説明

搬送装置

【課題】天井走行式搬送車を有する搬送装置において、人を含む障害物を的確に検出して安全性を確保する。
【解決手段】この搬送装置は天井走行式の搬送車を有する。搬送車の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出する為のカバーを含む障害物検出装置が設けられている。よって、搬送車の進行方向側に存在する障害物を確実に検出できる。搬送車は、自身を駆動する為の駆動部と駆動部を制御する制御部を有し、障害物検出装置は障害物検出手段等を有する。障害物検出手段は、カバーへの障害物の接触時にカバーと障害物検出手段との相対的な距離に基づき制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する。制御部は、その出力信号に基づき駆動部を停止させる。よって、カバー全体が接触式スイッチとして機能し、搬送車の進行方向側に存在する障害物がカバーのどの位置に接触しても搬送車を直ちに停止させることができ安全性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井走行式の搬送車を有する搬送装置における障害物検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶などの製造工場における搬送手段は、天井より懸垂された軌道上を走行して被搬送物を搬送するOHT(Over head Hoist Transport)などの天井走行式搬送車(以下、「搬送車」とも呼ぶ)を用いた搬送システムが主流になってきている。
【0003】
これらの天井走行式搬送車により搬送を行う製造工場では、通常の製造業務に従事する作業者が実施する定常作業では、天井に敷設された軌道を走行する搬送車と干渉を起こす場合はない。しかし、建屋メンテナンス作業や半導体装置又は液晶装置の据付作業等、非定常的に実施される非定常作業では、生産を停止させることなく工場設備を稼動させたまま作業等が実施される場合があり、作業者は搬送車の通過する危険領域にまで侵入して作業を実施せざるを得ない場合がある。かかる場合、作業者の注意力により、危険領域での作業は搬送車が接近しないタイミングを狙って実施されるが、作業者の不注意により、作業を行う作業者に搬送車が接近して作業者と搬送車とが接触する可能性があり得る。
【0004】
また、このような作業時には、搬送車の通過する危険領域に、作業者以外の障害物(例えば、脚立や扉など)が存在する場合もあり、障害物と搬送車とが接触する可能性もある。
【0005】
したがって、搬送車が、そのような人を含む障害物に接触した場合には、直ちに、搬送車を停止させて、その被害を最小限に留める必要がある。
【0006】
このような課題に対して、特許文献1には、無人搬送車において、障害物の検知手段を、複数の障害物検知棒を一つの回転軸に接続した構成とし、障害物と障害物検知棒とが接触して障害物検知棒が移動する量を、回転軸の回動量として検知することにより、簡単な装置構成で鉛直上下方向の障害物を検知することを可能とする障害物検知方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、走行車両や工業用ロボットなどの可動装置において、可動部位に取り付けて物体に接触すると少なくとも一部が撓むように形成した光ファイバを設け、その光ファイバが撓んで生ずる導通光量の変化を検出することにより物体との接触を検知するようにした可動装置の接触センサが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−204448号公報
【特許文献2】特開平10−249785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなOHT搬送車では、障害物を検出する障害物検出装置(例えば、障害物検出センサなど)が所定の位置に設けられることがあるが、OHT搬送車において、そのような障害物検出装置が設けられていない部分にて障害物が接触したような場合には、障害物の検出ができず、このため被害を食い止めることができないといった課題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、天井走行式搬送車を有する搬送装置において、人を含む障害物を的確に検出して安全性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの観点では、搬送装置は、天井に敷設された軌道と、前記軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、少なくとも前記搬送車の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられている。
【0012】
上記の搬送装置は、天井に敷設された軌道(レール)と、軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備える。ここで、被搬送物としては、例えば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の処理対象物等)を収容するFOUPなどが挙げられる。また、搬送車としては、OHTなどの天井走行式搬送車が挙げられる。
【0013】
特に、この搬送装置において、少なくとも搬送車の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられている。よって、少なくとも搬送車の進行方向側に存在する障害物を確実に検出することができる。
【0014】
本発明の他の観点では、搬送装置は、天井に敷設された軌道と、前記軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、前記搬送車は、前記被搬送物を懸垂及び把持した状態で前記被搬送物を昇降させる機能を有する搬送車本体と、前記被搬送物の搬送場所に対して前記搬送車本体の位置決めを行う位置決め機構部と、を備え、前記位置決め機構部は前記天井側に配置されていると共に、前記搬送車本体は前記位置決め機構部の下方に配置され、少なくとも前記搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられている。
【0015】
上記の搬送装置は、天井に敷設された軌道(レール)と、軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備える。ここで、被搬送物としては、例えば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の処理対象物等)を収容するFOUPなどが挙げられる。また、搬送車としては、OHTなどの天井走行式搬送車が挙げられる。
【0016】
また、搬送車は、被搬送物を懸垂及び把持した状態で被搬送物を昇降させる機能を有する搬送車本体と、被搬送物の搬送場所に対して搬送車本体の位置決めを行う位置決め機構部と、を備える。これにより、被搬送物の搬送場所に対して正確に被搬送物を搬送することができる。
【0017】
さらに、位置決め機構部は天井側に配置されていると共に、搬送車本体は位置決め機構部の下方に配置され、少なくとも搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられている。よって、少なくとも搬送車本体の進行方向側に存在する障害物を確実に検出することができる。
【0018】
上記の搬送装置の一つの態様では、前記搬送車は、当該搬送車を駆動するための駆動部と、前記駆動部の駆動及び停止を制御する制御部と、を備え、前記障害物検出装置は、前記少なくとも前記搬送車又は前記搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置に設けられたカバーと、前記カバーと前記搬送車との間に設けられ、前記カバーを弾性的に支持する弾性体と、前記カバーに対する前記障害物の接触時における前記弾性体の移動に追従して前記カバーを前記搬送車に対して移動自在に支持する支持機構と、前記カバーと前記搬送車との間に設けられ、前記障害物の前記接触を前記カバーを通じて間接的に検出する障害物検出手段と、を備え、前記弾性体は、前記カバーに対する前記障害物の非接触時に前記カバーを前記搬送車に対して引き離す方向に力を付与すると共に、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーを前記搬送車に対して近づける方向に力を付与する機能を有し、前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時における前記カバーと前記障害物検出手段との相対的な距離に基づき前記制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有し、前記制御部は、前記障害物検出手段から出力された前記出力信号に基づいて、前記駆動部を停止させる。
【0019】
この態様では、搬送車は、当該搬送車を駆動するための駆動部と、駆動部の駆動及び停止を制御する制御部と、を備える。そして、障害物検出装置は、カバーと、カバーと搬送車との間に設けられた弾性体と、支持機構と、カバーと搬送車との間に設けられた障害物検出手段と、を備える。
【0020】
カバーは、少なくとも搬送車又は搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置に設けられている。弾性体は、カバーを弾性的に支持する。具体的には、弾性体は、カバーに対する障害物の非接触時にカバーを搬送車に対して引き離す方向に力を付与すると共に、カバーに対する障害物の接触時にカバーを搬送車に対して近づける方向に力を付与する機能を有する。好適な例では、前記弾性体は、押しバネ又は板バネであるのが好ましい。支持機構は、カバーに対する障害物の接触時における弾性体の移動に追従してカバーを搬送車に対して移動自在に支持する機能を有する。障害物検出手段は、障害物の接触をカバーを通じて間接的に検出する。具体的には、障害物検出手段は、カバーに対する障害物の接触時におけるカバーと障害物検出手段との相対的な距離に基づき制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有する。制御部は、障害物検出手段から出力された出力信号に基づいて、駆動部を停止させる。
【0021】
よって、カバーの全体が接触式のスイッチとしての機能を有することになるため、搬送車又は搬送車本体の進行方向側に存在する障害物がカバーのどの位置に接触しても搬送車を直ちに停止させることができる。その結果、障害物の接触による被害をより最小限に留めることができ、安全性をより確保することができる。また、後述する比較例に係る搬送車には障害物を検出する為のベルト状の接触式のスイッチが設けられているが、この搬送装置では、そのようなベルト状の接触式のスイッチを設ける必要がないので、デザイン的に搬送車の外観を損ねることもない。
【0022】
好適な例では、前記支持機構は、前記カバーに対する前記障害物の非接触時に前記カバーを前記搬送車側と反対側へ案内すると共に、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーを前記搬送車側へ近づける方向へ案内するスライド機構により構成されていることが好ましい。または、前記支持機構は、前記カバーの一端側に回転自在に支持され、当該カバーの一端側を基点として、前記カバーの一端側と反対側を円弧を描くように移動させることが可能な回転機構により構成されていることが好ましい。
【0023】
好適な例では、前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記障害物検出手段側への移動に伴って前記カバーと接触することにより前記障害物の接触を検出する接触式のスイッチであることが好ましい。または、前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記障害物検出手段側への移動に伴って、前記カバーと前記障害物検出手段との相対的な距離に基づき前記障害物を非接触にて検出する非接触式のセンサであることが好ましい。例えば、前記障害物検出手段は、光を発光する発光部と、前記光を受光する受光部と、を有する光学式のフォトセンサであり、前記搬送車側に位置する前記カバーの裏面には、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記フォトセンサ側への移動に伴って前記光を遮光するための遮光板が設けられ、前記フォトセンサは、前記遮光板により前記光が遮光されることにより前記障害物の接触を検出することが可能であるものが好ましい。
【0024】
上記の搬送装置の他の態様では、前記進行方向側に対して逆側に位置する前記搬送車又は前記搬送車本体の表面の略全体を覆う位置、及び/又は前記進行方向側に対して直交する方向に位置する前記搬送車又は前記搬送車本体の両側の各表面の略全体を覆う位置には、前記障害物検出装置が更に設けられている。これにより、搬送車の進行方向側のみならず、搬送車の進行方向側と逆側、及び/又は、搬送車の進行方向側に対して直交する方向側に存在する障害物をも確実に検出することができ、これに基づき、直ちに駆動部を停止させることができる。その結果、障害物の接触による被害をより最小限に留めることができ、安全性をより確保することができる。
【0025】
上記の搬送装置の他の態様では、前記障害物検出装置は、前記搬送車又は前記搬送車本体の側面を取り囲む位置に設けられている。これにより、搬送車の全側面側に存在する障害物を確実に検出することができ、これに基づき、直ちに駆動部を停止させることができる。その結果、障害物の接触による被害をより最小限に留めることができ、安全性をより確保することができる。
【0026】
上記の搬送装置の他の態様では、前記搬送車本体と前記位置決め機構部との間にはベルト状の接触式のスイッチが設けられており、前記接触式のスイッチは、当該接触式のスイッチに対する前記障害物の接触時に前記制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有し、前記制御部は、前記接触式のスイッチから出力された前記出力信号に基づいて、前記駆動部を停止させる。
【0027】
この態様では、搬送車本体と位置決め機構部との間にはベルト状の接触式のスイッチが設けられている。接触式のスイッチは、当該接触式のスイッチに対する障害物の接触時に制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有する。そして、制御部は、接触式のスイッチから出力された出力信号に基づいて、駆動部を停止させる。つまり、この態様によれば、ベルト状の接触式のスイッチと障害物検出装置の両方を備える搬送装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
[搬送装置の構成]
図1(a)は、本発明の実施形態に係る搬送装置100を、軌道1の延在方向と直交する方向から見たときの搬送装置100の側面図を示す。図1(b)は、搬送車2の進行方向と逆方向(図1(a)の矢印Y1方向と逆方向)から搬送装置100を見たときの当該搬送装置100の側面図を示す。
【0030】
搬送装置100は、半導体や液晶などの製造工場に設置され、天井70に敷設された軌道(レール)1と、OHT(Over head Hoist Transport)などの天井走行式の搬送車2と、を備えて構成される。この搬送装置100では、軌道1に沿って搬送車2が走行して、その搬送車2が、製造プロセスに従い、例えば半導体製造装置間又は液晶製造装置間等において、製造過程の品物(例えば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の処理対象物等)を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)などの被搬送物9を無人にて自動搬送する。
【0031】
搬送車2は、軌道1に対して、例えば矢印Y1方向に走行可能な状態で懸垂されており、天井70側に配置された位置決め機構部3と、位置決め機構部3の下方に配置された搬送車本体7と、を備える。
【0032】
位置決め機構部3は、搬送車2の駆動及び停止を制御して、被搬送物9の搬送場所(図示略;例えば半導体又は液晶製造装置の所定位置や保管庫等)に対して搬送車本体7の位置決めを行う機能を有する。具体的には、位置決め機構部3は、搬送車2を駆動するための駆動部4と、駆動部4の駆動及び停止を制御する制御部5と、を備える。駆動部4は、図示しないリニアモータと、軌道1内に配置され、前記のリニアモータにより駆動される走行輪4aと、を有する。ここで、制御部5としては、コンピュータ装置などが挙げられる。なお、本発明では、これらの駆動部4や制御部5は、搬送車本体7に設けられていても構わない。
【0033】
搬送車本体7は、複数の懸垂ベルト7a(本例では4本の懸垂ベルト7a)と、複数の懸垂ベルト7aの巻き取り又は巻き戻しを行う機能を有する懸垂機構(図示略)と、各懸垂ベルト7aの一端側に設けられ、懸垂機構により昇降される昇降体7bと、昇降体7bの一端側に設けられ、後述する被搬送物9のフランジ部9aを把持又は開放する機能を有する把持部7cと、を備える。この搬送車本体7では、把持部7cにより被搬送物9のフランジ部9aが把持された状態で、懸垂機構を通じて各懸垂ベルト7aの巻き取り又は巻き戻しを行うことにより昇降体7bが昇降し、これにより被搬送物9の昇降が行われる。
【0034】
被搬送物9は、搬送車本体7の把持部7cにより把持されるフランジ部9aと、前記の製造過程の品物を収容する収容部9bと、を有する。
【0035】
(障害物検出装置)
上述したように、半導体や液晶などの製造工場においては、搬送車2の通過する危険領域に、作業者が作業する上で侵入し、或いは障害物(例えば、脚立や開き扉など)が存在してしまう場合があり、そうすると障害物と搬送車とが接触してしまう可能性がある。よって、搬送車2が、そのような障害物に接触した場合には、直ちに、搬送車2を停止させて、その被害を最小限に留める必要がある。
【0036】
そこで、本実施形態では、搬送車2の所定の位置に、人を含む障害物の接触を確実に検出するための障害物検出装置8を設けて、その被害を最小限に食い留め、これにより安全性を確保する。
【0037】
以下、図2及び図3を参照して、搬送車2に対する障害物検出装置の位置関係及び障害物検出装置の構成について説明する。
【0038】
図2(a)は、図1(a)の破線領域A1付近を天井70側から見たときの障害物検出装置8を含む搬送車2の要部拡大斜視図を示す。図2(b)は、搬送車2側(図2(a)の矢印Y2方向)から障害物検出装置8の裏面側を見たときの障害物検出装置8の要部拡大斜視図を示す。図3は、障害物検出用制御回路の構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態では、障害物検出装置8は、障害物の接触を検出する機能を有し、搬送車2の進行方向側(図1(a)の矢印Y1方向側)の表面(位置決め機構部3の表面3a及び搬送車本体7の表面7sを含む)の略全体を覆う位置に設けられている。
【0040】
障害物検出装置8は、搬送車2の進行方向側の前記表面の略全体を覆う位置に設けられたカバー8aと、カバー8aと搬送車2との間に設けられ、カバー8aを弾性的に支持する弾性体8bと、カバー8aに対する障害物の接触時における弾性体8bの移動に追従してカバー8aを搬送車2に対して移動自在に支持する複数の支持機構8cと、カバー8aと搬送車2との間に設けられ、障害物の接触をカバー8aを通じて間接的に検出する障害物検出手段8dと、を備えて構成される。
【0041】
弾性体8bは、カバー8aに対する障害物の非接触時に、障害物検出手段8dのスイッチをオンしないようカバー8aを搬送車2に対して引き離す方向に力を付与すると共に、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aを障害物検出手段8d及び搬送車2の側に対して近づける方向に力を付与する機能を有する。本例では、弾性体8bとして押しバネを適用しているが、本発明では、板バネなどであっても構わない。
【0042】
支持機構8cは、カバー8aに対する障害物の非接触時にカバー8aを搬送車2側と反対側へ案内すると共に、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aを搬送車2側へ近づける方向へ案内するスライド機構により構成されている。本例の支持機構8cは、カバー8aの四隅付近に設けられた開口8caと、カバー8aの開口8caに挿通されると共に、搬送車2の前記表面からカバー8aに突出するように設けられた円柱状のスライド軸8cbと、を有する。本例の支持機構8cにおいて、カバー8aに対する障害物の非接触時には弾性体8bの力を通じてカバー8aを搬送車2側と反対側へ案内すると共に、カバー8aに対する障害物の接触時には、弾性体8bの力を通じてカバー8aを搬送車2側へ近づける方向へ案内する。
【0043】
障害物検出手段8dは、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aの障害物検出手段8d側への移動に伴ってカバー8aと接触することにより障害物の接触を検出する接触式のスイッチである。本例では、障害物検出手段8dとして押しボタンスイッチを適用しているが、本発明では、リミットスイッチなどであっても構わない。障害物検出手段8dは、上記した制御部5と電気的に接続されており、カバー8aに対する障害物の接触時におけるカバー8aと障害物検出手段8dとの相対的な距離に基づき、図3に示すように、当該制御部5に対して障害物検出用の出力信号Sig1を出力する機能を有し、制御部5は、障害物検出手段8dから出力された出力信号Sig1に基づいて、駆動部4を停止させるための制御信号Sig2を出力する。これにより、搬送車2を停止させることができる。
【0044】
以上の構成を有する障害物検出装置8を有する搬送装置100では、比較例に係る障害物検出装置を有する搬送装置50と比較して、次のような特有の作用効果を有する。
【0045】
図4は、図1(a)に対応する、比較例に係る障害物検出装置を有する搬送装置50の側面図を示す。
【0046】
比較例に係る搬送装置50と本実施形態に係る搬送装置100とを比較した場合、比較例に係る搬送装置50は、本実施形態に係る障害物検出装置8を有せず、その代わりに、搬送車本体7と位置決め機構部3との間に設けられた障害物検出装置、具体的にはベルト状の接触式のスイッチ10を有する点が本実施形態と異なり、それ以外の構成は本実施形態と同様である。よって、以下では、本実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
このベルト状の接触式のスイッチ10は、当該接触式のスイッチ10に対する障害物の接触時に制御部5(図示略)に対して障害物検出用の出力信号Sig1(図示略)を出力する機能を有し、制御部5は、接触式のスイッチ10から出力された出力信号Sig1に基づいて、駆動部4を停止させるための制御信号Sig2を出力する。これにより、搬送車2xを停止させることができる。
【0048】
しかしながら、比較例に係る搬送装置50では、ベルト状の接触式スイッチ10が天井70側に設けられているため、ベルト状の接触式スイッチ10が設けられていない搬送車2xの領域(破線領域A2や破線領域A3)、例えば、搬送車2xの下方側にて障害物51と接触したような場合には、障害物51の検出ができず、その被害を食い止めることができず安全性を確保できないといった課題がある。なお、障害物51としては、作業時に使用される脚立、脚立に乗って作業を遂行する作業者、装置の開閉式の開き扉などが挙げられる。
【0049】
この点、本実施形態に係る搬送装置100では、障害物の接触を検出する機能を有する障害物検出装置8は、搬送車2の進行方向側(図1(a)の矢印Y1方向側)の表面(位置決め機構部3の表面3a及び搬送車本体7の表面7sを含む)の略全体を覆う位置に設けられている。よって、カバー8aの全体が接触式のスイッチとしての機能を有することになるため、搬送車2の進行方向側に存在する障害物51がカバー8aのどの位置に接触しても搬送車2を直ちに停止させることができる。その結果、比較例と比較して、障害物51の接触による被害をより最小限に留めることができ、安全性をより確保することができる。また、比較例のようなベルト状の接触式のスイッチ10を設ける必要もないので、デザイン的に搬送車2の外観を損ねることもない。
【0050】
[変形例1]
上記の実施形態では、障害物検出装置8は、搬送車2の進行方向側の表面(位置決め機構部3の表面3a及び搬送車本体7の表面7sを含む)の略全体を覆う位置に設けられていたが、これに限らず、本発明では、障害物検出装置8は、図5(a)及び(b)に示すように、搬送車2の進行方向側に対して逆側に位置する搬送車2の表面の略全体を覆う位置、及び/又は搬送車2の進行方向側に対して直交する方向に位置する搬送車2の両側の各表面の略全体を覆う位置に更に設けられていても構わない。ここで、図5(a)は、図1(a)に対応する搬送車2の側面図であると共に、図5(b)は、図1(b)に対応する搬送車2の側面図である。或いは、本発明では、障害物検出装置8は、図6(a)及び(b)に示すように、搬送車2の側面を取り囲む位置に設けられていても構わない。ここで、図6(a)は、図1(a)に対応する搬送車2の側面図であると共に、図6(b)は、図1(b)に対応する搬送車2の側面図である。即ち、本発明では、障害物検出装置8は、少なくとも搬送車2の進行方向側の表面の略全体を覆う位置に設けられていればよい。
【0051】
[変形例2]
上記の実施形態では、障害物検出手段8dは、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aの障害物検出手段8d側への移動に伴ってカバー8aと接触することにより障害物の接触を検出する接触式のスイッチであったが、これに限らず、本発明では、障害物検出手段8dは、図2(b)の対応図である図7(a)に示すように、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aの障害物検出手段8d側への移動に伴って、カバー8aと障害物検出手段8dとの相対的な距離d1に基づき、具体的には距離d1が縮まった場合に障害物の接触を非接触にて検出する非接触式のセンサ11であっても構わない。例えば、このような非接触式のセンサ11としては、光量の変化を検出する反射型の光センサ、電磁界の変化を検出する近接センサ、超音波の変化量を検出する超音波センサなどが挙げられる。
【0052】
また、反射型光センサの一例としては、図2(b)の対応図である図7(b)に示すように、光Lを発光する発光部12aと、光Lを受光する受光部12bと、を有する光学式のフォトセンサ12が挙げられる。この光学式のフォトセンサ12を用いる場合には、図7(b)に示すように、搬送車2側に位置するカバー8aの裏面8acには、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aの光学式のフォトセンサ12側への移動に伴って光Lを遮光するための遮光板8adが設けられる。光学式のフォトセンサ12は、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aの光学式のフォトセンサ12側への移動に伴って遮光板により光Lが遮光されることにより障害物の接触を検出する。
【0053】
[変形例3]
上記の実施形態では、支持機構8cは、カバー8aに対する障害物の非接触時にカバー8aを搬送車2側と反対側へ案内すると共に、カバー8aに対する障害物の接触時にカバー8aを搬送車2側へ近づける方向へ案内するスライド機構により構成されていたが、これに限らず、本発明では、支持機構8cは、カバー8aの一端側に回転自在に支持され、当該カバー8aの一端側を基点として、カバー8aの一端側と反対側を円弧を描くように移動させることが可能な回転機構により構成されていても構わない。例えば、このような支持機構8cとしては、図2(a)の対応図である図8に示すように、カバー8aの一端側に取り付けられた円柱状の回転軸8fと、回転軸8fに回転自在に支持されると共に、搬送車2に取り付けられたベアリング機構8gと、を備えて構成されるものが挙げられる。この場合、弾性体8b、及び障害物検出手段8d(図示略)は、支持機構8cが設けられたカバー8aの一端側と逆側に設けられる。これにより、支持機構8cは、矢印Y3に示すように、カバー8aに対する障害物の接触時に、カバー8aの一端側に取り付けられた回転軸8fを基点として、カバー8aの一端側と逆側が円弧を描きつつ搬送車2側へ近づく方向へ移動する。これにより、カバー8aと搬送車2との間に設けられた障害物検出手段8dによって障害物との接触が検出される。
【0054】
また、この他に、本発明では、支持機構8cの一例としての回転機構は、搬送車2に対してカバー8aの一端側を回転自在に支持することが可能な蝶番(図示略)により構成されていても構わない。
【0055】
[変形例4]
なお、本発明では、上記した比較例に係る搬送車のように、搬送車2yにおいて、図9(a)及び(b)に示すように、搬送車本体7と位置決め機構部3との間にベルト状の接触式のスイッチ10が設けられていてもよい。ここで、図9(a)は、図1(a)に対応する搬送車2yの側面図であると共に、図9(b)は、図1(b)に対応する搬送車2yの側面図である。この接触式のスイッチ10は、当該接触式のスイッチ10に対する障害物の接触時に制御部5に対して障害物検出用の出力信号Sig1(図示略)を出力する機能を有し、制御部5は、接触式のスイッチ10から出力された出力信号Sig1に基づいて、駆動部4を停止させるための制御信号Sig2を出力する。これにより、搬送車2yを停止させることができる。
【0056】
以上の構成を有する搬送車2yでは、障害物検出装置8は、少なくとも搬送車2の進行方向側の表面の略全体を覆う位置に設けられる。なお、図9(a)及び(b)に示す搬送車2yの例では、障害物検出装置8は、搬送車2の進行方向側の表面(位置決め機構部3の表面3a及び搬送車本体7の表面7sを含む)の略全体を覆う位置に設けられている。勿論、障害物検出装置8は、搬送車2yにおいて、障害物検出装置8は、図9(a)及び(b)の矩形状の二点鎖線の領域に示すように、搬送車2yの進行方向側に対して逆側に位置する搬送車2yの表面の略全体を覆う位置、及び/又は搬送車2yの進行方向側に対して直交する方向に位置する搬送車2yの両側の各表面の略全体を覆う位置に更に設けられていても構わない。
【0057】
[その他の変形例]
上記の実施形態及び各種の変形例では、弾性体8b及び障害物検出手段8dは、カバー8aと搬送車2又は2yの間において1つずつ設けられていた。この場合、カバー8aに対する障害物の接触の仕方によってはカバー8aが単に傾くだけで、障害物検出手段8dが障害物を検出しない場合もあり得る。そこで、本発明では、カバー8aに対する障害物の接触の各種態様を考慮して、障害物検出手段8dが確実に障害物を検出できるようにするため、カバー8aと搬送車2又は2yの間の適当な位置に対して、弾性体8b及び障害物検出手段8dを複数個設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送装置の構成を示す各種側面図。
【図2】本実施形態に係る障害物検出装置の構成を示す各種要部拡大斜視図。
【図3】本実施形態に係る障害物検出用制御回路の構成を示すブロック図。
【図4】比較例に係る搬送装置の構成を示す一側面図。
【図5】本発明の変形例1に係る搬送装置の構成を示す各種側面図。
【図6】本発明の変形例1に係る搬送装置の構成を示す各種側面図。
【図7】本発明の変形例2に係る障害物検出装置の構成を示す要部拡大斜視図。
【図8】本発明の変形例3に係る障害物検出装置の構成を示す要部拡大斜視図。
【図9】本発明の変形例3に係る搬送装置の構成を示す各種側面図。
【符号の説明】
【0059】
1 軌道、 2、2y 搬送車、 3 位置決め機構部、 4 駆動部、 4a 走行輪、 5 制御部、 7 搬送車本体、 8 障害物検出装置、 8a カバー、 8b 弾性体、 8c 支持機構、 8d、11、12 障害物検出手段、 9 被搬送物、 51 障害物、 70 天井、 100 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された軌道と、
前記軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、
少なくとも前記搬送車の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
天井に敷設された軌道と、
前記軌道に沿って走行することにより被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、
前記搬送車は、前記被搬送物を懸垂及び把持した状態で前記被搬送物を昇降させる機能を有する搬送車本体と、前記被搬送物の搬送場所に対して前記搬送車本体の位置決めを行う位置決め機構部と、を備え、
前記位置決め機構部は前記天井側に配置されていると共に、前記搬送車本体は前記位置決め機構部の下方に配置され、
少なくとも前記搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置には、障害物の接触を検出するための障害物検出装置が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
前記搬送車は、当該搬送車を駆動するための駆動部と、前記駆動部の駆動及び停止を制御する制御部と、を備え、
前記障害物検出装置は、前記少なくとも前記搬送車又は前記搬送車本体の進行方向側の表面の略全体を覆う位置に設けられたカバーと、前記カバーと前記搬送車との間に設けられ、前記カバーを弾性的に支持する弾性体と、前記カバーに対する前記障害物の接触時における前記弾性体の移動に追従して前記カバーを前記搬送車に対して移動自在に支持する支持機構と、前記カバーと前記搬送車との間に設けられ、前記障害物の前記接触を前記カバーを通じて間接的に検出する障害物検出手段と、を備え、
前記弾性体は、前記カバーに対する前記障害物の非接触時に前記カバーを前記搬送車に対して引き離す方向に力を付与すると共に、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーを前記搬送車に対して近づける方向に力を付与する機能を有し、
前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時における前記カバーと前記障害物検出手段との相対的な距離に基づき前記制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有し、
前記制御部は、前記障害物検出手段から出力された前記出力信号に基づいて、前記駆動部を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記進行方向側に対して逆側に位置する前記搬送車又は前記搬送車本体の表面の略全体を覆う位置、及び/又は前記進行方向側に対して直交する方向に位置する前記搬送車又は前記搬送車本体の両側の各表面の略全体を覆う位置には、前記障害物検出装置が更に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記障害物検出装置は、前記搬送車又は前記搬送車本体の側面を取り囲む位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記支持機構は、前記カバーに対する前記障害物の非接触時に前記カバーを前記搬送車側と反対側へ案内すると共に、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーを前記搬送車側へ近づける方向へ案内するスライド機構により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記支持機構は、前記カバーの一端側に回転自在に支持され、当該カバーの一端側を基点として、前記カバーの一端側と反対側を円弧を描くように移動させることが可能な回転機構により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記障害物検出手段側への移動に伴って前記カバーと接触することにより前記障害物の接触を検出する接触式のスイッチであることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記障害物検出手段は、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記障害物検出手段側への移動に伴って、前記カバーと前記障害物検出手段との相対的な距離に基づき前記障害物を非接触にて検出する非接触式のセンサであることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記障害物検出手段は、光を発光する発光部と、前記光を受光する受光部と、を有する光学式のフォトセンサであり、
前記搬送車側に位置する前記カバーの裏面には、前記カバーに対する前記障害物の接触時に前記カバーの前記フォトセンサ側への移動に伴って前記光を遮光するための遮光板が設けられ、
前記フォトセンサは、前記遮光板により前記光が遮光されることにより前記障害物の接触を検出することを特徴とする請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記弾性体は、押しバネ又は板バネであることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記搬送車本体と前記位置決め機構部との間にはベルト状の接触式のスイッチが設けられており、
前記接触式のスイッチは、当該接触式のスイッチに対する前記障害物の接触時に前記制御部に対して障害物検出用の出力信号を出力する機能を有し、
前記制御部は、前記接触式のスイッチから出力された前記出力信号に基づいて、前記駆動部を停止させることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265529(P2008−265529A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111437(P2007−111437)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】