説明

揺動体装置、光偏向器、及びそれを用いた光学機器

【課題】揺動部の慣性モーメント或いは重心位置の調整を比較的大きな範囲で比較的高速に行うことが可能な光偏向器などの揺動体装置、その製造方法を提供する。
【解決手段】揺動体装置は、揺動部と弾性支持部305、306と支持体301とを備え、揺動部が弾性支持部により揺動軸304回りに揺動可能に支持されている。揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部303、321を持つ可動子302、320で構成されている。突出部は可動子から揺動軸と平行な方向に突出しており、突出方向の何れの個所でも切断可能に形成されている。突出部の揺動軸を法線とする断面積は、揺動軸方向に一定である。
【選択図】図10

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動可能に支持された可動子を有する揺動体装置、それを用いた光偏向器、それを用いた画像形成装置、ディスプレイなどの光学機器、及び揺動体装置の製造方法に関する。この光偏向器は、例えば、光の偏向走査によって画像を投影するプロジェクションディスプレイや、電子写真プロセスを有するレーザービームプリンタ、デジタル複写機等の画像形成装置に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光偏向器として、反射面を持つ可動子を正弦振動させて光を偏向する光走査系ないし光走査装置が種々と提案されている。ここにおいて、共振現象を利用して正弦振動を行う光偏向器を用いた光走査系は、ポリゴンミラー等の回転多面鏡を使用した光走査光学系に比べて、次の様な特徴がある。すなわち、光偏向器を大幅に小型化することが可能であること、消費電力が少ないこと、特に半導体製造プロセスによって製造される単結晶シリコンからなる光偏向器は理論上金属疲労が無く耐久性にも優れていること、等の特徴がある。
【0003】
この様な共振現象を利用した光偏向器は、所望の駆動周波数に対して目標とする固有振動モードの周波数が決められており、これを良好に製造する方法が提案されている。
【0004】
特開2002-40355号公報(特許文献1)では、図20に示す様に、ねじり軸に揺動可能に弾性支持された反射面とコイルを有する可動板の両端に質量負荷部1001、1002を形成したプレーナ型ガルバノミラーが用いられる。そして、このガルバノミラーの質量負荷部1001、1002にレーザ光を照射することで、質量を除去し、慣性モーメントを調整して周波数を所望の値にする。
【0005】
また、特開2004-219889号公報では、樹脂で代表される質量片を可動板に塗布して、上記と同様の原理で、周波数を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-40355号公報
【特許文献2】特開2004-219889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2の提案例では、調整範囲が大きいと、調整に長い加工時間を要してしまう。また、これらの調整原理によれば、周波数や重心を同時に迅速に調整することも困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置の製造方法は、次の特徴を有する。すなわち、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている本発明の揺動体装置の前記揺動部は、可動子と該揺動部の質量を調整するための質量調整体とを有する。そして、前記可動子と前記質量調整体の一部との間に空隙が形成されており、前記質量調整体にレーザ光を照射することで、該レーザ光の照射されない部分を含んで、前記空隙上の前記質量調整体の一部を除去する工程を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置の製造方法は、次の特徴を有する。すなわち、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置の前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部を持つ可動子で構成されている。前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、前記突出部の切断部にレーザ光を照射することで、該レーザ光の照射されない該切断部から先の前記突出部を含んで、前記可動子の一部を除去可能であり、前記切断部の位置を変えることで、除去量を調整する工程を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置の製造方法は、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。すなわち、揺動部は、該揺動部の質量を調整するための複数の突出部を持つ可動子で構成されており、突出部は、揺動軸に対して互いに反対側に配置される。そして、突出部の切断部を切断することで、該切断部から先の突出部を含んで、可動子の一部を除去可能であり、切断部の位置を変えることで、揺動部の慣性モーメントと揺動部の重心の揺動軸からのオフセット距離とを調整する工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置であって、次の特徴を有する。すなわち、前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための質量調整体が配置された可動子で構成され、該可動子と前記質量調整体の一部との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置であって、次の特徴を有する。すなわち、前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部を持つ可動子で構成されており、前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定であることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、振動系と、該振動系を駆動する駆動手段を含んだ揺動体装置であって、次の特徴を有する。すなわち、振動系は、第1揺動部と第1弾性支持部と、第2揺動部と第2弾性支持部と、支持体で構成される。そして、第1揺動部は、第1揺動部の質量を調整するための突出部を持つ第1可動子で構成され、第2揺動部は、第2揺動部の質量を調整するための突出部を持つ第2可動子で構成される。更に、前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定である。そして、第1可動子は、第2可動子に第1弾性支持部で揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、第2可動子は、前記支持体に、第2弾性支持部で揺動軸回りに揺動可能に弾性支持される。そして、振動系は、前記揺動軸回りに、周波数が異なる少なくとも2つの固有振動モードを有することを特徴とする。
【0014】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置であって、次の特徴を有する。すなわち、揺動部は、該揺動部の質量を調整するための複数の突出部を持つ可動子で構成されており、突出部は、揺動軸に対して対称な位置に対を成して配置される。そして、前記対称位置の突出部は、互いに形状が異なっており、揺動部の重心は揺動軸上にあることを特徴とする。
【0015】
また、上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、振動系と、該振動系を駆動する駆動手段を含み、次の特徴を有する。すなわち、前記振動系は、第1揺動部と第1弾性支持部と、第2揺動部と第2弾性支持部と、支持体で構成される。前記第1揺動部は、該第1揺動部の質量を調整するための複数の第1突出部を持つ第1可動子で構成され、前記第2揺動部は、該第2揺動部の質量を調整するための複数の第2突出部を持つ第2可動子で構成される。前記複数の第1突出部及び第2突出部は、揺動軸に対して、それぞれ対称位置に配置され、第1突出部と第2突出部の少なくとも一方の前記対称位置の突出部は、互いに形状が異なる。前記第1揺動部及び第2揺動部の重心は、揺動軸上にある。前記第1可動子は、前記第2可動子に、第1弾性支持部で揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、前記第2可動子は、前記支持体に、第2弾性支持部で揺動軸回りに揺動可能に弾性支持される。そして、前記振動系は、揺動軸回りに、周波数が異なる少なくとも2つの固有振動モードを有することを特徴とする。
【0016】
また、上記課題に鑑み、本発明の光学機器の1つである画像形成装置は、次の特徴を有する。すなわち、光源と、光偏向器と、感光体を有し、光偏向器は、光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を感光体に入射させることを特徴とする。また、上記課題に鑑み、本発明の光学機器の1つである画像表示装置は、次の特徴を有する。すなわち、光源と、光偏向器と、画像表示体を有し、光偏向器は、光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を画像表示体上に入射させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光走査を行う光偏向器などの揺動体装置ないしその調整方法においては、揺動部が可動子と質量調整体を含み、可動子と質量調整体との間に空隙が形成されているため、比較的大きな質量も比較的高速で除去することができる。
【0018】
また、可動子に質量調整用の突出部が形成されているので、比較的大きな質量も比較的高速で除去することができる。従って、揺動部の慣性モーメント或いは重心位置の調整を比較的大きな範囲で比較的高速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の第1の実施例の光偏向器を示す上面図であり、(b)は本発明の第1の実施例の振動系の反射面が形成されない側の上面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の揺動部と駆動手段を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例における揺動部の変形例を示す断面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施例の光偏向器を示す上面図であり、(b)は本発明の第2の実施例の振動系の反射面が形成されない側の上面図である。
【図5】本発明の第2の実施例の揺動部を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の弾性支持部を示す断面図である。
【図7】(a)は本発明の実施例のレーザ加工の一工程を説明する上面図であり、(b)は本発明の実施例のレーザ加工の他の工程を説明する上面図であり、(c)は本発明の実施例のレーザ加工の(b)に対応する工程を説明する断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例の凹部を持つ可動子の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例のねじりバネの製造工程を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明の第3の実施例の振動系を示す上面図であり、(b)は本発明の第4の実施例の質量調整体の上面図である。
【図11】本発明の第3の実施例の揺動体装置の第1の可動子の変位角を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施例の揺動体装置の第1の可動子の角速度を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施例の第1の可動子と突出部を示す上面図である。
【図14】本発明の第5の実施例の揺動体装置を示す上面図である。
【図15】本発明の第5の実施例の揺動体装置の駆動基板を示す上面図である。
【図16】本発明の第5の実施例の揺動体装置の断面図である。
【図17】本発明の第6の実施例の揺動体装置を示す上面図である。
【図18】本発明の第6の実施例の揺動体装置を示す断面図である。
【図19】本発明の光偏向器を用いた光学機器の実施例を示す斜視図である。
【図20】従来例の光偏向器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の揺動体装置は、揺動軸回りに揺動可能に設けられた少なくとも1つの揺動部を有している。そして、揺動部は、その質量を調整するための質量調整体が配置された可動子で構成されており、可動子と質量調整体との間に空隙を有している。この空隙により、質量調整体の一部を可動子から離間することができる様になる。空隙は、可動子または質量調整体に設けられた凹部である。揺動体装置は、振動系と、該振動系を駆動するための駆動手段を含んで構成することもできる。この場合、振動系は、上記揺動部と、支持体と、弾性支持部で構成され、可動子は、支持体に対して、弾性支持部で揺動軸の回りに揺動可能に弾性支持される。可動子に、光偏向素子である反射面を設置して、光偏向器として構成することもできる。上記揺動体装置の製造方法においては、揺動軸回りの少なくとも1つの固有振動モードの周波数の目標周波数への調整と揺動部の重心位置の揺動軸への調整・一致の少なくとも一方を行う為に、次の様にする。例えば、空隙上の質量調整体の一部をレーザ光で切除する方法がある。空隙上の質量調整体の部分の形態としては、空隙上に全面的に質量調整体の部分が伸びている形態でもよいし、空隙上に迫り出して突出部として質量調整体の一部が伸びている形態でもよい。後者の場合、突出部の位置(揺動軸からの距離)と質量を設定しておけば、この突出部を切除したときに(例えば、突出部の根元部をレーザ光で切って行う)、慣性モーメントや重心位置をどの程度調整できるかが予め分かることになる。こうした空隙と突出部を複数設けておけば、慣性モーメントや重心位置が非常に迅速且つ精度良く調整できることになる。
【0021】
特にこの場合は、可動子上に質量調整体を設けているので、可動子の面積を大きくすることはない。従って、可動子が揺動軸回りに揺動運動する際の空気抵抗を大きくすることなく質量調整体を設けることができる。
【0022】
本実施形態の揺動体装置の製造方法の他の例では、質量調整体の上記離間された部分へ、レーザ光を閉曲線状に(例えば円周状に)走査して照射し、この照射部分の質量調整体を除去して揺動部を作成する。閉曲線に囲まれた質量調整体の部分(ここにはレーザ光は照射されていない)も、空隙により可動子から離間されているため、除去されることとなる。従って、揺動部の揺動軸回りの慣性モーメントから、除去部分が有していた揺動軸回りの慣性モーメント分が減じられることとなる。或いは、除去部分が有していた質量の減少により、重心位置が調整されることになる。
【0023】
こうして、振動系の固有振動モードの周波数や重心位置を変化させることができる。つまり、質量調整体から除去する除去部分の体積と位置を適切に選択することによって、慣性モーメントや重心位置を所望の慣性モーメントや重心位置へ調整可能となる。特に、質量調整体の密度を適切に選択することにより(例えば、質量調整体の比重を小さくしておくことにより)、周波数調整の分解能を、除去体積の分解能や位置決めの分解能に依らずに選択可能となる。また、レーザ光を照射して閉曲線状の質量を除去すれば、上記空隙の存在により、閉曲線に囲まれた質量調整体の部分も除去できるため、大きな質量も高速で除去することができる。従って、慣性モーメントや重心位置の調整を比較的大きな調整幅で、比較的高速に行うことが可能となる。更に、空隙の存在により、レーザ加工時に、可動子の一部まで除去することなく、質量調整体のみを正確に除去可能となるため、高精度に上記調整を行うことできる。すなわち、空隙がなければ、レーザ加工時に、質量調整体の直下の可動子の一部まで除去することが起こり得るが、空隙を設ければこうした事態は確実に回避できる。
【0024】
揺動軸回りに揺動可能に設けられた揺動部を含んだ揺動体装置としては、次の形態を採用することもできる。この形態では、揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部を持つ可動子で構成されている。すなわち、ここでは、質量調整体を別個設けるのではなく、可動子自体の一部を質量調整体の役割を担う部分としている。突出部の形態としては、揺動軸に平行な方向に伸びる突出部とか、揺動軸に垂直な方向に伸びる突出部とか、がある。また、可動子を、例えば、台形状や糸巻き形状にして、鋭角を成す角部を突出部として利用する方法もある。
【0025】
特に、揺動軸に平行な方向に伸びる突出部については、レーザ光を照射する切断部の位置を調整することで、切断部から突出部の先端までの除去量が調整される。
【0026】
更に、この形態によれば、除去量の大小に関係なく、レーザ加工を行う加工領域のサイズが一定且つ小さくなる。そのため、迅速に慣性モーメントが調整可能となるだけでなく、除去量が大きくなっても、レーザ加工に伴う揺動体装置への熱の伝達を抑制することが可能となる。
【0027】
また、切断部の位置を微調整することによって、除去量の分解能を細かくすることができるため、大きな調整幅と正確な分解能を実現することが可能となる。更に、揺動軸と垂直な断面形状を揺動軸方向に一定な突出部とすれば、切断部から突出部の先端部分までの長さと、揺動軸回りの揺動部の慣性モーメント調整量が、ほぼ比例関係となるため慣性モーメントを容易に調整可能となる。
【0028】
そして、全ての突出部が揺動軸と平行に伸びることにより、突出部が揺動軸と垂直方向に伸びる場合と比べ、揺動の変位角、位相の不安定性を低減することができる。これは、この不安定が、周囲の空気から揺動部の受ける抵抗の変動によって引き起こされるからである。特に、数mmオーダの微小なサイズで形成される揺動体装置では、大きな課題となるこの空気抵抗の変動は、揺動の揺動軸からの距離が遠い(変位速度が速い)部分が存在するほど顕著となる。全ての突出部を揺動軸と平行に形成することで、走査安定性と慣性モーメントの迅速な調整が同時に達成される。これは、揺動部の揺動軸から最も離れた位置にのみ突出部を形成した場合に、最も効果的に達成される。
【0029】
半導体製造技術を応用して微細加工を行えば、揺動部の可動子と突出部をモノリシックに形成することができるため、慣性モーメント調整機構を有する揺動部を高精度に形成する
ことが可能となる。
【0030】
揺動軸回りに揺動可能に設けられた2つの揺動部を含んだ振動系と振動系を駆動する駆動手段で揺動体装置を構成することもできる。この形態では、第1揺動部は、揺動軸に平行な方向に伸びる突出部を持つ第1可動子で構成されている。同様に、第2揺動部は、揺動軸に平行な方向に伸びる突出部を持つ第2可動子で構成されている。第1及び第2揺動部に形成された突出部の揺動軸を法線とする断面積は揺動軸方向に一定である。振動系は、揺動軸回りに2つの固有振動モードを有している。そして、ここでは、第1可動子の突出部、第2可動子の突出部へのレーザ光を照射する切断部の位置を調整することで、それぞれ除去量を調整することができる。
【0031】
また、振動系に共通な揺動軸に平行な突出部を第1揺動部、第2揺動部にそれぞれ設けることで、切断する方向を第1可動子、第2可動子で共通とすることができるため、切断装置が簡略化される。
【0032】
また、上記揺動体装置の製造方法において、揺動軸回りの少なくとも1つの固有振動モードの周波数の目標周波数への調整と揺動部の重心位置の調整を同時に行うために、次の様にすることもできる。可動子から突出した突出部の一部を切断する。例えば、レーザ光で切除する。レーザ光を照射する切断部の位置を調整することで、切断部から突出部の先端までの除去量が調整される。複数の突出部は、揺動軸に対して対称な位置に対称な形状で最初形成される。通常、調整後、対を成す突出部は、互いの除去量が異なっており、最終的な加工形状は異なっている。
【0033】
突出部の少なくとも一部を除去することにより、除去量に応じて、揺動部の慣性モーメントが調整される。そして、対を成す突出部の除去量の非対称性により、揺動部の重心の揺動軸からのオフセット距離も同時に調整される。ここでも、前述した突出部の除去を行う形態と同様な効果が奏される。更に、慣性モーメントと重心のオフセット距離のそれぞれの調整を同じ突出部を用いて同時に行うことができるため、加工が迅速になる。加えて、調整の為に設ける突出部の数を少なくできて、揺動部の慣性モーメントと質量を共に小さくできる。そのため、揺動体装置全体を小型にできると共に、揺動部が揺動する際に受ける空気抵抗を小さくできて揺動部の揺動運動の安定性を向上することができる。
【0034】
また、揺動軸回りに揺動可能に設けられた揺動部を含んだ揺動体装置としては、次の形態を採用することもできる。揺動体装置の全ての突出部が、揺動軸に平行に伸び、揺動軸を法線とする断面積が、揺動軸方向に一定であり、揺動軸に対して対称な位置にある突出部の長さが互いに異なって加工される形態にもできる。
【0035】
この形態によれば、除去長さの総和は、慣性モーメントの調整量に関係し、複数の突出部の除去長さの比は、揺動部の重心の揺動軸からのオフセット距離の調整量に関係している。そのため、各々の突出部の除去形態について、慣性モーメントの調整量から総和量を決定し、オフセット距離の調整量から除去長さの比を決定すれば、慣性モーメントと重心のオフセット距離が同時に調整される。ここで、慣性モーメントの調整量と、除去長さの総和量は比例関係にある。したがって、慣性モーメントの調整量と重心のオフセット距離の調整量を簡単に精度良く決定することができる。
【0036】
ここでも、前述した揺動軸と平行に伸びる突出部による効果が達成される。そして、ここでも、半導体製造技術を応用して微細加工を行えば、揺動部の可動子と複数の突出部をモノリシックに形成することができる。そのため、高精度に、慣性モーメントと重心のオフセット距離を調整することができる構造を作成できる。
【0037】
また、揺動軸回りに揺動可能に設けられた揺動部を含んだ揺動体装置としては、次の形態を採用することもできる。すなわち、揺動体装置は、可動子に駆動手段として永久磁石を設置し、振動系の外部に設置されるコイルからの電磁力で、磁石を持つ可動子を駆動することもできる。この形態では、永久磁石が可動子に設置され、永久磁石の重心が揺動軸からオフセットしている。例えば、加工誤差により、永久磁石の設置位置がランダムにずれることで、重心がオフセットしてしまう。しかし、上記形態と同様に、可動子に形成される突出部の少なくとも一部を除去することにより、可動子の重心を揺動軸からオフセットすることができるので、永久磁石の重心のオフセットと可動子の重心のオフセットを相殺することができる。すなわち、次の様に突出部の少なくとも一部を除去すれば、両者は相殺される。永久磁石の重心と可動子の重心を結ぶ線分が揺動軸と交わる交点からそれぞれの重心までの距離の比が、永久磁石と可動子それぞれの質量の逆数の比とほぼ一致するように、突起を除去する。これにより、揺動部全体の重心は揺動軸上となる。
【0038】
このように、揺動部を大きく駆動させられる電磁力による駆動手段を含む小型の揺動体装置において、周波数の調整と重心のオフセット距離の調整を同時に行うことが可能である。永久磁石は、加熱により磁気特性が劣化してしまう。そのため、除去量が大きくなっても、加工領域が大きくならない上記形態の構成は、レーザ加工に伴う熱の伝達を抑制でき、良好な磁気特性を有する永久磁石を持つ可動子を作成できる。
【0039】
また、揺動軸回りに揺動可能に設けられた2つの揺動部を含んだ振動系と、振動系を駆動する駆動手段で、上記同タイプの形態とは異なる揺動体装置を構成することもできる。この形態では、第1揺動部は、揺動軸に平行な方向に伸びる複数の突出部を持つ第1可動子で構成される。同様に、第2揺動部は、揺動軸に平行な方向に伸びる複数の突出部を持つ第2可動子で構成される。振動系は、揺動軸回りに2つの固有振動モードを有する。ここでは、第1可動子の突出部や第2可動子の突出部のレーザ光を照射する切断部の位置を調整することで、それぞれの突出部の除去量を調整することができる。また、振動系に共通な揺動軸に平行な突出部を第1揺動部と第2揺動部にそれぞれ設けることで、切断する方向を第1可動子と第2可動子で共通とすることができるため、切断装置が簡略化される。
【0040】
ところで、揺動部が、その質量を調整するための質量調整体が配置された可動子で構成され、可動子と質量調整体との間に空隙を有している上記形態においても、次の様にして、周波数の調整と重心のオフセット距離の調整を同時に行うことが可能である。揺動軸を挟んで可動子の両側に質量調整体を配置し、両側の質量調整体の除去部の量と揺動軸からの距離を、慣性モーメントの調整量と重心のオフセット距離の調整量に基づき、上記の如く決定する。そして、この決定に従って質量調整体の一部を除去することで、周波数の調整と重心のオフセット距離の調整を簡単に精度良く行うことができる。
【0041】
上記可動子に光を偏向する反射面を設置して光偏向器とした場合、画像形成や画像表示を行う際、所望の周波数または重心オフセット量に良好に調整された光偏向器を用いることができる。固有振動モードの周波数が調整されている場合、この光偏向器は、振幅増幅率の高い状態で駆動可能であるため、小型・低消費電力とできる。また、揺動軸からの重心のオフセット量が良好に調整されている場合、走査に伴った揺動部の揺動軸の変位が生じず、走査線が曲がったり、再現性を失ったりといった特性劣化が生じ難い。
【0042】
この光偏向器を用いた画像形成装置は、光源と、上記光偏向器と、感光体を備え、光偏向器は、光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を感光体に入射させる。また、この光偏向器を用いた画像表示装置は、光源と、上記光偏向器と、画像表示体とを備え、光偏向器は、光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を画像表示体に入射させる。
【0043】
特に、上記2つの揺動部を含んだ振動系の一方の可動子に光を偏向する反射面を設置して光偏向器とした場合、画像形成や画像表示を行う際、揺動軸回りの2つの固有振動モードを2倍または3倍の周波数関係に良好に調整した光偏向器を用いることができる。この光偏向器は、振幅増幅率の高い状態で駆動可能であるばかりでなく、上記周波数関係の正弦波の合成波駆動を行うことにより、光走査の角速度の均一性を高めることができる。そのため、揺動による角加速度変化に伴う反射面の変形を低減できる。また、スポット形成の際、光源の変調タイミングに角速度の不均一性をあまり考慮しなくてよいため、変調回路が簡略化できる。更に、重心のオフセット量が良好に調整されている場合、振動系が有している2つの固有振動モードの独立性を阻害する連成(カップリング)で生じる望ましくない振動の変動を抑制することができる。このような振動の変動は、重心のオフセット量を低減し、2つの固有振動モードの周波数を整数倍の関係に調整することで低減できる。このような振動の変動は、揺動部の揺動軸回りの角速度の変動などをも生じさせ、光走査の不安定性をもたらす原因となるため、抑えることが好ましい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
(第1の実施例)
図1、図2は、本発明の揺動体装置の一例である光偏向器の第1の実施例を示す図である。図1(a)は光偏向器の上面図、図1(b)は図1(a)の裏面側から見た振動系の上面図、図2は、図1(a)のA−A線での断面図である。本実施例では、質量調整体19と反射面22と空隙30は、図示の如く、可動子11に設置されており、揺動部41を構成している。ここで、振動系は、揺動部41と弾性支持部12と支持体13を含む。
【0046】
初めに、構成と共に、本実施例の駆動原理について図を用いて説明する。本実施例では、図1に示した振動系が、後述する駆動手段により、揺動軸17を中心にねじり振動する。図1の可動子11、弾性支持部12、支持体13は、単結晶シリコン基板から、半導体製造方法のフォトリソグラフィとドライエッチングにより一体形成されている。従って、小型の振動系を比較的安価に形成することが可能となる。また、単結晶シリコンは、ヤング率が高く密度が小さいため、可動子の自重による変形が少なく、共振時の振幅増幅率が高い振動系を形成することができる。可動子11は、例えば、揺動軸17に垂直な方向のサイズが3mm、平行な方向のサイズが1mmであり、振動系の全長は約12mmである。
【0047】
可動子11は、2本で一対の弾性支持部12により、揺動軸17中心にねじり振動自在に弾性支持される。また、一対の質量調整体19と一対の空隙30は、揺動軸17を挟んで互いに反対側に夫々設置されている。
【0048】
可動子11に設置された反射面22は、可動子11のねじり振動によって、光源からの光を偏向走査する。ここでは、反射面22の材料はアルミニウムであり、真空蒸着により形成されている。反射面は、別の材質、例えば金、銅等でもよく、最表面に保護膜を形成してもよい。可動子11には反射面22が形成されるため、駆動時の平坦性が特に重要であるが、2本で一対の弾性支持部(ねじりバネ)12で両端支持されることにより、1本の場合と比べ、自重による変形を抑え、平坦性を良好に保つことができる。
【0049】
図2は、固定体150と駆動手段を示している。図示の様に、本実施例の駆動手段は、固定体150に固定された固定コイル152と、揺動部41の可動子11の裏面に設置された永久磁石151を含む。図1(b)と図2に示す様に、揺動部41が有する永久磁石151は、例えば、長さ約2mm、断面150μm×150μmの角柱の金属磁石である。永久磁石151は、その着磁方向が長手方向であり、接着剤により可動子11に固定されている。
【0050】
図2に示す様に、固定体150は、振動系・永久磁石151と固定コイル152の位置を適切に保持している。そして、固定コイル152は、これに駆動用の交流電流を通電することにより、図2に示した矢印Hの方向に交流磁場を発生する。永久磁石151の磁束密度方向は矢印Bであるため、固定コイル152が作る磁場により、揺動軸17回りのトルクが発生し、振動系を駆動することができる。
【0051】
次に、本実施例の光偏向器の駆動原理を更に詳細に説明する。本実施例の振動系は、揺動軸17を中心としたねじり振動について、周波数f1の固有振動モードを有している。この固有振動モードは、揺動部41の揺動軸17回りの慣性モーメントをI、2本で一対の弾性支持部12の揺動軸17回りのバネ定数をKとすると、ねじり振動系の固有振動モードの周波数を示す式1の関係から算出される。
1=1/2π・√(K/I) (式1)
【0052】
式1は振動系の減衰項(例えば空気抵抗)が小さい場合には十分な近似である。本実施例の振動系は、減衰比がおおよそ0.003程度である。そして、本発明の応用の仕様から決定される目標駆動周波数である基準周波数f0によって、固定コイル152は振動系を駆動する。基準周波数f0と周波数f1が一致した場合は、固有振動モードの最も振幅増幅率が高い点で駆動することとなる。
【0053】
しかし、材料物性ばらつきや加工公差等の様々な誤差要因によって、周波数f1が基準周波数f0からずれることがある。そこで、質量調整体19の一部を除去することにより式1における揺動部41の慣性モーメントIを調整し、周波数f1を基準周波数f0へ調整することを行う。本実施例の質量調整体19は、図1、図2に示す様にアルミニウムの平板を可動子11に接着することで形成されている。
【0054】
上述した様に、この質量調整体19の除去部分の体積と揺動軸17からの距離によって、慣性モーメントの調整量を増減することができる。例えば、周波数f1の誤差範囲を想定し、誤差範囲を含めて周波数f1が基準周波数f0より低くなる様に、慣性モーメントIやバネ定数Kを設定することにより、周波数f1を基準周波数f0へ調整可能となる。例えば、質量調整体19の一部を除去する前に、駆動周波数を掃引しながら可動子11の振動振幅を測定することによって周波数f1を測定し、必要な除去量を知ることができる。ここで、質量調整体19の密度を適切に設定すれば、除去する部分の体積と揺動軸17からの距離の分解能によらず、周波数f1の調整分解能を設定することができる。
【0055】
更に、本実施例では、質量調整体19は、平板状の可動子11の永久磁石151の設置されている面の反対面に設置される。従って、揺動部41の重心の揺動軸17からのずれを低減し、不要振動を減ずることが可能となる。また、質量調整体19の一部を除去することで、揺動部41の重心の揺動軸17からのずれを低減することができる。例えば、反射面22に観察用のレーザ光を入射し、走査軌跡を観察することで、揺動軸17回りのねじり振動軌跡を観察する。そして、不要振動が低減される様に質量調整体19を除去することで、重心ずれを低減できる。
【0056】
次に、質量調整体19の一部を除去する工程について図を用いて詳細に説明する。本実施例の可動子11は、図1(b)に示す様に貫通孔による空隙30を有している。従って、図2に示す様に、質量調整体19の一部には、可動子11と接着されていない領域が存在する。空隙30は、振動系を単結晶シリコン基板からドライエッチングで形成するときに同時に形成される。
【0057】
図7は、本実施例の質量調整体19を除去する工程を説明する概念図である。本実施例の質量調整体19は、パルスレーザを加工部分に照射することにより質量の一部が除去される。図7(a)は、レーザ加工初期の加工部分の上面図、図7(b)は、レーザ加工工程(a)から更に加工が進んだ状態を示す上面図、図7(c)は、図7(b)のC−C線で切断した断面図である。
【0058】
図7(c)に示す様に、本実施例の質量調整体19は、空隙30により可動子11に接着されていない部分の一部である質量除去部分85が最終的に除去される。
【0059】
まず、図7(a)に示す様に、加工レーザスポット80が、加工軌跡82に沿って、回転方向83の様に円弧を描く閉曲線状に、走査される。加工レーザスポット80は、質量調整体19の加工に適した出力とパルス周波数で発光している。図示の様に、加工レーザスポット80により、加工軌跡82に沿った加工部分81が形成される。
【0060】
図7(b)では、加工レーザスポット80が、加工軌跡82に沿って、適切な回数周回した後の状態を示している。図示の様に、加工軌跡82に沿って貫通部分84が形成されている。図7(c)では、この部分の断面を示している。加工レーザスポット80は、更に加工軌跡82を周回して、質量除去部分85の周囲を円弧状閉曲線的に除去する。質量除去部分85は、図7(c)に示す様に、空隙30の存在により可動子11と接着していないため、上記の工程によって、可動子11から切り離されることとなる。
【0061】
上記の工程で、加工軌跡82の直径を大きくすれば、高速に大きな質量を除去することが可能となる。勿論、加工軌跡82の形状は、上記の円弧状閉曲線に限るものではない。
【0062】
以上の様に本実施例では、空隙30の効果により、実際にレーザ光が照射されて除去される体積より大きな体積を、高速に除去することができる。そのため、固有振動モードの周波数調整範囲や重心位置調整範囲を増大し、更に調整を高速に行うことが可能となる。また、空隙30の存在により、レーザ加工時に可動子11の一部まで除去することなく、質量調整体19のみが除去可能となるため、振動系の固有振動モードの周波数調整や重心調整を高精度に行うことが可能となる。
【0063】
更に、本実施例の様に可動子11に貫通孔として空隙30を設けることにより、質量調整体19を平板とすることができるため、接着のための組み立てが容易となる。本実施例の質量調整体19の材質としては、加工用のレーザ光を吸収する金属、誘電体、半導体等を用いることができる。
【0064】
ところで、本実施例の可動子11、質量調整体19は、図3に示す様な形態にすることもできる。図3は、図1(a)のA−A線での断面図である。前述の図2の場合と異なり、図3に示す構成では、質量調整体19に空隙30が設けられている。この場合でも、レーザ光照射による質量除去について同様の効果を得ることができる。
【0065】
本発明の揺動体装置の上記実施例では、光を反射・偏向する光偏向器について説明した。しかし、例えば、可動子11へ外部から質量が付着することによる振動周波数変化を測定して、質量付着を検知するセンサ等に用いることもできる。
【0066】
更に、上記実施例では、揺動軸17回りに1つの固有振動モードを有する場合について説明したが、例えば、複数の揺動部を有し、それらが揺動軸17回りに直列にねじり振動自在に弾性支持される振動系では、固有振動モードが複数となる。この場合も、上記実施例と同様な製造方法によって、夫々の揺動部の慣性モーメントを調整することで、複数の固有振動モードの周波数を調整可能である。また、夫々の揺動部の重心位置を調整することで、不要振動を低減することができる。
【0067】
(第2の実施例)
図4、図5、図6は本発明の揺動体装置の第2の実施例である光偏向器を示す図である。図4(a)は上面図、図4(b)は、図4(a)の裏面側から見た振動系の上面図である。また、図5と図6は、図4のC−C線、D−D線における面での断面図を夫々示している。これらの図面では第1の実施例と同じ機能を有する個所には同じ符号を付す。以下では、同機能部の詳細な説明を省略し、特に異なる箇所について詳細に説明する。
【0068】
図4に示す様に、本実施例の光偏向器は、第1の実施例と異なり、弾性支持部12は1本のみであり、振動系は、固定体150に片持ち梁構造で固定されている。
【0069】
更に、本実施例では、質量調整体19は、樹脂から形成されており、平板状の可動子11の永久磁石151の設置されている面の反対面に設置されている。従って、揺動部41の重心の揺動軸17からのずれを比較的容易に低減でき、不要振動を減ずることが可能となる。すなわち、図5に示す様に、永久磁石151と質量調整体19が、揺動軸17を挟んで、可動子11の互いに反対側の面に配置されるので、質量調整体19を付与することによる揺動部41の揺動軸17からの重心のずれを低減することが可能となる。
【0070】
本実施例の振動系である可動子11、弾性支持部12、支持体13は、後述するアルカリ水溶液を用いた単結晶シリコンの異方性エッチングを用いて一体的に形成されている。本実施例では、可動子11、弾性支持部12は、図5、図6に示す様に、単結晶シリコンの結晶等価面に囲まれた特徴的な形状を有している。
【0071】
図5に示す様に、本実施例の可動子11は、揺動軸17と平行に伸びる凹部31を有している。凹部31は、第1の実施例における空隙30と、質量調整体19をレーザ光で除去する工程において、同様の効果を有している。そして、例えば、質量を除去する部分の揺動軸17からの距離と体積を選択することにより、除去質量と除去慣性モーメントの関係を変化させることができる。そのため、固有振動モードの周波数を調整しながら、揺動部41の重心位置を揺動軸17へ一致させることが可能となる。
【0072】
更に、空隙として凹部31を形成することにより、質量調整体19に平板を用いるだけで、空隙を形成できるので、接着のための組み立てが容易となる。更に、凹部31が形成される側の裏面には空隙が形成されないため、裏面のほぼ全体(ただし、永久磁石151のある部分以外)を反射面に使用することもできる。
【0073】
一方、図6に示す様に、弾性支持部12は、単結晶シリコンの(100)等価面と(111)等価面で囲まれたX字状の断面形状を有している。従って、弾性支持部12は、図6の矢印L、矢印M方向への剛性が高く、矢印N方向の揺動軸17回りのねじり剛性が比較的柔らかくなっている。つまり、ねじりバネとして揺動軸17中心にねじり易く、他方向へたわみ難い構造となる。従って、矢印L、矢印M方向の不要振動を効果的に抑制することができる。
【0074】
また、本実施例の弾性支持部12は1本のみとなっており、振動系が固定体150に対して片端支持された構成となっている。このため、温度変化や外力によって固定体150に変形が生じても、固定体150から振動系への揺動軸17方向の応力が伝達されないため、この様な軸方向への応力が原因となる固有振動モードの周波数変化を抑えることができる。また、固定体150に変形が生じても、振動系の変形は殆ど生じない。従って、製造時に揺動軸17へ一致する様に調整された重心位置が、温度変化や外力によって変化しないため、温度変化や外力の有無によらず不要振動を減ずることができる。
【0075】
次に、本実施例の可動子11、弾性支持部12、支持体13のアルカリ水溶液エッチングの工程を説明する。図8、図9には、図5、図6の断面に夫々対応したアルカリ水溶液エッチング中の形状を示した。図8、図9中の(a)乃至(f)は、同じタイミングの夫々の断面形状を示している。まず、(a)では、保護膜101が成膜された(100)等価面100を図の向きに有するシリコン基板99を用い、保護膜101をパターニングする。本実施例では、保護膜101は窒化シリコン膜である。窒化シリコン膜は化学気相合成法を用いて成膜できる。また、フォトリソグラフィとドライエッチンにより、(a)に示す様に保護膜101のパターンを形成する。
【0076】
ここで、図8に示す様に、幅Wkの開口を形成する。また、図9に示す様に、幅Wb、Wgの開口を形成する。これらの幅は後の工程で現れる(111)等価面と(100)等価面の成す角とシリコン基板99の厚さから決定することができる。これらの幅を適切に設定することで、振動系の仕様に基づいて、必要なねじりバネ定数や凹部のサイズを製造することが可能となる。
【0077】
次に、(b)において、アルカリ水溶液に漬けることでエッチングを開始する。本実施例では、水酸化カリウム水溶液を用いている。水酸化カリウム水溶液の様なアルカリ水溶液は、単結晶シリコンの(111)等価面のエッチング速度が他の面に比べて遅いため、(111)等価面に囲まれた形状を形成することができる。エッチングが進行するにつれて、(b)乃至(f)の様にエッチングされる。最終的には、(f)において(100)等価面100と(111)等価面102に囲まれた可動子11、凹部31、弾性支持部12、支持体13が形成される。その後、両面の保護膜101をドライエッチングにより除去し、反射膜22を図4(a)の様な形状に真空蒸着により形成して、振動系が形成される。
【0078】
以上の様に、本実施例では、1回のアルカリ水溶液エッチングにより、可動子11、凹部31、弾性支持部12、支持体13が同時に形成される。そのため、製造工程が簡略化できるため、振動系を比較的安価に作製することができる。
【0079】
特に、単結晶シリコンの(111)等価面はエッチング速度が遅く、凹部31、弾性支持部12の形状へ精密に加工を行うことができる。凹部31を精密に加工することにより、可動子11の慣性モーメントや重心位置を精密に決定できる。また、弾性支持部12を精密に加工できることにより、ねじりバネ定数を精密に決定できる。つまり、振動系の固有振動モードの周波数と重心位置を精密に決定できることとなる。そのため、固有振動モードの周波数や重心位置調整のために質量調整体19の一部を除去する工程において、更に高速に加工可能となる。また、質量調整体19の設置面積を大きくしないで、且つ、より正確な周波数調整を行うために密度の小さい質量調整体19とすることで、周波数調整の分解能を上げることができる。
【0080】
(第3の実施例)
本発明の揺動体装置の第3の実施例を説明する。図10(a)は、揺動軸304回りに揺動可能に設けられた2つの揺動部を含んだ揺動体装置の第3の実施例を示す平面図である。本実施例では、2つの揺動部は、夫々、揺動部の質量を調整するための突出部303、321を持つ第1と第2の可動子302、320で構成されている。第1の可動子302は、第2の可動子320に対して、第1弾性支持部(ねじりバネ)305により、揺動軸304中心にねじり振動自在に弾性支持されている。また、第2の可動子320は、支持体301に対して、第2弾性支持部(ねじりバネ)306により、揺動軸304中心にねじり振動自在に弾性支持されている。
【0081】
本実施例では、質量調整体を別個設けるのではなく、可動子302、320自体の一部を、質量調整体の役割を担う揺動軸304に平行な方向に伸びる突出部303、321としている。突出部の任意の個所をレーザ光で切ることで、適当な体積でもって、除去することができる。
【0082】
本実施例の揺動体装置は、応用の仕様から決定される目標駆動周波数である基準周波数f0とその2倍の周波数2f0との合成駆動信号によって、図示しない駆動手段で駆動される。揺動体装置は、揺動軸304回りに2つの固有モード周波数f1、f2を有しており、これらは、周波数f0、2f0とほぼ一致するように、後に詳細に示す方法で調整されている。従って、本実施例は、固有振動モードの高い振幅増幅率を利用して、周波数f0、2f0の2つの信号の合成波駆動を低消費電力で行うことができる。
【0083】
以下に合成波駆動の様子を詳しく説明する。図11は、横軸を時間tとして、第1の可動子302の周波数f0のねじり振動の変位角を説明する図である。図は、特に第1の可動子302のねじり振動の1周期T0に相当する部分を示している(−T0/2<X<T0/2)。
【0084】
曲線61は、第1の可動子302のねじり振動の基準周波数f0の正弦波成分を示しており、最大振幅±φ1の範囲で往復振動し、時間t、角周波数w0=2πf0として、次の式2で表される正弦振動である。
θ1=φ1sin[w0t] (式2)
【0085】
一方、曲線62は、基準周波数f0の2倍の周波数の正弦波成分を示しており、最大振幅±φ2の範囲で振動し、次の式3で表される正弦振動である。
θ2=φ2sin[2w0t] (式3)
【0086】
曲線63は、この様な駆動の結果生じる第1の可動子302のねじり振動の変位角を示している。揺動体装置は、前述の様に基準周波数f0とその2倍の2f0付近に調整された周波数f1の固有振動モードと周波数f2の2次の固有振動モードを揺動軸304中心のねじり振動について有している。そのため、揺動体装置には、上記θ1、θ2の駆動信号に励起された共振が夫々生じる。つまり、曲線63の第1の可動子302の変位角は、2つの正弦振動の重ね合わせの振動となり、次の式4で表される鋸波状の振動となる。
θ=θ1+θ2=φ1sin[w0t]+φ2sin[2w0t] (式4)
【0087】
図12は、図11の曲線61、63、直線64を微分した曲線61a、63a、直線64aを示しており、これらの曲線の角速度を説明している。基準周波数f0の正弦振動の角速度である曲線61aと比べ、第1の可動子302の鋸波状の往復振動の角速度を示す曲線63aは、区間N−N’において、極大点の角速度V1、極小点の角速度V2を最大・最小とする範囲に角速度が収まっている。従って、第1の可動子302に反射面を形成し、光の偏向走査を利用する応用において、等角速度走査である直線64aからの角速度の許容誤差以内にV1、V2が存在するならば、区間N−N’は実質的な等角度の光走査とみなすことができる。
【0088】
この様に、鋸波状の往復振動によって、走査の角速度は、変位角が正弦波であったときと比べ、実質的な等角速度となる領域を広く設定できるため、偏向走査の全域に対する利用可能な領域を大きくできる。更に、スポット形成の際、光源の変調タイミングに角速度の不均一性をあまり考慮しなくてよいため、変調回路が簡略化できる。
【0089】
また、揺動による角加速度変化が小さいため、駆動中の反射面の変形を低減できる。そして、毎回の走査線が等間隔となるため、プリンタなどの応用において好適となる。
【0090】
以上では、f1とf2の固有振動モードの周波数が略2倍の関係を有すると説明したが、略3倍とすることもできる。その場合、上記2つの周波数の関係が2倍であった場合と同様に正弦波の重ね合わせの振動により、三角波状の振動となる。これによれば、光走査の往復利用が可能になるため、利用できる或る周波数における走査線の数が2倍とできる。
【0091】
ところで、2つ以上のねじり振動方向の固有振動モードを同時に励起させて、駆動を行う揺動体装置では、各モードのモード減衰比が小さいほど低消費電力とできる。一方、モード減衰比が小さいと、駆動の対象となっている複数の固有振動モードの周波数(本実施例の光偏向器では周波数f1、f2)の設定範囲は狭くなる。そのため、光偏向器の低消費電力化を実現するには、複数の固有振動モードの周波数の調整を精度良く行う必要がある。
【0092】
図13を用いて、固有モードの周波数f1、f2を周波数f0、2f0へ調整する方法を説明する。図13は、図10(a)に示した揺動体装置の第1の可動子302と突出部303を拡大した上面図である。突出部303を通る中心軸Cは、突出部303の厚み(紙面法線方向の長さ)の中心を通り、揺動軸304と平行である。突出部303は、中心軸Cを法線とする断面形状(断面積)が、位置によらず等しい。つまり、位置Aと位置Bでの断面形状が等しい。
【0093】
突出部303は、周波数f1(または周波数f2)の基準周波数f0(または2f0)からの残差に応じて、除去する体積を調整される。この際、突出部303は、中心軸Cを法線とする断面で切断され、切断部の位置を調整することで、除去量を調整する。この様にして、周波数残差に応じて、位置Aや位置Bで突出部303が除去される。除去された長さLa、長さLbの慣性モーメントは、中心軸Cと揺動軸304との距離Dcの2乗と除去質量の積に等しく、位置Aと位置Bによる慣性モーメント調整量の比は、長さLa、Lbの比に等しい。従って、除去量は長さと比例関係となるので、除去量の推定を迅速に行うことが可能である。
【0094】
また、切断部の位置から突出部の先端までのレーザ加工領域より大きな部分が除去されるため、迅速な除去を行うことが可能となる。このことは、加工所要時間が短くなるだけでなく、レーザ加工の際の揺動体装置への熱の伝達を抑えることができるため、熱による揺動体装置の損傷・変性を防ぐことができる。更に、レーザ加工の際の、加工部位から生じる塵を低減できるため、揺動体装置の汚れを防止することができる。そして、除去量に必要なレーザ加工長さが位置A、位置Bによらず等しくなるため、加工所要時間、加工移動量(加工用レーザ走査量、もしくは加工ステージ移動量)ともに、一定となり、揺動体装置を、低コストに調整することが可能となる。
【0095】
更に、第1の可動子302、第2の可動子320に形成される突出部303、321は、共に揺動軸304と平行に構成される。そのため突出部303、321の切断方向が互いに平行なので、レーザ加工方向が同一でよく、加工装置が簡略となる。こうして、第1弾性支持部305と第2弾性支持部306等に加工誤差が生じ、2つの固有モードの周波数f1、f2が周波数f0、2f0から大きな残差を有していても、それぞれの周波数を調整することが可能となる。
【0096】
(第4の実施例)
本発明の揺動体装置の第4の実施例を説明する。図10(b)は、揺動軸回りに揺動可能に設けられた可動子上に設置された質量調整体419を示す上面図である。本実施例の質量調整体419では、空隙430上に迫り出して質量調整体の一部が伸びて複数の突出部420が形成されている。ここでは、揺動軸回りの固有振動モードの周波数の目標周波数への調整や揺動部の重心位置の揺動軸への調整を行う為に、突出部430の根元部をレーザ光で切ることで、適当な数の突出部430を、適当な体積でもって、除去する。図10(b)において、切る所は破線で示す。突出部の位置(揺動軸からの距離)と質量を設定しておけば、この突出部を切り落としたときに慣性モーメントや重心位置をどの程度調整できるかが予め分かるので、慣性モーメントや重心位置が非常に迅速且つ精度良く調整できることになる。
【0097】
(第5の実施例)
図14、図15、図16は、本発明の揺動体装置の一例である光偏向器の第5の実施例を示す図である。図14は光偏向器の振動系を示す上面図、図15は振動系を駆動する駆動手段を有する駆動基板を示す上面図、図16は、振動系と駆動基板を組み立てた構造の図14のA−A線における断面図である。本実施例では、突出部503a、503b、503c、503dは、図示の如く、可動子513に形成されており、揺動部を構成している。振動系は、揺動部と弾性支持部512と支持体511を含む。可動子513は、例えば、揺動軸517に垂直な方向のサイズが1.5mm、平行な方向のサイズが1mmである。
【0098】
本実施例では、可動子513は、2本で一対の弾性支持部512により、揺動軸517回りにねじり振動可能に弾性支持される。突出部503a、503b及び突出部503c、503dは、それぞれ、揺動軸517を挟んで図示の如く対称な位置で可動子513と接続されている。そして、全ての突出部は、揺動軸517に平行な方向に伸びるように形成されている。また、対になる突出部503a、503bまたは突出部503c、503dを比較すると、突出部の長さが異なっている。すなわち、対称位置で接続される突出部の形状は揺動軸517に対して非対称となっている。
【0099】
図15は、駆動基板518と、駆動手段である駆動電極519を示している。図示の様に、駆動電極519は揺動軸517に対して対称に形成されている。また、図16に示すように、駆動基板518と振動系は、適切な間隔を作るためのスペーサ520を挟んで組み立てられている。こうして、可動子513は、空隙を介して駆動電極519と対向している。可動子513は、電気的に接地されている。したがって、対称に配置される駆動電極519に交互に高電圧を印加することにより、可動子513と電圧印加された駆動電極519の間には、静電引力が生じる。そのため、揺動軸517回りのトルクが発生し、振動系を駆動することができる。
【0100】
本実施例の光偏向器の駆動原理も第1の実施例で説明した通りである。しかし、材料物性ばらつきや加工公差等の様々な誤差要因によって、周波数f1が基準周波数f0からずれることがある。図14の構成には、ドライエッチング時のマスク形状誤差によって生じた加工誤差部400が発生している。半導体製造工程での意図しない要因によって、このような加工誤差が生じ、製品の歩留まりの低下を招いてしまう。加工誤差部400は、図示のような突起状の形状誤差であったり、凹部であったり、塵埃が固着したものであったりする。
【0101】
こうした加工誤差部400は、揺動部全体の慣性モーメントの誤差要因となる。このような状況下では、上記式1から分かるに、振動系の固有振動モードの周波数f1にも誤差が生じるため、良好な振幅増幅率が得られなくなってしまう。また、加工誤差部400は、揺動部全体の重心位置を設計位置から意図しない方向にオフセットさせてしまう。こうしたオフセット距離が生じると、振動系の振動に望ましくない不要変動が生じ、可動子513の反射面の傾き誤差となるため走査特性が劣化してしまう。
【0102】
重心ずれのない理想状態では、周波数f0の駆動信号によって、可動子513は揺動軸517回りにねじり振動している。一方、重心が揺動軸517からずれている場合、ねじり振動によって可動子には、揺動軸517から重心の方向に慣性力が生じる。その慣性力によって、重心のオフセット方向に特徴的な周波数の不要振動を引き起こすこととなる。そのため、走査特性が低下してしまう。
【0103】
固有振動モードの周波数f1と重心のオフセット距離の両方を調整すれば、走査特性の劣化を防ぎ、低消費電力の光偏向器とすることができる。第3の実施例の説明で用いた図13を用いて、固有振動モードの周波数f1と揺動部の重心のオフセット距離との調整を同時に行う方法を説明する。ここでは、図13において、符号302は図14の可動子513とし、符号303は図14の突出部503cとする。
【0104】
突出部503cを通る中心軸Cは、突出部503cの厚み(紙面法線方向の長さ)の中心を通り、揺動軸517と平行である。突出部503cは、中心軸Cを法線とする断面形状が、位置によらず等しい。つまり、例えば、位置Aと位置Bでの断面形状が等しい。突出部503cは、周波数f1の基準周波数f0との残差と、重心のオフセット距離に応じて、除去する体積が調整される。この際、突出部503cは、中心軸Cを法線とする断面で切断され、切断部の位置を調整することで、除去量を調整する。
【0105】
突出部503cは、レーザ光を照射して、位置Aや位置Bで除去される。除去される長さLa、或いは長さLbの慣性モーメントは、中心軸Cと揺動軸517との距離Dcの2乗と除去質量の積に等しい。除去量は長さと比例関係にあるため、位置Aと位置Bでの除去による慣性モーメントの調整量の比は、長さLaとLbの比に等しい。
【0106】
一方、図14に示すように、突出部は、揺動軸517を挟んで対称な位置に形成されている。図14は突出部の一部が上記の方法で除去された後の構造を示しているが、除去される前は、対となる突出部503a、503b及び突出部503c、503dは、同一の幅と長さを有するようにできる。したがって、図14の突出部503a、503b及び突出部503c、503dでは、除去長さが異なっており、この比を調整することにより、揺動部の重心のオフセット距離を調整することが可能となる。
【0107】
本実施例では、まず振動系の固有振動モードの周波数を測定し、設計値への慣性モーメントの調整量を推定する。この周波数測定は、受光素子による走査ビームの検出情報、弾性支持部などに設けるピエゾ抵抗体による検出情報などに基づいて行うことができる。その推定量から、除去すべき突出部503a、503b、503c、503dの長さの総和が決定される。揺動軸回りに少なくとも1つの固有振動モードを有する本実施例の揺動体装置の製造方法において、この過程は、次の工程を含むものである。すなわち、揺動体装置の揺動軸回りの固有振動モードの周波数を測定する工程と、この周波数に基づき複数の突出部の除去量の総和を決定する工程とを含む。
【0108】
その後、重心のオフセット距離に応じて、対となる突出部503a、503bまたは突出部503c、503dの除去長さの比を決定する。重心のオフセット距離は、本実施例では、光ビームの走査軌跡を測定し、理想的な走査軌跡からの残差から推算することができる。揺動軸回りに少なくとも1つの固有振動モードを有する本実施例の揺動体装置の製造方法において、この過程は、次の工程を含むものである。すなわち、揺動体装置を駆動する工程と、揺動体装置の揺動部の揺動態様ないし駆動波形を検知する工程と、この揺動態様を目標揺動態様と比較し、比較結果を基に、前記オフセット距離が少なくなるように、各々の突出部の除去量の比を決定する工程を有する。
【0109】
上記総和決定工程と除去量比決定工程とを含む過程は、次の工程を含む過程と要約できる。すなわち、揺動体装置を駆動する工程と、揺動体装置の揺動部の揺動態様を検知する工程と、この揺動態様を目標揺動態様と比較し、比較結果を基に、突出部の除去形態を決定する工程を含む工程を含む。
【0110】
以上のように決定された除去長さに応じてレーザ照射位置を変えることにより、揺動軸517を挟んで非対称な長さの形状に、突出部503a、503b、503c、503dが加工される。このようにして、本実施例では、固有振動モードの周波数の調整と重心のオフセット距離の調整を同時に行うことが可能となる。特に、本実施例では、慣性モーメントの調整量が、加工長さと比例する関係にあるため、迅速に加工目標値を決定できる。
【0111】
(第6の実施例)
本発明の揺動体装置及びその製造方法の第6の実施例を説明する。図17は、揺動軸604回りに揺動可能に設けられた2つの揺動部を含んだ揺動体装置の実施例を示す平面図である。本実施例では、2つの揺動部は、夫々、揺動部の質量を調整するための第1突出部603と第2突出部621を持つ第1と第2の可動子602、620で構成されている。第1可動子602は、第2可動子620に対して、第1弾性支持部(ねじりバネ)605により、揺動軸604中心にねじり振動可能に弾性支持されている。また、第2可動子620は、支持体601に対して、第2弾性支持部(ねじりバネ)606により、揺動軸604中心にねじり振動可能に弾性支持されている。そして、永久磁石651が第2可動子620に固着されている。図17に示す面とその反対面にそれぞれ永久磁石651が設置されている。
【0112】
本実施例では、第1可動子602、第2可動子620自体の一部を、揺動軸604に平行な方向に伸びる突出部603、621としている。突出部603、621は、第5の実施例と同様に、揺動軸604に対して、初め対称位置に対称な形状で形成される。そして、第5の実施例と同様に、突出部の任意の個所をレーザ光で切ることで、適当な体積の非対称な長さ分が各突出部から除去される。
【0113】
第1可動子602と第1突出部603は、第1揺動部を構成し、第2可動子620と第2突出部603と永久磁石651は、第2揺動部を構成している。それぞれの揺動部は、揺動軸604回りに一体で揺動することができる。
【0114】
本実施例の揺動体装置は、応用の仕様から決定される目標駆動周波数である基準周波数f0とその2倍の周波数2f0との合成駆動信号によって、駆動手段である永久磁石651と固定コイル652によって駆動される。図18は、図17のA-A線での断面図である。図18に示すように、固定コイル652はH方向の磁界を発生する。この磁界が、第2可動子に設置された永久磁石651に作用することで、揺動軸304回りのトルクが発生し、振動系が駆動される。
【0115】
揺動体装置は、揺動軸604回りに2つの固有モード周波数f1、f2を有しており、これらは、基準周波数f0、その2倍の周波数2f0とほぼ一致するように、調整されている。したがって、本実施例は、固有振動モードの高い振幅増幅率を利用して、周波数f0、2f0の2つの信号の合成波駆動を低消費電力で行うことができる。この合成波駆動の様子は、第3の実施例の説明で図11と図12を用いて説明した通りである。
【0116】
本実施例では、振動系が揺動軸604回りに有する2つの固有振動モードの周波数f1、f2が整数倍の関係を有するために、第1揺動部と第2揺動部の慣性モーメントは以下の式5の関係を満たす必要がある。
I2/I1≧4n2/(n4-2n2+1) (式5)
ここで、I1、I2は、それぞれ第1揺動部と第2揺動部の慣性モーメント、nはf2/f1で整数である。
【0117】
本実施例の振動系では、周波数f1とf2は2倍の関係を有しており、次の式6の関係となる。
I2/I1≧1.78 (式6)
【0118】
したがって、本実施例では、第1揺動部より第2揺動部が大きな慣性モーメントを有している。第2可動子620にのみ、駆動手段である永久磁石651を設置することにより、このような慣性モーメントの大小関係を効果的に作り出している。こうして、永久磁石651により、2倍の周波数関係の2つの固有振動モードを実現するのに適した揺動部構成を作り出している。
【0119】
ここで、永久磁石651が、図17と図18に示すように、紙面向かって左側にずれて接着・設置される場合を考える。永久磁石651の重心668は、揺動軸604から左側にオフセットしている。一方、突出部621については、図17の如く、永久磁石651がずれている側の突出部の除去量が大きくなっている。揺動軸604に対して非対称な突出部621の除去長さの比は、例えば、第5の実施例で説明した走査軌跡を測定する方法で決定される。
【0120】
重心669は、このように非対称な長さで除去された突出部621を含む第2可動子の重心を示している。重心668と重心669を結ぶ線分は、揺動軸604を通る。揺動軸604からの永久磁石651と第2可動子620の重心のオフセット距離の比は、永久磁石651と第2可動子620の質量の逆数の比とほぼ等しい。このような関係により、第2揺動部全体の重心は、揺動軸604上に配置される。
【0121】
重心が揺動軸604からオフセットしてしまう要因は、第5の実施例で説明したように、加工誤差等の別の要因も考えられるが、いずれの場合にも、本実施例の方法で揺動部の重心のオフセット距離を調整することができる。
【0122】
上述した揺動部の重心のオフセットによる不要振動は、多自由度振動系の場合、複数の固有振動モード間での連成を引き起こしてしまい、走査再現性を大きく劣化させてしまう。特に、本実施例では、2つの固有振動モードの周波数は、2倍の関係を有している。上述した不要振動の周波数は、基本の周波数の2倍の周波数となり、もう一方の固有振動モードの周波数と合致してしまう。したがって、2つの固有振動モードが比較的強く連成してしまう。そのため、走査軌跡の曲がりに加え、走査再現性が劣化してしまう。
【0123】
本実施例では、突出部603、621を非対称に除去することにより、2つの固有振動モードを有する振動系の2つの周波数f1、f2と2つの揺動部の重心のオフセット距離を同時に調整することが可能である。そのため、合成波駆動を低消費電力で実現できるだけでなく、良好な走査特性を実現することが可能となる。こうして、揺動部の慣性モーメントと重心位置の調整を同時に迅速に行うことが可能となる。
【0124】
(第7の実施例)
図19は、本発明の光偏向器を用いた光学機器の実施例を示す概略斜視図である。ここでは、光学機器として画像形成装置を示している。図19において、3003は本発明の光偏向器であり、本実施例では入射光を1次元に走査する。3001はレーザ光源である。3002はレンズ或いはレンズ群であり、3004は書き込みレンズ或いはレンズ群であり、3005はドラム状の感光体である。
【0125】
レーザ光源3001から射出されたレーザ光は、光の偏向走査のタイミングと関係した所定の強度変調を受けている。この強度変調光は、レンズ或いはレンズ群3002を通って、光走査系(光偏向器)3003により1次元的に走査される。この走査されたレーザ光は、書き込みレンズ或いはレンズ群3004により、感光体3005上に画像を形成する。
【0126】
走査方向と直角な方向に回転軸の回りに回転される感光体3005は、図示しない帯電器により一様に帯電されており、この上に光を走査することによりその走査部分に静電潜像が形成される。次に、図示しない現像器により静電潜像の画像部分にトナー像が形成され、これを、例えば、図示しない用紙に転写・定着することで用紙上に画像が形成される。
【0127】
本発明の光偏向器3003により、所望の周波数に良好に調整された光偏向器を用いることができる。従って、振幅増幅率の高い状態で駆動可能であるため、小型・低消費電力とできる。また、感光体3005上で光の偏向走査の角速度を仕様範囲内で略等角速度とする様なこともできる。更に、本発明の光偏向器を用いることにより、走査位置変動が少なくなり、鮮明な画像を生成できる画像形成装置となる。
【符号の説明】
【0128】
11、302、320、513、602、620 可動子
12、305、306、512、605、606 弾性支持部(ねじりバネ)
13、301、511、601 支持体
17、304、517、604 揺動軸
19、419 質量調整体
22 光偏向素子(反射面)
30、31、430 空隙(凹部)
41 揺動部
61、61a 曲線
62 曲線
63、63a 曲線
64、64a 直線
80 レーザ光(加工レーザスポット)
85 質量除去部分
151、651 駆動手段(永久磁石)
152、652 駆動手段(固定コイル)
303、321、503、603、621 可動子の突出部
420 質量調整体の突出部
519 駆動手段(駆動電極)
3001 光源(レーザ光源)
3003 光偏向器(光走査系)
3005 感光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置の製造方法であって、
前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部を持つ可動子で構成されており、前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、
前記突出部の切断部にレーザ光を照射することで、該レーザ光の照射されない該切断部から先の前記突出部を含んで、前記可動子の一部を除去可能であり、
前記切断部の位置を変えることで、除去量を調整する工程を有する、
ことを特徴とする揺動体装置の製造方法。
【請求項2】
前記揺動体装置は、前記揺動軸回りに少なくとも1つの固有振動モードを有し、
前記切断部の一部を除去して、前記固有振動モードの周波数の調整と、前記揺動部の
重心位置の調整のうち少なくとも一方を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項3】
前記揺動体装置は、前記揺動軸回りに2つの固有振動モードを有し、
前記切断部の一部を除去して、2つの前記固有振動モードの周波数を目標周波数へ調
整する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項4】
揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置の製造方法であって、
前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための複数の突出部を持つ可動子で構成されており、
前記突出部は、前記揺動軸に対して互いに反対側に配置され、
前記突出部の切断部を切断することで、該切断部から先の前記突出部を含んで、前記可動子の一部を除去可能であり、
前記切断部の位置を変えることで、前記揺動部の慣性モーメントと前記揺動部の重心の前記揺動軸からのオフセット距離とを調整する工程を有する、
ことを特徴とする揺動体装置の製造方法。
【請求項5】
前記突出部は、前記揺動軸に対して対称な位置に対を成して配置され、
前記対称な位置の突出部は、互いに異なった形状を除去される、
ことを特徴とする請求項4に記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数の突出部は、前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、
前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定であり、
前記揺動軸に対して互いに反対側に配置される前記突出部は、前記揺動軸方向へ互いに異なった長さを除去される、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項7】
前記突出部は、前記切断部にレーザ光を照射することで、該レーザ光の照射されない該切断部から先の前記突出部を含んで除去される、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項8】
前記揺動体装置を駆動する工程と、
前記揺動体装置の前記揺動部の揺動態様を検知する工程と、
前記揺動態様を目標揺動態様と比較し、比較結果を基に、前記突出部の除去形態を決定する工程を有する、
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項9】
前記揺動体装置は、前記揺動軸回りに少なくとも1つの固有振動モードを有し、
前記揺動体装置の前記揺動軸回りの前記固有振動モードの周波数を測定する工程と、
前記周波数に基づき前記複数の突出部の除去量の総和を決定する工程と、
前記オフセット距離が少なくなるように、各々の前記突出部の除去量の比を決定する工程を有する、
ことを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の揺動体装置の製造方法。
【請求項10】
揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置であって、
前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための突出部を持つ可動子で構成されており、
前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、該突出方向の何れの個所でも切断可能に形成され、
前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定である、
ことを特徴とする揺動体装置。
【請求項11】
振動系と、該振動系を駆動する駆動手段を含み、
前記振動系は、第1揺動部と第1弾性支持部と、第2揺動部と第2弾性支持部と、支持体で構成され、
前記第1揺動部は、前記第1揺動部の質量を調整するための突出部を持つ第1可動子で構成され、
前記第2揺動部は、前記第2揺動部の質量を調整するための突出部を持つ第2可動子で構成され、
前記突出部は前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、該突出方向の何れの個所でも切断可能に形成され、
前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定である前記第1可動子は、前記第2可動子に前記第1弾性支持部で前記揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、
前記第2可動子は、前記支持体に、前記第2弾性支持部で前記揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、
前記振動系は、前記揺動軸回りに、周波数が異なる少なくとも2つの固有振動モードを有する、
ことを特徴とする揺動体装置。
【請求項12】
揺動部と弾性支持部と支持体とを備え、前記揺動部が弾性支持部により揺動軸回りに揺動可能に支持されている揺動体装置であって、
前記揺動部は、該揺動部の質量を調整するための複数の突出部を持つ可動子で構成されており、
前記突出部は、前記揺動軸に対して対称な位置に対を成して配置され、突出方向の何れの個所でも切断可能に形成され、
前記対称な位置の突出部は、互いに形状が異なっており、
前記揺動部の重心は、前記揺動軸上にある、
ことを特徴とする揺動体装置。
【請求項13】
前記複数の突出部は、前記可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、
前記突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定であり、
前記揺動軸に対して対称な位置の前記突出部は、前記揺動軸方向の長さが互いに異なっている、
ことを特徴とする請求項12に記載の揺動体装置。
【請求項14】
前記揺動部を駆動するコイルと永久磁石を備え、
前記揺動部は前記永久磁石を有し、
前記永久磁石の重心と前記可動子の重心は、前記揺動軸に対してオフセットしている、
ことを特徴とする請求項12または13に記載の揺動体装置。
【請求項15】
振動系と、該振動系を駆動する駆動手段を含み、
前記振動系は、第1揺動部と第1弾性支持部と、第2揺動部と第2弾性支持部と、支持体で構成され、
前記第1揺動部は、該第1揺動部の質量を調整するための複数の第1突出部を持つ第1可動子で構成され、
前記第2揺動部は、該第2揺動部の質量を調整するための複数の第2突出部を持つ第2可動子で構成され、
前記複数の第1突出部及び複数の第2突出部は、前記揺動軸に対して、それぞれ対称位置に前記第1突出部と第2突出部の少なくとも一方の前記対称位置の突出部は、互いに形状が異なり、突出方向の何れの個所でも切断可能に形成され、
前記第1揺動部の重心及び前記第2揺動部の重心は、前記揺動軸上にあり、
前記第1可動子は、前記第2可動子に前記第1弾性支持部で前記揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、
前記第2可動子は、前記支持体に、前記第2弾性支持部で前記揺動軸回りに揺動可能に弾性支持され、
前記振動系は、前記揺動軸回りに、周波数が異なる少なくとも2つの固有振動モードを有する、
ことを特徴とする揺動体装置。
【請求項16】
前記第1突出部及び第2突出部は、それぞれ、前記第1可動子及び第2可動子から前記揺動軸と平行な方向に突出しており、
前記第1突出部及び第2突出部の前記揺動軸を法線とする断面積が、前記揺動軸方向に一定であり、
前記第1突出部と前記第2突出部の少なくとも一方の前記揺動軸に対して対称な位置の突出部は、前記揺動軸方向の長さが互いに異なっている、
ことを特徴とする請求項15に記載の揺動体装置。
【請求項17】
前記振動系を駆動するコイルと永久磁石を備え、
前記第2揺動部は前記永久磁石を有し、
前記永久磁石の重心と前記第2可動子の重心は、前記揺動軸に対してオフセットしている、
ことを特徴とする請求項15または16に記載の揺動体装置。
【請求項18】
前記可動子または前記第1可動子は光偏向素子を有し、光偏向器として構成されている、
ことを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の揺動体装置。
【請求項19】
光源と、請求項18に記載の揺動体装置であって光偏向器として構成された光偏向器と、感光体を有し、
前記光偏向器は、前記光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を前記感光体に入射させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
光源と、請求項18に記載の揺動体装置であって光偏向器として構成された光偏向器と、画像表示体を有し、
前記光偏向器は、前記光源からの光を偏向し、該光の少なくとも一部を前記画像表示体に入射させる、
ことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−226359(P2012−226359A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130823(P2012−130823)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【分割の表示】特願2007−130619(P2007−130619)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】