説明

振動減衰装置用のゴム配合物

【課題】実質的にゲルを含まないゴム配合物を提供する。
【解決手段】実質的にゲルを含まない配合物であって、少なくとも1つのC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマー又はβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、及び少なくとも1つの連鎖移動剤から得られる繰り返し単位を含む少なくとも1つのエラストマーポリマー、並びに少なくとも1つのフィラーおよび過酸化物加硫系を含む配合物を提供する。また、機械装置で生じる振動を減衰及び/又は遮断するのに有用な、前記過酸化物加硫性配合物を含む加硫ゴム・パーツを提供する。また、熱及び/又は振動を生じる動的手段、並びに動的手段を支持し、動的手段に接続された静的構造体を含み、且つ、前記加硫ゴム・パーツが動的手段と静的構造物との間で接続点にて挿入されている機械装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械装置から生じる振動を減衰させる及び/又は遮断するのに有用な物品に関し、当該物品は、実質的にゲルを含まないブチルポリマーを含む、少なくとも1つの過酸化物加硫性(または硬化性)配合物を含む。別の要旨において、本発明は、少なくとも1つのイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤に由来する繰り返し単位、少なくとも1つのフィラー、および過酸化物加硫系を有する少なくとも1つのポリマーを含む、実質的にゲルを含まない配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、トラックまたはジェットエンジンのような機械、コンプレッサ、および工業用エアーコンディショナー、自動車の排気システム、およびそれに類似する動的(または動力)装置は、作動中、かなりの振動を生じさせる。この振動は、動的装置が取り付けられ又は組み合わされている支持構造物(例えば、自動車または飛行機のフレーム、コンプレッサのフレーム、または床もしくは屋根)に直接的に伝えられる。作動中の動的装置から関連する支持構造物への振動の伝達を最小限にするために、即ち、振動を遮断する(または防止もしくは絶縁する)ために、振動減衰および/または遮断(もしくは防止もしくは絶縁)手段を動的装置と関連する支持構造物との間に介在させることが一般的である。そのような振動減衰および/または遮断手段の例は、エンジンを関連する自動車またはトラックのフレームにボルト締めするために用いられるブラケット同士の間に配置される、振動吸収性のエラストマーから成る自動車またはトラックのエンジンマウント、排気管ハンガー、エアーコンディショナーまたはコンプレッサとフレームまたは床等との間に挿入されるパッド等であり得る。
【0003】
振動の減衰が重要である別の領域は、電子工業(例えば、音響装置、コンピュータ関連装置およびゲーム装置)に存する。モータを備えた装置からの振動は、しばしば可聴のノイズとして物体からしばしば放出され、また、潜在的に性能を低下させ、あるいは機器にダメージを与える。多くのポータブル電子機器、CDドライブ、および車両に搭載される電子機器は、特に振動および衝撃に対して敏感であり、そのエネルギーから遮断されて適正な性能を確保する必要がある。
【0004】
遮断(または絶縁)マウントは、1つの物体から別の物体へのエネルギーの伝達を、それらの間に弾性結合を設けることによって減少させる。しかし、ある用途に関して不適切なマウントを選択すると、実際には問題がより悪化し得る。不適切なマウントは、高周波数の振動を減少させるかもしれないが、実際には、励起振動は、低い周波数の共鳴条件によって増幅し得る。衝撃の間、当該マウントは反響によって、エネルギの幾らかを偏向させ、且つ戻す。このエネルギーの戻りを防止すると、製品寿命を長くすることができ、また、CDドライブにおけるスキッピング(または読み飛ばし)およびハード・ドライブにおける読み出し/書き込みエラーのような性能上の問題が防止され得る。
【0005】
ダンピング(または制振性)を弾性マウントに加えることは、そのレスポンスを大きく向上させる。ダンピングは、エネルギーの一部を低級の熱に変換することによって、共鳴振動の増幅を減少させる。ダンピングはまた、衝突の際の衝撃エネルギーを分散させる。
【0006】
当該分野で知られている振動減衰(もしくは制振)および/または遮断材料には、加硫ゴムで作製された、様々な形状(例えば、正方形、長方形、または円筒形)の加硫物が含まれる。これらの振動減衰および/または遮断装置は、中実のゴム、発泡ゴム、または流体を含有する空洞(キャビティ)を封入した中実のゴムであり得る。そのような用途で使用されてきた適当なゴムには、ハロゲン化された又はハロゲン化されていないブチルゴム、天然ゴム、ブタジエンの合成エラストマーポリマーおよびコポリマーである。
【0007】
ブチルゴムの高い振動減衰性能は、周知であり、利用されている。ゴムの高分子鎖に沿った多数のメチル基は、互いに機械的に干渉し、分子が反応して変形する速度を低下させる。
【0008】
その用途の多くにおいて、ブチルゴムは加硫した配合物の形態で使用される。ブチルゴムに通常使用される加硫系には、硫黄、キノイド、樹脂、硫黄供与体、および低硫黄高性能加硫促進剤が含まれる。しかし、配合物中の硫黄の残渣は、例えば、当該配合物と接触するパーツの腐食を促進する等、望ましくない場合がしばしばある。
【0009】
好ましい加硫系は、過酸化物をベースとする。それは、これが有害な残留物を含まない物品を生成することによる。加えて、過酸化物加硫した配合物は、硫黄加硫した配合物と比較して、より高い耐熱性を与える。例えば、モデムエンジンと組み合わされるエンジンマウントは、現在のおよび予期される自動車規格を満たすために、1000〜5000時間の範囲内にある時間中、動的特性が有意に損失することなく、150℃という高い温度に耐える必要がある(米国特許第6197885−B1号明細書(特許文献1)、および米国特許第5904220号明細書(特許文献2)参照)。尤も、硫黄加硫されたブチルゴム系は、120℃までの熱安定性を有するのに対し、過酸化物加硫したブチル系ポリマーについては150℃であることが知られている(例えば、日本国特開平6−172547号公報(特許文献3)参照)。
【0010】
過酸化物が常套的なブチルゴムの架橋および加硫のために使用される場合、ゴムの主鎖が分解され、十分に加硫された製品が得られない。別法として、予備架橋されたブチルゴム(例えば、市販のバイエル(Bayer:登録商標)XL−10000(または以前のXL−20およびXL−50)を過酸化物で架橋することができる。例えば、ウォーカー(Walker)らの「ジャーナル・オブ・ザ・インスティチュート・オブ・ザ・ラバー・インダストリー(Journal of the Institute of the Rubber Industry)」8(2)、1974年、64〜68頁(非特許文献1)を参照されたい。この特別なゴムは、重合段階において部分的にジビニルベンゼンで架橋され、重合段階はカチオン性メカニズムによって進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6197885(B1)号明細書
【特許文献2】米国特許第5904220号明細書
【特許文献3】特開平6−172547号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ウォーカー(Walker)ら、ジャーナル・オブ・ザ・インスティチュート・オブ・ザ・ラバー・インダストリー(Journal of the Institute of the Rubber Industry)、8(2)、1974年、p.64〜68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記市販されている予備架橋されたポリマーは、それらが今日使用される多くの用途において優れた特性を示すが、それは少なくとも50重量%のゲル含有量を有し、ゲルは、加硫の間に通常用いられるフィラーおよび硬化剤の均一な分散を時には困難にする。これは、ゴム物品において加硫不足(アンダーキュアー)および過加硫(オーバーキュアー)の領域が生じる可能性を高くし、その物理的特性を劣ったものとし、また予測できないものにする。また、このゴムのムーニー粘度は高く、通常60〜70単位ML(1+8、125℃)であり、この高い粘度のために、特に混合およびシート化段階において、加工が相当困難となることがある。この問題を克服するために、加工性を向上させるポリマーがしばしば予備架橋されたブチルゴムに添加される。そのようなポリマーは、ゴム組成物の混合または混練特性を向上させるのに特に有用である。それらには、天然ゴム、合成ゴム(例えば、IR、BR、SBR、CR、NBR、IIR、EPM、EPDM、アクリルゴム、EVA、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム)および熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン、オレフィン、塩化ビニル、エステル、アミド、およびウレタン系のエラストマー)が含まれる。これらの加工性を向上させるポリマーは、部分的に架橋されたブチルゴム100重量部につき、100重量部まで、好ましくは50重量部まで、最も好ましくは30重量部までの量で使用され得る。しかし、他のゴムが存在すると、ブチルゴムの前記好ましい特性が弱められる。
【0014】
ある特別な用途においては、非常に硬度の低い制振材料を有することが望ましい。物品の硬度を低下させるために、パラフィンプロセスオイルのようなエキステンダー成分が大量に(50〜200部)、調合物に添加される。エキステンダーの制振特性は、ゴム自体のそれほど良好ではなく、あるいはエキステンダーはそれ自身の望ましくない特性を最終製品にもたらす(例えば、オイルの浸出)。
【0015】
出願中のカナダ特許出願CA−2316741は、イソブチレン、イソプレン、ジビニルベンゼン(DVB)、およびジイソブチレンのような連鎖移動剤から成るポリマーを開示しており、このポリマーは実質的にゲルを含まず、向上した加工性を有する。しかし、この出願は、過酸化物加硫および制振特性については言及していない。
【0016】
本発明で用いられるゴムは、非常に低いムーニー粘度(10単位よりも低い)および非常に高い溶解性を示し、全体として可溶性の材料を含む。これらの特性のために、その加工性は市販されている予備架橋されたブチルポリマー(ML約60〜70単位、溶解性<50重量%)と比較して、向上している。同時に、連鎖移動剤により改質(または変性)された、このゴムは、過酸化物加硫性であり、配合物に硫黄加硫系よりも優れている過酸化物加硫系の利点を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
a.少なくとも1つのエラストマーポリマーであって、少なくとも1つのC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤から得られる(または誘導される)繰り返し単位を含み、還流下で沸騰しているシクロヘキサンに60分以内に溶解しない固形分を15重量%未満含むポリマー、
b.少なくとも1つのフィラー、および
c.過酸化物加硫(または硬化)系
を含む配合物を提供する。
【0018】
本発明の別の要旨は、機械装置で生じた振動を減衰させる及び/または遮断(もしくは絶縁)するのに有用な加硫ゴム・パーツであって、実質的にゲルを含まない過酸化物加硫性の配合物を含むパーツである。
【0019】
本発明の更に別の要旨は、熱および/または振動を生じる動的手段および当該動的手段を支持し、当該動的手段に接続されている静的構造物を含み、前記実質的にゲルを含まない過酸化物加硫性配合物を含む加硫ゴム・パーツが当該動的手段と当該静的構造物との間の接続ポイント(または接続点)に挿入されている機械装置である。
【0020】
本発明の更に別の要旨は、前記実質的にゲルを含まない過酸化物加硫性配合物を含むモータまたはエンジンマウントである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明はブチルゴムポリマーに関する。用語「ブチルゴム」、「ブチルポリマー」および「ブチルゴムポリマー」は、本明細書を通じて相互に同じ意味で使用される。ブチルゴムの使用に関する、従来の技術は、C〜CのイソモノオレフィンモノマーとC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネンとを含むモノマー混合物を反応させることにより調製されるポリマーに言及しているのに対し、本発明は、少なくとも1つのC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤から得られる繰り返し単位を含むエラストマーポリマーに特に関する。本発明のブチルポリマーは、ハロゲン化されていてよく、または非ハロゲン化のものであってよい。
【0022】
本発明に関連して、「実質的にゲルを含まない」という用語は、還流下で沸騰しているシクロヘキサンに60分以内に溶解しない固形分を15重量%未満、好ましくは10重量%未満、特には5重量%未満含むポリマーを意味するものと理解される。
【0023】
本発明は、いずれかの特定のC〜Cのイソモノオレフィンモノマーに限定されない。好ましいC〜Cのモノオレフィンは、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびそれらの混合物である。最も好ましいC〜Cのイソモノオレフィンモノマーは、イソブチレンである。
【0024】
さらに、本発明はいずれかの特定のC〜C14のマルチオレフィンに限定されない。しかしながら、共役または非共役のC〜C14のジオレフィンが特に有用である。好ましいC〜C14のマルチオレフィンモノマーは、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリレン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−へプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエン、またはそれらの混合物である。最も好ましいC〜C14のマルチオレフィンモノマーは、イソプレンである。
【0025】
さらに、本発明はいずれかの特定のマルチオレフィン架橋剤に限定されない。好ましくは、マルチオレフィン架橋剤は、マルチオレフィンの炭化水素化合物である。これらの例は、ノルボルナジエン、2−イソプロペニルノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1,3,5−ヘキサトリエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、または上述の化合物のC〜C20のアルキル置換誘導体である。より好ましくは、マルチオレフィン架橋剤は、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、またはこれらの化合物のC〜C20のアルキル置換誘導体である。最も好ましくは、マルチオレフィン架橋剤は、ジビニルベンゼンまたはジイソプロペニルベンゼンである。
【0026】
当業者に明らかであるように、好ましいマルチオレフィンモノマーとマルチオレフィン架橋剤の化学式は重なっている。当業者は、これらの化合物の違いは、機能的な違いであることを理解するであろう。モノマーは1つのディメンション(または次元)において鎖を増やしやすいのに対し、架橋剤はむしろ2つまたはそれ以上の鎖と反応しやすいであろう。化合物が所与の条件下で、架橋剤として反応するか、あるいはモノマーとして反応するかどうかは、非常に限定された予備試験を通じて、容易に、間違えることなく、且つ直接的に知ることができる。架橋剤の濃度の増加が、直接的に関連するポリマー中の架橋密度の増加をもたらすであろうのに対し、モノマー濃度の増加は、同じやり方において、通常、架橋密度に影響を及ぼさない。好ましいマルチオレフィンモノマーは、反応混合物において5モル%までの量で存在する場合には、架橋をもたらさない。
【0027】
さらに、本発明は、いずれかの特定の連鎖移動剤に限定されない。尤も、連鎖移動剤は好ましくは強い連鎖移動剤である必要がある。即ち、それは、成長しているポリマー鎖と反応して、その更なる成長を停止させ、引き続き新しいポリマー鎖を開始させ得るものでなければならない。連鎖移動剤の種類および量は、架橋剤の量によって決まる。架橋剤の濃度が低い場合には、少量の連鎖移動剤および/または弱い連鎖移動剤を採用し得る。尤も、架橋剤の濃度が増加するほど、連鎖移動剤の濃度を高くする、ならびに/またはより強い連鎖移動剤を選択する必要がある。弱い連鎖移動剤の使用は、連鎖移動剤の量が多すぎると溶媒混合物の極性が減少し得、またプロセスが不経済なものとなることがあるために、避けることが好ましい。連鎖移動剤の強さは、一般的に行なわれているように決定してよい。例えば、ジェイ・マクロモル・サイエンス・ケミストリー(J. Macromol. Sci.-Chem.,)A1(6)、995〜1004頁(1967)を参照されたい。移動定数と呼ばれる数がその強さを表す。この論文において公表された値によれば、1−ブテンの移動定数は0である。連鎖移動剤は、好ましくは少なくとも10の移動定数を有し、より好ましくは少なくとも50の移動定数を有する。有用な連鎖移動剤の非限定的な例は、ピペリレン、1−メチルシクロヘプテン、1−メチル−1−シクロペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、インデン、およびそれらの混合物である。最も好ましい連鎖移動剤は、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンである。
【0028】
好ましくは、重合化されるモノマー混合物は、65重量%〜98.98重量%の範囲内にある少なくとも1つのC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、1.0重量%〜20重量%の範囲内にある少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、0.01重量%〜15重量%の範囲内にある多機能架橋剤、および0.01重量%〜10重量%の範囲内にある連鎖移動剤を含む。より好ましくは、モノマー混合物は、70重量%〜98.89重量%の範囲内にあるC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、1.0重量%〜10重量%の範囲内にあるC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、0.05重量%〜10重量%の範囲内にある多機能架橋剤、および0.05重量%〜10重量%の範囲内にある連鎖移動剤を含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、85重量%〜98.85重量%の範囲内にあるC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、1.0重量%〜5重量%の範囲内にあるC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、0.1重量%〜5重量%の範囲内にある多機能架橋剤、および0.05重量%〜5重量%の範囲内にある連鎖移動剤を含む。当業者には、すべてのモノマーの合計が100重量%になることは明らかであろう。
【0029】
モノマー混合物は、1または複数の追加の重合可能なコモノマーを少量含んでよい。例えば、モノマー混合物は、少量のスチレンモノマーを含んでよい。好ましいスチレンモノマーは、p−メチルスチレン、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレン、インデン(インデン誘導体を含む)、およびそれらの混合物である。それが存在する場合には、スチレンモノマーを、モノマー混合物の5.0重量%までの量で使用することが好ましい。それに応じて、1もしくは複数のC〜Cのイソモノオレフィンモノマーならびに/あるいは1もしくは複数のC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネンの値は、再度トータルで100重量%になるように調節しなければならないであろう。
【0030】
モノマー混合物においてさらに他のモノマーを使用することは、当然のことながら、それらがモノマー混合物において当該他のモノマーと共重合可能であるかぎりにおいて、可能である。
【0031】
本発明は、モノマー混合物を調製/重合する特別な方法に限定されない。この種の重合反応は当業者に周知であり、通常、上述した反応混合物を触媒系と接触させることを含む。好ましくは、重合反応はブチルポリマーの製造において常套的である温度、例えば、−100℃〜+50℃の範囲内にある温度にて実施される。ポリマーは、溶液重合またはスラリー重合法により製造してよい。重合(ポリメリゼーション)は、好ましくは懸濁液にて実施される(スラリー法)。例えば、ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)(完全改訂第5版、A23巻、エルバーズ(Elvers)他編、290〜292頁)を参照されたい。
【0032】
発明性を有するポリマーは、そのムーニー粘度ML(1+8、125℃)が好ましくは5〜40単位の範囲内にあり、より好ましくは7〜35単位の範囲内にある。
【0033】
一例として、1つの態様において、重合は不活性の脂肪族炭化水素の希釈剤(例えばn−ヘキサン)および触媒混合物の存在下で実施される。当該触媒混合物は、多量の(80〜99モル%の範囲内にある量の)ジアルキルアルミニウムハロゲン化物(例えば、ジエチルアルミニウムクロライド)、少量の(1〜20モル%の範囲内にある量の)モノアルキルアルミニウムジハロゲン化物(例えば、イソブチルアルミニウムジクロライド)、ならびに少量の(0.01〜10ppmの)、水、アルミノキサン(例えばメチルアルミノキサン)およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む。勿論、ブチルポリマーを製造するために常套的に使用されている他の触媒系を使用して、ここで有用なブチルポリマーを製造することができる。例えば、ヨセフ・ピー・ケネディ(Joseph P. Kennedy)の「オレフィンのカチオン性重合:重要なインベントリー(Cationic Polymerization of Olefins: A Critical Inventory)」(John Wiley & Sons, Inc. 1975年、10〜12頁)を参照されたい。
【0034】
重合は、連続的に実施しても、不連続的に実施してもよい。連続操作の場合、プロセスは好ましくは下記の3つのフィードストリームで実施される:
I)溶媒/希釈剤+1または複数のイソモノオレフィン(好ましくはイソブテン)、
II)1または複数のマルチオレフィン(好ましくはジエン、イソプレン)、1または複数の多機能架橋剤、および1または複数の連鎖移動剤
III)触媒
【0035】
不連続的な操作の場合、プロセスは、例えば次のように実施してよい。予め反応温度にまで冷却された反応器を溶媒または希釈剤と反応体とで満たす。それから、開始剤を希薄溶液の形態で、重合熱が問題なく分散されるようにして注ぎ込む。反応の過程は、熱の放出によってモニターされ得る。
【0036】
ポリマーはハロゲン化されていてよい。好ましくは、ハロゲン化ブチルポリマーは、臭素化されたもの又は塩素化されたものである。ハロゲンの量は、ポリマーの好ましくは0.1〜8重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、最も好ましくは1.0〜3.0重量%である。ハロゲン化テトラポリマーは、通常、上述したモノマー混合物から得られる、予め製造したテトラポリマーをハロゲン化することにより製造されるであろう。しかしながら、他の可能性が当業者に周知である。ハロゲン化テトラポリマーを製造する1つの方法が、米国特許第5886106号明細書に開示されている。このように、ハロゲン化ブチルゴムは、細かく分割したブチルゴムを塩素または臭素のようなハロゲン化剤で処理することによって、あるいはまたN−ブロモコハク酸イミドのような臭化剤を予め作製したブチルゴムと混合装置において強く混合することにより臭化ブチルゴムを製造することによっても製造できる。別法として、予め作製したブチルゴムを適当な有機溶媒中に溶解した溶液または分散させた分散液を、対応する臭化剤で処理することによって、ハロゲン化ブチルゴムを製造することができる。より詳細には、ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)(完全改訂第5版、A23巻、エルバーズ(Elvers)他編、314、316〜317頁)を参照された。この処理の間のハロゲン化の量は、最終的なポリマーが好ましい量の上述したハロゲンを有するように制御され得る。
【0037】
配合物はさらに少なくとも1つの活性または不活性のフィラーを含む。フィラーは好ましくは:
−高度に分散した、5〜1000m/gの範囲内にある比表面積を有し、その一次粒子寸法が10〜400nmの範囲内にあるシリカであって、珪酸塩(もしくはシリケート)溶液の沈殿またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解により製造されるシリカ。当該シリカは、適宜他の金属(例えば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、およびTi)の酸化物とともに混合酸化物として存在し得る;
−20〜400m/gの範囲内にあるBET比表面積を有し、一次粒子径が10〜400nmの範囲内にある、合成珪酸塩。例えば、珪酸アルミニウム、およびアルカリ土類金属の珪酸塩(例えば、珪酸マグネシウムまたは珪酸カルシウム);
−天然珪酸塩。例えばカオリンおよび他の天然シリカ;
−ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット材料、押出品)、またはガラス微小球(ミクロスフェア);
−金属酸化物。例えば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム;
−金属炭酸塩。例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、および炭酸亜鉛;
−金属水酸化物。例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム;
−カーボンブラック;ここで使用されるカーボンブラックは、ランプブラック、ファーネスブラック、またはガスブラックプロセスによって調製され、好ましくは20〜200m/gの範囲内にあるBET(DIN66131)比表面積を有し、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEFまたはGPFカーボンブラックである;
−ゴムのゲル(またはラバーゲル)。特に、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、およびポリクロロプレンをベースとするもの;
またはそれらの混合物である。
【0038】
好ましい無機フィラーには、シリカ、珪酸塩、ベントナイトのようなクレイ、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルク、およびそれらの混合物等が含まれる。これらの無機粒子は水酸基をその表面に有し、それにより粒子は親水性且つ非親油性となっている。このことは、フィラー粒子とテトラポリマーとの間で良好な相互作用が達成されることをさらに困難にする。多くの目的のために、好ましい無機物はシリカであり、特に珪酸ナトリムの二酸化炭素沈殿により形成されるシリカである。本発明に従って使用するのに適した、乾燥アモルファスシリカ粒子の平均凝集粒子寸法は、1〜100ミクロンの範囲内にあってよく、好ましくは10〜50ミクロンの間にあり、最も好ましくは10〜25ミクロンの間にある。凝集粒子の10体積%以下が、5ミクロン未満または50ミクロンを超える寸法のものであることが好ましい。さらに、適当なアモルファス乾燥シリカは、DIN(ドイツ工業規格)66131に従って測定されるBET比表面積が50〜450平方メートル/グラムの範囲内にあり、DIN53601に従って測定されるDBP吸収がシリカ100グラムあたり150〜400グラムの範囲内にあり、DIN ISO787/11に従って測定される乾燥減量が0〜10重量%の範囲内にある。適当なシリカフィラーは、HiSil(登録商標)210、HiSil(登録商標)233、およびHiSil(登録商標)243の名称でPPG Industries Inc.から入手できる。適当なものはまた、バイエル(Bayer)AGのVulkasil(登録商標)SおよびVulkasil(登録商標)Nである。
【0039】
本発明の配合物においては、カーボンブラックと無機フィラーの組み合わせを使用することが好都合である。この組み合わせにおいて、カーボンブラックに対する無機フィラーの比は、通常0.05〜20の範囲内にあり、好ましくは0.1〜10の範囲内にある。本発明のゴム組成物については、カーボンブラックを20〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは40〜100重量部の範囲内の量で含むことが好都合である。
【0040】
配合物は、さらに少なくとも1つの過酸化物加硫系を含む。本発明は特別な過酸化物加硫系に限定されない。例えば、無機または有機過酸化物が適している。ジアルキルペルオキシド、ケタールペルオキシド、アラルキルペルオキシド、ペルオキシドエーテル、ペルオキシドエステルのような有機過酸化物、例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ビス−(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)−ベンゾール、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキセン−(3)、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、およびtert−ブチルペルベンゾエートが好ましい。通常、配合物における過酸化物の量は、1〜10phr(phr=ゴム100につき)の範囲内にあり、好ましくは1〜5phrの範囲内にある。続く加硫は、通常100〜200℃の範囲内にある温度にて実施され、好ましくは130〜180℃の範囲内にある温度にて実施される。過酸化物は、ポリマーで結合された(またはポリマー中に分散した)形態にて好都合に使用されるであろう。適当な系は市販されており、例えば、ライン・ケミー・ライナウ社(Rhein Chemie Rheinau GmbH,D)のポリディスパーション(Polydispersion)T(VC)D−40P(=ポリマーで結合されたジ−tert−ブチルペルオキシ−イソプロピルベンゾール)である。
【0041】
好ましいことではないとしても、配合物はさらに他の天然または合成ゴムを含み得る。そのようなゴムは、例えば、BR(ポリブタジエン)、ABR(ブタジエン/アクリル酸−C−C−アルキルエステルコポリマー)、CR(ポリクロロプレン)、IR(ポリイソプレン)、スチレン含量が1〜60重量%の範囲内にあるSBR(スチレン/ブタジエン−コポリマー)、アクリロニトリル含量が5〜60重量%であるNBR(ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分的または全体的にハロゲン化されたNBRゴム)、EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー)、FKM(フルオロポリマーまたはフルオロゴム)、および所与のポリマーの混合物である。
【0042】
本発明のゴム組成物は、さらにゴムのための補助製品、例えば反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、起泡剤、抗老化剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エキステンダー、有機酸、防止剤(インヒビター)、金属酸化物、および活性剤(例えば、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール等)を含むことができ、これらはゴム工業において知られているものである。ゴム助剤は常套的な量で使用され、それは、特に目的とする用途に応じて決まる。常套的な量は、ゴムを基準として、例えば0.1〜50重量%である。好ましくは、組成物はさらに、0.1〜20phrの範囲内にある有機脂肪酸を含み、好ましくは、1つ、2つまたはそれ以上の炭素二重結合を分子中に有する不飽和脂肪酸であって、より好ましくは、少なくとも1つの共役炭素−炭素二重結合を分子中に有する10重量%以上の共役ジエン酸を含む。好ましくは、それらの脂肪酸は、8〜22の範囲内にある炭素原子を有し、より好ましくは12〜18の範囲内にある炭素原子を有する。その例には、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸、ならびにそれらのカルシウム、亜鉛、マグネシウム、カリウムおよびアンモニウム塩が含まれる。
【0043】
最終配合物の成分は、望ましくは25℃〜200℃の範囲内にある昇温された温度にて一緒に混合される。通常、混合時間は1時間を越えず、2〜30分の範囲内にある時間が通常適当である。混合は適切には密閉式ミキサー、例えば、バンバリー・ミキサー、またはハーケ(Haake)もしくはブラベンダー(Brabender)小型密閉式ミキサーにおいて実施される。2本ロールのミルミキサーもまた、エラストマー内における添加剤の良好な分散をもたらす。押出機もまた良好な混合を与え、混合時間をより短くすることを可能にする。2またはそれ以上の段階で混合を実施することが可能であり、混合は異なる装置で実施することができ、例えば、1つの段階では密閉式ミキサーで実施し、1つの段階では押出機で実施できる。尤も、望ましくない早期の架橋(=スコーチもしくは焼け)が混合段階で生じないように注意を払う必要がある。配合および加硫に関しては、エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第4巻、第66頁以下(配合(Compounding))および第17巻、第666頁以下(加硫(Vulcanization))を参照されたい。
【0044】
更に、本発明は、本発明の配合物を含む成形されたゴム・パーツであって、中実であるか、発泡しているか、あるいは流体が充填されていて、機械装置から生じる振動を遮断し、および振動を減衰させるのに有用なパーツを提供する。より特には、本発明は、熱および/または振動を生じる動的手段(例えば、自動車のエンジン、電気モータ)および当該動的手段を支持する静的構造物(例えば、自動車フレーム)であって、前記動的手段と、例えば当該フレームおよびエンジンに取り付けられたブラケット同士をボルト締めすることによって、接合された静的構造物を含み、且つ、当該動的手段と当該静的構造物との間で当該接続ポイントにて挿入された加硫ゴム振動遮断および/または制振パーツ(例えば、エンジンおよびフレームのブラケット同士の間に挟まれた、1または複数のディスク形状のゴム・パーツ)を有する機械装置を提供する。本発明によりもたらされる改良点は、前記過酸化物加硫性のゴム配合物を含む、成形され、加硫された組成物を前記ゴム・パーツとして利用することを含む。成形物品(例えば、モーターマウント)の加硫は、例えば、当業者に周知の条件下で加熱プレスにて実施してよい。加硫時間は、物品の厚さ、ならびに加硫剤の濃度および種類により、またハロゲン化ポリマーが使用される場合にはハロゲン化ポリマーの初期ハロゲン含有量により、影響を受けるであろう。しかしながら、加硫パラメータは、当該分野で周知である実験室特性化装置、例えば、モンサント振動ディスクキュア流動計(Oscillating Disc Cure Rheometer)(米国材料試験協会規格ASTM D2084に詳細に説明されている)を用いて、数個の実験によって容易に確定することができる。別法として、硬化性の組成物を、射出成形して成形物品を形成し、十分な時間の間、型内に保持して、硬化した成形物品を得ることができる。
【0045】
本発明の組成物は、モータおよびエンジン等からの振動の影響を遮断する又は低減させるために用いられる振動減衰および/または遮断パーツを製造するに際し、使用してよい。それは、特に、振動の制御のためのエラストマーの台(またはマウンティング)、例えば自動車のボディおよびエンジンマウント;自動車の排気管ハンガー;動(または動的もしくは動力)吸収体(例えば衝撃吸収材);ブッシング(または套管);および自動車のサスペンション・バンパー等の製造に使用するのに特に適している。
【0046】
組成物は特に、約150℃までの高い使用温度に付される、自動車のエンジンマウントの組み立てに有用である。そのような用途において、ディスク形状に成型されたパーツは、モータ・ブラケットと自動車フレーム・ブラケットとの間に、ブラケット同士をボルト締めしてモータをフレームに取り付ける前に挿入される。特に高品質の遮断のためには、ハイドロ・マウント、即ち、流体を封入したゴムの使用が望ましい。封入された液体は通常高沸点である。一般的には、液体は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなグリコールから選択される。組成物はまた、例えば自動車に取り付けられた電子装置において、振動および約150℃までの高い使用温度に付される電子部品を含むシステムのパーツとして有用である。
【0047】
即ち、本発明は、第1の態様として、
a.少なくとも1つのC〜Cのイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤から得られる繰り返し単位を含む少なくとも1つのエラストマーポリマーであって、還流下で沸騰しているシクロヘキサンに60分以内に溶解しない固形分を15重量%未満含むエラストマーポリマー、
b.少なくとも1つのフィラー、および
c.過酸化物加硫(または硬化)系
を含む配合物を提供する。
【0048】
また、本発明は第2の態様として、上記第1の態様において、C〜Cのイソモノオレフィンモノマーが、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテンおよびそれらの混合物から成る群から選択される配合物を提供する。
【0049】
本発明は、第3の態様として、上記第1または第2の態様において、C〜C14のマルチオレフィンモノマーが、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリレン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−へプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエンおよびそれらの混合物から成る群から選択される配合物を提供する。
【0050】
本発明は、第4の態様として、上記第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、1または複数のマルチオレフィン架橋剤が、ノルボルナジエン、2−イソプロペニルノルボルネン、2−ビニルノルボルネン、1,3,5−ヘキサトリエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、および上述の化合物のC〜C20のアルキル置換誘導体から成る群から選択される配合物を提供する。
【0051】
本発明は、第5の態様として、上記第1〜第4の態様のいずれか1つにおいて、1または複数の連鎖移動剤がピペリレン、1−メチルシクロへプテン、1−メチル−1−シクロペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、インデン、およびそれらの混合物から成る群から選択される配合物を提供する。
【0052】
本発明は、第6の態様として、上記第1〜第5の態様のいずれか1つにおいて、過酸化物系が有機過酸化物である配合物を提供する。
【0053】
本発明は、第7の態様として、上記第1〜第6の態様のいずれか1つの配合物を含む成形されたゴム・パーツを提供する。
【0054】
本発明は、第8の態様として、第7の態様において、中実であるか、発泡しているか、あるいは流体が充填されている、ゴム・パーツを提供する。
【0055】
本発明は、第9の態様として、上記第1〜第6の態様のいずれか1つの配合物を含む制振装置を提供する。
【0056】
本発明は、第10の態様として、上記第9の態様の制振または振動遮断装置において、制振装置が中実であるか、発泡しているか、あるいは流体が充填されている装置を提供する。
【0057】
本発明は、第11の態様として、熱および/または振動を生成する動的手段、および当該動的手段を支持し、当該動的手段に接続された静的構造体を含み、且つ第7もしくは第8の態様であるゴム・パーツあるいは第9の態様の加硫されたゴムの振動減衰および/または遮断装置が当該動的手段と当該静的構造体との間に接続ポイントにて挿入されている機械装置を提供する。
本発明は、以下の実施例によって更に説明される。
【実施例】
【0058】
重合の希釈剤として作用する塩化メチル(ダウ・ケミカル(Dow Chemical))およびイソブチレンモノマー(マテソン(Matheson)、99%)を、気相を濃縮することによって反応器に移した。塩化アルミニウム(99.99%)、イソプレン(99%)、および2,4,4−トリメチル−1−ペンテン(97%)はアルドリッチ(Aldrich)のものであった。防止剤(インヒビター)を、アルドリッチ(Aldrich)の防止剤除去用使い捨てカラムを用いて、イソプレンから取り除いた。市販のジビニルベンゼン(約64%)はダウ・ケミカル(Dow Chemical)のものであった。
【0059】
配合物を、ドライブ・ユニット(Plasticorder(商品名)Type PL-V151)およびデータ・インターフェース・モジュールから成る、シー・ダブリュ・ブラベンダー(C. W. Brabender)の小型密閉式ミキサー(ブラベンダー(Brabender))MIM)を用いて、カーボンブラック(IRB#7)および過酸化物(DI−CUP 40C、ストラクトール・カナダ社(Struktol Canada Ltd.))と混合した。
【0060】
ムーニー粘度試験を、ASTM規格D−1646に従って、モンサント(Monsanto)MV2000ムーニー粘度計ML(1+8、125℃)にて実施した。
【0061】
移動ダイ・レオメーター(Moving Die Rheometer:MDR)試験を、ASTM規格D−5289に従って、モンサント(Monsanto)MDR2000(E)にて実施した。上側ダイは、1度の小さい弧を通って振動した。
【0062】
ポリマーの溶解度は、サンプルを60分間シクロヘキサンで還流させた後で測定した。
【0063】
加硫は、アラン−ブラッドリー(Allan-Bradley)のプログラマブル・コントローラを備えた電気プレス使用して実施した。
【0064】
応力−ひずみ試験は、インストロン・テストマスター・オートメイションシステム(Instron Testmaster Automation System)、モデル4464を用いて実施した。
【0065】
実施例1:
市販されている予備架橋されたブチルポリマー(XL−10000)であって、可溶性フラクションの含有率が25.2重量%であって、63.6単位ML(1+8、125℃)のムーニー粘度を有するポリマーを、下記の処方を用いて、配合した。
ポリマー:100phr、
カーボンブラック(IRB#7):50phr、
過酸化物:(DI−CUP 40C):1.0phr。
【0066】
混合は、ブラベンダー(Brabender)密閉式ミキサー(容量約75cc)で実施した。開始温度は60℃であり、混合速度は50rpmであった。下記の工程を実施した:
0分:ポリマーを添加した。
1.5分:カーボンブラックを少しずつ添加した。
7.0分:過酸化物を添加した
8.0分:混合物を取り出した。
【0067】
得られた配合物を、6回、狭いニップ・ギャップのミル(6インチ×12インチ)を通過させた。
配合物(配合物1)を続いて160℃にて加硫し、試験した。ショアA2硬度は58点であり、極限伸は152%であった。
【0068】
実施例2:
50mlのエルレンマイヤーフラスコに、0.45gのAlClを添加し、次いで100mlの塩化メチルを−30℃にて添加した。得られた溶液を−30℃にて30分間撹拌し、それから−95℃まで冷却して、触媒溶液を形成した。
【0069】
オーバーヘッド撹拌機を備えたガラス製の2000mlの反応器に、900mlの塩化メチルを−95℃にて加え、次いで−95℃にて100.0mlのイソブチレンを添加し、室温にて3.0mlのイソプレンを添加し、室温にて市販のDVBを1.96ml添加し、室温にて1.82mlの2,4,4−トリメチル−1−ペンテンを加えた。反応混合物を−95℃に冷却し、10.0mlの触媒溶液を加えて反応を開始させた。
【0070】
反応は、MBRAUN(商品名)ドライボックスにて、乾燥窒素雰囲気下で実施した。反応は、反応混合物に、水酸化ナトリウムを少し含む10mlのエタノールを添加することによって、5分後に停止させた。
【0071】
得られたポリマーを水蒸気で凝結させ(又は水蒸気ストリッピングに付し)、6インチ×12インチのミルで約105℃にて乾燥させ、次いで真空オーブンにて50℃にて乾燥させて、恒量にした。ゴムのムーニー粘度は、8.1単位(1分+8分、125℃)であり、シクロヘキサンへの溶解性は97.9重量%であった。
【0072】
ポリマーを、実施例1と同じ処方および方法を用いて配合した。配合物(配合物2)を、160℃にて加硫し、試験した。ショアA2硬度は、26点であり、極限伸は699%であった。
【0073】
この例は、実質的にゲルを含まないポリマーを使用して、市販のXL−10000をベースとするものと比較して相当低い硬度を有する、過酸化物加硫された配合物が得られ得ることを示している。この低いムーニー粘度を有するポリマーは、加硫の際に化学的に一体化されるようになるため、それは、「伝統的な」エキステンダーの使用に関連する浸出の問題を生じることなく、プロセス油の代わりに使用し得るであろう。
【0074】
実施例3:
ここでは4.0mlのDVBおよび3.0mlの2,4,4−トリメチル−1−ペンテンを使用したこと以外は、実施例2で説明したポリマー2と同じようにしてポリマー3を得た。ゴムのムーニー粘度は、7.5単位(1分+8分、125℃)であり、シクロヘキサンへの溶解度は98.0重量%であった。したがって、これらの2つの原料ポリマー特性は、ポリマー#2およびポリマー#3に関して実質的に同一であった。
【0075】
ポリマー3を、実施例1と同じ処方および方法を用いて配合した。配合物(配合物3)は、160℃にて加硫に付し、試験した。ショアA2硬度は41点であり、極限伸は284%であった。
【0076】
この例は、ポリマー3のムーニー粘度および溶解性がポリマー2のそれらと非常に類似しているにも拘らず、加硫した配合物の特性が相当異なることを示している。このケースにおいて、配合物#2に関する対応特性と比較して、ショアA2硬度は非常に大きく、極限伸びは非常に低い。したがって、反応フィードの組成(特にDVBの含有率および連鎖移動剤の含有率)を適切に調節することによって、特定の用途に望まれる特性を備えた、容易に加工できる、過酸化物加硫性材料を各種調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つのC〜Cのハロゲン化されていないイソモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのC〜C14のマルチオレフィンモノマーまたはβ−ピネン、少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤から得られる繰り返し単位を含む少なくとも1つのエラストマーポリマーであって、還流下で沸騰しているシクロヘキサンに60分以内に溶解しない固形分を15重量%未満含むエラストマーポリマー、
b.少なくとも1つのフィラー、および
c.過酸化物を含む化合物の組み合わせであって、前記エラストマーポリマーの加硫に寄与する組み合わせ
を含む配合物。
【請求項2】
請求項1に記載の配合物を含む成形されたゴム・パーツ。
【請求項3】
請求項1に記載の配合物を含む振動減衰および/または遮断装置。
【請求項4】
熱および/または振動を生成する動的手段、ならびに当該動的手段を支持し、当該動的手段に接続された静的構造物を含み、且つ請求項3に記載の振動減衰および/または遮断装置が当該動的手段と当該静的構造体との間に接続ポイントにて挿入されている機械装置。

【公開番号】特開2009−203482(P2009−203482A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143253(P2009−143253)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願2003−137221(P2003−137221)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(504351677)ランクセス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Inc.
【Fターム(参考)】