説明

排ガス空燃比センサの昇温制御装置

【課題】自動再始動後におけるエンジンの運転安定性を確保しながら、排ガス性能の低下を抑制することが出来るようにする。
【解決手段】排ガス空燃比センサ28,29を昇温する昇温手段28A,29Aと、エンジンを自動停止/自動再始動させる自動停止再始動手段41と、排気系の温度に相関する排気系温度指標値CTを推定する排気系温度指標値推定手段42と、エンジンの自動停止中に排気系温度指標値CTを減算補正する温度指標値補正手段44と、昇温手段28A,29Aを制御する昇温制御手段54とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンから排出される排ガスの空燃比を検出する排ガス空燃比センサの昇温制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されたエンジンのアイドリング期間を短くすることで、エンジンから排出される排ガス量を低減することを狙った技術、いわゆる、アイドルストップ制御に関する技術が知られている。
また、さらに、このようなアイドルストップ制御を考慮しながら、エンジンから排出される排ガスの空燃比を検出する空燃比センサのヒータ制御を行なう技術も開発されている(例えば、以下の特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、エンジンを自動停止してから自動再始動するまではヒータをオンとし、空燃比センサの早期活性化を図るという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−88688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、ヒータにより熱せられた空燃比センサが被水した場合に故障してしまう事態をなんら考慮していない。
つまり、エンジンから排出される排ガスは、エンジンが停止することにより冷やされ、この排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮水となって排気管内に溜まる場合が想定される。そして、この凝縮水が熱せられた空燃比センサにかかると、この空燃比センサのセンサ素子が温度衝撃により破損するおそれがあるのである。
【0006】
また、特許文献1の技術では、ヒータによる電力消費量が急増してしまうという課題もある。つまり、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止および自動再始動は、頻繁に繰り返されることが一般的である。他方、エンジンの自動停止中、空燃比センサは、本来的に、エンジン制御に有用な情報はなんら検出していない。
しかしながら、特許文献1の技術では、空燃比センサが実質的に用いられていない状態であっても、ヒータをオンにするようになっているため、ヒータによる電力消費量の増大を避けることができないのである。
【0007】
もっとも、特許文献1の技術では、空燃比センサが不活性状態になるまでの所要時間をエンジン水温に基づいて推定し、推定された所要時間が経過した時点でヒータをオンにするようになっている。これは、ヒータが電力を消費する期間を出来るだけ短くすることを狙ったものである(例えば、同文献の〔0040〕段落の記載参照)。
しかしながら、近年、省エネルギー化に対する要求は高く、特許文献1のヒータの電力消費量の抑制手法ではこの要求を満たしているとは言い難い。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排気系の温度およびエンジンの始動形態を考慮しながら排ガス空燃比センサの昇温を制御することで、車両の電源に対する電気負荷を低減しながら、被水による排ガス空燃比センサの故障を防ぐことが出来る、排ガス空燃比センサの昇温制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の排ガス空燃比センサの昇温制御装置(請求項1)は、エンジンが搭載された車両の排気系に設けられ該エンジンから排出された排ガスの空燃比を検出する排ガス空燃比センサと、該車両に搭載された電源から供給される電力により作動し電気的に該排ガス空燃比センサを昇温する昇温手段と、自動停止条件が成立すると該エンジンを自動停止させ、該自動停止後に自動再始動条件が成立すると該エンジンを自動再始動させる自動停止再始動手段と、該排気系の温度に相関する排気系温度指標値を推定する排気系温度指標値推定手段と、該自動停止再始動手段によって該エンジンが自動停止している間は該排気系温度指標値設定手段により設定された該排気系温度指標値を減算補正する温度指標値補正手段と、該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制御する昇温制御手段とを備え、該昇温制御手段は、該温度指標値補正手段によって補正された該排気系温度指標値が排気系温度閾値を上回っているという温度条件と、該エンジンの始動が該自動停止再始動手段による自動再始動であるという始動モード条件とを昇温条件とし、該昇温条件が満たされた場合には該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制限なく許可し、該昇温条件が満たされなかった場合には該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制限することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の本発明の排ガス空燃比センサの昇温制御装置は、請求項1記載の内容において、該排気系は、該エンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化触媒を有し、該排ガス空燃比センサは、該排ガス浄化触媒の上流側に設けられた上流排ガス空燃比センサと、該排ガス浄化触媒の下流側に設けられた下流排ガス空燃比センサとを有し、該昇温手段は、該上流排ガス空燃比センサを昇温する上流センサ昇温手段と、該下流排ガス空燃比センサを昇温する下流センサ昇温手段とを有し、該昇温制御手段は、第1昇温許可期間閾値と、該第1昇温許可期間閾値よりも長い第2昇温許可期間閾値とを設定し、該エンジンの自動始動後運転期間が該第1昇温許可期間閾値を超えたという第1運転期間条件が満たされた場合には該温度条件または該始動モード条件が満たされていない場合であっても該上流センサ昇温手段による該上流排ガス空燃比センサの該昇温条件が満たされたと判定し、該エンジンの自動始動後運転期間が第2昇温許可期間閾値を超えたという第2運転期間条件が満たされた場合には該温度条件または該始動モード条件が満たされていない場合であっても該下流センサ昇温手段による該下流排ガス空燃比センサの該昇温条件が満たされたと判定することを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載の本発明の排ガス空燃比センサの昇温制御装置は、請求項2記載の内容において、該上流排ガス空燃比センサにより検出された該排ガス空燃比に基づいて該エンジンの燃料噴射量を調整するフィードバック噴射制御を実行するフィードバック噴射制御実行手段をさらに備えることを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の排ガス空燃比センサの昇温制御装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容において、該エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段をさらに備え、該排気系温度指標値推定手段は、該吸気量検出手段により検出された該エンジンの吸気量に応じて該排気系温度指標値を推定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス空燃比センサの昇温制御装置によれば、エンジンが自動停止している期間に応じて減算補正される排気系温度指標値が排気系温度閾値以下であって、且つ、エンジンが自動再始動された場合、即ち、昇温条件が満たされた場合には、速やかに排ガス空燃比センサの昇温を行うことが可能となる。
つまり、エンジンの始動が自動再始動ではなかった場合は、長期間に亘ってエンジンが停止しており、排気系の温度が低くなっている可能性が高い。このため、排気系内には、排ガス中の水蒸気が冷却されることで生じる凝縮水が残存している可能性が高いのである。また、排気系温度指標値が低い場合には、排気系内に凝縮水が残存する可能性がさらに高くなる。
【0013】
一方、エンジンの始動が自動再始動であった場合は、エンジンが短い期間しか停止しておらず、排気系の温度が高く保たれている可能性が高い。つまり、排気系内に凝縮水が残存する可能性が低い。また、排気系温度指標値が高い場合には、排気系内に凝縮水が残存する可能性がさらに低くなる。
このように、排気系の温度およびエンジンの始動形態を考慮しながら排ガス空燃比センサの昇温を制御することで、車両の電源に対する電気負荷を低減しながら、被水による排ガス空燃比センサの故障を防ぐことが出来る。(請求項1)
また、排気管は、排ガス浄化触媒の上流側よりも下流側が熱せられにくくなっている。これは、エンジンから排出された排ガスが、高温のまま排ガス浄化触媒の上流側における排気管に供給されるのに対し、排ガス浄化触媒の下流側における排気管には、排ガス浄化触媒によって熱を奪われた後の排ガスが供給されることによるものである。
【0014】
このため、下流排ガス空燃比センサの昇温条件を、上流排ガス空燃比センサの昇温条件よりも厳しく設定することで、下流排ガス空燃比センサの故障を効果的に防ぐことが出来る。(請求項2)
また、下流排ガス空燃比センサよりも早く昇温される上流排ガス空燃比センサの検出結果に基づいたフィードバック噴射制御を、速やかに実行することが可能となり、排ガス性能の向上に寄与することが出来る。(請求項3)
また、排気系の温度を示す値(即ち、排気系温度指標値)を、特殊なセンサや複雑な演算手法を用いずに、精度よく推定することが出来る。(請求項4)
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、排気系温度カウンタ値の推定動作および補正動作を示す模式的なフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すメインルーチンの模式的なフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すAサブルーチンの模式的なフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すBサブルーチンの模式的なフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、上流側O2センサの昇温制御を示す模式的なフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置による、下流側O2センサの昇温制御を示す模式的なフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置の動作の一例を示す模式的なタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、車両10に搭載されたエンジン1のシリンダヘッド2には点火プラグ11が設けられている。この点火プラグ11の先端はシリンダ3の燃焼室に突出している。また、この点火プラグ11には高電圧の電力を供給する点火コイル(図示略)が接続されている。また、この車両10には、エンジン1のクランキングを行なうスタータモータ(図示略)が搭載されている。
【0017】
また、シリンダヘッド2には、吸気ポート5が形成されている。また、この吸気ポート5には、吸気弁14が設けられている。
吸気弁14は、クランク軸7の回転に応じて回転する吸気カムシャフト(図示略)の吸気カム(図示略)の動作に応じて開閉し、燃焼室4に対して吸気ポート5を開閉するようになっている。
【0018】
また、シリンダヘッド2には、排気ポート6が形成されている。また、この排気ポート6には、排気弁24が設けられている。
排気弁24は、クランク軸7の回転に応じて回転する排気カムシャフト(図示略)の排気カム(図示略)の動作に応じて開閉し、燃焼室4に対して排気ポート6を開閉するようになっている。
【0019】
そして、このエンジン1には、吸気弁14および排気弁24の開弁期間,開閉タイミングおよびリフト量を連続的に変更可能な可変動弁機構(バルブ動作状態検出手段)30が設けられている。
また、このエンジン1には、エンジン1の内部に形成されたウォータジャケット(図示略)を流通する冷却水の温度WTを検出する冷却水温センサ12が設けられている。なお、この冷却水温センサ12による検出結果WTは、後述するECU(Electric Control Unit)40に読み込まれるようになっている。
【0020】
クランク軸7の回転数、即ち、エンジン回転数Neは、エンジン回転数センサ23によって検出されるようになっている。そして、このエンジン回転数センサ23の検出結果Neは、ECU40によって読み込まれるようになっている。
吸気ポート5には、吸気マニホールド15の下流端が接続されている。
吸気マニホールド15には、スロットルバルブ16が設けられるとともに、このスロットルバルブ16の開度(スロットルバルブ開度)θを検出するスロットルポジションセンサ17が設けられている。
【0021】
吸気マニホールド15には、吸気マニホールド圧センサ18が設けられている。この吸気マニホールド圧センサ18は、スロットルバルブ16よりも下流側における吸気マニホールド15内の気圧Pinを検出するものであって、検出結果はECU40によって読み込まれるようになっている。
さらに、吸気マニホールド15よりも上流側における吸気管(吸気通路)19には、エアフローセンサ(吸気量センサ)20が設けられている。このエアフローセンサ20は、吸気管19を通過して吸気マニホールド15に流れ込む吸気量Qinを検出するものであって、検出結果は後述するECU40によって読み込まれるようになっている。
【0022】
吸気マニホールド15には、電磁式の燃料噴射弁21が取り付けられている。この燃料噴射弁21には、燃料パイプ22を介し、図示しない燃料タンクから燃料が供給されるようになっている。
排気ポート6には、排気マニホールド(排気系)25の上流端が接続されている。
排気マニホールド25の下流端には、排気管(排気系)26が接続されている。また、この排気管26には、排ガス浄化触媒として三元触媒(排気系)27が介装されている。
【0023】
この三元触媒27は、エンジン1から排出された排ガスに含まれる一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)および窒素化合物(NO)を、窒素(N),二酸化炭素(CO2)および水(H2O)へ化学変化させることで、排ガスを浄化するものである。
三元触媒27の上流側における排気管26には、上流O2センサ(排ガス空燃比検出手段,排ガス空燃比センサ,上流排ガス空燃比センサ)28が設けられている。また、三元触媒27の下流側における排気管26には、下流O2センサ(排ガス空燃比検出手段,排ガス空燃比センサ,下流排ガス空燃比センサ)29が設けられている。
【0024】
上流O2センサ28は、エンジン1から排出され、三元触媒27に流入する前の排ガス空燃比である上流側空燃比AF1を検出するものである。
下流O2センサ29は、三元触媒27から排出され、大気に放出される排ガス空燃比である下流側空燃比AF2を検出するものである。
また、これらの上流O2センサ28や下流O2センサ29は、いずれもセラミック製の検出素子を備えており、センサ活性化温度(第1活性化温度;例えば、300℃程度)に昇温されると活性化する特性を有している。
【0025】
また、上流O2センサ28には、上流O2センサ28の検出素子を昇温する上流ヒータ(昇温手段,上流センサ昇温手段)28Aが設けられている。
また、下流O2センサ29には、下流O2センサ29の検出素子を昇温する下流ヒータ(昇温手段,下流センサ昇温手段)29Aが設けられている。
これらの上流ヒータ28Aおよび下流ヒータ29Aは、いずれも、車両10に搭載されたバッテリ(電源;図示略)から供給される電力により電気的に発熱するものである。なお、上流ヒータ28Aは、バッテリと上流ヒータ28Aとの間で電気的に介装された第1スイッチ(図示略)によりオン/オフされるようになっている。同様に、下流ヒータ29Aは、バッテリと下流ヒータ29Aとの間で電気的に介装された第2スイッチ(図示略)によりオン/オフされるようになっている。
【0026】
また、上流O2センサ28による検出結果AF1および下流O2センサ29による検出結果AF2は、いずれも電圧値(例えば、0〜1[V])としてECU40に出力されるようになっている。本実施形態において、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスのリーン化が強くなるにしたがって、出力電圧値が0[V]に近づく特性を有している。一方、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスのリッチ化が強くなるにしたがって、出力電圧値が1[V]に近づく特性を有している。そして、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスが理論空燃比である場合に、出力電圧値が0.5[V]となる特性を有している。
【0027】
また、この車両10のブレーキペダル(図示略)には、図示しないストップランプスイッチが設けられている。このストップランプスイッチは、ブレーキペダル(図示略)が踏込まれていない場合にはオフになり、ブレーキペダルが踏み込まれた場合にオンになる電気スイッチである。また、このストップランプスイッチは、車両10のブレーキランプ(図示略)に接続されている。したがって、このストップランプスイッチがオンになると車両10のブレーキランプが点灯し、オフになるとブレーキランプが消灯するようになっている。なお、このストップランプスイッチはECU40にも接続され、ストップランプスイッチがオンであるか否かをECU40が確認することが出来るようになっている。
【0028】
また、この車両10には遊星歯車機構を有するオートマチックトランスミッション(図示略)が搭載されている。また、この遊星歯車機構の変速比は、図示しないシフトレバーの位置に応じて変更されるようになっている。
また、この車両10の車輪(図示略)には、図示しない車輪速センサが設けられている。この車輪速センサは、車輪の回転速度を検出するものであって、検出結果はECU40によって読み込まれるようになっている。
【0029】
また、車両10には、ECU40が設けられている。
このECU40は、いずれも図示しないメモリやCPU(Central Processing Unit)を有する電子制御ユニットである。また、このECU40のメモリには、いずれもソフトウェアとして、アイドル制御部(アイドル制御手段)41,排気系温度カウンタ値推定部(排気系温度指標値推定手段)42,燃料カット制御部(燃料カット制御手段)43およびカウンタ値補正部(温度指標値補正手段)44が記録されている。
【0030】
また、このECU40のメモリには、フィードバック噴射制御部(フィードバック噴射制御手段)47,オープンループ噴射制御部(オープンループ噴射制御手段)48,噴射制御モード切換部(噴射制御モード切換手段)49および昇温制御部(昇温制御手段)54が記録されている。
さらに、図示はしないが、このECU40のメモリには、ソフトウェアとして、車速検出部も記録されている。
【0031】
これらのうち、アイドル制御部41は、自動停止条件が成立するとエンジン1を自動停止させ、エンジン1の自動停止後に自動再始動条件が成立するとスタータモータを作動させエンジン1を自動再始動させるものである。なお、アイドル制御部41の制御を受けて作動したスタータモータによるクランキングを、オートクランキングという。一方、車両10のドライバがシリンダキー(図示略)をイグニッションポジションまで回転させることで作動したスタータモータによるクランキングを、単にクランキングという。また、クランキングによるエンジン1の始動をマニュアル始動という。
【0032】
そして、アイドル制御部41は、以下の条件(1)〜(3)が満たされれば、自動停止条件が満たされたと判定するようになっている。
条件(1): ストップランプスイッチがオンである
条件(2): 車速Vsがゼロである
条件(3): シフトレバーがドライブ(D)ポジションにある
また、アイドル制御部41は、以下の条件(4)が満たされれば、自動再始動条件が満たされたと判定するようになっている。
【0033】
条件(4): ストップランプスイッチがオンからオフになる
なお、車速Vsは、車輪速センサにより検出された車輪の回転速度に基づいて車速検出部(図示略)が演算するようになっている。
排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを推定するものである。この排気系温度カウンタ値CTは、エンジン1の排気系(即ち、排気マニホールド25,排気管26および三元触媒27)の温度を示す指標である。そして、排気系温度カウンタ値推定部42は、エアフローセンサ20により検出されたエンジン1の吸気量Qinに応じて、この排気系温度カウンタ値CTを増大,低減あるいは維持することで、排気系温度カウンタ値CTを推定するようになっている。なお、本実施形態において、この排気系温度カウンタ値CTの下限値はゼロとして設定されている。したがって、排気系温度カウンタ値推定部42は、この排気系温度カウンタ値CTをゼロよりも小さい値として推定することはない。また、後述するカウンタ値補正部44も、排気系温度カウンタ値CTをゼロよりも小さい値に補正することはない。
【0034】
より具体的に、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的多い場合、所定周期T(例えば、T=2秒)毎に排気系温度カウンタ値CTを10加算するようになっている。
また、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的少ない場合、所定周期T毎に排気系温度カウンタ値CTを1減算するようになっている。
【0035】
また、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的多くもなく且つ少なくもない場合、所定周期T毎に排気系温度カウンタ値CTの加算も減算も行なわない、即ち、その時点における排気系温度カウンタ値CTを保持するようになっている。
燃料カット制御部43は、燃料カット条件が成立すると、燃料噴射弁21による燃料噴射を一時的に禁止する制御、即ち、燃料カット制御を実行するものである。
【0036】
なお、燃料カット制御部43は、以下の条件(5)および条件(6)の両方が満たされれば、減速時における燃料カット条件が満たされたと判定するようになっている。
条件(5)アクセルペダルの踏み込み量Accが実質的にゼロであること
条件(6)エンジン回転数Neが所定回転数Ne1以上であること
なお、ここで、所定回転数Ne1は、アイドル回転数Ne0よりも少し高い回転数として設定されたものである。
【0037】
また、アクセルペダル(図示略)の踏込み量Accは、図示しないアクセルペダルポジションセンサにより検出され、ECU40により読み込まれるようになっている。
カウンタ値補正部44は、排気系温度カウンタ値推定部42により推定された排気系温度カウンタ値CTを、エンジン1の運転状態に応じて補正するものである。
より具体的に、このカウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(例えば、R1=2[2秒毎])で減算補正するようになっている。
【0038】
また、このカウンタ値補正部44は、燃料カット制御部43により燃料カット制御が実行されている間、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(例えば、R2=10[2秒毎])で減算補正するようになっている。
さらに、このカウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動再始動している間(いわゆる、オートクランキング中)は、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3(例えば、R3=0[2秒毎])で補正するようになっている。
【0039】
つまり、これらの第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3は、下式(A)の関係が成立するように設定されている。
R3 < R1 < R2 ・・・(A)
また、フィードバック噴射制御部47は、スロットルポジションセンサ17によって検出されたスロットルバルブ開度θと、エアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinと、上流O2センサ28により検出された排ガス空燃比AF1とに基づいて、燃料噴射弁21による燃料噴射量Finjを調整するフィードバック噴射制御を実行するものである。
【0040】
オープンループ噴射制御部48は、スロットルポジションセンサ17によって検出されたスロットルバルブ開度θと、エアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinには基づくものの、上流O2センサ28により検出された排ガス空燃比AF1に基づかずに、燃料噴射弁21による燃料噴射量Finjを調整するオープンループ噴射制御を実行するものである。
【0041】
噴射制御モード切換部49は、アイドル制御部41の作動状況と、カウンタ値補正部44により補正されたカウンタ値CTとに基づいて、フィードバック噴射制御部47およびオープンループ噴射制御部48を制御するものである。
より具体的に、この噴射制御モード切換部49は、以下の条件(A)および(B)が満たされたか否かを判定するようになっている。
【0042】
条件(A): アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された
条件(B): カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている
なお、本実施形態において、この下限閾値CTthは0として設定されている。
これは、三元触媒27が触媒活性化温度以上に暖められないと、三元触媒27が本来の浄化性能を発揮出来ないことによるものであり、排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTth以下になったということは、三元触媒27が活性化温度に達していない可能性が極めて高いのである。換言すれば、この下限閾値CTthは、三元触媒27の触媒活性化温度に応じて設定されている。
【0043】
この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)および(B)が満たされていると判定した場合には、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間(第2期間)T2bまたは極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。なお、本実施形態において、短期間T2bおよび極短期間T2aはともに5秒として設定されている。また、噴射制御モード切換部49が、オープンループ噴射制御の実行期間を短期間T2bとするのか極短期間T2aとするのかは以下の条件(C)および(D)の判定結果による。
【0044】
条件(C): 冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1(例えば、WTth1=20℃)以下である
条件(D): エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していない
より具体的に、この条件(D)が満たされたか否かの判定は、噴射制御モード切換部49が、上流Oセンサ28の出力電圧が0.5[V]を上回ったか否かを判定することで行われるようになっている。
【0045】
このとき、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされている場合、および、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされていない場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
【0046】
他方、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされており且つ条件(D)が満たされている場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間T2bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
一方、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)が満たされていないと判定した場合、および、上記の条件(B)が満たされていないと判定した場合には、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間(第1b期間,第1期間)T1bまたは中期間(第1a期間,第1期間)T1bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。そして、オープンループ噴射制御の実行期間を、長期間T1bとするのか中期間T1aとするのかは上記の条件(C)および(D)の判定結果による。なお、本実施形態において、長期間T1bは例えば30秒として設定され、中期間T1aは例えば15秒として設定されている。
【0047】
このとき、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされている場合、および、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされていない場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間T1aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
【0048】
他方、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされている場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間T1bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
つまり、上記の長期間T1b,中期間T1a,短期間T2bおよび極短期間T2aは、以下の式(1)の関係を満たすように設定されている。
【0049】
T1b > T1a >T2b ≧ T2a ・・・(1)
昇温制御部54は、上流ヒータ28Aによる上流O2センサ28の昇温を制御するとともに、下流ヒータ29による下流O2センサ29の昇温を制御するものである。
より具体的に、この昇温制御部54は、以下の条件(D1),(D2)および(D3)を組み合わせて上流O2センサ28の昇温条件を設定するようになっている。
【0050】
条件(D1): 排気系温度条件
条件(D2): 始動モード条件
条件(D3): 第1運転期間条件
また、この昇温制御部54は、以下の条件(E1),(E2)および(E3)を組み合わせて下流O2センサ29の昇温条件を設定するようになっている。
【0051】
条件(E1): 排気系温度条件
条件(E2): 始動モード条件
条件(E3): 第2運転期間条件
ここで、条件(D1)および(E1)の排気系温度条件は、いずれも、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth(CTth=0)を上回っている(CT>CTth)という内容を条件とするものである。
【0052】
条件(D2)および(E2)の始動モード条件は、いずれも、エンジン1の始動が、アイドル制御部41による自動再始動であるというという内容を条件とするものである。換言すれば、エンジン1がマニュアル始動された場合、この始動モード条件は満たされないこととなる。
条件(D3)の第1運転期間条件は、自動始動した後のエンジン1の運転期間(自動始動後運転期間)PARが、第1昇温許可期間閾値PHth1(例えば、PHth1=60[sec])を超えた(PAR>PHth1)という内容を条件とするものである。
【0053】
条件(E3)の第2運転期間条件は、自動始動後運転期間PARが、第2昇温許可期間閾値PHth1(例えば、PHth2=180[sec])を超えた(PAR>PHth2)という内容を条件とするものである。
ここで、第1昇温許可期間閾値PHth1と第2昇温許可期間閾値PHth2との間では、以下の式(2)の関係が満たされるようになっている。
【0054】
Hth1 < PHth2 ・・・(2)
つまり、第1昇温許可期間閾値PHth1よりも第2昇温許可期間閾値PHth2の方が大きい値として設定されているのである。
これは、エンジン1から排出された排ガスが、高温のまま三元触媒27の上流側における排気管26に供給されるのに対し、三元触媒27の下流側における排気管26には、三元触媒27によって熱を奪われ比較的低温の排ガスが供給されることによるものである。このため、三元触媒27の下流側における排気管26に溜まっている凝縮水は、三元触媒27の上流側における排気管26に溜まっている凝縮水に比べて、蒸発するために比較的長い時間を要する傾向にあることを考慮して、上式(2)に示される関係が満たされるように、第1昇温許可期間閾値PHth1と第2昇温許可期間閾値PHth2とが設定されているのである。
【0055】
そして、昇温制御部54は、条件(D1)および(D2)または(D3)が満たされた場合に、上流O2センサ28の昇温条件が満たされたと判定するとともに、条件(E1)および(E2)または(E3)が満たされた場合に、下流O2センサ29の昇温条件が満たされたと判定するようになっている。
換言すれば、昇温制御部54は、条件(D1)および(D2)が満たされた場合に上流O2センサ28の昇温条件が満たされたと判定し、且つ、条件(D1)または(D2)が満たされなかった場合であっても、条件(D3)が満たされされれば上流O2センサ28の昇温条件が満たされたと判定するようになっている。
【0056】
同様に、昇温制御部54は、条件(E1)および(E2)が満たされた場合に下流O2センサ29の昇温条件が満たされたと判定し、且つ、条件(E1)または(E2)が満たされなかった場合であっても、条件(E3)が満たされされれば下流O2センサ29の昇温条件が満たされたと判定するようになっている。
一方、昇温制御部54は、条件(D1),(D2)および(D3)が満たされなかった場合に、上流O2センサ28の昇温条件が満たされなかったと判定するとともに、条件(E1),(E2)および(E3)が満たされなかった場合に、下流O2センサ29の昇温条件が満たされなかったと判定するようになっている。
【0057】
また、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされた場合、上流ヒータ28Aによる上流O2センサ28の昇温を制限なく許可するようになっている。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされた場合、下流ヒータ29Aによる下流O2センサ29の昇温を制限なく許可するようになっている。
一方、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされなかった場合、上流ヒータ28Aによる上流O2センサ28の昇温を制限するようになっている。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされなかった場合、下流ヒータ29Aによる下流O2センサ29の昇温を制限するようになっている。
【0058】
ここで、上流O2センサ28の昇温を‘制限なく許可’するとは、上流ヒータ28A用の第1スイッチ(図示略)のデューティを最小(0[%])から最大(100[%])まで自在に変更することを許可することを指している。同様に、下流O2センサ29の昇温を‘制限なく許可’するとは、下流ヒータ29A用の第2スイッチ(図示略)のデューティを最小(0[%])から最大(100[%])まで自在に変更することを許可することを指している。
【0059】
他方、上流O2センサ28の昇温を‘制限’するとは、上流ヒータ28A用の第1スイッチのデューティを最小(0[%])から制限値(例えば、15[%])までであれば自在に変更することを許可することを指している。同様に、下流ヒータ28A用の第2スイッチのデューティを最小(0[%])から制限値(例えば、15[%])までであれば自在に変更することを許可することを指している。
【0060】
もっとも、本実施形態において、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされた場合、第1スイッチのデューティを徐々に変更するのではなく、即座に最大に設定するようになっている。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされた場合、第2スイッチのデューティを徐々に変更するのではなく、即座に最大に設定するようになっている。
【0061】
また、本実施形態において、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされなかった場合、第1スイッチのデューティを制限値まで徐々に変更するのではなく、即座に制限値に設定するようになっている。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされなかった場合、第2スイッチのデューティを制限値まで徐々に変更するのではなく、即座に制限値に設定するようになっている。
【0062】
また、昇温制御部54は、上流ヒータ28Aをオンにする期間(即ち、上流ヒータオン期間)POn28Aと、下流ヒータ29Aをオンにする期間(即ち、下流ヒータオン期間)POn29Aとを個別に設定することが出来るようになっている。なお、本実施形態では、下流ヒータオン期間POn29Aの方が、上流ヒータオン期間POn28Aよりも長くなるように設定されている。
【0063】
これは、三元触媒27の上流側に設けられた上流O2センサ28よりも、三元触媒27の下流側に設けられた下流O2センサ29の方が熱せられにくくなっていることを考慮して設定されたものである。つまり、エンジン1から排出された高温の排ガスが上流O2センサ28に吹き付けられるのに対し、下流O2センサ29には、三元触媒27によって熱を奪われた比較的低温の排ガスが吹き付けられることによるものである。
【0064】
本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図2のフローチャートに示すように、まず、エンジン1が運転中である場合、ECU40がエアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinを読み込む(ステップS11)。
【0065】
そして、排気系温度カウンタ値推定部42が、読み込まれたエンジン1の吸気量Qinに応じて、排気系温度カウンタ値CTを増大,低減あるいは保持することで、排気系温度カウンタ値CTを推定する(ステップS12)。
その後、燃料カット制御部43が、上記の条件(5)および条件(6)の両方が満たされたか否か、即ち、燃料カット条件が満たされたか否か判定する(ステップS13)。
【0066】
ここで、燃料カット条件が満たされたと判定された場合は(ステップS13のYesルート)、燃料カット制御部43は、燃料噴射弁21による燃料噴射を一時的に禁止する制御、即ち、燃料カット制御を実行する(ステップS14)。
そして、燃料カット制御部43により燃料カット制御が実行されている間、カウンタ値補正部44が、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(例えば、R2=10[2秒毎])で減算補正する(ステップS15)。
【0067】
また、アイドル制御部41は、上記の条件(1)〜(3)が満たされたか否か、即ち、自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS16)。なお、燃料カット制御部43が、燃料カット条件は満たされなかったと判定した場合も(ステップS13のNoルート)、上記のステップS14およびステップS15をスキップして、このステップS16における判定が実行される。
【0068】
ここで、自動停止条件が成立した場合(ステップS16のYesルート)、アイドル制御部41は、エンジン1を自動停止させる(ステップS17)。
そして、カウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(例えば、R1=2[2秒毎])で減算補正する(ステップS18)。
【0069】
なお、カウンタ値補正部44が、自動停止条件は満たされなかったと判定した場合は(ステップS16のNoルート)、後述するステップS19〜S21をスキップしてリターンする。
その後、アイドル制御部41は、上記の条件(4)が満たされたか否か、即ち、自動再始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS19)。
【0070】
ここで、自動停止条件が成立した場合には(ステップS19のYesルート)、アイドル制御部41は、スタータモータを作動させることでオートクランキングを行ない、エンジン1を自動再始動させる(ステップS20)。
そして、カウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3で補正し(ステップS21)、その後、リターンする。なお、本実施形態においては、第3度合R3が0として設定されている。このため、カウンタ値補正部44は、ステップS12において、排気系温度カウンタ値推定部42により推定された排気系温度カウンタ値CTを保持することとなる。
【0071】
上述のように、この図2のフローチャートを繰り返し実行することで、排気系温度カウンタ値CTは、随時推定され、且つ、補正されている。
一方、排気系温度カウンタ値CTに応じた噴射制御モードの切換制御は、図3〜図5に示すフローチャートに示すように実行される。
図3に示すように、まず、噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)が満たされたか否か、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたか否かを判定する(ステップS41)。
【0072】
ここで、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された場合(ステップS41のYesルート)、噴射制御モード切換部49は、上記の条件(B)が満たされたか否か、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っているか否かを判定する(ステップS42)。
アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたのではなく、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることに起因してエンジン1が始動した場合、即ち、マニュアル始動が行われた場合(ステップS41のNoルート)、図5を用いて後述するBサブルーチンが実行される(ステップS44)。
【0073】
同様に、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth以下である場合も(ステップS42のNoルート)、Bサブルーチンが実行される(ステップS44)。
他方、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている場合(ステップS42のYesルート)、Aサブルーチンが実行される(ステップS43)。
図4に示すように、このAサブルーチンにおいて、噴射制御モード切換部49は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1以下であるという条件(即ち、上記の条件(C))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS41a)。
【0074】
ここで、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていると判定した場合(ステップS41aのYesルート)、さらにこの噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後(ステップS42aおよびS43aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0075】
他方、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていないと判定した場合(ステップS41aのNoルート)、さらにこの噴射制御モード切換部49は、エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していないという条件(即ち、条件(D))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS45a)。
【0076】
ここで、条件(D)が満たされていない場合(ステップS45aのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(C)が満たされた場合(ステップS41aのYesルート)と同様に、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間T2aに亘って実行させた後(ステップS42aおよびS43aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0077】
一方、条件(D)が満たされている場合(ステップS45aのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間T2bに亘って実行させた後(ステップS46aおよびS47aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0078】
図5に示すように、Bサブルーチンにおいて、噴射制御モード切換部49は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1以下であるという条件(即ち、上記の条件(C))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS41b)。
ここで、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていると判定した場合(ステップS41bのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間(第1期間)T1aに亘って実行させた後(ステップS42bおよびS43bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0079】
他方、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていないと判定した場合(ステップS41bのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していないという条件(即ち、条件(D))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS44bおよびS45b)。
【0080】
ここで、条件(D)が満たされていない場合(ステップS45bのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(C)が満たされた場合(ステップS41bのYesルート)と同様に、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間T1aに亘って実行させた後(ステップS42bおよびS43bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0081】
一方、条件(D)が満たされている場合(ステップS45bのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間T1bに亘って実行させた後(ステップS46bおよびS47bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0082】
また、上流側O2センサ28の昇温制御は、図6のフローチャートに示すように実行される。
まず、昇温制御部54は、上記の条件(D2)が満たされたか否か、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたか否かを判定する(ステップS61)。
ここで、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された場合(ステップS61のYesルート)、昇温制御部54は、上記の条件(D1)が満たされたか否か、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っているか否かを判定する(ステップS62)。
【0083】
ここで、補正後の排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている場合(ステップS62のYesルート)、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされたと判定し、上流ヒータ28A用の第1スイッチをオンにしてバッテリから上流ヒータ28Aへの給電を開始することで、上流O2センサ28の昇温を許可する(ステップS64)。
【0084】
一方、条件(D1)が満たされなかった場合、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたのではなく、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることに起因してエンジン1が始動した場合(ステップS61のNoルート)、または、補正後の排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTth以下である場合(ステップS62のNoルート)、昇温制御部54は、上記の条件(D3)が満たされたか否かを判定する。つまり、このとき、昇温制御部54は、自動始動した後のエンジン1の運転期間(自動始動後運転期間)PARが、第1昇温許可期間閾値PHth1(例えば、PHth1=60[sec])を超えたか否かを判定する(ステップS63)。
【0085】
ここで、自動始動後運転期間PARが、第1昇温許可期間閾値PHth1以下である場合(ステップS63のNoルート)、昇温制御部54は、上記の条件(D1)および(D2)は満たされなかったものの、条件(D3)が満たされたことで上流ヒータ28Aによる上流O2センサ28の昇温条件が満たされたと判定し、上流ヒータ28A用の第1スイッチをオンにしてバッテリから上流ヒータ28Aへの給電を開始することで、上流O2センサ28の昇温を許可する。
【0086】
一方、上記の条件(D1)および(D2)だけではなく、条件(D3)も満たされなかった場合、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温を制限する(ステップS65)。
他方、下流側O2センサ29の昇温制御は、図7のフローチャートに示すように実行される。
【0087】
まず、昇温制御部54は、上記の条件(E2)が満たされたか否か、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたか否かを判定する(ステップS71)。
そして、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された場合(ステップS71のYesルート)、昇温制御部54は、上記の条件(E1)が満たされたか否か、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っているか否かを判定する(ステップS72)。
【0088】
ここで、補正後の排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている場合(ステップS72のYesルート)、昇温制御部54は、下流ヒータ29Aの昇温条件が満たされたと判定し、下流ヒータ28A用の第2スイッチをオンにしてバッテリから下流ヒータ29Aへの給電を開始することで、下流O2センサ29の昇温を許可する(ステップS74)。
【0089】
一方、条件(E1)が満たされなかった場合、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたのではなく、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることに起因してエンジン1が始動した場合(ステップS71のNoルート)、および、補正後の排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth以下である場合(ステップS72のNoルート)、昇温制御部54は、上記の条件(E3)が満たされたか否かを判定する。即ち、昇温制御部54は、自動始動した後のエンジン1の運転期間(自動始動後運転期間)PARが、第2昇温許可期間閾値PHth1(例えば、PHth1=180[sec])を超えたか否かを判定する(ステップS73)。
【0090】
ここで、自動始動後運転期間PARが、第2昇温許可期間閾値PHth2以下である場合(ステップS73のNoルート)、昇温制御部54は、上記の条件(E1)および(E2)は満たされなかったものの、条件(D3)が満たされたことで下流ヒータ29Aによる下流O2センサ29の昇温条件が満たされたと判定し、下流ヒータ29A用の第2スイッチをオンにしてバッテリから下流ヒータ28Aへの給電を開始することで、下流O2センサ29の昇温を許可する。
【0091】
一方、上記の条件(E1)および(E2)だけではなく、条件(E3)も満たされなかった場合、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温を制限する(ステップS75)。
以下、図8に示すタイムチャートを用い、本発明の一実施形態に係る車両の排気系の温度推定装置の作用を、具体的について説明しておく。
【0092】
まず、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることで、スタータモータによるクランキングが開始された(周期T1)。
その後、エンジン回転数Neがクランキング回転数Ne1(例えば、Ne1=600[rpm])以上になり、クランキングが完了する(周期T2)。その後、周期T3までエンジン1がアイドル運転を行なった。
【0093】
つまり、周期T1から周期T3までの間、スロットルバルブ開度θはエンジン1がアイドル運転を行なうのに必要な開度(即ち、実質的に全閉)であり、吸気量Qinは極めて少ない。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを周期的に1ずつ減算する。もっとも、上述のように、排気系温度カウンタ値CTの下限値は0であるので、周期T1から周期T3までの間、排気系温度カウンタ値CTは0のまま維持される。
【0094】
その後、車両1を加速させるべく、ドライバがアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した(周期T4)。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算する(周期T4)。
その後、ドライバがアクセルペダルを緩め、スロットルバルブ開度θが20%程度になり、吸気量Qinが比較的多くもなく且つ少なくもなくなった(周期T4〜T8)。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、周期T4から周期T8までの間、排気系温度カウンタ値CTの加算も減算も行なわず、周期T4における排気系温度カウンタ値CTを保持する。
【0095】
そして、周期T9から周期T12までの間、アイドル制御部41が、エンジン1の自動停止を行なった。このため、カウンタ値補正部44は、周期T9から周期T12までの間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(R1=2)ずつ減算補正した。
その後、アイドル制御部41が、エンジン1の自動再始動を行なった(周期T13)。このため、カウンタ値補正部44は、オートクランキングが行なわれている間、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3で補正する。もっとも、本実施形態において、第3度合R3は0であるので、カウンタ値補正部44は、排気系温度カウンタ値CTの補正を行なわない。
【0096】
そして、エンジン1の自動再始動後、周期T14において、車両1を加速させるべく、ドライバがアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算する(周期T14)。
【0097】
その後、車両10の走行路が下り坂となり、ドライバは、アクセルペダルの踏み込みをやめたが、エンジン1の回転数Neはクランキング回転数Ne1よりも高くなっている。つまり、このとき、燃料カット制御部43は、燃料カット条件として上述した条件(5)と条件(6)とが満たされと判定し、燃料カット制御を実行した(周期T16〜T17)。このため、カウンタ値補正部44は、周期T16から周期T17までの間、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(R2=10)ずつ減算補正している。もっとも、上述のように、排気系温度カウンタ値CTの下限値は0であるので、周期T16から周期T17までの間、排気系温度カウンタ値CTは0のまま維持されている。
【0098】
その後、車両10の走行路が登り坂となり、ドライバは、車両1を加速させるべくアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算している(周期T18)。
【0099】
このように、本発明の一実施形態に係る排ガス空燃比センサの昇温制御装置によれば、排気系の温度、エンジン1の始動モード、および、自動再始動後のエンジン1の運転期間PARに応じた、昇温条件が満たされた場合には、速やかに上流O2センサ28のおよび下流O2センサ29の昇温を行うことが可能となる。
つまり、エンジン1の始動が、自動再始動ではなく、マニュアル始動であった場合は、長期間に亘ってエンジン1が停止しており、排気系の温度が低くなっている可能性が高い。このため、排気系内には、排ガス中の水蒸気が冷却されることで生じる凝縮水が残存している可能性が高いのである。
【0100】
また、排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTthに達するほどに低い場合には、排気系内に凝縮水が残存している可能性がさらに高くなる。
一方、エンジン1の始動が自動再始動であった場合は、エンジン1が短い期間しか停止しておらず、排気系の温度が高く保たれている可能性が高い。つまり、排気系内に凝縮水が残存する可能性が低いのである。
【0101】
また、排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTthを上回るほどに高い場合には、排気系内に凝縮水が残存する可能性がさらに低くなる。
また、排気管26は、三元触媒27の上流側よりも下流側が熱せられにくくなっている。これは、エンジン1から排出された排ガスが、高温のまま三元触媒27の上流側における排気管26に供給されるのに対し、三元触媒27の下流側における排気管26には、三元触媒27によって熱を奪われ比較的低温の排ガスが供給されることによるものである。
【0102】
このため、三元触媒27の下流側における排気管26に溜まっている凝縮水は、三元触媒27の上流側における排気管26に溜まっている凝縮水に比べて、蒸発するのに時間がかかる傾向にある。
発明者らはこの点に着目し、下流O2センサ29の昇温条件を、上流O2センサ28の昇温条件よりも厳しく設定することで、下流O2センサ29の故障を効果的に防止している。
【0103】
さらに、下流O2センサ29よりも早く昇温される上流O2センサ28の検出結果に基づいた、フィードバック噴射制御部47によるフィードバック噴射制御を、速やかに実行することが可能となり、排ガス性能の向上に寄与することが出来る。
また、エンジン1が自動再始動したことのみをもって、上流ヒータ28Aによる上流O2センサ28の昇温やおよび下流ヒータ29Aによる下流O2センサ29の昇温を許可するのではなく、排気系の温度、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTを考慮して、昇温の許可または制限を制御しているので、車両1のバッテリに対する電気負荷を低減することも出来る。
【0104】
特に、エンジン1が自動停止中であるということは、エンジン1によって駆動される発電機(図示略)が作動していないということであり、換言すれば、上流ヒータ28Aおよび下流ヒータ29Aによってバッテリの電力は消費されるばかりであって、充電が行なわれないということである。つまり、エンジン1が自動停止している場合は、上流ヒータ28Aおよび下流ヒータ29Aの制御を特にきめ細やかに行なう必要があるが、本実施形態に係る本発明は、これを実現しているのである。
【0105】
また、排気系温度カウンタ値推定部42により、排気系の温度を示す値(即ち、排気系温度カウンタ値CT)を、特殊なセンサや複雑な演算手法を用いずに、精度よく推定することが出来るので、ECU40の演算負荷やコストの増大を抑制することも出来る。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが出来る。その例を以下に示す。
【0106】
上述の実施形態においては、エアフローセンサ20により吸気量Qinを検出する場合について説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、エアフローセンサ20の代わりに、吸気マニホールド圧センサ18によって検出された吸気マニホールド15内の気圧Pinに基づいて、吸気量Qinを推定しても良い。
また、上述の実施形態においては、燃料噴射弁21が吸気ポート5内に燃料を噴射する場合について説明したが、エンジン1がこのような燃料噴射方式、即ち、ポート噴射方式を採用したものに限定するものではない。例えば、エンジン1が、シリンダ3の燃焼室内に燃料を噴射する方式、即ち、直噴方式を採用したものであってもよい。
【0107】
また、上述の実施形態においては、エンジン1が自然吸気方式のものである場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、エンジン1がターボチャージャやスーパーチャージャといった過給機を備えたものであってもよい。
また、上述の実施形態においては、ストップランプスイッチ(図示略)によってブレーキペダル(図示略)が踏み込まれているか否かが検出される場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、ブレーキペダルの変位量(即ち、踏込量)を検出するブレーキペダルポジションセンサを用いても良い。
【0108】
また、上述の実施形態においては、車両10に遊星歯車機構のオートマチックトランスミッションが搭載されている場合を説明したが、これに限定するものではない。例えば、CVT(Continuously Variable Transmission)を有するオートマチックトランスミッションであってもよいし、オートマチックトランスミッションに換えてマニュアルトランスミッションを用いるようにしてもよい。なお、車両10にマニュアルトランスミッションを搭載した場合、上述した条件(1)〜(3)に換えて、以下の条件(1a)〜(3a)を自動停止条件の一部として設定すればよい。そして、アイドル制御部41が、以下の条件(1a)〜(3a)が満たされた場合に、自動停止条件が満たされたと判定するようにすればよい。
【0109】
条件(1a): シフトレバーがニュートラルポジションにある
条件(2a): クラッチペダルが解放されている
条件(3a): 車速Vsがゼロである
また、車両10にマニュアルトランスミッションを搭載した場合、上述した条件(4)に換えて、以下の条件(4a)を自動再始動条件として設定すればよい。そして、アイドル制御部41が、以下の条件(4a)が満たされた場合に、自動再始動条件が満たされたと判定するようにすればよい。
【0110】
条件(4a): クラッチペダルが踏み込まれた
また、上述の実施形態においては、アイドル制御部41が、上記の条件(1)〜(3)が満たされれば、自動停止条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、以下の条件(9)および(10)が満たされると、自動停止条件が満たされたと判定されるようにしても良い。
【0111】
条件(9): 車速Vsがゼロである
条件(10): シフトレバーがパーキング(P)またはニュートラル(N)ポジションにある
また、上述の実施形態においては、アイドル制御部41が、上記の条件(4)が満たされれば、自動再始動条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記の条件(9)および(10)が満たされたことにより、エンジン1が自動停止した場合には、以下の条件(11)および(12)が満たされると、自動再始動条件が満たされたと判定されるようにしても良い。
【0112】
条件(11): ストップランプスイッチがオン
条件(12): シフトレバーがドライブ(D),リバース(R),セカンド(2nd)またはファースト(1st)ポジションに変更された
また、上述の実施形態においては、上記の条件(5)および(6)の両方が満たされた場合に燃料カット制御部43が燃料カット制御を実行する場合について説明したが、これは、車両10が減速する場合に実行される燃料カット制御(いわゆる、減速時燃料カット)であって、これに限定するものではない。例えば、燃料カット制御として、エンジン1が過回転することを抑制するための燃料カット制御(いわゆる、オーバーレボカット)が実行されるようにしてもよい。
【0113】
また、上述の実施形態においては、第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3が式(A)の関係を満たすように規定されている場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、第1度合R1と第3度合R3とを同じ値とする、即ち、R3=R1<R2という関係を満たすように第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3を規定してもよい。
【0114】
また、上述の実施形態においては、触媒劣化推定部45が、条件(7)または条件(8)の双方が満たされれば、触媒推定実行条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定するものではなく、種々のカスタマイズが可能である。
また、上述の実施形態においては、車両10のドライバがシリンダキー(図示略)をイグニッションポジションまで回転させることで作動したスタータモータによるクランキングによるエンジン1の始動をマニュアル始動という場合を説明した。しかしながら、シリンダキーに代えて、エンジンスタートボタン(図示略)を車両10に設けるようにする場合もあり得る。この場合、エンジンスタートボタンが押下されたことによるクランキングでエンジン1が始動した場合もマニュアル始動に該当する。つまり、シリンダキーおよびエンジンスタートボタンは、エンジン1をマニュアル始動させる手段(マニュアル始動手段)に該当する。
【0115】
また、上述の実施形態においては、図2のフローチャートに示すように、燃料カット条件が成立したか否か(ステップS13)の判定を行なったあとで、自動停止条件が成立したか否か(ステップS16)の判定、および、自動再始動条件が成立したか否か(ステップS19)の判定を行なう場合について説明したが、このような順番に限定されるものではない。
【0116】
また、上述の実施形態の上流O2センサ28および下流O2センサ29に代えて、LAFS(Linear A/F Sensor)を用いるようにしてもよい。
また、上述の実施形態においては、排気系温度カウンタ値CTは、エンジン1の排気系を模擬的に示す指標として用いた場合を説明したがこれに限定するものではない。例えば、排気系に設けられた触媒や、排気系に設けられた部品の温度を仮想的に示す指標としてこの排気系温度カウンタ値CTを用いても良い。
【0117】
また、上述の実施形態においては、排気系の温度が上昇するに連れて、排気系温度カウンタ値CTが大きくなる場合について説明したが、これとは逆に、排気系の温度が上昇するに連れて、排気系温度カウンタ値CTが小さくなるようにしてもよい。この場合、上述した劣化推定禁止部46が、排気系温度カウンタ値CTが排気系温度閾値CTth以上である場合、触媒劣化推定制御条件(即ち、上記の条件(7)および条件(8))が満たされていたとしても、触媒劣化推定部45による劣化推定制御の実行を禁止するようにすればよい。
【0118】
また、上述の実施形態において、昇温制御部54が、上記の条件(D1),(D2)および(D3)を組み合わせた上流O2センサ28の昇温条件を設定した場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、昇温制御部54が、条件(D3)を省略し、条件(D1)および(D2)を用いて上流O2センサ28の昇温条件を設定するようにしてもよい。
【0119】
同様に、上述の実施形態において、昇温制御部54が、上記の条件(E1),(E2)および(E3)を組み合わせた下流O2センサ29の昇温条件を設定した場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、昇温制御部54が、条件(E3)を省略し、条件(E1)および(E2)を用いて下流O2センサ29の昇温条件を設定するようにしてもよい。
【0120】
また、上述の本実施形態において、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされた場合、第1スイッチのデューティを徐々に変更するのではなく、即座に最大に設定するようになっている場合を説明した。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされた場合、第2スイッチのデューティを徐々に変更するのではなく、即座に最大に設定するようになっている場合について説明した。
【0121】
しかしながら、このような場合に限定されるものではなく、例えば、昇温制御部54が、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTに応じて、第1スイッチや第2スイッチのデューティを最大まで徐々に変更するようにしてもよい。
また、上述の本実施形態において、昇温制御部54は、上流O2センサ28の昇温条件が満たされなかった場合、第1スイッチのデューティを制限値まで徐々に変更するのではなく、即座に制限値に設定するようになっている場合を説明した。同様に、昇温制御部54は、下流O2センサ29の昇温条件が満たされなかった場合、第2スイッチのデューティを制限値まで徐々に変更するのではなく、即座に制限値に設定するようになっている場合について説明した。
【0122】
しかしながら、このような場合に限定されるものではなく、例えば、昇温制御部54が、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTに応じて、第1スイッチや第2スイッチのデューティを制限値まで徐々に変更するようにしてもよい。
また、制限値を最小に設定してもよく、この場合、上流O2センサ28および下流O2センサ29の昇温を禁止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、車両の製造産業を中心に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 エンジン
10 車両
20 エアフローセンサ(吸気量検出手段)
25 排気マニホールド(排気系)
26 排気管(排気系)
27 三元触媒(排気系)
28 上流Oセンサ(排ガス空燃比センサ)
28A 上流ヒータ(昇温手段)
29 下流Oセンサ(排ガス空燃比センサ)
29A 下流ヒータ(昇温手段)
41 アイドル制御部(自動停止再始動手段)
42 排気系温度カウンタ値推定部(排気系温度指標値推定手段)
44 カウンタ値補正部(温度指標値補正手段)
47 フィードバック噴射制御実行部(フィードバック噴射制御実行手段)
54 昇温制御部(昇温制御手段)
CT 排気系温度カウンタ値(排気系温度指標値)
AF1 三元触媒の上流側の排ガス空燃比(排ガス空燃比)
AF2 三元触媒の下流側の排ガス空燃比(排ガス空燃比)
Finj エンジンの燃料噴射量
AR エンジンの自動始動後運転期間
Hth1 第1昇温許可期間閾値
Hth2 第2昇温許可期間閾値
Qin エンジンの吸気量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが搭載された車両の排気系に設けられ該エンジンから排出された排ガスの空燃比を検出する排ガス空燃比センサと、
該車両に搭載された電源から供給される電力により作動し電気的に該排ガス空燃比センサを昇温する昇温手段と、
自動停止条件が成立すると該エンジンを自動停止させ、該自動停止後に自動再始動条件が成立すると該エンジンを自動再始動させる自動停止再始動手段と、
該排気系の温度に相関する排気系温度指標値を推定する排気系温度指標値推定手段と、
該自動停止再始動手段によって該エンジンが自動停止している間は該排気系温度指標値設定手段により設定された該排気系温度指標値を減算補正する温度指標値補正手段と、
該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制御する昇温制御手段とを備え、
該昇温制御手段は、
該温度指標値補正手段によって補正された該排気系温度指標値が排気系温度閾値を上回っているという温度条件と、該エンジンの始動が該自動停止再始動手段による自動再始動であるという始動モード条件とを昇温条件とし、
該昇温条件が満たされた場合には該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制限なく許可し、
該昇温条件が満たされなかった場合には該昇温手段による該排ガス空燃比センサの昇温を制限する
ことを特徴とする、排ガス空燃比センサの昇温制御装置。
【請求項2】
該排気系は、
該エンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化触媒を有し、
該排ガス空燃比センサは、
該排ガス浄化触媒の上流側に設けられた上流排ガス空燃比センサと、
該排ガス浄化触媒の下流側に設けられた下流排ガス空燃比センサとを有し、
該昇温手段は、
該上流排ガス空燃比センサを昇温する上流センサ昇温手段と、
該下流排ガス空燃比センサを昇温する下流センサ昇温手段とを有し、
該昇温制御手段は、
第1昇温許可期間閾値と、
該第1昇温許可期間閾値よりも長い第2昇温許可期間閾値とを設定し、
該エンジンの自動始動後運転期間が該第1昇温許可期間閾値を超えたという第1運転期間条件が満たされた場合には該温度条件または該始動モード条件が満たされていない場合であっても該上流センサ昇温手段による該上流排ガス空燃比センサの該昇温条件が満たされたと判定し、
該エンジンの自動始動後運転期間が第2昇温許可期間閾値を超えたという第2運転期間条件が満たされた場合には該温度条件または該始動モード条件が満たされていない場合であっても該下流センサ昇温手段による該下流排ガス空燃比センサの該昇温条件が満たされたと判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の排ガス空燃比センサの昇温制御装置。
【請求項3】
該上流排ガス空燃比センサにより検出された該排ガス空燃比に基づいて該エンジンの燃料噴射量を調整するフィードバック噴射制御を実行するフィードバック噴射制御実行手段をさらに備える
ことを特徴とする、請求項2記載の排ガス空燃比センサの昇温制御装置。
【請求項4】
該エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段をさらに備え、
該排気系温度指標値推定手段は、
該吸気量検出手段により検出された該エンジンの吸気量に応じて該排気系温度指標値を推定する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス空燃比センサの昇温制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−185386(P2010−185386A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30523(P2009−30523)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】