説明

感光性重合体組成物およびパターン形成方法

【課題】イオン結合により感光基をポリイミド前駆体に導入するものは、その製造が容易で膜特性にも優れるといった特性を有するが、解像度(溶解度差)が十分でないためにIC、LSI等の半導体デバイスの製造においては十分に実用化されておらず、その解像度の向上が求められている。
【解決手段】(A)下記一般式[1]で示されるポリイミド前駆体
【化1】


(但し、Rは四価の芳香族基、または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された四価の有機基であり、Rは二価の芳香族基または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された二価の有機基であり、nは1以上の整数である。)、
(B)前記(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体にイオン結合により導入される光架橋する感光化合物、
(C)光反応開始剤
(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤、および、
(E)溶剤
を含有してなることを特徴とする感光性重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として半導体デバイス等の製造において電気、電子絶縁材料として用いられる感光性重合体組成物およびそれを用いたパターン形成方法に係り、特に、ICやLSI等の半導体素子上に成膜され、微細パターンの加工が必要とされる絶縁保護膜の形成に有用な感光性重合体組成物およびそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリイミド樹脂は、その高い耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、低誘電率等の理由から半導体を含む電気・電子分野への展開がなされており、半導体デバイスの分野ではIC、LSI、超LSI等の半導体素子の層間絶縁膜や表面保護膜の形成材料として用いられている。
【0003】
従来、ポリイミド樹脂を用いてパターン形成する場合、ポリイミド前駆体をウェハ上に塗布、乾燥した後、フォトレジストを用いてパターン蝕刻加工を行わなければならず、また有害とされるヒドラジン溶液をポリイミドエッチング液として使用しなければならなかった。
【0004】
この問題を解決するものとして、ポリイミド前駆体に感光基を導入することにより、それ自体にパターン形成能を持たせたものが開発され、感光性ポリイミドとして広く用いられるようになっている。このような感光性ポリイミドによれば、工程の合理化が図られるうえ、ヒドラジン溶液の使用も不要となる。
【0005】
このような感光性ポリイミドは、感光基をエステル結合でポリイミド前駆体に導入しているもの(例えば、特許文献1参照。)と、イオン結合でポリイミド前駆体に導入しているもの(例えば、特許文献2参照。)とに大別することができる。
【0006】
感光基をエステル結合により導入するものは、解像度(溶解度差)は高いものの高分子量化が困難で、膜特性が不十分となる課題がある。これに対して、感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものは、解像度は低いものの、ポリイミド前駆体への感光基の導入が簡便であるという利点がある。
【0007】
感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものとしては、例えば線状ポリマーであるポリイミドに三次元架橋構造を導入し、耐熱性、耐薬品性を向上させたものが知られているが(例えば、特許文献3参照。)、解像度については必ずしも十分なものとはなっていない。
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭54−109828号公報
【特許文献3】特開2004−240035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体デバイスは、素子の高集積化、チップサイズの小型化、パッケージの軽量化が顕著であり、それに伴い、ポリイミド樹脂においても基板や封止樹脂との密着性をはじめ、耐熱性、低吸湿性等の膜特性のさらなる向上が求められている。感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものは、ポリイミド前駆体への感光基の導入が簡便であり、膜特性に優れているものの、解像度が低いため半導体デバイス等への適用が十分に行われていない。
【0009】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、ポリイミド前駆体への感光基の導入が簡便であり、膜特性に優れるという利点を有する感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものにおいて、さらに解像度を向上させたものであって、微細なパターンの形成が可能で半導体デバイス等への適用が十分に可能な感光性重合体組成物およびそれを用いたパターン形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の感光性重合体組成物は、(A)下記一般式[1]で示されるポリイミド前駆体
【化1】

(但し、Rは四価の芳香族基、または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された四価の有機基であり、Rは二価の芳香族基または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された二価の有機基であり、nは1以上の整数である。)、(B)前記(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体にイオン結合により導入される光架橋する感光化合物、(C)光反応開始剤、(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤、および、(E)溶剤を含有してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の感光性重合体組成物における前記(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤は、2官能以上の(メタ)アクリレート類であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のパターン形成方法は、上述した感光性重合体組成物を基板上に塗布、乾燥して塗布膜を得る工程と、前記塗布膜の所望とする部分に活性光線を照射する工程と、前記塗布膜のうち活性光線が照射されなかった未露光部分を現像液により溶解、除去する工程と、前記塗布膜を熱処理する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリイミド前駆体への感光基の導入が簡便であり、膜特性に優れるという利点を有する感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものにおいて、さらに解像度を向上させることにより、微細なパターンの形成が可能で半導体デバイス等への適用が十分に可能な感光性重合体組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性重合体組成物は、
(A)下記一般式[1]で示されるポリイミド前駆体
【化2】

(但し、Rは四価の芳香族基、または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された四価の有機基であり、Rは二価の芳香族基または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された二価の有機基であり、nは1以上の整数である。)、
(B)前記(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体にイオン結合により導入される光架橋する感光化合物、
(C)光反応開始剤
(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤、および、
(E)溶剤
を含有してなるものである。
【0015】
本発明に用いられる(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体におけるR骨格となる酸成分としては、例えばピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸等と、その無水物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、または2種類以上混合して用いてもよい。
【0016】
また、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体におけるR骨格となるジアミン成分としては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,3’−ジメチル−シクロヘキシルアミン)、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらのジアミン成分は単独で用いられていてもよいし、2種類以上混合して用いられていてもよい。
【0017】
(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体は、上述したR骨格となる酸成分とR骨格となるジアミン成分とを重縮合させることにより得られるものである。R骨格となるジアミン成分は、R骨格となる酸成分に対して等モルで使用されていることが好ましいが、感光性重合体組成物の使用目的や最終粘度、分子量に合わせて、R骨格となる酸成分に対して0.5倍モル以上、1.5倍モル以下の範囲で使用することができる。
【0018】
(B)成分の光架橋する感光化合物は、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体にイオン結合により導入されるものであり、例えば不飽和二重結合を有するアミン化合物からなるものが挙げられる。
【0019】
(B)成分の光架橋する感光化合物としての不飽和二重結合を有するアミン化合物としては、具体的にはN,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメチルメタクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
これらの(B)成分の光架橋する感光化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。(B)成分の光架橋する感光化合物は、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体に対して1.5倍モル以上、3倍モル以下、好ましくは2.0倍モル以上、2.5倍モル以下の範囲で使用することができる。
【0021】
本発明に用いられる(C)成分の光反応開始剤としては、例えばベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2,6’−ジ(4’−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6’−ジ(4’−ジアジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−エチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−ブチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−(t−ブチル)シクロヘキサノン等のアジド化合物、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N−フェニルグリシン、N−(P−エチル)フェニルグリシン、N−(P−エチル)フェニルグリシン等のグリシン誘導体等が挙げられる。
【0022】
これらの光反応開始剤は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。光反応開始剤の添加量は、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1重量部以上、10重量部以下とすることが好ましい。なお、本発明に用いられる光反応開始剤としては、紫外線中のI線(365nm)、G線(436nm)において効率よく反応性ラジカルを発生させるものであれば、特に上記化合物に限定されるものではない。
【0023】
本発明に用いられる(D)成分の反応希釈剤は、感光性重合体組成物を用いてポリイミド膜(ポリイミド前駆体膜)を形成する際のパターン形成時の解像度の向上を目的として添加されるものである。具体的には、パターン形成の際の光の照射により(C)成分の光反応開始剤から発生した反応性ラジカルにより、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体のR骨格のカルボン酸にイオン結合している(B)成分の光架橋する感光化合物の不飽和結合どうしを、(D)成分の反応希釈剤で架橋することにより、従来の感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものにおいて課題であった解像度の低さを改善するものである。
【0024】
(D)成分の反応希釈剤としては、2官能以上の(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート、または、これらの混合物を意味する。
【0025】
(D)成分の反応希釈剤としての2官能以上の(メタ)アクリレート類としては、具体的には1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールトリメタクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラメタクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、ジペンタエリストールヘキサメタクリレート等の2官能以上の(メタ)アクリレート類が好適に用いられる。これらの反応希釈剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(D)成分の反応希釈剤の添加量は、(A)成分のポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1重量部以上、10重量部以下とすることが好ましい。(D)成分の反応希釈剤の添加量が0.1重量部未満であると、解像度の向上が十分でないおそれがあり好ましくない。また、(D)成分の反応希釈剤の添加量が10重量部を超えると、得られるポリイミド膜の特性が低下するおそれがあるため好ましくない。(D)成分の反応希釈剤のより好ましい添加量は、1重量部以上、5重量部以下である。
【0027】
本発明に用いられる(E)成分の溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤や、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。(E)成分の溶剤の含有量は特に限定されるものではないが、通常、感光性重合体組成物全体の25重量%以上、90重量%以下の範囲である。
【0028】
本発明の感光性重合体組成物の調製は、例えば以下のようにして行われる。すなわち、まず上述したような(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体のR骨格となる酸成分とR骨格となるジアミン成分とを添加、混合し、縮重合させて、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体を得る。
【0029】
そして、(E)成分の溶剤に、得られた(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体、(B)成分の光架橋する感光化合物、(C)成分の光反応開始剤、および、(D)成分の反応希釈剤を添加、混合し、本発明の感光性重合体組成物を調製する。この感光性重合体組成物では、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体のR骨格のカルボン酸に、(B)成分の光架橋する感光化合物がイオン結合により導入された状態となっている。
【0030】
本発明においては、(A)〜(E)成分と共に、その他の添加剤を併用することができる。その他の添加剤としては、例えば増感剤、保存安定性を向上させる重合禁止剤等が挙げられ、(E)成分の溶剤に(A)〜(D)成分を添加する際に同時に添加することができる。
【0031】
増感剤としては、例えばミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン)、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビフェニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N’−エタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−P−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホニノベンゾフェノンジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0032】
これらの増感剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。増感剤の添加量は、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1重量部以上、10重量部以下とすることが好ましい。これらの増感剤は、使用する波長にあわせて、さらには要求感度に合わせて利用することで各波長における解像度を向上させることができる。
【0033】
保存安定性を向上させる重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ブチルキノン等のヒドロキノン誘導体等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができ、その添加量は、(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下が好ましい。0.1重量部未満では添加による保存安定性の効果が十分得られず、10重量部を超えると得られるポリイミド膜の特性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明の感光性重合体組成物では、一般式[1]で示されるポリイミド前駆体と、これにイオン結合により導入される光架橋する感光化合物とを用いると共に、解像度の向上を目的とする反応希釈剤を併用することで、従来の感光基をイオン結合によりポリイミド前駆体に導入するものにおける製造の容易さや、優れた膜特性といった利点は維持しつつ、その課題であった解像度を向上させることができ、微細なパターンの形成が可能で半導体デバイス等への適用が十分に可能な感光性重合体組成物とすることができる。
【0035】
次に、本発明の感光性重合体組成物を用いてネガ型パターンを形成する方法を、半導体デバイスに適用する場合を例に説明する。
【0036】
まず、この感光性重合体組成物を、ウェハ上にスピンコータ等を用いて塗布し、70〜150℃で塗布膜を乾燥させる。次いで、得られた塗布膜上にパターンが描画されたマスクを透過させて365nm、436nmといった活性紫外線を照射する。この活性紫外線の照射で(C)成分の光反応開始剤から発生した反応性ラジカルにより、(A)成分のポリイミド前駆体のR骨格のカルボン酸にイオン結合している(B)成分の光架橋する感光化合物の不飽和結合どうしが(D)成分の反応希釈剤により架橋され、現像剤に対して不溶化すると共に、従来よりも溶解度差が大きくなるために解像度が向上する。
【0037】
そして、この塗布膜を現像剤としての有機溶剤、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等を使用して不溶化されていない未露光部分のみを溶解現像し、低級アルコール等のアルコール系溶剤等によってリンス洗浄する。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が用いられる。本発明の感光性重合体組成物においては(D)成分の反応希釈剤が添加されることにより、従来よりも未露光部(溶解部)と露光部(非溶解部)との溶解度差が大きくなり、これにより溶解現像後の未露光部と露光部との境界が明確になり解像度が向上する。
【0038】
このようにしてウェハ上に所望するネガ型パターンが形成された塗布膜は、さらに例えば150℃で1時間、250℃で1時間および350℃で1時間の熱処理を行うことにより、この塗布膜を構成するポリイミド前駆体をイミド化し、ポリイミド膜とする。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を参照して説明する。
【0040】
(実施例1)
乾燥空気導入管を持つフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40.0gとN−メチルピロリドン647gとを投入し溶解させた後、ピロメリット酸二無水物45.0gを3回に分けて加えて重合反応を行った。さらに、この反応系を室温で3時間反応させて十分に重合反応を行い、上記一般式[1]で示されるポリイミド前駆体を得た。
【0041】
そして、N−メチルピロリドン300重量部に、この一般式[1]で示されるポリイミド前駆体100重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート50重量部、ベンゾフェノン2重量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート20重量部およびヒドロキノン1重量部を溶解させて感光性重合体組成物を調製した。
【0042】
次に、この感光性重合体組成物を6インチのシリコンウェハ上にスピンコータを用いて塗布した後、90℃のベーク板で乾燥させて20μmの膜厚に調整した。この塗布膜表面上にミラープロジェクションを用いてライン/スペースパターンを250mJ/cmの露光量で露光した後、この塗布膜表面をシクロヘキサノンで60秒間現像し、イソプロピルアルコールでリンス洗浄した。得られたパターンを光学顕微鏡で観察したところ、10μmのライン/スペース迄の解像度があり、十分な解像度を有することが確認された。
【0043】
さらに、このパターンが形成された塗布膜を150℃で1時間、250℃で1時間、350℃で1時間、加熱処理することによりイミド化しポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜は280℃で30秒のヒートショック後に、飽和水蒸気雰囲気中での耐湿性試験(Pressure Cooker Test:PCT、121℃、2気圧)で300時間の処理を行ってもシリコンウェハと強固に密着しており、通常のテープ剥離試験においても剥がれることはなく、十分な膜特性を有していることが確認された。
【0044】
(比較例1)
解像度の向上を目的として加えられる反応希釈剤であるテトラエチレングリコールジメタクリレートを加えなかったことを除いて、実施例1と同様にして感光性重合体組成物を調製した。この感光性重合体組成物を6インチのシリコンウェハ上にスピンコータを用いて塗布した後、90℃のベーク板で乾燥させて20μmの膜厚に調整した。この塗布膜表面上にミラープロジェウションを用いてライン/スペースパターンを250mJ/cmの露光量で露光した後、塗布膜表面をシクロヘキサノンで60秒間現像し、イソプロピルアルコールでリンス洗浄した。得られたパターンを光学顕微鏡で観察したところ、10μmのライン/スペースを形成しようとした場合に、シリコンウェハの中心部で塗布膜の大部分が溶解され剥がれていることが確認され、解像度が不十分であることが確認された。
【0045】
以上の結果から、感光性重合体組成物に解像度の向上を目的とする反応希釈剤を添加することで、従来よりも未露光部と露光部との溶解度差を大きくし、これにより溶解現像後の未露光部と露光部との境界を明確にし、解像度を向上できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]で示されるポリイミド前駆体
【化1】

(但し、Rは四価の芳香族基、または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された四価の有機基であり、Rは二価の芳香族基または複数の芳香族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−で結合された二価の有機基であり、nは1以上の整数である。)、
(B)前記(A)成分の一般式[1]で示されるポリイミド前駆体にイオン結合により導入される光架橋する感光化合物、
(C)光反応開始剤
(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤、および、
(E)溶剤
を含有してなることを特徴とする感光性重合体組成物。
【請求項2】
前記(D)解像度の向上を目的とする反応希釈剤が、2官能以上の(メタ)アクリレート類であることを特徴とする請求項1記載の感光性重合体組成物。
【請求項3】
請求項1記載の感光性重合体組成物を基板上に塗布、乾燥して塗布膜を得る工程と、
前記塗布膜の所望とする部分に活性光線を照射する工程と、
前記塗布膜のうち活性光線が照射されなかった未露光部分を現像液により溶解、除去する工程と、
前記塗布膜を熱処理する工程と
を有することを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2006−133568(P2006−133568A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323423(P2004−323423)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】