説明

成形品判別システム

【課題】成形品の良否の判別精度を向上させることの可能な成形品判別システムを提供する。
【解決手段】射出成形装置10の金型15のキャビティ16に射出された成形材料の圧力を検出する圧力センサ19と、金型15のキャビティ16に射出された成形材料の温度を検出する温度センサ18a,18bと、圧力センサ19によって検出された成形材料の圧力と、温度センサ18a,18bによって検出された成形材料の温度とに基づいて、該成形材料からなる成形品の良否を判別する制御部26とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂等の成形材料を射出成形装置の金型のキャビティに射出してなる成形品の良否を判別するための成形品判別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形品判別システムとして、射出成形装置の金型のキャビティに射出された成形材料の圧力を検出する圧力検出手段と、該成形材料からなる成形品の良否を、圧力検出手段によって検出された成形材料の圧力に基づき判別する判別手段とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−52207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、射出成形を行う際には、キャビティの末端部まで成形材料が充填されずに成形材料が冷却・固化されることにより、成形品の一部が欠ける等のように不完全な形状の成形品が生産されるショートショットという現象が発生することが知られている。
【0004】
しかしながら、前記従来例では、成形材料の圧力のみを検出しており、キャビティ内の成形材料の冷却・固化状態を検出していないことから、ショートショットが発生したか否かを判別することが困難であった。これにより、成形品の良否の判別精度が十分でないおそれがあった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形品の良否の判別精度を向上させることの可能な成形品判別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、射出成形装置の金型のキャビティに射出された成形材料の圧力を検出する圧力検出部と、前記金型のキャビティに射出された成形材料の温度を検出する温度検出部と、圧力検出部によって検出された成形材料の圧力と、温度検出部によって検出された成形材料の温度とに基づいて、該成形材料からなる成形品の良否を判別する判別部とを備えている。
【0007】
これにより、キャビティ内の成形材料の温度及び圧力に基づき成形品の良否が判別されることから、キャビティ内の成形材料の圧力及び冷却・固化状態に基づき成形品の良否を判別することが可能になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャビティ内の成形材料の圧力及び冷却・固化状態に基づき成形品の良否を判別することができるので、ショートショット等の不具合が発生したか否かを容易に判別することができ、成形品の良否判別の精度を向上させることができる。また、キャビティ内の成形材料の圧力及び温度を検出することにより、成形品に外観不良や寸法不良が発生したか否かについても判別することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1は射出成形装置の概略構成図、図2は図1に示した射出成形装置の要部拡大図、図3は成形品判別システムの制御系構成を示す機能ブロック図、図4は品質判別情報のデータ構造の一例を示す図、図5は品質判別を行う場合の制御部の動作を説明するフロー図、図6はキャビティ内の成形材料の温度特性を示す図、図7はキャビティ内の成形材料の圧力特性を示す図である。
【0010】
本発明の成形品判別システムは、射出成形装置10によって成形された成形品の良否を、射出成形装置10の金型15のキャビティ16に射出された成形材料の圧力及び温度に基づき判別するようになっている。なお、本実施形態では、上記の機能を射出成形装置10に実装することにより、成形品判別システムを構成している。
【0011】
射出成形装置10の構成について図1及び図2を参照して説明する。射出成形装置10は、周知のインラインスクリュー型の構成をなし、加熱シリンダ11、スクリュー12、射出シリンダ13、ホッパ14、金型15、型締めシリンダ17を備えている。なお、ここでは射出成形装置10の要部となる構成のみを示し、他の構成については説明を省略する。
【0012】
加熱シリンダ11の先端には、成形材料を金型15側に射出するためのノズル11aが設けられており、スクリュー12は、加熱シリンダ11内部において射出シリンダ13からノズル11aに向かって延びるように設けられている。また、スクリュー12は、モータ等(図示省略)によって回転駆動されるとともに、射出シリンダ13の駆動によって加熱シリンダ11内を前進または後退するようになっている。
【0013】
加熱シリンダ11の外周には、成形材料としての樹脂を収容するホッパ14が設けられており、ホッパ14から供給された樹脂は、加熱シリンダ11内で加熱溶融され、スクリュー12の前進によりノズル11aを介して金型15へ加圧射出される。
【0014】
金型15は固定型15aと可動型15bからなり、固定型15aは加熱シリンダ11に連結され、可動型15bは型締めシリンダ17に連結されている。可動型15bは、型締めシリンダ17の駆動によって前進または後退することにより、型締め及び型開閉するようになっている。また、固定型15aと可動型15bの間には、成形品の外形に応じて形成されたキャビティ16が設けられており、ノズル11aから射出された溶融樹脂がキャビティ16内に注入されるようになっている。
【0015】
また、可動型15bのキャビティ16側には、キャビティ16に射出された樹脂の温度を検出する温度センサ18と、該樹脂の圧力を検出する圧力センサ19とが設けられている。温度センサ18は、キャビティ16の厚さ寸法が大きい部分(図中X1の部分)における樹脂の温度を検出する第1の温度センサ18aと、キャビティ16の厚さ寸法が小さい部分(図中X2の部分)における樹脂の温度を検出する第2の温度センサ18bとから構成されており、各温度センサ18a,18bは、検出した温度を表す情報を制御部26に送信する。また、圧力センサ19は、検出した圧力を表す情報を制御部26に送信する。
【0016】
次に、図3を参照して成形品判別システムの制御系構成について説明する。
【0017】
位置センサ20は、射出シリンダ11内のスクリュー12の位置を検出するためのものであり、スクリュー12の位置を検出すると、該位置を表す情報を制御部26に送信する。
【0018】
入出力部21は周知のタッチパネルであり、利用者がタッチパネルの画面に触れることにより、射出成形装置10の制御内容や後述の品質判別情報25aの内容等を適宜設定することができる。また、入出力部21は、制御部26の制御により品質判別結果等の情報を表示する。
【0019】
射出シリンダ駆動部22は、射出シリンダ11の動作を制御するためのもので、制御部26からの制御信号に基づいて射出シリンダ11を駆動させる。
【0020】
型締めシリンダ駆動部23は、型締めシリンダ17の動作を制御するためのもので、制御部26からの制御信号に基づいて型締めシリンダ17を駆動させる。
【0021】
搬送部24は周知のロボットアーム等からなり、良否が判別された成形品を金型15から取り出して、所定の収容部(図示省略)に搬送するようになっている。
【0022】
記憶部25は、EEPROM等の書き換え可能な記憶素子であり、成形品の良否を判別するための複数の条件からなる品質判別情報25aが記憶されている。品質判別情報25aには、図4に示すように、正常な射出動作時におけるキャビティ16内の樹脂の圧力及び温度の特性を表す基準値と、成形品が良品として判別されるための測定値と基準値の差の許容範囲とが予め設定されている。
【0023】
制御部26は、CPU、RAM、ROM及びタイマ回路等を備えたコンピュータからなり、上記各種機器を制御するようになっている。また、制御部26には、第1の温度センサ18a、第2の温度センサ18b、圧力センサ19、位置センサ20、入出力部21、射出シリンダ駆動部22、型締めシリンダ駆動部23、搬送部24及び記憶部25が接続されている。制御部26は、温度センサ18、圧力センサ19及び位置センサ20によって検出されたデータに基づき成形品の良否を判別するようになっており、本願請求項でいう判別手段を構成している。
【0024】
以上のように構成された成形品判別システムにおいて、成形品の良否を判別する場合の制御部26の動作を、図5のフロー図を参照して説明する。まず、制御部26は、射出シリンダ駆動部22及び型締めシリンダ駆動部23を介して射出シリンダ13及び型締めシリンダ17を駆動させ、固定型15aと可動型15bを接触させる。そして、制御部26は、射出シリンダ駆動部22を介してスクリュー12を前進させることにより、加熱シリンダ11内で加熱溶融された樹脂を、ノズル11aを介してキャビティ16内に射出させる(ステップS1)。
【0025】
次に、第1及び第2の温度センサ18a,18bと圧力センサ19は、それぞれキャビティ16内に射出された樹脂の温度または圧力を検出し、検出データを制御部26に送信する(ステップS2)。ここで、第1の温度センサ18aによって検出された樹脂の温度特性は図6のA1のように示され、第2の温度センサ18bによって検出された樹脂の温度特性は図6のA2のように示される。このように、キャビティ16の厚さ寸法即ち成形品の厚さ寸法が異なる部分のそれぞれについて温度特性を検出することにより、品質判別処理をより正確に行うことが可能になる。また、圧力センサ19によって検出された樹脂の圧力特性は、図7のように示される。
【0026】
制御部26は、樹脂の射出後所定時間(例えば5秒)、第1及び第2の温度センサ18a,18bと圧力センサ19によって検出された信号を受信した後に(ステップS3)、記憶部25に記憶された図4の品質判別情報25aを用いて成形品の品質判別処理を行う(ステップS4)。
【0027】
ここで、品質判別処理の内容について具体的に説明すると、制御部26は、圧力センサ19によって検出された樹脂の圧力の最大値、最大値に達したときの時間、最大値に達したときに位置センサ20によって検出されたスクリュー12の位置、樹脂がキャビティ16内に射出された後の所定時間帯(例えば2秒から3秒の間)における圧力の最大値、該所定時間帯における圧力の最小値及び該所定時間帯の圧力の平均値の全ての測定値が、品質判別情報25aのそれぞれの項目の許容範囲内である場合に、良品であると判断する。この場合、所定時間帯における圧力の最大値、最小値及び平均値に基づいて成形品の良否を判別していることから、圧力特性が異なる他の成形材料を用いて射出成形を行う場合でも正確な品質判別処理を行うことができる。また、制御部26は、上記項目のうち少なくとも一つ以上の項目が許容範囲外であった場合に、不良品であると判断する。
【0028】
また、制御部26は、第1及び第2の温度センサ18a,18bによって検出された樹脂の温度の最大値、最大値に達したときの時間、最大値に達したときに位置センサ20によって検出されたスクリュー12の位置、樹脂がキャビティ16内に射出された後の所定時間帯(例えば2秒から3秒の間)における温度の最大値、該所定時間帯における温度の最小値及び該所定時間帯の温度の平均値の全ての測定値が、品質判別情報25aのそれぞれの項目の許容範囲内である場合に、良品であると判断する。この場合、所定時間帯における温度の最大値、最小値及び平均値に基づいて成形品の良否を判別していることから、温度特性が異なる他の成形材料を用いて射出成形を行う場合でも正確な品質判別処理を行うことができる。さらに、制御部26は、上記項目のうち少なくとも一つ以上の項目が許容範囲外であった場合に、不良品であると判断する。
【0029】
なお、本実施形態では、樹脂の温度及び圧力の各測定値の全てが許容範囲内であるか否かに基づき品質判別処理を行っているが、温度及び圧力それぞれの各測定値のうち少なくとも一つに基づき成形品の良否を判別してもよい。
【0030】
そして、制御部26は、搬送部24を制御して、品質が判別された成形品を収容部(図示省略)に搬送する(ステップS5)。
【0031】
以上のように、キャビティ16内の樹脂の温度及び圧力に基づき成形品の良否が判別されることから、キャビティ16内の樹脂の圧力及び冷却・固化状態に基づき成形品の良否を判別することが可能になる。
【0032】
このように、本実施形態の成形品判別システムによれば、射出成形装置10の金型15のキャビティ16に射出された樹脂の圧力を検出する圧力センサ19と、金型15のキャビティ16に射出された樹脂の温度を検出する温度センサ18a,18bと、圧力センサ19によって検出された樹脂の圧力と、温度センサ18a,18bによって検出された樹脂の温度とに基づいて、該樹脂からなる成形品の良否を判別する制御部26とを備えたので、キャビティ16内の樹脂の圧力及び冷却・固化状態に基づき成形品の良否を判別することができる。従って、ショートショット等の不具合が発生したか否かを容易に判別することができ、成形品の良否判別の精度を向上させることができる。また、キャビティ内の成形材料の圧力及び温度を検出することにより、成形品に外観不良や寸法不良が発生したか否かについても判別することができるという利点がある。
【0033】
また、射出成形装置10のスクリュー12の位置を検出する位置センサ20を備え、制御部26は、圧力センサ19によって検出された樹脂の圧力の最大値、該最大値に達したときの時間、該最大値に達したときに位置センサ20によって検出されたスクリュー12の位置、樹脂がキャビティ16内に射出された後の所定時間帯における圧力の最大値、該所定時間帯における圧力の最小値及び該所定時間内の圧力の平均値の少なくとも一つに基づき、該成形材料からなる成形品の良否を判別するので、樹脂の圧力に関連する様々なパラメータに基づき成形品の良否を判別することができ、成形品の良否判別の精度をより向上させることができる。
【0034】
さらに、射出成形装置10のスクリュー12の位置を検出する位置センサ20を備え、制御部26は、温度センサ18によって検出された樹脂の温度の最大値、該最大値に達したときの時間、該最大値に達したときに位置センサ20によって検出されたスクリュー12の位置、樹脂がキャビティ16内に射出された後の所定時間帯における温度の最大値、該所定時間帯における温度の最小値及び該所定時間内の温度の平均値の少なくとも一つに基づき、該樹脂からなる成形品の良否を判別するので、樹脂の温度に関連する様々なパラメータに基づき成形品の良否を判別することができ、成形品の良否判別の精度をより向上させることができる。
【0035】
さらにまた、圧力センサ19、温度センサ18及び制御部26を射出成形装置10に設けたので、成形品判別システムを射出成形装置10一体で成形品判別システムを実現することができる。
【0036】
なお、上記実施形態は本発明の具体例に過ぎず、本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、圧力センサ19、温度センサ18及び制御部26を射出成形装置10に設けたものを示したが、制御部26が行う成形品の良否判別処理を、射出成形装置10に接続されたパーソナルコンピュータを用いて行ってもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、一つの圧力センサ19と、二つの温度センサ18a,18bとを備えたものを示したが、圧力センサ19及び温度センサ18の数を適宜変更してもよい。さらに、キャビティ16内の任意の位置における成形材料の圧力及び温度を検出可能であれば、圧力センサ19及び温度センサ18の設置位置を適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】射出成形装置の概略構成図
【図2】図1に示した射出成形装置の要部拡大図
【図3】本発明の一実施形態を示す成形品判別システムの制御系構成を示す機能ブロック図
【図4】品質判別情報のデータ構造の一例を示す図
【図5】品質判別を行う場合の制御部の動作を説明するフロー図
【図6】キャビティ内の成形材料の温度特性を示す図
【図7】キャビティ内の成形材料の圧力特性を示す図
【符号の説明】
【0039】
10…射出成形装置、12…スクリュー、15…金型、16…キャビティ、18a…第1の温度センサ、18b…第2の温度センサ、19…圧力センサ、20…位置センサ、26…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置の金型のキャビティに射出された成形材料の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記金型のキャビティに射出された成形材料の温度を検出する温度検出手段と、
圧力検出手段によって検出された成形材料の圧力と、温度検出手段によって検出された成形材料の温度とに基づいて、該成形材料からなる成形品の良否を判別する判別手段とを備えた
ことを特徴とする成形品判別システム。
【請求項2】
前記射出成形装置のスクリューの位置を検出する位置検出手段を備え、
前記判別手段は、前記圧力検出手段によって検出された成形材料の圧力の最大値、該最大値に達したときの時間、該最大値に達したときに位置検出手段によって検出されたスクリューの位置、成形材料が前記キャビティ内に射出された後の所定時間帯における圧力の最大値、該所定時間帯における圧力の最小値及び該所定時間帯の圧力の平均値の少なくとも一つに基づき、該成形材料からなる成形品の良否を判別する
ことを特徴とする請求項1記載の成形品判別システム。
【請求項3】
前記射出成形装置のスクリューの位置を検出する位置検出手段を備え、
前記判別手段は、前記温度検出手段によって検出された成形材料の温度の最大値、該最大値に達したときの時間、該最大値に達したときに位置検出手段によって検出されたスクリューの位置、成形材料が前記キャビティ内に射出された後の所定時間帯における温度の最大値、該所定時間帯における温度の最小値及び該所定時間帯の温度の平均値の少なくとも一つに基づき、該成形材料からなる成形品の良否を判別する
ことを特徴とする請求項1記載の成形品判別システム。
【請求項4】
前記圧力検出手段、温度検出手段及び判別手段を射出成形装置に設けた
ことを特徴とする請求項1記載の成形品判別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−298033(P2009−298033A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155391(P2008−155391)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【Fターム(参考)】