説明

排気ガス浄化装置

【課題】排気ガス浄化装置に関し、簡素な構成で、排気後処理装置の低温特性を改善するとともに、NOxの還元浄化率を向上し、白煙の発生を効果的に低減する。
【解決手段】内燃機関10の排気通路11に設けられた排気後処理装置30と、排気通路燃料噴射手段22と、第1の触媒35と、排気通路燃料噴射手段22から噴射される燃料を熱分解する第2の触媒36と、排気温度を推定して出力する排気温度推定手段と、内燃機関10の燃料噴射を制御する内燃機関噴射制御手段40と、排気後処理装置30の再生を制御する再生制御手段とを備え、内燃機関噴射制御手段40は、再生制御手段による再生制御に際し、排気温度推定手段の出力値が閾値以下の場合は、第2の触媒36の触媒温度を閾値以上に昇温すべく、第1の触媒に燃料を供給するポスト噴射を含む多段噴射で内燃機関の燃料噴射を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられた排気後処理装置と、排気後処理装置の上流側に排気管内噴射弁とを有する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(内燃機関)の排気後処理装置として、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレイト・フィルタ)や、NOxを還元浄化するLNT(LNT吸蔵還元型触媒)が用いられている。また、このDPFやLNTの強制再生として、排気管内に燃料を直接噴射する排気管内噴射が知られている。排気管内噴射はポスト噴射に比べ燃料によるオイル希釈が無く、また、排気後処理装置の強制再生時にEGRを併用できるのでNOxの悪化防止等の利点がある。
【0003】
この排気管内噴射においては、噴射された燃料は排気ガス中で熱分解(気化)されながら下流側のDPFやLNTに到達して、HC,COの燃焼により触媒を昇温したり、NOx還元剤として機能する。噴射された燃料のHC,COへの熱分解が始まる温度は200〜250℃以上なので、排気管への燃料付着等を防止するためには、この200〜250℃以上の排気ガス温度で排気管内噴射を行うのが好ましい。そのため、アイドル等200℃以下の排気ガス温度で排気管内噴射を行う場合は、排気ガスを昇温すべく、多段噴射を併用する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、内燃機関の排気通路にNOx吸蔵還元型の触媒を設け、NOx還元制御時には排気管内噴射と多段噴射とを併用し得る排気ガス浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−170218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、排気ガスの昇温のために行う多段噴射は、噴射パターンが通常噴射に比べ大幅にリタードされ、燃焼が膨張行程に集中する。したがって、加速時には、空燃比λが低下して筒内圧力も低下するため燃焼が不安定となり、加速不良等によるドライバビリティの悪化を招く場合がある。
【0007】
また、アイドル以外の運転条件では多段噴射を中止して通常噴射を行うようにすると、低負荷領域では排気ガス温度が低下する。このような状態で排気管内噴射を行うと、噴射された燃料(軽油)が熱分解されずに排気管内に付着する。そのため、この付着した燃料が排気ガス温度の上昇時に揮発して白煙を発生させる虞がある。
【0008】
また、排気ガス温度の低い低排ガス温度雰囲気では、排気管内に噴射された燃料(軽油)の分解が進まない状態で下流側の触媒に到達するので、触媒前面が燃料によるフィルタ目詰まりを引き起こすおそれがある。また、LNTの強制再生(リッチスパイク)時には、NOxの還元効率が低下し、HCスリップも悪化する場合がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、排気後処理装置の低温特性を改善するとともに、NOx還元浄化率を向上し、白煙の発生を効果的に低減できる排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の排気ガス浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられた排気後処理装置と、前記排気後処理装置の上流側の前記排気通路に設けられた排気通路燃料噴射手段と、前記排気通路燃料噴射手段の上流側の前記排気通路に設けられた第1の触媒と、前記排気通路燃料噴射手段と前記排気後処理装置との間の前記排気通路に設けられ、前記排気通路燃料噴射手段から噴射される燃料を熱分解する第2の触媒と、前記内燃機関の排気温度を検出または推定して出力する排気温度推定手段と、前記内燃機関の燃料噴射を制御する内燃機関噴射制御手段と、前記排気通路燃料噴射手段から燃料を噴射して行う前記排気後処理装置の再生を制御する再生制御手段とを備え、前記内燃機関噴射制御手段は、前記再生制御手段による再生制御に際し、前記排気温度推定手段の出力値が閾値以下の場合は、前記第2の触媒の触媒温度を閾値以上に昇温すべく、前記第1の触媒に燃料を供給するポスト噴射を含む多段噴射で、前記内燃機関の燃料噴射を制御することを特徴とする。
【0011】
また、前記排気後処理装置は、DPFとLNT吸蔵還元型触媒とを備えるようにしてもよい。
【0012】
また、前記排気後処理装置は、DPFとSCR選択還元型触媒とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気ガス浄化装置によれば、簡素な構成で、排気後処理装置の低温特性を改善することができるとともに、NOxの還元浄化率を向上し、白煙の発生を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の制御ECUを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置のPM強制再生制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置のLNT強制再生制御を示すフローチャートである。
【図5】他の実施形態に係る排気ガス浄化装置の構成を示す概略図である。
【図6】他の実施形態に係る排気後処理装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により、本発明に係る一実施形態について説明する。
【0016】
図1〜4は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置1を説明するものである。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(内燃機関)10には、吸気マニホールド10bと排気マニホールド10aとが設けられている。また、この吸気マニホールド10bには、ディーゼルエンジン10内の吸気弁(不図示)の開弁により新気(吸入空気)を導入する吸気通路14が接続され、排気マニホールド10aには、排気弁(不図示)の開弁により排気ガスを排出する排気通路11が接続されている。
【0018】
吸気通路14の上流側には吸気スロットル18と、インタクーラー17と、過給器12と、マスエアフローセンサ16が介装され、さらに吸気通路14の先端にはエアフィルタ15が設けられている。また、吸気マニホールド10bと排気マニホールド10aとは、EGR通路19によって連通され、このEGR通路19には、EGRクーラー20とEGR弁21とが設けられている。
【0019】
排気通路11の下流側には、詳細を後述する排気後処理装置30が設けられており、その上流側には、酸化触媒(第1の触媒)35が設けられている。また、酸化触媒35の下流側の排気通路11には、燃料である軽油を熱分解(気化)する軽油分解触媒(第2の触媒)36が設けられている。
【0020】
酸化触媒35と軽油分解触媒36との間には、排気管内に燃料を噴射する排気管内噴射弁(排気通路燃料噴射手段)22が設けられている。また、酸化触媒35の上流側の排気通路11には、ディーゼルエンジン10から排出される排気ガス温度を検出する排気温度センサ24が設けられている。
【0021】
排気後処理装置30は、上流側から順にLNT(LNT吸蔵還元型触媒)31とDPF32とを備え構成されている。
【0022】
LNT31は、公知の構造であって、ハニカム構造の触媒担体にNOx吸蔵材等を担持して形成されている。このLNT31は、リーン雰囲気の通常運転時にNOxを吸蔵するとともに、リッチ雰囲気下で吸蔵したNOxを放出してN2に還元浄化する。一般的にディーゼルエンジンはリーン雰囲気で運転される。したがって、LNT31は、後述するLNT強制再生制御部(再生制御手段)44によって、排気管内噴射弁22から燃料を噴射して一時的にリッチ雰囲気にすることで、NOxをN2に還元浄化する再生制御が行われる。
【0023】
DPF(ディーゼル・パティキュレイト・フィルタ)32は、公知の構造あって、セラミック製のハニカム構造体からなる多数のセル内をガス流路として備え、上流側と下流側とを交互に目封じして形成されている。このDPF32は、排気ガスに含まれるPM(粒子状物質)を捕集するとともに、後述するPM強制再生制御部(再生制御手段)43によってPM燃焼温度(例えば、500℃程度)まで昇温されることで、堆積したPMを燃焼除去する再生制御が行われる。
【0024】
酸化触媒35は、メタル又はセラミック製のハニカム構造を有する担体に、白金(Pt)等を担持して形成されている。この酸化触媒35は、後述するポスト噴射によって酸化触媒活性温度(例えば、200℃〜250℃)以上に昇温される。
【0025】
軽油分解触媒36は、軽油の長鎖成分を分解して短鎖のHC成分やCO成分に分解するもので、メタル又はセラミック製のハニカム構造を有する担体に、パラジウム(Pd)を主成分として担持して形成されている。この軽油分解触媒36は、後述する制御ECU40のエンジン噴射制御部(内燃機関噴射制御手段)42によるポスト噴射によって酸化触媒35が昇温され、この酸化触媒35を通過する排気ガス温度が触媒活性温度(例えば200℃〜250℃)以上に昇温されると、LNT31やDPF32の再生制御時に排気管内噴射弁22から噴射される燃料(軽油)を速やかに短鎖のHCやCOに熱分解して、下流側のLNT31やDPF32へと送り出す。
【0026】
本実施形態において、この酸化触媒35と軽油分解触媒36との容量は、各々でディーゼルエンジン10の運転状態がアイドル〜低負荷時におけるS/V(例えば、100000hr−1程度)を許容できる値、すなわち触媒活性が確保できる上限値で設けられている。また、酸化触媒35と軽油分解触媒36とにメタル製の担体を用いた場合は、排気通路11と一体構造にすることで、排気ガス浄化装置1をよりコンパクトにできる。
【0027】
次に、本実施形態に係る制御ECU40について説明する。
【0028】
制御ECU40は、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、制御ECU40には、エンジン回転数センサ(不図示)、アクセル開度センサ(不図示)、排気温度センサ24等の出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に係る制御ECU40は、排気温度推定部(排気温度推定手段)41と、エンジン噴射制御部(内燃機関噴射制御手段)42と、PM強制再生制御部(再生制御手段)43と、LNT強制再生制御部(再生制御手段)44とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである制御ECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0030】
排気温度推定部(排気温度推定手段)41は、ディーゼルエンジン10から排出される排気ガスの温度を推定する。この推定温度は、予め作成した燃料噴射量と排気ガス量との関係を示す温度特性マップ(不図示)に基づいて算出される。
【0031】
エンジン噴射制御部(内燃機関噴射制御手段)42は、ディーゼルエンジン10の燃料噴射を制御する。より詳しくは、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(例えば、200℃)以下の時は、1燃焼行程(吸気−圧縮−爆発−排気)中に、燃料をパイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射、ポスト噴射の複数回で噴射する多段噴射を行うべく、ディーゼルエンジン10の燃料噴射弁9に制御信号を出力する。一方、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(200℃)よりも高い時は、1燃焼行程中に運転状態に応じた適量の燃料を1回噴射する通常噴射を行うべく、ディーゼルエンジン10の燃料噴射弁9に制御信号を出力する。
【0032】
エンジン噴射制御部42は、この多段噴射のうち、所定の時期に少量の燃料を噴射するポスト噴射によって、酸化触媒35の触媒温度を閾値(200℃)以上に昇温するとともに、酸化触媒35の触媒温度を200℃〜250℃以上(以下、目標温度ともいう)に保持すると、多段噴射を中止し、通常噴射に切り換えてディーゼルエンジン10の燃料噴射を制御する。なお、この制御に利用する排気ガス温度は、排気温度推定部41による推定温度Tcに替えて、排気温度センサ24の検出値Tsを用いることもできる。
【0033】
PM強制再生制御部(再生制御手段)43は、DPF32に捕集されて堆積したPMをPM燃焼温度(例えば500℃程度)まで昇温して焼却除去するPM強制再生制御を行う。具体的には、排気後処理装置30の上流側と下流側とには圧力センサ(不図示)が設けられており、この圧力センサの差圧が所定値以上になり、かつ、推定温度Tc又は検出値Tsが閾値(200℃)よりも高い場合に、燃料を排気管内噴射弁22から軽油分解触媒36に供給するPM強制再生制御を行う。この、軽油分解触媒36に供給された燃料(軽油)は、200℃以上の温度条件下で熱分解(気化)が促進され、熱分解された状態で下流側のDPF32へと供給される。
【0034】
LNT強制再生制御部(再生制御手段)44は、空燃比を一時的にリッチ雰囲気にするLNT31の強制再生制御を行う。具体的には、エンジン回転数と負荷とをパラメータとするNOx排出マップ(不図示)に基づいて積算したNOx吸蔵量が所定値以上となり、かつ、推定温度Tc又は検出値Tsが閾値(200℃)よりも高い場合に、排気管内噴射弁22から燃料を噴射させることで一時的にリッチ雰囲気にするリッチスパイクを実施する。このリッチスパイクにより、LNT31に吸蔵されているNOxは還元浄化される。なお、このLNT強制再生制御を、所定の周期で定期的に行うようにしてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置1は、以上のように構成されているので、例えば図3,4に示すフローに従って以下のような制御が行われる。
【0036】
まず、図3に示すPM強制再生制御フローから説明する。
【0037】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、圧力センサの差圧に基づいて、DPF32に捕集されたPM捕集量が許容値を超えたか否かが確認される。差圧が所定値以上の場合、すなわちPM捕集量が許容値を超えた場合は、S110へと進む。一方、差圧が所定値よりも小さい場合、すなわちPM捕集量が許容値を超えていない場合は、本制御はリターンされる。
【0038】
S110では、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(200℃)以下であるか否かが確認される。推定温度Tcが閾値以下であれば酸化触媒35の昇温が必要と判定されS120へと進む。一方、推定温度Tcが閾値より高い場合は、酸化触媒35の昇温は不要と判定されS150へと進み、PM強制再生制御が実行されてリターンされる。なお、この判定に、排気温度センサ24の検出値Tsを用いることもできる。
【0039】
S120では、エンジン噴射制御部42によってポスト噴射が実行され、酸化触媒35の触媒温度が閾値(200℃)以上となるように昇温される。
【0040】
S130では、S120で昇温された酸化触媒35の触媒温度を、目標温度(200℃〜250℃以上)に保持して多段噴射を中止する。なお、酸化触媒35の触媒温度が目標温度(200℃〜250℃以上)に保持されると、排気管内噴射弁22の近くを流れる排気ガス温度や軽油分解触媒36の触媒温度も同様に、この目標温度(200℃〜250℃以上)に昇温されて保持される。
【0041】
S140では、PM強制再生制御部43によって、排気管内噴射弁22から燃料を噴射してPM燃焼温度(例えば500℃程度)まで昇温するPM強制再生制御が実行され、本制御はリターンされる。
【0042】
次に、図4に示すLNT31の強制再生制御フローを説明する。
【0043】
S200では、NOx排出マップ(不図示)に基づいて積算したNOx吸蔵量が所定値以上であるか否かが確認される。NOx吸蔵量が所定値以上の場合は、LNT31のNOx吸蔵能力は飽和状態と判定されS210へと進む。一方、NOx吸蔵量が所定値よりも小さい場合は、本制御はリターンされる。
【0044】
S210では、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(200℃)以下であるか否かが確認される。推定温度Tcが閾値以下であれば酸化触媒35の昇温が必要と判定されS220へと進む。一方、推定温度Tcが閾値より高い場合は、酸化触媒35の昇温は不要と判定されS250へと進み、LNT強制再生制御が実行されてリターンされる。なお、この判定に、排気温度センサ24の検出値Tsを用いることもできる。
【0045】
S220では、エンジン噴射制御部42によってポスト噴射が実行され、酸化触媒35の触媒温度が閾値(200℃)以上となるように昇温される。
【0046】
S230では、S220で昇温された酸化触媒35の触媒温度を、目標温度(200℃〜250℃以上)に保持して多段噴射を中止する。なお、酸化触媒35の触媒温度が目標温度(200℃〜250℃以上)に保持されると、排気管内噴射弁22の近くを流れる排気ガス温度や軽油分解触媒36の触媒温度も同様に、この目標温度(200℃〜250℃以上)に昇温されて保持される。
【0047】
S240では、LNT強制再生制御部44によって、排気管内噴射弁22から燃料を噴射してリッチ雰囲気にするLNT強制再生制御(リッチスパイク)が実行され本制御はリターンされる。
【0048】
上述のような構成により、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置1によれば以下のような作用・効果を奏する。
【0049】
すなわち、PM強制再生制御やLNT強制再生制御に際し、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(例えば、200℃)以下の場合はポスト噴射が行われ、酸化触媒35と軽油分解触媒36との触媒温度は目標温度(例えば、200℃〜250℃以上)に昇温されて保持される。この温度条件下で、排気管内噴射弁22から噴射された燃料(軽油)は、HC,COへの熱分解が促進される。
【0050】
したがって、排気管内噴射弁22から噴射された燃料が、軽油分解触媒36や下流側のLNT31,DPF32の前面に付着することで生じるフィルタ目詰まりや、排気管内に付着した燃料が揮発することで生じる白煙の発生等を効果的に抑止できる。当然ながら、排気管内噴射弁22による排気噴射を低排気温度時や低負荷時から行うことが可能となるので、PM強制再生やLNT強制再生の低温特性を改善することができる。
【0051】
また、ディーゼルエンジン10の燃料噴射は、排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(200℃)以下の場合は多段噴射で行われるとともに、酸化触媒35の触媒温度が閾値(200℃)以上に保持されると、この多段噴射を速やかに中止して通常噴射へと切り換えられる。
【0052】
したがって、噴射パターンが通常噴射に比べ大幅にリタードされる多段噴射を酸化触媒35の昇温時のみに制限できるので、多段噴射の加速時等に引き起こされる燃焼が不安定となる状態も同様に制限でき、加速不良等によるドライバビリティの悪化を効果的に低減することができる。
【0053】
また、本実施形態の排気ガス浄化装置1は、酸化触媒35と軽油分解触媒36とを、各々でディーゼルエンジン10の運転状態がアイドル〜低負荷時におけるS/V(例えば、100000hr−1)を許容できる程度の容量で設ければ、上述の作用効果を奏する。
【0054】
したがって、排気ガス浄化装置1の製造コスト増加を最小限に抑えることができる。
【0055】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0056】
例えば、図5に示すように、軽油分解触媒36の上流部に電気ヒータ37を設け、この電気ヒータ37の稼動を制御ECU40に設けた電気ヒータ制御部(不図示)によって制御するように構成することもできる。排気温度センサ24の検出値Ts又は排気温度推定部41の推定温度Tcが閾値(200℃)以下の時に、電気ヒータ37を稼働させて軽油分解触媒36を昇温すれば、排気噴射による燃料(軽油)の熱分解が促進されるので、排気温度の低温時からPM強制再生やLNT強制再生を効果的に行うことが可能となる。
【0057】
また、図6に示すように、排気後処理装置30を構成するLNT31に替えてSCR(SCR選択還元型触媒)33を配置することもできる。この場合、SCR33の上流側に尿素噴射弁(不図示)を設ける。
【0058】
また、本実施形態において、排気後処理装置30は、上流側から、LNT31,DPF32もしくは、SCR33,DPF32の順に設けられるものとして説明したが、必ずしもこの順序で配置する必要はなく、適宜この順序を入れ替えて配置することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 排気ガス浄化装置
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
11 排気通路
22 排気管内噴射弁(排気通路燃料噴射手段)
30 排気後処理装置
31 LNT(LNT吸蔵還元型触媒)
32 DPF
33 SCR(SCR選択還元型触媒)
35 酸化触媒(第1の触媒)
36 軽油分解触媒(第2の触媒)
41 排気温度推定部(排気温度推定手段)
42 エンジン噴射制御部(内燃機関噴射制御手段)
43 PM強制再生制御部(再生制御手段)
44 LNT強制再生制御部(再生制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた排気後処理装置と、前記排気後処理装置の上流側の前記排気通路に設けられた排気通路燃料噴射手段と、前記排気通路燃料噴射手段の上流側の前記排気通路に設けられた第1の触媒と、前記排気通路燃料噴射手段と前記排気後処理装置との間の前記排気通路に設けられ、前記排気通路燃料噴射手段から噴射される燃料を熱分解する第2の触媒と、前記内燃機関の排気温度を検出または推定して出力する排気温度推定手段と、前記内燃機関の燃料噴射を制御する内燃機関噴射制御手段と、前記排気通路燃料噴射手段から燃料を噴射して行う前記排気後処理装置の再生を制御する再生制御手段とを備え、
前記内燃機関噴射制御手段は、前記再生制御手段による再生制御に際し、前記排気温度推定手段の出力値が閾値以下の場合は、前記第2の触媒の触媒温度を閾値以上に昇温すべく、前記第1の触媒に燃料を供給するポスト噴射を含む多段噴射で、前記内燃機関の燃料噴射を制御する
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排気後処理装置は、DPFとLNT吸蔵還元型触媒とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排気後処理装置は、DPFとSCR選択還元型触媒とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−226314(P2011−226314A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94342(P2010−94342)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】