説明

成形装置

【課題】 内部を清浄空気により清浄にしたボックス内で成形機による成形、取り出し機による成形機からの成形品の取り出しなどを行う成形装置であって、成形後の成形品に粉塵等が付着することを効果的に防止することができる成形装置を提供する。
【解決手段】 取り出し機22が配置された自動機室16の天井部の取り出し機上方に、清浄空気を自動機室内に下向流で導入する送風機38を設置する。また、成形機18が設置された成形機室14と自動機室との間の仕切り壁12に、清浄空気の通過口および成形品の搬送口となる開口部42を形成する。さらに、自動機室の外壁に清浄空気が成形品の搬送ラインYを通った後に排出される排気口42、44を設け、成形機室の外壁に清浄空気が成形品の搬送ラインYを通った後に排出される排気口48を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を清浄空気により清浄にしたボックス内で成形機による成形、取り出し機による成形機からの成形品の取り出しなどを行う成形装置に関する。本発明の成形装置は、例えば樹脂レンズの成形などに好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に清浄空気を導入したボックス内で成形を行う成形装置として、特許第2588928号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この特許文献1の成形装置は、モールドプレス装置に対して半導体素子を搬入装置によって搬入し、モールドプレス装置にて半導体素子をモールド成形し、そのモールド成形された成形物を取り出し装置によって取り出すようにした半導体モールド装置であって、上記各装置を全体的に覆うカバーを設け、かつ、このカバー内に各装置を間仕切る仕切り板を設け、半導体搬入装置を収容した部屋に、搬入用扉により開閉される搬入口を設け、この半導体搬入装置を収容した部屋に清浄空気を供給してこの部屋をカバー外部よりも高い圧力状態とするとともに、モールドプレス装置を収容した部屋に外部に連通する排気ダクトを設け、上記仕切り板に半導体素子移送のための開閉可能な移送口を設けたものである。
【0003】
特許文献1の半導体モールド装置は、間仕切りされた各部屋のうち搬入装置が収容された部屋には清浄空気が供給されるから、半導体素子に対する粉塵等の付着防止が図られる。また、半導体素子を各装置間で移送する場合、各部屋が連通状態となるが、搬入装置が収容された部屋には清浄空気が供給されているとともに、モールドプレス装置が収容された部屋には排気ダクトが設置されているので、搬入装置側からモールドプレス装置側へ空気が流れるようになり、モールドプレス装置部分で発生した粉塵等が搬入装置側へ流入することはない。特に、半導体搬入装置を収容した部屋が、カバー外部よりも高い圧力状態となっているので、搬入口を開放して半導体素子を内部へ搬入する際に、この部屋の空気が搬入口から外部へと流れるようになり、外気空気の侵入を防止できるため、モールド装置内の半導体素子の汚染を避けることができる。
【0004】
【特許文献1】特許第2588928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の半導体モールド装置は、半導体搬入装置を収容した部屋に清浄空気を供給して、この部屋をカバー外部よりも高い圧力状態とするものであるため、半導体搬入装置を収容した部屋における半導体素子に対する粉塵等の付着防止は図ることができるものの、モールドプレス装置が収容された部屋および取り出し装置が収容された部屋における成形品に対する粉塵等の付着を十分に防止できるものではなかった。したがって、特許文献1の半導体モールド装置は、成形後に粉塵等が付着することが好ましくない成形品、例えば樹脂レンズ等の成形にはそのまま応用できるものではなかった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、内部を清浄空気により清浄にしたボックス内で成形機による成形、取り出し機による成形機からの成形品の取り出しなどを行う成形装置であって、成形後の成形品に粉塵等が付着することを効果的に防止することができる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述した目的を達成するため、仕切り壁により仕切られた成形機室および自動機室を内部に有するボックスと、前記成形機室に配置された成形機と、前記自動機室に配置された取り出し機とを具備し、前記成形機で成形した成形品を前記取り出し機により前記成形品の移動経路である搬送ラインに沿って前記自動機室に搬送する成形装置であって、前記自動機室の天井部の前記取り出し機上方に清浄空気を前記自動機室内に下向流で導入する送風機を設置し、かつ、前記成形機室と前記自動機室との間の前記仕切り壁に前記清浄空気の通過口および前記成形品の搬送口となる開口部を形成するとともに、前記自動機室の外壁に前記清浄空気が前記自動機室内の前記搬送ラインを通った後に排出される排気口を設け、前記成形機室の外壁に前記清浄空気が前記成形機室内の前記搬送ラインを通った後に排出される排気口を設けたことを特徴とする成形装置を提供する。
【0008】
本発明の成形装置は、送風機によって自動機室内に清浄空気を下向流で導入するとともに、この清浄空気の一部を自動機室内の搬送ラインを通った後に排出し、残部を成形機室内の搬送ラインを通った後に排出する。そのため、自動機室内および成形機室内の搬送ラインは清浄な状態に保持され、その結果、搬送ラインを移動する成形品に粉塵等が付着することが防止される。
【0009】
本発明では、取り出し機により搬送された成形品のゲートを切断するゲートカット機、ゲートカット機によりゲートを切断した成形品をトレイに整列させるピック・アンド・プレイスロボット、およびピック・アンド・プレイスロボットにより成形品を整列させたトレイをマガジンに収納するトレイ搬送機を自動機室に配置し、自動機室の天井部の上記ゲートカット機、ピック・アンド・プレイスロボットおよびトレイ搬送機の上方に清浄空気を自動機室内に下向流で導入する送風機を設置するとともに、自動機室の外壁に清浄空気が取り出し機、ゲートカット機、ピック・アンド・プレイスロボットおよびトレイ搬送機間における成形品の移動経路である搬送ラインを通った後に排出される排気口を設けることができ、これによりボックスから取り出した成形品にボックス外で粉塵等が付着することを防止することができる。ただし、自動機室に配置する自動機の種類は上記に限定されるものではなく、例えばゲートカット機、ピック・アンド・プレイスロボットおよびトレイ搬送機のうちの1つ以上を省略してもよいし、あるいはさらに他の装置を配置してもよい。また、取り出し機の上方に設置する送風機と他の自動機の上方に設置する送風機とは別々にしてもよく、1つの送風機を取り出し機および他の自動機の上方にまたがるように設置してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形装置は、成形機室および自動機室における成形品への粉塵等の付着を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1〜図4は本発明に係る成形装置の一実施形態を示す図であり、図1は正面外壁の一部を省略した状態の正面図、図2は右側面外壁の一部を省略した状態の右側面図、図3は背面外壁の一部を省略した状態の背面図、図4は各機器の配置を示す説明図である。
【0012】
本例の成形装置において、10は四角箱形のボックスを示す。このボックス10の内部には、互いに仕切り壁12により仕切られた成形機室14と自動機室16とが形成されている。また、図示していないが、ボックス10の外壁には、成形機作業扉、自動機作業扉、トレイ取り出し扉などの扉類が適宜設けられているとともに、操作盤が取り付けられている。なお、ボックス10のサイズは、横幅1000mm、奥行き1000mm、高さ1650mmである。
【0013】
成形機室14内には、成形機18が配置されている。成形機18は、金型部20を有し、この金型部20に樹脂を射出して樹脂の成形を行うものである。また、自動機室16内には、自動機として、取り出し機22、ゲートカット機24、ピック・アンド・プレイスロボット26およびトレイ搬送機28が配置されている。取り出し機22は、成形品搬送部32を有し、この成形品搬送部32の動作によって成形機18で成形した成形品を成形機18の金型部20から自動機室16に搬送するものである。ゲートカット機24は、取り出し機22により自動機室16に搬送した成形品のゲートを切断するものである。ピック・アンド・プレイスロボット26は、ゲートカット機24によりゲートを切断した成形品をトレイ搬送機28上のトレイに整列させるものである。トレイ搬送機28は、ピック・アンド・プレイスロボット26により成形品を整列させたトレイをマガジンに収納するものである。本例の装置では、成形品が成形機18の金型部20から取り出し機22、ゲートカット機24、ピック・アンド・プレイスロボット26およびトレイ搬送機28に順次ほぼ水平な経路に添って搬送されるようになっており、本明細書ではこの成形品の移動経路を搬送ライン(図1〜3において符号Yで示す)と言う。
【0014】
本例の成形装置では、自動機室16内の取り出し機22、ゲートカット機24、ピック・アンド・プレイスロボット26およびトレイ搬送機28の上方に空間部34が形成されているとともに、自動機室16の天井部36の取り出し機22、ゲートカット機24、ピック・アンド・プレイスロボット26およびトレイ搬送機28の上方に第1の送風機38および第2の送風機40が設置されている。送風機38、40は、いずれもHEPAフィルタ付きの送風機ユニットであり、清浄空気(図中矢印で示す)を自動機室16内に下向流で導入するものである。
【0015】
本例の成形装置において、成形機室14と自動機室16との間の仕切り壁12には、送風機38、40により導入された清浄空気の通過口および成形品の搬送口となる四角形の開口部42が形成されている。また、自動機室16の正面外壁、側面外壁および背面外壁には、送風機38、40により導入された清浄空気が自動機室16内の搬送ラインYを通った後に排出される略長方形状の排気口42、44、46がそれぞれ設けられている。さらに、成形機室14の側面外壁には、開口部42を通って成形機室14内に流入した清浄空気が成形機室14内の搬送ラインYを通った後に排出されるスリット状の排気口48が設けられている。
【0016】
本例の成形装置では、送風機38、40により清浄空気を自動機室16内に下向流で導入しつつ、成形機18による成形品の成形、取り出し機22による成形品の搬送、ゲートカット機24による成形品のゲートの切断、ピック・アンド・プレイスロボット26による成形品のトレイへの整列、およびトレイ搬送機28によるマガジンへのトレイの収納を行う。
【0017】
このとき、送風機38、40により導入された清浄空気は、図中矢印で示すように、自動機室16内において、乱流を生じさせることなく整流として静かに上から下に向けて流れ、自動機室16内の搬送ラインYを通った後、排気口42、44、46から排出される。また、成形機室14内に流入した清浄空気は、成形機室14内を乱流を生じさせることなく整流として静かに横方向に流れ、成形機室14内の搬送ラインYを通った後、排気口48から排出される。
【0018】
そのため、成形機室14内および自動機室16内の搬送ラインY、すなわち成形品が移動する経路は清浄空気により粉塵等がほぼ存在しないクリーンな状態に保たれ、その結果、成形機18により成形された成形品に粉塵等が付着することが良好に防止される。
【0019】
この場合、本例の成形装置では、送風機38、40と搬送ラインYとの距離をできるだけ短くし、きれいな空気ができるだけ汚染されることなく搬送ラインYを通るようにすることが好ましい。また、各機器の駆動部を搬送ラインYより下方に設置し、駆動部を経て汚れた空気を排気口から排出する構造とすることが好ましく、これにより駆動部で発生する粉塵等による搬送ラインの汚染を防止することができる。さらに、成形機室14内に流入した清浄空気が横方向に流れて直接金型部20に接触し、金型部20を経て汚れた空気を排気口から排出する構造とすることが好ましく、これにより金型部で発生する粉塵等による搬送ラインの汚染を防止することができる。
【0020】
また、本発明では、自動機室16内の自動機上方の空間部34には、できるだけ駆動部や部材を設置しないことが、清浄空気の整流状態を維持する点で好ましい。しかし、図5に示すように、自動機上方の空間部34に駆動部や部材50を設置する必要がある場合は、清浄空気の整流状態を維持するための整流板52を自動機室16に配置することが適当である。整流板は、清浄空気の整流状態を維持することができればどのようなものであってもよい。
【実施例】
【0021】
送風機38、40により清浄空気を自動機室16内に下向流で導入しつつ、図1〜3で示したボックス10内のA〜Kの各位置における清浄度を測定した。この場合、成形機および各自動機は作動させない状態で測定を行った。清浄度の測定は、A〜Kの各位置における粉塵等が、粒径0.5μmの粉塵等が1ft内に何個あるかに換算した測定を行った。また、成形機および各自動機を作動させた状態で、J、Kの各位置において同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果より、成形機および自動機を作動させない状態では、ボックス内の全ての測定点において、粉塵数は300個/1ft以下(クラス300以下)であることがわかる。また、成形機および自動機を作動させた状態では、成形機室の金型部前後において、粉塵数は300個/1ft以下(クラス1000以下)であることがわかる。したがって、本実験により、本発明の成形機によれば、成形機室内および自動機室内が非常に清浄な状態に保たれることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る成形装置の一実施形態を示すもので、正面外壁の一部を省略した状態の正面図である。
【図2】図1の成形装置の右側面外壁の一部を省略した状態の右側面図である。
【図3】図1の成形装置の背面外壁の一部を省略した状態の背面図である。
【図4】図1の成形装置の各機器の配置を示す説明図である。
【図5】自動機室に整流板を配置した例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り壁により仕切られた成形機室および自動機室を内部に有するボックスと、前記成形機室に配置された成形機と、前記自動機室に配置された取り出し機とを具備し、前記成形機で成形した成形品を前記取り出し機により前記成形品の移動経路である搬送ラインに沿って前記自動機室に搬送する成形装置であって、前記自動機室の天井部の前記取り出し機上方に清浄空気を前記自動機室内に下向流で導入する送風機を設置し、かつ、前記成形機室と前記自動機室との間の前記仕切り壁に前記清浄空気の通過口および前記成形品の搬送口となる開口部を形成するとともに、前記自動機室の外壁に前記清浄空気が前記自動機室内の前記搬送ラインを通った後に排出される排気口を設け、前記成形機室の外壁に前記清浄空気が前記成形機室内の前記搬送ラインを通った後に排出される排気口を設けたことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記取り出し機により搬送された前記成形品のゲートを切断するゲートカット機、前記ゲートカット機によりゲートを切断した成形品をトレイに整列させるピック・アンド・プレイスロボット、および前記ピック・アンド・プレイスロボットにより成形品を整列させたトレイをマガジンに収納するトレイ搬送機を前記自動機室に配置し、前記自動機室の天井部の前記ゲートカット機、前記ピック・アンド・プレイスロボットおよび前記トレイ搬送機の上方に清浄空気を前記自動機室内に下向流で導入する送風機を設置するとともに、前記自動機室の外壁に前記清浄空気が前記取り出し機、前記ゲートカット機、前記ピック・アンド・プレイスロボットおよび前記トレイ搬送機間における成形品の移動経路である搬送ラインを通った後に排出される排気口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記仕切り壁の開口部を通って前記自動機室から前記成形機室に入った前記清浄空気が前記成形機室内を横方向に流れた後に前記成形機室の外壁に設けられた排気口から排出されることを特徴とする請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記清浄空気の整流状態を維持するための整流板を前記自動機室に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
前記送風機はHEPAフィルタ付きの送風機ユニットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−159494(P2006−159494A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351210(P2004−351210)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】