成型用金型、光ディスク基板成型用金型、金属軸、金属軸受及び複合金属材料、この製造方法
【課題】 表面の摩擦係数が小さく、耐久性に優れた複合金属材料を提供する。
【解決手段】 表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属1で構成される複合金属材料。
【解決手段】 表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属1で構成される複合金属材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の摩擦係数が小さく、潤滑性に優れた、金属軸、金属軸受、移動台、ローラ、金型等に使用する複合金属材料、この製造方法、及び光ディスク用成型金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、金属表面にフラーレンを塗布することにより表面の特性を向上させる方法としては、ディッピング法、スプレー法、ラッピング法などが知られている。このような方法の場合、フラーレンは金属の表面に付着しているだけなので、フラーレンは金属表面から剥がれる可能性があることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1では、金属の表面にフラーレンの被膜を形成し、金属表面を低摩擦化することが開示されている。特許文献2では、ダイヤモンド微粒子を含む金属を電解メッキにより金属表面に形成し、金属表面を低摩擦化することが開示されている。
【特許文献1】特開平9−42295号公報
【特許文献2】特開2000−226630公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1において、金属の表面にフラーレンをディッピング法、スプレー法、ラッピング法などにより塗布している。このような方法の場合、フラーレンは金属の表面に付着しているだけなので、フラーレンは金属表面から剥がれる可能性がある。
軸受や金型の低摩擦化のためフラーレンを金属表面に被膜する場合、フラーレンを被膜した初期の性能は良いが、経年変化でフラーレンが剥がれてくると初期の性能より低下してしまうという問題がある。
特許文献1においても4フッ化エチレン樹脂よりも耐久性が良いという記述があるが、耐久性が良いと言っても半永久的に使用できるわけではない。特許文献1の発明は耐久性の面で問題がある。
特許文献2において、ダイヤモンド微粒子を共析させた金属を金属表面に電解メッキさせ、金属表面の低摩擦化を図っている。特許文献2においてダイヤモンド微粒子径は1〜10nmとしているが、3〜15nmという報告もある。いずれにしても径に分布、ばらつきがある。
径の分布にばらつきがあるので、表面にある程度の凹凸が発生し、凸部分で接触することになり、凸部分に力が集中し、凸部分のダイヤモンド微粒子が破断されるという問題がある。低摩擦化のため軸受や移動台といった摺動、摩擦を受ける部分に使用した場合、破断されたダイヤモンド微粒子が飛散し問題となる。
また、径がある程度大きさを有することも問題となる。光ディスク成型用金型において、離型性を良くするため特許文献2の方法で金型表面にダイヤモンド微粒子を共析させた金属を被膜するとき問題となる。
現状のCD或いはDVDといった形状では問題とならないが、今後高密度化が進むと100nm以下のパターンとなってくる。この場合、金型表面にダイヤモンド微粒子の径とパターンサイズが同程度になるので、ダイヤモンド微粒子の径サイズがパターンサイズ変動の要因となり、パターンサイズ変動は光ディスクにおいて再生信号の変動原因となるので問題である。
【0004】
そこで、本発明の第1の目的は、上述した実情を考慮して、表面の摩擦係数が小さく、耐久性に優れた複合金属材料を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、離型性の優れた成型用金型、とくに離型性に優れ、パターンサイズ変動の小さい光ディスク基板成型用金型を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、接触して可動する部分の摩擦が小さく、耐久性の優れた金属軸及び金属軸受を提供することにある。
さらに、本発明の第4の目的は、複合金属材料の製造方法及びフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているめっき液において、フラーレン或いはフラーレン誘導体を凝集させず、フラーレン或いはフラーレン誘導体を型の表面に均一に付着させる複合金属材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成される複合金属材料を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属と含有していない金属からなり、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属において、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる成型用金型を特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる光ディスク基板成型用金型を特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる金属軸又は金属軸受を特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる金属軸受を特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、金属の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に大きくして複合メッキを行う複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に小さくし、金属のみのメッキを行い、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離する複合金属材料の製造方法を特徴とする。
【0006】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が付着した前記基板上にメッキで金属を形成し、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離する複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような構造のマイクロ流路を用いるフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法において、片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を注入し、他の片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含まない液を注入し、前記マイクロ流路の出口からフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出するフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法を特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、超音波振動させながら前記マイクロ流路の出口から前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出する請求項10記載のフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法を特徴とする。
また、請求項12に記載の発明は、請求項10又は11の方法を用いてメッキ液にフラーレン或いはフラーレン誘導体を分散させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、メッキ液を超音波振動させ、請求項7又は8に記載されているメッキを行う複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が溶解している液をスピンコート方式或いはスプレー方式により所定の形状を成している基板上に均一に付着させる請求項9記載の複合金属材料の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属の表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属層で被膜されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が潤滑剤となり、表面の低摩擦化の効果が得られる。
また、フラーレン或いはフラーレン誘導体が金属内に内包されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が飛散することなく、周辺を汚染することを防止することができる。さらに、フラーレン或いはフラーレン誘導体を使用しているので、径が0.7nm程度と小さく、表面の形状変動を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明におけるパターン変動の概略図である。図2は比較のために示す特許文献1におけるパターン変動の概略図である。
図1において、金属の表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が潤滑剤となり、表面の低摩擦化を図れる。図2に示す特許文献1のようにフラーレンが付着している場合と比較して、フラーレンが金属内に内包されているので、フラーレンが飛散することがない。
特許文献2では、ダイヤモンド微粒子の径が1〜10nm或いは3〜15nmと、ばらつきがある。それと比較して、フラーレンの場合には径が0.7nmと均一である。フラーレン誘導体の場合も同等のサイズである。
したがって、フラーレンの径が均一なので、フラーレンの存在によって形成される凹凸が一定となり、大きい凸部分のみに力が集中することがない。また、図2に示すダイヤモンド微粒子よりも径サイズが1桁小さいので、100nm程度のパターンに変動を与えることがない。つまり、将来CD或いはDVDの高密度化が進行して100nm以下のパターンとなってきた場合に対応した光ディスク基板成型用金型を製作することができる。
ここで、フラーレンは化学式でC60である。フラーレン誘導体はC70、C60H60といったものや、C60HBr、C60H(OH)といったものがある。
図3は金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された複合金属材料を示す概略断面図である。図3では、金属1上にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属膜2が形成されていて、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の分布は金属膜2の厚み方向に対し均一である。
したがって、金属1と金属膜2の界面にもフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分布している。フラーレン或いはフラーレン誘導体3は、前述したように、表面を低摩擦化する効果がある。
このことは、金属1と金属膜2の界面にもフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分布していることにより、金属1と金属膜2の密着性が弱くなることに繋がる。したがって、図3のような構成の複合金属材料Aにおいて金属1と金属膜2の剥離が発生し、耐久性の面で問題となる。
【0009】
図4は金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された、請求項2に記載の複合金属材料を示す概略断面図である。図4に示すように、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の分布は金属膜2の厚み方向に対し不均一である。
そして金属1と金属膜2の界面付近ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3が少なくなっている。このような構成にすることにより、金属1と金属膜2の密着性が低下することなく、耐久性も悪くならない。
本発明によれば、成型用金型が上述した複合金属材料Aで構成されているので、成型時の離型性に優れた成型用金型となる。また、光ディスク基板成型用金型が上述した複合金属材料Aで構成されているので、成型時の離型性に優れ、さらに光ディスクパターンの変動が小さい成型用金型となる。
図5は本発明による複合金属材料で構成されている金属軸を示す部分斜視図である。金属軸4、及び図示しない金属軸受が上述した複合金属材料Aで構成されている。そのため、可動部分の滑りが良く、さらに耐久性の優れた金属軸4、金属軸受となる。
図6(a)はフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているメッキ液で複合メッキを行なった金属を示す部分斜視図である。図6(b)は、図6(a)の円部分を示す拡大断面図である。
金属軸4の表面に金属の電解メッキにより金属膜2を形成するときに、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されているメッキ液で複合メッキを行う。このとき、金属表面にメッキする初期の状態では、金属のみのメッキを行い、次第にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の濃度の高いメッキ液で電解メッキを行うので、上述した(請求項2の)複合金属材料Aを得ることができる。
【0010】
図5の金属軸4の表面に上記のような方法でフラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれる金属層を形成すると図6(a)のようになる。断面を拡大したのが図6(b)で、金属軸4と電解メッキによる金属層の界面付近ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3が少なくなっている。
上記の説明において電解メッキで説明しているが、無電解メッキでも良く、上記の説明に捉われるものではない。
金型の表面に無電解メッキで金属を析出させるときにフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されたメッキ液で複合メッキを行い、これにより形成された無電解メッキ膜5を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜6との界面で剥離を行なう。
このとき、前記型の表面に無電解メッキする初期の状態では、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されたメッキ液で複合メッキを行い、次第にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の濃度の低いメッキ液で複合メッキを行う。
これにより形成された無電解メッキ膜5を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜6との界面で剥離を行い、上述した複合金属材料Aを得ることができる。
【0011】
図7は光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。図7の光ディスク成型用金型はガラス基板7にレジストパターン13が形成された型から転写されている。
図8は図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。図9は図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
上記の説明においては無電解メッキ後に電解メッキする手順で説明しているが、型の性質などにより電解メッキだけでもよく、上記の説明に捉われるものではない。電解メッキだけで行う場合は、請求項1による複合金属材料Aとなる。
導電性を有していない型の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させ、無電解メッキで金属膜を形成し、これにより形成された無電解メッキ膜を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜との界面で剥離を行い、請求項2記載のごとき複合金属材料Aを得ることができる。
図10は光ディスク成型用金型の第2の実施の形態をフラーレン付着後の状態で示す断面図である。図11は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
図12は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。図13は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
図10ないし図12に示す第2の実施の形態の光ディスク成型用金型はパターンが形成されたガラス基板7の型から転写されている。上記の説明において無電解メッキ後に電解メッキで説明しているが、型の性質などにより電解メッキだけでもよく、上記の説明に捉われるものではない。電解メッキだけで行う場合は、請求項1記載のごとき複合金属材料Aとなる。
【0012】
図14は毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路を示す概略図である。水或いはアルコールにフラーレン或いはフラーレン誘導体3を入れ、超音波で拡散させるなどして、ある程度分散させた溶液を用意する。
図14に示したマイクロ流路8の片方の分岐路8bに前記で用意した溶液を注入し、他の片方の分岐路8aに水或いはアルコールを注入する。図14のマイクロ流路8の幅は、0.5μm〜100μm程度である。
マイクロ流路8の幅が狭いので、合流点の液の層流の大きさも小さくなる。したがって、微小な層流が発生するため、2つの流路の合流点で効率良く液が混合する。
このとき、フラーレン凝集体に微小な層流による力が作用し、凝集体が分解し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液となる。上記の説明において、水或いはアルコールで説明したが、上記の説明に捉われるものではない。
図15は毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路の他の実施の形態を示す概略図である。液の混合作用によりフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分散させている。図15では、マイクロ流路8の外部に超音波振動子9a、9bを設けている。
超音波振動子を用いて混合している部分を超音波振動させることによりさらにフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分散させることができる。図14ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体が僅かに残っているが、図15では残っていない。
前述した方法でメッキ液中にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を分散させても、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の径が0.7nm程度で非常に小さいため、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集する可能性がある。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、フラーレン或いはフラーレン誘導体3を拡散させているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集しにくくなっている。
また、メッキ液を超音波振動させてフラーレン或いはフラーレン誘導体3を拡散させているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集しにくくなっている。
【0013】
図16は電解メッキ装置の第1の実施の形態を示す概略図である。フラーレン或いはフラーレン誘導体はマイクロ流路8より分散された状態でメッキ槽15へ注入される。往路16aを搬送されたメッキ液はノズル10からサンプル(ガラス基板7)に吹き付けられ、その後メッキ液は帰路16bを経て再び恒温槽11に戻り、メッキ液の温度を一定に保ちつつ、循環している。
また、メッキ槽15には超音波振動子9が設置され、ノズル10から出たフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されたメッキ液がメッキ槽で拡散するように、超音波振動させている。図16のメッキ装置は一例であり、上記の図16に捉われるものではない。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3をオルトジクロロベンゼンに所定の量だけ溶解させる。このオルトジクロロベンゼン溶液をスピンコート方式或いはスプレー方式により基板上に均一に付着させる。
例えば、凹凸の小さい型の場合、スピンコート方式によりフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させる。或いは、凹凸の大きい型の場合、スプレー方式によりフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させる。フラーレン或いはフラーレン誘導体を溶解する液は、その他トルエンやヘキサンがある。
【実施例1】
【0014】
型の表面に付着している汚れを洗浄し、表面をUVオゾン処理し、フラーレン3が溶解したオルトジクロロベンゼン溶液をスプレー方式により均一に塗布を行う。次に、触媒金属であるPd−Sn錯体を表面に塗布し、さらにSnを溶解させ酸化還元反応によりPdを表面に生成する。
次に、メッキ液中の還元剤とPdとの反応により、Niイオンが還元され、Ni金属膜が形成される。この無電解Ni膜を電極として、スルファミン酸ニッケル溶液で電解メッキを行う。
最後に型と無電解Ni膜との界面で剥離を行い、成型用金型を得ることができる。このようにして作製された金型は、表面にフラーレンがあるので離型性が良い。また、フラーレンはNi金属中に含有されているので、フラーレンが剥離することは少ない。
【実施例2】
【0015】
図17は無電界メッキ装置を示す概略図である。ターンテーブル12上に載置されたガラス基板7上にDeepUV用レジストを形成し、波長が257nmのレーザで光ディスクのパターンの露光を行い、現像を行う。作製されたパターンは、トラックピッチが300nm、グルーブ幅が100nm、溝深さが150nmのパターンである。
パターンが形成されている面に、触媒金属であるPd−Sn錯体を表面に塗布し、さらにSnを溶解させ酸化還元反応によりPdを表面に生成する。次に、メッキ液中の還元剤とPdとの反応により、Niイオンを還元し、Ni金属膜を形成する。
このとき始めはフラーレンの含有量が高いメッキ液をガラス基板7に塗布し、次第にフラーレンの含有量が低いメッキ液をガラス基板7に塗布し、最後にフラーレンを含有していないメッキ液をガラス基板7に塗布する。
このとき、メッキ液を塗布するノズル部分にマイクロ流路8があり、フラーレン3(図示せず)の注入量を制御している。また、ノズルの先端には超音波振動子9が取り付けられていて、ガラス基板7にメッキ液を塗布したときフラーレンを拡散させるようにしている。
このようにして、始めはフラーレンの含有量が高く、次第に含有量が低い無電解めっきのNi膜を形成する。次に、この無電解Ni膜を電極として、スルファミン酸ニッケル溶液で電解メッキを行う。最後に型と無電解Ni膜との界面で剥離を行い、光ディスク基板成型用金型を得ることができる。
上記のパターンが形成されている光ディスク基板成型用金型を従来のフラーレンを含まない方法で作成した場合、パターンサイズが小さいため、光ディスク基板を成型で転写するとき離型性が悪く、剥離時にパターン変形が発生し、金型の形状と異なる光ディスク基板となる。また、成型の転写時間を短縮することが難しい。
それに対し、この実施例2で作製された金型は表面にフラーレンがあるため、離型性が良く、成型の転写時間を短時間にすることができる。
また、フラーレンでなくダイヤモンド微粒子で作製した金型もフラーレンと同様な効果を示すが、ダイヤモンド微粒子の径が溝幅や深さの1割程度となり、パターン変動となるため、ダイヤモンド微粒子では光ディスクの信号に変動が発生する。
しかし、フラーレンの場合は径が0.7nmと小さいので、パターン変動が顕著でない。仮にパターン変動が光ディスク信号に検出されても、フラーレンの径が0.7nmと一定なので、一定周波数のノイズが検出される。したがって、そのノイズの周波数成分をバンドパスフィルタで除去すればよいので問題とならない。
【実施例3】
【0016】
ガラス基板7上にDeepUV用レジストを形成し、波長が257nmのレーザで光ディスクのパターンの露光を行い、現像を行う。作製されたパターンは、トラックピッチが300nm、グルーブ幅が100nm、溝深さが150nmのパターンである。
このレジスト基板にNi膜をスパッタリングで形成し、そのNi膜を電極としてNiの電解メッキを行い、レジスト基板とNi界面で剥離を行い、マスター金型を作製する。このマスター金型の表面をプラズマ洗浄後、Niの電解メッキを行い、マスター金型から剥離し、マザー金型を作製する。
このマザー金型の表面をプラズマ洗浄後、フラーレンを溶解したオルトジクロロベンゼン溶液をスピンコートし、フラーレンをマザー金型の表面に均一に付着させる。このマザー金型に再度Niの電解メッキを行い、マザー金型から剥離して、目的の光ディスク基板成型用金型を得ることができる。
上記のパターンが形成されている光ディスク基板成型用金型を従来のフラーレンを含まない方法で作成した場合、パターンサイズが小さいため、光ディスク基板を成型で転写するとき離型性が悪く、剥離時にパターン変形が発生し、金型の形状と異なる光ディスク基板となる。また、成型の転写時間を短縮することが難しい。
それに対し、この実施例3で作製された金型は表面にフラーレンがあるため、離型性が良く、成型の転写時間を短時間にすることができる。
また、フラーレンでなくダイヤモンド微粒子で作製した金型もフラーレンと同様な上記の効果を示すが、ダイヤモンド微粒子の径が溝幅や深さの1割程度となり、パターン変動となるため、ダイヤモンド微粒子では光ディスクの信号に変動が発生する。
しかし、フラーレンの場合は径が0.7nmと小さいので、パターン変動が顕著でない。仮にパターン変動が光ディスク信号に検出されても、フラーレンの径が0.7nmと一定なので、一定周波数のノイズが検出される。したがって、その周波数成分をバンドパスフィルタで除去すればよいので、問題とならない。
【実施例4】
【0017】
図18は本発明による他の電界メッキ装置を示す概略図である。金属軸の表面にNi−Fe或いはNi−Coを電解メッキで形成する。始めはフラーレンを含有していないメッキ槽で行う。次に金属軸4に対して、フラーレン濃度の低いメッキ槽でNi−Fe或いはNi−Coの膜を形成し、さらに金属軸4にフラーレン濃度の高いメッキ槽でNi−Fe或いはNi−Coの膜を形成する。
それぞれのメッキ槽は、フラーレン濃度が一定になるように、マイクロ流路8よりフラーレン3(図示せず)が注入される。また、各メッキ槽は絶えずメッキ液が循環し、超音波振動子9によって超音波振動させられている。
このようにして作製した金属軸4は、可動部分の滑りが良く、耐久性も良い金属軸となる。ダイヤモンド微粒子で作製された金属軸に対して、表面の凹凸が小さいので、すべりが良く、ダイヤモンド微粒子の破断といった問題が発生しない。
【0018】
本発明によれば、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量が少ないので、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属層2との密着性が良く、耐久性を良くすることができる。
本発明によれば、請求項1又は2記載の複合金属材料Aで成型用金型が構成されているので、成型時の離型性を良くすることができる。
本発明によれば、請求項1又は2記載の複合金属材料Aで光ディスク基板成型用金型が構成されているので、成型時の離型製を良くすることができ、さらにパターン変動を小さくすることができる。
請求項1又は2記載の複合金属材料Aで金属軸4又は金属軸受が構成されているので、可動部分の滑りを良くすることができ、さらに耐久性を良くすることができる。
金属表面に金属メッキするときに、始めはフラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれていないメッキ液で被膜し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の含有量が高いメッキ液で被膜を行うので、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量を少なくすることができる。
型の表面に金属メッキするときに、始めはフラーレン或いはフラーレン誘導体3の含有量が高いメッキ液で被膜し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれていないメッキ液で被膜を行う。
そのため、フラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含まない金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量を少なくすることができる。
型の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させ、その表面に金属メッキを行うので、金属メッキの表面にのみフラーレン或いはフラーレン誘導体3を形成することができる。
毛細管状のマイクロ流路8において、2つの流路の合流点で微小な層流が発生し、液が効率よく混合するので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分解する力が作用し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液を得ることができる。
加えて、超音波振動による力がフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体に作用するので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液を得ることができる。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散したメッキ液を常に循環、或いは超音波振動で拡散しているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が再凝集することを防止することができる。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3が溶解した液をスピンコート方式或いはスプレー方式により基板上に塗布するので、基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるパターン変動の概略図である。
【図2】比較のために示す特許文献1におけるパターン変動の概略図である。
【図3】金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された複合金属材料を示す概略断面図である。
【図4】金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された、請求項2に記載の複合金属材料を示す概略断面図である。
【図5】本発明による複合金属材料で構成されている金属軸を示す部分斜視図である。
【図6】(a)はフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているメッキ液で複合メッキを行なった金属を示す部分斜視図であり、(b)は (a)の円部分を示す拡大断面図である。
【図7】光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図8】図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図9】図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
【図10】光ディスク成型用金型の第2の実施の形態をフラーレン付着後の状態で示す断面図である。
【図11】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図12】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図13】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
【図14】毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路を示す概略図である。
【図15】毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路の他の実施の形態を示す概略図である。
【図16】電解メッキ装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図17】無電界メッキ装置を示す概略図である。
【図18】本発明による他の電界メッキ装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
A 複合金属材料
1 金属
2 金属膜
3 フラーレン(またはフラーレン誘導体)
4 金属軸
5 無電界メッキ層
6 電界メッキ層
7 ガラス基板
8 マイクロ流路
9 超音波振動子
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の摩擦係数が小さく、潤滑性に優れた、金属軸、金属軸受、移動台、ローラ、金型等に使用する複合金属材料、この製造方法、及び光ディスク用成型金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、金属表面にフラーレンを塗布することにより表面の特性を向上させる方法としては、ディッピング法、スプレー法、ラッピング法などが知られている。このような方法の場合、フラーレンは金属の表面に付着しているだけなので、フラーレンは金属表面から剥がれる可能性があることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1では、金属の表面にフラーレンの被膜を形成し、金属表面を低摩擦化することが開示されている。特許文献2では、ダイヤモンド微粒子を含む金属を電解メッキにより金属表面に形成し、金属表面を低摩擦化することが開示されている。
【特許文献1】特開平9−42295号公報
【特許文献2】特開2000−226630公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1において、金属の表面にフラーレンをディッピング法、スプレー法、ラッピング法などにより塗布している。このような方法の場合、フラーレンは金属の表面に付着しているだけなので、フラーレンは金属表面から剥がれる可能性がある。
軸受や金型の低摩擦化のためフラーレンを金属表面に被膜する場合、フラーレンを被膜した初期の性能は良いが、経年変化でフラーレンが剥がれてくると初期の性能より低下してしまうという問題がある。
特許文献1においても4フッ化エチレン樹脂よりも耐久性が良いという記述があるが、耐久性が良いと言っても半永久的に使用できるわけではない。特許文献1の発明は耐久性の面で問題がある。
特許文献2において、ダイヤモンド微粒子を共析させた金属を金属表面に電解メッキさせ、金属表面の低摩擦化を図っている。特許文献2においてダイヤモンド微粒子径は1〜10nmとしているが、3〜15nmという報告もある。いずれにしても径に分布、ばらつきがある。
径の分布にばらつきがあるので、表面にある程度の凹凸が発生し、凸部分で接触することになり、凸部分に力が集中し、凸部分のダイヤモンド微粒子が破断されるという問題がある。低摩擦化のため軸受や移動台といった摺動、摩擦を受ける部分に使用した場合、破断されたダイヤモンド微粒子が飛散し問題となる。
また、径がある程度大きさを有することも問題となる。光ディスク成型用金型において、離型性を良くするため特許文献2の方法で金型表面にダイヤモンド微粒子を共析させた金属を被膜するとき問題となる。
現状のCD或いはDVDといった形状では問題とならないが、今後高密度化が進むと100nm以下のパターンとなってくる。この場合、金型表面にダイヤモンド微粒子の径とパターンサイズが同程度になるので、ダイヤモンド微粒子の径サイズがパターンサイズ変動の要因となり、パターンサイズ変動は光ディスクにおいて再生信号の変動原因となるので問題である。
【0004】
そこで、本発明の第1の目的は、上述した実情を考慮して、表面の摩擦係数が小さく、耐久性に優れた複合金属材料を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、離型性の優れた成型用金型、とくに離型性に優れ、パターンサイズ変動の小さい光ディスク基板成型用金型を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、接触して可動する部分の摩擦が小さく、耐久性の優れた金属軸及び金属軸受を提供することにある。
さらに、本発明の第4の目的は、複合金属材料の製造方法及びフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているめっき液において、フラーレン或いはフラーレン誘導体を凝集させず、フラーレン或いはフラーレン誘導体を型の表面に均一に付着させる複合金属材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成される複合金属材料を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属と含有していない金属からなり、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属において、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる成型用金型を特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる光ディスク基板成型用金型を特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる金属軸又は金属軸受を特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料からなる金属軸受を特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、金属の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に大きくして複合メッキを行う複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に小さくし、金属のみのメッキを行い、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離する複合金属材料の製造方法を特徴とする。
【0006】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が付着した前記基板上にメッキで金属を形成し、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離する複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような構造のマイクロ流路を用いるフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法において、片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を注入し、他の片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含まない液を注入し、前記マイクロ流路の出口からフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出するフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法を特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、超音波振動させながら前記マイクロ流路の出口から前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出する請求項10記載のフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法を特徴とする。
また、請求項12に記載の発明は、請求項10又は11の方法を用いてメッキ液にフラーレン或いはフラーレン誘導体を分散させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、メッキ液を超音波振動させ、請求項7又は8に記載されているメッキを行う複合金属材料の製造方法を特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が溶解している液をスピンコート方式或いはスプレー方式により所定の形状を成している基板上に均一に付着させる請求項9記載の複合金属材料の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属の表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属層で被膜されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が潤滑剤となり、表面の低摩擦化の効果が得られる。
また、フラーレン或いはフラーレン誘導体が金属内に内包されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が飛散することなく、周辺を汚染することを防止することができる。さらに、フラーレン或いはフラーレン誘導体を使用しているので、径が0.7nm程度と小さく、表面の形状変動を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明におけるパターン変動の概略図である。図2は比較のために示す特許文献1におけるパターン変動の概略図である。
図1において、金属の表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成されているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体が潤滑剤となり、表面の低摩擦化を図れる。図2に示す特許文献1のようにフラーレンが付着している場合と比較して、フラーレンが金属内に内包されているので、フラーレンが飛散することがない。
特許文献2では、ダイヤモンド微粒子の径が1〜10nm或いは3〜15nmと、ばらつきがある。それと比較して、フラーレンの場合には径が0.7nmと均一である。フラーレン誘導体の場合も同等のサイズである。
したがって、フラーレンの径が均一なので、フラーレンの存在によって形成される凹凸が一定となり、大きい凸部分のみに力が集中することがない。また、図2に示すダイヤモンド微粒子よりも径サイズが1桁小さいので、100nm程度のパターンに変動を与えることがない。つまり、将来CD或いはDVDの高密度化が進行して100nm以下のパターンとなってきた場合に対応した光ディスク基板成型用金型を製作することができる。
ここで、フラーレンは化学式でC60である。フラーレン誘導体はC70、C60H60といったものや、C60HBr、C60H(OH)といったものがある。
図3は金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された複合金属材料を示す概略断面図である。図3では、金属1上にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属膜2が形成されていて、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の分布は金属膜2の厚み方向に対し均一である。
したがって、金属1と金属膜2の界面にもフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分布している。フラーレン或いはフラーレン誘導体3は、前述したように、表面を低摩擦化する効果がある。
このことは、金属1と金属膜2の界面にもフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分布していることにより、金属1と金属膜2の密着性が弱くなることに繋がる。したがって、図3のような構成の複合金属材料Aにおいて金属1と金属膜2の剥離が発生し、耐久性の面で問題となる。
【0009】
図4は金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された、請求項2に記載の複合金属材料を示す概略断面図である。図4に示すように、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の分布は金属膜2の厚み方向に対し不均一である。
そして金属1と金属膜2の界面付近ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3が少なくなっている。このような構成にすることにより、金属1と金属膜2の密着性が低下することなく、耐久性も悪くならない。
本発明によれば、成型用金型が上述した複合金属材料Aで構成されているので、成型時の離型性に優れた成型用金型となる。また、光ディスク基板成型用金型が上述した複合金属材料Aで構成されているので、成型時の離型性に優れ、さらに光ディスクパターンの変動が小さい成型用金型となる。
図5は本発明による複合金属材料で構成されている金属軸を示す部分斜視図である。金属軸4、及び図示しない金属軸受が上述した複合金属材料Aで構成されている。そのため、可動部分の滑りが良く、さらに耐久性の優れた金属軸4、金属軸受となる。
図6(a)はフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているメッキ液で複合メッキを行なった金属を示す部分斜視図である。図6(b)は、図6(a)の円部分を示す拡大断面図である。
金属軸4の表面に金属の電解メッキにより金属膜2を形成するときに、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されているメッキ液で複合メッキを行う。このとき、金属表面にメッキする初期の状態では、金属のみのメッキを行い、次第にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の濃度の高いメッキ液で電解メッキを行うので、上述した(請求項2の)複合金属材料Aを得ることができる。
【0010】
図5の金属軸4の表面に上記のような方法でフラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれる金属層を形成すると図6(a)のようになる。断面を拡大したのが図6(b)で、金属軸4と電解メッキによる金属層の界面付近ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3が少なくなっている。
上記の説明において電解メッキで説明しているが、無電解メッキでも良く、上記の説明に捉われるものではない。
金型の表面に無電解メッキで金属を析出させるときにフラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されたメッキ液で複合メッキを行い、これにより形成された無電解メッキ膜5を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜6との界面で剥離を行なう。
このとき、前記型の表面に無電解メッキする初期の状態では、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散されたメッキ液で複合メッキを行い、次第にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の濃度の低いメッキ液で複合メッキを行う。
これにより形成された無電解メッキ膜5を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜6との界面で剥離を行い、上述した複合金属材料Aを得ることができる。
【0011】
図7は光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。図7の光ディスク成型用金型はガラス基板7にレジストパターン13が形成された型から転写されている。
図8は図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。図9は図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
上記の説明においては無電解メッキ後に電解メッキする手順で説明しているが、型の性質などにより電解メッキだけでもよく、上記の説明に捉われるものではない。電解メッキだけで行う場合は、請求項1による複合金属材料Aとなる。
導電性を有していない型の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させ、無電解メッキで金属膜を形成し、これにより形成された無電解メッキ膜を電極として金属の電解メッキを行い、前記型と無電解メッキによる金属膜との界面で剥離を行い、請求項2記載のごとき複合金属材料Aを得ることができる。
図10は光ディスク成型用金型の第2の実施の形態をフラーレン付着後の状態で示す断面図である。図11は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
図12は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。図13は図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
図10ないし図12に示す第2の実施の形態の光ディスク成型用金型はパターンが形成されたガラス基板7の型から転写されている。上記の説明において無電解メッキ後に電解メッキで説明しているが、型の性質などにより電解メッキだけでもよく、上記の説明に捉われるものではない。電解メッキだけで行う場合は、請求項1記載のごとき複合金属材料Aとなる。
【0012】
図14は毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路を示す概略図である。水或いはアルコールにフラーレン或いはフラーレン誘導体3を入れ、超音波で拡散させるなどして、ある程度分散させた溶液を用意する。
図14に示したマイクロ流路8の片方の分岐路8bに前記で用意した溶液を注入し、他の片方の分岐路8aに水或いはアルコールを注入する。図14のマイクロ流路8の幅は、0.5μm〜100μm程度である。
マイクロ流路8の幅が狭いので、合流点の液の層流の大きさも小さくなる。したがって、微小な層流が発生するため、2つの流路の合流点で効率良く液が混合する。
このとき、フラーレン凝集体に微小な層流による力が作用し、凝集体が分解し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液となる。上記の説明において、水或いはアルコールで説明したが、上記の説明に捉われるものではない。
図15は毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路の他の実施の形態を示す概略図である。液の混合作用によりフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分散させている。図15では、マイクロ流路8の外部に超音波振動子9a、9bを設けている。
超音波振動子を用いて混合している部分を超音波振動させることによりさらにフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分散させることができる。図14ではフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体が僅かに残っているが、図15では残っていない。
前述した方法でメッキ液中にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を分散させても、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の径が0.7nm程度で非常に小さいため、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集する可能性がある。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、フラーレン或いはフラーレン誘導体3を拡散させているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集しにくくなっている。
また、メッキ液を超音波振動させてフラーレン或いはフラーレン誘導体3を拡散させているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が再凝集しにくくなっている。
【0013】
図16は電解メッキ装置の第1の実施の形態を示す概略図である。フラーレン或いはフラーレン誘導体はマイクロ流路8より分散された状態でメッキ槽15へ注入される。往路16aを搬送されたメッキ液はノズル10からサンプル(ガラス基板7)に吹き付けられ、その後メッキ液は帰路16bを経て再び恒温槽11に戻り、メッキ液の温度を一定に保ちつつ、循環している。
また、メッキ槽15には超音波振動子9が設置され、ノズル10から出たフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されたメッキ液がメッキ槽で拡散するように、超音波振動させている。図16のメッキ装置は一例であり、上記の図16に捉われるものではない。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3をオルトジクロロベンゼンに所定の量だけ溶解させる。このオルトジクロロベンゼン溶液をスピンコート方式或いはスプレー方式により基板上に均一に付着させる。
例えば、凹凸の小さい型の場合、スピンコート方式によりフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させる。或いは、凹凸の大きい型の場合、スプレー方式によりフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させる。フラーレン或いはフラーレン誘導体を溶解する液は、その他トルエンやヘキサンがある。
【実施例1】
【0014】
型の表面に付着している汚れを洗浄し、表面をUVオゾン処理し、フラーレン3が溶解したオルトジクロロベンゼン溶液をスプレー方式により均一に塗布を行う。次に、触媒金属であるPd−Sn錯体を表面に塗布し、さらにSnを溶解させ酸化還元反応によりPdを表面に生成する。
次に、メッキ液中の還元剤とPdとの反応により、Niイオンが還元され、Ni金属膜が形成される。この無電解Ni膜を電極として、スルファミン酸ニッケル溶液で電解メッキを行う。
最後に型と無電解Ni膜との界面で剥離を行い、成型用金型を得ることができる。このようにして作製された金型は、表面にフラーレンがあるので離型性が良い。また、フラーレンはNi金属中に含有されているので、フラーレンが剥離することは少ない。
【実施例2】
【0015】
図17は無電界メッキ装置を示す概略図である。ターンテーブル12上に載置されたガラス基板7上にDeepUV用レジストを形成し、波長が257nmのレーザで光ディスクのパターンの露光を行い、現像を行う。作製されたパターンは、トラックピッチが300nm、グルーブ幅が100nm、溝深さが150nmのパターンである。
パターンが形成されている面に、触媒金属であるPd−Sn錯体を表面に塗布し、さらにSnを溶解させ酸化還元反応によりPdを表面に生成する。次に、メッキ液中の還元剤とPdとの反応により、Niイオンを還元し、Ni金属膜を形成する。
このとき始めはフラーレンの含有量が高いメッキ液をガラス基板7に塗布し、次第にフラーレンの含有量が低いメッキ液をガラス基板7に塗布し、最後にフラーレンを含有していないメッキ液をガラス基板7に塗布する。
このとき、メッキ液を塗布するノズル部分にマイクロ流路8があり、フラーレン3(図示せず)の注入量を制御している。また、ノズルの先端には超音波振動子9が取り付けられていて、ガラス基板7にメッキ液を塗布したときフラーレンを拡散させるようにしている。
このようにして、始めはフラーレンの含有量が高く、次第に含有量が低い無電解めっきのNi膜を形成する。次に、この無電解Ni膜を電極として、スルファミン酸ニッケル溶液で電解メッキを行う。最後に型と無電解Ni膜との界面で剥離を行い、光ディスク基板成型用金型を得ることができる。
上記のパターンが形成されている光ディスク基板成型用金型を従来のフラーレンを含まない方法で作成した場合、パターンサイズが小さいため、光ディスク基板を成型で転写するとき離型性が悪く、剥離時にパターン変形が発生し、金型の形状と異なる光ディスク基板となる。また、成型の転写時間を短縮することが難しい。
それに対し、この実施例2で作製された金型は表面にフラーレンがあるため、離型性が良く、成型の転写時間を短時間にすることができる。
また、フラーレンでなくダイヤモンド微粒子で作製した金型もフラーレンと同様な効果を示すが、ダイヤモンド微粒子の径が溝幅や深さの1割程度となり、パターン変動となるため、ダイヤモンド微粒子では光ディスクの信号に変動が発生する。
しかし、フラーレンの場合は径が0.7nmと小さいので、パターン変動が顕著でない。仮にパターン変動が光ディスク信号に検出されても、フラーレンの径が0.7nmと一定なので、一定周波数のノイズが検出される。したがって、そのノイズの周波数成分をバンドパスフィルタで除去すればよいので問題とならない。
【実施例3】
【0016】
ガラス基板7上にDeepUV用レジストを形成し、波長が257nmのレーザで光ディスクのパターンの露光を行い、現像を行う。作製されたパターンは、トラックピッチが300nm、グルーブ幅が100nm、溝深さが150nmのパターンである。
このレジスト基板にNi膜をスパッタリングで形成し、そのNi膜を電極としてNiの電解メッキを行い、レジスト基板とNi界面で剥離を行い、マスター金型を作製する。このマスター金型の表面をプラズマ洗浄後、Niの電解メッキを行い、マスター金型から剥離し、マザー金型を作製する。
このマザー金型の表面をプラズマ洗浄後、フラーレンを溶解したオルトジクロロベンゼン溶液をスピンコートし、フラーレンをマザー金型の表面に均一に付着させる。このマザー金型に再度Niの電解メッキを行い、マザー金型から剥離して、目的の光ディスク基板成型用金型を得ることができる。
上記のパターンが形成されている光ディスク基板成型用金型を従来のフラーレンを含まない方法で作成した場合、パターンサイズが小さいため、光ディスク基板を成型で転写するとき離型性が悪く、剥離時にパターン変形が発生し、金型の形状と異なる光ディスク基板となる。また、成型の転写時間を短縮することが難しい。
それに対し、この実施例3で作製された金型は表面にフラーレンがあるため、離型性が良く、成型の転写時間を短時間にすることができる。
また、フラーレンでなくダイヤモンド微粒子で作製した金型もフラーレンと同様な上記の効果を示すが、ダイヤモンド微粒子の径が溝幅や深さの1割程度となり、パターン変動となるため、ダイヤモンド微粒子では光ディスクの信号に変動が発生する。
しかし、フラーレンの場合は径が0.7nmと小さいので、パターン変動が顕著でない。仮にパターン変動が光ディスク信号に検出されても、フラーレンの径が0.7nmと一定なので、一定周波数のノイズが検出される。したがって、その周波数成分をバンドパスフィルタで除去すればよいので、問題とならない。
【実施例4】
【0017】
図18は本発明による他の電界メッキ装置を示す概略図である。金属軸の表面にNi−Fe或いはNi−Coを電解メッキで形成する。始めはフラーレンを含有していないメッキ槽で行う。次に金属軸4に対して、フラーレン濃度の低いメッキ槽でNi−Fe或いはNi−Coの膜を形成し、さらに金属軸4にフラーレン濃度の高いメッキ槽でNi−Fe或いはNi−Coの膜を形成する。
それぞれのメッキ槽は、フラーレン濃度が一定になるように、マイクロ流路8よりフラーレン3(図示せず)が注入される。また、各メッキ槽は絶えずメッキ液が循環し、超音波振動子9によって超音波振動させられている。
このようにして作製した金属軸4は、可動部分の滑りが良く、耐久性も良い金属軸となる。ダイヤモンド微粒子で作製された金属軸に対して、表面の凹凸が小さいので、すべりが良く、ダイヤモンド微粒子の破断といった問題が発生しない。
【0018】
本発明によれば、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量が少ないので、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属層2との密着性が良く、耐久性を良くすることができる。
本発明によれば、請求項1又は2記載の複合金属材料Aで成型用金型が構成されているので、成型時の離型性を良くすることができる。
本発明によれば、請求項1又は2記載の複合金属材料Aで光ディスク基板成型用金型が構成されているので、成型時の離型製を良くすることができ、さらにパターン変動を小さくすることができる。
請求項1又は2記載の複合金属材料Aで金属軸4又は金属軸受が構成されているので、可動部分の滑りを良くすることができ、さらに耐久性を良くすることができる。
金属表面に金属メッキするときに、始めはフラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれていないメッキ液で被膜し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の含有量が高いメッキ液で被膜を行うので、金属1とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量を少なくすることができる。
型の表面に金属メッキするときに、始めはフラーレン或いはフラーレン誘導体3の含有量が高いメッキ液で被膜し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3が含まれていないメッキ液で被膜を行う。
そのため、フラーレン或いはフラーレン誘導体3を含む金属層2とフラーレン或いはフラーレン誘導体3を含まない金属層2との界面付近にフラーレン或いはフラーレン誘導体3の量を少なくすることができる。
型の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させ、その表面に金属メッキを行うので、金属メッキの表面にのみフラーレン或いはフラーレン誘導体3を形成することができる。
毛細管状のマイクロ流路8において、2つの流路の合流点で微小な層流が発生し、液が効率よく混合するので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体を分解する力が作用し、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液を得ることができる。
加えて、超音波振動による力がフラーレン或いはフラーレン誘導体3の凝集体に作用するので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散した液を得ることができる。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が分散したメッキ液を常に循環、或いは超音波振動で拡散しているので、フラーレン或いはフラーレン誘導体3の単体が再凝集することを防止することができる。
フラーレン或いはフラーレン誘導体3が溶解した液をスピンコート方式或いはスプレー方式により基板上に塗布するので、基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体3を均一に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるパターン変動の概略図である。
【図2】比較のために示す特許文献1におけるパターン変動の概略図である。
【図3】金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された複合金属材料を示す概略断面図である。
【図4】金属上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属膜が形成された、請求項2に記載の複合金属材料を示す概略断面図である。
【図5】本発明による複合金属材料で構成されている金属軸を示す部分斜視図である。
【図6】(a)はフラーレン或いはフラーレン誘導体が分散されているメッキ液で複合メッキを行なった金属を示す部分斜視図であり、(b)は (a)の円部分を示す拡大断面図である。
【図7】光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図8】図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図9】図7の光ディスク成型用金型の第1の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
【図10】光ディスク成型用金型の第2の実施の形態をフラーレン付着後の状態で示す断面図である。
【図11】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を無電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図12】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を電解メッキ後の状態で示す断面図である。
【図13】図10の光ディスク成型用金型の第2の実施の形態を剥離後の状態で示す断面図である。
【図14】毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路を示す概略図である。
【図15】毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束するような二又構造のマイクロ流路の他の実施の形態を示す概略図である。
【図16】電解メッキ装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図17】無電界メッキ装置を示す概略図である。
【図18】本発明による他の電界メッキ装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
A 複合金属材料
1 金属
2 金属膜
3 フラーレン(またはフラーレン誘導体)
4 金属軸
5 無電界メッキ層
6 電界メッキ層
7 ガラス基板
8 マイクロ流路
9 超音波振動子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成されることを特徴とする複合金属材料。
【請求項2】
フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属と含有していない金属からなり、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多いことを特徴とする複合金属材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする成型用金型。
【請求項4】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする光ディスク基板成型用金型。
【請求項5】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする金属軸。
【請求項6】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする金属軸受。
【請求項7】
前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、金属の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に大きくして複合メッキを行うことを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に小さくし、金属のみのメッキを行い、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離することを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が付着した前記基板上にメッキで金属を形成し、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離することを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項10】
毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束する構造のマイクロ流路を用いるフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法において、片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を注入し、他の片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含まない液を注入し、前記マイクロ流路の出口からフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出することを特徴とするフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法。
【請求項11】
超音波振動させながら前記マイクロ流路の出口から前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出することを特徴とする請求項10記載のフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法。
【請求項12】
請求項10又は11の方法を用いてメッキ液にフラーレン或いはフラーレン誘導体を分散させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、メッキ液を超音波振動させ、請求項7又は8に記載されているメッキを行うことを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項13】
前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が溶解している液をスピンコート方式或いはスプレー方式により所定の形状を成している基板上に均一に付着させることを特徴とする請求項9記載の複合金属材料の製造方法。
【請求項1】
表面がフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む金属で構成されることを特徴とする複合金属材料。
【請求項2】
フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属と含有していない金属からなり、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属は、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多いことを特徴とする複合金属材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする成型用金型。
【請求項4】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする光ディスク基板成型用金型。
【請求項5】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする金属軸。
【請求項6】
請求項1又は2記載の複合金属材料からなることを特徴とする金属軸受。
【請求項7】
前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が厚み方向に連続的に変化し、2つの金属の界面付近でフラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が少なく、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含有する金属の界面付近で前記フラーレン或いはフラーレン誘導体の含有量が多い複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、金属の表面にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に大きくして複合メッキを行うことを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を共析させた複合メッキを行い、フラーレンの含有量を次第に小さくし、金属のみのメッキを行い、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離することを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の複合金属材料を製造する複合金属材料の製造方法において、所定の形状を成している基板上にフラーレン或いはフラーレン誘導体を均一に付着させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が付着した前記基板上にメッキで金属を形成し、前記基板からフラーレンを含む金属を剥離することを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項10】
毛細管状の2つの流路が1つの流路に収束する構造のマイクロ流路を用いるフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法において、片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を注入し、他の片方のマイクロ流路にフラーレン或いはフラーレン誘導体を含まない液を注入し、前記マイクロ流路の出口からフラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出することを特徴とするフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法。
【請求項11】
超音波振動させながら前記マイクロ流路の出口から前記フラーレン或いはフラーレン誘導体を含む液を抽出することを特徴とする請求項10記載のフラーレン或いはフラーレン誘導体の分散方法。
【請求項12】
請求項10又は11の方法を用いてメッキ液にフラーレン或いはフラーレン誘導体を分散させ、前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が分散しているメッキ液をメッキ槽で循環させ、メッキ液を超音波振動させ、請求項7又は8に記載されているメッキを行うことを特徴とする複合金属材料の製造方法。
【請求項13】
前記フラーレン或いはフラーレン誘導体が溶解している液をスピンコート方式或いはスプレー方式により所定の形状を成している基板上に均一に付着させることを特徴とする請求項9記載の複合金属材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−28603(P2006−28603A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210799(P2004−210799)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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