説明

感光性樹脂組成物

【課題】解像度、及び密着性に優れ、アルカリ性水溶液によって現像することができ、さらに剥離工程において剥離片が溶解可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係る感光性樹脂組成物は、(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、酸当量で100〜600、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体:20〜90質量%、(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜75質量%、(c)トリアリールイミダゾリル二量体を含む光重合開始剤:0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物の光硬化部が剥離液に可溶であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性水溶液によって現像可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を支持体上に積層した感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いた基板上へのレジストパターンの形成方法、及び該レジストパターンの用途に関する。さらに詳しくは、プリント配線板の製造、フレキシブルプリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム(以下、リードフレームという)の製造、メタルマスク製造などの金属箔精密加工、及びBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ製造、TAB(Tape Automated Bonding)やCOF(Chip On Film:半導体ICをフィルム状の微細配線板上に搭載したもの)に代表されるテープ基板の製造、半導体バンプの製造、フラットパネルディスプレイ分野におけるITO電極、アドレス電極、または電磁波シールドなどの部材の製造、およびサンドブラスト工法によって基材を加工する際の保護マスク部材として好適なレジストパターンを与える感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板はフォトリソグラフィー法によって製造されている。フォトリソグラフィー法とは、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、パターン露光して該感光性樹脂組成物の露光部を重合硬化させ、未露光部を現像液で除去して基板上にレジストパターンを形成し、エッチング又はめっき処理を施して導体パターンを形成した後、該レジストパターンを該基板上から剥離除去することによって、基板上に導体パターンを形成する方法を言う。
【0003】
上記のフォトリソグラフィー法においては、感光性樹脂組成物からなる層(以下、「感光性樹脂層」という。)を基板上に積層するにあたって、フォトレジスト溶液を基板に塗布して乾燥させる方法、または支持体、感光性樹脂層、及び必要によっては保護層を順次積層した感光性樹脂積層体(以下、「ドライフィルムレジスト」という。)を基板にラミネートする方法のいずれかが使用される。そして、プリント配線板の製造においては、後者のドライフィルムレジストが使用されることが多い。
【0004】
上記のドライフィルムレジストを用いてプリント配線板を製造する方法について、以下に簡単に述べる。
【0005】
まず、ポリエチレンフィルム等の保護層がある場合には、感光性樹脂層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて銅張積層板等の基板上に、基板、感光性樹脂層、支持体の順序になるよう、感光性樹脂層及び支持体を積層する。次いで、配線パターンを有するフォトマスクを介して、該感光性樹脂層を超高圧水銀灯が発する紫外線で露光することによって、露光部分を重合硬化させる。次いでポリエチレンテレフタレート等からなる支持体を剥離する。次いで、弱アルカリ性を有する水溶液等の現像液により感光性樹脂層の未露光部分を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成させる。次いで、形成されたレジストパターンを保護マスクとして公知のエッチング処理、又はパターンめっき処理を行う。最後に、該レジストパターンを基板から剥離して導体パターンを有する基板、すなわちプリント配線板を製造する。
【0006】
近年、電子機器が急速に高機能化・小型化するなかで、プリント配線版の高密度化・多層化が進んでいる。特に、プリント配線板の狭ピッチ化に対応すべく材料に対してファイン化への要求が高まっており、ドライフィルムレジストにおいては高解像度・高密着性に対する要望が分野を問わず高まってきている。
同時に、低コストで大量に生産できる事も必要であり、高精細な製品を歩留まりよく生産することが求められる。
【0007】
ファイン化を目的として、ドライフィルムの解像性・密着性を向上させると、前述したレジストパターンを基板から剥離する工程において、完全にレジストパターンを剥離できず、基板上に剥離残渣が生じるというトラブルが報告されている。
一般的に、レジストパターンを基板から剥離する工程で使用される剥離液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液、DMSO、DMFなどの有機溶剤、アルカノールアミン類などの有機アミン系溶液等が用いられている(特許文献1)。ここで解像度・密着性を向上させるために、レジストパターンのアルカリ性である現像液(炭酸ナトリウム水溶液)に対する耐性を上げると、剥離残という副作用が生じてしまう。
レジストパターンを基板から剥離する工程においては(i)剥離片が大きすぎて剥離機のロールに絡みつき作業性が著しく低下する。(ii)剥離片が小さすぎて基板上に再付着し歩留まり低下の原因となる。(iii)剥離片がノズルに付着しノズルつまりを起こす、など様々な不良を引き起こすケースが多く、歩留まり悪化の要因になり従来大きな問題となっている。ここで剥離片とは基板から剥離されたレジストパターン片を指す。
【0008】
ドライフィルムの設計と剥離液溶解性に関するトレードオフについて、以下工程別に更に詳しく説明する。
ウェットエッチング法またはドライエッチング法(サンドブラスト法など)においては、レジストパターンのエッチング液またはドライエッチング材(研磨材など)に対する耐性が必要であるため、露光部において光に対する架橋性を高める必要がある。これは同時に解像性や密着性を向上することにも有効な手法であるが、架橋が増すほど剥離液への溶解性は乏しくなり、剥離残渣が生じ易くなってしまう。
めっき法においては、めっき工程後にレジストパターンを剥離する工程において剥離残渣が生じると歩留まりが大きく低下してしまう。これを解消すべくレジストパターンが剥離液に可溶となるような設計を施すと、そもそもレジストパターンのめっき薬液に対する耐性が落ちてしまい、正常な導体パターンを得ることができない。
【0009】
半導体バンプ形成用には一般的に膜厚が40〜200umのドライフィルムが使用されるため、従来のような剥離液によってレジストパターンを膨潤させて、基板から剥離する工程では完全剥離に膨大な時間が必要であり生産性が悪化する。また、めっき工程と同じく多種の薬液を使用するため、剥離液に可溶化する設計は非常に難しい。
【0010】
特許文献2〜4に剥離片が剥離液に溶解する手法が記載されている。しかしながら、これらはレジストパターンの剥離液への溶解性は高いものの、同時に現像液または薬液への耐性も失ってしまい、歩留まり高く製品を得ることができない。
【0011】
このような理由から、現在ドライフィルムレジストは剥離片が剥離液に溶解しないタイプのものが普及しているが、最近のプリント配線板の更なる狭ピッチ化に適応すべく、高解像度・高密着性でありながら剥離片が溶解し、剥離工程において歩留まり悪化を生じないドライフィルムレジストが強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−221960号公報
【特許文献2】特開平9−265180号公報
【特許文献3】特開昭62−49355号公報
【特許文献4】特開昭62−43642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、解像度及び密着性に優れ、アルカリ性水溶液によって現像することができ、さらにレジストパターンを基板から剥離する工程において基板から剥離されたレジストパターン片が溶解可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上へのレジストパターンの形成方法、及び該レジストパターンの用途を提供することを目的とする。剥離片を可溶解化することにより、剥離工程における種々の剥離トラブルを解決し、歩留まりを大きく向上することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、上記目的は本発明の次の構成によって達成することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]
(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、酸当量で100〜600、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体:20〜90質量%、(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜75質量%、及び(c)トリアリールイミダゾリル二量体を含む光重合開始剤:0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物の光硬化部が剥離液に可溶であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、3〜40個のエチレンオキサイド鎖を含有する、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、また、A及びBは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、a1、a2、b1及びb2は、それぞれ、正の整数であり、かつ、a1、a2、b1及びb2の合計は、2〜40の整数であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物、又は、下記一般式(II):
【化2】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、D及びEは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、a3、a4、b3及びb4は、それぞれ、正の整数であり、かつ、a3、a4、b3及びb4の合計は、2〜40であり、そして−(D−O)−と−(E−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、前記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
[4]
(d)一般式(III):
【化3】

{式中、Xは、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アミノ基又は炭素数1〜20のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、ナフチル基を含むアリール基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は複素環であり、m及びnは、mが2以上の整数であり、nが0以上の整数であって、m+n=6となるように選ばれる整数であり、nが2以上の整数の時、2以上のXは各々同一でも相違してもよい。}で表される化合物をさらに含有する、前記[1]〜[3]のいずれか1に記載の感光性樹脂組成物。
[5]
(a)熱可塑性共重合体が、重合性不飽和基を少なくとも一個有する単量体を共重合成分として含む、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
[6]
前記一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物が、ポリエチレンオキシ基を有する、前記[3]〜[5]のいずれか1に記載の感光性樹脂組成物。
[7]
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する前記付加重合性モノマー中、70質量%以上がアクリレート類である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
[8]
前記[1]〜[7]のいずれか1に記載の感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる感光性樹脂積層体。
[9]
基板上に、前記[8]記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成する積層工程、露光工程、未露光部を除去する現像工程を順に含む、レジストパターン形成方法。
[10]
前記露光工程において、直接描画して露光することを特徴とする、前記[9]に記載のレジストパターン形成方法。
[11]
前記[9]又は[10]に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含むプリント配線板の製造方法。
【0018】
[12]
前記[9]又は[10]に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングする工程を含むリードフレームの製造方法。
[13]
前記[9]又は[10]記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、サンドブラストする工程を含む凹凸基板の製造方法。
[14]
前記[9]又は[10]に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含む半導体パッケージの製造方法。
[15]
前記[9]又は[10]に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含む半導体バンプの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、解像度及び密着性に優れ、アルカリ性水溶液によって現像することができ、さらに剥離工程において剥離片が溶解可能なものである。本発明のレジストパターン形成方法は、解像性、及び密着性に優れる、レジストパターンを基板から剥離する工程において、剥離片が溶解可能なレジストパターンを提供し、プリント配線板の製造、リードフレームの製造、半導体パッケージの製造、半導体バンプの製造、平面ディスプレイの製造に好適に使用することができる。ここで剥離片とは基板から剥離されたレジストパターン片のことを指す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、酸当量で100〜600、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体:20〜90質量%、(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜75質量%、(c)トリアリールイミダゾリル二量体を含む光重合開始剤:0.01〜30質量%を必須成分として含み、該感光性樹脂組成物の光硬化部が剥離液に可溶であるものである。
【0021】
ここで光硬化部とは上記感光性樹脂組成物に波長300nm〜500nmの光を5mJ/cm2〜1000J/cm2のエネルギーで照射した部分を指す。剥離液とは、該光硬化したレジストパターンが基板から剥離できるものであれば特に限定されず、剥離に必要とする時間の長さと経済性のバランスからpHは8〜14が好ましく、特に、9〜14が好ましい。1〜10質量%の濃度、40〜70℃のNaOH、KOHの水溶液が一般的に用いられる。剥離液にも、少量の水溶性溶媒を加えることが可能である。
可溶であるとは、剥離片が剥離液中においてその重量が減少する現象を指す。
剥離液に浸漬する前の剥離片重量と、剥離液に浸漬した後の剥離片重量をそれぞれ測り、剥離液に浸漬する前の剥離片重量に対する、剥離液に浸漬した後の剥離片重量が百分率において5%以下になる状態を「可溶化」と定義する。この値は生産性の観点から4%以下が望ましく、3%以下が更に望ましい。
【0022】
(a)熱可塑性共重合体
本発明の感光性樹脂組成物において、(a)熱可塑性共重合体としては、α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、酸当量が100〜600、重量平均分子量が5,000〜500,000のものが用いられる。
【0023】
熱可塑性共重合体中のカルボキシル基は、感光性樹脂組成物がアルカリ水溶液からなる現像液や剥離液に対して、現像性や剥離性、特に剥離液溶解性を有するために必要である。ここで剥離性とは、レジストパターンの基板からの剥離のし易さをいう。
【0024】
酸当量は、100〜600が好ましく、より好ましくは250〜450である。剥離液への溶解を可能にするという観点から100以上であり、また、現像性を維持するという観点から600以下である。ここで、酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する熱可塑性共重合体の質量(グラム)をいう。なお、酸当量の測定は、平沼レポーティングタイトレーター(COM−555)を用い、0.1mol/lのNaOH水溶液での電位差滴定法により行われる。
【0025】
重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上であり、また、現像性を維持し、剥離液への溶解性を可能にするという観点から500,000以下である。より好ましくは、重量平均分子量は、20,000〜100,000である。この場合の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)の検量線を用いて測定した重量平均分子量のことである。該重量平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、以下の条件で測定することができる。
示差屈折率計:RI−1530、
ポンプ:PU−1580、
デガッサー:DG−980−50、
カラムオーブン:CO−1560、
カラム:順にKF−8025、KF−806M×2、KF−807、
溶離液:THF
【0026】
熱可塑性共重合体は、後述する第一の単量体少なくとも1種以上、又は後述する第二の単量体少なくとも一種以上を含む共重合体であることが好ましい。
【0027】
第一の単量体は、分子中にα,β−不飽和カルボキシル基を含有する単量体である。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。中でも、剥離液への溶解性を可能にするという観点から特に(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを示す。以下同様である。
【0028】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を少なくとも一個有する単量体である。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ビニルアルコールのエステル類、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体が挙げられる。中でも、解像性及び密着性を向上させるという観点から特にメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物中に含有される熱可塑性重合体の量は、20〜90質量%の範囲であり、好ましくは、25〜70質量%の範囲である。この量は、アルカリ現像性を維持し、かつ剥離液への溶解性を可能にするという観点から20質量%以上であり、また、露光によって形成されるレジストパターンがレジストとしての性能を十分に発揮するという観点から90質量%以下である。
【0030】
(b)付加重合性モノマー
本発明の感光性樹脂組成物に用いる(b)付加重合性モノマーとしては、少なくとも1つの末端エチレン性不飽和基を有する公知の化合物を使用できる。
【0031】
例えば、ノニルフェノキシポリエトキシプロポキシアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学製、商品名:OE−A200)、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0032】
特に、剥離液への溶解性を可能にするという観点から、3〜40個のエチレンオキサイド鎖を含有するものが好ましく、より好ましくは4〜32個であり、6〜30個が最も好ましい。このような例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリシジルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化グリシジルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ウレタンジ(メタ)アクリレート(UA−11 新中村工業製)、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシプロポキシ変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエトキシアクリレート(NP−8EA 共栄社化学製)、ノニルフェノキシポリエトキシプロポキシアクリレート等が挙げられる。付加重合性モノマー全体の分子量に対するエチレンオキサイドの分子量は0.0002〜0.95が好ましく、さらに0.001〜0.9がより好ましく、0.005〜0.85が最も好ましい。
【0033】
また、例えば構造内にカルボキシル基やヒドロキシル基およびそれらの変性体など酸性を示す官能基を有するものも、剥離液への可溶化を向上させるのに有用である。この様な例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシアルキルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシアルキルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシアルキルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシアルキルヒドロキシアルキルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、クロロヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにアルキレングリコールを付加したジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAにアルキレングリコールを付加したジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにアルキレングリコールを付加したジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加した化合物、水添ビスフェノールAにアルキレングリコールを付加したジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加した化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシアルキルアッシドホスフェート、等が挙げられる。
【0034】
また、解像性及び密着性向上の観点から、下記一般式(I):
【0035】
【化4】

(式中、R及びRは、それぞれ独立にH又はCHである。また、A及びBは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、これらは同一であっても相違していてもよく、異なっている場合、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロック構造でもランダム構造でもよい。a1、a2、b1及びb2は、それぞれ独立に0又は正の整数であり、これらの合計は2〜40の整数である。)で表される化合物、又は、下記一般式(II):
【0036】
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立にH又はCHである。また、D及びEは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、これらは同一であっても相違していてもよく、異なっている場合、−(D−O)−及び−(E−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロック構造でもランダム構造でもよい。a3、a4、b3及びb4は、それぞれ独立に0又は正の整数であり、これらの合計は2〜40の整数である。)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が特に好ましい。
【0037】
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリエチレンオキシ基は、モノエチレンオキシ基、ジエチレンオキシ基、トリエチレンオキシ基、テトラエチレンオキシ基、ペンタエチレンオキシ基、ヘキサエチレンオキシ基、ヘプタエチレンオキシ基、オクタエチレンオキシ基、ノナエチレンオキシ基、デカエチレンオキシ基、ウンデカエチレンオキシ基、ドデカエチレンオキシ基、トリデカエチレンオキシ基、テトラデカエチレンオキシ基、及びペンタデカエチレンオキシ基からなる群から選択されるいずれかの基である化合物が好ましい。
【0038】
また、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンも挙げられる。該化合物が有するポリアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の混合物が挙げられ、オクタエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、及びテトラエチレンオキシ基とテトラプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、ペンタデカエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物が好ましい。式中、a1、a2、b1およびb2の合計は、2〜30の整数がより好ましい。これらの中でも、2,2−ビス{(4−メタクリロキシペンタエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンが最も好ましい。
【0039】
上記式(II)で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリエチレンオキシ基は、モノエチレンオキシ基、ジエチレンオキシ基、トリエチレンオキシ基、テトラエチレンオキシ基、ペンタエチレンオキシ基、ヘキサエチレンオキシ基、ヘプタエチレンオキシ基、オクタエチレンオキシ基、ノナエチレンオキシ基、デカエチレンオキシ基、ウンデカエチレンオキシ基、ドデカエチレンオキシ基、トリデカエチレンオキシ基、テトラデカエチレンオキシ基、及びペンタデカエチレンオキシ基からなる群から選択されるいずれかの基である化合物が好ましい。
【0040】
また、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリアルキレンオキシ)フェニル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリアルキレンオキシ)フェニル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の混合物が挙げられ、オクタエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、及びテトラエチレンオキシ基とテトラプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、ペンタデカエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物が好ましい。式中、a3、a4、b3及びb4は0又は正の整数であり、a3、a4、b3及びb4の合計は、2〜30の整数が好ましい。これらの中でも、2,2−ビス{(4−メタクリロキシペンタエチレンオキシ)フェニル}プロパンが最も好ましい。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる、上記式(I)で表される化合物及び上記式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する場合の含有量は、感光性樹脂組成物中に5〜40質量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。この量は、高解像度、高密着性を発現するという観点から5質量%以上が好ましく、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から40質量%以下が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物においては、(b)付加重合性モノマー中、アクリレート化合物が(b)を基準として70質量%以上であることが剥離液への溶解性を可能にするという観点から好ましい。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物中に含有される(b)付加重合性モノマーの量は、5〜75質量%の範囲であり、より好ましい範囲は15〜60質量%である。この量は、レジストパターンの硬化不良、及び現像時間の遅延を抑え、さらに剥離液への溶解性を向上させるという観点から5質量%以上であり、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から75質量%以下である。
【0043】
(c)光重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物には、(c)光重合開始剤が含まれる。解像性及び密着性向上の観点からトリアリールイミダゾリル二量体を含むことが好ましい。
【0044】
上述のトリアリールイミダゾリル二量体の例としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、
【0045】
2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、
【0046】
2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体は解像性や密着性に対して高い効果を有する光重合開始剤であり、好ましく用いられる。これらは単独又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0047】
トリアリールイミダゾリル二量体が感光性樹脂組成物に含有される場合、その量は、0.01〜30質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜10質量%であり、最も好ましくは0.1〜5質量%である。この量は、十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、高解像性を維持するという観点から30質量%以下が好ましい。また、トリアリールイミダゾリル二量体以外の光重合開始剤を併用することも可能である。
【0048】
このような光重合開始剤としては、キノン類、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、
芳香族ケトン類、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾイン、
ベンゾインエーテル類、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、
N−フェニルグリシン類、例えば、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン、
【0049】
チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸の組み合わせ、例えば、エチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、
オキシムエステル類、例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾインオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、
アクリジン類、例えば、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業(株)製、N−1717)、9−フェニルアクリジン、
チオキサントン類、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロルチオキサントン、
ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノ安息香酸エチル、
ピラゾリン類、例えば、1−フェニル−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0050】
この中でも、ミヒラーズケトンまたは4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが解像性及び密着性の観点から特に好ましい。
【0051】
(d)重合禁止剤
さらに、本発明の感光性樹脂組成物の熱安定性、保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物にラジカル重合禁止剤やベンゾトリアゾール類を含有させることは好ましいことである。
【0052】
重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のヒドロキシ芳香族化合物、フェニベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン等のキノン類、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン、フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン類、フェノチアジン、ピリジン等の複素環式化合物、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、クロラニル、アリールフォースファイト、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、塩化第一銅、等が挙げられるが、解像性及び密着性の観点から、下記一般式(III):
【0053】
【化6】

{式中、Xは、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アミノ基又は炭素数1〜20のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、ナフチル基を含むアリール基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は複素環であり、m及びnは、mが2以上の整数であり、nが0以上の整数であって、m+n=6となるように選ばれる整数であり、nが2以上の整数の時、2以上のXは各々同一でも相違してもよい}で示される化合物が好ましい。
【0054】
前記一般式(III)で表される化合物中のXは、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アミノ基又は炭素数1から20のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は複素環からなる基を示し、アルキル基であることが特に好ましい。
【0055】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン等が挙げられる。上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0056】
上記炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。上記炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアリール基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜10のアルキルメルカプト基としては、例えば、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられる。上記アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記複素環からなる基としては、例えば、エチレンオキシド基、フラン基、チオフェン基、ピロール基、チアゾール基、インドール基、キノリン基等が挙げられる。また、前記一般式(I)におけるm及びnは、mが2以上の整数であり、nが0以上の整数であって、m+n=6となるように選ばれる整数である。また、nが2以上の整数の時、2以上のXは各々同一でも相違していてもよい。解像度の観点からmは2以上の整数が好ましい。
【0057】
また、本発明の(D)成分の前記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、カテコール、レゾルシノール(レゾルシン)、1,4−ヒドロキノン、2−メチルカテコール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、2−エチルカテコール、3−エチルカテコール、4−エチルカテコール、2−プロピルカテコール、3−プロピルカテコール、4−プロピルカテコール、2−n−ブチルカテコール、3−n−ブチルカテコール、4−n−ブチルカテコール、2−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−di−tert−ブチルカテコール等のアルキルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール(オルシン)、2−エチルレゾルシノール、4−エチルレゾルシノール、2−プロピルレゾルシノール、4−プロピルレゾルシノール、2−n−ブチルレゾルシノール、4−n−ブチルレゾルシノール、2−tert−ブチルレゾルシノール、4−tert−ブチルレゾルシノール等のアルキルレゾルシノール、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−di−tert−ブチルヒドロキノン等のアルキルヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシンなどが挙げられる。
【0058】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0059】
ラジカル重合禁止剤及びベンゾトリアゾール類の合計添加量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%の範囲である。この量は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、光感度を維持するという観点から3質量%以下が好ましい。
これらラジカル重合禁止剤やベンゾトリアゾール類化合物は単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
【0060】
(e)その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物においては、前述した成分に加えて、染料、顔料に代表される着色物質を採用することができる。このような着色物質としては、例えば、フタロシアニングリーン、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーンなどが挙げられる。
【0061】
また、露光により可視像を与えることができるように、本発明の感光性樹脂組成物中にロイコ染料を添加してもよい。このようなロイコ染料としては、ロイコクリスタルバイオレット及びフルオラン染料が挙げられる。中でも、ロイコクリスタルバイオレットを用いた場合、コントラストが良好であり好ましい。フルオラン染料としては、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アミノフルオランなどが挙げられる。
【0062】
感光性樹脂組成物中に、ロイコ染料とハロゲン化合物を組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストの観点から、好ましい実施形態である。
【0063】
ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、ハロゲン化トリアジン化合物などが挙げられる。
【0064】
ハロゲン化合物を含有する場合の感光性樹脂組成物中のハロゲン化合物の含有量は、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
【0065】
着色物質及びロイコ染料の含有量は、感光性樹脂組成物中において、夫々0.01〜10質量%の範囲が好ましい。充分な着色性(発色性)が認識できる点から0.01質量%以上が好ましく、露光部と未露光部のコントラストを有する点と、保存安定性維持の観点から10質量%以下が好ましい。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤を含有させても良い。このような可塑剤としては、例えば、グリコール・エステル類;例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、フタル酸エステル類;例えば、ジエチルフタレート、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチルが挙げられる。
【0067】
可塑剤は、感光性樹脂組成物中に、5〜50質量%含むことが好ましく、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。現像時間の遅延を抑制する、硬化膜に柔軟性を付与する、剥離液への溶解性を向上させるという観点から5質量%以上が好ましく、また、硬化不足やコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下が好ましい。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(a)〜(e)を均一に溶解した調合液とするために、溶媒を含有してもよい。用いられる溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。フィルム化した際の塗工性の観点から、感光性樹脂組成物の調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように溶媒を調製することが好ましい。
【0069】
<感光性樹脂積層体>
本発明の感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層とその層を支持する支持体からなるが、必要により、感光性樹脂層の支持体と反対側の表面に保護層を有していても良い。
【0070】
ここで用いられる支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルムなどが挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じ延伸されたものも使用可能である。ヘーズは5以下のものが好ましい。フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び剥離液溶解性、経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要等から、10〜30μmの範囲のものが好ましく用いられる。
【0071】
また、感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、支持体よりも保護層の方が充分小さく容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が保護層として好ましく使用できる。また、特開昭59−202457号公報に開示された剥離性の優れたフィルムを用いることができる。
【0072】
保護層の膜厚は、10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、用途において異なるが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは7〜60μmの範囲であり、薄いほど解像度は向上し、また、厚いほど膜強度が向上する。
【0073】
支持体、感光性樹脂層、及び必要により、保護層を順次積層して、本発明の感光性樹脂積層体を作成する方法は、従来公知の方法を採用することができる。
【0074】
例えば、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これらを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にしておき、まず支持体上にバーコーターやロールコーターを用いて塗布して乾燥し、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する。
【0075】
次いで、必要により、感光性樹脂層上に保護層をラミネートすることにより感光性樹脂積層体を作成することができる。
【0076】
<レジストパターン形成方法>
本発明の感光性樹脂積層体を用いたレジストパターンは、積層工程、露光工程、及び現像工程を含む工程によって形成することができる。
【0077】
具体的な方法の一例を示すと、まず、ラミネーターを用いて積層工程を行う。感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基板表面に加熱圧着し積層する。この場合、感光性樹脂層は基板表面の片面だけに積層しても良いし、両面に積層しても良い。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、該加熱圧着は二回以上行うことにより密着性及び耐薬品性が向上する。この時、圧着は二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用しても良いし、何回か繰り返してロールに通し圧着しても良い。
【0078】
次に、露光機を用いて活性光を露光する露光工程を行う。必要ならば支持体を剥離しフォトマスクを通して活性光により露光する。露光量は、光源照度及び露光時間より決定される。光量計を用いて測定しても良い。
【0079】
露光工程において、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光はフォトマスクを使用せず基板上に直接描画して露光する。光源としては波長350〜410nmの半導体レーザーや超高圧水銀灯などが用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、光源照度および基板の移動速度によって決定される。
【0080】
次に、現像装置を用いて感光性樹脂層の未露光部を分散除去する現像工程を行う。露光後、感光性樹脂層上に支持体がある場合には、必要に応じてこれを除き、続いてアルカリ水溶液である現像液を用いて未露光部を現像除去し、レジスト画像を得る。アルカリ水溶液としては、NaCO、KCO等の水溶液を用いる。これらは感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.2〜2質量%の濃度、20〜40℃のNaCO水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤などを混入させてもよい。
【0081】
上述の工程によってレジストパターンが得られるが、場合によっては、さらに100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、遠赤外線等の方式からなる加熱炉を用いることができる。
【0082】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、基板として銅張り積層板やフレキシブル基板を用いて上述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成し、続いて、以下の工程を経ることで行われる。
まず現像により露出した基板の銅面をエッチング法、またはめっき法等の既知の方法を用いて導体パターンを形成する。
その後、レジストパターンを、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により、基板から溶解または剥離して所望のプリント配線板を得る。剥離液についても特に制限はないが、1〜10質量%の濃度、40〜70℃のNaOH、KOHの水溶液が一般的に用いられる。剥離液にも、少量の水溶性溶媒を加えることが可能である。
【0083】
<リードフレームの製造方法>
本発明のリードフレームの製造方法は、基板として銅、銅合金、鉄系合金等の金属板を用いて上述のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンを形成し、続いて、以下の工程を経ることにより行われる。
まず、現像により露出した基板をエッチングして導体パターンを形成する。
その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で導体パターンより剥離して、所望のリードフレームを得る。
【0084】
<半導体パッケージの製造方法>
本発明の半導体パッケージの製造方法は、基板としてLSIとしての回路形成が終了したウェハを用いて上述のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンを形成し、続いて、以下の工程を経ることにより行われる。
現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する。
その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離し、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去することにより、所望の半導体パッケージを得る。
【0085】
<半導体バンプの製造方法>
本発明の半導体バンプの製造方法は、基板としてLSIとしての回路形成が終了したウェハを用いて上述のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンを形成し、続いて、以下の工程を経ることにより行われる。
現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する。この工程後に、100〜300℃の高温でリフローする場合もある。
その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離し、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去することにより、所望の半導体バンプを得る。
【0086】
<凹凸基板の製造方法>
本発明の感光性樹脂積層体をドライフィルムレジストとして用いてサンドブラスト工法により基材に加工を施す場合には、基材上に前記した方法と同様な方法で、感光性樹脂積層体をラミネートする積層工程、露光、現像を施す。更に形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付け目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、基材上に残存した樹脂部分をアルカリ剥離液等で基材から除去する剥離工程を経て、基材上に凹凸パターンを有する基材、即ち凹凸基板を得ることができる。上前記サンドブラスト処理工程に用いるブラスト材としては公知のものが用いられ、例えば、SiC,SiO、Al、CaCO、ZrO、ガラス、ステンレス等の2〜100μm程度の微粒子が用いられる。凹凸基板は、例えば平面ディスプレイ用の背面板として好適に使用することができる。
【0087】
<剥離片の溶解度測定方法>
エッチングまたはめっき後によって基板上に得られたレジストパターンを70℃、3%の水酸化ナトリウム水溶液に30分浸漬し、剥離片の溶解性を肉眼で観察した。さらに基板を取り出して乾燥させ、浸漬前後の全重量を測定した。
(浸漬後の重量)/(浸漬前の重量)×100(%)
において、5%以下になる場合を「剥離液に溶解した」と定義した。
【実施例】
【0088】
以下に実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
初めに実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法を説明し、次いで、得られたサンプルについての評価方法およびその評価結果を示す。
【0089】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
【0090】
1.評価用サンプルの作製
実施例1〜6及び比較例1〜3における感光性樹脂積層体は次の様にして作製した。
<感光性樹脂積層体の作製>
表1に示す組成の感光性樹脂組成物及び溶媒をよく攪拌、混合し、支持体として16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で2分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは15μmであった。
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない表面上に、保護層として23μm厚のポリエチレンフィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
表1における略号で表わした感光性樹脂組成物中の材料成分の名称を表2に示す。
なお、比較例1〜2は、剥離片に溶解可能な成分を含まない組成物である。また比較例3は、本発明に用いられる(c)トリアリールイミダゾリル二量体を含まない組成物である。
【0091】
<基板整面>
感度、解像度評価用基板は、スプレー圧0.20MPaでジェットスクラブ研磨(日本カーリット(株)製、サクランダムR(登録商標)#220)したものを用意した。
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、整面して60℃に予熱した銅張積層板にホットロールラミネーター(旭化成エンジニアリング(株)製、AL−70)により、ロール温度105℃でラミネートした。エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
<露光>
支持体越しに感光性樹脂層にフォトマスク無しあるいは評価に必要なフォトマスクを通して、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製HMW-801)により100mJ/cmで露光した。
【0092】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、30℃の1質量%のNa2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。
<エッチング>
現像した基板を塩銅エッチング装置(東京化工機製)により塩酸3mol/l、塩化第二銅250g/l、50℃において最小エッチング時間の1.3倍の時間でエッチングした。この際、基板上の銅箔が完全に溶解除去されるときの時間を最小エッチング時間とした。
<レジスト剥離>
現像後の評価基板を、70℃に加温し撹拌子で撹拌した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液に30分浸漬した。撹拌速度は300rpmとした。
【0093】
2.評価方法
(1)解像度評価
ラミネート後15分経過した感度、解像度評価用基板を、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成される最小マスクライン幅を解像度の値とした。
○:解像度の値が10μm以下。
△:解像度の値が10μmを超え、15μm以下。
×:解像度の値が15μmを超える。
【0094】
(2)密着性評価
ラミネート後15分経過した感度、解像度評価用基板を、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインの正常に形成されている最小マスク幅を密着性の値とした。
○:密着性の値が10μm以下。
△:密着性の値が10μmを超え、15μm以下。
×:密着性の値が15μmを超える。
【0095】
(3)剥離液への溶解性評価
上記基板をエッチングした後、得られたパターンを10cm×10cmに切断した。その後70℃、3%の水酸化ナトリウム水溶液に30分浸漬し、剥離片の溶解性を肉眼で観察した。さらに基板を取り出して乾燥させ、浸漬前後の全重量を測定した。
(浸漬後の剥離片重量)/(浸漬前の剥離片重量)×100(%)
の式により、以下の様にランク分けを行った。
【0096】
○: 重量が5%以下
×: 重量が5%より大きい
(4)歩留評価
レジストパターンを基板から剥離する工程において、剥離片が基板上に付着しているもの割合(不良率)を測定し、以下のようにランク分けを行った。
○:不良率が5%以下
×:不良率が5%以上
【0097】
3.評価結果
実施例及び比較例の評価結果を以下の表1と表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、プリント配線板の製造、フレキシブルプリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造などの金属箔精密加工、及びBGA、CSP等のパッケージの製造、COFやTABなどテープ基板の製造、半導体バンプの製造、ITO電極やアドレス電極、電磁波シールドなどフラットパネルディスプレイの隔壁の製造、およびサンドブラスト工法によって基材を加工する方法等に利用することができる。
サンドブラスト工法による加工としては、有機ELのガラスキャップ加工、シリコンウエハーの穴開け加工、セラミックのピン立て加工が挙げられる。
更に、本発明のサンドブラスト工程による加工は、強誘電体膜および貴金属、貴金属合金、高融点金属、および高融点金属化合物からなる群から選ばれる金属材料層の電極の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、酸当量で100〜600、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体:20〜90質量%、(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜75質量%、及び(c)トリアリールイミダゾリル二量体を含む光重合開始剤:0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物の光硬化部が剥離液に可溶であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、3〜40個のエチレンオキサイド鎖を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、また、A及びBは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、a1、a2、b1及びb2は、それぞれ、正の整数であり、かつ、a1、a2、b1及びb2の合計は、2〜40の整数であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物、又は、下記一般式(II):
【化2】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、D及びEは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、a3、a4、b3及びb4は、それぞれ、正の整数であり、かつ、a3、a4、b3及びb4の合計は、2〜40であり、そして−(D−O)−と−(E−O)−の繰り返し単位の配列は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(d)一般式(III):
【化3】

{式中、Xは、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アミノ基又は炭素数1〜20のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、ナフチル基を含むアリール基、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は複素環であり、m及びnは、mが2以上の整数であり、nが0以上の整数であって、m+n=6となるように選ばれる整数であり、nが2以上の整数の時、2以上のXは各々同一でも相違してもよい。}で表される化合物をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(a)熱可塑性共重合体が、重合性不飽和基を少なくとも一個有する単量体を共重合成分として含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物が、ポリエチレンオキシ基を有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(b)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する前記付加重合性モノマー中、70質量%以上がアクリレート類である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる感光性樹脂積層体。
【請求項9】
基板上に、請求項8記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成する積層工程、露光工程、未露光部を除去する現像工程を順に含む、レジストパターン形成方法。
【請求項10】
前記露光工程において、直接描画して露光することを特徴とする、請求項9に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングする工程を含むリードフレームの製造方法。
【請求項13】
請求項9又は10記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、サンドブラストする工程を含む凹凸基板の製造方法。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含む半導体パッケージの製造方法。
【請求項15】
請求項9又は10に記載の方法によって基板上にレジストパターンを形成し、該基板を、エッチングするか又はめっきする工程を含む半導体バンプの製造方法。

【公開番号】特開2010−113349(P2010−113349A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234193(P2009−234193)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】