し、図2においては図1にエッチングを施した状態を模式的に表したものを示す。
【0023】
本発明では電極材料2をガラス基板1上にスクリーン印刷で部分塗布、若しくはスピンコータで全面塗布を施す。所望のパターンが部分的に高精細である際、スクリーン印刷で予めパターンの外形を印刷することで、スピンコータと比較し材料2の使用量を減らすことができる。また後に述べるエッチング工程において、溶出させる材料1が少なくなるためエッチング溶液の連続使用回数を多くすることが可能である。
【0024】
図3に本発明で使用する電極材料の断面構成を模式的に示す。
上記塗布工程を経た後、第1の加熱工程として、基板1上の塗布電極材料2内の溶媒3を気化させるため、ホットプレートを用いて基板1裏面から熱を加える(以下、プリベーク)。ここで基板1表面から熱を加えた場合、電極材料2表面から乾燥するため、内部と表面の体積収縮率が異なり、表面の体積変化に材料内部が追従できないため、電極に亀裂が生じることがある。従って、滞りなく内部の溶媒が気化するよう、裏面から熱を掛けることが望ましい。
【0025】
また、溶媒3を気化させる理由としては2点挙げられる。本発明で使用される電極材料2は溶媒3に溶けている感光性のポリマーに銀粒子若しくは銀ナノ粒子(以下、金属粒子)を分散させているため、溶媒3を気化させることで金属粒子4間の距離が近くなり、後に述べる第2の加熱工程(以下、ポストベーク)によって、金属粒子4間が接合し易くなり、結果、電気抵抗を低くすることが出来る。また、感光性のポリマーの濃度が高くなるのでUVに効率良く反応することができ、低露光量で感光することが出来る。
【0026】
図4にプリベーク後の基板断面状態(プリベークを施した後の感光性ポリマー5)を断面図として示し、図5に第1のUV露光を施した後の電極材料反応状態(有機活性種が発現した感光性ポリマー7)を断面図として示す。上記プリベークを経た後、UV光6による露光を施す。露光方法としては一般的にマスクを介する露光(以下、マスク露光)があるが、予めガラス基板1上にパターンとなる遮光部分を成膜し、その上から塗布型感光性材料を塗布し、裏面から露光することで所望のパターンを得る露光方法(以下、背面露光)も適用することが出来るが、TFTにおいてソース電極とドレイン電極を作成する場合、チャネル幅が非常に狭いので背面露光が望ましい。
【0027】
以上のような露光方法を用いる場合、電極材料2の反応露光量に対して1%から10%程度のUV照射量を拡散光として露光する(以下、第1のUV露光)。この場合、マスク開口部における電極膜表面近傍では、UV光と電極材料2内の感光ポリマーが反応して反応活性種が発生する。このように発生した反応活性種は有機反応活性種としての反応と金属錯体としての反応の2種類があり、前者はエッチング工程において、現像液に溶出しないというレジスト材としての役割を持ち、後者は金属粒子4同士の間に存在することで電極の伝導性を発現させる役割を持つ。
【0028】
マスク遮光部においては、遮光部分の直下の電極材料2にもUV光が回り込むが、元来、露光するUV光は電極材料2の反応露光量よりも小さい上、マスク開口部のUV光の光量と比較してマスク遮光部直下に回りこむUV光の露光量は更に小さいものとなり、電極材料に反応を及ぼすことはなく、反応活性種が発生することは無い。
【0029】
以上のように、第1のUV露光を施した後、現像液を用いたエッチングにより、反応活性種が存在する部分は電極材料が溶出することなく、反応活性種が無い部分のみ溶出することで所望な高精細の電極パターンを得ることが出来る(以下、現像工程)。但し第1の露光量では表面近傍の有機反応活性種としての機能が発現するが、金属錯体としての伝導性機能を発現させるに至らない。
【0030】
図6に第2のUV露光を施した電極材料反応状態(金属錯体としての反応が発現した感光性ポリマー8)を模式的に表す。図5で説明した電極材料2の反応露光量よりも十分に大きい露光量であるUV光を照射することで、有機反応活性種は勿論、金属錯体としての機能を発現させることができる。
【0031】
図7にポストベークを施した後の電極材料反応状態(ポストベークを施した後の感光性ポリマー9)を模式的に表す。図6で説明したように第2の露光後の感光ポリマーは金属錯体としての機能も発現するが、それだけでは電気抵抗が高いものとなる。ここでポストベークを施すことで、金属粒子4が焼結し、粒子同士が結合し、金属錯体が金属粒子4の隙間を埋めるように存在することによって電気抵抗が低い状態となり、電極として十分な機能を得ることが出来る。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
本実施例におけるパターニング方法を図8から図13を用いて説明する。また、本実施例はTFTの構成の一つである半導体層が最表面に成膜されているプラナー型に適用した例である。図8は本実施例において、予めガラス基板20上にゲート電極10とその電極上に絶縁膜11を施した状態の断面図である。本実施例のゲート電極10は感光性銀粒子のパターニングによるものである(三菱製紙製)。また絶縁膜11はポリイミド系の有機絶縁膜をスピンコータやスクリーン印刷によって形成している。
【0033】
図9は本実施例において、電極材料12を塗布した状態の断面図である。
図8で説明した構成に加え、電極材料12(東レ:Raybrid)を有機絶縁膜11上にスクリーン印刷により印刷する。塗布する膜厚は4μmから10μm程度が電気抵抗を低く抑えつつ、所望のパターンを得られやすい。
【0034】
次にプリベーク工程を施す。ここでは塗布されたガラス基板20を裏面より加熱する。本実施例で使用する電極材料12の溶媒は高沸点のため、80℃から100℃程度、60secから120secの間が加熱条件として好ましい。これらの加熱温度が低く若しくは加熱時間が短いと電極材料12中の溶媒が揮発せず、表面が粘着性を帯びることがある。またその後UV露光による反応も起き難い。対して、加熱温度が高い、若しくは加熱時間が長い場合、電極材料12が熱によって過剰に反応し、塗布されている全領域において有機反応活性種が発現し、UV露光後の現像工程において、所望のパターンが得られ難い。
【0035】
図10は図9の構成に背面からUV露光を照射している断面図である。
電極材料12が条件に従って加熱された後、第1の露光として背面露光を施す。このときの露光量は3mJ/cm2から10mJ/cm2が望ましい。これ以上の露光量は図10におけるゲート電極10下に位置する電極材料12層まで影響を及ぼし、反応を起こさせ、所望のパターンを得ることは出来ない。
【0036】
図11に現像工程を施した後の基板状態を断面的に示す。
ゲート電極10上に塗布された電極材料12はUV露光による影響が小さいため、有機反応活性種が発現せず、レジストとしての機能が無いため、エッチングされる。またゲート電極10直上以外の電極材料12はUVで露光されるため、有機反応活性種が発現し、レジストとしての機能を有するためエッチングされず、電極材料12は残ったままとなる。従ってこの状態で所望のパターンが得られる。この工程における現像液として炭酸Na水溶液を用いており、その重量濃度は2%から5%が好ましい。濃度が5%を超えるものだと絶縁膜層11と反応する場合があり、その際、絶縁膜11表面がダメージを受け、ゲート電極10とソース電極間の電圧が高い場合、絶縁破壊を起こし、絶縁膜11としての機能が損なわれる場合がある。このときTFTとして基本性能であるスイッチング機能が損なわれる。現像方法は振動現像方法を用いたが、他に浸漬する方法(ディップ現像)、現像液を基板上に滴下し現像する方法(ステップパドル現像)などを用いることも可能である。いずれの現像方法も温度制御された現像液と現像時間を電極の膜厚に合わせ調節する必要がある。本実施例で用いた振動現像方法では現像液温度を室温(20℃)に保ち、10Hzから50Hz程度の振動数で3分から10分程度現像している。条件によっては絶縁膜11に対してダメージを及ぼす場合がある。
【0037】
次に第1の露光よりも露光量が大きい第2の露光を背面露光で施す。このときの露光量は電極材料12の反応露光量よりも十分に大きく(500mJ/cm2から1000mJ/cm2が好ましい)、本実施例では500mJ/cm2を露光した。これにより、金属錯体としての反応が電極材料12内で進み、伝導性機能を発現させることが出来る。
【0038】
次にポストベーク工程を施す。このとき温度180℃から200℃程度、かつ1時間程度の条件で焼成を行う。温度が200°を超えるとポリイミド系の絶縁膜11が変異を起こす場合があり、絶縁膜11としての機能、およびこの後成膜される有機半導体層において汚染を及ぼす場合があるので、上記の条件が望ましい。
【0039】
図12に液体有機半導体を滴下している状態を断面図として示す。
従来TFTで用いられる半導体層はアモルファスシリコン(以下、α−Si)、ポリシリコン(以下、P−Si)である。しかし、これらの成膜方法はレーザや真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)などによる成膜が一般的であるが、これらの方法では工程における基板にかかる温度が高く、成膜される基板側は耐熱である必要がある。本実施例では半導体層成膜材料として、塗布型有機半導体材料14(メルク:P−BTTT)を選定し、これを塗布するための装置13から滴下する。塗布型有機半導体材料14の特徴として、低温でかつディスペンサーなどやインクジェット、スピンコータやバーコータによって塗布することが出来るため、工程も簡略化でき、大掛かりな装置も必要ないため、α−Siやコストが低く抑えられる。また基板も耐熱である必要が無いためPETなどの樹脂系などにも成膜することが出来る。
【0040】
ここで塗布型半導体材料14を図11におけるゲート電極10直上(以下、チャネル)に滴下する。またこのときの濃度は0.1%から1%程度のものを使用する。
【0041】
図13に本実施例における有機TFT完成状態の基板断面図を示す。
滴下した有機半導体材料15は80℃、5分程度加熱し溶媒を気化させる。この後の徐冷条件によって半導体層内の構造が大きく変化する。80℃から60分程度で室温20℃になる程度の徐冷速度で成膜し、全て塗布型材料で構成されるプラナー型プリンタブル有機TFT作成が完了する。
【実施例2】
【0042】
本実施例におけるパターニング方法を図14から図17を用いて説明する。
実施例2ではソース電極、ドレイン電極層の下に半導体層を形成するスタガー型のTFT構成に適用した例である。また本実施例は実施例1の半導体成膜工程と電極作成工程を入れ替えた内容である。
【0043】
図14に絶縁層11上に装置13から液体有機半導体14を滴下している状態を断面図として示す。材料、滴下条件、成膜条件は実施例1と同一である。
図15に半導体層15上に電極材料12を塗布した状態を断面図として示す。材料、塗布条件、成膜条件は実施例1と同一である。
【0044】
図16は図15の構成に背面からUV露光を照射している断面図である。UV露光量は実施例1よりも同等かそれ以下が望ましい。露光量が大きい場合は半導体層15にダメージを及ぼし、スレッシュホールド電圧(スイッチON/OFF電圧)が大きくなるなどの弊害が起こる場合がある。また第2の露光工程についても同様なことが言える。
【0045】
プリベーク、ポストベークの条件は実施例1と同一である。
図17に本実施例における有機TFT完成状態の基板断面図を示す。
以上の内容を以って全て塗布型材料で構成されるスタガー型プリンタブル有機TFT作成が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、例えば有機ELや液晶表示装置などおけるアクティブマトリクス駆動方式で作成されるTFT素子作成やタッチパネルなどの荒い精細度でも機能的に問題の無い配線電極作成において、従来の方法で課題となった工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において、その課題を解決するものとなり、簡便、低コストかつ高精度な配線などを含む電極パターニングを提供するものとなる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガラス基板
2 電極材料
3 感光性のポリマーを含む溶媒
4 金属粒子
5 プリベークを施した後の感光性ポリマー
6 UV光(紫外線)
7 有機活性種が発現した感光性ポリマー
8 金属錯体としての反応が発現した感光性ポリマー
9 ポストベークを施した後の感光性ポリマー
10 ゲート電極
11 絶縁膜
12 電極材料
13 塗布型有機半導体材料を塗布する装置
14 塗布型有機半導体材料
15 成膜された後の塗布型有機半導体材料
20 ガラス基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子、有機EL素子、液晶表示装置などの分野において、様々な形状、用途の電極及び配線のパターンがされており、特に駆動素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いるアクティブマトリクス駆動方式を採用する場合、絶縁層を介してTFT電極部と素子を積層して形成することが多い。
【0003】
通常、有機ELや液晶表示装置に使用されるTFT電極部を作成する方法としてフォトリソグラフィ、マスクスパッタリング、インクジェット印刷などが用いられている。
【0004】
これらのうち、一般的にTFT電極パターニングを行う場合、フォトリソグラフィが広く適用されている。しかしフォトリソグラフィは目的材料で形成した膜上に、一旦フォトレジスト膜を積層し、これを露光、現像しフォトレジストパターンを作製する工程を数回必要とするため、工程が複雑で、エネルギー、材料等の利用効率が低く、コストが高価となるという課題が付随する。
【0005】
また配線電極で使用されるITO(Indium Tin Oxide:以下、ITO)などをパターニングする際にマスクスパッタリングで作成されることが一般的である。しかしマスクスパッタリングはマスク開発費用と併せて材料使用効率が悪いため、コストが高価になるという課題と基板とマスクの位置合わせを厳密に設定しなければ、所望のITOパターンが得られないという技術的な課題がある。
【0006】
更に以上の有機ELや液晶表示装置に用いられるTFT、配線電極に使用されるITOにおいて基板サイズにより対応できる装置が異なるため、近年の基板サイズの大型化に伴う装置の変更、改造によるコストが発生する。
【0007】
そこで、例えば特許文献1ではマスクレス、材料使用効率、大面積対応可という利点からインクジェット印刷による有機EL素子作成方法が検討されている。また特許文献2のように有機ELの品質向上のためTFTの凹部に導電性高分子を埋める方法としてインクジェット方式が提案されており、特許文献3では基板上の配線をインクジェット方式で成膜する方法が提案されている。
【0008】
これらのように近年では工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応できる方法としてインクジェットによる素子作成方法及び電極作成方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−231264号公報
【特許文献2】特開2009−211859号公報
【特許文献3】特開2009−38185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の電極作成方法であるフォトリソグラフィ、マスクスパッタリングは上述したように、工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において解決するには困難な課題がある。そこでこれらの課題を持たないインクジェット方式による素子作成方法及び電極作成方法が検討されている。
【0011】
しかし、インクジェット方式では感光性塗布型電極材料(以下、電極材料)と対象となる基板との濡れ性、吐出量、吐出環境によって精細度が著しく悪くなり、所望のパターン輪郭が得られないという課題がある。また、ヘッド部から噴出された導電性インクが基板に付着するまでに位置ずれを起こすことが知られており、所望の位置に正確なパターンが施せない場合もある。
【0012】
特に高解像度の表示装置の場合、このように電極及び配線のパターニング精度が悪いものだと、画素間でショートまたは断線が生じ、正常な表示機能を果たさない場合がある。
【0013】
本発明では上記のような課題を克服し、簡便な方法で高解像度且つ高精度の電極及び配線パターンを形成する方法を提案するものである。本発明によれば、従来の金属等を成膜し、レジストを塗布し露光現像後、エッチングしてパターン形成する方法よりもはるかに工程が簡略化できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、基板上に感光性有機物からなる電極材料によって電子回路を形成する感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法において、基板上にゲート電極および絶縁膜を形成する工程と、前記基板上に電極材料を塗布しプリベーク乾燥させる工程と、前記電極材料に所定のマスクを通して光を照射する第1の露光工程と、前記電極材料を現像液に浸漬し不要な部分を除去する工程と、前記電極材料を前記第1の露光工程よりも照射強度の強い光により硬化させる第2の露光工程と、を備えることを特徴とする感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法である。
【0015】
本発明ではガラス基板上にスクリーン印刷及びスピンコータを用いて電極および配線をパターンニングするものであり、使用する電極材料はPDOT:PSSやポリアニリン系、銀粒子が混入されている電極材料である。
【0016】
通常これらの材料で電極を作成する場合は精細度の低いパターン、若しくは基板全体に塗布する場合が多い。これらの理由として精細度の高いパターンの場合、現像の際に電極部分が断線、または電極間などに電極材料が残り、短絡を起こす現象など、所望のパターンが得られないことを起因とする。
【0017】
また露光の光源として基板表面に対して垂直に進入するような垂直な光(以下、平行光)を用いる場合が多い。この理由もマスク露光を行う際に基板表面に対してランダムな方向で進入するような光(以下、拡散光)だと不必要な電極部分まで露光されることになり、所望のパターンが得られないことを起因とする。しかし、通常平行光は設備上コストが高く、また基板と光源の平行度がパターンニング精度に大きく影響を与えるため、露光の際はその都度、基板位置を固定する必要がある。以上のように平行光はコストと生産性の両面で課題を抱えている。
【0018】
本発明では印刷と拡散光を用いることで、コストと生産性を両立させ、さらに通常のインクジェット方法よりもパターンニング精度が向上した電極作成方法を提供するものである。また本発明はパターンニングを目的とする第1の拡散光と導電性を発現させることを目的とする第1の露光よりも大きい照射量を持った第2の拡散光を用いるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電極材料を用いた2回露光による電極作成方法によると、従来の方法で課題となった工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において、その課題を解決するものとなり、簡便、低コストかつ高精度な配線などを含む電極パターニングを提供するものとなる。
【0020】
なお、課題を解決するための手段において電極材料の塗布法として、スクリーン印刷とスピンコーターによる方法を挙げたが、塗布法はそれに限定されるものではなく、ロールコーターやバーコーター等、適宜に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に用いた基板にスクリーン印刷による外形印刷を施した基板状態を模式的に示すものである。
【図2】本発明に用いたエッチングを施した基板状態を模式的に示すものである。
【図3】本発明に用いた電極材料の断面構成を模式的に示すものである。
【図4】本発明に用いたプリベーク後の電極材料の断面構成を模式的に示すものである。
【図5】本発明に用いた第1のUV露光を施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図6】本発明に用いた第2のUV露光を施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図7】本発明に用いたポストベークを施した後の電極材料反応状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図8】本発明に用いた実施例1における予めガラス上にゲート電極とその電極上に絶縁膜を施した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図9】本発明に用いた実施例2における電極材料を塗布した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図10】本発明に用いた背面から第1のUV露光を照射している基板断面構成を模式的に示すものである。
【図11】本発明に用いた現像工程を施した後の基板状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図12】本発明に用いた液体有機半導体を滴下している状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図13】本発明に用いた実施例1におけるプラナー型有機TFT完成状態の基板断面構成を模式的に示すものである。
【図14】本発明に用いた実施例2における絶縁層上に液体有機半導体を滴下している状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図15】本発明に用いた実施例2における半導体層上に電極材料を塗布した状態の断面構成を模式的に示すものである。
【図16】本発明に用いた実施例2における基板背面からUV露光を照射している断面構成を模式的に示すものである。
【図17】本発明に用いた実施例2におけるスタガー型有機TFT完成状態の基板断面構成を模式的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電極材料を用いた2回露光による電極作成方法を概念的に示す図1から図7を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
図1にスクリーン印刷による外形印刷を模式的に示し、図2においては図1にエッチングを施した状態を模式的に表したものを示す。
【0023】
本発明では電極材料2をガラス基板1上にスクリーン印刷で部分塗布、若しくはスピンコータで全面塗布を施す。所望のパターンが部分的に高精細である際、スクリーン印刷で予めパターンの外形を印刷することで、スピンコータと比較し材料2の使用量を減らすことができる。また後に述べるエッチング工程において、溶出させる材料1が少なくなるためエッチング溶液の連続使用回数を多くすることが可能である。
【0024】
図3に本発明で使用する電極材料の断面構成を模式的に示す。
上記塗布工程を経た後、第1の加熱工程として、基板1上の塗布電極材料2内の溶媒3を気化させるため、ホットプレートを用いて基板1裏面から熱を加える(以下、プリベーク)。ここで基板1表面から熱を加えた場合、電極材料2表面から乾燥するため、内部と表面の体積収縮率が異なり、表面の体積変化に材料内部が追従できないため、電極に亀裂が生じることがある。従って、滞りなく内部の溶媒が気化するよう、裏面から熱を掛けることが望ましい。
【0025】
また、溶媒3を気化させる理由としては2点挙げられる。本発明で使用される電極材料2は溶媒3に溶けている感光性のポリマーに銀粒子若しくは銀ナノ粒子(以下、金属粒子)を分散させているため、溶媒3を気化させることで金属粒子4間の距離が近くなり、後に述べる第2の加熱工程(以下、ポストベーク)によって、金属粒子4間が接合し易くなり、結果、電気抵抗を低くすることが出来る。また、感光性のポリマーの濃度が高くなるのでUVに効率良く反応することができ、低露光量で感光することが出来る。
【0026】
図4にプリベーク後の基板断面状態(プリベークを施した後の感光性ポリマー5)を断面図として示し、図5に第1のUV露光を施した後の電極材料反応状態(有機活性種が発現した感光性ポリマー7)を断面図として示す。上記プリベークを経た後、UV光6による露光を施す。露光方法としては一般的にマスクを介する露光(以下、マスク露光)があるが、予めガラス基板1上にパターンとなる遮光部分を成膜し、その上から塗布型感光性材料を塗布し、裏面から露光することで所望のパターンを得る露光方法(以下、背面露光)も適用することが出来るが、TFTにおいてソース電極とドレイン電極を作成する場合、チャネル幅が非常に狭いので背面露光が望ましい。
【0027】
以上のような露光方法を用いる場合、電極材料2の反応露光量に対して1%から10%程度のUV照射量を拡散光として露光する(以下、第1のUV露光)。この場合、マスク開口部における電極膜表面近傍では、UV光と電極材料2内の感光ポリマーが反応して反応活性種が発生する。このように発生した反応活性種は有機反応活性種としての反応と金属錯体としての反応の2種類があり、前者はエッチング工程において、現像液に溶出しないというレジスト材としての役割を持ち、後者は金属粒子4同士の間に存在することで電極の伝導性を発現させる役割を持つ。
【0028】
マスク遮光部においては、遮光部分の直下の電極材料2にもUV光が回り込むが、元来、露光するUV光は電極材料2の反応露光量よりも小さい上、マスク開口部のUV光の光量と比較してマスク遮光部直下に回りこむUV光の露光量は更に小さいものとなり、電極材料に反応を及ぼすことはなく、反応活性種が発生することは無い。
【0029】
以上のように、第1のUV露光を施した後、現像液を用いたエッチングにより、反応活性種が存在する部分は電極材料が溶出することなく、反応活性種が無い部分のみ溶出することで所望な高精細の電極パターンを得ることが出来る(以下、現像工程)。但し第1の露光量では表面近傍の有機反応活性種としての機能が発現するが、金属錯体としての伝導性機能を発現させるに至らない。
【0030】
図6に第2のUV露光を施した電極材料反応状態(金属錯体としての反応が発現した感光性ポリマー8)を模式的に表す。図5で説明した電極材料2の反応露光量よりも十分に大きい露光量であるUV光を照射することで、有機反応活性種は勿論、金属錯体としての機能を発現させることができる。
【0031】
図7にポストベークを施した後の電極材料反応状態(ポストベークを施した後の感光性ポリマー9)を模式的に表す。図6で説明したように第2の露光後の感光ポリマーは金属錯体としての機能も発現するが、それだけでは電気抵抗が高いものとなる。ここでポストベークを施すことで、金属粒子4が焼結し、粒子同士が結合し、金属錯体が金属粒子4の隙間を埋めるように存在することによって電気抵抗が低い状態となり、電極として十分な機能を得ることが出来る。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
本実施例におけるパターニング方法を図8から図13を用いて説明する。また、本実施例はTFTの構成の一つである半導体層が最表面に成膜されているプラナー型に適用した例である。図8は本実施例において、予めガラス基板20上にゲート電極10とその電極上に絶縁膜11を施した状態の断面図である。本実施例のゲート電極10は感光性銀粒子のパターニングによるものである(三菱製紙製)。また絶縁膜11はポリイミド系の有機絶縁膜をスピンコータやスクリーン印刷によって形成している。
【0033】
図9は本実施例において、電極材料12を塗布した状態の断面図である。
図8で説明した構成に加え、電極材料12(東レ:Raybrid)を有機絶縁膜11上にスクリーン印刷により印刷する。塗布する膜厚は4μmから10μm程度が電気抵抗を低く抑えつつ、所望のパターンを得られやすい。
【0034】
次にプリベーク工程を施す。ここでは塗布されたガラス基板20を裏面より加熱する。本実施例で使用する電極材料12の溶媒は高沸点のため、80℃から100℃程度、60secから120secの間が加熱条件として好ましい。これらの加熱温度が低く若しくは加熱時間が短いと電極材料12中の溶媒が揮発せず、表面が粘着性を帯びることがある。またその後UV露光による反応も起き難い。対して、加熱温度が高い、若しくは加熱時間が長い場合、電極材料12が熱によって過剰に反応し、塗布されている全領域において有機反応活性種が発現し、UV露光後の現像工程において、所望のパターンが得られ難い。
【0035】
図10は図9の構成に背面からUV露光を照射している断面図である。
電極材料12が条件に従って加熱された後、第1の露光として背面露光を施す。このときの露光量は3mJ/cm2から10mJ/cm2が望ましい。これ以上の露光量は図10におけるゲート電極10下に位置する電極材料12層まで影響を及ぼし、反応を起こさせ、所望のパターンを得ることは出来ない。
【0036】
図11に現像工程を施した後の基板状態を断面的に示す。
ゲート電極10上に塗布された電極材料12はUV露光による影響が小さいため、有機反応活性種が発現せず、レジストとしての機能が無いため、エッチングされる。またゲート電極10直上以外の電極材料12はUVで露光されるため、有機反応活性種が発現し、レジストとしての機能を有するためエッチングされず、電極材料12は残ったままとなる。従ってこの状態で所望のパターンが得られる。この工程における現像液として炭酸Na水溶液を用いており、その重量濃度は2%から5%が好ましい。濃度が5%を超えるものだと絶縁膜層11と反応する場合があり、その際、絶縁膜11表面がダメージを受け、ゲート電極10とソース電極間の電圧が高い場合、絶縁破壊を起こし、絶縁膜11としての機能が損なわれる場合がある。このときTFTとして基本性能であるスイッチング機能が損なわれる。現像方法は振動現像方法を用いたが、他に浸漬する方法(ディップ現像)、現像液を基板上に滴下し現像する方法(ステップパドル現像)などを用いることも可能である。いずれの現像方法も温度制御された現像液と現像時間を電極の膜厚に合わせ調節する必要がある。本実施例で用いた振動現像方法では現像液温度を室温(20℃)に保ち、10Hzから50Hz程度の振動数で3分から10分程度現像している。条件によっては絶縁膜11に対してダメージを及ぼす場合がある。
【0037】
次に第1の露光よりも露光量が大きい第2の露光を背面露光で施す。このときの露光量は電極材料12の反応露光量よりも十分に大きく(500mJ/cm2から1000mJ/cm2が好ましい)、本実施例では500mJ/cm2を露光した。これにより、金属錯体としての反応が電極材料12内で進み、伝導性機能を発現させることが出来る。
【0038】
次にポストベーク工程を施す。このとき温度180℃から200℃程度、かつ1時間程度の条件で焼成を行う。温度が200°を超えるとポリイミド系の絶縁膜11が変異を起こす場合があり、絶縁膜11としての機能、およびこの後成膜される有機半導体層において汚染を及ぼす場合があるので、上記の条件が望ましい。
【0039】
図12に液体有機半導体を滴下している状態を断面図として示す。
従来TFTで用いられる半導体層はアモルファスシリコン(以下、α−Si)、ポリシリコン(以下、P−Si)である。しかし、これらの成膜方法はレーザや真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)などによる成膜が一般的であるが、これらの方法では工程における基板にかかる温度が高く、成膜される基板側は耐熱である必要がある。本実施例では半導体層成膜材料として、塗布型有機半導体材料14(メルク:P−BTTT)を選定し、これを塗布するための装置13から滴下する。塗布型有機半導体材料14の特徴として、低温でかつディスペンサーなどやインクジェット、スピンコータやバーコータによって塗布することが出来るため、工程も簡略化でき、大掛かりな装置も必要ないため、α−Siやコストが低く抑えられる。また基板も耐熱である必要が無いためPETなどの樹脂系などにも成膜することが出来る。
【0040】
ここで塗布型半導体材料14を図11におけるゲート電極10直上(以下、チャネル)に滴下する。またこのときの濃度は0.1%から1%程度のものを使用する。
【0041】
図13に本実施例における有機TFT完成状態の基板断面図を示す。
滴下した有機半導体材料15は80℃、5分程度加熱し溶媒を気化させる。この後の徐冷条件によって半導体層内の構造が大きく変化する。80℃から60分程度で室温20℃になる程度の徐冷速度で成膜し、全て塗布型材料で構成されるプラナー型プリンタブル有機TFT作成が完了する。
【実施例2】
【0042】
本実施例におけるパターニング方法を図14から図17を用いて説明する。
実施例2ではソース電極、ドレイン電極層の下に半導体層を形成するスタガー型のTFT構成に適用した例である。また本実施例は実施例1の半導体成膜工程と電極作成工程を入れ替えた内容である。
【0043】
図14に絶縁層11上に装置13から液体有機半導体14を滴下している状態を断面図として示す。材料、滴下条件、成膜条件は実施例1と同一である。
図15に半導体層15上に電極材料12を塗布した状態を断面図として示す。材料、塗布条件、成膜条件は実施例1と同一である。
【0044】
図16は図15の構成に背面からUV露光を照射している断面図である。UV露光量は実施例1よりも同等かそれ以下が望ましい。露光量が大きい場合は半導体層15にダメージを及ぼし、スレッシュホールド電圧(スイッチON/OFF電圧)が大きくなるなどの弊害が起こる場合がある。また第2の露光工程についても同様なことが言える。
【0045】
プリベーク、ポストベークの条件は実施例1と同一である。
図17に本実施例における有機TFT完成状態の基板断面図を示す。
以上の内容を以って全て塗布型材料で構成されるスタガー型プリンタブル有機TFT作成が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、例えば有機ELや液晶表示装置などおけるアクティブマトリクス駆動方式で作成されるTFT素子作成やタッチパネルなどの荒い精細度でも機能的に問題の無い配線電極作成において、従来の方法で課題となった工程の簡略化、材料使用効率、コスト、多様な基板サイズに対応において、その課題を解決するものとなり、簡便、低コストかつ高精度な配線などを含む電極パターニングを提供するものとなる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガラス基板
2 電極材料
3 感光性のポリマーを含む溶媒
4 金属粒子
5 プリベークを施した後の感光性ポリマー
6 UV光(紫外線)
7 有機活性種が発現した感光性ポリマー
8 金属錯体としての反応が発現した感光性ポリマー
9 ポストベークを施した後の感光性ポリマー
10 ゲート電極
11 絶縁膜
12 電極材料
13 塗布型有機半導体材料を塗布する装置
14 塗布型有機半導体材料
15 成膜された後の塗布型有機半導体材料
20 ガラス基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に感光性有機物からなる電極材料によって電子回路を形成する感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法において、
基板上にゲート電極および絶縁膜を形成する工程と、
前記基板上に電極材料を塗布しプリベーク乾燥させる工程と、
前記電極材料に所定のマスクを通して光を照射する第1の露光工程と、
前記電極材料を現像液に浸漬し不要な部分を除去する工程と、
前記電極材料を前記第1の露光工程よりも照射強度の強い光により硬化させる第2の露光工程と、
を備えることを特徴とする感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項2】
前記電極材料自体をマスクとすることを特徴とする請求項1記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項3】
前記電極材料は流動性を有する塗布型材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項4】
前記プリベーク乾燥させる工程は、80℃から100℃の範囲内で、60秒から120秒の間で加熱することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項5】
前記第1の露光工程は、3mJ/cm2から10mJ/cm2の範囲内で露光を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項6】
前記第2の露光工程は、500mJ/cm2から1000mJ/cm2の範囲内で露光を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項1】
基板上に感光性有機物からなる電極材料によって電子回路を形成する感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法において、
基板上にゲート電極および絶縁膜を形成する工程と、
前記基板上に電極材料を塗布しプリベーク乾燥させる工程と、
前記電極材料に所定のマスクを通して光を照射する第1の露光工程と、
前記電極材料を現像液に浸漬し不要な部分を除去する工程と、
前記電極材料を前記第1の露光工程よりも照射強度の強い光により硬化させる第2の露光工程と、
を備えることを特徴とする感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項2】
前記電極材料自体をマスクとすることを特徴とする請求項1記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項3】
前記電極材料は流動性を有する塗布型材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項4】
前記プリベーク乾燥させる工程は、80℃から100℃の範囲内で、60秒から120秒の間で加熱することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項5】
前記第1の露光工程は、3mJ/cm2から10mJ/cm2の範囲内で露光を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【請求項6】
前記第2の露光工程は、500mJ/cm2から1000mJ/cm2の範囲内で露光を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性塗布型電極材料を用いたTFTの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−23285(P2012−23285A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161687(P2010−161687)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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