説明

成膜装置及び半導体装置の製造方法

【課題】膜厚を確保することが可能な成膜装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる成膜装置は溝を有する基板に液体材料を供給して前記溝内に前記液体材料を埋め込み、液層を形成する塗布部と、前記溶液層を乾燥させて固化する乾燥部と、前記乾燥中に前記液層の表面に蒸気を照射する蒸気供給部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、成膜装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の分野などでは、微細な素子間のアイソレーションのために、STI(Shallow Trench Isolation)構造が広く用いられている。STI構造のプロセスは、基板の表面にトレンチを形成する工程と、基板上に溶液を塗布することによりトレンチ内に溶液を埋め込む工程と、溶液を乾燥により固化して膜に変える工程と、を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007―27697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥時には体積収縮が生じ、溝部分の膜に凹みが生じる。このため、例えば特に溝肩部などにおいて膜厚が薄くなり、所望の膜厚を確保することが困難となる。
【0005】
実施形態では、所望の膜厚を確保できる成膜装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる成膜装置は、溝を有する基板に液体材料を供給して前記溝内に前記液体材料を埋め込み、液層を形成する塗布部と、前記溶液層を乾燥させて固化する乾燥部と、前記乾燥中に前記液層の表面に蒸気を照射する蒸気供給部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態にかかる成膜装置における塗布装置を示す説明図。
【図2】同成膜装置における乾燥装置を示す説明図。
【図3】同実施形態にかかる成膜方法のフローを示す工程図。
【図4】同実施形態にかかる塗布前後における基板の状態を示す説明図。
【図5】同実施形態にかかる乾燥前後における基板の状態を示す説明図。
【図6】第2実施形態にかかる成膜装置における乾燥装置を示す説明図。
【図7】第3実施形態にかかる成膜装置における乾燥装置を示す説明図。
【図8】成膜方法の一例における乾燥前後における基板の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態かかる成膜装置及び半導体装置の製造方法について図1乃至図4を参照して説明する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。本実施形態にかかる半導体装置の製造方法は、トレンチ101aを有する基板101上に絶縁膜を形成する成膜方法を備える。この実施形態では前処理工程で複数のトレンチ101a(溝)が形成された半導体基板101上に、絶縁膜として絶縁材料を塗布して溝を埋め込み形成する場合について説明する。
【0009】
図1および図2に示すように、成膜装置1は、塗布装置10と、乾燥装置20と、これらの装置10,20に接続されて各部の動作を制御する制御部30と、を備えている。
【0010】
図1に示す塗布装置10は、塗布チャンバ11と、チャンバ11内において基板101を回転可能に支持するステージ12と、ステージ12上に対向配置されるノズル13aを有する塗布ヘッド13(塗布部)と、を有している。
【0011】
図2に示す乾燥装置20は、乾燥チャンバ21と、チャンバ21内において基板101を支持する支持部22と、支持部22に埋め込まれて基板101を加熱乾燥するヒータ23(乾燥部)と、乾燥中に溶媒蒸気103を供給する蒸気供給ヘッド24(蒸気供給部)と、蒸気の範囲を規制するためのドーム型のルーフ25と、を備えている。
【0012】
この乾燥装置20では、支持部22上に基板101を設置した状態で、ヒータ23により乾燥を行うとともに、蒸気供給ヘッド24から溶媒蒸気を噴射して乾燥時の液層102表面の流動性を改善する。
【0013】
以下、図3を参照して本実施形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。成膜方法は、図3に示すように、塗布工程と、流動性改善工程と、乾燥工程と、を含んでいる。前処理段階として予め基板101の表面に複数のトレンチ101aが形成されている。トレンチ101aは例えば所定のパターンで形成された溝である。
【0014】
塗布工程では、図4に示すように、基板101上に液体材料102aを塗布して液層102を形成するとともにトレンチ101a内を液体材料102aで埋め込む。
【0015】
塗布工程は図1に示す塗布装置10において、ステージ12上に基板101を設置した状態で、塗布ヘッド13の塗布ノズル13aから液体材料を吐出した後、ステージ12を回転軸C1を中心として回転させることにより基板101上に液体材料102aを供給し、基板101上に液層102を形成する。
【0016】
この塗布工程により、基板101上に液体材料102aで構成される液層102が形成されるとともに、トレンチ101a内に液体材料102aが埋め込まれる。塗布工程後に基板101は乾燥装置20に送られ、乾燥工程及び流動改善工程が行われる。
【0017】
まず、塗布工程の直後に流動性改善工程として、本実施形態では基板101上の液層102表面に溶媒蒸気を噴射する溶媒蒸気噴射工程を行う。溶媒は液体材料102aに溶けやすい溶媒を用いる。例えば絶縁材料の溶媒としてγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンなどがあげられる。
【0018】
溶媒蒸気噴射工程は図2に示す乾燥装置20において、支持部22上に基板101を設置した状態で、蒸気供給ヘッド24のノズルから溶媒蒸気を液層102の表面に噴射することにより液層102の表面において流動性を改善させる。このとき、支持部22を回転軸C2を中心として回転させることにより液層102上に均一に蒸気を供給することができる。
【0019】
また、図5に示すように、溶媒蒸気噴射工程を行いながら、加熱工程として、乾燥装置20のヒータ23を作動させ、基板101を加熱することにより液体材料102aを固化する。このとき制御部30の制御によりヒータ23の温度を段階的に変化させる。例えばはじめは低温加熱とし、段階的に高温に変化させるように制御する。このように低温から高温へ段階的に温度を変えて乾燥することにより溶剤の揮発速度を遅らせることで、体積収縮時に薄膜部分が形成されにくくなる。
【0020】
乾燥中に溶媒蒸気噴射により、液層102の表面102bにおいて、液体材料102aの濃度が低下し、粘性が低下する。このため液層102の表面102bの部分で流動性が高まり、表面102bは固化しにくい状態となる。乾燥中にこの溶媒蒸気噴射工程により液層102の乾燥速度を表面において低下させることで、液層102は内側(下側)の部分から固化していくことになる。
【0021】
この乾燥工程及び流動改善工程により、図5に示すように、液体材料102aが固化し、絶縁材料の膜104が成膜される。このとき、加熱乾燥に伴い液体材料102aが揮発し、体積収縮が生じる。体積収縮により、トレンチ101aでは膜104の表面104aに凹み104bが形成される場合があるが、溶媒蒸気噴射を行うことにより、表面の液体材料が流動しながら乾燥することにより、膜厚の均整化が図れる。このため、先に表面から固化する場合に比べ、材料が均整化しながら固化するため、特に薄膜化しやすいトレンチ101aの溝肩部101cにおいても厚みが確保でき、薄膜部分が形成されにくくなる。さらに基板101を回転させながら流動性改善工程及び乾燥工程を行うことで蒸気を均一に供給し、乾燥速度も均一となる。
【0022】
図8に比較対象例として、トレンチ201aを有する基板201に液体材料202を塗布する塗布工程後に、流動改善工程を行わずに、乾燥工程を行った場合の基板201の状態を示す。この場合には、液層202aの表面における流動性が低いため、乾燥工程において速い段階で液層202の表面から固化する。このため乾燥後成膜される酸化膜204の表面には図5に示す本実施形態の凹み104bよりも深い(大きい)凹み204bが形成され、特に段差となる溝肩部201cでは膜厚が薄くなる。
【0023】
本実施形態にかかる成膜装置及び半導体装置の製造方法(成膜方法)によれば、溶媒蒸気噴射工程により流動性を改善しながら乾燥を行うことにより、乾燥時の体積収縮を制御してレべリングを行い、表面を凹みにくくすることで、膜厚を確保することが可能となる。特に薄膜化しやすいトレンチ101aの溝肩部101cなどの段差部分においても膜厚を確保できるため、絶縁不良等の不都合を回避できる。このため、過量に液体材料102aを塗布する必要がなくなる。
【0024】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態にかかる成膜装置及び半導体装置の製造方法(成膜方法)について図6を参照して説明する。第2実施形態では、流動性改善工程として、蒸気噴射の代わりに音波照射ヘッド26(音波照射部)にて音波照射を行う工程以外については第1実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0025】
第2実施形態にかかる成膜装置1は、図6に示すように、乾燥装置20のチャンバ21内に、音波照射ヘッド26を備えている。この乾燥装置20では、支持部22上に基板101を設置した状態で、ヒータ23により乾燥を行うとともに、音波照射ヘッド26から音波を液層102の表面に照射することで乾燥時の液層102表面の流動性を改善する。
【0026】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、体積収縮により、トレンチ101aでは膜104の表面104aに凹み104bが形成される場合があるが、音波照射を行うことにより、表面の液体材料が流動しながら乾燥することにより、膜厚の均整化が図れる。このため、先に表面から固化する場合に比べ、材料が均整化しながら固化するため、特に薄膜化しやすいトレンチ101aの溝肩部101cにおいても厚みが確保でき、薄膜部分が形成されにくくなる。さらに基板101を回転させながら流動性改善工程及び乾燥工程を行うことで音波を均一に供給するとともに遠心力により液体材料102aが均整化される。
【0027】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態にかかる成膜装置及び半導体装置の製造方法(成膜方法)について図7を参照して説明する。第3実施形態では、流動性改善工程として、蒸気噴射の代わりに均し装置27(均整部)により液層102の表面の均整化を行う点以外については第1実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0028】
第3実施形態にかかる成膜装置1は、図7に示すように、乾燥装置20のチャンバ21内に、均し装置27を備えている。均し装置27はブレード27aを備え、このブレード27aを液層102の表面に押し付けながら基板101を回転軸C2を中心に回転させる。なお、均し装置27側を回転させてもよい。この乾燥装置20では、支持部22上に基板101を設置した状態で、ヒータ23により乾燥を行うとともに、ブレード27aを液層102の表面に押し付けながら相対的に回転(相対移動)させることによりブレード27a及び回転による遠心力により液体材料102aを均整化することができる。
【0029】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、体積収縮により、トレンチ101aでは膜104の表面104aに凹み104bが形成される場合があるが、均し装置27により均整化を行うことにより、表面の液体材料が流動しながら乾燥することにより、膜厚の均整化が図れる。このため、先に表面から固化する場合に比べ、材料が均整化しながら固化するため、特に薄膜化しやすいトレンチ101aの溝肩部101cにおいても厚みが確保でき、薄膜部分が形成されにくくなる。さらに基板101を回転させながら流動性改善工程及び乾燥工程を行うことで遠心力により液体材料102aを均整化することができる。
【0030】
なお本発明は上記実施形態に限られるものではなく、変形して実施可能である。例えば上記各実施形態においては乾燥装置20として加熱乾燥を行う例を示したが、これに限られるものではなく、例えば減圧乾燥により乾燥することとしてもよい。この場合にも減圧レベルを段階的に上げるように制御することにより乾燥速度を遅らせて表面固化速度を制御することにより凹みを小さくすることができ、膜厚を確保することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…成膜装置、10…塗布装置、11…塗布チャンバ、12…ステージ、13a…ノズル
13…塗布ヘッド(塗布部)、20…乾燥装置、21…乾燥チャンバ、22…支持部、23…ヒータ(乾燥部)、24…蒸気供給ヘッド(蒸気供給部)、25…ルーフ、26…音波照射ヘッド(音波照射部)、27…均し装置(均整部)、27a…ブレード、30…制御部、101a…トレンチ、101…半導体基板、101c…溝肩部、102…液層、102a…液体材料、102b…表面、103…溶媒蒸気、104…絶縁膜、104a…表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を有する基板に液体材料を供給して前記溝内に前記液体材料を埋め込み、液層を形成する塗布部と、
前記溶液層を乾燥させて固化する乾燥部と、
前記乾燥中に前記液層の表面に蒸気を照射する蒸気供給部と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
溝を有する基板に液体材料を供給して前記溝内に前記液体材料を埋め込み、液層を形成する塗布部と、
前記液層を乾燥させて固化する乾燥部と、
前記乾燥中に前記液層の表面に音波を照射する音波照射部と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
溝を有する基板に液体材料を供給して前記溝内に前記液体材料を埋め込み、液層を形成する塗布部と、
前記液層を乾燥させて固化する乾燥部と、
前記乾燥中に前記液層の表面に当接して相対移動することにより前記表面を均整化する均整部と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
前記乾燥は、段階的に温度を変化させながら加熱により乾燥することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の成膜装置。
【請求項5】
溝を有する基板に液体材料を塗布して前記溝内に前記液体材料を埋め込み前記基板上に液層を形成し、
前記液層を乾燥させて固化するとともに、前記乾燥中に前記液層の表面に蒸気を照射して前記液層の流動性を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69952(P2013−69952A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208428(P2011−208428)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】