説明

感光性組成物、感光性平版印刷版材料及び平版印刷版材料の画像形成方法

【課題】 本発明の目的は、画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、保存性に優れる感光性平版印刷版材料、この感光性平版印刷版材料を与える感光性組成物、及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】 活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤、該酸により重合可能な基を有する化合物、アルカリ可溶性高分子結合剤及びシロキサングリコール共重合体を含有することを特徴とする感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータートゥプレートシステム(以下CTPという)に用いられる感光性平版印刷版材料、これに用いられる感光性組成物及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法に関し、特に波長350〜450nmのレーザー光での露光に適した感光性組成物、感光性平版印刷版材料及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接感光性平版印刷版に記録するCTPが開発され、実用化が進んでいる。
【0003】
これらのうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、重合可能な化合物を含む重合型の感光層を有するネガ型の感光性平版印刷版材料を用いることが知られている(特許文献1、2参照)。
【0004】
さらに、印刷版の取り扱い性の面からセーフライト性を高めた、波長350nm〜450nmのレーザーで画像露光可能な印刷版材料が知られている。
【0005】
そして、高出力かつ小型の波長390〜430nmの青紫色レーザーが容易に入手できるようになり、このレーザー波長に適した感光性平版印刷版を開発することにより明室化がはかられてきている(特許文献3及び4参照)。
【0006】
重合型の感光層を有する平版印刷版材料の感度などを改善するために、感光層に用いられる重合開始剤として例えば特開昭48−36281号、特開昭54−74887号、特開昭64−35548号に記載のトリクロロメチル基を有するs−トリアジン化合物、例えば特開昭59−219307号に記載の鉄アレーン錯体化合物と過酸化物、例えば特開昭62−150242号、特開昭62−143044号、特開昭64−35548号に記載のモノアルキルトリアリールボレート化合物、例えば特開昭63−41483号、特開平2−291号に記載のチタノセン化合物を使用することが提案されている。
【0007】
また、活性光線の照射により酸を発生し得る化合物、酸で重合し得る結合を少なくとも1つ有する化合物を含有する感光層を有する画像形成材料(特許文献5参照)が知られている。
【0008】
一方、CTPにおいては近年、平版印刷版材料から印刷版を作製する製版工程の自動化が進んでいる。自動化された製版工程では、平版印刷版材料の移動を、平版印刷版材料を吸盤で保持して移動することが広く行われている。しかしながら、この吸盤で平版印刷版材料を保持して移動する場合、吸盤が接触した部分が、印刷時に画像の欠損を生ずる場合があるといった問題があった。
【0009】
また、自動化された製版工程においては、平版印刷版材料は、カセットに装填されて製版工程に供給されることが多く、この場合、一つのカセット内の平版印刷版材料は使い切るまで、長期間製版工程の環境下に置かれてるため、現像により後画像部の損傷が生ずる場合があり、保存性が充分でないといった問題があった。
【0010】
上記の重合型平版印刷版材料を用いても、これらの画像の欠損防止性、保存性といった問題を解決するには、充分ではなかった。
【特許文献1】特開平1−105238号公報
【特許文献2】特開平2−127404号公報
【特許文献3】特開2000−98605号公報
【特許文献4】特開2001−264978号公報
【特許文献5】特開2002−207293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、保存性に優れる感光性平版印刷版材料、この感光性平版印刷版材料を与える感光性組成物、及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、特に発光波長が350nmから450nmの範囲にあるレーザー光での露光に適し、吸盤跡の画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、現像許容度の保存性に優れる感光性平版印刷版材料、この感光性平版印刷版材料を与える感光性組成物、及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、下記構成により達成される。
【0014】
(1)活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤、該酸により重合可能な基を有する化合物、アルカリ可溶性高分子結合剤及びシロキサングリコール共重合体を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0015】
(2)前記シロキサングリコール共重合体が、下記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物であることを特徴とする前記(1)項に記載の感光性組成物。
【0016】
【化1】

【0017】
[一般式(1)〜(4)中、Rは脂肪族性不飽和基を含まない、炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、Meはメチル基を表す。Gは−D(OR1mAを表し、Dは炭素数1〜30のアルキレン基を、R1は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、mは1以上の整数を表し、Aは封鎖基を表す。aは0または1を表し、nは12以上の値を表し、bは0〜50の値を表し、cは1〜50の値を表す。]
(3)前記感光性組成物が、350〜440nmの波長範囲に吸収極大を有する色素を含有することを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の感光性組成物。
【0018】
(4)前記感光性組成物が、前記活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤として鉄アレーン錯体化合物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【0019】
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感光性組成物からなる感光層を支持体上に有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0020】
(6)前記支持体が、塩酸を含む電解液中で交流粗面化処理されたアルミニウム支持体であることを特徴とする前記(5)項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0021】
(7)前記(5)または(6)項に記載の感光性平版印刷版材料に、発光波長が350nm〜450nmの範囲にあるレーザー光を光源として、画像露光を行い、アルカリ性現像液で現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記構成により、画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、保存性に優れる感光性平版印刷版材料、この感光性平版印刷版材料を与える感光性組成物、及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法が提供できる。
【0023】
また、本発明の上記構成により、特に発光波長が350nmから450nmの範囲にあるレーザー光での露光に適し、画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、保存後も画像の損傷なく現像ができ保存性に優れる感光性平版印刷版材料、この感光性平版印刷版材料を与える感光性組成物、及びこの感光性平版印刷版材料を用いた平版印刷版材料の画像形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ネガ型の感光性組成物であり、活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤、該酸により重合可能な基を有する化合物、アルカリ可溶性高分子結合剤及びシロキサングリコール共重合体を含有することを特徴とする。
【0025】
本発明では、特に酸により重合可能な基を有する化合物を含有するネガ型の感光層に、シロキサングリコール共重合体を含有させることにより、吸盤跡の画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性に優れ、保存性に優れるネガ型の感光性平版印刷版材料が得られる。
【0026】
(酸で重合可能な基を有する化合物)
本発明に係る酸で重合可能な基を有する化合物とは、酸と反応してカチオンを生じ、重合が進む化合物をいい、エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル結合を有する化合物、またはオキセタン環を有する化合物が好まく用いられる。
【0027】
エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル結合を有する化合物、またはオキセタン環をを有する化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されている化合物が挙げられる。
【0028】
エポキシ基を有するエポキシド化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド脂肪族エポキシドが挙げられる。
【0029】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0031】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
これらのエポキシドのうち、感度の面から芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0033】
ビニルエーテル結合を有するビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0034】
これらのビニルエーテル化合物のうち、ハイライト部の再現性の面から、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、特開2001−220526号、特開2001−310937号に紹介されているような公知のオキセタン化合物を使用できる。
【0036】
本発明で用いることができるオキセタン環を有する化合物は、ハイライト再現性の面からオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0037】
1個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば下記一般式(1a)で示される化合物が挙げられる。
【0038】
【化2】

【0039】
一般式(1a)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。R2は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基或いは3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基或いはフェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基或いはブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基或いはブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、又はエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基或いはペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0040】
2個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば下記一般式(2a)で示される化合物が挙げられる。
【0041】
【化3】

【0042】
一般式(2a)において、R1は、前記一般式(1a)におけるものと同様の基である。R3は、例えば、エチレン基、プロピレン基或いはブチレン基等の線状或いは分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基或いはポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基或いはブテニレン基等の線状或いは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、又はカルバモイル基を含むアルキレン基等である。又、R3は、下記一般式(3a)、(4a)及び(5a)で示される基から選択される多価基でもある。
【0043】
【化4】

【0044】
一般式(3a)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0045】
【化5】

【0046】
一般式(4a)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32又はC(CH32である。
【0047】
【化6】

【0048】
一般式(5a)において、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。nは、0〜2000の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。R7は、下記一般式(6a)で示される基から選択される基でもある。
【0049】
【化7】

【0050】
一般式(6a)において、R8は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。mは、0〜100の整数である。
【0051】
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(7a)及び(8a)で示される化合物等が挙げられる。
【0052】
【化8】

【0053】
式(7a)で示される化合物は、一般式(2a)において、R1がエチル基、R3がカルボニル基である化合物である。
【0054】
【化9】

【0055】
式(8a)で示される化合物は、一般式(2a)において、R1がエチル基、R3が一般式(5a)でR6及びR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0056】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(9a)で示される化合物がある。一般式(9a)において、R1は、前記一般式(1a)におけるものと同様の基である。
【0057】
【化10】

【0058】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(10a)で示される化合物等が挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
一般式(10a)において、R1は、前記一般式(1a)におけるものと同様の基である。R9は、例えば下記式(11a)〜(13a)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記式(14a)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記式(15a)で示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0061】
【化12】

【0062】
式(11a)において、R10はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である。
【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
式(14a)において、lは1〜10の整数である。
【0066】
【化15】

【0067】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(16a)で示される化合物が挙げられる。
【0068】
【化16】

【0069】
さらに、上記した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(17a)で示される化合物がある。
【0070】
【化17】

【0071】
式(17a)において、R8は式(6a)におけるものと同様の基である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0072】
本発明で使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物がある。
【0073】
【化18】

【0074】
上記オキセタン環を有する化合物の製造方法は特に限定されず、従来知られた方法に従えばよく、例えばパティソン(D.B.Pattison,J.Am.Chem.Soc.,3455,79(1957))が開示している、ジオールからのオキセタン環合成法等がある。
【0075】
又、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する、1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの例として、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0076】
【化19】

【0077】
ここで、pは20〜200である。
【0078】
【化20】

【0079】
ここで、qは15〜100である。
【0080】
【化21】

【0081】
ここで、sは20〜200である。
【0082】
本発明においては光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0083】
(酸発生剤)
本発明に係る酸発生剤は、画像を形成するための露光に用いられる活性光線により酸を発生し得る化合物である。
【0084】
酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
【0085】
本発明に好適な酸発生剤の例を以下に挙げる。
【0086】
第1にジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物をもつものが酸発生能力が高く好ましい。オニウム化合物の具体的な例を以下に示す。
【0087】
【化22】

【0088】
第2にスルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。具体的な化合物を以下に例示する。
【0089】
【化23】

【0090】
第3にハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。本発明では、下記一般式(I)で表されるハロゲン化合物が好ましく用いられる。この中でも、更に下記一般式(II)で表されるハロゲン化合物が特に好ましく用いられる。
【0091】
一般式(I) R1−CY2−(C=O)−R2
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはシアノ基を表す。R2は一価の置換基を表す。R1とR2が結合して環を形成しても構わない。Yはハロゲン原子を表す。)
一般式(II) CY3−(C=O)−X−R3
(式中、R3は一価の置換基を表す。Xは−O−または−NR4−を表す。R4は水素原子またはアルキル基を表す。R3とR4が結合して環を形成しても構わない。Yはハロゲン原子を表す。)
一般式(II)で表される構造の具体的として、BR1からBR67の化合物が挙げられる。なお、これらの化合物はハロゲン原子を臭素から塩素に置き換えた化合物も本発明においては好適に用いることができる。
【0092】
【化24】

【0093】
【化25】

【0094】
【化26】

【0095】
【化27】

【0096】
【化28】

【0097】
【化29】

【0098】
【化30】

【0099】
【化31】

【0100】
以下にその他の具体的な化合物を例示する。
【0101】
【化32】

【0102】
第4に鉄アレーン錯体化合物を挙げることができる。本発明ではこの鉄アレーン錯体化合物が特に好ましく用いられる。本発明に用いられる鉄アレーン錯体化合物は、下記一般式(a)で表される化合物が好ましい。
【0103】
一般式(a) [A−Fe−B]+X-
式中、Aはシクロペンタジエニル基、アルキル置換シクロペンタジエニル基を表す。式中、Bはアレーンを表す。式中、X-はアニオンを表す。アレーンは芳香族環を有する化合物を表し、具体例としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ビフェニル、フルオレン等が挙げられる。X-としてはPF6-、BF4-、SbF6-、AlF4-、CF3SO3-等が挙げられる。
【0104】
鉄アレーン錯体化合物は酸発生剤に対して0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0105】
鉄アレーン錯体化合物としては、特開昭59−219307号公報に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−フルオレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ナフタレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−キシレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0106】
(シロキサングリコール共重合体)
本発明に係るシロキサングリコール共重合体とは、ポリシロキサン基及びポリオキシアルキレン基を有する共重合体である。
【0107】
シロキサングリコール共重合体の例としては、上市されているものとして例えば、ムンチング・ケミー社のエダプランLA411,413、ビック・ケミー社のBYK−302、307、320、323、330、331、333、370、375、EFKA社のEFKA−3030、3031、3033、3034、3035、3232、3236、3239、3288、3299、3522、3580、信越化学工業(株)のKF−351、352、353、354L、355A、615A、618、9456004、6011、6015などが挙げられる。
【0108】
好ましいシロキサングリコール共重合体としては、ポリシロキサン基として、ジメチルシロキサン結合を12以上有し、ポリオキシアルキレン基として、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基を有する共重合体が挙げられる。
【0109】
本発明においては、特にシロキサングリコール共重合体として、上記の一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される共重合体が好ましく用いられる。
【0110】
上記一般式(1)〜(4)中、Rは脂肪族性不飽和基を含まない、炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、Meはメチル基を表す。Gはポリオキシアルキレン基部分を意味しており、−D(OR1mAを表し、Dは炭素数1〜30のアルキレン基を、R1は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、mは1以上の整数を表し、Aは封鎖基を表す。aは0または1を表し、nは1以上の値を表し、bは0〜50の値を表し、cは1〜50の値を表す。
【0111】
上記Rは、脂肪族性不飽和基を含まない、炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、キシリル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、β−フェニルプロピル基またはβ−フェニルエチル基が挙げられる。
【0112】
Dは炭素数1〜30のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、デシレン基、オクタデシレン基、ミリシレン基が挙げられる。Dの炭素数としては、1〜16が好ましい。
【0113】
1は炭素数2〜10のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく用いられる。
【0114】
OR1は、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等だけであってもよいし、これらの単位の組み合わせであってもよい。
【0115】
mは1以上であり1000若しくはそれ以上であってもよいが、10〜100であることが好ましい。
【0116】
Aは、封鎖基であり、Gの末端基としては例えば、ヒドロキシ基(Aが水素原子)、エーテル基(Aがメチル基、ブチル基、フェニル基などの一価の炭化水素基)、カルボキシル基、カルボキシル基の塩もしくはエステルが挙げられる。
【0117】
nは1以上であり、1500もしくはそれ以上であってもよく、ジメチルシロキサン単位(OSiMe2)の数としては、G含有単位に対して、10:1以上〜50:1以下であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲においては50:1以上であってもよい。
【0118】
シロキサングリコール共重合体の含有量としては、感光性組成物に対して、0.01質量%〜10質量%が好ましく、さらに0.03質量%〜5質量%が好ましく、特に0.05質量%〜2質量%が好ましい。
【0119】
また酸分解化合物に対する含有量としては、0.001質量%〜10質量%が好ましく、さらに0.003質量%〜5質量%が好ましく、特に0.005質量%〜1質量%が好ましい。
【0120】
(色素)
本発明の感光性組成物は、画像形成の際の感度の面から、350〜440nmの間に吸収極大を有する色素を含むことが好ましい。
【0121】
350〜440nmの間に吸収極大を有する色素としては、下記一般式(6b)、(7b)、(8b)または(9b)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0122】
【化33】

【0123】
【化34】

【0124】
【化35】

【0125】
【化36】

【0126】
一般式(6b)中、R1〜R6は水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0127】
この中で、特に好ましいのはR5にアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基を有するクマリンである。この場合、アミノ基に置換したアルキル基がR4、R6の置換基と環を形成しているものも好ましく用いることができる。
【0128】
更にR1、R2のいずれか、あるいは両方がアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基等)であると更に好ましい。
【0129】
好ましい具体例として下記の化合物が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0130】
【化37】

【0131】
【化38】

【0132】
【化39】

【0133】
【化40】

【0134】
【化41】

【0135】
上記具体例の他に一般式(6b)で表される化合物に類似した化合物として、特開平8−129258号公報のB−1からB−22のクマリン誘導体、特開2003−21901号公報のD−1からD−32のクマリン誘導体、特開2002−363206号公報の1から21のクマリン誘導体、特開2002−363207号公報の1から40のクマリン誘導体、特開2002−363208号公報の1から34のクマリン誘導体、特開2002−363209号公報の1から56のクマリン誘導体等も好ましく使用可能である。
【0136】
前記一般式(6)で表される、350〜440nmの間に吸収極大を有する色素の感光層中への添加量は、記録光源波長における版面の反射濃度が、0.1から1.2の範囲となる量であることが好ましい。この範囲となる該色素の感光層中における質量比率は、各色素の分子吸光係数と感光層中における結晶性の程度により大幅に異なるが、一般的には0.5質量%から、10質量%の範囲であることが多い。
【0137】
前記一般式(7b)で表される、350〜440nmの間に吸収極大を有する色素において、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、少なくともR1とR2、もしくはR2とR3が連結し環を形成する。更には一般式(10b)の構造で表される化合物がより好ましい。
【0138】
【化42】

【0139】
一般式(10b)中、R4は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基を表す。R5、R6は連結し環を形成しうる置換基を表す。X1、X2はそれぞれ独立に−CR78−、−O−、−S−、−NR9−を表す。R7、R8、R9はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基を表す。
【0140】
上記化合物の代表例としては下記の如きものがある。
【0141】
【化43】

【0142】
一般式(8b)中、AはS原子またはNR1を表し、R1は置換もしくは非置換のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基を表し、Yは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。X1、X2はそれぞれ独立に一価の非金属原子団を表し、X1、X2は互いに結合して色素の酸性核を形成してもよい。
【0143】
前記一般式(8b)で表される、350〜440nmの間に吸収極大を有する色素は、更に一般式(11b)、(12b)または(13b)で表される色素がより好ましい。
【0144】
【化44】

【0145】
一般式(11b)、(12b)、(13b)中、A及びYは一般式(8b)中と同義であり、X3、X4、Zはそれぞれ独立にO原子、S原子またはNR5を表し、R5は置換もしくは非置換のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基を表し、R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基を表し、R3は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基を表し、R4は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0146】
一般式(8b)、(11b)、(12b)、(13b)について更に詳しく説明する。
【0147】
AはS原子またはNR1を表し、R1は置換もしくは非置換のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基を表し、Yは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。次にR1の好ましい例について具体的に述べる。
【0148】
好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニルを挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0149】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0150】
これらの置換基におけるアルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、もしくは多環芳香族環が用いられ、好ましくはフラン、ピロール、ピリジン等の5員または6員環芳香族置換基が使用できる。
【0151】
またアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基の内、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0152】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては、前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0153】
置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られるR1として好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0154】
1として好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらの中ではフェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0155】
1として好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、並びに先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0156】
次に一般式(8b)におけるYについて説明する。Yは上述のA及び隣接炭素原子と共同して複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。この様な複素環としては5、6、7員の含窒素、あるいは含硫黄複素環が挙げられ、好ましくは5、6員の複素環がよい。
【0157】
含窒素複素環の例としては、例えば、L.G.Brooker et al.,J.Am.Chem.Soc.,73,5326−5358(1951)及び参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られるものをいずれも好適に用いることができる。
【0158】
具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4ーフェニルチアゾール、5−メチルチアゾール、5−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール、4,5−ジ(p−メトキシフェニルチアゾール)、4−(2−チエニル)チアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、7−クロロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、4−メトキシベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、6−ヨードベンゾチアゾール、4−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5,6−ジオキシメチレンベンゾチアゾール、5−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ジメチルアミノベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール等)、ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール、5−エトキシナフト[2,1]チアゾール、8−メトキシナフト[1,2]チアゾール、7−メトキシナフト[1,2]チアゾール、等)、チアナフテノ−7′,6′,4,5−チアゾール類(例えば、4′−メトキシチアナフテノ−7′,6′,4,5−チアゾール等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール、4,5−ジメチルオキサゾール、5−フェニルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(例えば、ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5−メチルベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、4−エトキシベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール等)、ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール、5−メトキシベンゾセレナゾール、5−ヒドロキシベンゾセレナゾール、テトラヒドロベンゾセレナゾール等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン、5−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、6−メトキシキノリン、6−エトキシキノリン、6−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジエチルベンズイミダゾール、1−エチル−3−フェニルベンズイミダゾール等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5,−トリメチルインドレニン、3,3,7,−トリメチルインドレニン等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等を挙げることができる。
【0159】
また含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号公報記載の色素類におけるジチオール部分構造を挙げることができる。具体例としては、ベンゾジチオール類(例えば、ベンゾジチオール、5−t−ブチルベンゾジチオール、5−メチルベンゾジチオール等)、ナフトジチオール類(例えば、ナフト[1,2]ジチオール、ナフト[2,1]ジチオール等)、ジチオール類(例えば、4,5−ジメチルジチオール類、4−フェニルジチオール類、4−メトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジメトキシカルボニルベンゾジチオール類、4,5−ジトリフルオロメチルジチオール、4,5−ジシアノジチオール、4−メトキシカルボニルメチルジチオール、4−カルボキシメチルジチオール等)等を挙げることができる。
【0160】
以上に述べた一般式(8b)、(11b)、(12b)、(13b)における、Yが上述のA及び隣接する炭素原子と共同して形成する含窒素あるいは硫黄複素環の例の内、下記部分構造式(1−A)で表される構造を有する色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れているため、特に好ましい。
【0161】
【化45】

【0162】
部分構造式(1−A)中、Aは一般式(8b)中と同義であり、X5、X6はそれぞれ独立に置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、X5、X6が互いに結合して5、6もしくは7員環を形成してもよい。X5、X6の具体例としては、先にR2の例として挙げた、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基の例が挙げられる。
【0163】
次に一般式(8b)におけるX1及びX2について具体的に説明する。
【0164】
1及びX2はそれぞれ独立して一価の非金属原子団、例えば、水素原子、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは非置換のアリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、これらのより具体的な例は先のR1に関して説明したものである。
【0165】
またX1とX2は互いに結合して、先述のL.G.Brooker et al.,J.Am.Chem.Soc.,73,5326−5358(1951)及び参考文献に記載されるメロシアニン色素類における酸性核を構成してもよい。
【0166】
酸性核の具体例としては、1,3−ジカルボニル核(例えば、1,3−インダンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチルシクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等)、ピラゾリノン核(例えば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾリル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等)、イソオキサゾリノン核(例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等)、オキシインドール核(例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等)、2,4,6−トリオキソヘキサヒドロピリミジン核(例えば、バルビツル酸または2−チオバルビツル酸及びそのN置換誘導体、例えば、1,3−ジエチルバルビツル酸、1,3−ジエチル−2−チオバルビツル酸、1,3−ジブチルバルビツル酸、1,3−ジブチル−2−チオバルビツル酸、1,3−ジフェニルバルビツル酸、1,3−ジフェニル−2−チオバルビツル酸、1,3−ジメトキシカルボニルメチルバルビツル酸、1,3−ジメトキシカルボニルメチル−2−チオバルビツル酸等)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、ローダニン及びそのN置換誘導体、例えば、3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−フェニルローダニン、3−アリルローダニン、3−ベンジルローダニン、3−カルボキシメチルローダニン、3−カルボキシエチルローダニン、3−メトキシカルボニルメチルローダニン、3−ヒドロキシエチルローダニン、3−モルフォリノエチルローダニン等)、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核(即ち、2−チオ−2,4−(3H,4H)−オキサゾールジオン核、例えば、2−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等)、チアナフテノン核(例えば、3(2H)−チアナフテノン、3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等)、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核(例えば、3−エチル−2−チオ2,5−チアゾリジンジオン等)、2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等)、チアゾリジノン核(例えば、4−チアゾリジノン、3−エチル−4−チアゾリジノン、2−エチルメルカプト−4−チゾリジノン、2−メチルフェニルアミノ−4−チゾリジノン等)、2−イミノ−2−オキサゾリン−4−オン核(即ち、擬ヒダントイン核)、2,4−イミダゾリジンジオン核(即ち、ヒダントイン核、例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2,4−イミダゾリジンジオン等)、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核(即ち、チオヒダントイン核、例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等)、イミダゾリン−5−オン核(例えば、2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等)、フラン−5−オン核、4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン核(例えば、N−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、N−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン、N−ブチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン等)、4−ヒドロキシ−2H−ピラン−2−オン核(例えば、4−ヒドロキシクマリン等)、チオインドキシル核(例えば、5−メチルチオインドキシル等)等が挙げられ、これらの酸性核は更に置換基を有してもよい。
【0167】
これらのX1、X2からなる部分構造の内、下記部分構造式(1−B)、(1−C)、(1−D)を有する色素が特に好ましい。
【0168】
【化46】

【0169】
部分構造式(1−B)、(1−C)、(1−D)中、X3、X4、Zはそれぞれ独立にO原子、S原子またはNR5を表し、R5は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基を表し、R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、R3は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、R4は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。それぞれの置換基の具体例としては、既に述べたものを任意に用いることができる。この中でも構造式(1−C)を有する色素が最も好ましい。
【0170】
一般式(8b)、(11b)、(12b)、(13b)で表される色素の例を化学構造式E1〜E60で示す。
【0171】
【化47】

【0172】
【化48】

【0173】
【化49】

【0174】
【化50】

【0175】
【化51】

【0176】
【化52】

【0177】
一般式(8b)、(11b)、(12b)、(13b)で表される色素は、F.M.ヘイマーら著、「ザ・シアニン・ダイズ・アンド・リレィテッド・コンパウンズ」(F.M.Hamer et al.,”The Cyanine Dyes and Related Compounds”)511〜611頁(1964年)に記載された方法、KAI ARNE JENSEN 及びLARS HENRIKSENらがACTACHEMICA SCANDINAVICA、22巻、1107〜1128頁(1968年)に記載した方法などを参照して合成することができる。
【0178】
前記一般式(9b)で表される350〜440nmの間に吸収極大を有する色素において、R1はアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはヘテロ環基を表す。R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはヘテロ環基を表す。R3〜R5はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基を表す。R1〜R5が表す上記置換基は更に置換基を有してもよい。具体的化合物を以下に示す。
【0179】
【化53】

【0180】
本発明に係る350〜440nmの間に吸収極大を有する色素に関しては、更に感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。
【0181】
更にアルカリ水系現像液への処理適性を高めるために、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、且つ現像液中では加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
【0182】
その他、例えば、感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。また分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで結晶析出が著しく抑制できる。またホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。その他、目的に応じ増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
【0183】
これらの色素の使用法に関しても、感材の性能設計により任意に設定できる。例えば、色素を2種以上併用することで感光層への相溶性を高めることができる。色素の選択は感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので経済的であり、且つ感光層の膜物性の点からも有利である。感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。またハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば、5μm以上の厚い膜を硬化せしめる目的に対しては、この様な低い吸光度の方がかえって硬化度を挙げられる場合もある。
【0184】
また吸光度が3以上の様な高い領域では、感光層表面で大部分の光が吸収され、より内部での硬化が阻害され、例えば、印刷版として使用した場合には膜強度、基板密着性の不十分なものとなる。比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版としての使用に際しては、色素の添加量は感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。平版印刷版として利用する場合には、これは通常感光層成分100質量部に対し0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0185】
(アルカリ可溶性高分子結合剤)
本発明に係るアルカリ可溶性高分子結合剤は、感光性組成物中の他の成分を担持し得るものであり、アルカリ可溶性である。
【0186】
アルカリ可溶性高分子結合剤とは、酸価を有する高分子化合物であり、具体的には後述する化合物を好適に使用することが出来る。
【0187】
アルカリ可溶性高分子化合物の中でも、酸価が30〜200の化合物が好ましく、このうち特に質量平均分子量が1,000〜100,000であるものが、さらに好ましい。
【0188】
本発明において酸価とは、化合物1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価は次のようにして測定することができる。試料をメチルセロソルブで50倍に希釈し、0.1モル/Lの水酸化カリウムで滴定する。pHメータを用いて求めたpH曲線の変曲点を中和点とする。この中和点に至るまでに要する水酸化カリウムの量から酸価を算出する。
【0189】
アルカリ可溶性高分子結合剤としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。
【0190】
好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合剤の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0191】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0192】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0193】
さらに、本発明の高分子結合剤は、他の共重合モノマーとして、下記1)〜14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0194】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0195】
上記ビニル系重合体は、通常の溶液重合により製造することができる。また、塊状重合または懸濁重合等によっても製造することができる。重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビス系のラジカル発生剤が挙げられ、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。また、これらの重合開始剤の使用量は、共重合体を形成するのに使用されるモノマー全体100質量部に対し、通常0.05〜10.0質量部(好ましくは0.1〜5質量部)である。また、溶液重合を行う際に使用される溶媒としては、ケトン系、エステル系、芳香族系の有機溶媒が挙げられ、なかでもトルエン、酢酸エチル、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン等の一般にアクリル系ポリマーの良溶媒が挙げられ、なかでも沸点60〜120℃の溶媒が好ましい。溶液重合の場合、上記溶媒を使用し、反応温度として通常40〜120℃(好ましくは60〜110℃)、反応時間として通常3〜10時間(好ましくは5〜8時間)の条件で行うことができる。反応終了後、溶媒を除去して共重合体を得る。また、溶媒を除去せずに引き続き後記の二重結合の導入反応を行うこともできる。
【0196】
得られる共重合体の分子量は、使用される溶媒および反応温度を調整することによって調節することができる。目的とする分子量の共重合体を得るために使用される溶媒および反応温度等は、使用されるモノマーによって適宜決定することができる。また、特定の溶媒を上記溶媒に混合することによっても得られる共重合体の分子量を調節することができる。このような溶媒としては、例えば、メルカプタン系(例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等)、四塩化炭素系(例えば、四塩化炭素、塩化ブチル、塩化プロピレン等)等が挙げられる。これらの溶媒を上記反応に使用する溶媒に混合する割合は、反応に使用するモノマー、溶媒、反応条件等によって適宜決定することができる。
【0197】
さらに、本発明のアルカリ可溶性高分子結合剤は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合剤として好ましい。分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合剤として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0198】
ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記ビニル系共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのまま脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。ここで、触媒としてはアミン系または塩化アンモニウム系の物質が好ましく、具体的には、アミン系の物質としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン等が挙げられ、塩化アンモニウム系の物質としては、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらを触媒として使用する場合、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加すればよい。また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−t−ブチルハイドロキノン等が挙げられ、その使用量は、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜5.0質量%である。なお、なお、反応の進行状況は反応系の酸価を測定し、所望の酸価になった時点で反応を停止させればよい。
【0199】
ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として通常2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記高分子共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのままイソシアネート基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。ここで、触媒としてはスズ系またはアミン系の物質が好ましく、具体的には、ジブチルスズラウレート、トリエチルアミン等が挙げられる。触媒は使用する二重結合を有する化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加することが好ましい。また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルハイドロキノン2−メチルハイドロキノン、2−t−ブチルハイドロキノンハ等が挙げられ、その使用量は、使用するイソシアネート基含有不飽和化合物に対して、通常0.01〜5.0質量%である。なお、反応の進行状況は反応系のイソシアナト基の有無を赤外吸収スペクトル(IR)で判定し、吸収が無くなった時点で反応を停止させればよい。
【0200】
上記した本発明に用いられる側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0201】
感光層として塗布し形成する感光性組成物中における高分子結合剤の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0202】
本発明の平版印刷版材料の感光層には必要に応じて、更に上記以外の色素、顔料、増感剤等を含有させることができる。
【0203】
(支持体)
本発明の感光性組成物が支持体上に塗布されて感光性平版印刷版材料を構成するが、本発明において支持体としては、親水性表面を有する支持体が使用される。
【0204】
親水性表面を有する支持体としては、基材表面を親水化処理し、親水性の表面層を有する基材、親水性物質を含む親水性層を設けた基材を用いることができる。
【0205】
本発明に係る支持体としては、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。
【0206】
支持体の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0207】
本発明に係る支持体としては、基材表面を親水化処理した金属板が好ましく用いられる。
【0208】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、本発明においては、比重と剛性との関係から、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下両者含めてアルミニウム板と称する)が好ましく、加えて、公知の粗面化処理、陽極酸化処理、表面親水化処理のいずれかの処理がなされたもの(所謂アルミ砂目板)がより好ましい。
【0209】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0210】
支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0211】
粗面化の方法としては、電解により粗面化を行うがその前に例えば、機械的方法による粗面化を行うことができる。
【0212】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0213】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0214】
粗面化の方法としては、電解による粗面化を行う。酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法であり、酸性電解液は、0.4質量%以上2.8質量%以下の濃度の塩酸系又は硝酸溶液中で、実効値が30A/dm2以上100A/dm2以下の電流密度で10秒以上120秒以下、電解粗面化を行う。塩酸あるいは硝酸の濃度は、より好ましくは1質量%以上2.3質量%以下である。電流密度は、より好ましくは30A/dm2以上80A/dm2以下、更に好ましくは40A/dm2以上75A/dm2以下である。
【0215】
本発明においては、支持体として、塩酸を含む電解液中で交流電解粗面化処理したアルミ支持体を用いた場合、本発明の効果が特に大きく、感度、画像抜け防止性、保存性の面からこのアルミニウム支持体が好ましく用いられる。
【0216】
この電解粗面化法を行う温度は、特に制限されないが、5℃以上80℃以下の範囲を用いることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲から選ぶのが更に好ましい。印加電圧も特に制限されないが、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことが好ましく、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが更に好ましい。電気量も特に制限されないが、100〜5000C/dm2の範囲を用いることが好ましく、100〜2000C/dm2の範囲から選ぶのが更に好ましい。
【0217】
電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、シュウ酸等を加えることができる。
【0218】
上記の電解粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0219】
電解粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0220】
陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0221】
本発明においては、支持体が陽極酸化処理後に温度が20℃以上50℃以下の珪酸ナトリウム溶液で処理されていることが好ましい。該温度は、20℃以上50℃以下が好ましく、20℃以上45℃以下がより好ましい。20℃未満では汚し回復が悪くなることがある。また、50℃より高いと耐刷性が悪くなることがある。珪酸ナトリウムの濃度は特に規定はないが、0.01%以上35%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましい。
【0222】
本発明においては、支持体が陽極酸化処理後に温度が20℃以上70℃以下のポリビニルホスホン酸溶液で処理されていることが好ましい。該温度は、20℃以上70℃以下が好ましく、30℃以上65℃以下がより好ましい。20℃未満では汚し回復が悪くなることがある。また、70℃より高いと耐刷性が悪くなるなることがある。ポリビニルホスホン酸溶液の濃度は特に規定はないが、0.01%以上35%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましい。
【0223】
支持体として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等のフィルムを挙げることができる。
【0224】
本発明では、これらのプラスチックフィルムのうち、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルムが基材として好ましく用いらる。
【0225】
(塗布)
本発明の感光性平版印刷版材料は、本発明の感光性組成物の各成分を含む感光層用塗布液を、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥することにより、作製することが出来る。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることが出来る。
【0226】
感光層の乾燥温度は、低いと十分な耐刷性を得ることが出来ず、又高過ぎるとマランゴニーを生じてしまうばかりか、非画線部のカブリを生じてしまう。好ましい乾燥温度範囲としては、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0227】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法におては、バイオレット・レーザー光線即ち、発光波長が350〜450nmの範囲にあるレーザー光を光源として、画像露光が行われる。
【0228】
350〜450nmに発光波長を有する入手可能なレーザー光源としては、例えば、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組合わせ(380〜440nm)、AlGaInN(350〜440nm)、その他にパルスレーザーとしてXeF(351nm、パルス10〜250mJ)等が挙げられるが、半導体レーザーが好ましく用いられる。
【0229】
レーザー照射における走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査ではドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部または全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部または全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査ではポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0230】
本発明においては、平版印刷版材料に画像を露光した後、現像処理する前または現像処理しながら平版印刷版材料を加熱処理することが好ましい。このように加熱処理することで感光層の重合が促進され、本発明に係る発明の効果を向上させることができる。
【0231】
本発明に係るプレヒートは、例えば、感光性平版印刷版材料を現像処理する自動現像装置において、現像処理時に搬走される感光性平版印刷版を現像前に所定の温度範囲に加熱する温風ヒーターやプレヒートローラによる加熱する方法を挙げることができる。例えば、プレヒートローラは内部に加熱手段を有する少なくとも1つのローラを含む1対のローラからなり、加熱手段を有するローラとしては、熱伝導率の高い金属(例えば、アルミニウム、鉄等)からなる中空パイプの内部に発熱体としてニクロム線等を埋設し、該金属パイプの外側面をポリエチレン、ポリスチレン、テフロン(登録商標)等のプラスチックシートで被覆したものを使用することができる。またこうしたプレヒートローラの詳細については、特開昭64−80962号公報を参照することができる。本発明における当該プレヒートは70〜180℃、3〜120秒程度行うことが好ましい。
【0232】
画像露光した感光層は露光部が現像液に溶解可能となる。これをアルカリ性現像液で現像処理することにより、露光部が除去され画像形成が可能となる。この様な現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0233】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0234】
これらのアルカリ剤は単独または2種以上組合せて用いられる。また該現像液には必要に応じてアニオン性界面活性剤、両性活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0235】
本発明に係る水溶液は基本的にSiO2換算でのケイ酸濃度が1.0質量%で、pH8.5〜12.9の範囲である水溶液が好ましく、該水溶液は他の添加剤を含有していてもよい。また当該水溶液に、更に界面活性剤を0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲で含有する水溶液がより好ましい。
【実施例】
【0236】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0237】
実施例1
〔平版印刷版材料の作製〕
《支持体の作製》
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いでこのアルミニウム板を塩酸濃度11g/L、温度25℃、周波数50Hz、50A/dm2の交流電流において、20秒間電解粗面化処理を行った。電解粗面化を行った後、水洗し、50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行い、水洗し、50℃に保たれた30%硫酸中で30秒間中和処理を行い、水洗した。次いで30%硫酸溶液中で25℃、電流密度30A/dm2、電圧25Vの条件下に30秒間陽極酸化処理を行い、水洗した。更に0.44%のポリビニルホスホン酸水溶液に75℃、30秒間ディップ処理を行い、次いで蒸留水で水洗し、25℃の冷風で乾燥し、平版印刷版用支持体を得た。このとき表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.50μmであった。
【0238】
《感光層用塗布液》
前記支持体に下記組成の感光層用塗布液を乾燥後の膜厚が2.0g/m2になるように塗布し、95℃で1分間乾燥し、平版印刷版材料1〜11を得た。
【0239】
《感光層用塗布液》
高分子結合剤A 30質量部
酸重合性化合物
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 40質量部
オキセタン化合物(例示化合物(18a)) 20質量部
酸発生剤(表1に記載) 6質量部
色素1 3質量部
クリスタルバイオレット 0.5質量部
シロキサングリコール共重合体(表1に記載) 表1に記載の量(質量部)
PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 800質量部
MEK(メチルエチルケトン) 100質量部
高分子結合剤A:メタクリル酸(15質量%)/メタクリル酸グリシジル(30質量%)/メタクリル酸t−ブチル(30質量%)/スチレン(25質量%)共重合体(重量平均分子量50,000)
【0240】
【化54】

【0241】
[露光、現像]
得られた平版印刷版材料は23℃相対湿度55%RHの環境下、以下に示す方法で画像を形成した。
【0242】
出力200mWの波長405nmバイオレットレーザを搭載したレーザ露光機を用いて、感光層に画像様に露光を行った。露光した画像はベタ露光部と1〜99%の網点画像とを含むものである。
【0243】
現像は以下の組成の現像液にて30℃20秒処理した。
【0244】
A珪酸カリ 116質量部
KOH水溶液(45質量%) 27質量部
水 715質量部
その際、非画像部に相当する未露光部は、現像処理によって溶解され、明瞭な画像が得られた。
【0245】
《平版印刷版の評価》
(吸盤プレッシャーによる感光層の損傷)
上記画像形成に用いたレーザー露光装置は、版装填カセットからレーザー露光されるインナードラムまでの版の搬送、位置決めを吸盤を有する稼動アームにより行う。
【0246】
その際、版の画像形成面側を吸盤で吸付けるので、吸盤が吸い付く部分に50%の網点画像を露光し、吸盤プレッシャーによる感光層の損傷が検出されやすい状況にして画像形成を行い、印刷物を評価し、これを画像部の画像抜け(画像の欠損)防止性の指標とした。なお、評価は目視にて以下の基準で5段階評価した(なお上記評価は23℃相対湿度55%RHの環境下で行った)。
5:吸盤跡は全く認められない
4:微かに吸盤跡が認められるが、印刷物として使用可能
3:やや吸盤跡が認められるが、印刷物として使用可能
2:少し吸盤跡が認められ、印刷物として使用不可
1:吸盤跡が認められ、印刷物として使用不可
(オーバー現像での画線損傷)
得られた平版印刷版材料を、2つに分割し、一方は23℃55%RHの環境下、残りは40℃80%RHの環境下でそれぞれ3日間保存した平版印刷版材料を、上記のごとく露光、現像した。なおオーバー現像は30℃40秒で行った。得られた画線の4ポイント文字が再現されているかを目視にて3段階評価し、これを保存性の指標とした。
3:損傷なし
2:僅かに損傷は認められるが、印刷物として使用可能
1:損傷は激しく、印刷物として使用不可
結果を表1に示す。表1から本発明の感光性平版印刷版材料は、吸盤プレッシャーによる感光層の損傷がなく、画像抜け防止性に優れ、かつ高温高湿度保存後におけるオーバー現像での画線損傷がなく、保存性に優れることが分かる。
【0247】
【表1】

【0248】
【化55】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤、該酸により重合可能な基を有する化合物、アルカリ可溶性高分子結合剤及びシロキサングリコール共重合体を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
前記シロキサングリコール共重合体が、下記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【化1】

[一般式(1)〜(4)中、Rは脂肪族性不飽和基を含まない、炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、Meはメチル基を表す。Gは−D(OR1mAを表し、Dは炭素数1〜30のアルキレン基を、R1は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、mは1以上の整数を表し、Aは封鎖基を表す。aは0または1を表し、nは12以上の値を表し、bは0〜50の値を表し、cは1〜50の値を表す。]
【請求項3】
前記感光性組成物が、350〜440nmの波長範囲に吸収極大を有する色素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記感光性組成物が、前記活性光線の照射により酸を発生し得る酸発生剤として鉄アレーン錯体化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物からなる感光層を支持体上に有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【請求項6】
前記支持体が、塩酸を含む電解液中で交流粗面化処理されたアルミニウム支持体であることを特徴とする請求項5に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項7】
請求項5または6に記載の感光性平版印刷版材料に、発光波長が350nm〜450nmの範囲にあるレーザー光を光源として、画像露光を行い、アルカリ性現像液で現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版材料の画像形成方法。

【公開番号】特開2007−65129(P2007−65129A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249025(P2005−249025)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】