説明

携帯用カーナビゲーション装置及び車両への取付具

【課題】市販される外付けのポータブルカーナビを、運転者から最も見やすい位置に配置し、運転者の視認性を良好にする。
【解決手段】車両のインストルメントパネルのメータクラスタの前に、市販されるポータブルカーナビを着脱自在に取付ける。この結果、インストルメントパネルに表示される計器類の情報が見えなくなるので、ポータブルカーナビには、地図情報、車両の位置情報とともに、車載ネットワークを構成する電気回路から取り込んだ各種車両状態情報を重畳して表示できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション情報等の車両の運転を支援する表示装置にかかり、特に、車両の速度やエンジンの回転数等、車両の運転に関する車両状態情報を表示する携帯用カーナビゲーション装置と、その車両への取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に、外付け用の携帯用のカーナビゲーション装置(以下、「ポータブルカーナビ」という。)を購入して搭載するケースが増えている。このようなポータブルカーナビは、通常、車両のインストルメントパネルの中央の上部(通称「ダッシュボード」とも呼ばれる)に吸盤等を用いて設置されることが多い。
【0003】
一方、自動車等の車両には、車両内に配置された各種センサやスイッチからの車両状態情報を表示するための、メータクラスタが備わっている。ここでメータクラスタは、インストルメントパネルの一部を構成しており、このメータクラスタ内に表示される車両状態を表す情報としては、例えば、車速センサからの車両の速度情報、エンジンの回転数情報、あるいは、ドア系センサからのドアの開閉情報、シート系センサからのシートベルトの着用の有無に関する情報、燃料計からの燃料の残量情報等がある。これらの情報は、常時表示する必要があるものと、運転者への警告が必要な場合にのみ、表示する必要があるものとが存在する。このメータクラスタ内には、所謂車両の計器類からの様々な情報を表示するため、コンビネーションメータユニットが配置されることになる。
【0004】
そして、これらのコンビネーションメータユニットの表示装置に表示される、各種センサから得られる車両状態情報のうち表示が必要な情報は、道路運送車両法という法律で厳格に規定されている。しかも、これらの車両状態情報は、運転者が最も見やすい位置に表示するのが通例である。
これは、車両を生産販売するメーカから見れば、極めて当然のことである。なお、道路運送車両法では、車両の速度と積算走行距離、及び特定の灯火の点灯を示す表示器や警報のための表示器については、その表示は必須とされているが、これ以外の車両状態情報については、任意表示事項となっている。
【0005】
一方、運転者からみると、運転中に車両の速度やその他の車両状態情報を見るよりは、カーナビゲーション装置に表示された地図情報と車両の位置を見て、現在車両が走っている位置を確認したり、今後、車両の進む道路状況等を確認したりする必要が生じることがある。
このような場合、運転者は自分の正面から少し外れた位置にある、例えばインストルメントパネルの中央上部(ダッシュボード上)もしくは中央の小物入れ部分に設置したポータブルカーナビを見ることが多くなる。したがって、結果的には、車両の進行方向から少し目を離してポータブルカーナビの情報を確認する必要が生じることになる。
【0006】
また、ダッシュボード上にポータブルカーナビを設置した場合、ポータブルカーナビ自体が運転者の視界を一部遮ることになる。更に、ダッシュボード上は、外光が強く、また車内からの反射光等も加わり、ポータブルカーナビの表示画面(通常は液晶画面)が反射して見えにくくなるという問題が生じやすい。
【0007】
このような問題を考慮した結果であると思われるが、最近になって、車両の計器類からの情報を表示するメータクラスタに設けられるコンビネーションメータユニットの画面に、カーナビゲーション画像を付加的に表示する車両表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【0008】
すなわち、特許文献1に記載の技術は、ナビゲーション画像等の付加的画像を運転者にとって最も見やすい位置に配置されている、車両の速度等の車両の状態情報を表示するインストルメントパネル内のメータクラスタ(コンビネーションメータユニットが配置されるパネル枠)に表示するようにしたものである。このように車両状態情報とカーナビゲーション情報(地図情報)を、同一の表示装置内に画面分割して表示することにより、運転者にとっての視認性を向上させ、安全性と操作性の向上を図ることができると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−195393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置は、付加的画像を表示する領域と、車両状態画像を表示するために表示画面の横縦のサイズ比(アスペクト比)を7:3以上の横長のものにしなければならないという問題がある。つまり、通常の規格に当てはまらない一体型の車両表示装置を搭載しなければならないため、大型の高級車に対しては有効であっても、中型あるいは小型の車両にとっては、搭載することが難しいという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、外販される外付けのポータブルカーナビに、車速センサを初めとする車両の各種センサからの情報を表示させ、このポータブルカーナビを運転者から最も見やすい位置に配置した携帯用カーナビゲーション装置とこれを車両に取付けるための取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明は、車載ネットワーク内にデータとして存在している各種センサやスイッチから検出される車両状態情報をポータブルカーナビ内に取り込み、車両のコンビネーションメータユニットの前面(メータクラスタの前の部分)に着脱自在に設置可能とした携帯用カーナビゲーション装置である。
この携帯用カーナビゲーション装置は、車両に設けられた車載ネットワークを構成する電気回路から各種車両状態情報を取り込む受信部と、地図情報と、この地図情報に重畳され、GPSアンテナから取り込んだ前記車両の位置情報と、受信部から取り込んだ各種車両状態情報とを表示する表示画面を含む表示部と、を備えている。ここで、各種車両状態情報を取り込む受信部とは、図4で後述するCANバスからの情報を取り込むCANバストランシーバ&コントローラを意味している。
【0013】
本発明の好ましい形態としては、上述の地図情報と重畳させて表示する各種車両状態情報は、車輪の回転数から得られる車速データを含むとともに、更に、車両に設けられる各種センサないしスイッチからの各種状態に関わる情報を表示するためのインジケータを含んでいる。
【0014】
また、本発明の携帯用カーナビゲーション装置本体の車両への取付具は、両面テープにより車両のインストルメントパネルのメータクラスタ下部に粘着固定され、携帯用カーナビゲーション装置本体の下部が着脱自在に嵌合される嵌合部を有するベースプレートと、両面テープにより車両の前記インストルメントパネルのメータクラスタ上部に粘着固定され、携帯用カーナビゲーション装置本体の上部が着脱自在に嵌合されるラッチ部を有するラッチプレートと、を備えている。更に、携帯用カーナビゲーション装置本体の表示面とは反対側の面を、コンビネーションメータユニット前面のメータ保護用メータレンズに粘着固定する粘着シートを備えることが好ましい。
また、ベースプレートの嵌合部は、携帯用カーナビゲーション装置本体の下辺部の両端に嵌合し、ラッチプレートのラッチ部は、携帯用カーナビゲーション装置本体の上辺部の両端に嵌合する。すなわち、携帯用カーナビゲーション装置本体の上辺部と下辺部の中央部周辺はベースプレートとラッチプレートに嵌合されない領域が設けられるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外販されるポータブルカーナビの表示部に、地図情報に加えて車両状態情報を表示させ、しかもこのポータブルカーナビをメータクラスタの前面に着脱可能に取り付けるようにしたので、車内の視点移動位置が一箇所になり、運転者の視認性が向上する。
更に、ダッシュボード上にポータブルカーナビを設置しないため、運転者に対して車外の視界を遮るものがなく、安全性の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明の携帯用カーナビゲーション装置は、車両のインストルメントパネルのメータクラスタに設けられたメータシェード(メータフード)によって外光が遮蔽される場所に配置されるので、パネルの表示画面からの反射光がなくなり、運転者にとって極めて良好な視認性が得られる。また、通常、ポータブルカーナビの表示器は、運転手席の運転者の視線と直交しない方向(上または下方向)に仰角を持つように据付られる。このため、車内外からの入射光が表示器で反射して運転者の視野中心に入光することがなく、表示画面からの反射による視認性低下を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は、ポータブルカーナビを車両のインストルメントパネルの中央上部(ダッシュボード上)に配置した従来例であり、(B)は、本発明の実施の形態例であるポータブルカーナビを車両のコンビネーションメータユニットの前(運転席前方メータクラスタの前)に配置した例である。
【図2】本発明の実施の形態例である携帯用カーナビゲーション装置(ポータブルカーナビ)を含む車載ネットワークシステムを説明するためのブロック構成図である。
【図3】本発明の実施の形態例であるポータブルカーナビを外部機器に接続するときの構成図である。
【図4】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビの内蔵回路を示すブロック回路図である。
【図5】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビを車両のコンビネーションメータユニットの前に取り付けたときの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビを車両のコンビネーションメータユニットの前に取り付けたとき断面図である。
【図7】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビを車両のコンビネーションメータユニットの前に取り付ける取り付け方法を説明するための分解図である。
【図8】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビの表示画面に、地図情報、車両位置情報に加えて、表示可能な各種車両状態情報を全て表示した例である。
【図9】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビ表示画面に、地図情報と車両位置情報と、速度表示等の一部の車両状態情報を表示した例である。
【図10】図9の車両状態情報の表示例において、右折するマーカ(ターンシグナルインジケータ)を点灯させた例である。
【図11】図9の車両状態情報の表示例において、ハイビーム情報(ハイビームインジケータ)を点灯させた例である。
【図12】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビ表示画面に、地図情報と車両位置情報に加えて、車両状態情報として燃料計とトリップメータを表示した例である。
【図13】本発明の実施形態例であるポータブルカーナビ表示画面に、地図情報と車両位置情報に加えて、車両状態情報として水温計の異常を警告するマークを表示した例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図13にしたがって、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)について詳細に説明する。
【0019】
<本例のポータブルカーナビの配置位置>
図1(A)は、ポータブルカーナビ10をインストルメントパネル20の中央上部(ダッシュボード上)に置いた従来の例であり、図1(B)は、ポータブルカーナビ10を、インストルメントパネル20の一部を構成するメータクラスタ30の前に取り付けたオールインワン型の本例の携帯用カーナビゲーション装置である。
【0020】
図1(B)に示す本例のポータブルカーナビ10は、メータクラスタ30の前に取り付けられるので、図1(A)と比べて、運転者に対して車外の視界を遮るものがなく、その視認性が向上する。しかし、図1(B)のように、メータクラスタ30の前にポータブルカーナビ10を配置すると、必然的に、ポータブルカーナビ10が、メータクラスタ30に嵌め込まれて配置されるコンビネーションメータユニット80(図6で後述)に表示される各種の車両状態情報が運転者から見えなくなる。このことは、単に運転者が困るだけでなく、例えば車速情報のように表示する義務のある情報が表示されない状態は、法的にも許されない。
【0021】
そこで、図1(B)に示すように、ポータブルカーナビ10をメータクラスタ30の表示画面を遮って配置する場合には、ポータブルカーナ10内に必要な車両状態情報を全て表示することが必要とされる。つまり、通常コンビネーションメータユニット80の表示部に表示される車両状態情報と同様な情報を、カーナビの地図情報に重畳させて表示することが法的にも要請されることになる。ただ、例えば積算走行距離のように、常時運転者が見る必要がない情報は、従来どおりコンビネーションメータユニット80に表示させ、ポータブルカーナビ10を取り外したときに、見ることができるようにすれば、ポータブルカーナビ10に表示しなくてもよい。
【0022】
<本例のポータブルカーナビと車載ネットワークとの関係>
図2は、本例のポータブルカーナビ10を車載ネットワークのCAN(Controller Area Network) バス40に接続して、各種センサからの車両状態情報を本例のポータブルカーナビ10に取り込むようにした車載ネットワークの例を示したものである。図2に示す車載ネットワークは、CANバス40にさまざまなコンピュータシステムであるECU(Electric Control Unit)が接続されている。
なお、CANバス40は、車載ネットワークに標準的に使用されている通信規格である(ISO11898及びISO11519)。このCANバス40は、図示するようにCAN_HとCAN_Lの2本の差動信号線で構成されている。
【0023】
CANバス40に接続されるECUには、エンジンの回転制御を行うエンジンECU11、ブレーキシステムの制御を行うABS(Anti-lock Brake System)ECU12、トランスミッション制御を行うトランスミッションECU13、メータパネル周辺の制御を行うメータ&パネルECU14、各種スイッチ等の制御を行うボディECU16、及びその他のECU17がある。メータ&パネルECU14は、各種通信線を介してコンビネーションメータユニット15(後述する図6のコンビネーションメータユニット80と同じもの)が接続されている。
【0024】
ABS ECU12には、車速センサ21が接続され、この車速センサ21からの検出信号により、車両の速度が検出されるようになっている。このABS ECU12で検出された車速データは、図の矢印で示すように、CANバス40を経由してメータ&パネルECU14に送られ、車速パルス37に変換される。この車速パルス37は通信線を経由してコンビネーションメータユニット15に送られる。
【0025】
また、メータ&パネルECU14には、燃料計、水温計等の各種センサとシフトレバー等の各種スイッチ22が接続されており、これらのセンサないしスイッチの検知信号に基づいて車両が現在どのような状況になっているかを示す車両状態情報がコンビネーションメータユニット15に表示されるようになっている。ここで、コンビネーションメータユニット15の「コンビネーション」とは、コンビネーションメータユニット15が機能部品であり、車速データ以外にも、車両に設けられた各種スイッチやセンサからの様々な車両状態情報を表すインジケータを統合して表示することを意味している。
【0026】
ボディECU16には、コンビネーションスイッチ、ハザードスイッチ、ステアリングスイッチ等を含む各種スイッチ23と、ドア系センサ24及びシート系センサ25が接続され、これらのスイッチあるいはセンサからの信号が供給されている。
また、ボディECU16には、制動灯、方向指示器等18と、ドア及びシート用アクチュエータ19が接続されており、上述の各種スイッチ及びセンサ等からの信号に基づいて、制動灯、方向指示器等18と、ドア及びシート用アクチュエータ19が制御されるようになっている。そして、これらのスイッチ類あるいはセンサ類からの情報も、CANバス40を経由して、メータ&パネルECU14に送られ、各種通信線を経てコンビネーションメータユニット15を経てメータクラスタ30(図1参照)に表示される。
なお、その他のECU17は、ラジオ、オーディオ、エアコン等の操作表示と作動制御を司るECUである。
【0027】
以上はCANバス40から見た通常の車両が備える車載ネットワークであるが、本発明では、この車載ネットワークに、更にポータブルカーナビ10が接続されている。すなわち、ポータブルカーナビ10は、車両診断用コネクタ26を介してCANバス40に接続され、車速データ等の様々な車両状態情報を取り込むことができるようになっている。なお、車速データについては、メータ&パネルECU14とコンビネーションメータC/U15を接続する通信線にポータブルカーナビ10を接続することにより取得するようにしてもよい。
【0028】
<本例のポータブルカーナビの外部接続>
次に、図3に基づいて、本例のポータブルカーナビ10に車両状態情報の表示をする場合の外部機器との接続の仕方について説明する。
図3に示すように、本例のポータブルカーナビ10は、図2に示すCANバス40に接続される他に、外部機器と接続するための各種接続端子を備えている。例えば、ポータブルカーナビ10の電源を車両の電源31から取り込む端子を備える。この電源端子としては、通常車両のシガーライタが用いられる。
【0029】
また、ポータブルカーナビ10は、例えば機器前面上部に内蔵カメラ開口部32を備えており、図示しない外部カメラからの情報を取り込めるようになっている。更に、カーナビゲーションに必要なGPS情報を取り込むためのアンテナ類33の端子や、パソコンと接続するためのUSBインターフェース34を備えている。このUSBインターフェース34は、カーナビの地図データの更新や、車両が走行時に取得したデータをパソコンに送信するために用いられるインターフェースである。
【0030】
また、ポータブルカーナビ10の側面部には、メモリカード(SDカード等)36を挿入するスロットが設けられている。このメモリカード36は、ポータブルカーナビ10に記録してあるデータを書き出すための記録デバイスであるが、このメモリカード36からポータブルカーナビ10の方に必要な情報を読み込むこともできることは言うまでもない。
【0031】
更に、このポータブルカーナビ10には、後述する赤外線リモコン70(図5参照)からの情報を受信する赤外線リモコン受光部35が設けられている。赤外線リモコンについては後述するが、このリモコンは、ステアリングホイールに装着されており、このリモコンを操作者が操作することにより、ポータブルカーナビ10に表示される画像が切り替えられるようになっている。
【0032】
また、ポータブルカーナビ10には、CANバス40からのルートのほかに、メータ&パネルECU14とコンビネーションメータC/U15を接続する通信線から車速パルス37を取り込めるようになっている。この車速パルス37は、車両の速度を示すパルス信号であり、車軸の1回転がnパルスに相当している。なお、このパルス数nは、駆動軸1回転ごとに2、4、8・・という2の倍数で発生するパルスであり、日本標準規格(JIS_D5601)では、時速60kmを637rpmとして、10.6パルス/秒と定められている。
【0033】
なお、図3においては、ポータブルカーナビ10の表示画面を2分割し、カーナビ画像を左側に車両状態情報を右側に表示する例を示している。しかし、図8〜図13に後述するように、カーナビの地図画像に重畳させて必要な車両状態情報を表示することもできる。
【0034】
<本例のポータブルカーナビの回路構成>
次に、図4に基づいて本例のポータブルカーナビ10の回路構成とその動作について説明する。図4において、図2、図3で示した構成と同じものは、同一符号を付している。
図4に示すように、本例のポータブルカーナビ10は、通常のカーナビゲーション装置として必要な地図情報と車体位置情報を表示する機能に加えて、各種車両状態情報を表示するための電気回路を備えている。
【0035】
まず、本例のポータブルカーナビ10の本体であるプリント基板50に、車速データを検出するパルスデコーダ56と、CANバス40が接続されるCANバストランシーバ&コントローラ57と、無線LAN用のアンテナ33cに接続するための無線LANコントローラ58と、GPSアンテナ33aと接続するためのGPSモジュール59と、その他オプションで設けられたアンテナ33bに接続するためのAM/FM&テレビチューナ65と、図3で示した赤外線リモコン受光部35からの信号を受け取るための赤外線通信コントローラ66と、が設けられている。
【0036】
ここで、パルスデコーダ56は、車速パルス37(車速を示すパルス信号)から周波数を算出する回路であり、CANバストランシーバ&コントローラ57は、CANバス40と電気的に接続し、通信プロトコルを制御する回路である。また、無線LANコントローラ58は、文字通り無線LANで他の機器との通信を行うための回路であり、GPSモジュール59は、GPS衛星から電波を受信して車両位置の測位を行う回路である。AM/FMチューナ&ワンセグチューナ65は、それぞれAM/FMラジオを受信するチューナとテレビのワンセグ放送を受信するための回路である。
【0037】
また、赤外線通信コントローラ66は、図5で後述するように、ステアリングホイールに装着したタッチパッド70(リモコンのスイッチを構成する)と赤外線通信を行うための回路である。赤外線通信コントローラ66は、ポータブルカーナビ10に内蔵されている赤外線リモコン受光部35と接続されており、図5で示すタッチパッド70との間で赤外線通信を行う。なお、赤外線リモコン受光部35は、リモコン用赤外線LEDと受光素子で構成されている。また、タッチパッド70は、単にリモコンに対しての入力の手段であって、このタッチパッド70の代わりに、ボタンスイッチやダイヤル(ジョグダイヤル)、ジョイステック等を用いることもできる。
【0038】
また、シガーライタ等の車両の電源31及びバッテリセル71と接続される電源&バッテリ制御回路51と、表示デバイス72と接続される表示コントローラ52と、タッチパネルセンサ73と接続されるタッチパネルコントローラ53と、メモリカードデバイス36aと接続されるメモリカードコントローラ54が設けられる。更に、不図示の外部パソコンや外部カメラとの情報の接受を行うためのUSBインターフェースコントローラ63と、内蔵マイク39からの音声信号を受信し、内蔵スピーカ38に出力する制御を行うスピーカ/マイク入出力コントローラ64を備えている。また、内蔵カメラ32aと接続されるシリアル通信部55も設けられている。
【0039】
ここで、電源&バッテリ制御回路51は、入力電源を内部電源に変換するとともに、バッテリセル71への充電を制御する回路である。また、表示コントローラ52は表示デバイス72を制御する回路であり、タッチパネルコントローラ53は、ポータブルカーナビ10の液晶画面の前面に表示されているタッチパネルセンサ73からの入力をスイッチ情報として電気信号に変換する回路である。スピーカ/マイク入出力コントローラ64は、スピーカ出力とマイクロホン入力のためのAD(アナログデジタル)変換回路とDA(デジタルアナログ)変換回路、及び増幅回路である。
【0040】
また、メモリカードコントローラ54は、メモリカードデバイス36aと通信を行いメモリカード36(図3参照)に対してデータの記録、読み込み、消去を制御する回路である。また、USBインターフェースコントローラ63は、パソコンとUSB規格で通信をするための通信回路である。このUSBインターフェースコントローラ63により、ポータブルカーナビ10をパソコンや外部カメラ等と接続することができる。
【0041】
これらの各種コントローラやモジュールは、通信線で接続されており、同じく本体基板50内に設けられるCPU60により制御される。CPU60には、RAM61が接続されており、CPU60の演算結果を一時的に記憶するメモリである。また、フラッシュメモリ62は、電源からの通電を遮断しても記憶が失われないメモリであり、このフラッシュメモリ62に、ポータブルカーナビ10に使われる内蔵プログラムやカーナビの地図情報等が記憶される。
【0042】
<本例のポータブルカーナビの車両への取付具とその構造>
次に、本例のポータブルカーナビ10を車両に取り付ける方法と取り付けたときの状態について図5〜図7に基づいて説明する。
図5は、本発明のポータブルカーナビ10を、車両内に据え付けられているインストルメントパネル20の一部を構成する、運転席前方にあるメータクラスタ30の位置に取り付けた状態を示す図である。また、図5に示すように、ステアリングホイール88上に図4で説明した赤外線リモコン通信のためのタッチパッド70が装着されている。このタッチパッド70は、赤外線リモコンのスイッチを構成しており、ポータブルカーナビ10に設けられる赤外線リモコン受光部35(図3参照)に向けて赤外線を送り、表示画面の切り替え制御を行うものである。なお、ここでは赤外線リモコンを用いているが、赤外線の代わりに、ブルートゥース(Bluetooth)などの近距離無線通信手段を利用することもできる。また、このタッチパッド70は、ステアリングホイール88とともに回転する構造になっているが、例えば後述する図6のコラムカバー89の上に配置することもできる。その場合には、タッチパッド70はステアリングホイール88とともに回転しない。
【0043】
図6は、ポータブルカーナビ10を車両に取り付けた状態を、側面から見た横断面図であり、図7は、ポータブルカーナビ10をメータユニット80のメータレンズ82の上(メータクラスタ30の前)に取り付ける方法及び取付具の構造を説明するための分解斜視図である。図6に示すように、市販される車両に取り付けられているメータクラスタ30は、インストルメントパネル20の運転席前方にメータシェード83で覆われるように配置されている。そして、このメータクラスタ30の奥部には、速度計81を含むコンビネーションメータユニット80が組み込まれている。
ここで、コンビネーションメータユニット80の前面は、メータレンズ82で運転席と仕切られており、その表示画面には、車両内の各種センサやスイッチからの車両状態情報が表示されるようになっている。この意味で、コンビネーションメータユニット80は、表示される計器類全体を表すものと言える。
【0044】
このコンビネーションメータユニット80の前面にはメータレンズ82が配置され、車速やその他の車両状態情報が拡大表示されるようになっている。また、メータユニット80の表示部を構成するメータレンズ82の上部には、メータシェード83aが設けられている。このメータシェード83aは、メータユニット80の表示画面に外光や車内での反射光が入射するのを防ぐためのものである。
【0045】
本例のポータブルカーナビ10は、メータシェード83aの下部に配置される。つまり、図1で説明したように、インストルメントパネル20の中央上部(ダッシュボード上)に配置された従来の例(図1(A))と異なり、図1(B)のように、車両に据え付けられているインストルメントパネル20の一部を構成するメータクラスタ30の前に配置されることになる。
【0046】
次に、ポータブルカーナビ10を車両に取り付けるための取付具について、図7を参照して説明する。ポータブルカーナビ10の取付具は、ポータブルカーナビ10の滑り止め用として設けられる粘着テープ84a、84bと、ポータブルカーナビ10が嵌合されるベースプレート85及びラッチプレート86とを備えている。
【0047】
粘着テープ84a、84bは、ポータブルカーナビ10の表示面とは反対側の面である裏面に配置されており、その裏面をメータユニット80のメータレンズ82に粘着固定する。つまり、粘着テープ84a、84bは、ポータブルカーナビ10の裏面をメータレンズ82の表示面に粘着固定する。
【0048】
ベースプレート85は、略長方形の板体からなるプレート本体85aと、このプレート本体85aの表面から突出する篏合部85b,85cからなっている。プレート本体85aは、裏面に貼り付けられた両面テープ87aによってメータレンズ82の前方に延在しているメータクラスタ30の下部83b(インストルメントパネル20の一部を構成し、上部のメータシェード83aと対峙する部分)に粘着固定される(図6参照)。篏合部85b、85cは、プレート本体85aの長手方向の両端部に設けられている。この篏合部85b、85cには、ポータブルカーナビ10の下辺部の両端が着脱可能に嵌合される。
【0049】
ラッチプレート86は、略長方形の板体からなるプレート本体86aと、このプレート本体86aの表面から突出するラッチ部86b、86cからなっている。プレート本体86aは、裏面に貼り付けられた両面テープ87bによってメータレンズ82の上部に粘着固定される(図6参照)。
【0050】
また、ラッチプレート86のラッチ部86b、86cは、プレート本体86aの長手方向の両端部に設けられている。そして、このラッチ部86b、86cには、ポータブルカーナビ10の上辺部の両端が着脱可能に嵌合される。つまり、ベースプレート85とラッチプレート86は、篏合部85b、85cとラッチ部86b、86cでポータブルカーナビ10を挟持するようになっている。
【0051】
なお、ラッチプレート86は、例えば、PC(Polycarbonate)樹脂あるいはABS樹脂(アクリルニトリル、ブタジエン、スチレンからなる熱可塑性樹脂)等で構成されており、ラッチ部86b、86cが上下方向に撓み変形可能になっている。したがって、ポータブルカーナビ10の下辺部をベースプレート85の篏合部85b、85cに嵌合させてから上辺部を押し込むことによりポータブルカーナビ10を取付具に簡単に取り付けることができる。そして、ポータブルカーナビ10の上辺部を引き寄せることにより、ポータブルカーナビ10を取付具から簡単に取り外すことができる。
【0052】
また、篏合部85b,85c及びラッチ部86b,86cは、ポータブルカーナビ10の上辺部及び下辺部の両端部に嵌合する。そのため、ポータブルカーナビ10の着脱作業を行う場合に、ポータブルカーナビ10の上辺部及び下辺部の中間部を把持することができ、ポータブルカーナビ10の姿勢を安定させることができる。
【0053】
<本例のポータブルカーナビの表示画面の例>
次に、図5〜図7に示した方法で車両に取り付けた本例のポータブルカーナビ10を用いて車両状態情報をカーナビ情報とともに表示する表示例について、図8〜図13を参照して説明する。なお、この表示例はあくまでも一例であり、車両状態情報を表示画面のどの位置に、どのような大きさで表示するかは、各カーナビメーカが自由に設定することができる。また、図3で示すように、ポータブルカーナビ10の画面を2分割或いは3分割して、それぞれの分割した領域にカーナビ画像と車両状態情報とを表示させることもできる。
【0054】
図8は、本例のポータブルカーナビに表示可能とされる車両状態情報の一例を示した図である。図8に示されるように、車両状態情報としては、「60km/h」等の速度表示90、燃料計92、ライトアップ警告灯93、バッテリ警告表示94、オイル系統警告95、水温計警告96、サイドブレーキ警告97、エンジン系統異常警告98、方向指示器の左右インジケータ99a、99b等が表示される。この図8に示す例はあくまでも一例であり、これ以外にも、必要に応じて、あるいはユーザの好みに応じて種々の車両状態情報を表示することができる。なお、図8には、車両の積算走行距離を表示する欄を設けていないが、この積算走行距離については、車両が備えているメータクラスタ30(図1)の位置に配置されるコンビネーションメータユニット80の表示画面に必ず表示されているものである。したがって、ポータブルカーナビ10を取り外せば、いつでも見ることができるので、ここでは、ポータブルカーナビ10の表示画面上に積算走行距離の表示欄を設けていない。
【0055】
本例のポータブルカーナビ10では、以上説明したような車両状態情報が地図情報等のカーナビ画像に重畳して表示されるのであるが、それ以外にも、カーナビの特徴として車両位置情報100、次の交差点までの距離表示101、カーナビのモード表示102、南北を示す磁針103、及び現在時刻104が表示されるようになっている。
【0056】
図9は、最もベーシックなケースを表示したものであり、地図及び車両位置情報100のカーナビ情報の他には、速度表示90と左右の方向指示器のインジケータ99a、99bのみが表示されている。なお、図9は、方向指示器が作動していない場合を示しており、この場合には、方向指示器のスケルトン(矢印の外枠)のみが表示され、地図が透けて見えるようになっている。
【0057】
図10は、図9に示したベーシックケースから右の方向指示器を作動させた状態を示した図である。右方向指示器のインジケータ99bがスケルトン(矢印の外枠)のみの表示から矢印全体が色付けされた表示(塗りつぶされた表示)に変っている。なお、この場合のインジケータ99bの表示は、スケルトンと色付けされた表示を一定時間間隔で交互に繰り返し、点滅状態を明示的に表現する。
図11は、ポータブルカーナビ10の画面にハイビームを知らせるアイコン93を表示した例である。夜間にライトを点灯した場合、ライトがハイビームになると、対向車の運転者にとっては大いに迷惑である。このような場合は、ハイビームになっていることを運転者に知らせる警告が表示されるようになっている。
【0058】
なお、ハイビーム以外の警告表示の例としては、図示されていないが、車幅灯や尾灯の点灯表示を知らせるもの、フォグランプの点灯表示を知らせるもの等がある。これらの警告を知らせるインジケータとしてのアイコンはJISで規定されており、ポータブルカーナビ10の表示画面に、これらの点灯を示すアイコンを表示することができる。
【0059】
図12は、運転者の好みによりオプションとして表示したい項目を設定して選択的に表示した例を示している。ここでは、トリップメータ91と燃料計92を表示させた例を示している。これらの表示以外に、運転者の好みによって、エンジンの回転計、水温計あるいは油圧計などが選択表示されることもある。
図13は、図12の状態で運転している走行中に、水温の異常が発生した場合の警告表示の例を示したものである。水温異常を示す警告のインジケータ96が表示されている。
【0060】
他に、警告のインジケータとしては、図8に示されるように、バッテリ異常を知らせるインジケータ94、油圧異常を示すインジケータ95、ブレーキ異常を示すインジケータ97、エンジン異常を示すインジケータ98等が考えられる。なお、これらの警報類のインジケータは異常時に限って表示されるものであり、オプションにより動作条件と表示条件を設定できるものではない。
【0061】
以上、本発明の実施の形態例であるポータブルカーナビについて説明したが、本発明は上述した実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の用紙を逸脱しない限りにおいて、種々の変形例や応用例を含むものである。
【符号の説明】
【0062】
10・・・ポータブルカーナビ、20・・・インストルメントパネル、30・・・メータクラスタ、40・・・CANバス、11・・・エンジンECU、12・・・ABS ECU、13・・・トランスミッションECU、14・・・メータパネルECU、15、80・・・コンビネーションメータユニット、16・・・ボディ系ECU、21・・・車速センサ、34・・・USBインターフェース、35・・・赤外線リモコン受光部、33・・・各種アンテナ、56・・・パルスデコーダ、59・・・GPSモジュール、60・・・中央処理装置(CPU)、66・・・赤外線通信コントローラ、70・・・タッチパッド、84・・・粘着プレート、85・・・ベースプレート、86・・・ラッチプレート、87・・・両面テープ、88・・・ステアリングホイール、90〜99・・・各種車両状態情報のインジケータ、101・・・交差点までの距離、102・・・カーナビのモード、103・・・南北を示す磁針


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のコンビネーションメータユニットの前面に着脱自在に設置可能とした携帯用カーナビゲーション装置であって、
前記車両に設けられた車載ネットワークを構成する電気回路から各種車両状態情報を取り込む受信部と、
地図情報と、前記地図情報に重畳され、GPSアンテナから取り込んだ前記車両の位置情報と、前記受信部から取り込んだ各種車両状態情報とを表示する表示画面を含む表示部と、
を備える携帯用カーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記各種車両状態情報を示すインジケータを前記地図情報に重畳して前記表示画面に表示するものである、請求項1に記載の携帯用カーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記各種車両状態情報は、車輪の回転数から得られる車速データと、車両に設けられた各種センサないしスイッチからの前記車両の状態を示す情報とを含む、請求項1又は2に記載の携帯用カーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記表示画面を切り替えるためのリモコン操作を行うためのタッチパッドを、更に備え、
前記タッチパッドは、前記車両のステアリングホールに着脱可能に取り付けられる、請求項1〜3の何れかに記載の携帯用カーナビゲーション装置。
【請求項5】
両面テープにより車両のインストルメントパネルのメータクラスタの前面下部に粘着固定され、携帯用カーナビゲーション装置本体の下辺部が着脱自在に嵌合される嵌合部を有するベースプレートと、
両面テープにより車両の前記インストルメントパネルのメータクラスタの上部に粘着固定され、前記携帯用カーナビゲーション装置本体の上辺部が着脱自在に嵌合されるラッチ部を有するラッチプレートと、
を備える携帯用カーナビゲーション装置の取付具。
【請求項6】
前記携帯用カーナビゲーション装置本体の表示面とは反対側の面を、前記コンビネーションメータユニット前面のメータ保護用メータレンズ表面に粘着固定する粘着シートを備える、請求項5に記載の携帯用カーナビゲーション装置の取付具。
【請求項7】
前記ベースプレートの前記嵌合部は、前記携帯用カーナビゲーション装置本体の下辺部の両端に嵌合する、請求項5または6に記載の携帯用カーナビゲーション装置の取付具。
【請求項8】
前記ラッチプレートのラッチ部は、前記携帯用カーナビゲーション装置本体の上辺部の両端に嵌合する請求項5〜7の何れかに記載の携帯用カーナビゲーション装置の取付具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−37310(P2011−37310A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183776(P2009−183776)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【Fターム(参考)】