説明

感光性樹脂組成物、ならびにこれを用いた段差パターンの製造方法及びインクジェットヘッドの製造方法

【課題】 カルボン酸無水物構造を有するアクリル樹脂を用いたポジ型感光性樹脂組成物の露光感度を向上させるととも、感光波長の選択幅を広げること、更には、このポジ型感光性樹脂組成物を用いることで基板から吐出口方向への高さ方向に形状が変化するインク流路を精度良く、かつ効率良く形成できるパターン形成方法及びそれを用いたインクジェットヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくともカルボン酸無水物構造を有するアクリル樹脂と光酸発生剤とを用いてポジ型の感光性樹脂組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式に用いる記録液滴を発生するためのインクジェットヘッドを製造する際に好適に用いることができる感光性樹脂組成物に関する。また、本発明は、この感光性樹脂組成物を用いた段差パターンの製造方法及びインクジェットヘッドの製造方法、ならびにこのインクジェットヘッドの製造方法より得られたインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の記録液を吐出して記録を行うインクジェット記録方式(液体吐出記録方式)に適用されるインクジェットヘッドは、一般にインク流路、該インク流路の一部に設けられる液体吐出エネルギー発生部、及び前記インク流路のインクを液体吐出エネルギー発生部のエネルギーによって吐出するための微細なインク吐出口(「オリフィス」と呼ばれる)とを備えている。従来、このようなインクジェットヘッドを作製する方法としては、例えば、
(1)液体吐出用の熱エネルギーを発生するヒーター及びこれらヒーターを駆動するドライバー回路等を形成した素子基板に、インク供給の為の貫通孔を形成した後、ネガ型レジストにてインク流路の壁となるパターン形成を行い、これに、電鋳法やエキシマレーザー加工によりインク吐出口を形成したプレートを接着して製造する方法、
(2)上記製法と同様に形成した素子基板を用意し、接着層を塗布した樹脂フィルム(通常はポリイミドが好適に使用される)にエキシマレーザーにてインク流路及びインク吐出口を加工し、次いで、この加工したインク流路構造体プレートと前記素子基板とを熱圧を付与して貼り合わせる方法、
等を挙げることができる。
【0003】
上記の製法によるインクジェットヘッドでは、高画質記録のための微小インク滴の吐出を可能にするため、吐出量に影響を及ぼすヒーターと吐出口間の距離をできるだけ短くしなければならない。そのために、インク流路高さを低くしたり、インク流路の一部であって液体吐出エネルギー発生部と接する気泡発生室としての吐出チャンバーや、吐出口のサイズを小さくしたりする必要もある。すなわち、上記製法のヘッドで微小インク滴を吐出可能にするためには、基板上に積層するインク流路構造体の薄膜化が必要とされる。しかし、薄膜のインク流路構造体プレートを高精度で加工して基板に貼り合わせることは極めて困難である。
【0004】
これら製法の問題を解決する為、特公平6−45242号公報では、液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上に感光性材料にてインク流路の型をパターンニングし、次いで該型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布形成し、該被覆樹脂層に前記インク流路の型に連通するインク吐出口を形成した後、型に使用した感光性材料を除去してなるインクジェットヘッドの製法(注型法とも称する)を開示している。該ヘッドの製造方法では感光性材料としては、除去の容易性の観点からポジ型レジストが用いられている。また、この製法によると、半導体のフォトリソグラフィーの手法を適用しているので、インク流路、吐出口等の形成に関して極めて高精度で微細な加工が可能である。
【0005】
しかし、ポジ型レジストでインク流路パターンを形成した後、ネガ型レジストで該ポジ型レジストを被覆してから吐出口を形成するため、ネガ型レジストの吸収波長領域に対応する光を照射する場合、ポジ型レジストで形成したパターン上にも、該波長領域の光が照射されてしまう。このために、前記ポジ型レジスト材料の分解反応などが促進されて、不具合を生じる可能性も起こり得る。さらに、ポジ型レジストにより形成されたインク流路パターン上にネガ型レジストを塗布するため、ネガ型レジストの塗布時にインク流路パターンが溶解、変形してしまう等の問題を生じる場合がある。
【0006】
この問題を回避し得るポジ型レジスト材料として、特開2004−42650号公報及び特開2004−46217号公報には、カルボン酸の無水物構造を有する光崩壊型の樹脂を用いたものが開示されている。
【0007】
一方、インクジェットヘッドの更なる微細化や高性能化を図る上で、基板上に配置された吐出圧力発生素子の上方に吐出口を設け、更に、基板から高さ方向に吐出口に連通するインク流路の形状を変化させる構造が検討されている。基板の高さ方向におけるインク流路の形状を変化させる点については、特開平10−291317号公報には、インク流路構造体のエキシマレーザー加工に際して、レーザーマスクを不透明度を部分的に変化せしめて樹脂フィルムの加工深さを制御して3次元方向、すなわち素子基板と平行な面内方向と該素子基板からの高さ方向でのインク流路の形状変更を実現することが開示されている。
【0008】
また、先に引用した特開2004−46217号公報には、インク流路となる部分を構成する型をポジ型レジストを用いて2層構成で作成し、上層と下層をそれぞれ所望の形状にパターニングして基板からの高さ方向におけるインク流路の形状を変化させる方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先に述べた注型法を用いたインクジェットヘッドの製造方法において、更なる製造効率の向上を図る上での以下の各課題の達成が検討されている。
(1)ポジ型感光性樹脂組成物の感度及び感光波長の選択性についての課題
先に挙げた特開2004−42650号公報及び特開2004−46217号公報に開示されるポジ型感光性樹脂組成物に含まれる酸無水物構造を有するアクリル樹脂はカルボニル基により吸収されたエネルギーで分解反応が進行するために、比較的短波長領域の光を用いる必要があり、照射光の波長選択性が狭い。そのために、インク流路となる部分を構成する型を2層構造とする場合に、これと組み合わせるポジ型感光性樹脂組成物の選択範囲が狭く、製造効率の向上や製造コストの低減のための設計の自由度が低い。
【0010】
また、インク流路となる部分を構成する型の製造プロセスにおける効率を更に向上させる場合には、より高感度化されたものが求められている。
(2)基板から吐出口に向けた高さ方向に形状が変化するインク流路の形成におけるプロセス効率について
まず、先に挙げたレーザー加工を用いる方法では、レーザー加工での深さ方向の制御は原理的には可能であるが、これら加工に用いられるエキシマレーザーは、半導体の露光に使用されるエキシマレーザーと異なり、広帯域にて高い輝度のレーザーが使用され、レーザー照射面内での照度のバラツキを抑えてレーザー照度の安定化を実現することは非常に難しい。特に高画質のインクジェットヘッドにおいては、各吐出ノズル相互での加工形状のバラツキによる吐出特性の不均一は画像のムラとなって認識され、加工精度の向上を実現することが大きな課題となる。さらに、レーザー加工面に付くテーパーにより微細なパターン形成ができない場合が多い。
【0011】
一方、インク流路となる部分を構成する型をポジ型レジストからなる2層構造とした場合、上層と下層をそれぞれ選択的にパターニングするために、上層の感光波長と下層の感光波長を、一方の露光条件が他方に影響しないように分離することが行なわれている。そして、このように露光波長を選択的に分離するためには、照射波長の異なる2台の露光装置を必要とする。また、1台の露光装置で、光学フィルターを用いて照射波長を分離することも可能であるが、高価な光学フィルターを必要とする。更に、それぞれの材料の吸収波長端が一部重なるため、上層レジストを露光する際に下層レジストが反応しないようにするためには、上層レジストが本来反応する波長領域の光を一部カットして上層レジストを露光する必要があり、その場合には感度の低下を招く場合が多い。
【0012】
そこで、上層及び下層に対する照射光の波長域が同じである場合や、これらが部分的に重複する場合でも、上層と下層を選択的にパターニングできる、すなわち、上層のパターニングの露光条件が下層に影響しないようにすることで、上記の露光波長を選択的に分離する際の装置構成における問題を解消することができ、製造プロセスの効率化を更に図ることが可能になる。
【0013】
更に、インク流路となる部分を構成する型を2層構造とする場合には、少なくとも2度の塗布工程と2度のプリベーク処理が必要なり、工程数を増加させている。そこで、この工程数を減少させたプロセスの選択が可能であれば、プロセス設計に応じてこの工程数の減少したプロセスを選択して製造効率の向上を図ることもできる。
【0014】
本発明は、上記した各課題を達成するためになされたものであり、その目的は、カルボン酸無水物構造を有するアクリル樹脂を用いたポジ型感光性樹脂組成物の露光感度を向上させるととも、感光波長の選択幅を広げることにある。本発明に他の目的は、ポジ型感光性樹脂組成物を用いることで基板から吐出口方向への高さ方向に形状が変化するインク流路を精度良く、かつ効率良く形成できるパターン形成方法及びそれを用いたインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明には以下の各発明が含まれる。
【0016】
本発明にかかるポジ型の感光性樹脂組成物は、
(1)分子中にカルボン酸の無水物構造を有するアクリル樹脂、(2)光照射により酸を発生する化合物、を少なくとも含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明のかかる段差パターンの形成方法は、
ポジ型感光性樹脂を用いて、基板上に段差を有するパターンを形成する方法であって、
(1)請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物層を基板上に形成する工程と、
(2)第一のフォトリソグラフィー工程により、該感光性樹脂組成物層の第1のパターンとなる部分以外の部分を膜厚方向における所定の深さまで除去して、該所定の深さよりも突出した部分からなる第1のパターンを形成する工程と、
(3)第二のフォトリソグラフィー工程により、前記第1のパターンが形成された感光性樹脂組成物層の第2のパターンとなる部分以外の部分を該第1のパターン形状を維持しつつ第1のパターンとなる部分以外の部分を基板上から除去して、該第1のパターンが該第2のパターン上に設けられた段差形状を有するパターンを得る工程と、
を有し、
前記第一のフォトリソグラフィー工程が、露光、露光後加熱および現像の処理工程を有し、該第一のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂中のカルボン酸無水物の加水分解反応に由来するものであり、かつ、
前記第二のフォトリソグラフィー工程が、露光および現像の処理工程を有し、該第二のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂の主鎖分解反応に由来するものである
ことを特徴とする。
【0018】
本発明のかかるインクジェットヘッドの製造方法の第1の態様は、
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、ポジ型の感光性樹脂組成物層を設ける工程と、
(2)前記感光性樹脂組成物層の所定の部位に電離放射線を照射する工程と、
(3)前記電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで所望のインク液路パターンを形成する工程と、
(4)該インク液路パターン上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(5)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(6)インク流路パターンを溶解除去する工程と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0019】
本発明のかかるインクジェットヘッドの製造方法の第2の態様は、
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、第一のポジ型感光性樹脂層を設ける工程と、
(2)第一のポジ型感光性樹脂層上に、第二のポジ型感光性樹脂層を形成する工程と、
(3)第二のポジ型感光性樹脂層を反応させ得る波長域の電離放射線を、第二のポジ型感光性樹脂層の所定の部位に照射する工程と、
(4)第二のポジ型感光性樹脂層の電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで第二のインク液路パターンを形成する工程と、
(5)第一のポジ型感光性樹脂層を反応させ得る波長域の電離放射線を、第一のポジ型感光性樹脂層の所定の部位に照射する工程と、
(6)第一のポジ型感光性樹脂層の電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで第一のインク流路パターンを形成する工程と、
(7)第一および第二のインク液路パターン上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(8)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(9)第一および第二のインク流路パターンを溶解除去する工程と、
を有し、前記第二のポジ型感光性樹脂が、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0020】
本発明のかかるインクジェットヘッドの製造方法の第3の態様は、
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
(2)第一のフォトリソグラフィー工程により、該感光性樹脂組成物層の第1のインク流路パターンとなる部分以外の部分を膜厚方向における所定の深さまで除去して、該所定の深さよりも突出した部分からなる第1のインク流路パターンを形成する工程と、
(3)第二のフォトリソグラフィー工程により、前記第1のインク流路パターンが形成された感光性樹脂組成物層の第2のインク流路パターンとなる部分以外の部分を該第1のインク流路パターン形状を維持しつつ第1のパターンとなる部分以外の部分を基板上から除去して、該第1のインク流路パターンが該第2のインク流路パターン上に設けられた段差構造を得る工程と、
(4)前記段差構造上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(5)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(6)前記段差構造を溶解除去する工程と、
を有し、
前記第一のフォトリソグラフィー工程が、露光、露光後加熱および現像の処理工程を有し、該第一のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂中のカルボン酸無水物の加水分解反応に由来するものであり、かつ、
前記第二のフォトリソグラフィー工程が、露光および現像の処理工程を有し、該第二のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂の主鎖分解反応に由来するものである
ことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0021】
本発明に係るインクジェットヘッドは、上記のインクジェットヘッドの製造方法のいずれかにより製造されたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、高感度であり、パターン形成プロセスにおける処理時間の短縮が可能となる。更に、本発明によれば、高速高画質記録が可能な高精度のインクジェットヘッドを簡便な方法で効率良く、高歩留まりで製造することができる。また、本発明によれば、このようなインクジェットヘッドの製造に有用な段差パターンを、高精度で効率良く形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明において用いられるポジ型感光性樹脂組成物は、(1)分子中にカルボン酸の無水物構造を有するアクリル樹脂、(2)光照射により酸を発生する化合物、を少なくとも含有するものである。この感光性樹脂組成物は、所謂化学増幅反応による加水分解に由来するポジ化反応と、アクリル主鎖の主鎖分解反応に由来するポジ化反応の2種類のポジ化反応を生じるものである。前者のポジ化反応では、アクリル樹脂の構造中に含まれるカルボン酸の無水物構造が酸性条件下において加水分解反応を生じ、アルカリ性の溶液に対する溶解性が大幅に向上する。すなわち、光酸発生剤を用い、光照射およびPEB(Post Exposure Bake)を行うことにより発生、拡散したカチオンによって、樹脂中のカルボン酸無水物構造が加水分解を生じてカルボン酸を生成し、アルカリ性の現像液に対する溶解性が向上する。その結果、この感光性樹脂組成物を高感度なポジ型レジストとして使用することが可能となる。また、後者のポジ化反応は、アクリルモノマー中のビニル基のラジカル重合により生成した炭素−炭素結合の主鎖が、所謂Norrishタイプの反応により開裂し低分子量化するため、溶剤に対して溶解し易くなるものである。このため、光酸発生剤を作用させる波長を、アクリル樹脂の主鎖分解反応も生じる領域に設定すると、上記のカルボン酸無水物構造の加水分解反応に加えて、アクリル樹脂の主鎖分解反応も進行させることができ、更に高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。すなわち、アクリル樹脂の主鎖分解反応に由来する分子量の低下のみではなく、加水分解による極性の変化および低分子量化が平行して進行するため、非常に高感度である。
【0024】
インクジェットヘッドの製造に用いる場合においては、ヘッドの特性に影響を及ぼす特に重要な因子の一つである、吐出エネルギー発生素子(例えばヒータ)とオリフィス(吐出口)間の距離および該素子とオリフィス中心との位置精度を極めて容易に実現できる等の利点を有する。即ち、本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物はこれを塗布して得られる層の厚さの制御を、従来使用される薄膜コーティング技術により再現性良く厳密に行うことができるので、吐出エネルギー発生素子とオリフィス間の距離の設定が容易となる。また、吐出エネルギー発生素子とオリフィスの位置合せはフォトリソグラフィー技術による光学的な位置合せが可能であり、従来液体吐出録ヘッドの製造に使用されていたインク流路構造体プレートを基板に接着する方法に比べて、飛躍的に高い精度の位置合せが可能となる。
【0025】
一方、インク流路となる部分を構成する型をポジ型感光性樹脂組成物の2層構造として形成する場合には、上層を高感度である本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物とし、下層を本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物に対して相対的に感度の低いポジ型感光性樹脂組成物から形成することで、上層の露光時における光強度や露光量を、上層を構成する高感度な感光性樹脂組成物に合わせて低く設定しておけば、これよりも低い感度の下層が上層の露光時に感光することがない。すなわち、上層の露光条件が下層に影響することがない。この場合、上層と下層の感光波長(波長域)は同一でも、一部が重複してもよく、あるいは完全に分離されたものでもよい。なお、同一の感光波長を有するポジ型感光性樹脂組成物を用いる場合には、上下層の感度差を少なくとも5倍以上、好ましくはは10倍以上になるようポジ型感光性樹脂組成物を選択することが好ましい。
【0026】
また、ポジ型感光性樹脂組成物の単一層を基板上に形成しておき、まず、第1のパターンをその表層に形成し、更に、第1のパターンを維持しつつ層全体を第2のパターン形状とする方法にも本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物を好適に利用できる。特に、本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物は、後述するように光酸発生剤の添加量や、PEBの条件を制御することで現像される膜厚を調整することが可能なため、精密な第1パターンの形成を、所定の深さまで精度良く行なうことが可能となる。特に、吐出圧力発生素子と吐出口の間の距離を更に小さくしたヘッドの場合には、インク流路となる部分を構成する型の厚さも非常に小さく設定されており、第1パターンの形成には特に深さ方向について高精度が要求される。単一のポジ化反応しか生じないポジ型の感光性樹脂組成物を用いた場合、第2のパターンを形成するための残像層部分に影響を及ぼすことなく、微細な第1パターンを高精度で形成することは困難であるのに対して、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、光酸発生剤の添加量やPEBの条件を調整することで第1パターンの高さを制御することができるので、高精度のパターニングを行なうことが可能となる。
【0027】
本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物に含有させるアクリル樹脂は、分子中にカルボン酸の無水物構造を有する。更に、このアクリル樹脂は、耐溶剤性の観点から、側鎖に位置するカルボン酸の無水物構造を有し、また、カルボン酸の無水物構造を介して分子間架橋している構造を有することが好ましい。具体的には、カルボン酸の無水物構造を含む単位として、下記一般式1および一般式2で示される構造単位の少なくとも1種を有することが好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
(一般式1および一般式2中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基を示す。なお、R1〜R4は、各ユニットごとに上記の意味を表す。)
このアクリル樹脂は、無水メタクリル酸モノマーとして、単独あるいはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステルなどの他のアクリル系モノマーと公知の方法によりラジカル重合することにより得ることができる。例えば、無水メタクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合物を用いる場合、共重合比および分子量は任意に設定することが可能であるが、無水メタクリル酸の割合が増えると、ラジカル重合中にゲル分が生成しやすくなり、無水メタクリル酸の割合が減るとレジストとしての感度が低下する傾向が観られる。このことから、無水メタクリル酸/メタクリル酸メチル=5mol%/95mol%〜30mol%/70mol%の割合で共重合することが好ましい。また、分子量が低いと成膜性が悪く、分子量が高いと感度が低下する傾向があることから、重量平均分子量(Mw)=20000〜60000程度とすることが好ましい。
【0030】
また、本発明に用いられる光照射により酸を発生する化合物としては、特に制限はないが、例えば、芳香族スルフォニウム塩としては、みどり化学(株)より市販されているTPS−102、103、105、MDS−103、105、205、305、DTS−102、103、旭電化工業(株)より市販されているSP−170、172等を、また芳香族ヨードニウム塩としては、みどり化学(株)より市販されているDPI−105、MPI−103、105、BBI−101、102、103、105等を、またトリアジン化合物としては、みどり化学(株)より市販されているTAZ−101、102、103、104、105、106、107、110、111、113、114、118、119、120等を好適に用いることができる。また、添加量は、目標とする感度となるよう任意の添加量とすることができるが、特に、アクリル樹脂に対して、1〜7質量%の範囲で好適に用いることができる。また、必要に応じて波長増感剤として、例えば旭電化工業(株)より市販されているSP−100等を添加して用いても良い。
【0031】
また、この感光性樹脂組成物層の形成には、スピンコートやスリットコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。またベーク温度は、任意に設定することが可能であるが、十分な耐溶剤性を付与するためには、90℃〜280℃で、1分〜120分の熱処理を行うことが好ましく、特に、120℃〜250℃で、3分〜60分の熱処理を行うことが好ましい。
【0032】
次に、本発明にかかるポジ型感光性樹脂組成物を用いたインクジェットヘッドの製造方法(段差パターンの形成方法を含む)の各実施形態について説明する。
【0033】
(実施形態1)
図1〜図10は、インクジェットヘッドの構成およびその製造方法の断面図を模式的に示したものである。まず、図1に示されるような、基板1を準備する。このような基板は、インク流路構成部材の一部として機能し、また、後述のインク流路およびインク吐出口を形成する材料層の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができるが、本例においては、後述する異方性エッチングにより基板を貫通するインク供給口を形成するため、シリコン基板が用いられる。
【0034】
上記基板1上には、電気熱変換素子あるいは圧電素子等のインク吐出圧力発生素子2が所望の個数配置される(図2)。このようなインク吐出圧力発生素子2によって、インク液滴を吐出させるための吐出エネルギーがインク液に与えられ、記録が行われる。例えば、上記インク吐出圧力発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、インクに状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
【0035】
なお、これらの吐出圧力発生素子2には、素子を動作させるための制御信号入力用電極(不図示)が接続されている。また、一般にはこれら吐出圧力発生素子2の耐用性の向上を目的とした保護層(不図示)や、後述するノズル構成部材の基板との密着性の向上を目的とした密着向上層(不図示)等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこのような機能層を設けることは一向に差し支えない。
【0036】
次いで、図3に示すように、上記インク吐出圧力発生素子2を含む基板1上に、本発明による感光性樹脂組成物層3を形成し(図3)、一連のフォトリソグラフィー工程により、感光性樹脂組成物をパターニングして、インク流路パターン4を形成する(図4)。該インク流路パターン4は、後工程において溶解除去する必要があるため、一般的にはポジ型レジストが使用される。このポジ型レジストとして、先に説明した本発明にかかる感光性樹脂組成物を用いる。
【0037】
具体的には、本発明にかかる感光性樹脂組成物を溶剤を含有した組成として塗工液を調製し、これを基板の所定部に塗工して、乾燥させ、感光性樹脂組成物層3を形成する。必要に応じてベーク処理を行ってから、例えば紫外線照射装置(不図示)を用いて、フォトマスク(不図示)を介して、パターン露光を行い、ホットプレート(不図示)を用いてPEB処理を行う。PEBの条件としては、任意に設定することが可能であるが、90〜150℃で、1〜5分程度の加熱処理が好ましい。なお、本発明にかかる感光性樹脂組成物層を露光する際の光としては、紫外線の他にも遠紫外線、X線、電子線等の電離放射線を用いても良い。
【0038】
次いで、現像処理を行う。現像液としては少なくとも、露光部を溶解可能であり、かつ未露光部を溶解しずらい溶剤であれば使用可能であるが、本発明者等は、鋭意検討の結果、水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、含窒素塩基性有機溶剤、水を含有する現像液が特に好適に用いられることを見いだした。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種が、含窒素塩基性有機溶剤としては、エタノールアミンおよびモルフォリンの少なくとも1種を含むものが特に好適に用いられる。例えば、X線リソグラフィーにおいてレジストとして用いられるPMMA(ポリメチルメタクリレート)用の現像液として、特開平3−10089号公報に開示されている組成の現像液を、本発明においても好適に用いることができる。上述した成分のそれぞれの組成比としては、例えば
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:60vol%
エタノールアミン:5vol%
モルフォリン:20vol%
イオン交換水:15vol%
から成る現像液を用いることが可能である。なお、該現像液の好ましい組成の範囲としては、水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテルが50〜70vol%、含窒素塩基性有機溶剤が20〜30vol%(残分をイオン交換水とする)の範囲において好適に用いることができる。
【0039】
このように、流路パターン4を形成した基板1上に、図5に示すように、ノズル構成部材5をスピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の方法で形成する。ここで、ノズル構成部材5としては、後述するインク吐出口7をフォトリソグラフィーで容易にかつ精度よく形成できることから、感光性のものが好ましい。このような感光性被覆樹脂には、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐インク性と、同時にインク吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性が要求される。これらの特性を満足する材料としては、カチオン重合型のエポキシ樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0040】
本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物のうち分子量がおよそ900以上のもの、含ブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、フェノールノボラックあるいはo−クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応物、特開昭60−161973号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭64−9216号公報、特開平2−140219号公報に記載のオキシシクロヘキサン骨格を有する多官能エポキシ樹脂等があげられるが、これら化合物に限定されるものではない。
【0041】
また、上述のエポキシ化合物においては、好ましくはエポキシ当量が2000以下、さらに好ましくはエポキシ当量が1000以下の化合物が好適に用いられる。これは、エポキシ当量が2000を越えると、硬化反応の際に架橋密度が低下し、密着性、耐インク性に問題が生じる場合があるからである。
【0042】
上記エポキシ樹脂を硬化させるための光カチオン重合開始剤としては、光照射により酸を発生する化合物を用いることができ、例えば旭電化工業株式会社より上市されているSP−150、SP−170、SP−172等を好適に用いることができる。さらに上記組成物に対して必要に応じて添加剤など適宜添加することが可能である。例えば、エポキシ樹脂の弾性率を下げる目的で可撓性付与剤を添加したり、あるいは下地との更なる密着力を得るためにシランカップリング剤を添加すること等が挙げられる。
【0043】
次いで、ノズル構成部材5上に、感光性を有する撥インク剤層6を形成する(図6)。撥インク剤層6は、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の塗布方法により形成可能であるが、本例においては、未硬化のノズル形成部材5上に形成されるため、両者が必要以上に相溶しないことが必要である。
【0044】
次いで、マスク(不図示)を介してパターン露光を行い、現像処理を施してインク吐出口7を形成する(図7)。パターン露光されたノズル構成部材5および撥インク剤層6を、適当な溶剤を用いて現像することにより、図7に示すように、インク吐出口7を形成することができる。この際、現像と同時に流路パターン4を溶解除去することも可能であるが、一般的に、基板1上には複数のヘッドが配置され、切断工程を経てインクジェットヘッドとして使用されるため、切断時のごみ対策として、流路パターン4を残し(流路パターン4が残存するため、切断時に発生するゴミが流路内に入り込むことを防止できる)、切断工程後に流路パターン4を溶解除去することが好ましい。
【0045】
次いで、基板1を貫通するインク供給口を形成する。インク供給口の形成方法としては、エッチング液耐性を有する樹脂組成物をエッチングマスクとして用い、異方性エッチングにより行う。結晶方位として、<100>、<110>の方位を持つシリコン基板は、アルカリ系の化学エッチングを行うことにより、エッチングの進行方向に関して、深さ方向と幅方向の選択性ができ、これによりエッチングの異方性を得ることができる。特に、<100>の結晶方位を持つシリコン基板は、エッチングを行う幅によってエッチングされる深さが幾何学的に決定されるため、エッチング深さを制御することができ、例えば、エッチングの開始面から深さ方向に54.7°の傾斜を持って狭くなる孔を形成することができる。
【0046】
図8に示すように、まず基板1の裏面に、エッチング液耐性を有する樹脂から成るエッチングマスク8を形成し、アルカリ系のエッチング液である水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液に加温しながら浸漬してエッチングを行い、インク供給口9を形成する(図9)。この際、例えば特開第2001−10070号公報に記載されているように、ピンホール等の欠陥を防止する目的で、酸化シリコン、窒化シリコン等の誘電体膜との二層構成のマスクとしても、何ら問題はない。また、該エッチングマスクは、流路パターン4や、ノズル構成部材5の形成以前に、予め形成しておいても良い。
【0047】
次いで、切断分離工程を経た後(不図示)、流路パターン4を溶解除去し、必要に応じてエッチングマスク8を除去する。さらに、必要に応じて加熱処理を施すことにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6を完全に硬化させた後、インク供給のための部材(不図示)の接合、インク吐出圧力発生素子を駆動するための電気的接合(不図示)を行って、インクジェットヘッドを完成させる(図10)。
【0048】
以上記載した工程を適用することにより、本発明の液体吐出ヘッドを作成することが可能である。本発明に関わる製法は、半導体製造技術で用いられるスピンコート等のソルベントコート法により実施される為、インク流路はその高さが極めて高精度で安定的に形成できる。また、基板に対して平行な方向の2次元的な形状も半導体のフォトリソグラフィー技術を用いる為、サブミクロンの精度を実現することが可能である。
【0049】
(実施形態2)
図11〜図22は、インクジェットヘッドの構成およびその製造方法の断面図を模式的に示したものである。まず、図11に示されるような、基板1を準備する。このような基板は、インク流路構成部材の一部として機能し、また、後述のインク流路およびインク吐出口を形成する材料層の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができるが、本例においては、後述する異方性エッチングにより基板を貫通するインク供給口を形成するため、シリコン基板が用いられる。
【0050】
上記基板1上には、電気熱変換素子あるいは圧電素子等のインク吐出圧力発生素子2が所望の個数配置される(図12)。このようなインク吐出圧力発生素子2によって、インクを吐出させるための吐出エネルギーがインクに与えられ、記録が行われる。例えば、上記インク吐出圧力発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍のインクを加熱することにより、インクに状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
【0051】
なお、これらの吐出圧力発生素子2には、素子を動作させるための制御信号入力用電極(不図示)が接続されている。また、一般にはこれら吐出圧力発生素子2の耐用性の向上を目的とした保護層(不図示)や、後述するノズル構成部材の基板との密着性の向上を目的とした密着向上層(不図示)等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこのような機能層を設けることは一向に差し支えない。
【0052】
次いで、図13に示すように、上記インク吐出圧力発生素子2を含む基板1上に、第一のポジ型レジスト層11を形成する。第一のポジ型レジストとしては、一般的に入手可能な主鎖分解型のポジ型レジストを使用することができ、例えば、ポリメチルイソプロペニルケトン(東京応化工業製、商品名ODUR)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体等を使用することができる。また、塗布はスピンコートやスリットコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。またベーク温度は、任意に設定することが可能であるが、十分な耐溶剤性を付与するためには、120℃〜280℃で、1分〜120分の熱処理を行うことが好ましい。
【0053】
次いで、第一のポジ型レジスト層11上に、第二のポジ型レジスト層12を形成する(図14)。この第二のポジ型レジスト層12を、先に説明したカルボン酸無水物構造を有するアクリル樹脂を含む感光性樹脂組成物から形成する。具体的には、本発明にかかる感光性樹脂組成物を溶剤を含有した組成として塗工液を調製し、これを基板の第一のポジ型レジスト層11上に塗工して、乾燥させ、第二のポジ型レジスト層12を形成する。必要に応じてベーク処理を行う。この第二のポジ型レジスト層12は、前述したようにカルボン酸無水物構造が加水分解を生じてカルボン酸を生成し、アルカリ性の現像液に対する溶解性が向上するため、高感度なレジストとして使用することが可能となり、第一のポジ型レジスト層11に用いられる、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体等の主鎖分解型レジストの、数十倍〜数百倍高感度である。このため、下層レジストを反応せしめる波長領域の光を用いて上層レジストを露光する場合においても、下層である第一のポジ型レジスト層に影響を及ぼすことなく上層レジストをパターニングすることができる。
【0054】
さらに、上述したような一般的な主鎖分解型のポジ型レジストは、Norrishタイプの開裂反応を利用するものであり、カルボニルにより吸収されたエネルギーによって反応が生じることから、レジストとしての感光波長を任意に設定することは極めて困難である。このため、上層、下層共に主鎖分解型のポジ型レジストを用いる場合には、感光波長の観点から、上下層のレジスト材料の組み合わせが限定されたものとならざるを得ない。これに対して、本発明においては、下層材料の選択性が広がるという利点がある。また、感光波長を分離する必要がある場合においても、上層レジストに使用する光酸発生剤を選択することにより、上層レジストの感光波長を任意に設定することが可能である。
【0055】
次いで、紫外線照射装置(不図示)を用いて、フォトマスク(不図示)を介して、パターン露光を行い、ホットプレート(不図示)を用いてPEBを行った後、現像処理を行う(図15)。PEBの条件としては、任意に設定することが可能であるが、90〜150℃で、1〜5分程度の加熱処理が好ましい。
【0056】
また、現像液としては実施形態1におけるものが同様に使用できる。
【0057】
次いで、必要に応じて熱処理を施した後、フォトマスク(不図示)を介して第一のポジ型レジスト層11をパターン露光し、現像することで第一の流路パターン14を形成する(図16)。第一のポジ型レジスト層11の現像液としては、露光部を溶解し、未露光部を溶解しずらい溶剤を現像液として使用することができるが、メチルイソブチルケトンや、上述した現像液が特に好適に用いられる。
【0058】
このように、第二の流路パターン13および第一の流路パターン14から成る2層構成の流路パターンを形成した基板1上に、図17に示すように、ノズル構成部材5をスピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の方法で形成する。ここで、ノズル構成部材5としては、後述するインク吐出口9をフォトリソグラフィーで容易にかつ精度よく形成できることから、感光性のものが好ましい。このような感光性被覆樹脂には、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐インク性と同時にインク吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性が要求される。これらの特性を満足する材料としては、実施形態1と同様にカチオン重合型のエポキシ樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0059】
次いで、ノズル構成部材5上に、感光性を有する撥インク剤層6を形成する(図18)。撥インク剤層6は、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の塗布方法により形成可能であるが、未硬化のノズル形成部材5上に形成されるため、両者が必要以上に相溶しないことが必要である。また、上述したように、ノズル構成部材7としてカチオン重合性組成物が用いられる場合には、感光性を有する撥インク剤層6にもカチオン重合可能な官能基を含有させておくことが好ましい。
【0060】
次いで、マスク(不図示)を介してパターン露光を行い、現像処理を施してインク吐出口7を形成する(図19)。パターン露光されたノズル構成部材5および撥インク剤層6を、適当な溶剤を用いて現像することにより、図19に示すように、インク吐出口7を形成することができる。この際、現像と同時に第1及び第2の流路パターンを溶解除去することも可能であるが、一般的に、基板1上には複数のヘッドが配置され、切断工程を経てインクジェットヘッドとして使用されるため、切断時のごみ対策として、流路パターンを残し(流路パターンが残存するため、切断時に発生するゴミが流路内に入り込むことを防止できる)、切断工程後に第1及び第2の流路パターンを溶解除去することが好ましい。
【0061】
次いで、基板1を貫通するインク供給口を形成する。インク供給口の形成方法としては、エッチング液耐性を有する樹脂組成物をエッチングマスクとして用い、異方性エッチングにより行う。結晶方位として、<100>、<110>の方位を持つシリコン基板は、アルカリ系の化学エッチングを行うことにより、エッチングの進行方向に関して、深さ方向と幅方向の選択性ができ、これによりエッチングの異方性を得ることができる。特に、<100>の結晶方位を持つシリコン基板は、エッチングを行う幅によってエッチングされる深さが幾何学的に決定されるため、エッチング深さを制御することができ、例えば、エッチングの開始面から深さ方向に54.7°の傾斜を持って狭くなる孔を形成することができる。
【0062】
図20に示すように、まず基板1の裏面に、エッチング液耐性を有する樹脂から成るエッチングマスク8を形成し、アルカリ系のエッチング液である水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液に加温しながら浸漬してエッチングを行い、インク供給口9を形成する(図21)。この際、例えば特開第2001−10070号公報に記載されているように、ピンホール等の欠陥を防止する目的で、酸化シリコン、窒化シリコン等の誘電体膜との二層構成のマスクとしても、何ら問題はない。また、該エッチングマスクは、流路パターンや、ノズル構成部材の形成以前に、予め形成しておいても良い。
【0063】
次いで、切断分離工程を経た後(不図示)、流路パターンを溶解除去してインク流路10を形成し、必要に応じてエッチングマスク8を除去する。さらに、必要に応じて加熱処理を施すことにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6を完全に硬化させた後、インク供給のための部材(不図示)の接合、インク吐出圧力発生素子を駆動するための電気的接合(不図示)を行って、インクジェットヘッドを完成させる(図22)。
【0064】
以上説明したように、本発明に関わる製法は、半導体製造技術で用いられるスピンコート等のソルベントコート法により実施される為、インク流路はその高さが極めて高精度で安定的に形成できる。また、半導体のフォトリソグラフィー技術を用いる為、インク流路の形状は、サブミクロンの精度を実現することが可能である。さらに、本発明の製法においては、2層構成の流路パターンとすることにより、インク吐出口の形状を凸形状に形成することができる。このことは、インク吐出速度を速めたり、インクの直進性を増加させる効果があり、より高画質の記録を行うことができるインクジェットヘッドを提供することができる。
【0065】
(実施形態3)
図23〜図33は、インクジェットヘッドの構成およびその製造方法の断面図を模式的に示したものである。また、図34〜35は、本発明に用いられるポジ型レジストの感度特性を示したものである。
【0066】
まず、図23に示されるような、基板1を準備する。このような基板は、液流路構成部材の一部として機能し、また、後述のインク流路およびインク吐出口を形成する材料層の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができるが、本例においては、後述する異方性エッチングにより基板を貫通するインク供給口を形成するため、シリコン基板が用いられる。
【0067】
上記基板1上には、電気熱変換素子あるいは圧電素子等のインク吐出圧力発生素子2が所望の個数配置される(図24)。このようなインク吐出圧力発生素子2によって、インク液滴を吐出させるための吐出エネルギーがインクに与えられ、記録が行われる。例えば、上記インク吐出圧力発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、記録液に状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
【0068】
なお、これらの吐出圧力発生素子2には、素子を動作させるための制御信号入力用電極
(不図示)が接続されている。また、一般にはこれら吐出圧力発生素子2の耐用性の向上を目的とした保護層(不図示)や、後述するノズル構成部材の基板との密着性の向上を目的とした密着向上層(不図示)等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこのような機能層を設けることは一向に差し支えない。
【0069】
次いで、図25に示すように、上記インク吐出圧力発生素子2を含む基板1上に、ポジ型レジスト層15を形成し(図25)、第一のフォトリソグラフィー工程により、ポジ型レジスト層15を、膜厚方向に対して一部分をパターニングして、第一のイ流路パターン16を形成する(図26)。このポジ型レジスト層15は先に説明した本発明にかかる感光性樹脂組成物から形成される。
【0070】
上記の第一のフォトリソグラフィー工程により、上述の加水分解に由来するポジ化反応を利用してパターニングを行うことで、基板1上に形成されたポジ型レジスト層15の、所望の膜厚を現像して、第一の流路パターン16を形成することが可能である。その後、後述する第二のフォトリソグラフィー工程により、上述した主鎖分解反応に由来するポジ化反応を利用して第二の流路パターン17を形成することで、凸形状の段差を有するインク流路パターンを形成することが可能となる。
【0071】
さらに、第一のフォトリソグラフィー工程における露光波長により、ポジ型レジストの主鎖分解反応が進行することを防止する目的で、第一のフォトリソグラフィー工程における露光波長と、第二のフォトリソグラフィー工程における露光波長を、異なる波長としても良い。この場合、アクリル系共重合体の主鎖分解反応は、220〜280nmの波長の光によって生じることから、光酸発生剤として、例えばi線(365nm)やg線(436nm)の波長の光に反応する化合物を用い、それぞれの波長に対応するステッパーを用いて、第一のフォトリソグラフィー工程を行うことが好ましい。
【0072】
また、該ポジ型レジスト層15の形成には、スピンコートやスリットコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。またベーク温度は、任意に設定することが可能であるが、十分な耐溶剤性を付与するためには、90℃〜280℃で、1分〜120分の熱処理を行うことが好ましく、特に、120℃〜250℃で、3分〜60分の熱処理を行うことが好ましい。熱処理後引き続き、紫外線照射装置(不図示)を用いて、フォトマスク(不図示)を介して、パターン露光を行い、ホットプレート(不図示)を用いてPEB処理を行う。PEBの条件としては、任意に設定することが可能であるが、90〜150℃で、1〜5分程度の加熱処理が好ましい。
【0073】
図34に、光酸発生剤(みどり化学製、TPS−105)の添加量を変えた場合の現像可能膜厚を(PEB条件:120℃−180秒)、また、図35に、PEB温度を変えた場合の現像可能膜厚(光酸発生剤:みどり化学製TPS−105、添加量:3wt%、PEB時間:180秒)のグラフを参考として示す。光酸発生剤の種類および添加量、露光量、PEBの温度および時間は、所望の膜厚を現像できるよう任意に設定可能であることは言うまでもない。
【0074】
次いで、現像処理を行う。現像液としては実施形態1と同様のものが利用できる。次いで、第二のフォトリソグラフィー工程により、上記第一のフォトリソグラフィー工程において現像されずに残存する部分を再度パターニングして、第二の流路パターン17を形成する(図27)。この際、必要に応じてポストベーク処理を施してから第二のフォトリソグラフィー工程を行っても良い。なお、本実施形態においては、第一のフォトリソグラフィー工程の現像時に、現像されずに残存する部分も表面層がアルカリ性の現像液に接することになる。このため、残存する部分の化学増幅反応が阻害され、第二のフォトリソグラフィー工程は、主に先に述べた主鎖分解反応に由来するポジ化反応によってパターニングを行うものとなる。このため、比較的低感度な反応である。まず、第一のフォトリソグラフィー工程と同様に、紫外線照射装置(不図示)を用いて、フォトマスク(不図示)を介して、パターン露光を行い、引き続き現像処理を行う。現像液としては少なくとも、露光部を溶解可能であり、かつ未露光部を溶解しずらい溶剤であれば使用可能であるが、第一のフォトリソグラフィー工程で用いたものと同一の現像液を用いることができる。また、露光量は、残存する膜厚に応じて任意に設定することができる。
【0075】
このように、第一および第二の流路パターンを形成した基板1上に、図28に示すように、ノズル構成部材5をスピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の方法で形成する。ここで、ノズル構成部材5としては、後述するインク吐出口7をフォトリソグラフィーで容易にかつ精度よく形成できることから、感光性のものが好ましい。このような感光性被覆樹脂には、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐インク性と、同時にインク吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性が要求される。これらの特性を満足する材料としては、実施形態1と同様にカチオン重合型のエポキシ樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0076】
次いで、ノズル構成部材5上に、感光性を有する撥インク剤層6を形成する(図29)。撥インク剤層6は、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の塗布方法により形成可能であるが、本例においては、未硬化のノズル形成部材5上に形成されるため、両者が必要以上に相溶しないことが必要である。
【0077】
次いで、マスク(不図示)を介してパターン露光を行い、現像処理を施してインク吐出口7を形成する(図30)。パターン露光されたノズル構成部材5および撥インク剤層6を、適当な溶剤を用いて現像することにより、図30に示すように、インク吐出口7を形成することができる。この際、現像と同時に流路パターンを溶解除去することも可能であるが、一般的に、基板1上には複数のヘッドが配置され、切断工程を経てインクジェットヘッドとして使用されるため、切断時のごみ対策として、流路パターンを残し(流路パターンが残存するため、切断時に発生するゴミが流路内に入り込むことを防止できる)、切断工程後に流路パターンを溶解除去することが好ましい。
【0078】
次いで、基板1を貫通するインク供給口を形成する。インク供給口の形成方法としては、エッチング液耐性を有する樹脂組成物をエッチングマスクとして用い、異方性エッチングにより行う。結晶方位として、<100>、<110>の方位を持つシリコン基板は、アルカリ系の化学エッチングを行うことにより、エッチングの進行方向に関して、深さ方向と幅方向の選択性ができ、これによりエッチングの異方性を得ることができる。特に、<100>の結晶方位を持つシリコン基板は、エッチングを行う幅によってエッチングされる深さが幾何学的に決定されるため、エッチング深さを制御することができ、例えば、エッチングの開始面から深さ方向に54.7°の傾斜を持って狭くなる孔を形成することができる。
【0079】
図31に示すように、まず基板1の裏面に、エッチング液耐性を有する樹脂から成るエッチングマスク8を形成し、アルカリ系のエッチング液である水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液に加温しながら浸漬してエッチングを行い、インク供給口9を形成する(図32)。この際、例えば特開第2001−10070号公報に記載されているように、ピンホール等の欠陥を防止する目的で、酸化シリコン、窒化シリコン等の誘電体膜との二層構成のマスクとしても、何ら問題はない。また、該エッチングマスクは、流路パターンや、ノズル構成部材の形成以前に、予め形成しておいても良い。
【0080】
次いで、切断分離工程を経た後(不図示)、流路パターンを溶解除去し、必要に応じてエッチングマスク8を除去する。さらに、必要に応じて加熱処理を施すことにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6を完全に硬化させた後、インク供給のための部材(不図示)の接合、インク吐出圧力発生素子を駆動するための電気的接合(不図示)を行って、インクジェットヘッドを完成させる(図33)。
【0081】
以上に記載した工程を適用することにより、本発明の液体吐出ヘッドを形成することが可能である。本発明に関わる製法によれば、凸形状の段差を有するインク流路を、極めて高精度で安定的に形成できる。また、基板に対して平行な方向の2次元的な形状も半導体のフォトリソグラフィー技術を用いる為、サブミクロンの精度を実現することが可能である。
【実施例】
【0082】
なお、各実施例で参照する図では2つのオリフィス(吐出口)を有するインクジェットヘッドが示されるが、もちろんこれ以上のオリフィスを有する高密度マルチアレイインクジェットヘッドの場合でも同様であることは言うまでもない。
【0083】
(実施例1)
(1)無水メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体の合成
攪拌装置および還流管を備えたフラスコ中にシクロヘキサノン400gを仕込み、オイルバス中で103〜105℃に保持した。該フラスコ中に、
無水メタクリル酸:5.41g(0.053mol)、
メタクリル酸メチル:48.6g(0.468mol)
AIBN:2.40g(0.015mol)及び
シクロヘキサノン:100g、
の混合物を、2時間かけて滴下した後、3時間重合反応を行った。その後、反応溶液をヘキサン中に投入して、無水メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体の粉末を沈殿回収した。得られた共重合体は、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=30000
、分散度(Mw/Mn)=3.3であった。
(2)ポジ型レジストの調製
得られた共重合体30gを、シクロヘキサノン70gに溶解し、トリフェニルスルフォニウムアンチモネート(みどり化学製TPS−103)1.5gを添加して溶解した後、0.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行って、ポジ型レジスト溶液を調製した。
(3)インクジェットヘッドの作成
まず、図1に示されるような、基板1を準備する。最も汎用的には、基板1としてはシリコン基板が適用される。一般に、吐出エネルギー発生素子を制御するドライバーやロジック回路等は、汎用的な半導体製法にて生産される為、該基板にシリコンを適用することが好適である。本例においては、インク吐出圧力発生素子2としての電気熱変換素子(材質HfB2 からなるヒーター)と、インク流路およびノズル形成部位にSiN+Taの積層膜(不図示)を有するシリコン基板を準備した(図2)。
【0084】
次いでインク吐出圧力発生素子2を含む基板上に、ポジ型レジスト層を形成し、パターニングすることにより流路パターンを形成する。まず、(2)で調製したポジ型レジストを用い、スピンコート法にて塗布し、100℃で、3分間プリベークした後、窒素雰囲気中、オーブンにて150℃で、30分間の熱処理を行った。なお、熱処理後の本発明による感光性樹脂組成物層3の膜厚は8μmであった(図3)。
【0085】
引き続き、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000を用いて、220〜280nmの波長の光を用いて、200mJ/cm2の露光量にて露光し、ホットプレートを用いて、120℃で180秒のPEBを行った後、以下の組成の現像液にて現像し、流路パターン4を形成した(図4)。
【0086】
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:60vol%
エタノールアミン:5vol%
モルフォリン:20vol%
イオン交換水:15vol%
次いで、被処理基板上に以下の組成からなるネガ型感光性樹脂組成物を用いてスピンコートを行い(平板上膜厚15μm)、100℃で2分間(ホットプレート)のプリベークを行い、ノズル構成部材5を形成した(図5)。
【0087】
EHPE(ダイセル化学工業製):100重量部
1、4HFAB(セントラル硝子製):20重量部
SP−170(旭電化工業製):2重量部
A−187(日本ユニカー製):5重量部
メチルイソブチルケトン:100重量部
ジグライム:100重量部
引き続き、被処理基板上に以下の組成からなる感光性樹脂組成物を用いて、スピンコートにより1μmの膜厚となるように塗布し、80℃で3分間(ホットプレート)のプリベークを行い、撥インク剤層6を形成した(図6)。
【0088】
EHPE―3158(ダイセル化学工業製):35重量部
2、2―ビス(4―グリシジルオキシフェニル)ヘキサフロロプロパン:25重量部
1、4―ビス(2―ヒドロキシヘキサフロロイソプロピル)ベンゼン:25重量部
3―(2―パーフルオロヘキシル)エトキシー1、2―エポキシプロパン:16重量部
A−187(日本ユニカー製):4重量部
SP―170(旭電化工業製):2重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル:100重量部
次いで、MPA−600(キヤノン製)を用いて、290〜400nmの波長の光を用いて、400mJ/cm2の露光量にてパターン露光した後、ホットプレートにて120℃で120秒のPEBを行い、メチルイソブチルケトンにて現像することにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6のパターニングを行い、インク吐出口7を形成した(図7)。なお、本実施例ではφ8μmの吐出口パターンを形成した。
【0089】
次に、被処理基板の裏面にポリエーテルアミド樹脂組成物(日立化成製HIMAL)を用いて幅1mm、長さ10mmの開口部形状を有するエッチングマスク8を作成した(図8)。次いで、80℃に保持した22質量%のTMAH水溶液中に被処理基板を浸漬して基板の異方性エッチングを行い、インク供給口9を形成した(図9)。なお、この際エッチング液から撥インク剤層6を保護する目的で、保護膜(東京応化工業製OBC:不図示)を撥インク剤層6上に塗布して異方性エッチングを行った。
【0090】
次いで、保護膜として用いたOBCをキシレンを用いて溶解除去した後、200〜280nmの波長の光を用いて、ノズル構成部材および撥インク剤層越しに8000mJ/cm2の露光量で全面露光を行い、流路パターン4を可溶化した。引き続き乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、流路パターン4を溶解除去してインク流路10を形成することによりインクジェットヘッドを作成した(図10)。なお、エッチングマスクとして用いたポリエーテルアミド樹脂組成物層は、酸素プラズマを用いたドライエッチングにより除去した。
【0091】
以上のように作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。
【0092】
(実施例2)
ポジ型レジストとして、以下の組成の感光性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。なお、該ポジ型レジストのパターニングに必要な露光量は、150mJ/cm2であった。
【0093】
無水メタクリル酸/メタクリル酸メチルのラジカル共重合物:30g
[(モノマー組成比20/80:モル比)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=28000、 分散度(Mw/Mn)=3.5]
ジフェニルヨードニウムアンチモネート:0.8g
(みどり化学製MPI−103)
シクロヘキサノン:70g
(実施例3)
ポジ型レジストとして、以下の組成の感光性樹脂組成物を用い、パターニングの際に、MPA−600(キヤノン製)を用い、100mJ/cm2の露光量で露光を行った以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。
【0094】
無水メタクリル酸/メタクリル酸メチルのラジカル共重合物:30g
[(モノマ組成比10/90:モル比)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=30000、分散度(Mw/Mn)=3.1]
SP−172(旭電化工業製):2.0g
SP−100(旭電化工業製):1.0g
シクロヘキサノン:70g
(比較例1)
ポジ型レジストとして、トリフェニルスルフォニウムアンチモネート(みどり化学製TPS−103)を添加しないものを用いた以外は、実施例1と同様にして流路パターン4を形成したところ、パターニングには40000mJ/cm2の露光量が必要であった(この場合、PEBは未実施)。
(実施例4)
(1)ポジ型レジストの調製
実施例1で得られた共重合体30gを、シクロヘキサノン70gに溶解し、トリフェニルスルフォニウムアンチモネート(みどり化学製TPS−103)0.9gを添加して溶解した後、0.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行って、ポジ型レジスト溶液を調製した。
(2)インクジェットヘッドの作成
まず、図11に示されるような、基板1を準備する。最も汎用的には、基板1としてはシリコン基板が適用される。一般に、吐出エネルギー発生素子を制御するドライバーやロジック回路等は、汎用的な半導体製法にて生産される為、該基板にシリコンを適用することが好適である。本例においては、インク吐出圧力発生素子2としての電気熱変換素子(材質HfB2 からなるヒーター)と、インク流路およびノズル形成部位にSiN+Taの積層膜(不図示)を有するシリコン基板を準備した(図12)。
【0095】
次いで図13に示すように、インク吐出圧力発生素子2を含む基板上(図12)に、第一のポジ型レジスト層11として、ポリメチルイソプロペニルケトン(東京応化製、ODUR)をスピンコートし、150℃で3分間のベークを行った。ベーク後のレジスト層の膜厚は、10μmであった。
【0096】
次いで、第二のポジ型レジスト層12として、(2)で調製したポジ型レジストをスピンコートし、150℃で6分間のベークを行った。ベーク後のレジスト層の膜厚は、5μmであった(図14)。
【0097】
引き続き、第二のポジ型レジスト層のパターニングを行った。露光装置として、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000を用い、200mJ/cm2の露光量にてパターン露光し、ホットプレートを用いて、120℃で180秒のPEBを行った後、実施例1と同様の組成の現像液にて現像して、第二の流路パターン13を形成した(図15)。
【0098】
引き続き、第一のポジ型レジスト層のパターニングを行った。同一の露光装置を用い、23000mJ/cm2の露光量にてパターン露光し、メチルイソブチルケトンにて現像、イソプロピルアルコールにてリンス処理を行って、第一の流路パターン14を形成した(図16)。
【0099】
次いで、被処理基板上に実施例1と同様の組成からなるネガ型感光性樹脂組成物を用いてスピンコートを行い(平板上膜厚20μm)、100℃で2分間(ホットプレート)のベークを行い、ノズル構成部材5を形成した(図17)。
【0100】
引き続き、被処理基板上に実施例1と同様の組成からなる感光性樹脂組成物を用いて、スピンコートにより1μmの膜厚となるように塗布し、80℃で3分間(ホットプレート)のベークを行い、撥インク剤層6を形成した(図18)。
【0101】
次いで、MPA−600(キヤノン製)を用い、400mJ/cm2の露光量にてパターン露光した後、ホットプレートにて120℃で120秒のPEBを行い、メチルイソブチルケトンにて現像することにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6のパターニングを行い、インク吐出口7を形成した(図19)。なお、本実施例ではφ10μmの吐出口パターンを形成した。
【0102】
次に、被処理基板の裏面にポリエーテルアミド樹脂組成物(日立化成製HIMAL)を用いて幅1mm、長さ10mmの開口部形状を有するエッチングマスク8を作成した(図20)。次いで、80℃に保持した22wt%のTMAH水溶液中に被処理基板を浸漬して基板の異方性エッチングを行い、インク供給口9を形成した(図21)。なお、この際エッチング液から撥インク剤層6を保護する目的で、保護膜(東京応化工業製OBC:不図示)を撥インク剤層8上に塗布して異方性エッチングを行った。
【0103】
次いで、保護膜として用いたOBCをキシレンを用いて溶解除去した後、上記と同一のウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000を用い、ノズル構成部材および撥インク剤層越しに250000mJ/cm2の露光量で全面露光を行い、流路パターン13および14を可溶化した。引き続き乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、流路パターン13および14を溶解除去することによりインクジェットヘッドを作成した(図22)。なお、エッチングマスクとして用いたポリエーテルアミド樹脂組成物層は、酸素プラズマを用いたドライエッチングにより除去した。
【0104】
以上のように作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。
【0105】
(実施例5)
第二のポジ型レジストとして、実施例2と同様の組成のポジ型レジストを用いた以外は、実施例4と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。なお、該ポジ型レジストのパターニングに必要な露光量は、150mJ/cm2であった。
【0106】
(実施例6)
第一のポジ型レジストとして、以下の組成の光崩壊型のポジ型レジストを用い、パターニングの際の露光量を40000mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。
【0107】
メタクリル酸メチル/メタクリル酸のラジカル共重合物
[(モノマ組成比90/10:モル比)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=120000、分散度(Mw/Mn)=1.8]
(比較例2)
第二のポジ型レジストとして、トリフェニルスルフォニウムアンチモネート(みどり化学製TPS−103)を添加しないものを用いた以外は、実施例4と同様にして2層構成の流路パターンを形成したところ、第二のポジ型レジストのパターニングには20000mJ/cm2の露光量が必要であった。このため、第二のポジ型レジスト層の現像時に、第一のポジ型レジスト層の一部が現像される障害が発生した。
【0108】
(実施例7)
(1)ポジ型レジストの調製
得られた共重合体30gを、シクロヘキサノン70gに溶解し、トリフェニルスルフォニウムトリフラート(みどり化学製TPS−105)0.6gを添加して溶解した後、0.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行って、ポジ型レジスト溶液を調製した。
(2)インクジェットヘッドの作成
まず、図23に示されるような、基板1を準備する。最も汎用的には、基板1としてはシリコン基板が適用される。一般に、吐出エネルギー発生素子を制御するドライバーやロジック回路等は、汎用的な半導体製法にて生産される為、該基板にシリコンを適用することが好適である。本例においては、インク吐出圧力発生素子2としての電気熱変換素子(材質HfB2 からなるヒーター)と、インク流路およびノズル形成部位にSiN+Taの積層膜(不図示)を有するシリコン基板を準備した(図24)。
【0109】
次いで図25に示すように、インク吐出圧力発生素子2を含む基板上に、ポジ型レジスト層を形成した。上記のポジ型レジストを用い、スピンコート法にて塗布し、100℃で、3分でプリベークした後、窒素雰囲気中オーブンにて150℃で、30分間の熱処理を行った。なお、熱処理後のレジスト層の膜厚は10μmであった(図25)。
【0110】
引き続き、200〜280nmの波長のDeep−UV光を用いて、400mJ/cm2の露光量にて露光し、ホットプレートを用いて、120℃で180秒のPEBを行った後、実施例1と同様の現像液にて現像して、第一の流路パターン16を形成した(図26)。この時、第一の流路パターンの高さは、4μmであった。
【0111】
引き続き、200〜280nmの波長のDeep−UV光を用いて、40000mJ/cm2の露光量にて露光し、上記と同一の現像液にて現像し、第二の流路パターン17を形成した(図27)。これにより、高さ6μmの第二の流路パターン17上に、高さ4μmの第一の流路パターン16を有するインク流路パターンが得られた。
【0112】
次いで、被処理基板上に実施例1と同様の組成からなる感光性樹脂組成物を用いてスピンコートを行い(平板上膜厚15μm)、100℃で2分間(ホットプレート)のベークを行い、ノズル構成部材5を形成した(図28)。
【0113】
引き続き、被処理基板上に実施例1と同様の組成からなる感光性樹脂組成物を用いて、スピンコートにより1μmの膜厚となるように塗布し、80℃で3分間(ホットプレート)のベークを行い、撥インク剤層6を形成した(図29)。
【0114】
次いで、MPA−600(キヤノン製)を用い、290〜400nmの波長の光を用いて、400mJ/cm2の露光量にてパターン露光した後、ホットプレートにて90℃で120秒のPEBを行い、メチルイソブチルケトンにて現像することにより、ノズル構成部材5および撥インク剤層6のパターニングを行い、インク吐出口7を形成した(図30)。なお、本実施例ではφ8μmの吐出口パターンを形成した。
【0115】
次に、被処理基板の裏面にポリエーテルアミド樹脂組成物(日立化成製HIMAL)を用いて幅1mm、長さ10mmの開口部形状を有するエッチングマスク8を作成した(図9)。次いで、80℃に保持した22wt%のTMAH水溶液中に被処理基板を浸漬して基板の異方性エッチングを行い、インク供給口9を形成した(図31)。なお、この際エッチング液から撥インク剤層6を保護する目的で、保護膜(東京応化工業製OBC:不図示)を撥インク剤層6上に塗布して異方性エッチングを行った。
【0116】
次いで、保護膜として用いたOBCをキシレンを用いて溶解除去した後、200〜280nmの波長の光を用いて、ノズル構成部材および撥インク剤層越しに80000mJ/cm2の露光量で全面露光を行い、インク流路パターンを可溶化した。引き続き乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、インク流路パターンを溶解除去することによりインクジェットヘッドを作成した(図33)。なお、エッチングマスクとして用いたポリエーテルアミド樹脂組成物層は、酸素プラズマを用いたドライエッチングにより除去した。
【0117】
以上のように作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。
【0118】
(実施例8)
ポジ型レジストとして以下の組成の感光性樹脂組成物を用い、加水分解に由来するポジ化反応をi線対応として、第一のフォトリソグラフィー工程におけるパターニングの際に、i線ステーッパー(キヤノン製:FPA−3000iW)を用い、1000J/m2の露光量で露光を行った以外は、実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。なお、この時形成された第一の流路パターン16の高さは、5μmであった。
【0119】
無水メタクリル酸/メタクリル酸メチルのラジカル共重合物:30g
(実施例7と同一のもの)
SP−172(旭電化工業製):2.0g
SP−100(旭電化工業製):1.0g
シクロヘキサノン:70g
(実施例9)
ポジ型レジストとして以下の組成の感光性樹脂組成物を用い、第一のフォトリソグラフィー工程におけるパターニングの際に、PEB条件を110℃で180秒とした以外は、実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを作成し、吐出および記録評価を行ったところ、良好な画像記録が可能であった。なお、この時形成された第一の流路パターン16の高さは、4μmであった。
【0120】
無水メタクリル酸/メタクリル酸メチルのラジカル共重合物:30g
(実施例7と同一のもの)
TPS−105(みどり化学製):0.9g
シクロヘキサノン:70g
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】基板の断面図である。
【図2】インク吐出圧力発生素子を形成した基板の断面図である。
【図3】感光性樹脂組成物層を形成した基板の断面図である。
【図4】流路パターンを形成した基板の断面図である
【図5】ノズル構成部材を形成した基板の断面図である。
【図6】撥インク剤層を形成した基板の断面図である。
【図7】インク吐出口を形成した基板の断面図である。
【図8】エッチングマスクを形成した基板の断面図である
【図9】インク供給口を形成した基板の断面図である
【図10】完成したインクジェットヘッドの断面図である
【図11】基板の断面図である。
【図12】インク吐出圧力発生素子を形成した基板の断面図である。
【図13】第一のポジ型レジスト層を形成した基板の断面図である。
【図14】第二のポジ型レジスト層を形成した基板の断面図である。
【図15】第二の流路パターンを形成した基板の断面図である。
【図16】第一の流路パターンを形成した基板の断面図である。
【図17】ノズル構成部材を形成した基板の断面図である
【図18】撥インク剤層を形成した基板の断面図である
【図19】インク吐出口を形成した基板の断面図である
【図20】エッチングマスクを形成した基板の断面図である
【図21】インク供給口を形成した基板の断面図である
【図22】完成したインクジェットヘッドの断面図である
【図23】基板の断面図である。
【図24】インク吐出圧力発生素子を形成した基板の断面図である。
【図25】ポジ型レジスト層を形成した基板の断面図である。
【図26】第一の流路パターンを形成した基板の断面図である
【図27】第二の流路パターンを形成した基板の断面図である
【図28】ノズル構成部材を形成した基板の断面図である。
【図29】撥インク剤層を形成した基板の断面図である。
【図30】インク吐出口を形成した基板の断面図である。
【図31】エッチングマスクを形成した基板の断面図である
【図32】インク供給口を形成した基板の断面図である
【図33】完成したインクジェットヘッドの断面図である
【図34】光酸発生剤の添加量と現像可能膜厚の関係を示すグラフである
【図35】PEB温度と現像可能膜厚の関係を示すグラフである
【符号の説明】
【0122】
1 基板
2 インク吐出圧力発生素子
3、15ポジ型レジスト層
4 流路パターン
5、27ノズル構成部材
6 撥インク剤層
7 インク吐出口
8 エッチングマスク
9 インク供給口
10 インク流路
11 第1のポジ型レジスト層
12 第2のポジ型レジスト層
13、16 第2の流路パターン
14、17 第1の流路パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)分子中にカルボン酸の無水物構造を有するアクリル樹脂、(2)光照射により酸を発生する化合物、を少なくとも含有することを特徴とするポジ型の感光性樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂が、カルボン酸の無水物構造を介して分子間架橋していることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル樹脂が、側鎖にカルボン酸の無水物構造を有することを特徴とする請求項1〜2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル樹脂が、下記一般式1および一般式2で示される構造単位の少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式1および一般式2中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【請求項5】
アクリル樹脂が、少なくとも無水メタクリル酸をモノマー成分とする重合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
アクリル樹脂が、少なくとも無水メタクリル酸とメタクリル酸メチルをモノマー成分とする重合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
光照射により酸を発生する化合物が、芳香族スルフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、トリアジン化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
ポジ型感光性樹脂を用いて、基板上に段差を有するパターンを形成する方法であって、
(1)請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物層を基板上に形成する工程と、
(2)第一のフォトリソグラフィー工程により、該感光性樹脂組成物層の第1のパターンとなる部分以外の部分を膜厚方向における所定の深さまで除去して、該所定の深さよりも突出した部分からなる第1のパターンを形成する工程と、
(3)第二のフォトリソグラフィー工程により、前記第1のパターンが形成された感光性樹脂組成物層の第2のパターンとなる部分以外の部分を該第1のパターン形状を維持しつつ第1のパターンとなる部分以外の部分を基板上から除去して、該第1のパターンが該第2のパターン上に設けられた段差形状を有するパターンを得る工程と、
を有し、
前記第一のフォトリソグラフィー工程が、露光、露光後加熱および現像の処理工程を有し、該第一のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂中のカルボン酸無水物の加水分解反応に由来するものであり、かつ、
前記第二のフォトリソグラフィー工程が、露光および現像の処理工程を有し、該第二のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂の主鎖分解反応に由来するものである
ことを特徴とする段差パターンの形成方法。
【請求項9】
第一のフォトリソグラフィー工程における露光波長が、第二のフォトリソグラフィー工程における露光波長よりも長波長であることを特徴とする請求項8に記載の段差パターンの形成方法。
【請求項10】
ポジ型感光性樹脂の現像液として、少なくとも
(1)水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、
(2)含窒素塩基性有機溶剤、及び
(3)水
を含有する現像液を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の段差パターンの形成方法。
【請求項11】
グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の段差パターンの形成方法。
【請求項12】
含窒素塩基性有機溶剤が、エタノールアミンおよびモルフォリンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項10または11に記載の段差パターンの形成方法。
【請求項13】
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、ポジ型の感光性樹脂組成物層を設ける工程と、
(2)前記感光性樹脂組成物層の所定の部位に電離放射線を照射する工程と、
(3)前記電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで所望のインク液路パターンを形成する工程と、
(4)該インク液路パターン上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(5)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(6)インク流路パターンを溶解除去する工程と、
を有し、前記ポジ型の感光性樹脂組成物が、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項14】
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、第一のポジ型感光性樹脂組成物層を設ける工程と、
(2)第一のポジ型感光性樹脂組成物層上に、第二のポジ型感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
(3)第二のポジ型感光性樹脂組成物層を反応させ得る波長域の電離放射線を、第二のポジ型感光性樹脂組成物層の所定の部位に照射する工程と、
(4)第二のポジ型感光性樹脂組成物層の電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで第二のインク液路パターンを形成する工程と、
(5)第一のポジ型感光性樹脂組成物層を反応させ得る波長域の電離放射線を、第一のポジ型感光性樹脂組成物層の所定の部位に照射する工程と、
(6)第一のポジ型感光性樹脂組成物層の電離放射線照射部位を、現像処理により除去することで第一のインク流路パターンを形成する工程と、
(7)第一および第二のインク液路パターン上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(8)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(9)第一および第二のインク流路パターンを溶解除去する工程と、
を有し、前記第二のポジ型感光性樹脂組成物が、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項15】
インクを吐出するための吐出口と、該吐出口に連通するとともに前記インクを吐出するための圧力発生素子を内包するインク流路と、前記圧力発生素子が形成された基板と、前記基板と接合して前記インク流路を形成するインク流路形成部材とを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)圧力発生素子が形成された基板上に、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
(2)第一のフォトリソグラフィー工程により、該感光性樹脂組成物層の第1のインク流路パターンとなる部分以外の部分を膜厚方向における所定の深さまで除去して、該所定の深さよりも突出した部分からなる第1のインク流路パターンを形成する工程と、
(3)第二のフォトリソグラフィー工程により、前記第1のインク流路パターンが形成された感光性樹脂組成物層の第2のインク流路パターンとなる部分以外の部分を該第1のインク流路パターン形状を維持しつつ第1のパターンとなる部分以外の部分を基板上から除去して、該第1のインク流路パターンが該第2のインク流路パターン上に設けられた段差構造を得る工程と、
(4)前記段差構造上に、インク液路壁を形成するための被覆樹脂層を形成する工程と、
(5)基板上に形成された圧力発生素子上に位置する該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(6)前記段差構造を溶解除去する工程と、
を有し、
前記第一のフォトリソグラフィー工程が、露光、露光後加熱および現像の処理工程を有し、該第一のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂中のカルボン酸無水物の加水分解反応に由来するものであり、かつ、
前記第二のフォトリソグラフィー工程が、露光および現像の処理工程を有し、該第二のフォトリソグラフィー工程での該感光性樹脂組成物層のポジ化反応が、少なくとも前記アクリル樹脂の主鎖分解反応に由来するものである
ことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項16】
第一のフォトリソグラフィー工程における露光波長が、第二のフォトリソグラフィー工程における露光波長よりも長波長である請求項15に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項17】
ポジ型感光性樹脂の現像液として、少なくとも
(1)水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、
(2)含窒素塩基性有機溶剤、及び
(3)水
を含有する現像液を用いることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項18】
グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種であることを特徴とする請求項17に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項19】
含窒素塩基性有機溶剤が、エタノールアミンおよびモルフォリンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項17または18に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項20】
請求項13〜19に記載のインクジェットヘッドの製造方法により製造されたインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2006−11181(P2006−11181A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190479(P2004−190479)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】