説明

接着シート、半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】プリカット加工等により所定の平面形状に形成された接着剤層を有する接着シートをロール状に巻き取った場合において、接着剤層に巻き跡が転写されることを十分に抑制し、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生を十分に抑制することが可能な接着シート、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】剥離基材と、該剥離基材上の長さ方向に分散配置された接着剤層と、該接着剤層を覆い、且つ、該接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着フィルムと、を有する接着シートであって、前記接着剤層及び前記粘着フィルムの合計の膜厚と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層が、前記剥離基材上における前記粘着フィルム間に断続的に形成されている、接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材との接合には銀ペーストが主に使用されている。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化・細密化が要求されるようになってきている。こうした要求に対して、銀ペーストでは、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、銀ペーストからなる接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより上記要求に対処しきれなくなってきている。
【0003】
そのため、上記要求に対処するべく、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた。このフィルム状接着剤は、個片貼付け方式あるいはウェハ裏面貼付け方式において使用されている。フィルム状接着剤を用いて個片貼付け方式により半導体装置を作製する場合には、まず、ロール状(リール状)に巻き取られたフィルム状接着剤をカッティング又はパンチングによって任意のサイズに切り出し、フィルム状接着剤の個片を得る。この個片を、半導体素子搭載用の支持部材に貼り付け、フィルム状接着剤付き支持部材を得る。その後、ダイシング工程によって個片化した半導体素子をフィルム状接着剤付き支持部材に接合(ダイボンド)して半導体素子付き支持部材を作製する。更に、必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程等を経ることにより半導体装置を作製する。
【0004】
しかし、個片貼付け方式においてフィルム状接着剤を用いる場合には、フィルム状接着剤を切り出して支持部材に接着するための専用の組立装置が必要であるため、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、フィルム状接着剤を用いてウェハ裏面貼付け方式により半導体装置を作製する場合には、まず、半導体ウェハの回路面とは反対側の面(裏面)にフィルム状接着剤を貼付け、更にフィルム状接着剤の半導体ウェハ側と反対側の面にダイシングテープを貼り合わせる。次に、ダイシングによって半導体ウェハ及びフィルム状接着剤を個片化し、フィルム状接着剤付き半導体素子を得る。得られたフィルム状接着剤付き半導体素子をピックアップし、それを半導体素子搭載用の支持部材に接合(ダイボンド)する。その後、加熱、硬化、ワイヤボンド等の工程を経ることにより半導体装置を作製する。
【0006】
このフィルム状接着剤を用いたウェハ裏面貼付け方式は、フィルム状接着剤付き半導体素子を支持部材に接合するため、フィルム状接着剤を個片化するための専用の装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのまま又は熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、フィルム状接着剤を用いた半導体装置の組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている。
【0007】
しかし、フィルム状接着剤を用いた上記のウェハ裏面貼付け方式においては、半導体ウェハのダイシングを行うまでに、フィルム状接着剤を半導体ウェハに貼付する工程とダイシングテープをフィルム状接着剤に貼付する工程との2つの貼付工程が必要である。そこで、このプロセスを簡略化するために、フィルム状接着剤とダイシングテープとを貼り合わせ、一枚で両方の機能を併せ持つ接着シート(ダイボンドダイシングシート)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような接着シートは、例えば、剥離基材/接着剤層/粘着フィルムの三層構造を有している。
【0008】
また、このような接着シートを、半導体素子を構成するウェハの形状にあらかじめ加工しておく方法(いわゆるプリカット加工)が知られている(例えば特許文献2及び3参照)。かかるプリカット加工は、使用されるウェハの形状に合わせて樹脂層(接着剤層及び粘着フィルム)を打ち抜き、ウェハを貼り付ける部分以外の樹脂層を剥離しておく方法である。
【0009】
プリカット加工が施された接着シートは、例えば、図5(a)に示すような構造を有している。また、図5(b)は図5(a)の接着シート200のX−X端面図であり、剥離基材1上に接着剤層2が積層され、その上にさらに粘着フィルム3が、剥離基材1側が粘着性を有する面となるようにして積層されている。なお、粘着フィルム3は接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2の周囲で剥離基材1に接するように積層されており、これにより、半導体ウェハのダイシングを行う際に、半導体ウェハの外周部のウェハリングに粘着フィルム3を貼り付けて接着シート200を固定することができるようになっている。
【0010】
かかるプリカット加工を施す場合、上記の接着シートは一般的に、フィルム状接着剤において接着剤層をウェハ形状に合わせてプリカット加工し、それとダイシングテープとを貼り合わせた後、このダイシングテープに対してウェハリング形状に合わせたプリカット加工を施すか、又は、あらかじめウェハリング形状にプリカット加工したダイシングテープを、プリカット加工したフィルム状接着剤と貼り合わせることによって作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−45557号公報
【特許文献2】実公平6−18383号公報
【特許文献3】特開2006−202927号公報
【特許文献4】特開2007−2173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記プリカット加工が施された接着シート200は、通常、図9に示すように長尺の剥離基材を用いて円筒状の巻き芯に巻きつけて、ロール状の接着シートロールとして供給される。このとき、上記接着シート200等の従来のプリカット加工が施された接着シートでは、以下のような不具合が生じることを本発明者らは見出した。すなわち、上記プリカット加工が施された接着シート200においては、図5(b)に示すように、部分的に接着剤層2と粘着フィルム3とを積層するため、接着剤層2と粘着フィルム3との積層部分が他の部分よりも厚くなる。そのため、接着シートロールの直径が大きくなったり、巻き取り時の張力が高くなったりした場合、積層部分に外圧が集中することになる。その結果、接着剤層2の部分に他の接着剤層の巻き跡が転写され、フィルムの平滑性が損なわれることがある。また、接着剤層2の厚みが厚くなった場合、巻き跡が更に転写されやすくなる。これら巻き跡の転写により接着シート200に平滑性の欠陥があると、接着シート200を半導体ウェハへ貼り付けた時に半導体ウェハと接着剤層2との間に空気を巻き込み、半導体ウェハとの密着が十分にとれないため半導体装置組み立て方法上、不具合が生じることがある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プリカット加工等により所定の平面形状に形成された接着剤層を有する接着シートをロール状に巻き取った場合において、接着剤層に巻き跡が転写されることを十分に抑制し、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生を十分に抑制することが可能な接着シート、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、剥離基材と、該剥離基材上の長さ方向に分散配置された接着剤層と、該接着剤層を覆い、且つ、該接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着フィルムと、を有する接着シートであって、前記接着剤層及び前記粘着フィルムの合計の膜厚と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層が、前記剥離基材上における前記粘着フィルム間に断続的に形成されていることを特徴とする接着シートに関する。また、ロール状に巻いた場合に支持層と接着剤層が重ならない様に配置していることが好ましい。
【0015】
ここで、本発明において上記支持層の膜厚が上記接着剤層及び上記粘着フィルムの合計の膜厚と同等であるとは、支持層の膜厚が接着剤層及び粘着フィルムの合計の膜厚と実質的に同一であることを意味する。また、本発明において上記支持層の膜厚は、接着剤層及び粘着フィルムの合計の膜厚の1.0〜1.2倍であることが好ましい。なお、上記膜厚はそれぞれの層の最大膜厚を意味する。
【0016】
本発明の接着シートは、所定の平面形状に形成された接着剤層を有する接着シートであるが、剥離基材上の、半導体装置を製造する場合等に必要とされる接着剤層及び粘着フィルム以外の部分に、これらの積層部分と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層が形成されていることにより、接着シートをロール状に巻き取った際に、接着剤層に他の接着剤層の巻き跡が転写されることを十分に抑制することができる。従来の接着シートでは、接着剤層と粘着フィルムとの積層部分のみが他の部分に比べて厚くなるため、ロール状に巻き取ると、この積層部分に巻き取りの圧力が集中していた。そのため、この積層部分と粘着フィルムのみの部分との段差が巻き取りの圧力により他の接着剤層に転写されることとなる。これに対して本発明の接着シートは、支持層を積層部の直近に備えることで、プリカット加工が施された接着シートにかかっていた巻き取りの圧力を分散すると同時に、上記段差の影響を最小限に抑えることが可能となる。結果、上記積層部分と粘着フィルムのみの部分との段差が他の接着剤層に転写されることを抑制することが可能となる。そして、接着剤層への巻き跡の転写が抑制されることにより、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層を貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等の発生を十分に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の接着シートにおいて、上記支持層は、上記接着剤層と同一組成の支持接着剤層及び上記粘着フィルムと同一組成の支持粘着フィルムが積層されてなるものであることが好ましい。
【0018】
これにより、支持層を設けるために新たに粘着フィルム等を用意する必要がなく、プリカットの形状の変更のみで、容易に支持層を設けることができる。
【0019】
また、上記支持層は、上記支持接着剤層と、上記支持接着剤層と、該支持接着剤層を覆い、且つ、前記剥離基材と接するように上記支持接着剤層上に積層された上記支持粘着フィルムと、からなるものであることが好ましい。
【0020】
このように、支持粘着フィルムの一部が剥離基材に接していることにより、支持層が剥離基材に貼り付けられた状態を十分に維持することができる。そのため、本発明の接着シートにおける接着剤層及び粘着フィルムを半導体ウェハに貼り付ける際に、半導体ウェハに貼り付けるべき接着剤層及び粘着フィルムが剥離基材から剥離する前に不要な部分である支持層が剥離して工程の不具合が発生することを十分に抑制することができる。
【0021】
また、本発明の接着シートにおいて、前記剥離基材は長尺のものであり、前記支持層は少なくとも剥離基材層の長さ方向に分散配置された各前記接着剤層の間に形成されており、前記接着剤層と前記支持接着剤層が重ならない様に配置されていることが好ましい。この場合、支持層は短手方向の上下に位置されていることが好ましい。
【0022】
また、支持接着剤層の1箇所の面積が少なくとも0.03cm以上であることが好ましい。
【0023】
これにより、接着シートをロール状に巻き取った際に、接着剤層に他の接着剤層の巻き跡が転写されることをより十分に抑制することができる。そして、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層を貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等の発生をより十分に抑制しウェハとの密着を十分確保することができる。
【0024】
また、本発明の接着シートにおいて、上記接着剤層及び上記粘着フィルムの少なくとも一方は、円形形状あるいは上記剥離基材を剥離した後に上記接着剤層又は上記粘着フィルムを貼り付けるべき被着体の平面形状に合致する平面形状を有していることが好ましい。
【0025】
上記被着体としては、例えば半導体ウェハが挙げられるが、この半導体ウェハの平面形に合致する平面形状を接着剤層が有していることにより、半導体ウェハをダイシングする工程が容易となる傾向がある。なお、接着剤層の平面形状は、半導体ウェハの平面形状に完全に一致している必要はなく、例えば、半導体ウェハの平面形状よりもやや大きい平面形状であってもよい。また、一般的に半導体ウェハは円の外周の一部が直線である平面形状を有しているため、接着シートの平面形状が円形形状である場合でも、一般的な半体ウェハへの接着剤層の貼り付け、及び、半導体ウェハのダイシングを容易に行うことが可能となる傾向にある。
【0026】
また、本発明の接着シートにおいて、上記接着剤層は、熱可塑性樹脂及び熱重合性成分を含有してなるものであることが好ましい。
【0027】
これにより、かかる接着剤層を介して、半導体素子を半導体素子搭載用の支持部材あるいは別の半導体素子に十分に固定することができる。
【0028】
ここで、上記熱可塑性樹脂は、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分であることが好ましい。これにより、半導体装置作製における作業環境下でフィルム形状を維持し、取り扱い易い接着シートにすることができる。また、重量平均分子量が10万以上である高分子量成分を用いることにより、接着剤層の室温での硬さを高めることができ、接着シートを巻き取った際の圧力により接着剤層に巻き跡が転写されることを抑制することができる。更に、何らかの原因で接着剤層に巻き跡の転写が生じた場合でも、上記の熱可塑性樹脂を用いていることで、接着剤層を半導体ウェハに貼り付ける際の熱により容易に変形し、ボイドを低減することができる。
【0029】
また、上記高分子量成分は、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。これにより、かかる接着剤層を介して、半導体装置作製の作業の中で、半導体素子を半導体素子搭載用の支持部材あるいは別の半導体素子に十分に固定することができ、作製上の不具合を低減することができる。
【0030】
また、上記熱重合性成分は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるものであることが好ましい。これにより、かかる接着剤層を介して、半導体装置作製後、半導体素子を半導体素子搭載用の支持部材あるいは別の半導体素子に十分に固定することができ、半導体装置が使用される環境下で半導体装置の破損や故障を防ぐことができる。
【0031】
また、本発明の接着シートにおいて、上記接着剤層は、25℃での硬化前の貯蔵弾性率が10〜10000MPaであり、且つ、260℃での硬化後の貯蔵弾性率が0.5〜30MPaであることが好ましい。
【0032】
ここで、本発明における貯蔵弾性率は、強制振動非共振法による引張り試験によって求めることができる。
【0033】
本発明の接着シートにおいて、接着剤層が上記範囲の貯蔵弾性率を有することにより、半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材との間の応力を緩和し、幅広い温度域で十分な接着力を確保することが可能となる。これにより、半導体装置作製の作業中あるいは半導体装置が使用される環境下で、半導体装置の破損や故障を防ぐことができる。
【0034】
更に、本発明の接着シートには、高エネルギー線の照射により、上記接着剤層と上記粘着フィルムとの間の粘着力が低下する特性を有することが好ましいが、これに限定されるものではなく、感圧型などの粘着シートも使用することが出来る。
【0035】
また、上記本発明の接着シートを製造するための接着シートの製造方法であって、上記剥離基材上に上記接着剤層を積層する第1の積層工程と、上記接着剤層の上記剥離基材に接する側と反対側の面から上記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、所定の平面形状の接着剤層と、該接着剤層の外方に配置される支持接着剤層とを形成する第1の切断工程と、上記所定の平面形状の接着剤層、上記支持接着剤層及び上記剥離基材を覆うように、上記粘着フィルムを積層する第3の積層工程と、上記粘着フィルムの上記剥離基材側と反対側の面から上記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、上記所定の平面形状の接着剤層を覆い、且つ、該接着剤層の周囲で上記剥離基材に接する上記粘着フィルムと、上記支持接着剤層上に配置される支持粘着フィルムとを形成する第2の切断工程と、を含むことを特徴とする接着シートの製造方法を提供することも可能である。
【0036】
これらの接着シートの製造方法によれば、ロール状に巻き取った際に、接着剤層に他の接着剤層の巻き跡が転写されることを十分に抑制することが可能な本発明の接着シートを効率的に製造することができる。
【0037】
本発明はまた、上記本発明の接着シートにおいて、上記接着剤層及び上記粘着フィルムからなる積層体を上記剥離基材から剥離し、上記積層体を、上記接着剤層側の面から半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る貼り付け工程と、上記積層体付き半導体ウェハを、上記接着剤層と上記粘着フィルムとの界面までダイシングし、上記半導体ウェハを所定の大きさの半導体素子に切断するダイシング工程と、上記積層体に高エネルギー線を照射して上記粘着フィルムの上記接着剤層に対する粘着力を低下させた後、上記粘着フィルムから上記半導体素子を上記接着剤層とともにピックアップし、接着剤層付き半導体素子を得るピックアップ工程と、上記接着剤層付き半導体素子における上記半導体素子を、上記接着剤層を介して被着体に接着する接着工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法に関する。
【0038】
かかる製造方法によれば、その製造工程において本発明の接着シートを用いているため半導体ウェハに接着剤層を貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等の発生を十分に抑制することができ、半導体装置を効率的に製造することができる。
【0039】
ここで、上記被着体は、半導体素子搭載用の支持部材、又は、別の半導体素子であることが好ましい。
【0040】
本発明は更に、上記本発明の半導体装置の製造方法により製造されてなる、半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、プリカット加工等により所定の平面形状に形成された接着剤層を有する接着シートをロール状に巻き取った場合において、接着剤層に巻き跡が転写されることを十分に抑制し、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生を十分に抑制することが可能な接着シート、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は、本発明の接着シートの第1実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート100を(a)のA−A線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図2】(a)は、本発明の接着シートの第2実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート110を(a)のB−B線またはC−C線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図3】(a)は、本発明の接着シートの第3実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート120を(a)のD−D線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図4】(a)は、本発明の接着シートの第4実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート130を(a)のE−E線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図5】(a)は、従来の接着シートの形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート200を(a)のX−X線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図6】(a)〜(c)は接着シートの製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明の接着シートを用いて半導体装置を製造する方法の実施形態を示す一連の工程図である。
【図8】半導体装置の製造方法により製造される本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図9】プリカット加工が施された接着シートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(接着シート)
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0044】
図1〜4は、それぞれ本発明の接着シートの第1〜第4実施形態を示す模式図である。ここで、図1(a)は、本発明の接着シートの第1実施形態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す接着シート100を図1(a)のA−A線に沿って切断した場合の模式端面図である。図2(a)は、本発明の接着シートの第2実施形態を示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す接着シート110を図2(a)のB−B線またはC−C線に沿って切断した場合の模式端面図である。図3(a)は、本発明の接着シートの第3実施形態を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す接着シート120を図3(a)のD−D線に沿って切断した場合の模式端面図である。図4(a)は、本発明の接着シートの第4実施形態を示す平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す接着シート130を図4(a)のE−E線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【0045】
図1〜4に示すように、接着シートは、長尺の剥離基材1上に、接着剤層2及び粘着フィルム3からなる積層体4が形成された構成を有している。また、接着剤層2は所定の平面形状を有して剥離基材1上に部分的に積層されており、粘着フィルム3は、接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2の周囲で剥離基材1に接するように積層されている。そして、各積層体4間には、支持接着剤層5及び支持粘着フィルム6からなる支持層7が形成されている。この支持層7は、積層体4の最大膜厚(接着剤層2と粘着フィルム3とが積層されている部分の膜厚)と同等又はそれ以上の最大膜厚(支持接着剤層5と支持粘着フィルム6とが積層されている部分の膜厚)を有するように形成されており、支持粘着フィルム6は、支持接着剤層5を覆い、且つ、剥離基材に接する様に積層されている。支持粘着フィルム6と剥離基材1が接していない場合、ウエハに貼り付ける工程にて支持層7と剥離基材1が剥離し、不具合が生じる可能性がある。
【0046】
以下、これら本発明の接着シートの各構成要素について詳細に説明する。
【0047】
支持接着剤層5の位置は、接着シートをロール状に巻き取った際に接着剤層2に重ならなく、更に支持粘着フィルム6の端から1mm以上、望ましくは5mm以上内側に位置することが好ましい。配置される場所が1mm未満の場合、支持粘着フィルムと剥離基材1との接着面積が十分ではないため、半導体ウエハと接着シートをラミネートする工程にて支持層7と剥離基材1の間で剥離が発生する不具合が生じる可能性がある。そのため、上記範囲内であれば支持接着剤層5の位置は特に規定されるものではない。
【0048】
支持接着剤層5の形状については特に規定されるものではない。また、支持接着剤層5の面積は、前記支持粘着層の端からの距離が適正である範囲で設置することができる。支持接着剤層5が支持粘着フィルムと同一の大きさ、もしくは、はみ出すような面積となった場合、半導体ウエハと接着シートをラミネートする際に支持層7と剥離基材1の間で剥離が発生する不具合が生じる可能性がある。
支持接着剤層5は、圧力を分散させ巻き跡の転写をより低減する観点から、幅広く形成されていることが好ましいが、いくつかに分けて配置する事も可能である。支持接着剤層5の大きさとしては面積が0.03cm以上が好ましく、より好ましくは0.19cm以上であり、更に好ましくは0.78cm以上であり、最も好ましくは3.14cm以上である。支持接着剤層5の面積が0.03cm未満の場合は、ロール状に巻き取った際の応力分散効果が得られないため、期待する効果を得る事ができない。
【0049】
また、支持接着剤層5の組成は特に制限されないが、作製工程の観点から、例えば、後述する接着剤層と同様の組成が好ましい。
【0050】
支持接着剤層5は、その形状、大きさ、位置について特に制限されるものではない。支持接着剤層5の形状は、断続的でも連続的でもよいが、作製工程の観点から連続的に配置されているほうが好ましい。支持接着剤層5の形状としては、例えば、円形、三角形、四角形などいずれでもよく、また、2個以上並列に配置されていても良い。
【0051】
支持接着剤層5は、圧力を分散させ巻き跡の転写をより低減する観点から、接着剤層に重ならない部分において、剥離基材1の短手方向についてもより幅広く形成されていることが好ましい。
【0052】
また、支持粘着フィルム6の組成は特に制限されないが、例えば、後述する粘着フィルムと同様の組成とされる。
【0053】
本発明の接着シートにおいては、これら支持接着剤層5及び支持粘着フィルム6が積層されて支持層7が形成されている。支持層7は、積層体4端部の段差の影響を小さくするという観点から積層体4と支持積層体7の間隔は狭くなるように配置されていることが好ましい。同時に接着剤層と重ならないように、存在することがより好ましい。また、支持層7は、上述したように、接着剤層及び粘着フィルムからなる積層体4の膜厚(接着剤層と粘着フィルムとが積層されている部分の膜厚)と同等又はそれ以上の膜厚を有しているが、支持層7の膜厚は、積層体4の膜厚の1.0〜1.2倍であることが好ましい。
【0054】
支持層7において、支持接着剤層5の形状については特に制限はないが、面積が0.03cm以上が好ましく、より好ましくは0.19cm以上であり、更に好ましくは0.78cm以上であり、最も好ましくは3.14cm以上である。また、支持接着剤層を設置する位置としては、ロール状に巻き取った際に接着剤層と重ならない事が必要であり、また、支持粘着フィルムの端から1mm以上内側に存在する事が好ましく、より好ましくは3mm以上、最も好ましくは5mm以上内側に存在することが好ましい。
【0055】
本発明の接着シートにおいて、接着剤層と粘着フィルムとの積層状態は、それぞれが同じ大きさでちょうど重なり合うように積層されている構造も考えられるが、ウェハリングと半導体素子の大きさの関係上、粘着フィルム3はその外周部の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上が、接着剤層の外周の外側にあることが好ましい。その部分は剥離基材1と粘着フィルム3とがこの順に備えた形状であることが好ましい。更に、本発明の接着シートにおいて、接着剤層2と粘着フィルム3との積層状態は、粘着フィルム3が接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2の周囲で剥離基材1に接するように形成されていることが好ましい。すなわち、接着剤層2の平面形状の面積よりも粘着フィルム3の平面形状の面積が大きく、接着剤層2が包み込まれており、接着剤層2の周囲において剥離基材1と粘着フィルム層3とが直接接している状態となっていることが好ましい。なお、接着剤層2は、剥離起点として外周の一部に突出部を有していてもよく、この突出部は粘着フィルム3で覆われていなくてもよい。
【0056】
接着剤層2の形状としては、半導体ウェハの貼り付けが可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、平面形状として、円形、ウェハ形状(円の外周の一部が直線である形状)、四角形、五角形、六角形、八角形などが挙げられる。なお、接着剤層2において、半導体ウェハを貼り付ける部分以外の部分は無駄になるため、作製工程の観点から円形の平面形状を有する一般的な半導体ウェハと貼り合わせる場合には、接着剤層2は、円形の平面形状又は半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状(半導体ウェハ形状)であることが好ましい。また、接着剤層2の外周の一部が粘着フィルム3の外周の一部の近傍にあるようにするために、外周の一部に凸部を有していてもよい。
【0057】
粘着フィルム3の形状としては、ウェハリングと密着させることが可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、平面形状として、円形、四角形、五角形、六角形、八角形、菱形形状、星型などが挙げられる。なお、現在のウェハリングの形状及び半導体素子の形状を考慮すると、粘着フィルム3の平面形状は、円形もしくは円形に順ずる形状であることが好ましい。更に、半導体素子との貼付けを考慮すると、接着剤層2の平面形状と同様に平面形状であることが好ましい。
【0058】
接着剤層2は、特に制限されないが、例えば、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤、及び、酸素反応性接着剤等により構成される。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着剤として半導体素子の固定に使用されることを考慮すると、接着剤層2は熱硬化性接着剤により構成されていることが好ましい。
【0059】
熱硬化性接着剤としては、熱により硬化するものであれば特に制限はなく、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ熱重合性成分を含むものが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着シートとしての耐熱性及び熱硬化による接着力を考慮すると、上記の熱重合性成分と熱可塑性樹脂とを含有してなる熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。
【0060】
ここで、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する樹脂、または少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であれば特に制限されないが、(A)Tg(ガラス転移温度)が10〜100℃であり、且つ、重量平均分子量が5000〜200000であるもの、又は(B)Tgが−50℃〜10℃であり、且つ、重量平均分子量が100000以上であるもの、が好ましい。
【0061】
前者の熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などが挙げられる。これらの中でもポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
後者の熱可塑性樹脂(B)としては、官能性モノマーを含む重合体を使用することが好ましく、この重合体の官能性モノマーの官能基としてはグリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基などが挙げられ、中でもグリシジル基が好ましい。より具体的には、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマーを含むグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体などが好ましく、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と非相溶であることがより好ましい。
【0063】
上記官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分としては、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有し、かつ重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が挙げられ、それらの中でもエポキシ樹脂と非相溶であるものが好ましい。グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体の具体例としては、例えば、ナガセケムテックス株式会社製のHTR−860P−3(商品名)等が挙げられる。
【0064】
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリルエステル共重合体、アクリルゴム等を使用することができ、アクリルゴムがより好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなるゴムである。
【0065】
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体における、上記グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ樹脂含有モノマー単位の量は、モノマー全量を基準として0.5〜6.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましく、0.8〜5.0質量%が特に好ましい。グリシジル基含有モノマー単位の量がこの範囲にあると、十分な接着力が確保できるとともに、ゲル化を防止することができる。
【0066】
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート以外の上記官能性モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、エチル(メタ)アクリレートとは、エチルアクリレートとエチルメタクリレートの両方を示す。官能性モノマーを組み合わせて使用する場合の混合比率は、グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して決定し、Tgが−10℃以上となるようにすることが好ましい。Tgが−10℃以上であると、Bステージ状態での接着剤層2のタック性が適当であり、取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。
【0067】
上記モノマーを重合させて、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分を製造する場合、その重合方法としては特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合等の方法を使用することができる。
【0068】
官能性モノマーを含む高分子量成分の重量平均分子量は、10万以上であるが、30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が適当であり、また、フロー性が適当であるため、配線の回路充填性が確保できる傾向にある。なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を意味する。
【0069】
また、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、10〜400質量部が好ましい。この範囲にあると、貯蔵弾性率及び成形時のフロー性抑制が確保でき、また高温での取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。また、高分子量成分の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、15〜350質量部がより好ましく、20〜300質量部が特に好ましい。
【0070】
また、熱重合性成分としては、熱により重合するものであれば特に制限は無く、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ化合物が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせても、使用することができるが、接着シートとしての耐熱性を考慮すると、熱によって硬化し接着作用を及ぼす熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れるダイボンドダイシングシートが得られる点でエポキシ樹脂を使用することが最も好ましい。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。
【0071】
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを使用することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009)、ダウケミカル社製のDER−330、DER−301、DER−361、及び、東都化成株式会社製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が挙げられる。更に、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027、東都化成株式会社製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。
【0073】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる。
【0074】
アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、東都化成株式会社製のYH−434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD−X及びTETRAD−C、住友化学株式会社製のELM−120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
エポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げる。これらの中でも、特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記フェノール樹脂硬化剤の中で好ましいものとしては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65、及び、三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR等が挙げられる。
【0077】
接着剤層2は、25℃での硬化前の貯蔵弾性率が10〜10000MPaであり、且つ、260℃での硬化後の貯蔵弾性率が0.5〜30MPaであることが好ましい。ここで、接着剤層2の貯蔵弾性率を大きくする方法として、例えば、エポキシ樹脂の使用量を増やす方法、グリシジル基濃度の高いエポキシ樹脂又は水酸基濃度の高いフェノール樹脂を使用してポリマー全体の架橋密度を上げる方法、フィラーを添加する方法等が挙げられる。
【0078】
上記接着剤層2が熱重合性成分を含む場合、接着剤層2には更に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、特に制限はなく、例えば、イミダゾール類等が挙げられる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
この硬化促進剤の添加量は、熱重合性成分の総量100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。この添加量が5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0080】
接着剤層には、可とう性や耐リフロークラック性を向上させる目的で、熱重合性成分と相溶性がある高分子量樹脂を添加することができる。このような高分子量樹脂としては、特に限定されず、たとえばフェノキシ樹脂、高分子量熱重合性成分、超高分子量熱重合性成分などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0081】
熱重合性成分と相溶性がある高分子量樹脂の使用量は、接着剤層が熱重合性成分を含む場合、熱重合性成分の総量100質量部に対して、40質量部以下とすることが好ましい。この範囲であると、接着剤層のTgを確保することができる。
【0082】
また、接着剤層には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整およびチキソトロピック性付与などを目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。また、フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、熱伝導性向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の観点からは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。
【0083】
無機フィラーの添加量は、接着剤層の総量を基準として1〜50質量%が好ましい。添加量が1質量%未満であると添加効果が十分に得られない傾向があり、50質量%を超えると、接着剤層の粘接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0084】
また、接着剤層には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点でシラン系カップリング剤が好ましい。
【0085】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、接着剤層2全量を基準として0.01〜10質量%とするのが好ましい。
【0086】
更に、接着剤層2には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を向上させるために、イオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。
【0087】
上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、接着剤層2全量を基準として0.1〜10質量%が好ましい。
【0088】
接着剤層2の厚さは、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、5〜40μmであることが特に好ましい。厚さが0.1μm未満であると、接着剤として十分な接着力が確保できなくなる傾向があり、100μmを超えると、半導体装置が肉厚になり、半導体装置の使用用途が制限される傾向がある。
【0089】
粘着フィルムは、基材フィルムに粘着剤層を設けたものが好ましい。この場合、粘着フィルムにおける接着剤層と接する側の層が上記接着剤層となっている。
【0090】
粘着フィルムに使用する基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0091】
また、上記基材フィルムは異なる2種類以上のフィルムを積層したものであっても良い場合、粘着剤層が形成される側のフィルムは、半導体素子のピックアップ作業性が向上する点で、25℃での引張弾性率が2000MPa以上であることが好ましく、2200MPa以上であることがより好ましく、2400MPa以上であることが特に好ましい。
【0092】
また、粘着剤層が形成される側と反対側のフィルムは、フィルムの伸びが大きく、エキスパンド工程での作業性がよい点で、25℃での引張弾性率が1000MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、600MPa以下であることが特に好ましい。この引張弾性率は、JIS K7113号に準じて測定されるものである。
【0093】
基材フィルムが2種以上のフィルムを積層したものである場合、その積層方法としては一方のフィルムを押出しラミネートする方法、2種類以上のフィルムを押出して貼り合せる方法、一方のフィルムの原料となるポリマーを溶剤に溶解あるいは分散してワニスとし、他方のフィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去する方法、及び、接着剤を用いて2種以上のフィルムを貼り合わせる方法等、公知の方法を使用することができる。
【0094】
粘着フィルム3を構成する上記粘着剤層としては、高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を制御できる)ものが好ましく、高エネルギー線によって硬化するものがより好ましく、紫外線によって硬化するものが特に好ましい。
【0095】
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来から種々のタイプが知られている。それらの中から、高エネルギー線の照射によって、接着剤層に対する粘着力が低下するものを適宜選んで用いることが好ましい。
【0096】
上記粘着剤としては、特に制限されないが、例えば、ジオール基を有する化合物、イソシアネート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ジアミン化合物、尿素メタクリレート化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高エネルギー線重合性共重合体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
また、粘着剤層が熱により硬化する熱重合性成分を含む場合、粘着剤層には更に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、特に制限はなく、例えば、イミダゾール類等が挙げられる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
硬化促進剤の添加量は、熱重合性成分の総量100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。この添加量が5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0099】
また、粘着剤層が高エネルギー線の照射により硬化する高エネルギー線重合性成分を含む場合、粘着剤層には、活性光線の照射によって遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を添加することもできる。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
上記光重合開始剤の使用量としては、特に制限はないが、高エネルギー線重合性成分の総量100質量部に対して通常0.01〜30質量部である。
【0101】
粘着フィルムにおいて、粘着剤層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましい。この厚さが0.1μm未満であると、十分な粘着力を確保することが困難となる傾向があり、ダイシング時に半導体チップが飛散する可能性があり、20μmを超えると、経済的でなくなる上に、特性上特に有利な点はない。
粘着フィルムとして使用できる市販品として、DC tape(古河電気工業株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0102】
剥離基材1は、接着シートの使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものであり、かかる剥離基材1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルムなどのポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等を使用することができる。また、紙、不織布、金属箔等も使用することができる。
【0103】
また、剥離基材1の接着剤層2と接する側の面は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で表面処理されていてもよい。
【0104】
剥離基材1の厚さは、使用時の作業性を損なわない範囲で適宜選択することができるが、10〜500μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜50μmであることが特に好ましい。
【0105】
以上説明した本発明の接着シートは、上記各層を形成する組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、剥離基材1上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって得ることができる。
【0106】
ここで、上記のワニス化するための溶剤としては特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性などを考慮すると、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどの比較的低沸点の溶媒を使用することが好ましい。
【0107】
また、塗膜性を向上させるなどの目的で、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0108】
無機フィラーを添加した際のワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、3本ロール、ボールミル及びビーズミルなどを使用することが好ましく、また、これらを組み合わせて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量の原料をあらかじめ混合した後、高分子量の原料を配合することによって、混合する時間を短縮することもできる。また、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0109】
以上説明したような構成の接着シートに放射線等の高エネルギー線を照射すると、照射後には接着剤層と粘着フィルムとの界面の粘着力が大きく低下し、半導体素子に接着剤層を保持したまま粘着フィルムから容易にピックアップすることが可能となる。
【0110】
本発明の接着シートにおいて、接着剤層と粘着フィルムとの界面の粘着力を低下させる方法としては、放射線等の高エネルギー線の照射のみで粘着力を低下させる方法以外に、高エネルギー線の照射と同時に又は照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用する方法が挙げられる。加熱を併用することにより、より低温短時間での粘着力の低下が可能となる。加熱温度は、接着剤層の分解点以下であれば特に制限は受けないが、50〜170℃の温度が好ましい。
【0111】
(接着シートの製造方法)
次に本発明の接着シートを製造する方法について説明する。
【0112】
本発明の接着シートは、例えば、接着剤層を剥離基材1に塗布する際にあらかじめ部分的に接着剤層を形成するためのワニス等の原材料を分布させておく方法や、剥離基材1にマスクをし、このマスク部以外の部分に上記のワニス等の原材料を塗布する方法等を用いて形成することができるが、作業の簡便さを考慮すると、あらかじめ剥離基材1の全面に接着剤層2を塗布法により形成し、打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法が好ましい。また、粘着フィルムを部分的に形成する方法としても、上記と同様に打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法が好ましい。
【0113】
ここで、図6(a)〜(c)は、本発明の接着シートの製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。第1実施形態にかかる本発明の接着シートの製造方法においては、まず、図6(a)に示すように剥離基材1上全面に接着剤層2を積層する。次に円環状の切断刃8で接着剤層2を完全に打ち抜く。次に図6(b)に示すように切断刃8でくりぬかれた円部を残して、残りを剥離・除去する。さらに図6(c)に示すように粘着剤層3を積層する。円環状よりも大きい径をもつ切断刃9を使用し、粘着剤層3を完全に打ち抜く。接着剤層と同様に円外部を除去し所定のフィルム構造を形成することが出来る。
【0114】
これらの接着シートの製造方法において、第1の積層工程による接着剤層2の積層は、例えば、接着剤層2を構成する材料を溶剤に溶解又は分散してなる接着剤層形成用ワニスを剥離基材1上に塗布し、加熱により溶剤を除去することで行うことができる。
【0115】
また、第3の積層工程における粘着フィルム3は、例えば、粘着剤層を構成する材料を溶剤に溶解又は分散して粘着剤層形成用ワニスとし、これを基材フィルム上に塗布した後、加熱により溶剤を除去して、基材フィルム及び粘着剤層からなる粘着フィルム3を形成する。そして、得られた粘着フィルム3を、接着剤層2、支持接着剤層5及び露出している剥離基材1の全体を覆うように積層することによって行うことができる。
【0116】
ここで、剥離基材1及び基材フィルムへのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等を用いることができる。
【0117】
また、粘着フィルム3の積層は、従来公知の方法によって行うことができ、例えば、ラミネーター等を用いて行うことができる。
【0118】
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の接着シートを用いて半導体装置を製造する方法について、図7を用いて説明する。なお、以下の説明においては、接着シートとして図1に示した接着シート100を用いる場合について説明する。また、接着シートにおいて、粘着フィルム3は、粘着剤層と基材フィルムとが積層された構成を有していることとする。
【0119】
図7(a)〜(c)を用いて、接着シートにおける積層体を半導体ウェハ10に貼り付ける作業を行う一連の工程を説明する。
【0120】
図7(a)に示すように加熱可能であるステージ11上にウェハリング12及び半導体ウェハ10を設置する。次に図7(b)に示すように、接着シート100から剥離した積層体を貼付する。すなわち、接着剤層2を半導体ウェハ、粘着剤層3の外周部をウェハリングへ貼付を行う。
【0121】
本貼付は加熱ステージを使用することなく可能であるが、ウェハとの密着性を上げるという観点から、30〜150℃にステージを加熱した上で貼り付けを行うことが好ましい。
【0122】
以上半導体ウェハ10への積層体の貼り付けを、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウェハ10への積層体の貼り付け作業を行う装置としては、例えば、リンテック株式会社製のRAD−2500(商品名)等が挙げられる。
【0123】
このような工程により積層体を半導体ウェハ10に貼り付ける場合、接着シートはロール状に巻き取られた状態で用いられるが、このとき、接着シートが支持層を有していることにより、接着剤層2に巻き跡が転写されることを十分に抑制することができる。これにより、半導体ウェハ10に積層体を貼り付ける際に空気の巻き込み等を低減することができ、半導体ウェハ10と接着剤層2との界面におけるボイドの発生を十分に抑制することができる。
【0124】
次に、上記の工程により得られた積層体付き半導体ウェハをダイシングし、必要な大きさの積層体付き半導体素子を得る。ここで更に、洗浄、乾燥等の工程を行ってもよい。このとき、接着剤層2及び粘着フィルム3により半導体ウェハは積層体に十分に粘着保持されているので、上記各工程中に半導体ウェハが脱落することが抑制される。
【0125】
次に、粘着フィルムが光反応型である場合、放射線等の高エネルギー線を積層体の粘着フィルムに照射し、粘着フィルム3における粘着剤層の一部又は大部分を重合硬化せしめる。この際、高エネルギー線照射と同時に又は照射後に、硬化反応を促進する目的で更に加熱を行っても良い。
【0126】
粘着フィルムが光反応型である場合、高エネルギー線の照射は、基材フィルムの粘着剤層が設けられていない側の面から行う。したがって、高エネルギー線として紫外線を用いる場合には、基材フィルムは光透過性であることが必要である。なお、高エネルギー線として電子線を用いる場合には、基材フィルムは必ずしも光透過性である必要はない。一方、粘着フィルム3が非反応型の場合、上記処理は行う必要はない。
【0127】
高エネルギー線を照射することにより、半導体素子を、例えば吸引コレットによりピックアップする際、ピックアップすべき半導体素子を基材フィルムの下面から、例えば針扞等により突き上げることもでき、粘着剤層を硬化させることにより、半導体素子と接着剤層2との間の粘着力は、接着剤層2と粘着剤層との間の粘着力よりも大きくなるため、半導体素子のピックアップを行うと、接着剤層2と粘着剤層との界面で剥離が生じ、接着剤層2が半導体素子の下面に付着した状態の接着剤層付き半導体素子がピックアップされることとなる。
【0128】
この接着剤層付き半導体素子を、接着剤層を介して半導体素子搭載用の支持部材に載置し、加熱を行う。加熱により接着剤層は接着力が発現し、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着が完了する。
【0129】
その後、必要に応じてワイヤボンド工程や封止工程等を経て、半導体装置が製造される。
【0130】
(半導体装置)
図8は、上述した半導体装置の製造方法により製造される本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【0131】
図8に示すように、半導体装置300は、半導体素子搭載用の支持部材となる有機基板13上に、接着剤層2及び半導体素子14からなる接着剤層付き半導体素子が2つ積層されている。また、有機基板13には、回路パターン16及び端子17が形成されており、この回路パターン16と2つの半導体素子14とが、ワイヤボンド15によってそれぞれ接続されている。そして、これらが封止材19により封止され、半導体装置300が形成されている。この半導体装置300は、上述した本発明の半導体装置の製造方法により、本発明の接着シート100を用いて製造されるものである。
【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(接着剤層形成用ワニスの作製)
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:YDCN−703、東都化成株式会社製、エポキシ当量:220)60質量部、及び、硬化剤として低吸水性フェノール樹脂(商品名:XLC−LL、三井化学株式会社製、フェノールキシレングリコールジメチルエーテル縮合物)40質量部に、シクロヘキサノン1500質量部を加えて撹拌混合し、第1のワニスを調製した。次に、この第1のワニスに、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:NUC A−189、日本ユニカー株式会社製)1.5質量部、及び、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(商品名:NUC A−1160、日本ユニカー株式会社製)3質量部を加え、更に無機物フィラーとしてシリカフィラー(商品名:R972V、日本アエロジル株式会社製)32質量部を加えて撹拌混合した後、ビーズミルにより分散処理を行うことで第2のワニスを調製した。次に、この第2のワニスに、エポキシ基含有アクリル系共重合体(商品名:HTR−860P−3、帝国化学産業株式会社製)200質量部、及び、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(商品名:キュアゾール2PZ−CN、四国化成工業株式会社製)0.5質量部を加えて撹拌混合し、接着剤層形成用ワニスを調整した。
【0133】
(接着剤層の作製)
上記接着剤層形成用ワニスを、剥離基材である膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:テイジンピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社製)上に塗布し、140℃で7分間加熱乾燥を行い、膜厚40μmのBステージ状態の接着剤層を形成した。
【0134】
支持接着剤層としては、前記の接着剤層を使用した。また、粘着フィルム(支持粘着フィルム)として、DC tape(膜厚10μm、古河電気工業株式会社製、商品名)を使用した。
【0135】
(第一の切断工程)
得られた接着剤層に対して、剥離基材への切り込み深さが10μm以下となるように調節して直径210mmの円形プリカット加工を行うとともに、剥離基材の短手方向の両端部に接着剤層(支持接着剤層)が残る形状になるよう加工を行った。
【0136】
(第二の切断工程)
その後、接着剤層の不要部分を除去し、粘着フィルムをその粘着剤層が接着剤層と接するように、室温(25℃)、線圧1kg/cm、速度0.5m/分の条件で貼付けた。そして、粘着フィルムに対して、剥離基材への切り込み深さが10μm以下となるように調節して接着剤層と同心円状に直径290mmの円形プリカット加工を行うとともに、支持接着剤層上に粘着フィルム(支持粘着フィルム)が積層され、該支持粘着フィルムが支持接着剤層上に積層されるよう加工を行った。これにより、図1〜4に示す構造を有する接着シートを得た。
【0137】
(実施例1)
形状が円形の支持接着剤層5が設置された、図1(a)の形状の接着シートを作製した。
【0138】
(実施例2)
形状が円形の支持接着剤層5が2個並列に設置された、図2(a)の形状の接着シートを作製した。
【0139】
(実施例3)
形状が三角形の支持接着剤層5が設置された、図3(a)の形状の接着シートを作製した。
【0140】
(実施例4)
形状が四角形の支持接着剤層5が設置された、図4(a)の形状の接着シートを作製した。
【0141】
(比較例1)
剥離基材、接着剤層、粘着フィルムからなる、図5(a)の形状の接着シートを作製した。なお、剥離基材、接着剤層、粘着フィルムは、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様に作製した。
【0142】
(比較例2)
図1(a)の支持接着層が無い形状の接着シートを作製した。
【0143】
[巻き跡の転写抑制性評価試験]
実施例1〜4及び比較例1〜2の接着シートを、円形形状の粘着フィルムの数が300枚になるように、巻き取り張力を1kg又は3kgとしてロール状に巻き取り、接着シートロールを作製した。得られた接着シートロールを2週間冷蔵庫内(5℃)で保管した。その後、接着シートロールを室温(25℃)に戻してからロールを解き、300枚目のフィルムについて半導体ウェハに貼り付けたときのボイドの発生の有無を目視にて評価した。
以下の評価基準に従って、○、△、×の3段階で接着シートの巻き跡の転写抑制性を評価した。
○:ボイドを全く確認できない。
△:目立たない微細ボイドが確認された。
×:目立つボイドが確認された。
また、連続的に半導体ウエハへ貼り付け作業を実施した際のラミネート作業性についても評価を行った。
○:作業性良好、支持接着剤層又は支持粘着フィルムの剥離は認められない。
×:作業中に、支持接着剤層又は支持粘着フィルムが、剥離基材から剥離した。
その結果を表1に示した。
【0144】
【表1】

【0145】
以上の結果から明らかなように、本発明の接着シート(実施例1〜4)によれば、比較例の接着シート(比較例1〜2)と比較して、ロール状に巻き取った場合において、接着剤層に巻き跡が転写されることを十分に抑制することができ、それによって、接着剤層を半導体ウェハに貼り付ける際にボイドの発生を十分に抑制することができることが確認された。
【0146】
以上、本発明について実施例を用いて説明してきたが、以下の作用効果を奏することが分かった。本発明のプリカット加工が施された接着シートは、ロール状に巻き取った場合において、接着剤層に巻き跡が転写される事を抑制し、半導体ウエハと接着剤層を貼り付ける際のボイド発生を抑制でき、且つ良好な貼り付け作業性を有する。
【符号の説明】
【0147】
1:剥離基材、2:接着剤層、3:粘着フィルム(粘着剤層)、4:積層体、5:支持接着剤層、6:支持粘着フィルム、7:支持層、8、9:切断刃、10:半導体ウェハ、11:ステージ、12:ウェハリング、13:有機基板、14:半導体素子、15、18:ワイヤボンド、16:回路パターン、17:端子、19:封止材、100、110、120、130、200:接着シート、300:半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離基材と、該剥離基材上の長さ方向に分散配置された接着剤層と、該接着剤層を覆い、且つ、該接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着フィルムと、を有する接着シートであって、前記接着剤層及び前記粘着フィルムの合計の膜厚と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層が、前記剥離基材上における前記粘着フィルム間に断続的に形成されていることを特徴とする接着シート。
【請求項2】
支持層が、接着剤層と同一組成の支持接着剤層及び粘着フィルムと同一組成の支持粘着フィルムが積層されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の接着シート。
【請求項3】
支持層が、支持接着剤層と、支持粘着フィルム層が支持接着剤層を覆い、且つ、剥離基材と接するように支持接着剤層上に積層された支持粘着フィルムからなるものであることを特徴とする請求項2記載の接着シート。
【請求項4】
剥離基材が長尺のものであり、支持層は、少なくとも剥離基材層の長さ方向に分散配置された各接着剤層の間に形成されており、支持接着剤層と接着剤層が重ならない様に、短手方向の上下に位置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の接着シート。
【請求項5】
支持接着剤層の1箇所の面積が少なくとも0.03cm以上である請求項2〜4のうちいれか一項に記載の接着シート。
【請求項6】
接着剤層及び粘着フィルムの少なくとも一方が、円形形状あるいは剥離基材を剥離した後に接着剤層又は粘着フィルムを貼り付けるべき被着体の平面形状に合致する平面形状を有していることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の接着シート。
【請求項7】
接着剤層が、熱可塑性樹脂及び熱重合性成分を含有してなるものであることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の接着シート。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分であることを特徴とする請求項7記載の接着シート。
【請求項9】
高分子量成分が、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることを特徴とする請求項8記載の接着シート。
【請求項10】
熱重合性成分が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるものであることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の接着シート。
【請求項11】
接着剤層は、25℃での硬化前の貯蔵弾性率が10〜10000MPaであり、且つ、260℃での硬化後の貯蔵弾性率が0.5〜30MPaであることを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の接着シート。
【請求項12】
高エネルギー線の照射により、接着剤層と粘着フィルムとの間の粘着力が低下することを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の接着シート。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載の接着シートにおいて、接着剤層及び粘着フィルムからなる積層体を剥離基材から剥離し、前記積層体を、前記接着剤層側の面から半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る貼り付け工程と、前記積層体付き半導体ウェハを、前記接着剤層と前記粘着フィルムとの界面までダイシングし、前記半導体ウェハを所定の大きさの半導体素子に切断するダイシング工程と、前記積層体に高エネルギー線を照射して前記粘着フィルムの前記接着剤層に対する粘着力を低下させた後、前記粘着フィルムから前記半導体素子を前記接着剤層とともにピックアップし、接着剤層付き半導体素子を得るピックアップ工程と、前記接着剤層付き半導体素子における前記半導体素子を、前記接着剤層を介して被着体に接着する接着工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
被着体が、半導体素子搭載用の支持部材、又は、別の半導体素子であることを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14又は15記載の半導体装置の製造方法により製造されてなる、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−126934(P2011−126934A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283913(P2009−283913)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】