説明

排気ガス浄化装置

【課題】触媒担体の排気通路への酸素放出性能及び当該排気通路からの酸素吸収性能を向上させること。
【解決手段】固体電解質からなる触媒担体3と、この触媒担体3の排気通路3a側に設けた排気通路側電極7と、この排気通路側電極7と相俟って触媒担体3に電位差を発生させる大気側電極4と、排気通路23aに流入する排気ガスGがリッチ空燃比のときに、排気通路側電極7へプラス(+)電圧を印加させる一方、大気側電極4へマイナス(−)電圧を印加させ、排気通路23aに流入する排気ガスGがリーン空燃比のときに、排気通路側電極7へマイナス(−)電圧を印加させる一方、大気側電極4へプラス(+)電圧を印加させる制御手段10とを備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出された排気ガス中の有害なガス成分を浄化する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の燃焼室から排出された排気ガス中には、そのまま大気へ放出されると有害な一酸化炭素(CO),窒素酸化物(NOx),炭化水素(HC)等のガス成分が含まれている。これが為、従来、内燃機関においては、その有害なガス成分を大気放出前に浄化する排気ガス浄化装置が具備されている。
【0003】
例えば、その排気ガス浄化装置としては、プラチナ等の貴金属を担持した三元触媒装置や、窒素酸化物の浄化を主たる目的とするリーンNOx触媒装置が存在する。
【0004】
尚、下記の特許文献1には、触媒に電圧を印加することで酸素イオンを移動させ、窒素酸化物の還元反応を促進させるリーンNOx触媒装置が開示されている。更に、下記の特許文献2についても同様に触媒に電圧を印加して窒素酸化物を還元浄化させる技術が開示されており、また、下記の特許文献3についてもペロブスカイト型触媒に電圧を印加して窒素酸化物を還元浄化させる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特表2000−516678号公報
【特許文献2】特開平8−238422号公報
【特許文献3】特開2002−346341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、三元触媒装置においては、排気ガス中の有害なガス成分の浄化作用を促進させ、更に内燃機関の空燃比(A/F)のズレを補正する為に、雰囲気温に応じた量の酸素を触媒担体の排気通路に放出又は当該排気通路から吸収させる酸化セリウム(CeOx)等の酸化物類が担持されている。
【0007】
しかしながら、三元触媒装置に担持可能な酸化物類の量は有限であり、一方、その酸化物類が放出又は吸収可能な酸素量も有限である。従って、その酸化物類が放出又は吸収し得る酸素の最大量に達した場合には、排気ガスの浄化や空燃比のズレの補正を行うことができなくなってしまう。
【0008】
ここで、その酸化物類の担持量を多くすれば、その増加分だけ酸素の放出量又は吸収量を多くすることはできるが、その担持量の増加に伴って三元触媒装置が大型化してしまうので、搭載スペースに限りのある車輌においては得策ではない。
【0009】
また、その従来の酸化物類の酸素放出性能や酸素吸収性能は雰囲気温に依存するので、その雰囲気温の変化のみでは十分に酸素を放出又は吸収させることができない。
【0010】
尚、上記特許文献1には、リーンNOx触媒装置において窒素酸化物の還元反応を促進させる為の酸素量の制御について開示されているが、三元触媒装置については何ら開示がされていない。
【0011】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、触媒担体の排気通路への酸素放出性能及び当該排気通路からの酸素吸収性能を向上させ得る排気ガス浄化装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する為、請求項1記載の排気ガス浄化装置では、固体電解質からなる触媒担体と、この触媒担体の排気通路側に設けた排気通路側電極と、この排気通路側電極と相俟って前記触媒担体に電位差を発生させる大気側電極と、前記排気通路に流入する排気ガスがリッチ空燃比のときに、排気通路側電極へプラス(+)電圧を印加させる一方、大気側電極へマイナス(−)電圧を印加させ、前記排気通路に流入する排気ガスがリーン空燃比のときに、排気通路側電極へマイナス(−)電圧を印加させる一方、大気側電極へプラス(+)電圧を印加させる制御手段とを備えている。
【0013】
また、上記目的を達成する為、請求項2記載の排気ガス浄化装置では、導電性を有する触媒基材と、固体電解質からなる触媒担体と、この触媒担体の排気通路側に設けた排気通路側電極と、前記触媒基材と触媒担体との間に設けた大気側電極と、前記排気通路に流入する排気ガスがリッチ空燃比のときに、排気通路側電極へプラス(+)電圧を印加させる一方、大気側電極へマイナス(−)電圧を印加させ、前記排気通路に流入する排気ガスがリーン空燃比のときに、排気通路側電極へマイナス(−)電圧を印加させる一方、大気側電極へプラス(+)電圧を印加させる制御手段とを備えている。
【0014】
この請求項1又は2に記載の発明によれば、排気ガスがリッチ空燃比のときには、触媒担体を介して排気通路側電極へと酸素イオンが流れ、その触媒担体から排気通路側電極への酸素の供給量が増加するので、その酸素と排気ガス中の一酸化炭素及び炭化水素との酸化反応が促進される。また、排気ガスがリーン空燃比のときには、排気通路側電極から触媒担体へと酸素イオンが流れ、その排気通路側電極から触媒担体への酸素の吸収量が増加するので、排気ガス中の窒素酸化物の還元反応が促進される。
【0015】
また、上記目的を達成する為、請求項3記載の排気ガス浄化装置では、固体電解質からなる触媒担体と、この触媒担体の排気通路側に設けた複数の排気通路側電極と、これら各排気通路側電極と夫々対になって大気側に配置される複数の大気側電極と、前記排気通路に流入する排気ガスの空燃比に応じて前記各排気通路側電極及び前記各大気側電極における夫々の正極と負極の割合を制御可能な制御手段とを備えている。
【0016】
この請求項3記載の発明によれば、排気ガスがリッチ空燃比のときに正極の割合を多くすることによって触媒担体から排気通路側電極への酸素の供給量が増加するので、その酸素と排気ガス中の一酸化炭素及び炭化水素との酸化反応が促進される。また、排気ガスがリーン空燃比のときに負極の割合を多くすることによって排気通路側電極から触媒担体への酸素の吸収量が増加するので、排気ガス中の窒素酸化物の還元反応が促進される。
【0017】
ここで、請求項4記載の発明の如く、現在の空燃比と理論空燃比との乖離幅に応じて印加電圧を可変制御する印加電圧可変制御部を請求項1,2又は3に記載の排気ガス浄化装置の制御手段に設けてもよく、これにより、排気ガスの空燃比に応じた量の酸素を放出及び吸収させることができるので、排気ガス中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑制することができる。
【0018】
また、請求項5記載の発明の如く、固体電解質不活性領域にて排気通路側電極及び大気側電極への電圧の印可を禁止する電圧印加禁止制御部を制御手段に設けてもよく、これによっても排気ガス中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑制することができる。
【0019】
また、請求項6記載の発明の如く、低温時に触媒担体を加熱可能な加熱手段を新たに設けてもよく、これにより、その触媒担体を早期に触媒活性温度及び固体電解質活性温度へと昇温させることができるので、機関冷間時における排気ガス中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【0020】
また、請求項7記載の発明の如く、電圧印加時の電流値に応じて内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御部を制御手段に設けてもよく、更に、請求項8記載の発明の如く、その空燃比制御部を、その電流値が所定値となるように内燃機関の空燃比をフィードバック制御させるよう構成してもよい。これにより、触媒担体内の酸素量を酸素放出又は酸素吸収可能な所定量に保つことができ、排気ガス中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を維持することができる。
【0021】
また、請求項9記載の発明の如く、三元触媒装置を追加してもよい。即ち、固体電解質からなる触媒担体,排気通路側電極及び大気側電極を有する少なくとも1つの固体電解質触媒装置と少なくとも1つの三元触媒装置とによって排気ガス浄化装置を構成してもよい。これにより、固体電解質触媒装置よりも排気ガスの流れに対する上流側に三元触媒装置を設ければ、その三元触媒装置で浄化しきれなかった排気ガス中の有害なガス成分を固体電解質触媒装置で効率良く浄化することができる。また、三元触媒装置よりも上流側に固体電解質触媒装置を設ければ、その固体電解質触媒装置で浄化しきれなかった排気ガス中の有害なガス成分を三元触媒装置で効率良く浄化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る排気ガス浄化装置は、触媒担体の排気通路への酸素放出性能及び当該排気通路からの酸素吸収性能を向上させることができ,触媒担体における酸素の放出及び吸収を促進させることができるので、排気ガス中の有害なガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例1を図1から図6−2に基づいて説明する。
【0025】
図1の符号1は、本実施例1の排気ガス浄化装置を示す。この排気ガス浄化装置1は、図1に示す内燃機関100の排気経路上に配置されるものであり、その上流側と下流側に夫々排気通路101,102が接続されている。
【0026】
ここで、本実施例1にあっては、その上流側の排気通路101として排気マニホルドを設け、その排気マニホルド101における排気集合通路101aの下流端に排気ガス浄化装置1を配置した場合について例示する。尚、この排気ガス浄化装置1は、必ずしも排気マニホルド101に直接固定したものである必要はない。
【0027】
以下、その本実施例1の排気ガス浄化装置1について、図2から図6−2を用いて詳述する。
【0028】
この排気ガス浄化装置1は、図2及び図3に示す如く、筒状部を有するケース2と、このケース2内に配設された触媒構造体(触媒担体3、後述する排気通路側電極7及び大気側電極4)と、その触媒担体3を内部で保持する筒状の触媒保持体4とを備えている。
【0029】
ここで、本実施例1のケース2には、その外側から内側へと大気を導入する大気導入部2aが形成されている。例えば、その大気導入部2aは、ケース2の内外を連通させる開口部であってもよく、その開口部から筒体を立設したものであってもよい。また、その大気導入部2aは、ケース2に少なくとも1つ設けられていればよい。尚、本実施例1にあっては、排気ガスGの流れに対するケース2の上流側と下流側の夫々に1つずつ筒状の大気導入部2aが設けられている。
【0030】
更に、本実施例1の排気ガス浄化装置1においては、上述した大気導入部2aと連通する大気導入空間5がケース2の内方に形成されている。具体的に、本実施例1の大気導入空間5は、略同心円上に配置されたケース2の内壁面と触媒保持体4の外壁面との間に形成された断面略環状の空間であって、その上流側と下流側の夫々に配置された図2に示す環状のシール部材6,6で気密性が確保される。
【0031】
また、本実施例1の触媒担体3は、その上流側から下流側へと排気ガスGが通過する複数の排気通路3aを有している。本実施例1にあってはハニカム形状に成形された触媒担体3を例示するが、この触媒担体3については、複数の排気通路3aを有するものであればその形状は問わない。
【0032】
ここで、本実施例1にあっては、その各排気通路3aからの酸素の吸収量を増加させる一方、その各排気通路3aへの酸素の放出量の増加も図る。
【0033】
そこで、本実施例1にあっては、その触媒担体3を酸化ジルコニウム(ZrO2)等の固体電解質で成形し、これに電圧の印加方向(プラス、マイナス)を適宜切り替えて印加することによって、各排気通路3aから触媒担体3への酸素の吸収量及び触媒担体3から各排気通路3aへの酸素の放出量を増加させる。これが為、本実施例1の排気ガス浄化装置1においては、触媒担体3への電圧の印加を可能にし、且つその電圧の印加方向を適宜切り替え可能な電圧印加手段が設けられている。
【0034】
先ず、その電圧印加手段を構成する一要素として、図4に示す如く、白金(Pt)等の触媒活性点を有する部材からなる排気通路側電極7が触媒担体3の各排気通路3a側に積層されている。
【0035】
ここで、本実施例1にあっては、その夫々の排気通路側電極7と導通する導電性部材からなる図2から図4に示す電圧印加用構造体8を配備しており、この電圧印加用構造体8を介して各排気通路側電極7に電圧が印加される。
【0036】
本実施例1の電圧印加用構造体8は、触媒担体3の下流端における各排気通路3aの位置関係に対応させた複数の電圧印加部8aを備えており、その各電圧印加部8aを触媒担体3の下流側から夫々の排気通路3aに挿通し、その各電圧印加部8aと各排気通路側電極7とを接触(即ち導通)させることによって夫々の排気通路側電極7に電圧を印加するものである。
【0037】
ところで、本実施例1にあっては、各排気通路側電極7への電圧の印加を図る為に複数の電圧印加部8aを各々の排気通路3aへと挿通させるが、仮にその各電圧印加部8aが中実形状であると、夫々の排気通路3aが閉塞されて排気ガスGが下流へと流れなくなる。
【0038】
そこで、本実施例1の電圧印加用構造体8は、その各電圧印加部8aを中空形状に成形し、その内部を排気ガスGが下流へと通過できるように成形する。
【0039】
尚、本実施例1にあっては電圧印加用構造体8を触媒担体3の下流側に設けているが、この電圧印加用構造体8は、触媒担体3の上流側に設けてもよい。
【0040】
一方、電圧印加手段により触媒担体3に電位差を持たせる為には、上述した排気通路側電極7以外にもう1つ電極が必要になる。
【0041】
ここで、本実施例1の触媒担体3は、上述したが如く触媒保持体4の内部に保持されており、少なくともその触媒保持体4の内壁面と接している。
【0042】
そこで、本実施例1にあっては、その触媒保持体4を導電性部材で成形して大気側電極として利用する。このように、本実施例1では触媒保持体4を大気側電極として利用するので、上述した各排気通路側電極7や電圧印加用構造体8は、その触媒保持体4と導通しないように配設する。以下、その触媒保持体4を必要に応じて「大気側電極4」という。
【0043】
ここで、その触媒担体3と排気通路側電極7と大気側電極4との関係の模式図を図5に示す。即ち、本実施例1の触媒担体3は、排気通路側電極7と大気側電極4とによって挟まれた状態と同義である。
【0044】
また、本実施例1の電圧印加手段には上述した排気通路側電極7と大気側電極4との間の電圧印加方向(プラス、マイナス)を切り替え可能な電圧印加装置9が設けられている。
【0045】
これが為、本実施例1の電圧印加手段は、その排気通路側電極7と大気側電極4とに電圧印加装置9が適宜電圧印加方向を切り替えて電圧を印加することによって、触媒担体3の酸素吸収性能及び酸素放出性能を向上させることができる。
【0046】
ここで、この電圧印加装置9は、内燃機関100の燃焼制御等を制御する電子制御装置(ECU)10の電圧印加方向制御部によって電圧印加方向の切り替えが行われる。
【0047】
この本実施例1の電子制御装置10の電圧印加方向制御部は、排気マニホルド101の排気集合通路101aに設けた排気センサ(O2センサやA/Fセンサ等の排気ガスGから空燃比を測定し得るセンサ)11の検出信号に基づいて電圧印加装置9の電圧印加方向を切り替える。
【0048】
具体的に、この電子制御装置10は、排気ガスGがリッチ空燃比の場合に、排気通路側電極7にプラス(+)電圧を印加する一方、大気側電極4にマイナス(−)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御する。
【0049】
これにより、大気導入空間5の大気から固体電解質の触媒担体3を介して排気通路側電極7へと酸素イオンが流れる。これが為、触媒担体3から排気通路側電極7への酸素(O2)の供給量が増加するので、図6−1に示す如く、その酸素(O2)と各排気通路3aを流れる排気ガスG中の有害な一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)との酸化反応が促進され、無害な二酸化炭素(CO2)や水(H2O)となって排出される。即ち、排気通路側電極7にプラス(+)電圧を印加し、大気側電極4にマイナス(−)電圧を印加することで、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の浄化作用が促進される。
【0050】
ここで、その触媒担体3においては、図6−1に示す如く、大気側電極4側よりも排気通路側電極7側の方で酸素イオン濃度が高くなる。
【0051】
一方、この電子制御装置10は、排気ガスGがリーン空燃比の場合に、排気通路側電極7にマイナス(−)電圧を印加する一方、大気側電極4にプラス(+)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御する。
【0052】
これにより、排気通路側電極7から固体電解質の触媒担体3を介して大気導入空間5側へと酸素イオンが流れる。これが為、余分な酸素(O2)が大気導入空間5側へと放出されて各排気通路3a側から触媒担体3への酸素(O2)の吸収量が増加し、図6−2に示す如く、各排気通路3aを流れる排気ガスG中の有害な窒素酸化物(NOx)の排気通路側電極7における還元反応が促進される。そして、その窒素酸化物(NOx)は、酸素(O2)と窒素(N2)に還元反応され、その酸素(O2)が触媒担体3に拡散吸収される一方、窒素(N2)が排出される。
【0053】
ここで、その触媒担体3においては、図6−2に示す如く、排気通路側電極7側よりも大気側電極4側の方で酸素イオン濃度が高くなる。
【0054】
以上示した如く、本実施例1の排気ガス浄化装置1によれば、固体電解質からなる触媒担体3の酸素の放出及び吸収を促進させることができ、これが為、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例2について説明する。
【0056】
本実施例2は、排気ガス浄化装置を前述した実施例1と同様に構成し、電子制御装置10に以下の如き制御部を設けたものである。
【0057】
ところで、リッチ空燃比又はリーン空燃比の場合においては、理論空燃比(ストイキオメトリ)に対する乖離幅(理論空燃比に対するリッチ空燃比又はリーン空燃比の数値の差)如何で排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の量が異なるので、その乖離幅によって、そのガス成分の浄化に要する酸素の放出量や吸収量も異なる。
【0058】
これが為、その乖離幅の大小に拘わらず一定の印加電圧(駆動電圧値)で排気通路側電極7と大気側電極4に印加すると、例えば、乖離幅が小さい(理論空燃比に近い)場合には、触媒担体3における酸素の放出量又は吸収量が浄化に要する放出量又は吸収量に対して多くなり(即ち浄化に要する印加電圧が必要以上に高く)、無用な電力を消費してしまう。
【0059】
具体的に、リッチ空燃比において乖離幅が小さい場合には、触媒担体3から放出される酸素(O2)が一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の浄化に要する酸素量に対して必要以上に多くなり、その分の消費電力が無駄になる。また、リーン空燃比において乖離幅が小さい場合には、窒素酸化物(NOx)の浄化に要する酸素量以上に触媒担体3は酸素(O2)を吸収することができ、その分の消費電力が無駄になる。
【0060】
そこで、本実施例2にあっては、実施例1の電子制御装置10に、電圧印加装置9の印加電圧(駆動電圧値)を可変制御する印加電圧可変制御部を設ける。即ち、この実施例2の電子制御装置10は、実施例1の電圧印加方向制御部による排気通路側電極7と大気側電極4への電圧印加方向の切り替え機能と共に、現在の空燃比と理論空燃比との乖離幅に応じて印加電圧(駆動電圧値)をも可変制御し得る機能も備えている。
【0061】
例えば、本実施例2にあっては、ガス成分(CO,HC,NOx)の浄化に要する必要最小限の酸素が触媒担体3から放出又は吸収される乖離幅と印加電圧(駆動電圧値)との対応関係を実験やシミュレーションで求め、その対応関係をマップデータとして予め用意する。そして、このマップデータに基づいて印加電圧可変制御部に印加電圧を設定させる。
【0062】
例えば、この電子制御装置10は、排気センサ11の検出信号から現在の空燃比を算出し、この現在の空燃比から電圧印加方向制御部が電圧印加方向を設定すると共に、印加電圧可変制御部が現在の空燃比と理論空燃比との乖離幅を求め、上記マップデータから印加電圧を設定する。
【0063】
そして、この電子制御装置10は、設定した電圧印加方向に電圧印加方向制御部が電圧印加装置9を切り替えると共に、設定した印加電圧となるよう印加電圧可変制御部が電圧印加装置9を制御する。
【0064】
具体的に、この電子制御装置10は、排気ガスGがリッチ空燃比の場合、電圧印加方向制御部が排気通路側電極7及び大気側電極4に対して夫々プラス(+)電圧及びマイナス(−)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御すると共に、そのリッチ空燃比と理論空燃比との乖離幅に応じた印加電圧を印加するよう印加電圧可変制御部が電圧印加装置9を制御する。
【0065】
これにより、各排気通路3aを流れる一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の量に応じた酸素イオンが大気導入空間5側から固体電解質の触媒担体3を介して排気通路側電極7へと流れ、その一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)が浄化される。即ち、必要最小限の印加電圧で触媒担体3から排気通路側電極7に必要最小限の酸素(O2)を供給させて、排気ガスG中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を浄化させる。
【0066】
一方、この電子制御装置10は、排気ガスGがリーン空燃比の場合、電圧印加方向制御部が排気通路側電極7及び大気側電極4に対して夫々マイナス(−)電圧及びプラス(+)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御すると共に、そのリーン空燃比と理論空燃比との乖離幅に応じた印加電圧を印加するよう印加電圧可変制御部が電圧印加装置9を制御する。
【0067】
これにより、各排気通路3aを流れる窒素酸化物(NOx)の量に応じた酸素イオンが排気通路側電極7から固体電解質の触媒担体3を介して大気導入空間5側へと流れ、その窒素酸化物(NOx)が浄化される。即ち、必要最小限の印加電圧で必要最小限の酸素(O2)を触媒担体3に吸収させて、排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)を浄化させる。
【0068】
このように、本実施例2の排気ガス浄化装置1によれば、排気ガスGの空燃比に応じた酸素の放出及び吸収を行い得る好適な印加電圧を触媒担体3に印加することができるので、前述した実施例1における排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑制することができる。
【実施例3】
【0069】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例3について説明する。
【0070】
本実施例3は、排気ガス浄化装置を前述した実施例1と同様に構成し、電子制御装置10に以下の如き制御部を設けたものである。
【0071】
ところで、触媒担体3を構成する固体電解質は、低温時(その温度は固体電解質如何で異なるが、その固体電解質固有の温度以下)に酸素イオンの移動が大幅に制限されるので、かかる固体電解質不活性領域において排気通路側電極7及び大気側電極4へ電圧を印加しても、その触媒担体3における酸素の吸収性能及び放出性能を向上させることはできない。
【0072】
そこで、本実施例3にあっては、実施例1の電子制御装置10に、その固体電解質不活性領域の如く電圧の印加を要しないときに電圧印加装置9を駆動させない電圧印加禁止制御部を設ける。即ち、この実施例3の電子制御装置10は、実施例1の電圧印加方向制御部による排気通路側電極7と大気側電極4への電圧印加方向の切り替え機能と共に、固体電解質不活性領域の如く電圧の印加を要しないときに排気通路側電極7と大気側電極4へ電圧を印加させない機能も備えている。
【0073】
例えば、本実施例3にあっては、図1に示す如く触媒担体3の床温を測定し得る触媒温度センサ12を設け、この触媒温度センサ12の検出温度が固体電解質不活性領域の温度(固体電解質が不活性になる温度以下,即ち所定の閾値以下)である場合に、電子制御装置10の電圧印加禁止制御部が電圧印加装置9の駆動を禁止させ、排気通路側電極7及び大気側電極4に電圧を印加させないようにする。
【0074】
ここで、例えば、その触媒温度センサ12の如き触媒担体床温測定手段に替えて、機関運転状態(機関回転数や負荷等)又は電圧印加時の触媒担体3の抵抗値等から触媒担体3の床温を推定し得る触媒担体床温推定手段を設け、その推定結果と上記閾値とを比較して電圧印加装置9の駆動要否を電圧印加禁止制御部に判断させてもよい。
【0075】
このように、本実施例3の排気ガス浄化装置1によれば、前述した実施例1における排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑制することができる。
【0076】
その電子制御装置10の電圧印加禁止制御部は、触媒担体3が固体電解質の活性温度に上昇するまで電圧印加装置9の駆動を停止させる。
【0077】
ここで、本実施例3の電子制御装置10に前述した実施例2の印加電圧可変制御部を設けてもよく、これによって、より効果的な消費電力の抑制が可能になる。
【実施例4】
【0078】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例4について説明する。
【0079】
本実施例4は、排気ガス浄化装置を前述した実施例3と同様に構成し、電子制御装置10に以下の如き制御部を設けたものである。
【0080】
一般に、排気ガス浄化装置は、触媒担体3が触媒活性温度に達しない低温時(触媒不活性領域)においてはガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能が低下する。
【0081】
また、前述した実施例3においては、固体電解質不活性領域のような低温時に排気通路側電極7及び大気側電極4への電圧の印加を行わないので、触媒担体3における酸素の放出性能と吸収性能が低下し、これに伴ってガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能も低下する。
【0082】
即ち、機関始動直後等の触媒担体3が低温のときには、その触媒担体3が触媒活性温度又は固体電解質の活性温度に達するまでガス成分(CO,HC,NOx)が有効に浄化されず、その浄化性能が悪化している。
【0083】
そこで、本実施例4にあっては、例えば、大気導入空間5,触媒保持体4の内方やケース2の外周面等にヒータ等の加熱手段13を設けて、触媒担体3を触媒活性温度又は固体電解質の活性温度まで早期に上昇させる。
【0084】
ここで、その加熱手段13は、電子制御装置10の加熱制御部によりON/OFF動作が制御される。即ち、本実施例4の電子制御装置10には、実施例3における排気通路側電極7及び大気側電極4の電圧印加方向の切り替えを行う電圧印加方向制御部と電圧印加装置9の駆動を停止させる電圧印加禁止制御部とに加えて、加熱手段13のON/OFF動作を制御する触媒加熱制御部が設けられている。
【0085】
例えば、本実施例4の電子制御装置10の触媒加熱制御部は、触媒温度センサ12の如き触媒担体床温測定手段又は触媒担体床温推定手段により触媒担体3の床温を測定又は推定し、その触媒担体3の床温が触媒不活性領域又は固体電解質不活性領域である場合に加熱手段13を作動させて触媒担体3の床温を上昇させる。
【0086】
そして、その触媒加熱制御部は、その触媒担体床温測定手段又は触媒担体床温推定手段を用いて触媒担体3の床温を監視し、その触媒担体3の床温が触媒活性温度又は固体電解質の活性温度にまで上昇したときに加熱手段13を停止させる。ここで、その触媒活性温度と固体電解質の活性温度とが異なる場合、その双方の内の高い方の温度に達したときに加熱手段13を停止させることが好ましい。
【0087】
これにより、機関始動直後等の機関冷間時において、触媒担体3が早期に昇温して触媒活性領域となる一方、その触媒担体3における酸素の放出及び吸収を促進可能な固体電解質活性領域となる。
【0088】
一方、その加熱手段13が作動している間は、電子制御装置10の電圧印加禁止制御部により電圧印加装置9の駆動を停止させておく。
【0089】
以上示したが如く、本実施例4によれば、触媒担体3を早期に触媒活性温度及び固体電解質活性温度へと到達させることができるので、その後、即座に電圧印加装置9を駆動させることができる。これが為、本実施例4の排気ガス浄化装置1は、機関冷間時における排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【0090】
ここで、本実施例4の電子制御装置10に前述した実施例2の印加電圧可変制御部を設けてもよく、これによって、より効果的な消費電力の抑制が可能になる。
【実施例5】
【0091】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例5について説明する。
【0092】
本実施例5は、排気ガス浄化装置を前述した実施例1と同様に構成し、電子制御装置10に以下の如き制御部を設けたものである。
【0093】
これが為、本実施例5の排気ガス浄化装置1は、固体電解質からなる触媒担体3の酸素の放出及び吸収を促進させ、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【0094】
しかしながら、その一方で、内燃機関100がリッチ空燃比で運転し続けられた場合には、触媒担体3から酸素が放出され続けるので、その運転継続時間次第で触媒担体3内の酸素イオンが無くなり、それ以降の排気ガスG中のガス成分(CO,HC)の浄化性能が低下してしまう。
【0095】
また、内燃機関100がリーン空燃比で運転し続けられた場合には、触媒担体3に酸素が吸収され続けるので、その運転継続時間次第で触媒担体3内に酸素イオンを取り込むことができなくなり、それ以降の排気ガスG中のガス成分(NOx)の浄化性能が低下してしまう。
【0096】
これが為、そのような状況になる前に触媒担体3へと酸素を強制的に供給する又は触媒担体3から酸素を強制的に放出させて、触媒担体3内の酸素量を所定量に保つことが望ましい。例えば、その所定量としては、少なくとも通常の使用状態におけるリッチ空燃比の運転継続時間の間は酸素を放出し続けることができる一方、少なくとも通常の使用状態におけるリーン空燃比の運転継続時間の間は酸素を吸収し続けることができる酸素量に設定する。また、この所定量は、一定の値であってもよく、幅を持たせた値であってもよい。
【0097】
ここで、触媒担体3に保持されている酸素量(具体的には酸素イオン量)の変化は、その触媒担体3に一定の電圧を印加した際の電流値の変化から推定することができ、その電流値の低下により酸素量が減少していることが判る。
【0098】
そこで、本実施例5にあっては、その電圧印加時の電流値を計測して、その電流値に基づき触媒担体3内の酸素量を推定し、その推定された酸素量が所定量でない場合にスロットルバルブや燃料噴射装置等を制御して内燃機関100の空燃比を制御する空燃比制御部を電子制御装置10に設ける。即ち、この実施例5の電子制御装置10は、実施例1の電圧印加方向制御部による排気通路側電極7と大気側電極4への電圧印加方向の切り替え機能と共に、触媒担体3に保持されている酸素量(酸素イオン量)に応じて内燃機関100の空燃比を制御する機能も備えている。
【0099】
具体的に、本実施例5の空燃比制御部は、内燃機関100がリッチ空燃比で継続運転されている等により、推定された酸素量が所定の閾値を下回った場合に、内燃機関100の空燃比をリーン空燃比へと制御する。例えば、その際の閾値としては、それ以上酸素(O2)が放出されるとガス成分(CO,HC)の浄化ができなくなってしまう酸素量(酸素イオン量)、それ以上酸素(O2)が放出されると通常の使用状態におけるリッチ空燃比の運転継続時間の間に酸素不足が生じてしまう酸素量等が考えられる。
【0100】
そのようにして内燃機関100の空燃比がリーン空燃比へと切り替わることにより、夫々の排気通路3aを流れる排気ガスGがリーン空燃比となり、その排気ガスG中の酸素量を増加させることができる。
【0101】
これが為、この電子制御装置10は、しかる後に、排気通路側電極7にマイナス(−)電圧を印加する一方、大気側電極4にプラス(+)電圧を印加するよう電圧印加方向制御部が電圧印加装置9を制御し、その排気ガスG中の酸素(O2)を触媒担体3に拡散吸収させて触媒担体3内の酸素濃度を上昇させる。
【0102】
これにより、内燃機関100をリッチ空燃比で継続運転する等、触媒担体3内の酸素量が不足する虞のある状況下において、その酸素量を増加させることができるので、かかる状況下における排気ガスG中のガス成分(CO,HC)の浄化性能を維持することができる。
【0103】
また、本実施例5の空燃比制御部は、内燃機関100がリーン空燃比で継続運転されている等により、推定された酸素量が所定の閾値を上回った場合に、内燃機関100の空燃比をリッチ空燃比へと制御する。例えば、その際の閾値としては、それ以上酸素(O2)が吸収されるとガス成分(NOx)の浄化ができなくなってしまう酸素量(酸素イオン量)、それ以上酸素(O2)が吸収されると通常の使用状態におけるリーン空燃比の運転継続時間の間に酸素吸収ができなくなってしまう酸素量等が考えられる。
【0104】
そのようにして内燃機関100の空燃比がリッチ空燃比へと切り替わることにより夫々の排気通路3aを流れる排気ガスGがリッチ空燃比となるので、しかる後、この電子制御装置10は、排気通路側電極7にプラス(+)電圧を印加する一方、大気側電極4にマイナス(−)電圧を印加するよう電圧印加方向制御部に電圧印加装置9を制御させる。
【0105】
これにより、その排気ガスG中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)と触媒担体3の酸素(O2)との間で酸化反応が起こり、その触媒担体3内の酸素濃度が減少するので、内燃機関100をリーン空燃比で継続運転する等、触媒担体3の最大酸素吸収量を超える虞のある状況下において、その酸素量を減少させることができ、かかる状況下における排気ガスG中のガス成分(NOx)の浄化性能を維持することができる。
【0106】
ここで、本実施例5の空燃比制御部については、触媒担体3内の酸素量が常時上述した所定量に保たれるよう、電圧印加時の電流値を監視し、その電流値に基づいて上記の空燃比制御を行わせることが好ましい。即ち、電圧印加時の電流値が所定値に保たれるように内燃機関100の空燃比をフィードバック制御し、その触媒担体3内の酸素量を例えば上述した所定量に保つことが好ましい。
【0107】
以上示したが如く、本実施例5の排気ガス浄化装置1によれば、触媒担体3に保持されている酸素量(酸素イオン量)に応じて内燃機関100の空燃比を制御することで、その触媒担体3内の酸素量を酸素放出又は酸素吸収可能な所定量に保つことができ、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を維持することができる。
【0108】
ところで、本実施例5にあっては、推定された酸素量と比較する閾値をリーン空燃比へ制御する場合とリッチ空燃比へ制御する場合とで夫々2つ用意しているが、その夫々の閾値の中間値等、1つの閾値を用いて上記の空燃比制御を行ってもよい。
【0109】
更に、本実施例5の空燃比制御部は、電圧印加時の電流値から触媒担体3内の酸素量を推定し、その推定された酸素量と所定の閾値とを比較して空燃比制御を行っているが、上述した酸素量の閾値に対応する電流値を新たな閾値とし、この閾値と測定した電流値とを比較して空燃比制御を行ってもよい。また、かかる場合において上記の如くフィードバック制御を行うときには、監視している電流値が所定値に保たれるよう空燃比のフィードバック制御を行う。その所定値は、上述した触媒担体3内の酸素の所定量に対応させた値であって、一定の値であってもよく、幅を持たせた値であってもよい。
【0110】
ここで、本実施例5の電子制御装置10に前述した実施例2の印加電圧可変制御部や実施例3の電圧印加禁止制御部,更には実施例4の触媒加熱制御部を設けてもよく、これにより、本実施例5の排気ガス浄化装置1においても、その夫々の効果を奏することが可能になる。
【実施例6】
【0111】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例6について図7から図9−2を用いて説明する。
【0112】
本実施例6は、前述した実施例1〜5の夫々の排気ガス浄化装置1において、触媒保持体4内の触媒構造体を以下の如く変更したものである。
【0113】
本実施例6の触媒構造体は、前述した実施例1〜5と同様に、その上流側から下流側へと排気ガスGが通過する図7に示す複数の排気通路23aを有している。ここでもハニカム形状に成形された触媒構造体を例示するが、この触媒構造体については、複数の排気通路23aを有するものであればその形状は問わない。
【0114】
具体的に、この触媒構造体は、図7に示す如く、ハニカム形状に成形された導電性部材からなる触媒基材23Aと、この触媒基材23Aの排気通路23a側に配設した酸化ジルコニウム(ZrO2)等の固体電解質からなる触媒担体23と、この触媒担体23の排気通路23a側に積層した白金(Pt)等の触媒活性点を有する部材からなる排気通路側電極27と、その触媒基材23Aと触媒担体23との間に挟持された導電性部材からなる大気側電極24とで構成される。
【0115】
ここで、本実施例6にあっても各実施例1〜5と同様の電圧印加用構造体8が配設されており、その各電圧印加部8aが夫々の排気通路23aに挿通されることによって、電圧印加用構造体8を介して各排気通路側電極7へ電圧が印加される。
【0116】
図8に、この触媒構造体の触媒基材23Aと触媒担体23と排気通路側電極27と大気側電極24との関係の模式図を示す。即ち、本実施例6にあっては、実施例1と同様に排気通路側電極27へと電圧印加装置9から電圧を印可する一方、大気側電極24には触媒基材23Aを介して電圧印加装置9から電圧が印可される。
【0117】
そこで、この触媒構造体においては、導電性部材からなる触媒保持体4と触媒基材23Aとを導通させ、その触媒保持体4と触媒基材23Aとを介して電圧印加装置9から大気側電極24に電圧を印可する。これが為、この触媒構造体の排気通路側電極27は、その触媒保持体4に導通しないよう配設する。
【0118】
以上示した本実施例6の排気ガス浄化装置1においても、電子制御装置10は、排気ガスGがリッチ空燃比の場合に、排気通路側電極27にプラス(+)電圧を印加する一方、大気側電極24に触媒基材23Aを介してマイナス(−)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御する。
【0119】
これにより、大気導入空間5の大気から固体電解質の触媒担体23を介して排気通路側電極27へと酸素イオンが流れる。これが為、触媒担体23から排気通路側電極27への酸素(O2)の供給量が増加するので、図9−1に示す如く、その酸素(O2)と各排気通路23aを流れる排気ガスG中の有害な一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)との酸化反応が促進され、無害な二酸化炭素(CO2)や水(H2O)となって排出される。即ち、本実施例6にあっても、排気通路側電極27にプラス(+)電圧を印加し、大気側電極24にマイナス(−)電圧を印加することで、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の浄化作用が促進される。
【0120】
ここで、その触媒担体23においては、図9−1に示す如く、大気側電極24側よりも排気通路側電極27側の方で酸素イオン濃度が高くなる。
【0121】
一方、この電子制御装置10は、排気ガスGがリーン空燃比の場合に、排気通路側電極27にマイナス(−)電圧を印加する一方、大気側電極24に触媒基材23Aを介してプラス(+)電圧を印加するよう電圧印加装置9を制御する。
【0122】
これにより、排気通路側電極27から固体電解質の触媒担体23を介して大気導入空間5側へと酸素イオンが流れる。これが為、本実施例6にあっても、余分な酸素(O2)が大気導入空間5側へと放出されて各排気通路23a側から触媒担体23への酸素(O2)の吸収量が増加し、図9−2に示す如く、各排気通路23aを流れる排気ガスG中の有害な窒素酸化物(NOx)の排気通路側電極27における還元反応が促進される。そして、その窒素酸化物(NOx)は、酸素(O2)と窒素(N2)に還元反応され、その酸素(O2)が触媒担体23に拡散吸収される一方、窒素(N2)が排出される。
【0123】
ここで、その触媒担体23においては、図9−2に示す如く、排気通路側電極27側よりも大気側電極24側の方で酸素イオン濃度が高くなる。
【0124】
このように、本実施例6の如く触媒構造体を構成しても、各実施例1〜5と同様に固体電解質からなる触媒担体23の酸素の放出及び吸収を促進させることができ、これが為、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【0125】
また、この実施例6の排気ガス浄化装置1において、電子制御装置10に実施例2の印加電圧可変制御部を設けることによって、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑制することができ、また、その電子制御装置10に実施例3の電圧印加禁止制御部を設けることによって、より効果的に消費電力を抑制することができる。
【0126】
更に、その電子制御装置10に実施例4の触媒加熱制御部を設けることによって、機関冷間時における排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を向上させることができる。
【0127】
また更に、その電子制御装置10に実施例5の空燃比制御部を設けることによって、触媒担体23内の酸素量を所定量に保ち、排気ガスG中のガス成分(CO,HC,NOx)の浄化性能を維持することができる。
【実施例7】
【0128】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例7について図10から図13を用いて説明する。
【0129】
図10の符号31は、本実施例7の排気ガス浄化装置を示す。この排気ガス浄化装置31は、前述した実施例1〜5の夫々の排気ガス浄化装置1において触媒構造体を以下の如く変更したものであり、それら各実施例1〜5と同様に内燃機関100の排気経路上に配置されている。ここでも、この排気ガス浄化装置31は、その上流側が排気マニホルド101における排気集合通路101aの下流端に接続される一方、その下流側に排気通路102が接続されるものとして例示する。尚、この排気ガス浄化装置31についても、必ずしも排気マニホルド101に直接固定する必要はない。
【0130】
以下、本実施例7の排気ガス浄化装置31の構成について詳述する。
【0131】
この排気ガス浄化装置31は、実施例1と同様に、大気導入部2aが形成されたケース2内に触媒担体33等からなる触媒構造体を備えている。図11に本実施例7の排気ガス浄化装置31における触媒構造体の一部分の模式図を示しており、これを用いて本実施例7の触媒構造体を説明する。
【0132】
本実施例7の触媒構造体は、実施例1と同様に筒状の触媒保持体34の内部に保持された触媒担体33と、この触媒担体33に電圧を印加する複数の電極(第1から第10の排気通路側電極37a〜37j、第1から第10の大気側電極34a〜34j)とで構成されている。
【0133】
本実施例7にあっては、酸素放出性能及び酸素吸収性能を向上させて排気ガスG中の有害なガス成分(CO,THC,NOx)を効率良く浄化させる為に、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の固体電解質で実施例1と同様のハニカム形状に成形した触媒担体33が用いられている。これが為、この触媒担体33には複数の排気通路33aが形成されており、その各排気通路33a側に第1から第10の排気通路側電極37a〜37jが設けられている。
【0134】
その触媒担体33の各排気通路33a側に配設された第1から第10の排気通路側電極37a〜37jは、白金(Pt)等の触媒活性点を有する部材で成形されており、図11に示す如く排気ガスGの流れ方向に夫々間を空けて積層されている。また、その第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの夫々の間隔には絶縁体Iが配設されており、これら第1から第10の排気通路側電極37a〜37j同士の導通を防いでいる。
【0135】
一方、第1から第10の大気側電極34a〜34jは、同じく白金(Pt)等の触媒活性点を有する部材で成形されており、図11に示す如く触媒担体33の大気側において排気ガスGの流れ方向に夫々第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと同等の間隔を空けて配置されている。即ち、これら第1から第10の大気側電極34a〜34jの各々は、図11に示す如く、夫々に第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの各々と対になって触媒担体33に電圧を印加できるよう配置する。その第1から第10の大気側電極34a〜34jの夫々の間にも絶縁体Iが配設されており、これら第1から第10の大気側電極34a〜34j同士の導通を防いでいる。
【0136】
ところで、本実施例7の触媒担体33についても、上述したが如く触媒保持体34の内部に保持されており、少なくともその触媒保持体34の内壁面と接している。これが為、本実施例7にあっては、例えば、軸線方向に間隔を設けて配設した10個の環状の導電体と当該導電体の夫々の間に配設した環状の絶縁体Iとで触媒保持体34を構成し、その夫々の導電体を第1から第10の大気側電極34a〜34jとして利用する。
【0137】
即ち、本実施例7の触媒構造体は、実施例1における排気通路側電極7と大気側電極4を排気ガスGの流れ方向にて夫々複数(ここでは10個)に分割したものである。尚、ここでは、そのように実施例1における排気通路側電極7と大気側電極4とを分割したものとして例示するが、複数の排気通路側電極と複数の大気側電極とが夫々対になって触媒担体33を挟持するが如く配置されていれば、何れの態様であってもよい。
【0138】
ここで、本実施例7にあっては、その上述した第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの夫々に対してプラス(+)電圧とマイナス(−)電圧とを個別に印加できるよう構成する。例えば、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの中から選択された何れかにプラス(+)電圧を印加し、その残りにマイナス(−)電圧を印加し得る図10に示す電圧印加装置39Aを用意する一方、第1から第10の大気側電極34a〜34jの中から選択された何れかにプラス(+)電圧を印加し、その残りにマイナス(−)電圧を印加し得る図10に示す電圧印加装置39Bを用意する。
【0139】
これにより、例えば、図12に示す如く、第1排気通路側電極37aと第1大気側電極34aとを正極にし、第2排気通路側電極37bと第2大気側電極34bとを負極にすることができる。
【0140】
この場合、固体電解質からなる触媒担体33から正極たる第1排気通路側電極37a及び第1大気側電極34aへと酸素イオンが流れるので、触媒担体33から第1排気通路側電極37a及び第1大気側電極34aへの酸素(O2)の供給量が増加し、その触媒担体33の内部における酸素イオンの流出する夫々の部位においては酸素イオン濃度が低くなる。これが為、第1排気通路側電極37aにおいては、その酸素(O2)と各排気通路33aを流れる排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)との酸化反応が起こり、二酸化炭素(CO2)や水(H2O)になって各排気通路33aから排出される。また、第1大気側電極34aにおいては、酸素(O2)が外部に放出される。ここでは、第1大気側電極34aを有する触媒保持体34の外壁面とケース2の内壁面との間の空間(実施例1と同様の大気導入空間5)が上述した大気導入部2aに連通しているので、その大気導入空間5及び大気導入部2aを介して酸素(O2)が放出される。
【0141】
一方、負極たる第2排気通路側電極37bにおいては、各排気通路33aを流れる排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)の還元反応が起こり、酸素(O2)が触媒担体33に拡散吸収される一方、窒素(N2)が各排気通路33aに排出される。また、同じく負極になっている第2大気側電極34bにおいては、大気導入空間5の酸素(O2)が触媒担体33に拡散吸収される。これが為、触媒担体33の内部における酸素(O2)が拡散吸収される夫々の部位においては酸素イオン濃度が高くなる。
【0142】
ここで、この場合の触媒担体33の内部においては、上記の如き電圧印加方向で電圧を印加することによって、上述したが如く、正極たる第1排気通路側電極37a側及び第1大気側電極34a側と負極たる第2排気通路側電極37b側及び第2大気側電極34b側とで酸素イオン濃度に相違が生じる。これが為、その触媒担体33の内部では、図12に示す如く高濃度の負極側から低濃度の正極側へと酸素イオンが拡散移動し、正極側の酸素イオン濃度が更に高くなる一方、負極側の酸素イオン濃度が更に低下する。これにより、その正極においては排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)の酸化反応が促進されると共に、負極においては排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)の還元反応が促進される。
【0143】
ところで、上述した第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jに対する夫々の電圧印加方向(プラス、マイナス)の選択は、排気ガスGの状態(即ち、リッチ空燃比であるかリーン空燃比であるか、それとも理論空燃比であるか)に応じて実施例1と同様の電子制御装置(ECU)10の電圧印加方向制御部により行われる。そして、その電子制御装置10の電圧印加方向制御部は、その選択結果に基づいて夫々の電圧印加装置39A,39Bを制御する。ここで、その排気ガスGの状態は、実施例1と同様に、排気マニホルド101の排気集合通路101aに設けた第1排気センサ(O2センサやA/Fセンサ等の排気ガスGから空燃比を測定し得るセンサ)41Aの検出信号に基づいて判断される。
【0144】
以下に、第1排気センサ41Aの検出信号から排気ガスGが理論空燃比と測定された場合についての第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jに対する電圧印加方向の一例を示す。
【0145】
かかる場合、電子制御装置10の電圧印加方向制御部は、電圧印加装置39Aを制御して、図13に示す如く第1から第10の排気通路側電極37a〜37jが排気ガスGの流れ方向にて交互に正極と負極になるようにする。また、その電圧印加方向制御部は、浄化作用を促進させる為に、その第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと対になる第1から第10の大気側電極34a〜34jに対しても同じ電圧印加方向となるように電圧印加装置39Bを制御する。即ち、第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jの夫々の正極と負極の割合が同等になるように電圧を印加する。
【0146】
これにより、正極(第1,第3,第5,第7,第9の排気通路側電極37a,37c,37e,37g,37i)においては、排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)の酸化反応が促進され、二酸化炭素(CO2)や水(H2O)になって排出される。また、負極(第2,第4,第6,第8,第10の排気通路側電極37b,37d,37f,37h,37j)においては、その排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)の還元反応が促進され、窒素(N2)になって排出される。
【0147】
ここで、この理論空燃比の場合には、排気ガスGの流れ方向にて隣り合う電極が正極と負極になっているので、固体電解質の触媒担体33の内部における酸素イオンの移動速度が速くなり、夫々の電極における酸素イオンの過不足が抑制されて効率良く排気ガスGの浄化を行うことができる。
【0148】
また、リッチ空燃比と測定された場合には、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの内の正極の割合を多くして排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)の酸化反応を促進させる。その際、そのリッチ空燃比の数値(換言すれば、リッチ空燃比と理論空燃比との乖離幅)に応じて、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの正極の数量を増減させる。例えば、その数値が小さければ正極の数量を増やし、その数値が大きければ正極の数量を減らしてリッチ空燃比の数値に応じた効率の良い浄化を行わせる。
【0149】
一方、リーン空燃比と測定された場合には、リッチ空燃比の場合とは逆に第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの内の負極の割合を多くして窒素酸化物(NOx)の還元反応を促進させる。その際、そのリーン空燃比の数値(換言すれば、リーン空燃比と理論空燃比との乖離幅)に応じて第1から第10の排気通路側電極37a〜37jの内の負極の数量を増減させる。例えば、その数値が大きければ負極の数量を増やし、その数値が小さければ負極の数量を減らしてリーン空燃比の数値に応じた効率の良い浄化を行わせる。
【0150】
以上示した如く、本実施例7の排気ガス浄化装置31によれば、複数に分割された第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jに対して、排気ガス浄化装置31の上流側における排気ガスGの空燃比に応じて正極と負極の数量を調節することで、その排気ガスGをその空燃比に応じて効率良く浄化することができる。
【0151】
ところで、本実施例7にあっては上述した規定の設定値(排気ガスGの空燃比と正極及び負極の数量との対応関係)に基づいて正極と負極の数量を調節しているので、例えば、排気ガス浄化装置31の劣化等により排気ガスGが効率良く浄化されない状況も考えられる。
【0152】
そこで、排気ガス浄化装置31を通過した後の排気ガスGの空燃比を測定して浄化の状況を検証し、その結果如何で第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jに対する夫々の電圧印加方向(即ち、正極と負極の割合)をフィードバック制御することが好ましい。
【0153】
これが為、本実施例7にあっては、排気ガス浄化装置31の下流側の排気通路102に第2排気センサ(O2センサやA/Fセンサ等の排気ガスGから空燃比を測定し得るセンサ)41Bを設け、電圧印加方向制御部に浄化後の排気ガスGの空燃比を測定させる。そして、その測定結果に基づいて、その電圧印加方向制御部に浄化後の排気ガスGの空燃比が理論空燃比となるよう第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jに対する電圧印加方向を調節させる。
【0154】
その際、電子制御装置10の電圧印加方向制御部は、浄化後の排気ガスGの空燃比と閾値たる理論空燃比との乖離幅(差分)を算出し、その乖離幅から浄化後の排気ガスGがリッチ空燃比であると判断した場合には正極の数量を増加させ、リーン空燃比であると判断した場合には正極の数量を減少させる。
【0155】
ここで、その乖離幅と正極の増減(負極の増減)の数量との対応関係は、予め実験やシミュレーションを行い、その結果に基づいて設定しておくことが好ましい。
【0156】
また、本実施例7にあっては、前述した実施例2で説明した印加電圧可変制御部を電子制御装置10に設けてもよい。本実施例7の印加電圧可変制御部は、第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jの全て又は少なくとも一対の電圧値を排気ガスGの空燃比に応じて実施例2と同様に制御し得るよう構成する。これにより、排気ガスGの空燃比に応じた酸素の放出及び吸収を行い得る好適な印加電圧を触媒担体33に印加することができ、排気ガスG中の有害なガス成分の浄化性能を損なうことなく消費電力を抑えることができる。
【0157】
ここで、その印加電圧可変制御部は、電圧印加方向制御部により印加される所定の電圧値で排気ガスG中の有害なガス成分を浄化しきれない場合に用いてもよい。例えば、かかる場合に、第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jの全て又は少なくとも一対の電圧値を排気ガスGの空燃比に応じて高くする。これにより、より効率の良い排気ガスGの浄化を行うことができる。
【0158】
更にまた、前述した実施例3にて説明したように、触媒担体33を構成する固体電解質は、低温時(固体電解質不活性領域)において酸素イオンの移動が大幅に制限される。これが為、その固体電解質が所定温度(例えば300℃)以上にならなければ、如何に正極と負極の数量を調節しても上述した効率の良い排気ガスGの浄化を行うことができず、単に電力を無駄に消費するだけになってしまう。
【0159】
そこで、本実施例7にあっては、実施例3と同様に、触媒担体33の床温が所定の閾値(例えば300℃)よりも低ければ、電子制御装置10の電圧印加禁止制御部によって第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jに対する電圧の印加を禁止させてもよい。これにより、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0160】
例えば、その触媒担体33の床温は、図10に示す如く触媒温度センサ12を設け、この触媒温度センサ12の検出温度に基づいて測定してもよい。また、その触媒温度センサ12の如き触媒担体床温測定手段に替えて、機関運転状態(機関回転数や負荷等)又は電圧印加時の触媒担体33の抵抗値や電流値等から触媒担体33の床温を推定し得る触媒担体床温推定手段を設け、その推定結果と上記閾値とを比較して電圧印加装置39A,39Bの駆動要否を電圧印加禁止制御部に判断させてもよい。
【0161】
更に、前述した実施例4の如くヒータ等の加熱手段13(図11にて図示略)を設けて、触媒担体33を触媒活性温度又は固体電解質の活性温度まで早期に上昇させてもよい。
【実施例8】
【0162】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例8について説明する。
【0163】
ここで、触媒担体33における排気ガスGの浄化作用は、その排気ガスGが流入する上流側において頻繁に行われる。これが為、その触媒担体33の劣化は下流側よりも上流側の方で起こり易く、その劣化した部位の電極に電圧を印加しても十分な浄化作用を得ることができない。
【0164】
そこで、本実施例8にあっては、前述した実施例7の排気ガス浄化装置31において、電子制御装置10に触媒担体劣化検知部を設けて触媒担体33の劣化を検知させ、その検知結果に基づいて劣化した部位の排気通路側電極及び大気側電極への電圧の印加を禁止させる。
【0165】
例えば、その触媒担体33の劣化は、第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jに電圧を印加した際の電流値の変化から推定することができる。これが為、例えば、第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jの夫々の電流値が検出可能な電流計を個別に設け、触媒担体33の劣化した部位を正確に検知する。かかる場合、電子制御装置10の電圧印加方向制御部は、検知された劣化部位に対応する排気通路側電極及び大気側電極(例えば、図14に示す第1及び第2の排気通路側電極37a,37bと第1及び第2の大気側電極34a,34b)以外に対してのみ電圧を印加して、効率良く排気ガスGを浄化させると共に無駄な消費電力を抑制する。尚、その図14においてはリッチ空燃比の場合について代表して図示している。
【0166】
一方、上述したが如く第1から第10の排気通路側電極37a〜37j及び第1から第10の大気側電極34a〜34jの夫々に電流計を設けずに、少なくとも1つの電流計により全体の電流値を計測して触媒担体33の劣化を検知してもよい。かかる場合、劣化した部位に対応する排気通路側電極及び大気側電極を正確に検知することは難しいが、その劣化は、上述したが如く排気ガスGが流入する上流側において発生するので、その上流側の排気通路側電極及び大気側電極から順に電圧の印加を禁止させれば、個別に電流値を検出する場合と同様の効果を奏することができる。
【0167】
更に、前述した排気ガス浄化装置31の下流側に配置した第2排気センサ41Bの検出信号に基づいて以下の如く触媒担体33の劣化を検知してもよく、これによっても同様の効果を奏することができる。
【0168】
例えば、排気ガス浄化装置31の上流側の第1排気センサ41Aの検出信号からリッチ空燃比と測定されて、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの電圧印加方向を制御した場合について説明する。
【0169】
かかる場合に触媒担体33が劣化していなければ、第2排気センサ41Bの検出信号に基づき測定された浄化後の排気ガスGは理論空燃比になっているはずである。しかしながら、その浄化後の排気ガスGがリッチ空燃比になっている場合、このことは、通常、正極からの酸素イオンの供給量が低下していることを意味しているので、上流側の触媒担体33が劣化していると判断することができる。
【0170】
一方、その第1排気センサ41Aの検出信号からリーン空燃比と測定され、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの電圧印加方向を制御した場合についても、触媒担体33が劣化していなければ、浄化後の排気ガスGは理論空燃比になっているはずである。しかしながら、その浄化後の排気ガスGがリーン空燃比になっていることは、通常、負極からの酸素イオンの吸収量が低下していることを意味しているので、上流側の触媒担体33が劣化していると判断することができる。
【実施例9】
【0171】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例9について説明する。
【0172】
前述した実施例7や実施例8によれば空燃比に応じて効率良く排気ガスGの浄化を行うことができるが、その空燃比又は同等の空燃比で長時間継続して運転し続けると以下の理由から排気ガスGの浄化が行われなくなってしまう。
【0173】
先ず、リッチ空燃比で長時間継続して運転し続けた場合、触媒担体33の排気通路33aにはリッチガス(排気ガスG)しか流れてこないので、触媒担体33の内部における正極の周囲では酸化反応により多量の酸素イオンが放出されてしまう。更に、このリッチ空燃比の場合には、前述したが如く正極よりも負極の割合を少なくしているので、還元反応により酸素イオン濃度が高くなっている負極側から正極側への酸素イオンの供給(拡散移動)が間に合わない。そのようなことから、リッチ空燃比で長時間継続して運転し続けると、触媒担体33の内部における正極の周囲で酸素イオンが排気通路33a側へと放出され尽くしてしまい、排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)との酸化反応が行われなくなってしまう。
【0174】
また、リーン空燃比で長時間継続して運転し続けた場合には、その逆で、触媒担体33の排気通路33aにリーンガス(排気ガスG)しか流れてこないので、触媒担体33の内部における負極の周囲では還元反応によって大幅に酸素イオン濃度が高くなってしまう。更に、このリーン空燃比の場合には、前述したが如く負極よりも正極の割合を少なくしているので、その負極側から正極側への酸素イオンの供給量(拡散移動量)にも限界がある。そのようなことから、リーン空燃比で長時間継続して運転し続けると、触媒担体33の内部においては、負極の周囲で酸素イオンが飽和してしまい、排気通路33a側から酸素イオンが吸収され難くなるので、排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)の還元反応が行われ難くなってしまう。
【0175】
そこで、本実施例9は、前述した実施例7や実施例8と同様に構成した排気ガス浄化装置31において、同等の空燃比で長時間継続して運転し続けることで浄化作用が低下した際にその浄化作用を回復させる以下の如き浄化作用回復制御部を電子制御装置10に設ける。
【0176】
先ず、例えば、排気ガス浄化装置31の上流側の第1排気センサ41Aの検出信号からリッチ空燃比と測定されて、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの電圧印加方向を制御した場合について説明する。
【0177】
かかる場合にリッチ空燃比で長時間継続して運転し続け、第2排気センサ41Bの検出信号から浄化後の排気ガスGがリッチ空燃比と測定された際、電子制御装置10の浄化作用回復制御部は、現状で正極になっている第1から第5,第7,第8及び第10の大気側電極34a〜34e,34g,34h,34jの内の少なくとも1つにマイナス(−)電圧を印加して負極にする。これにより、その負極に変更された大気側電極を介して大気側から触媒担体33の内部へと酸素イオンが吸収され、その内部における正極の周囲の酸素イオン量が増加して、排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)の酸化反応の低下が抑制される。
【0178】
例えば、ここでは、正極が集中している第1から第5の大気側電極34a〜34eの内の第2及び第4の大気側電極34b,34dを負極へと変更する。これにより、その第2及び第4の大気側電極34b,34dを介して大気側から触媒担体33の内部へと酸素イオンが吸収され、その酸素イオンが正極たる第1から第5の排気通路側電極37a〜37fの周囲へと供給される。これが為、その第1から第5の排気通路側電極37a〜37fにおいては、排気ガスG中の一酸化炭素(CO),水素(H2)及び全炭化水素(THC)の酸化反応が継続して行われる。
【0179】
尚、前述した実施例8における触媒担体33の劣化検知と区別する為、例えば、第1排気センサ41Aの検出信号からリッチ空燃比と測定され続けている時間が所定時間(閾値)を超え、その際又はその後に第2排気センサ41Bから浄化後の排気ガスGがリッチ空燃比であると測定されたときに、電子制御装置10に本実施例9の制御を実行させる。一方、そのリッチ空燃比と測定され続けている時間が所定時間(閾値)を超える前に浄化後の排気ガスGがリッチ空燃比であると測定された場合には、電子制御装置10に触媒担体33の劣化と検知させ、前述した実施例8における触媒担体33の劣化時の制御を実行させる。
【0180】
一方、リーン空燃比と測定された場合には、リッチ空燃比の場合とは逆に、第1から第10の大気側電極34a〜34jの内で負極になっているものの少なくとも1つにプラス(+)電圧を印加して正極にする。これにより、その正極に変更された大気側電極を介して触媒担体33の内部から大気側へと酸素イオンが放出され、その内部における負極の周囲の酸素イオン量が減少して、排気ガスG中の窒素酸化物(NOx)の還元反応の低下が抑制される。
【0181】
尚、かかるリーン空燃比の場合においても、前述した実施例8における触媒担体33の劣化検知と区別する為、リッチ空燃比の場合と同様に、リーン空燃比と測定され続けている時間に応じて本実施例9の制御又は実施例8の制御を実行する。
【0182】
このように、本実施例9によれば、リッチ空燃比又はリーン空燃比で長時間継続して運転し続けた際の排気ガスGの浄化性能の低下を抑制することができる。尚、理論空燃比で長時間継続して運転し続けた場合には、図13に示す如く正極と負極の割合が同等になっており、酸素イオンの触媒担体33の内部への吸収量とその内部からの放出量との関係が釣り合っているので、排気ガスGの浄化性能の低下は懸念され難く、本実施例9の如き制御は行わなくともよい。
【0183】
ここで、上記と同様の効果を得る為に前述した実施例5と同様の電子制御装置10の空燃比制御部を設けてもよく、その空燃比制御部で内燃機関100の空燃比を制御することによって排気通路33aを流れる排気ガスGをリッチ空燃比又はリーン空燃比に切り替え、これにより、触媒担体33内の酸素イオン量を調節して排気ガスGの浄化性能の低下を抑制してもよい。かかる空燃比制御部の制御は、本実施例9の浄化作用回復制御部による制御と共に行ってもよく、その浄化作用回復制御部の制御に替えて行ってもよい。
【実施例10】
【0184】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例10について説明する。
【0185】
前述した実施例7〜9においては、触媒担体33の排気通路33aを流れる排気ガスGの流速が第1から第10の排気通路側電極37a〜37jにおける酸化反応や還元反応の速度と比して同等以下の場合に、空燃比に応じて効率良く排気ガスGを浄化することができる。
【0186】
しかしながら、その排気ガスGの流速が第1から第10の排気通路側電極37a〜37jにおける反応速度と比して遅い場合には、触媒担体33の上流側にて排気ガスGが殆ど浄化され、その下流側では平衡ガス(浄化後の排気ガス)になっているので、その下流側に配置された排気通路側電極や大気側電極に電圧を印加しても無駄に電力を消費するだけで意味がない。一方、その排気ガスGの流速が第1から第10の排気通路側電極37a〜37jにおける反応速度と比して速い場合には、排気ガスGが触媒担体33の上流側から下流側までの全経路を経ても浄化しきれずに、窒素酸化物(NOx)等の有害なガス成分が大気へと放出されてしまう。
【0187】
そこで、本実施例10にあっては、第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの電圧印加方向が排気ガスGの流速に応じて制御されるよう電子制御装置10の電圧印加方向制御部を構成する。
【0188】
ここで、排気ガスGの流速については、例えば、排気集合通路101aに流速計を設けて計測してもよく、内燃機関100の機関回転数や負荷等から所定のマップを用いて推定してもよい。
【0189】
本実施例10にあっては、予め実験やシミュレーションを行い、排気ガスGが最大流速のときの第1から第10の排気通路側電極37a〜37jと第1から第10の大気側電極34a〜34jの双方の電圧印加方向を定めておく。
【0190】
そして、排気ガスGの流速が遅い場合には、その流速に応じて触媒担体33の下流側に配置されている排気通路側電極や大気側電極への電圧の印加を禁止させる。例えば、その排気ガスGの流速と電圧の印加を禁止する排気通路側電極及び大気側電極との対応関係は、予め実験やシミュレーションを行い、その結果に基づいて設定しておく。かかる場合における残りの排気通路側電極と大気側電極への電圧印加方向についても、実施例7にて説明したように、空燃比に応じたものを予め実験やシミュレーションを行って設定しておく。
【0191】
この本実施例10によれば、排気ガスGの流速が遅いときに無駄な電力の消費を抑えつつその流速に応じて排気ガスGを効率良く浄化することができる一方、排気ガスGの最大流速時に浄化し尽くすことができる。
【実施例11】
【0192】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例11について説明する。
【0193】
本実施例11は、上記の各実施例1〜10で示した固体電解質からなる触媒担体3(33)を備えている排気ガス浄化装置1(31)に加えて、内燃機関100の同じ排気経路上に図15に示す三元触媒装置50を設けたものである。以下、その排気ガス浄化装置1(31)を便宜上「固体電解質触媒装置1(31)」といい、本実施例11にあっては、その固体電解質触媒装置1(31)と三元触媒装置50とを備えるものを総じて排気ガス浄化装置という。
【0194】
本実施例11にあっては、図15に示す如く、排気マニホルド101の排気集合通路101aと排気通路102との間に三元触媒装置50を配置し、その排気通路102の下流端に固体電解質触媒装置1(31)を配置した場合について例示する。尚、その固体電解質触媒装置1(31)の下流側には排気通路103が接続されている。
【0195】
また、本実施例11の排気集合通路101a及び2つの排気通路102,103には、第1から第3の排気センサ(O2センサやA/Fセンサ等の排気ガスGから空燃比を測定し得るセンサ)51A〜51Cが個々に設けられている。
【0196】
最初に、排気経路上に前述した各実施例1〜6で示した固体電解質触媒装置(排気ガス浄化装置)1を備えている場合の動作の一例について詳述する。
【0197】
かかる場合の電子制御装置10は、実施例5で示した空燃比制御部により、第1排気センサ51Aの検出信号に基づき内燃機関100から排出された排気ガスGの空燃比を求め、三元触媒装置50で排気ガスG中の一酸化炭素(CO),全炭化水素(THC)及び窒素酸化物(NOx)を最適に浄化できるように燃料噴射装置等を制御して内燃機関100の空燃比のフィードバック制御を行う。また、この電子制御装置10は、そのフィードバック制御と共に、第2排気センサ51Bの検出信号に基づいて三元触媒装置50を通過した排気ガスGの空燃比を算出する。
【0198】
ここで、その三元触媒装置50を通過した排気ガスGが理論空燃比になっていれば、内燃機関100から排出された排気ガスG中の有害なガス成分が三元触媒装置50によって浄化されていることを示している。これが為、電子制御装置10は、固体電解質触媒装置1に対して電圧を印加させる必要が無く、無駄な電力の消費を無くすことができる。
【0199】
一方、三元触媒装置50を通過した排気ガスGがリッチ空燃比になっている場合、電子制御装置10は、実施例2で示した印加電圧可変制御部により、固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGが理論空燃比となるように排気通路側電極7及び大気側電極4を制御する。その際、内燃機関100から排出された一酸化炭素(CO)や全炭化水素(THC)の多くは三元触媒装置50で浄化されており、その三元触媒装置50によって浄化しきれていない残存分のみを固体電解質触媒装置1で浄化すればよいので、固体電解質触媒装置1のみで浄化する場合よりも低めの電圧値が設定される。これにより、その固体電解質触媒装置1においては、三元触媒装置50を通過した排気ガスG中に残存している一酸化炭素(CO)及び全炭化水素(THC)が必要最小限の消費電力で浄化される。
【0200】
また、三元触媒装置50を通過した排気ガスGがリーン空燃比になっている場合にも、電子制御装置10の印加電圧可変制御部は、固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGが理論空燃比となるように排気通路側電極7及び大気側電極4を制御する。その際、内燃機関100から排出された窒素酸化物(NOx)の多くは三元触媒装置50で浄化されているので、上述したリッチ空燃比のときと同様に低めの電圧値が設定される。これにより、その固体電解質触媒装置1においては、三元触媒装置50を通過した排気ガスG中に残存している窒素酸化物(NOx)が必要最小限の消費電力で浄化される。
【0201】
本実施例11にあっては、電子制御装置10が更に第3排気センサ51Cの検出信号に基づいて固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGの空燃比を算出し、固体電解質触媒装置1で適正に排気ガスGが浄化されているか否かを判断する。ここで、その排気ガスGの空燃比が理論空燃比であれば排気ガスGが適正に浄化されているが、リッチ空燃比やリーン空燃比の場合には、電子制御装置10の印加電圧可変制御部は、固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGの空燃比が理論空燃比となるように排気通路側電極7及び大気側電極4に対して印加する電圧値のフィードバック制御を実行する。
【0202】
このように、排気経路上に三元触媒装置50を配置し、更に、この三元触媒装置50の下流側に各実施例1〜6で示した固体電解質触媒装置1を配置して排気ガス浄化装置を構成することによって、上流側の三元触媒装置50を用いて浄化しきれなかった排気ガスG中の有害なガス成分を固体電解質触媒装置1で浄化することができるので、より効果的な排気ガスGの浄化が可能になる。
【0203】
また、その三元触媒装置50で排気ガスGを浄化し終えた場合には、下流側の固体電解質触媒装置1に電圧を印加しなくてもよいので無駄な電力の消費を無くすことができる。一方、その三元触媒装置50を通過した排気ガスG中に有害なガス成分が残存していても、その三元触媒装置50において有害なガス成分の多くが浄化されるので、固体電解質触媒装置1に印加する電圧の低電圧化が図れ、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0204】
ここで、排気経路上に前述した各実施例7〜10で示した固体電解質触媒装置(排気ガス浄化装置)31を備えている場合についても、同様にして消費電力を抑える制御が可能である。
【実施例12】
【0205】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例12について説明する。
【0206】
本実施例12は、上述した実施例11の排気ガス浄化装置において固体電解質触媒装置1(31)と三元触媒装置50との位置関係を入れ替えたものである。即ち、本実施例12にあっては、図16に示す如く、排気マニホルド101の排気集合通路101aと排気通路102との間に固体電解質触媒装置1(31)を配置し、その排気通路102の下流端に三元触媒装置50を配置している。
【0207】
ここで、本実施例12にあっても、排気集合通路101a及び2つの排気通路102,103には、第1から第3の排気センサ51A〜51Cが個々に設けられている。
【0208】
最初に、排気経路上に前述した各実施例1〜6で示した固体電解質触媒装置(排気ガス浄化装置)1を備えている場合の動作の一例について詳述する。
【0209】
かかる場合の電子制御装置10は、その空燃比制御部により、第1排気センサ51Aの検出信号に基づき内燃機関100から排出された排気ガスGの空燃比を求め、燃料噴射装置等を制御して内燃機関100の空燃比のフィードバック制御を行っている。また、この電子制御装置10は、そのフィードバック制御と共に、第1排気センサ51Aの検出信号から求めた内燃機関100からの排気ガスGの空燃比に応じて固体電解質触媒装置1へと印加する電圧の制御を行う。
【0210】
例えば、内燃機関100から排出された排気ガスGが理論空燃比の場合には、電子制御装置10は固体電解質触媒装置1に対して何も行わずに無駄な電力の消費を抑制する。一方、その排気ガスGがリッチ空燃比又はリーン空燃比の場合には、電子制御装置10の印加電圧可変制御部は固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGが理論空燃比となるように排気通路側電極7及び大気側電極4を制御する。ここで、そのリッチ空燃比又はリーン空燃比の場合には、電子制御装置10が第2排気センサ51Bの検出信号に基づいて固体電解質触媒装置1を通過した排気ガスGの空燃比を算出し、その固体電解質触媒装置1で適正に排気ガスGが浄化されているか否かを判断してフィードバック制御を行う。
【0211】
そして、本実施例12の電子制御装置10は、そのように制御された三元触媒装置50通過後の排気ガスGの空燃比を第3排気センサ51Cの検出信号に基づいて算出し、固体電解質触媒装置1と三元触媒装置50とによって排気ガスGが適正に浄化されたか否かの最終判断を行う。
【0212】
このように、各実施例1〜6で示した固体電解質触媒装置1の下流側に三元触媒装置50を配置して排気ガス浄化装置を構成することによって、上流側の固体電解質触媒装置1で浄化しきれなかった排気ガスG中の有害なガス成分を三元触媒装置50で浄化することができるので、より効果的な排気ガスGの浄化が可能になる。
【0213】
ここで、その各実施例1〜6の固体電解質触媒装置1に替えて前述した実施例7〜10の固体電解質触媒装置31を適用してもよい。
【0214】
ところで、本実施例12にあっては、三元触媒装置50の下流側に更に別の固体電解質触媒装置を配備して排気ガス浄化装置を構成してもよい。その固体電解質触媒装置は、上述した固体電解質触媒装置1(31)と同様に構成されたものである。以下、その固体電解質触媒装置1(31)を「第1固体電解質触媒装置1A(31A)といい、今回新たに設けた固体電解質触媒装置を「第2固体電解質触媒装置1B(31B)」という。即ち、本実施例12の内燃機関100の排気経路上には、図17に示す如く、その上流側から順に、第1固体電解質触媒装置1A(31A),三元触媒装置50及び第2固体電解質触媒装置1B(31B)が設けられている。その第2固体電解質触媒装置1B(31B)は、排気通路103の下流端に接続される。
【0215】
これによれば、内燃機関100から排出された排気ガスG中の有害なガス成分を上流側の第1固体電解質触媒装置1A(31A)で浄化しきれず、更に、三元触媒装置50を経ても完全に浄化することができない状況下において、排気通路103に残存している排気ガスG中の有害なガス成分を第2固体電解質触媒装置1B(31B)をも用いることで効果的に浄化することができる。例えば、かかる状況としては機関始動直後等の三元触媒装置50における触媒床温が低い場合が考えられ、その際には、前述した加熱手段13によって第1及び第2の固体電解質触媒装置1A,1B(31A,31B)の触媒床温を早期に上昇させて排気ガスGを効果的に浄化させることができる。
【0216】
尚、このような3つの触媒装置(第1及び第2の固体電解質触媒装置1A,1B(31A,31B)並びに三元触媒装置50)を設けた場合には、その第2固体電解質触媒装置1B(31B)の下流側にも排気センサ(図示略)を配備し、この排気センサの検出信号から算出した排気ガスGの空燃比に基づいて排気ガスGが適正に浄化されたか否かの最終判断を電子制御装置10に行わせてもよい。
【0217】
また、上述したが如き構成に限ることなく、例えば上記の第2固体電解質触媒装置1B(31B)の下流に更に三元触媒装置を設ける等してもよい。即ち、本実施例12にあっては、少なくとも1つの固体電解質触媒装置を内燃機関100の排気経路の上流側に配置すると共に、その固体電解質触媒装置の下流側に少なくとも1つの三元触媒装置を設けていればよく、かかる条件を満たしていれば、排気経路上の何れの場所に他の固体電解質触媒装置や他の三元触媒装置を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0218】
以上のように、本発明に係る排気ガス浄化装置は、触媒担体の排気通路への酸素放出性能及び当該排気通路からの酸素吸収性能を向上させて、排気ガス中の有害なガス成分(CO,THC,NOx)の浄化性能を向上させる技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明に係る排気ガス浄化装置が適用される内燃機関の実施例1〜6における全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例1〜5の構成を内部からみた図である。
【図3】実施例1〜5における排気ガス浄化装置の触媒構造体と電圧印加手段とについて説明する斜視図である。
【図4】実施例1〜5における排気ガス浄化装置の触媒構造体と電圧印加手段の詳細構造を説明する断面図である。
【図5】実施例1〜5における排気ガス浄化装置の触媒担体と排気通路側電極と大気側電極との関係を説明する模式図である。
【図6−1】実施例1〜5の排気ガス浄化装置におけるリッチ空燃比運転時の電圧印加方向と排気ガス浄化作用について説明する説明図である。
【図6−2】実施例1〜5の排気ガス浄化装置におけるリーン空燃比運転時の電圧印加方向と排気ガス浄化作用について説明する説明図である。
【図7】本発明に係る排気ガス浄化装置の実施例6における触媒構造体と電圧印加手段の詳細構造を説明する断面図である。
【図8】実施例6における排気ガス浄化装置の触媒基材と触媒担体と排気通路側電極と大気側電極との関係を説明する模式図である。
【図9−1】実施例6の排気ガス浄化装置におけるリッチ空燃比運転時の電圧印加方向と排気ガス浄化作用について説明する説明図である。
【図9−2】実施例6の排気ガス浄化装置におけるリーン空燃比運転時の電圧印加方向と排気ガス浄化作用について説明する説明図である。
【図10】本発明に係る排気ガス浄化装置が適用される内燃機関の実施例7〜10における全体構成の一例を示す図である。
【図11】実施例7の排気ガス浄化装置における触媒構造体の一部分の模式図である。
【図12】実施例7における排気ガス浄化装置の基本的動作を説明する説明図である。
【図13】実施例7の排気ガス浄化装置における理論空燃比運転時の電圧印加方向と排気ガス浄化作用について説明する説明図である。
【図14】実施例8の排気ガス浄化装置において触媒担体が劣化した際の電圧印加例について説明する説明図である。
【図15】本発明に係る排気ガス浄化装置が適用される内燃機関の実施例11における全体構成の一例を示す図であって、排気経路の上流側から順に三元触媒装置と固体電解質触媒装置が配置された場合を表した図である。
【図16】本発明に係る排気ガス浄化装置が適用される内燃機関の実施例12における全体構成の一例を示す図であって、排気経路の上流側から順に固体電解質触媒装置と三元触媒装置が配置された場合を表した図である。
【図17】本発明に係る排気ガス浄化装置が適用される内燃機関の実施例12における全体構成の他の例を示す図であって、排気経路の上流側から順に固体電解質触媒装置,三元触媒装置及び固体電解質触媒装置が配置された場合を表した図である。
【符号の説明】
【0220】
1,1A,1B,31,31A,31B 排気ガス浄化装置(固体電解質触媒装置)
2 ケース
2a 大気導入部
3,23,33 触媒担体
3a,23a,33a 排気通路
4,34 大気側電極(触媒保持体)
5 大気導入空間
6 シール部材
7,27 排気通路側電極
8 電圧印加用構造体
8a 電圧印加部
9,39A,39B 電圧印加装置
10 電子制御装置(ECU)
11 排気センサ
12 触媒温度センサ
13 加熱手段
23A 触媒基材
24 大気側電極
100 内燃機関
G 排気ガス
34a〜34j 第1から第10の大気側電極
37a〜37j 第1から第10の排気通路側電極
41A 第1排気センサ
41B 第2排気センサ
50 三元触媒装置(第1三元触媒装置)
51A 第1排気センサ
51B 第2排気センサ
51C 第3排気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質からなる触媒担体と、
この触媒担体の排気通路側に設けた排気通路側電極と、
この排気通路側電極と相俟って前記触媒担体に電位差を発生させる大気側電極と、
前記排気通路に流入する排気ガスがリッチ空燃比のときに、前記排気通路側電極へプラス(+)電圧を印加させる一方、前記大気側電極へマイナス(−)電圧を印加させ、前記排気通路に流入する排気ガスがリーン空燃比のときに、前記排気通路側電極へマイナス(−)電圧を印加させる一方、前記大気側電極へプラス(+)電圧を印加させる制御手段と、
を備えることを特徴とした排気ガス浄化装置。
【請求項2】
導電性を有する触媒基材と、
固体電解質からなる触媒担体と、
この触媒担体の排気通路側に設けた排気通路側電極と、
前記触媒基材と触媒担体との間に設けた大気側電極と、
前記排気通路に流入する排気ガスがリッチ空燃比のときに、前記排気通路側電極へプラス(+)電圧を印加させる一方、前記大気側電極へマイナス(−)電圧を印加させ、前記排気通路に流入する排気ガスがリーン空燃比のときに、前記排気通路側電極へマイナス(−)電圧を印加させる一方、前記大気側電極へプラス(+)電圧を印加させる制御手段と、
を備えることを特徴とした排気ガス浄化装置。
【請求項3】
固体電解質からなる触媒担体と、
この触媒担体の排気通路側に設けた複数の排気通路側電極と、
これら各排気通路側電極と夫々対になって大気側に配置される複数の大気側電極と、
前記排気通路に流入する排気ガスの空燃比に応じて前記各排気通路側電極及び前記各大気側電極における夫々の正極と負極の割合を制御可能な制御手段と、
を備えることを特徴とした排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段に、現在の空燃比と理論空燃比との乖離幅に応じて印加電圧を可変制御する印加電圧可変制御部を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記制御手段に、固体電解質不活性領域にて前記排気通路側電極及び大気側電極への電圧の印可を禁止する電圧印加禁止制御部を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
低温時に前記触媒担体を加熱可能な加熱手段を新たに設けたことを特徴とする請求項1から5の内の何れか1つに記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記制御手段に、電圧印加時の電流値に応じて内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御部を設けたことを特徴とする請求項1から6の内の何れか1つに記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記空燃比制御部は、前記電流値が所定値となるように前記内燃機関の空燃比をフィードバック制御させるよう構成したことを特徴とする請求項7記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
前記固体電解質からなる触媒担体,排気通路側電極及び大気側電極を有する少なくとも1つの固体電解質触媒装置と、少なくとも1つの三元触媒装置とによって構成したことを特徴とする請求項1から8の内の何れか1つに記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−189023(P2006−189023A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174200(P2005−174200)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】